IPEの果樹園2015

今週のReview

6/22-/27

 

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貿易促進権限 ・・・チプラスとヨーロッパ ・・・人民元と国際制度改革 ・・・ドイツの迷い

[長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  貿易促進権限

FT June 12, 2015

Obama reaps the whirlwind over trade

ED Luce

20年前,ビル・クリントンは,NAFTA5年以内に100万人の雇用を創出する,と約束した.その後,まったく逆に近いことが起きたのだ.クリントンは大統領の任期最後に,中国がWTOに参加するのを認めて,この新興の大国に対する貿易ギャップを一掃しようとしたのだ.ところが逆に,アメリカの貿易赤字は急増した.彼の後任者たち,特にバラク・オバマは,この竜巻のもたらした帰結に苦しんでいる.オバマは,現代のアメリカ大統領で誰よりも,大きな貿易反対論に直面しているのだ.彼の支持政党である民主党によって.

アメリカ政府・大統領には貿易協定を誇大に宣伝する悪弊がある.オバマはTPPが中国との貿易ルールを競う主要な成果と宣伝した.ケリー国務長官は,65万人の雇用が増えると約束した.エコノミストたちはそれを否定し,GDP0.4%しか増やさない,と考える.それは楽しいボーナスかもしれないが,これほどの条約成立を正当化するものではない.

確かに貿易は効率性を高めるものだ.しかし,すべての者に利益をもたらしはしない.それどころか,中国からの輸入はアメリカの生産者を減らし,雇用を大規模に奪った.民主党員の選挙区で生じた苦痛は,彼らが絶対に貿易自由化を支持しない理由となった.アメリカはこの15年間で600万人の雇用を失った.貿易は効率性を高めるが,それは雇用を減らす.効率性と公平性とは全く違うものだ.

FT Sunday, 14 June, 2015

Global trade agreements have a new role

Lawrence Summers

上院がウィルソン大統領の約束した国際連盟を拒んだことは,前世紀アメリカ外交における最大の後退であった.先週,下院が,修正しなければ,オバマ大統領のTPPを葬る,と決めたことは,重大さの点で劣らないだろう.グローバルなシステムが重要な局面で,アメリカは責任を放棄するというマイナスのシグナルを発したのだ.

アメリカは,中国によるAIIB設立を阻止することも加わって,参加することも失敗し,中国がその力を拡大するときに,アジアでアメリカの関与が失われることになる.アメリカの企業を犠牲にして,中国企業が躍進するだろう.

下院も上院もTPPを結ぶ交渉権限を認めてきたが,問題はアメリカの労働者を支援する調整支援プログラムである.共和党員は支持せず,民主党員はTPPを葬るために反対している.

TPPは,アメリカの国際経済戦略に占める役割を熟慮すれば,支持されるだろう.4つの点が重要だ.

1に,古典的な意味での貿易自由化が重要な時代は終わった.残されている関税や割当は小さく,日本のコメのように,文化的価値に深く根ざしたケースだけだ.貿易協定は,実際には,投資の保護や規制のハーモニゼーション,知的所有権のようなスタンダードの確立,を扱っている.協定による利益は,ケース・バイ・ケースで考えるべきであり,自由貿易論ではない.

2に,貿易協定を成立させることの政治的コストを,正しくバランスしなければならない.IMF改革,国際金融機関や国連への財政負担,によるアメリカの利益は大きい.貿易自由化を他国と協力し,また,多角的な制度化を支持して推進するべきだ.

3に,貿易協定のグループも,自然な分類としてのNAFTAと,明確な政治的戦略によるTPPとの違いがある.アメリカが中国に対して優位を得る,という攻撃的な説明になっている.しかし,将来,他の国と同じ条件で中国も加盟する可能性を考えることが重要だ.

4に,冷戦終結や,ラテンアメリカの債務危機後と同じように,中国が指導するアジアのルネサンスは,その初期段階で,新しい市場の誕生に向かっている.発展する経済に市場の制度を採用するよう促し,工業経済との取引を助ける貿易協定は,グローバル経済の創造にとって重要だ.新興市場の急速な経済発展をわれわれは助けてきた.資本とコスモポリタンなエリートにとって,それは非常にうまく機能している.しかし,新しいグローバル市場の優位を利用する手段を持たず,外国の低コスト労働と競争することを望まない中産階級は,つぶれてしまう.今,われわれの課題とは,より多くのグローバリゼーションより,すべての市民にとって有益なグローバリゼーションを確保することである.

グローバル企業だけでなく,経済的公平性,環境,労働者が移住する機会,金融的安定性,なども重要だ.TPPの成立とは,こうした国際経済外交に向かう兆候であるに違いない.


l  チプラスとヨーロッパ

FT June 12, 2015

Alexis Tsipras is approaching his Brest-Litovsk moment

Tony Barber in London

マルクス主義の経歴とロシアへの親近感を持つチプラス首相は,シリザの仲間たちとともに,21世紀のブレスト=リトフスク条約に直面している.

19185月に結ばれたブレスト=リトフスク条約は,レーニンとボルシェビキの仲間たちが,ロシアの権力を維持し,革命を継続するために,ドイツ=オーストリア軍と停戦しなければならず,多大の犠牲を受け入れた.すなわち,帝政ロシアのヨーロッパ領土の半分,ウクライナ,バルチック諸国を含めて,ロシアは全人口の4分の1を失った.ほとんどの炭鉱,他の産業の半分,肥沃な農地の3分の1以上に対する支配権を放棄した.

EU諸政府とIMFが求める条件は,ずっと軽いものだ.年金・労働市場・税制の改革,財政規律の長期的な維持である.それと交換にギリシャがユーロ圏に残るために必要な融資を与える.

しかしシリザは,民主的に選ばれた政府として,その公約を破れないと主張する.外国人の要求に屈するものだ,と.そして1918年にトロツキーがしたように,このドイツが要求している懲罰的な条件を利用して,ヨーロッパの労働者と兵士たちに革命を呼び掛ける.「緊縮策」を終わらせるべきだ,と.

EUIMFから見て,ギリシャとの交渉は時間の無駄であった.シリザ政権には経験が無く,先行の権力構造の腐敗を非難して,その助言を聴く気が無い.複雑な技術的条件を議論する準備が無かった.

そこにはギリシャ固有の内戦の歴史が影響している.第1次世界大戦,1946-49年の内戦,1967-74年の軍事政権,それに対する左翼学生の抗議行動,が政治の分断・両極化,戦闘的な姿勢を強めてきた.

しかし,2010年の救済融資以来,中道左派,中道右派,テクノクラート,シリザのようなラディカル左派のすべての政権が,公共部門の縁故主義は続けられないし,寡占企業体制を解体し,改革に抵抗する既得権を一掃するしかない,と認めるだろう.今やシリザも,ブレスト=リトフスク条約を認めた1918年と同様,真実を受け入れるときだ.

FP JUNE 12, 2015

Why Greece Should Reject the Latest Offer From Its Creditors

BY PHILIPPE LEGRAIN

救済融資を受けるべきだ,というのは間違いだ.これは債務者監獄に入った囚人が,なお,債務への支払を求められているのである.この融資は独仏の銀行を救済するために行われた.融資の9割は債権国に還流していた.今後はすべてが還流する.

ユーロ圏の通貨当局は,ギリシャ人の暮らしに何も責任を負わない.だからこれほど冷酷で,これほど愚かであるのだ.債務超過を続けることはデフレをもたらし,債務額を増やすばかりだ.公的部門は腐敗している.ギリシャの改革は重要だが,債権者が求めているのは財政規律である.これほど多くの失業者がいる国で,社会保障を削ることが改革ではない.

The Guardian, Monday 15 June 2015

Europe must save Greece to save itself

Timothy Garton Ash

ヨーロッパはギリシャを救済するべきだ.ギリシャがユーロ圏に残ることは良くないが,その離脱はもっと悪い.ギリシャが離脱すれば,その後のヨーロッパは,経済だけでなく,人的コストにおいても,歴史的にも,地政学的にも,現在とまったく違うものになる.

2つの幻想がある.1.ギリシャとドイツのチキンゲームは終わった.ブラッセルの不完全な妥協は続けられない.2.ギリシャ離脱の影響は小さい.わずか2%の経済規模しかなく,危機の波及は抑えられる.

アイルランドやラトビアのように,金融危機後の困難な調整を経験した諸国が,ギリシャ救済を許すはずが無い.ギリシャをEUに留める理由もない.すでにチプラスがIMF融資の返済を止めたとき,たった1日でギリシャの諸銀行から5億ユーロの預金が引き出された.

幻想を捨てるべきだ.ユーロ圏加盟が離脱を許すものであれば,今後の経済不安がただちに危機へと向かうだろう.また,離脱後のギリシャでは,経済市場にかつてない生活水準の悪化が起きるだろう.それはEUやユーロ圏の魅力を失わせ,他国の新規参加を断念させる.

離脱後のギリシャ政府は,ウクライナに関してロシアへの制裁に同調しないだろう.モスクワはギリシャ正教の侵攻を共有するギリシャを歓迎する.トルコはEU加盟を目指さず,地域の覇権国家を目指す.中国はすでにアテネの港に投資しており,ヨーロッパに向けたインフラ投資を拡大して,EUの地位を奪うだろう.

Project Syndicate JUN 15, 2015

A Rule of Law for Sovereign Debt

JOSEPH E. STIGLITZ and MARTIN GUZMAN

政府はときに債務を組み替える必要がある.そうでなければ政治的・経済的安定性が損なわれるからだ.しかし,国家のデフォルトを定めた国際的な法律はない.そのため債務の組換には多大なコストが強いられる.政府債務の市場は機能せず,不要な紛争とコストのかかる遅延がともなう.

最近では,アルゼンチン,ギリシャ,ウクライナがそうだ.政府債務額を持続可能な水準に下げるように,どのように管理するべきか? 通常,債権者が不当に強いために,その意志を押し付ける.その結果は不平等なだけでなく,効率的でもない.

合意による解決は不十分だ.国内では破産法によって効率性と公平性を高めている.しかし,政府債務のデフォルトははるかに複雑だ.法律が重なり,要求できる資産の正しい定義が無い.

完全な国際破産法は無いが,多くの点で合意がある.裁判による解決を一時的に停止する.これにより,ハゲタカ資本の介入を認めない.交渉を促すために返済の猶予期間を融資によって与える.それゆえ債権者の一方的な条件だけで決まらない.いかなる国も基本的な権利を放棄しない.その時に権力を持つ悪辣な政治家によって食い物にされない.

重要なことは,こうした「ソフト・ロー」の履行を促すメカニズムだ.監視委員会が債務組み換えの交渉過程を促す.それは一方の側に偏ってはいけない.債権者を組織するIMFは適当でない.むしろ国連か,グローバルな新制度が望ましい.

Project Syndicate JUN 16, 2015

The Endgame in Greece

JEFFREY D. SACHS

ギリシャはその立場を明確に示した.国民の生活に責任がある,と.ヨーロッパは選択しなければならない.ギリシャを救済するのか? 緊縮の条件を緩和するのか? 債務を免除するのか?

ギリシャの返済条件は,1933年のドイツ賠償金を思い出させる.もちろん,ヨーロッパはギリシャのヒトラーを恐れる必要が無い.ヨーロッパの政治家たちは重要な問題を避けている.

1次世界大戦後もそうだった.債務諸国が自分たちの所得を債務の返済に使うのは,せいぜい数年が限度である,とケインズは警告した.また,ヨーロッパ諸国はギリシャのデフォルトが生じるリスクを軽視している.まるでリーマン・ショックの前にハンク・ポールソンが自信を示したように.

ギリシャ離脱後のユーロ圏は,その非可逆性を否定し,市場は2度とユーロの永続性を信用しないだろう.パニックと銀行の取付が新しい循環を示すはずだ.

Bloomberg JUN 17, 2015

What If Greece Just Disappeared?

By Leonid Bershidsky

David Mitchellの小説 "Number9Dream"では精神科の患者がベルギーを消滅させる.われわれも,ギリシャが消滅したらどうなるか,考えてみると良いだろう.

ある朝,目が覚めるとギリシャはなく,バルカン半島の中にブルガリア,マケドニア,アルバニアがあって,その南に小さな国ヘラスがあるだけだ.ギリシャがユーロ圏やEUから抜けることは,失った身体を痛いと感じるようなものだ.

ギリシャの株式市場,債券市場,GDPが消滅したら,それは確かに悲劇であるが,画期的でも,グローバルな衝撃でもない.ヨーロッパ株式市場の0.2%,EU経済の1.5%でしかないからだ.輸出入額はEU1%である.

確かに債務は3240億ユーロもあるが,流通しておらず,そのほとんどはヨーロッパ諸政府に負うものだ.ギリシャのデフォルトで誰も破産しない.ギリシャはすでに10年間も利子を支払っていないので,それが失われて財政のバランスに苦しむ国もない.またEFSの融資がある.まだギリシャ債券を持っている民間人は,そのリスクをわかって保有しているのだ.

このEUに加盟しない,債務を消し去ったヘラスは,ソビエト連邦解体で生じた小国に似ているだろう.それらの諸国も,ロシアが債務を引き受けた.帝国を失ったロシア人たちのコンプレックス,市場への信頼再生,などを含めて,純粋に精神的な喪失感であった.ロシアが1990年代初めに処理したより,現在のEUはうまく処理できるだろう.むしろ,ギリシャ離脱は残った諸国によりメッセージとなる.

ギリシャも単独で運営するより条件を得る.チプラス首相が,債権諸国の押し付けた「破滅的政策」,と呼んだ政策によって,成長のための基礎は与えられた.今や,ギリシャの労働市場はドイツよりも弾力的であり,単位労働コストの低下,ビジネス環境の改善により,競争的な国になった.貿易部門(農業,製造業,輸送,観光)は,ドイツよりも,経済に占める割合が大きくなった.

デフォルトと離脱後のヘラスは,通貨価値を切り下げて,銀行を国有化し,アイスランドがやったように,IMFを含む,すべての者が称賛するだろう.

もちろん,ヘラスは債券を発行する信用を得られないだろうが,より自律的になり,財政規律を守るだろう.ロシアのプーチンが「友人」として大規模に融資してくれるなら別だが,ロシアにその余裕はない.

いずれにせよ,多くのヨーロッパ諸国がユーロ圏やEUの外で生き残っている.債務の負担を取り除けば,ギリシャもそれに挑むだろう.


l  人民元と国際制度改革

FP JUNE 16, 2015

4 Trillion Reasons China’s Currency Isn’t Ready for Prime Time

BY PATRICK CHOVANEC

人民元はどうなるのか? 中国がIMFの発行するSDRに人民元を加えるように求めたことは,人民元が世界通貨になる決定的な一歩なのか?

しかし,重要なことはIMFが人民元を使うかどうかではなく,他に誰が使うか,である.

国際準備通貨になるために重要なことは2つある.第1に,それは取引手段として,また,価値の保蔵手段として,望ましいこと.第2に,それは海外でも人々が銀行預金として好んで保有すること.アメリカも第2次世界大戦の始まるまで,こうした条件を満たさなかった.

1944年のブレトンウッズ会議で,アメリカのドルが世界の準備通貨となり,その価値は金と固定された.しかし,戦後の問題がただちに明白となった.ヨーロッパにドルが無く,それを稼ぐこともできなかったのだ.アメリカが貿易,援助,投資によってドルを供給しなければ,ドルによる世界経済は崩壊しただろう.

ドル不足の解決策は,マーシャル・プラン,そして引き続いて行われた各国の通貨切下げだった.結局,アメリカは巨額の貿易赤字を出すことでドルを輸出した.それはアメリカが今日まで投資に有利な場所でなかったら,維持し続けることはできなかっただろう.

ブレトンウッズに比べてSDRの地位は非常に低かったが,その原理は残されている.SDRを介して,いかなる国も国際準備通貨を供給しなければならない.貿易赤字,援助,投資である.しかし,中国の成長モデルは全くこれに反している.中国は,自国の通貨ではなく,他国の通貨を中央銀行の準備として4兆ドルも保有している.

SDRIMFの計算単位として,その価値は主要通貨の価値から算出され,IMFによって加盟諸国に配分されている.それは現実の通貨に対する引換券である.人民元をSDRに加えることは,SDRを保有する諸国が人民元も準備として認めたことになる.

しかし,人民元はどこから来るのか? 中国が対外赤字を出しても,これまでの外貨準備を減らすだけである.アメリカ・ドルが世界通貨の地位を追われるのではなく,中国の国際収支が大幅に変化しないなら,それを強め,永続化することになる.また,外国投資家が中国に投資する場合も,貨幣のフローは流入である.SDRの厚生通貨に入ることにより人民元が魅力的になるとしたら,それはますます人民元の供給を減らし,国際準備通貨になるのを難しくする.

人民元が国際通貨になるには,中国政府が認めている世界経済に占める中国の役割とまったく違う姿を求められる.


l  ドイツの迷い

NYT JUNE 16, 2015

Why Germany Can’t Lead Europe

Jochen Bittner

「ヨーロッパ大陸の果てまで見渡せるほど高い建物があったと思ってほしい.そこからあなたは何を見るだろうか?

東には.帝国の栄光を回復するために苦闘し,独裁に訴える旧大国があり,西には,大西洋の向こうに,現在の超大国が衰退し,ヨーロッパンの周辺に安全を確保できず,特に中東では国家が消滅している.

自分たちの足元には,超大国になるはずが,頭と体を一つにまとめることだけで精いっぱいの大陸が広がる.

ドイツ政府は債務危機後の諸国に融資を行って,その安定化を図ってきた.しかし,問題は今やもっと深刻だ.ヨーロッパの自信を回復しなければならない.ヨーロッパ市民はめまいに襲われている.めまいは,新しい,より堅固な立場を得る最善の方法だが,ヨーロッパには28の頭脳があって,これをまとめるには強い意志と政治的才能が必要である.

今まで,ヨーロッパはその歴史に依拠してきた.しかし,新世代の新しい歴史観が現れてそれに対抗し,ブラッセルを超国家体制として敵視する.若者たちの多くは失業し,古いヨーロッパを衰退の管理でしかないと嫌っている.

ドイツの官僚たちは,ブラッセルではなく,ベルリンがその答えを示すことを理解している.ユーロ危機で,ドイツはヨーロッパの超大国になった.ドイツには多くのソフト・パワーがある.しかし,ドイツの役割は過剰に拡張してしまった.危機が多すぎて,政府の手に負えないのだ.ユーロ危機,ウクライナ危機,ヨーロッパ統合の危機.

ドイツはめまいの中で,短期的な緩和策を提供するが,長期的な展望は示せない.ヨーロッパには様々なエンジンがあったけれど,その体制が整わない.フランスの衰退,イギリスの離反,ポーランドの保守化.

ヨーロッパはドイツの助けを求めているが,ドイツも助けを求めている.

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The Economist June 6th 2015

Entangled

America and the Middle East: A dangerous modesty

Devolution in Britain: Time for civic surge

England’s cities: Spreading their wings

Politics in Japan: Right side up

Japanese companies: Winds of change

(コメント) オバマ外交の慎重さ,間違った謙虚さが,非常に危険な中東情勢をもたらした.次のアメリカ大統領に何を求めるべきか?

イギリスの緊縮策が選挙によって勝利した以上,保守党はブレアの地方都市復活戦略を横取りします.

欧米には理解できないほど,日本会議は政治の右傾化に成功したのか?  日本型企業が次々に世界競争で敗北し,生き残るために,いろいろ欧米型のドライの経営者を育てる決断をしたのか? 私は,未来が西洋化でも国粋化でもない,と思います.

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IPEの想像力 6/22/15

安全保障,通商条約,国際通貨.これらは同じ政治=経済秩序の異なった側面です.

アメリカのオバマ政権は,エジプトやリビアの独裁政権が崩壊するのを支持し,その後の民主化に対して,あまりにも安易な転換を期待したかもしれません.学生や歯医者の志願兵たちが,シリア政府軍やイスラム国家に圧倒されるのを,あまりにも利己的に容認したかもしれません.その後の混沌を見れば,オバマ外交の素人臭さ,理想主義と敗北主義に,プロの外交官や軍事専門家は嘆息するのでしょう.

しかし,S.ウォルトやR.カプランは,オバマ政権の果たした役割を,ナイーブや理想主義による選択とは考えていないと思います.中国の台頭と世界金融危機を経て,アメリカは中東でもアジアでも,バランス・オブ・パワーが再現し始めたことを認め,国際秩序の再編を指導したいと考えているからです.アメリカには軍事力だけでなく,技術力や消費市場があり,シェール・ガスや金融センターも,高等研究機関も,備わっています.

国会やアメリカ議会の論戦を詳しく聞いたわけではありません.しかし,ニュースなどで見る限り,私は安保法制と憲法改正も,TPPの成立も,必要だと思いました.基本的な条件についても,さまざまな修正を受け入れ,次の国会で,合意形成を推進するべきではないでしょうか?

日本の軍事力は,戦争を国際紛争の手段として選択しない,と定めた平和憲法を,自衛権を他国と共有する形に変えることで,明確に保持するのが正しい,と思います.個別的か集団的か,をめぐって自衛権と安全保障を議論するのではなく,共通の安全保障に向けて,自衛権を補完するような協力関係を築くことは認めてよいでしょう.そうすれば,自衛隊は,日本の国土と国民の生命,財産,基本的な権利を守るために戦うことができます.

安保法制の議論を頓挫させたのは,高村氏?が曖昧な「周辺事態」からさらに曖昧な「重大事態」に変換して,憲法を否定したからだと思います.他方で,核の傘や境界線をめぐる紛争,ジェノサイドの防止,国際協力は,自衛権で説明できません.国連安保理やアメリカの関与を必要とするだけでなく,アジア地域の安全保障会議を充実させ,すべての関係諸国を含む柔軟な枠組みを目指すべきではないでしょうか?

尖閣,竹島,北方領土,拉致問題の解決とは何か? 中国の台頭と平和を維持するには,何が必要か? それらが成功するとしたら,単独の決断ではなく,次の国際秩序が誕生するときです.

アメリカが国際秩序のエンジンであったとき,ドル不足,マーシャル・プラン,ドル過剰,トリフィンのジレンマ,SDR創設,変動レート制,資本取引の自由化,などが,その性格を変えました.中国の参加は,輸出指向型成長モデル,自由市場と市民社会,共産党のガバナンス改善,民主主義的政治体制に向けた独自の模索,大気汚染,所得格差と社会保障の整備,などとして,貿易,輸送,通貨・金融,安全保障に反映されます.

アメリカのTPPも,日本の安保法制も,ドイツのユーロ圏も,中国のAIIBや埋め立ても,その平和と繁栄が国際秩序を再編するものとして,他国の平和や繁栄に影響することを,積極的に,他国に説明しなければなりません.それはナイーブでも,理想主義でもなく,それらを活かす制度を築く力なのです.

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