IPEの果樹園2015

今週のReview

6/8-/13

 

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中国のバブル崩壊 ・・・ギリシャ債務危機交渉 ・・・南シナ海の米中衝突 ・・・金融危機後の政策不安 ・・・アメリカの恐怖 ・・・日本のピーター・パン

[長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  中国のバブル崩壊

FP MAY 28, 2015

What Happens When Everyone Is a Chinese Stock Market Genius

BY DAVID WERTIME

528日,上海総合指数は6.5%の驚異的な下げとなった.5567日の3日間で8.5%下げた.そのときよりは小さいが,これによって証券価値が14000億ドルも失われた.口座一つ当たり,7000ドル以上だ.

過去6か月間,中国の資本市場は,過去数年間になかった上昇を示し,抜け目ない投資家たちを豊かにした.年金生活者も,農民も,大学生も,都市の出稼ぎ労働者や行商人も.中国には恐怖と欲望が至る所にあるが,今はそのすべてが株式市場に集まっている.市民たちは中国経済が着地する前に,豊かになる最後のチャンスに殺到しているのだ.

この強気市場は,政府のメディアによる大規模な協力で始まった.住宅市場が市民の貯蓄を担ってきたが,2014年に減速してから,投資家たちは新しい投資先を求めていた.若者たちが,特に市場に活発に参加した.

中国経済の減速とともに,深く,流動的な,透明性の高い資本市場が経済の前進に欠かせない.平均的な中国人が,多くの企業の中から,しかも,低金利の国営銀行預金からではなく,自分たちの貯蓄を失ってしまうようなことがないように,生産的な企業に投資できることだ.

Bloomberg JUN 2, 2015

Is China Repeating Korea's Mistakes?

William Pesek

今,中国は日本と同じ衰退の道をたどっていると見る者が多い.すなわち,多年のデフレがグローバルな影響力を失わせるのだ.実際,北京の債務処理は1990年代の日本と気味悪いほど似ている.

しかし,より詳しく見ると,もっと良い推論は韓国の債務処理である.中国政府の個人投資家を増やす試みは,まさにソウルの取った政策とそっくりだ.

1997年の金融危機のとき,韓国は家族が支配するチェボルの重圧につぶされた.政府は債務の負担を消費者に移動させた.税制や広報を駆使して,韓国は成長のために家計が債務を増やすことが愛国的であると訴えたのだ.

今でも,韓国の家計が保持する債務はGDP81%に達しており,アメリカやドイツよりも高い.韓国は世界経済で地位が下落し,デフレに向かっている.北京がしていることもまったく同じだ.過去12カ月で,政府の奨励する個人の株式購入は上海株価を141%,シンセン株価を188%も上昇させた.


l  ギリシャ債務危機交渉

Project Syndicate MAY 30, 2015

Greece, Argentina, and the Middle-Income Trap

ANDRÉS VELASCO

マクロ経済の失敗以外に,ギリシャとアルゼンチンが共有する特徴とは何か? その答えの一つは,両国がいわゆる注所得の罠に最も長く陥っていることだ.アジア,東欧,ラテンアメリカの諸国が国際的な中所得に達しつつあるとき,この問題を心配している.

アジア開発銀行や世界銀行の基準で,アルゼンチンは1970年に中所得の上層になったが,それから40年間,2010年に高所得に入るまで,この分類であった.ギリシャは1972年に入り,高所得に入るまで28年かかった.

この罠は何か? アルゼンチンとギリシャには,政治的かつ経済的な問題があった.Why Nations FailDaron Acemoglu and James A. Robinsonが主張したように,権力が少数者の手に集中している社会では,革新や成長が起こりにくい.なぜなら革新してもその成果が自分のものにならないからだ.アウトサイダーは富を得られず,インサイダーに対抗できない.その結果,政治的な排除の仕組みが持続的になる.

これは,貧困の罠を説明する.たとえば,強力なビジネス・エリート層が課税や競争促進を拒むことは,ギリシャやアルゼンチンの財政赤字を説明している.また,公務員の強力な労働組合は,彼らの利益を脅かす変化に拒否権を行使する.それがギリシャ政府をデフォルトとユーロ圏からの離脱に追い込んだ.

民主的な制度の未発達が,政治の貧困から経済の貧困をもたらす.輸出が停滞する国は,成長が乏しく,社会的移動性を欠き,企業家に富む中産階級が育たない.政治権力はますます拒否権を行使することが容易になる.

NYT JUNE 1, 2015

That 1914 Feeling

Paul Krugman

アメリカ政府の高官は,ヨーロッパの政策論争に口を挟むことには慎重である.EUはそれ自体が経済的な超大国であり,アメリカが影響力を行使するには大きすぎるし,裕福すぎるからだ.

しかし,アメリカのジャック・ルー財務長官がそうしたことは理解できる.ギリシャをユーロ圏からの離脱に追い込むことは甚大な経済的・政治的リスクであるにもかかわらず,ヨーロッパが夢遊病者のように,そのような結果に向かって進みつつあるからだ,ルーは目を覚ますように警告したのだ.

Christopher Clarkの最近の名著“The Sleepwalkers”が第1次世界大戦の起源に関して叙述したように,1914年にはそのようなことが起きたのだ.プライド,無関心,極端な誤算によって,ヨーロッパは避けることができたはずの,避けるべきであった崖から,飛び降りた.

ギリシャと債権諸国との間で合意すべきことは明確である.ギリシャには支払う金がない.借り入れることで支払えるが,ギリシャはそうするつもりがないし,できない.なぜなら借り入れには新しい緊縮策がともなうからだ.

交渉が成功するには,ギリシャがわずかでも「プライマリー・バランス」で黒字を出す.金利削減や債務の減額,返済延期はどうか? それらは重要な中身であるが,ユーロが枯渇して銀行システムが危機に陥り,ユーロ圏離脱や国民通貨の発行を強いられることに比べたら些細なことだ.こうした事態を避けることはすべての者の利益になる.なぜ交渉は相互の利益を実現できないのか? 

その理由は,一部は,相互の不信である.ギリシャ国民は,多年にわたって自国が占領地のように扱われ,無慈悲で無能な総督に支配されたように感じている.他方,ヨーロッパの債権諸国は,ギリシャの過去の記録から見て無理もないことだが,ギリシャ政府を信頼できない,無責任だと考えている.

それ以上に,主要なプレイヤーが,破局に関して異様に熱狂し,それを進んで,あるいは熱狂的に受け入れようとしていることだ.それは戦争を望んだ「1914年の精神」の現代版である.ギリシャ離脱の影響は抑制できるし,ギリシャを排除すれば,その後の逸脱行為を防ぐ見せしめにできる,と考えるからだ.

それはとんでもない失敗である.短期的にも,危機を抑制できる保証はない.しかもギリシャはEU加盟国であり,その危機は必ず波及する.要するに,危機はギリシャだけの問題ではないのだ.スペインでも,緊縮に反対するPodemosが重要な地方選挙で勝利した.ある意味で,ギリシャが回復することは,大陸全体に反対性の波を強めるだろう.

こうしたことはすべて回避できる.しかし,彼らは善良な意図から,失敗を受け入れる準備に向かっている.

Project Syndicate JUN 2, 2015

How to Default on Sovereign Debt

ODETTE LIENAU

交渉による解決が望ましいが,それは確実ではない.デフォルトにも優劣があり,ギリシャ政府は3つの点に注意するべきだ.

1.非難合戦をするな.・・・デフォルトは,たとえ長期には利益があるとしても,短期的に大きな苦痛をともなう.しかし,同じ債権者,国際金融界と再会するのであり,誰かを非難することは,その後の交渉を難しくするだろう.

2.デフォルトを説明せよ.・・・さまざまな極端な説明が飛び交うことになる.デフォルトは大失策であり,回復は不可能だ,という.他方,自国も債務をかかる国はその可能性について容認する姿勢を示すだろう.事態は単純な正誤問題ではない.債務国もすべての債務を破棄するのではなく,一定の債務については,新しい政策パッケージの中で,返済する意志を持っている.

3.債務を返済せよ.・・・それは矛盾ではない.一定の条件で返済を始めることは国際金融市場で信用力を回復することにつながる.

Project Syndicate JUN 4, 2015

A Speech of Hope for Greece

YANIS VAROUFAKIS

194696日,アメリカのバーンズ国務長官は,“Speech of Hope”という有名な演説を行った.そこでバーンズは,アメリカがドイツと向き合う心の変化を明確にし,敗北した国に復興と成長,正常化へのチャンスを与えること,を説明した.

その2年前,1944年のモーゲンソー財務長官の計画では,ドイツを農業と牧畜の国に変えることが目指されていた.1945年のポツダム宣言でも,ドイツはすべての重工業を解体するはずだった.バーンズの演説は,こうしたドイツの脱工業化を逆転するものだった.

こうした変心がなければ,千五のヨーロッパは平和かつ民主的な形で統合化できなかっただろう.そして今,ギリシャでも,同じような変心が求められている.

誰がその演説をするのか? 私はドイツの首相,アンゲラ・メルケルだと思う.


l  人民元と経済運営

Project Syndicate JUN 1, 2015

China’s Jobless Growth Miracle

KEYU JIN

中国の高成長は家計にほとんど利益をもたらさなかった.それは工業化に偏った政策が採られたからだ.資本集約的な産業が拡大し,雇用を増やすことは少なかった.アメリカでは労働者の80%がサービス部門で雇用されているが,中国では36%である.

低成長においても雇用を増大させる経済こそ,政府は目指すべきだ.


l  南シナ海の米中衝突

The Guardian, Monday 1 June 2015

Xi Jinping’s China is the greatest political experiment on Earth

Timothy Garton Ash

「習にはできるのか?」 これが現代世界の最大の政治問題である.「そうだ,習ならできる」という者もいるが,「いや,彼にはできない」という者もいる.誰にもわからない.

習近平主席の下で北京が攻撃的な姿勢をとることに対して,アメリカでは,中国に対する政策を転換するべきか(封じ込め政策への転換),大きな論争になっている.南シナ海での大規模な埋め立て.また,安価な労働力の供給が枯渇した後.経済成長を維持できるか,という問題を懸念している.他の国以上に,中国の外交や経済は,政治システムの意思決定の質によって決まるのだ.すべては政治である.

習は,経済や社会の困難な時期に,トップダウンで解決することを考える.市場の「見えざる手」と,共産党・国家の「見える手」を使い分ける.反対派を追放し,レーニン主義の政党を規律強化と再活性化によって利用する.レーニンであり,プラトンであり,孔子である.

それは,自由で批判的な討論,独立した市民の行動,NGO,などを重視する中国人にとって,非常に不都合なことだ.市民権を求める指導的な弁護士,活動家,ブロガーが逮捕され,有罪となり,投獄されている.

「習ならできる」という人々は,特に政府の外では,残念だと認めつつも,改革が進んでいることを指摘し,中国の特殊な条件を説明する.しかし,もし彼らの言うような改革が成功するなら,それもまた問題となる.西側の民主主義にとって,特に発展途上諸国に向けて,競争的なモデルが提供されるからだ.もはや2000年に入ったころ西側が自慢していた民主主義的な資本主義の成功は,内外において(イラク戦争,金融危機)ひどい失敗を経験した.

リベラルな,民主的な体制を好ましいと思う私は,それでも中国の友人たちに,革命的な変化ではなく,進化することを望む.それが,何よりも地域の戦争と平和を決定する,と思うから.共産党体制が危機に陥り,動揺するとき,近隣地域において,ナショナリストのカードを利用する衝動を抑えることは難しいだろう.それはすでに数十年にわたって,近年の歴史の選別的な解釈,恥辱の150年という物語により,国民に準備されているからだ.

だから習が,鄧小平のように,川底の石を探って慎重に進む,プラグマティズムを失わないでほしいと思う.「習ならできる」という人々も,より広い,より長期の問題には答えられない.2020年には,どうなっているのか?

FP JUNE 1, 2015

Riding the Tiger of Anti-U.S. Sentiment in the South China Sea

BY BETHANY ALLEN-EBRAHIMIAN

政府当局は,ナショナリストたちによる世論形成を利用している.より穏健な意見が出るのを検閲している.しかし,こうした意見を広めることで,政府はアメリカとの軍事衝突を避けられなくなるだろう.「中国人は戦争を恐れない.弱者になることを恐れるだけだ.」

Project Syndicate JUN 2, 2015

China’s Pursuit of a New World Economic Order

ZHANG JUN

中国経済の将来がどうなるか,意見は分かれている.しかし,彼らが無視している重要な問題は,既存の世界秩序の下で,中国は成長を続けられるのか? という点だ.

アメリカが支配する現在のグローバルな秩序は,中国の台頭に合わせて,その調整を受け入れるのか? あるいは,中国は自分自身にあったグローバルな秩序を構築するべきなのか? その答えは,まだ明確に出ていない.

人民元をSDRの構成通貨に入れる,という議論が起きている.今は,USドル,ユーロ,円,ポンドで構成しているが,人民元もこれに加えるべきだ,というのだ.IMFのラガルド専務理事は,時間の問題である,と答えて,中国メディアが誇大に伝えた.元FRB議長のバーナンキは,中国の国内改革を進めれば,という曖昧にした答えであった.アメリカがIMFで拒否権を行使する以上,こうしたことは議論しても意味がない.

人民元が国際化を目指すのは,アメリカの金融政策によって制約されている状態を抜け出したいと考えるからだ.アメリカが金融引き締めを行えば,中国が不況であっても,金融引き締めに従うことは望ましくない.中国企業が貿易や海外投資を行うにも,アメリカドルとの為替レート変動に制約されることは望ましくない.中国は世界最大の市場であり,世界最大の輸出国であるのに,アメリカは中国を排除したTPPTTIPを交渉している.

だから中国は,この10年において,経済力を新しいグローバルな秩序に向けて行使し始めた.「ワン・ベルト,ワン・ロード」宣言やAIIBだ.人民元がドルに代わることも,予想外に,早く実現するだろう.この10月の評決でIMFが人民元をSDRに加えるかどうかにかかわりなく,徐々に,中国にとって望ましいグローバルなシステムへの転換は進むのである.


l  金融危機後の政策不安

Project Syndicate MAY 31, 2015

The Liquidity Time Bomb

NOURIEL ROUBINI

金融危機に対応したマクロ的な金融緩和は,新しい規制など,金融資産市場を非流動的にしている.この組み合わせは,長期的な非常に危険である.

なぜマクロの流動性供給と市場の非流動化が起きるのか? 市場の高速化high-frequency traders (HFTs),固定収益の資産が市場で取引されなくなっていること,解約可能な市場型ファンドが増えていること(取り付けのパニックを起こす),価格変動を抑制するマーケット・メーカーが減ったこと.

結果的に,バブルや次の崩壊を強めるだろう.


l  アメリカの恐怖

FP MAY 29, 2015

Chill Out, America

BY STEPHEN M. WALT

アメリカの外交専門家や安全保障担当者が,繰り返し,アメリカに及ぶ危険な世界の秩序崩壊を問題にしている.ますます大きな危険が迫っている,というのだ.

しかし,アメリカ人が直接の脅威にさらされているとは思えない.北アメリカを征服し,第1次,第2次世界大戦,そしてスターリンに勝利したアメリカが,お化けや幽霊,ちっぽけな独裁政府,アメリカ陸軍の2個師団にしか及ばない兵士を展開して,ほとんど何の価値のない土地に占領するイスラム国家を,本気で恐れるべきだろうか?

これほど人々に恐怖を広めるのは,専門家や機関がそれを利益と見ているからだ.防衛予算を削ることが無いように,戦争を正当化した政治家たちが選挙で敗北しないように,戦争の拡大や過度の秘密保持,諜報行為,外国における標的の殺害,を正当化したいからだ.そして,メディアはこうしたニュースで利益を得る.

そして残念ながら,こうした外部の脅威を誇張するほど,われわれは本当に重要な問題から関心をそらされてしまう.サダム・フセインやアルカイダにわれわれが費やした財源と生命は,まるでその脅威に見合うものではなかった.むしろ,外交の失敗をもたらす自己満足や洞察の欠如は,他方で,金融危機を防ぐために規制や監視をするべきことを怠ったと考えるべきだ.連銀の救済資金だけで,6兆ドルから14兆ドルを費やし,国民一人当たりで5万ドルから12万ドルを失ったのだ.最も恐るべき脅威は,北京からではなく,アメリカ議会から生まれた.

アメリカ自身がその足を撃ち抜く途方もない才能を,もっと恐れるべきだ.


l  日本のピーター・パン

FT June 4, 2015

Peter Pan inspires Japan monetary policy

Patrick McGee in Hong Kong and Robin Harding in Tokyo

金利が非常に低い日本では,人々がインフレになると信じることでしか,経済を刺激することはできない.それが日銀の黒田総裁にインフレの約束を繰り返し守るように断言させるのだ.

ピーター・パンの話にあるだろう.もし飛べるということを少しでも疑うなら,その瞬間から永久に人は飛べなくなるのだ,と.

NYT JUNE 4, 2015

A New Role for Japan’s Military

By SHINICHI KITAOKA

憲法9条を改正するべきだという主張は,その前半の戦争放棄,ではなく,後半の陸海空軍を持たない,という部分を改正することである.1954年,日本はすでに自衛隊を持った.日本は自国の防衛と国際秩序に従うのであり,現状を変えるものではない.

Bloomberg JUN 4, 2015

Japan's Peter Pan Problem

By William Pesek

中央銀行の政策が,ピーター・パンのおとぎ話に依拠して進められることに,私は悲痛な感じがした.しかし,その話は考える価値がありそうだ.

ピーター・パンは大人になることを拒んで,ネバーランドという小さな島に住む.12700万人の日本には不適当なたとえだ.むしろ『不思議の国のアリス』がよいだろう.他方で,成長することのない黒田の量的緩和は,ピーター・パンに似ている.

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The Economist May 23rd 2015

Geopolitics in the Gulf: The new Saudis

Saudi Arabia: The challenged kingdom

Europe’s Green parties: Verdant pastures

Free exchange: Basically unaffordable

(コメント) サウジアラビアの変身が議論されています.石油の富とイスラム教の聖地を持つサウド家の領土が,イランによる国際秩序の再編に刺激されて動き始めたようです.

ヨーロッパの緑の党と,ベーシック・インカムについて,関心を持って持ちました.新しい政治運動が生き残るかどうか,また,新しい政策思想が実現するかどうか?

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IPEの想像力 6/8/15

戦後70年を記念する安倍首相の談話について,首相を助ける懇談会の座長代理である北岡伸一氏が書いています.「歴史認識と謝罪 別の議論」(読売新聞67日朝刊 地球を読む)

歴史認識については,日本だけの問題ではなく,中国や韓国,アメリカにも望みたいことがいろいろある,と短く指摘します.「談話」がこれに正面から取り組むものであることを,私は期待します.

ところが,メディアは「侵略,植民地支配,反省,謝罪」の4つのキーワードをめぐって,表面的な関心を示す.これを批判して,北岡氏は考察します.

「侵略も戦争も,昔からある.問題はその違法性である.かつて戦争も侵略も,必ずしも悪いこととはされていなかった.」 「植民地支配も,かつては違法ではなかった.」

これは為政者の視点です.権力を握り,統治をおこなう者が,何をして,何をしてはならないか,特に,国家を超えて,それを制限することができるのか,今も議論され続けています.北岡氏は,欧米諸国が第1次世界大戦のあまりの惨禍に驚いて,また,アメリカ大統領の植民地主義を廃棄し,国民国家を原理とする提案に妥協して,為政者の手を縛る方向に転換した,と述べています.しかし,当時,日本はこの流れに逆らったわけです.

大恐慌の中で,アメリカは高関税政策に転換し,その影響で各地のブロック経済化が強まりました.ドイツ,イタリア,ソ連,そして,日本でも,平和的な経済発展より,軍事力による植民地拡大が優位を得たのです.北岡氏は,この無謀な戦争で,一般市民や捕虜が受けた劣悪の待遇,南京大虐殺,従軍慰安婦のことを.過去の過ちとして認め,反省しなければならない,と考えます.

戦後の日本が,この反省に立って,アメリカの築く国際秩序のもとで,平和的な経済発展を遂げたことは,さらに将来の世界秩序にも積極的に貢献する姿勢として,現在の安全保障関連法案も併せて,謝罪より重要だ,と主張します.

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帝国の終焉は,国際秩序の歴史的な転機となります.中東が今もそうである,と指摘するだけでなく,R.D.Kaplanは帝国システムの再生が必要であるとまで考えます.それは中東の広い地域で,ヨーロッパのような国民国家に匹敵する,世俗の権力システムが育っていないからです.

アジアにおける帝国(英蘭仏日米)の終焉は,何より,インドと中国の主権回復でしたが,中東とは違う意味で,その鳴動が現在も続いていると思います.シンガポールも台湾も,朝鮮戦争もベトナム戦争も,帝国の終焉がアジアで続いていることと関係します.

日本が戦後70年談話で示す歴史認識は,アジアにおける冷戦終結(帝国の終焉)とその後を展望するものになるのでしょう.

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北岡氏の視点は,国家の為政者の側に限られています.その責任や罪を問うのも,国際法の歴史的な局面に従います.

それでよいのだろうか? と思いました.

日本が国家を超えて行った虐待や虐殺に対して,その戦争や侵略,植民地支配が,国際法で正当化できるか,違法性をどう見るか,というのは,国家を超えた住民からの告発,責任者への処罰,謝罪や賠償の要求に,政治はどう答えるのか? 戦後の国家間で合意を要する問題です.国交正常化と和解の歴史過程を評価する必要があるでしょう.

なぜ岸信介の孫である安倍晋三が日本の首相となり,従軍慰安婦や南京大虐殺を軽視し,謝罪を嫌って,侵略戦争を正当化するのを許すのか? 日本の政治家たちは,極右団体・メディアの広める間違った歴史認識をただすこともなく,軍備増強が平和のために必要だ,と主張するのか? ・・・私は留学生たちに質問されるとき,答えなければなりません.

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帝国というのは,国際政治経済学の基本テーマでした.帝国(そして戦争)が再現するのを抑えるのは,国際法だけでは不可能だ,と思います.軍事力よりも経済発展により,しかも,環境を破壊しない,一人一人の豊かさを実現する,国境を超えたシステムを育てることで,私たちは成功するかもしれない,と研究者たちは考え始めました.

ユーロ危機,イスラム国家,さまざまなウィルスや感染症,政府による盗聴・検閲,人種差別主義やナショナリズムの政治運動,大きな所得格差の再現,富裕な諸国の高齢化・人口減少と,貧しい諸国の若者たちが教育・雇用の機会もなく,宗教対立や内乱・クーデタに翻弄される土地から大規模に逃れること,・・・それらを深く理解した「談話」が,日本から発信されることを期待します.

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