IPEの果樹園2015

今週のReview

7/6-11

 

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オバマケアの確立 ・・・ギリシャのデフォルト ・・・ギリシャ国民投票 ・・・同性婚の合法化 ・・・中国株価の急落 ・・・オバマと人種問題 ・・・ロシアによる逆転 ・・・世界秩序の再建

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  オバマケアの確立

NYT JUNE 25, 2015

Hooray for Obamacare

Paul Krugman

オバマケアthe Affordable Care Act of 2010は生き延びた.最高裁は,根拠のない非難を間に受けて,この法律を無効にしたりしなかった.現実には,1500万人ものアメリカ国民に医療保険を利用できるようになった.そのコストは連邦財政を破綻させることはない.むしろ医療費の支出が増大するペースを落としている.共和党が攻撃したような,雇用を破壊する効果は無かった.むしろ雇用は伸びている.

この法律が良い成果を上げているのに,なぜこれほど政治的な毒のある非難が続くのか? 保守派がいつも恐れるのは,政府がアメリカ国民の生活に良いことをできる,ということを有権者が思い出すことなのだ.

オバマケアが成功したことは,保守派にとっての悪夢であっても,素晴らしいことである.


l  ギリシャのデフォルト

The Guardian, Friday 26 June 2015

The seven stages of Greece’s debt tragedy

Jason Manolopoulos

なぜギリシャの債務危機はこれほど長引くのか? 6年経っても,まだ終わりが見えない.

ギリシャが経済循環を再開するためには,債務の削減が欠かせない.それが唯一の条件ではないが,重要な点である.George Sorosが指摘した「債務者・債権者循環」で見て,ギリシャが経験してきた循環を描くなら,以下のような7局面がある.

1.債務者も債権者も強気 ・・・これは30年間のクレジット・ブームだった.貧しい地域の政府にEUは補助金を与えてブームを拡大したのだ.

2.債務危機と「救済」パッケージ ・・・債務者は債務の組み換え,もしくは,デフォルトを望む.しかし債権者は最初の投資を守るために,救済融資を組織する.それは,債務残高がすべて返済できる,という架空の思い込みに依拠している.新規の資金を与える債権団は,債務者に緊縮策を要求する.しかし,債務者は生活水準を下げたくない.債権者も債務者も,双方が不満を持つ.

3.緊縮と不況 ・・・緊縮策はギリシャの消費を削り,不況を長期化した.貿易収支の改善は不十分で,公的債務の組み換えを求める議論が強まった.ギリシャの場合,2012年冬である.

4 .膠着状態 ・・・債権者は利子を受け取るが,債務者の生活水準は悪化し続ける.債務者による融資にも限界がある.完全な決裂をめぐる脅迫は交渉を不可能にする.

これは1980年代のラテンアメリカと非常に似ている.1982年,メキシコ政府は債務への利子支払いができなくなった.債務組み換え交渉は何度も行われたが,決定的な解決には至らなかった.所得が破滅的に低下し,通貨価値と生活水準が暴落して初めて,債務免除の合意が成立した.投資が回復し,成長が戻って,メキシコは資本市場のアクセスを得た.

5. 調整の開始と寛大さ ・・・ある時点で,経済の再調整と競争力の回復が実現する.債権者も,将来の損失に比べて,現在の条件を寛大にする.債権者がこうしたことを認めるまで,典型的には,5年から10年かかる.ギリシャは最初の救済融資から5年がたつ.

6. 経済活動の回復 ・・・2014年までに,ギリシャは失われた競争力を回復した.黒字は債務の支払いに役立つが,生活水準は改善できなかった.不満は市民の間に広まって,過激な主張が支持された.市民たちの不満が,景気回復を逆転してしまった.

7. 持続的な回復 ・・・1月の選挙前,ギリシャは局面の3から6の間にあった.債権者が緊縮策にこだわり,それを拒むシリザが選挙で勝利した結果,景気回復は止まったのだ.今では,投資を呼び戻し,財政を均衡するのに,もっと厳しい緊縮策が求められる.債権者は,債務削減に向けたギリシャのより強い要求に直面する.

VOX 29 June 2015

Grexit: The staggering cost of central bank dependence

Charles Wyplosz

追加の緊急融資を拒んだことで,ギリシャがユーロ圏を離れねばならない,とECBは決めたのだ.これには法的根拠,政治的な圧力があったかもしれないが,中央銀行として根本的な問題である.

すでに予想したように,ギリシャの交渉は結論を得られなかった.結果的に,数日,もしくは数週間で,ギリシャのすべての債務がデフォルトになるだろう.プライマリー・バランスがほぼ達成されているので,すべての債務を免除するという交渉を始めるまで,ギリシャ政府は戦うだろう.

ギリシャの「デフォルト戦略」は,ECBがギリシャの銀行システムの流動性を供給する姿勢によって,そのリスクが変化した.リスクを感じなかった預金者たちが,この1週間のECBの変化で,「スローモーションの取り付け」をパニックに変えた.銀行休日,預金引き出し規制は,ごく短期間の余地を生み出すに過ぎない.これだけで銀行システムの崩壊は止められない.

ギリシャ当局は,早期に,ユーロ圏離脱とドラクマの再導入を決めるしかないだろう.ギリシャの混乱は確実だ.

なぜECBはギリシャに対するEmergency Liquidity Assistance (ELA)を止めたのか? すべての中央銀行は商業銀行に対する最後の貸手でなければならず,ECBはその責任を放棄した.法的にも,コストの点でも,その決定は間違っている.条約によってECBは加盟国の政府を救済してはならない.ECBはこの法律を回避していたが,救済禁止には理由があったから,(選択できないギリシャではなく)ECBが選択し,その結果を引き受けなければならない.

より一般に,ECB2010年のギリシャ債務削減を拒んだことで,ギリシャ政府債務危機の破滅的な管理に責任を負わねばならない.最初に削減しておけば,債務は今でも持続可能であっただろう.仏独政府は,直ちに,ギリシャ政府債券を大量に保有していた自国の大銀行を救済するため,この決定を支持した.また,「新しいメガ・リーマン・ショック」を恐れたアメリカも支持した.

20105月に,IMFは持続不可能なギリシャへの融資プログラムを承認できず,新しい条項を発明した.すなわち,潜在的には持続不可能な融資も,グローバル経済に対するシステム・リスクが存在するときには,承認できる,と.そのようなシステム・リスクが存在したかもしれない.それは確かなことはわからないが,グローバルなリスクのせいで,ギリシャは犠牲になった.

トロイカに参加したことで,ECBは奇妙な役割を担った.通常の融資プログラムでは,IMFが一方に座り,他方にはその国の政府・中央銀行が座る.しかし,ECBが融資に加わったため,自分自身で融資条件を執行し監視する側に立ったのだ.ユーロ圏の政府債務リスクとは,ユーロが加盟諸国にとって外国通貨である,ということを意味する.他国の中央銀行は,政府にどのような改革をしろとか,財政支出の削減はどれくらい必要だ,と要求することなどない.トロイカのメンバーとして,民主的な権限を得た政治家だけに許されるような,極度に再分配的な政策を押し付けた.こうした政治化によって,ECBはギリシャの深刻な不況と政治的混乱をもたらしたお粗末な政策に対して,非難を受けることが避けられない.

ECBによるELAの凍結は,こうした政治化の新しい頂点を示した.選挙を経ることもないECB職員たちが,ユーロ圏の取締役として,何の権限もないギリシャ追放を決定した.確かに,ギリシャの国民投票に対して,他の政府がギリシャの銀行を維持するECBの操作を激しく非難した.しかし,中央銀行の独立性とは,こうした政治的圧力を防ぐものである.

ユーロ圏は離脱することもある,と金融市場は理解した.ギリシャだけでなく,ユーロ圏のガバナンスが粉砕された.

Project Syndicate JUL 1, 2015

Why the Greek Bailout Failed

KENNETH ROGOFF

構造調整プログラムが成功するには,その国が実行を強く願うものでなければならない.たとえ合意された計画でも,ギリシャ政府が実行するかどうか,わからない.構造改革なしには,持続的な安定性や成長は達成されない.トロイカは,1970年代にニューヨーク市が財政破綻したときのような,計画の実行を促す力を持たない.

最善の構造調整プログラムでは,IMFが債務国政府の実行すべき政策転換を指導し,政府に必要な政治的理由付けを与える.改革を外から押し付けることはできないから,ギリシャ政府と有権者が,そのプログラムを信用しなければならない.

左派のイデオロギーでは,構造改革プログラムが長く信用されなかった.IMFや世界銀行はネオリベラリズムの市場原理主義に囚われている,と非難された.それは真実もいくらか含むけれど,誇張されたものだ.労働市場の弾力性,年金制度の持続性,税制の簡素化と公平性は,すべての労働者が解雇されて,年金制度を奪われる,というのではない.

債務の救済プログラムには,その国の経済・社会・政治モデルを全体として転換する必要があるから,最初に民間の損失を免除するのが最善であろう.理想的には,ギリシャ国民がEUに残ると決意しているなら,改革と交換に金融支援を行い,近代的なヨーロッパ的国家を実現する人々を助けるべきだ.しかし,これまでの失敗を見れば,アプローチを変える時が来たのかもしれない.

ギリシャがユーロ圏の中であれ,外であれ,構造改革プログラムではなく,人道的な援助だけを与える.

VOX 01 July 2015

Path to Grexit tragedy paved by political incompetence

Barry Eichengreen

EichengreenVoxEUに載せたコラムで,ユーロ圏の拡大は後戻りできない,と述べた.それは間違いであると判明しそうだ.なぜ間違ったのか?

既にギリシャでは銀行の取付が始まり,資本規制も導入された.次は賃金や年金を支払うために政府債券を発行するだろう.ギリシャはユーロ圏離脱に向かっている.

10年ほど前に,私はユーロ圏離脱のシナリオ,その経済的なコストと利益を分析した.そして,コストが先に大きく増大する,と結論した.取付が金融システムを粉砕し,経済活動が停止するからだ.他方,その後に,遅れて発生するかもしれない利益は,失望するような小さなものである.政府が紙幣を増発すればインフレが高まり,自国通貨の切り下げによる競争力の改善は幻想に終わる.特に,主要な輸出部門である石油精製は,その価格もコストもドル建であるから,効果が無い.

何を間違ったのか?

銀行取付は緩やかにやってきた.ECBが緊急の流動性供給(ELA)を続けていたからだ.しかし,ギリシャ政府が国民投票を決めて交渉を打ち切ったとき,ECBELAの膨張を止めた.そして,完全な取付が始まったのだ.

私は政治の役割を過小評価した.ギリシャ政府だけでなく,債権者側のトロイカも,その政治的な無能さがどれほど大きい影響を及ぼすか,理解していなかった.

シリザの勝利と,債権者の最終提案を拒んだチプラス首相は,純粋で,単純であった.国民投票は交渉過程の不確実さを高めるだけだった.しかし指導者たちは,自国の経済危機によるコストを最小化することより,政権にとどまることを重視した.

さらに,欧州委員会,ECBIMFの政治的な無能さもはなはだしい.3つの機関は2010年に債務削減を拒んだ.もし最初に削減していたら,コストはもっと小さかっただろう.2015年まで,彼らは債務削減を拒み続けた.債務は返済されるという見せかけを保ったのだ.

事実は,それによってギリシャをさらに激しい不況に追いやっただけであった.債権者たちは,自分たちのバランス・シートを優先し,ギリシャ政府の政権交代とその結果としての混乱を得たのだ.

その意味は明白だ.政治家たちが間違ったことを実行する能力は,決して過小評価できない.


l  ギリシャ国民投票

FP JUNE 28, 2015

Athens Is Being Blackmailed

BY PHILIPPE LEGRAIN

「ギリシャ政府が国民投票をしたければ,すればいい」と,511日にドイツ財務大臣Wolfgang Schäubleは発言した.しかし,626日,チプラス首相がそれを国民に約束すると,ショウイブレやユーロ圏の他の財務大臣たちは異なる反応を示した.彼らは交渉を打ち切り,ギリシャを資本規制,デフォルト,ユーロ圏離脱の道へ押しやったのだ.民主主義? 彼らはそんなものを知らない.

債権者たちはチプラスが交渉を決裂させた,と言うが,交渉を失敗させた責任は債権諸国の態度にある.彼らは,回復を死活的に必要としている,経済不況にある支払不能のギリシャに,債務免除を与えることを頑固に拒んで,チプラスを追い詰めた.短い期間,現金を供給するのと引き換えに,数年にわたって身を削る緊縮策を,「改革」と主張した.

債権者たちの目的は,明らかに,ギリシャを屈服させることだ.銀行が閉鎖され,ユーロ圏離脱が迫る中で,有権者に救済融資の受け入れにYESの投票を促している.もしYESが多数になれば,チプラスは受け入れるだろう.それでも債権者たちはギリシャ政府を信用できない,と主張する.そして,政府の交代を求めるだろう.201111月にも,穏健な社会民主主義の,選挙で政権に就いた首相が国民投票を求め,ユーロ圏当局者の激しい非難を受けて,テクノクラートの政権に交代した.

ギリシャはこうした「砲艦外交」に屈するべきではない.チプラスたちは,デフォルトに備えて,並行通貨の導入を含む対策を準備することだ.NOが多数を占めても,債権者たちはギリシャ政府の要求に歩み寄らないだろう.その場合,35億ユーロのECB融資はデフォルトになり,債務に縛られるよりユーロ圏離脱の方が好ましい.

GREXITが苦しいのは最初だけだ.預金引き出しが大規模に進み,資本規制を導入したことで,その苦しい部分はおおむね過ぎた.債務から解放され,通貨を切り下げて,政策の自由を得たギリシャ経済の回復がすぐに始まる.2001年,アルゼンチンはドルとの固定性から離脱して,わずか1年後に回復し始めた.ギリシャが民間債務を支払い続けるなら,債券市場のアクセスを失わないだろう.一国の将来は,その統治の良否にかかっている.ギリシャにもそれを許すべきだ.

ユーロ誕生には,市場の「専制」に政治的なコントロールをもたらす,という目的があった.しかし,偏狭な債権者たちがユーロ圏の諸制度を乗っ取り,通貨危機によって,さらに専制的な支配をもたらした.ヨーロッパの理想は,野蛮な権力政治に変わったのだ.

Project Syndicate JUN 29, 2015

Europe’s Attack on Greek Democracy

JOSEPH E. STIGLITZ

債務論争の真実が明らかになった.それは共通貨幣と経済学の問題ではなく,権力と民主主義の問題である.

欧州委員会,ECBIMFの「トロイカ」が決めた融資条件の結果,ギリシャは暗黒に落ち込んだ.GDP25%が失われたのだ.これほど周到に,これほど破滅的な不況を,私は観たことが無い.若者たちは60%以上が失業している.

トロイカがこの失敗の責任を認めないのは信じがたいことだ.さらに信じがたいのは,ヨーロッパの指導者たちが失敗から全く学ばないことだ.世界中のエコノミストたちが,融資の条件が懲罰的である,と批判してきた.それを実行すれば必ず大幅な不況が起きるからだ.ギリシャほど急激に,財政赤字を黒字に転換した国はない.しかも,その莫大な救済融資のほとんどが,ギリシャではなく,民間部門の債権者,主にドイツやフランスの銀行に支払われたのだ.

なぜヨーロッパはこんなことをしたのか? なぜ国民投票までの数日だけでも,IMF融資の支払を延期しなかったのか? ヨーロッパは民主主義をどう考えているのか?

民主主義とユーロ圏の政治とは矛盾している.ユーロ圏諸国の政府は,そのほとんどが,通貨主権をECBに委ねることについて国民に問わなかった.それを問いかけたスウェーデンでは,国民に否決された.金融政策をインフレ抑制だけに熱心な中央銀行に委ねれば,失業が増加する,と彼らは理解していたからだ.

不平等の拡大に反対し,富裕層の歯止めない権力を削減することに忠実な政府がギリシャに存在することは,多くの指導者たちにとって都合が悪いから,チプラスの左派政権をこぞって非難し,辞任させたいのである.

75日の選択は,どちらも困難なものだ.YESは,果てしない不況を意味する.資産を売り払い,優秀な若者が流出してしまった,衰弱したギリシャが,ようやく債務を免除されるだろう.他方,NOは可能性を拓く.民主主義の伝統に立って,ギリシャが自分たちで運命を決めるのだ.

NYT JUNE 29, 2015

Greece Over the Brink

Paul Krugman

緊縮策が成功するケースでは,不況を避けて財政を再建する.典型的には通貨を大幅に切り下げて,緊縮策のもたらす不況を回避できるような,輸出増加をもたらす.しかし,ギリシャには自分たちの通貨が無い.この選択肢はないのだ.

だから私はGREXITを支持した.必ずしもユーロ圏から離脱しなくても良い.しかし,それに伴う金融的な混乱が大きなコストを意味する.預金者のパニック,銀行システムの崩壊,不安と不透明さは投資を失わせる.これは,チプラス政権を破壊する,債権者たちの政治的な介入だ.

しかし,ギリシャの有権者はトロイカを恐れるべきではない.3つの理由があるからだ.1.厳しい緊縮策には終わりが無い.2.既に最も深刻なことは起きてしまった.3.トロイカの最後通牒はギリシャの政治的独立を奪うものだ.

このような融資を計画するのは,マクロ経済学を何もまじめに扱わない,すべての点で間違ったことをしてしまう,空想だけで政策を支配するテクノクラートたちだ.これは分析ではなく,権力の問題である.


l  同性婚の合法化

NYT JUNE 30, 2015

The Next Culture War

David Brooks

アメリカのキリスト教は衰退しつつある.

キリスト教の後退は特に価値観で著しい.アメリカ文化はキリスト教の正当性を離れて,同性愛,婚前セックス,避妊,未婚の子育て,離婚,その他,さまざまな社会的価値で否定されてしまった.ますます多くのキリスト教徒が自分たちをアメリカ文化の主流から外れたと感じている.彼らは社会的なパーリア(のけ者)になることを恐れている.

保守派は連携して,性革命以来,長い文化戦争を闘ってきた.最高裁の判決にもかかわらず,多くの保守派の批評家たちは,闘う決意を強めている.

私たちは,形のない,流動的な社会に生きている.そこでは家族の紐帯も,社会の構造も,守るべき規範も弱く,壊れかけている.多くの子どもたちがストレスを感じ,社会資本を失ったコミュニティーで,共有する規範もない,その意味で野蛮な,性的・社会的環境で育つ.

社会的な保守派とは,社会のきずなを回復したいと願う者たちだ.彼らは無私の愛の上に築かれた信仰を生きている.

性革命の影響を取り除くことはできない.しかし,プラグマティックな闘いを通じて,この原子化され,寛容さや思いやりを失った社会において,愛や尊厳,規範,社会的交わり,優雅さを取り戻すために,優れたものを持っている.


l  中国株価の急落

FT MONDAY, 29 JUNE, 2015

China's Magic Tricks Can't Save Its Stock Market

William Pesek

習近平は,投資と輸出に過度に依存した成長から抜け出す構造改革よりも,この10か月間,株価上昇を演出してきた.それは国営企業に資金調達を容易にして,債務を減らすことができる.また家計は豊かになったと感じ,消費を増やす.もし株価が動揺すれば,政府が介入すればよい,と考えたのだ.

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The Economist June 20th 2015

Greece and the euro: My big fat Greek divorce

Greece and the euro: Down but not yet out

Charlemagne: The new awkward squad

American prisoners: The right choices

China and the Arab world: The great well of China

(コメント) ナイジェリアの特集がありました.しかし,詳しく読んでいません.

ギリシャ債務危機に関して,妥協は可能だが,双方は激しく憎み合っており,離婚=離脱に向かっている,という記事です.シリザの左派思想,反市場,反企業,は国内改革よりドイツからの資金を狙っている,と.こんな結婚は続けるに値しない.

スロヴァキアの姿勢はEU内の政治を考え,他の記事はGrexitの得失を考えます.ユーロ圏が,所詮,もう一つの固定レート制度だ,ということに投機の再現を予想します.

アメリカの囚人がどれほど多いか,それを減らす努力に関して,興味深い記事がありました.

何より強烈な,重視する記事の中身は,中国とアラブ世界との貿易・投資関係が深まっていることです.中国がアラブ世界の石油供給を管理し,この地域の安全保障に関与する時代は始まりつつある,と知るとき,自民党が示す安保法制の近視眼,底の浅さに,恐怖を感じました.

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IPEの想像力 7/6/15

何か質問はありますか? とゼミで尋ねました.

「ギリシャ債務危機はどうなるか? ユーロ危機はどうなるか?」 ・・・という質問は,意外に,ありません.学生たちは,皆,関心がないようです.

ギリシャの基本的問題は,財政赤字と対外赤字です.しかし,ギリシャ危機が特殊であるのは,そこがユーロ圏(ユーロ国)の一部であることです.ユーロを管理するECBや,ユーロ圏を動かすルールに対して,ギリシャ危機は深刻な問題を提起しました.

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危機の対応は,対外赤字の原因が何か,流動性危機か,支払不能か,それによって異なるはずでした.

しかし,ドイツやフランスの銀行が2010年に脆弱であったために,不良債権を処理できなかった,とエコノミストたちは指摘します.だから,アイルランドでも,スペインでも,ギリシャでも,不動産バブル後の不良債権処理を,公的融資(と民間銀行の協力)によって延期したのです.その事情は,かつてのラテンアメリカ,日本,現在の中国でも,起きていることです.金融システムの監督や金融政策の失敗,危機の発生と処理に,政治が重要な役割を果たします.

国際通貨制度改革で,政府債務の破産処理や組み換え交渉は常に重要なテーマでした.極端に所得の低い重債務国に対しては,IMFなどが債務を免除しました.債務がなくなるだけでなく,新規の融資や投資が起きて成長が回復するとき,初めて債務問題は解決します.

為替レートの変更(切下げ)で十分な輸出が増え,国内で債務を処理するための需要不足(不況)を緩和することが望ましい,とエコノミストたちは考えます.それ(切下げによる輸出のチャンス)は,エリートたちに私物化されている旧来の社会・政治システムの改革を進め,人々の参加や革新を刺激することにもなります.

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不況地域と好況地域との不均衡を調整するには3つの方法があります.1.不況地域が好況地域から金融・財政移転を受ける.そのためには,不況地域が全体として政治統合の下にあり,再建に向けたプランを受け入れることが重要です.2.不況地域から好況地域に,資産や労働者が移動する.こうして不況地域は消滅し,好況地域に吸収されていきます.あるいは,土地などの資産価格や賃金が十分に下落すれば,逆に,好況地域からの買収や投資が始まるでしょう.あるいは,3.不況地域と好況地域とが,その調整過程を分離し,それぞれ異なる貨幣と政策で実現する.そして,貿易を通じて,互いの国内均衡を維持できるように,為替レートを調整します.

ドイツの東西再統一で議論されたように,もし好況地域が不況地域からの移民を拒むなら,大規模な財政移転が必要です.移民も財政移転も黒字国のドイツが拒むなら,ギリシャは通貨を切り下げるべきです.

ギリシャがECBと協力すれば,J.ウィリアムソンが支持したBBC提案も可能です.かつての植民地通貨と同じような,ユーロに固定したギリシャ・ユーロが誕生します.その交換レートを,輸出を刺激するような水準に安定させます.

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A・・・おそらく,交渉によって,EUとギリシャ政府は,債務の免除や組換え,銀行の再編に合意する.ギリシャは成長のために構造改革を進め,長期的に,持続可能な財政を実現する.

B・・・もしくは,ギリシャ政府が,ユーロの代わりに政府債券を発行する.それは次第にギリシャ・ユーロとして流通する.資本規制と固定レートの弾力的な防衛にECBが協力する.ギリシャ・ユーロに対して,10%(あるいは,30%)の切下げを認める.

C・・・どちらの場合でも,EUは,輸出部門へのインフラ投資や貧困層への公的支援を行う.ECBの役割を明確にするため,銀行システムの安定化と政府債務との切り離しを進める.銀行システムを,EUの基準に従い,自己資本増強,再編・強化することで,緊急時にはECBの流動性供給が保証される.

D・・・持続可能な水準への債務削減を合意したら,成長に対する一定の割合を債務の返済に充てる条件で,ユーロ建債券を発行する.EUの財政規律として,社会保障や年金,税制を具体的に標準化する.その基準でギリシャの判定を総合的に示す.

それらが実施されない場合,EUはギリシャ政府の再編を求める.首相・大臣や政権政党の組み替え.あるいは,一時的に,中央銀行総裁や幹部職員であった者,もしくは,輸出部門の企業家に改革の実行を委ねる.

シリザの強硬派を追放する政党の再編,あるいは穏健派の分裂,政権交代が,経済改革と同時に進む.

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政治家が解決できない問題は,戦争に訴えるのではなく,国際機関を樹立することで,解決を調停や執行プロセスの監視,逸脱行為の審査と処分,に委ねました.それを拒む国(政権)は,単に,国際システムから排除されたのです.

日本がアジア諸国と,特に中国と,貿易,為替レート,金融政策,などに関する協力のルール(もしくは,相互に禁止する行動)を話し合うのは重要です.ギリシャ危機に関心がないのは,学生たちがそれを知らないだけでしょう.

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