前半から続く)


l  南シナ海の米中衝突

NYT MAY 29, 2015

Pushback in the South China Sea

By THE EDITORIAL BOARD

FT Sunday, 31 May, 2015

Cooler heads are needed in the South China Sea

The Guardian, Monday 1 June 2015

Xi Jinping’s China is the greatest political experiment on Earth

Timothy Garton Ash

「習にはできるのか?」 これが現代世界の最大の政治問題である.「そうだ,習ならできる」という者もいるが,「いや,彼にはできない」という者もいる.誰にもわからない.

習近平主席の下で北京が攻撃的な姿勢をとることに対して,アメリカでは,中国に対する政策を転換するべきか(封じ込め政策への転換),大きな論争になっている.南シナ海での大規模な埋め立て.また,安価な労働力の供給が枯渇した後.経済成長を維持できるか,という問題を懸念している.他の国以上に,中国の外交や経済は,政治システムの意思決定の質によって決まるのだ.すべては政治である.

習は,経済や社会の困難な時期に,トップダウンで解決することを考える.市場の「見えざる手」と,共産党・国家の「見える手」を使い分ける.反対派を追放し,レーニン主義の政党を規律強化と再活性化によって利用する.レーニンであり,プラトンであり,孔子である.

それは,自由で批判的な討論,独立した市民の行動,NGO,などを重視する中国人にとって,非常に不都合なことだ.市民権を求める指導的な弁護士,活動家,ブロガーが逮捕され,有罪となり,投獄されている.

「習ならできる」という人々は,特に政府の外では,残念だと認めつつも,改革が進んでいることを指摘し,中国の特殊な条件を説明する.しかし,もし彼らの言うような改革が成功するなら,それもまた問題となる.西側の民主主義にとって,特に発展途上諸国に向けて,競争的なモデルが提供されるからだ.もはや2000年に入ったころ西側が自慢していた民主主義的な資本主義の成功は,内外において(イラク戦争,金融危機)ひどい失敗を経験した.

リベラルな,民主的な体制を好ましいと思う私は,それでも中国の友人たちに,革命的な変化ではなく,進化することを望む.それが,何よりも地域の戦争と平和を決定する,と思うから.共産党体制が危機に陥り,動揺するとき,近隣地域において,ナショナリストのカードを利用する衝動を抑えることは難しいだろう.それはすでに数十年にわたって,近年の歴史の選別的な解釈,恥辱の150年という物語により,国民に準備されているからだ.

だから習が,鄧小平のように,川底の石を探って慎重に進む,プラグマティズムを失わないでほしいと思う.「習ならできる」という人々も,より広い,より長期の問題には答えられない.2020年には,どうなっているのか?

FP JUNE 1, 2015

Riding the Tiger of Anti-U.S. Sentiment in the South China Sea

BY BETHANY ALLEN-EBRAHIMIAN

中国が南シナ海の環礁で行っている大規模な埋め立てと空港建設が衛星写真で示されてから.アメリカと中国との関係が緊張を増している.紛争領域へのアメリカ空軍の偵察機に対して,520日,中国海軍は8度も領域から去るように警告した.525日,中国外務省は,アメリカが挑発行為をやめるべきだ,と主張した.526日,カーター国防長官は,中国が島の埋め立て行為をやめるように求め,国際規範から逸脱している,と主張した.530日,シンガポールで開催されたIISSシャングリラ・ダイアローグでも,こうした双方の主張は繰り返された.

同時に,ウェブ上の意見交換が過熱している.Weibo75万人の読者を持つ軍事評論家は,アメリカに中国の譲れない線を示すべきだ,と主張する.警告を繰り返しても,挑発行為を刺激するだけでしかない.中国は,アメリカをゆっくりと経済的に締め付け,政治的に孤立させ,やめるまで軍事的に追い詰めることだ,という意見が人民日報のフォーラムで最も支持された.

政府当局は,ナショナリストたちによる世論形成を利用している.より穏健な意見が出るのを検閲している.しかし,こうした意見を広めることで,政府はアメリカとの軍事衝突を避けられなくなるだろう.「中国人は戦争を恐れない.弱者になることを恐れるだけだ.」

Project Syndicate JUN 2, 2015

China’s Pursuit of a New World Economic Order

ZHANG JUN

中国経済の将来がどうなるか,意見は分かれている.しかし,彼らが無視している重要な問題は,既存の世界秩序の下で,中国は成長を続けられるのか? という点だ.

アメリカが支配する現在のグローバルな秩序は,中国の台頭に合わせて,その調整を受け入れるのか? あるいは,中国は自分自身にあったグローバルな秩序を構築するべきなのか? その答えは,まだ明確に出ていない.

人民元をSDRの構成通貨に入れる,という議論が起きている.今は,USドル,ユーロ,円,ポンドで構成しているが,人民元もこれに加えるべきだ,というのだ.IMFのラガルド専務理事は,時間の問題である,と答えて,中国メディアが誇大に伝えた.元FRB議長のバーナンキは,中国の国内改革を進めれば,という曖昧にした答えであった.アメリカがIMFで拒否権を行使する以上,こうしたことは議論しても意味がない.

人民元が国際化を目指すのは,アメリカの金融政策によって制約されている状態を抜け出したいと考えるからだ.アメリカが金融引き締めを行えば,中国が不況であっても,金融引き締めに従うことは望ましくない.中国企業が貿易や海外投資を行うにも,アメリカドルとの為替レート変動に制約されることは望ましくない.中国は世界最大の市場であり,世界最大の輸出国であるのに,アメリカは中国を排除したTPPTTIPを交渉している.

だから中国は,この10年において,経済力を新しいグローバルな秩序に向けて行使し始めた.「ワン・ベルト,ワン・ロード」宣言やAIIBだ.人民元がドルに代わることも,予想外に,早く実現するだろう.この10月の評決でIMFが人民元をSDRに加えるかどうかにかかわりなく,徐々に,中国にとって望ましいグローバルなシステムへの転換は進むのである.

Project Syndicate JUN 3, 2015

Avoiding Conflict in the South China Sea

JOSEPH S. NYE

法的な基礎の上で,米中は南シナ海の紛争を,軍事衝突を回避しつつ,交渉することができる.

FP JUNE 3, 2015

The Two Words that Explain China’s Assertive Naval Strategy

BY JAMES HOLMES

FP JUNE 4, 2015

Col. Liu and Dr. Pillsbury Have a Dream: The Inevitable Showdown Between China and America

BY ISAAC STONE FISH


l  キャメロンの賭け

FT 29 May, 2015

Cameron shrewdly manages radicals to conquer the centre ground

Janan Ganesh

FT June 3, 2015

UK’s battle with EU is no Danish fairytale

Lykke Friis


l  金融危機後の政策不安

Project Syndicate MAY 29, 2015

The Inflation Puzzle

MARTIN FELDSTEIN

Project Syndicate MAY 31, 2015

The Liquidity Time Bomb

NOURIEL ROUBINI

金融危機に対応したマクロ的な金融緩和は,新しい規制など,金融資産市場を非流動的にしている.この組み合わせは,長期的な非常に危険である.

なぜマクロの流動性供給と市場の非流動化が起きるのか? 市場の高速化high-frequency traders (HFTs),固定収益の資産が市場で取引されなくなっていること,解約可能な市場型ファンドが増えていること(取り付けのパニックを起こす),価格変動を抑制するマーケット・メーカーが減ったこと.

結果的に,バブルや次の崩壊を強めるだろう.

FT Monday 1, 2015

The assets made combustible when regulators call them ‘safe’

Avinash Persaud

FT June 3, 2015

Keep finance safe but do not shut out the vulnerable

Mark Carney and Bertrand Badré


l  ロシア

NYT MAY 29, 2015

The Kremlin vs. The NGOs

By MASHA GESSEN

FT Sunday, 31 May, 2015

Europe’s problem is with Russia, not Putin

Thomas Graham

FT June 3, 2015

Russia rewrites history of the Prague Spring

Tony Barber

NYT JUNE 4, 2015

Western Defeat in Ukraine

Roger Cohen


l  インドの大気汚染

NYT MAY 29, 2015

Holding Your Breath in India

By GARDINER HARRIS


l  アメリカの恐怖

FP MAY 29, 2015

Chill Out, America

BY STEPHEN M. WALT

アメリカの外交専門家や安全保障担当者が,繰り返し,アメリカに及ぶ危険な世界の秩序崩壊を問題にしている.ますます大きな危険が迫っている,というのだ.

しかし,アメリカ人が直接の脅威にさらされているとは思えない.北アメリカを征服し,第1次,第2次世界大戦,そしてスターリンに勝利したアメリカが,お化けや幽霊,ちっぽけな独裁政府,アメリカ陸軍の2個師団にしか及ばない兵士を展開して,ほとんど何の価値のない土地に占領するイスラム国家を,本気で恐れるべきだろうか?

これほど人々に恐怖を広めるのは,専門家や機関がそれを利益と見ているからだ.防衛予算を削ることが無いように,戦争を正当化した政治家たちが選挙で敗北しないように,戦争の拡大や過度の秘密保持,諜報行為,外国における標的の殺害,を正当化したいからだ.そして,メディアはこうしたニュースで利益を得る.

そして残念ながら,こうした外部の脅威を誇張するほど,われわれは本当に重要な問題から関心をそらされてしまう.サダム・フセインやアルカイダにわれわれが費やした財源と生命は,まるでその脅威に見合うものではなかった.むしろ,外交の失敗をもたらす自己満足や洞察の欠如は,他方で,金融危機を防ぐために規制や監視をするべきことを怠ったと考えるべきだ.連銀の救済資金だけで,6兆ドルから14兆ドルを費やし,国民一人当たりで5万ドルから12万ドルを失ったのだ.最も恐るべき脅威は,北京からではなく,アメリカ議会から生まれた.

アメリカ自身がその足を撃ち抜く途方もない才能を,もっと恐れるべきだ.


l  新しい兵士

FP MAY 29, 2015

The New Unknown Soldiers of Afghanistan and Iraq

BY MICAH ZENKO


l  民主党と貿易

FP MAY 29, 2015

When Did Democrats Become America’s Free Trade Believers?

BY BRUCE STOKES

Project Syndicate MAY 31, 2015

Good Trade Intentions Gone Bad

SIMON JOHNSON


l  ヨーロッパ政治不安

Project Syndicate MAY 30, 2015

Europe and Anti-Europe

JOSCHKA FISCHER

ギリシャ債務危機,ロシアの介入によるウクライナ危機,地中海の難民危機,ヨーロッパは危機が連続して,EU諸機関の能力の限界を超えている.その無能さはEU市民の不満を強め,加盟諸国がEUからの離脱を加速する最悪の状態に向かうこともありうる.ヨーロッパ統合は逆転する危険があるのだ.

この危険を冒さないためには,ギリシャ債務危機を収拾しなければならないし,イギリスの国民投票に向けてキャメロン首相の求める改善策に,一定の柔軟性を示すべきだ.

SPIEGEL ONLINE 06/01/2015

Breaking the Resistance

How Brussels Is Integrating Its Euro-Skeptics

By Manfred Ertel, Julia Amalia Heyer and Christoph Scheuermann in Brussels and Strasbourg

NYT JUNE 1, 2015

Wellness Trumps Politics

Roger Cohen

ヨーロッパの町は,社会を変える,という政治イデオロギーから解放された.


l  シリア

Project Syndicate MAY 30, 2015

A Contact Group Plan for Syria

CHRISTOPHER R. HILL


FT Sunday, 31 May, 2015

American socialism’s day in the sun

Edward Luce


l  教育の神話

Project Syndicate MAY 31, 2015

The Education Myth

RICARDO HAUSMANN


Project Syndicate MAY 31, 2015

Small Steps to European Growth

JEAN PISANI-FERRY


l  イスラエル

NYT MAY 31, 2015

Israel’s Charade of Democracy

By HAGAI EL-AD

FP JUNE 1, 2015

In Search of the Real Barack Obama

BY DAVID ROTHKOPF

Project Syndicate JUN 4, 2015

The Limits of German Guilt

SHLOMO BEN-AMI


l  国際法廷

FT Monday 1, 2015

What Fifa tells us about global power

Gideon Rachman

Project Syndicate JUN 3, 2015

The Impunity Trap

JEFFREY D. SACHS


l  グローバル炭素価格

FT Monday 1, 2015

The compelling case for global carbon pricing

Project Syndicate JUN 1, 2015

The Business Case for Sustainability

LAURA TYSON


l  ケインズ主義者の盲信

Project Syndicate JUN 1, 2015

More Keynesian than Keynes

NIALL FERGUSON


l  国際政治

FT June 3, 2015

The future belongs to the cities of the west

Simon Kuper

Project Syndicate JUN 2, 2015

The G-7’s Sustainability Mission

CAIO KOCH-WESER


l  トルコの選挙

Project Syndicate JUN 2, 2015

Turkey’s Critical Election

SINAN ÜLGEN

FT June 4, 2015

A coalition is the best outcome for Turkey’s economy

Sinan Ulgen

FT June 4, 2015

Erdogan pushes for dominion in Turkey


l  移民難民問題

NYT JUNE 2, 2015

Dealing With the Influx of Migrants and Refugees


l  日本のピーター・パン

VOX 03 June 2015

The inclusiveness of Abenomics

Chie Aoyagi, Giovanni Ganelli, Kentaro Murayama

Bloomberg JUN 3, 2015

Japan's Maverick Billionaire Bets Big Abroad

By William Pesek

FT June 4, 2015

Peter Pan inspires Japan monetary policy

Patrick McGee in Hong Kong and Robin Harding in Tokyo

金利が非常に低い日本では,人々がインフレになると信じることでしか,経済を刺激することはできない.それが日銀の黒田総裁にインフレの約束を繰り返し守るように断言させるのだ.

ピーター・パンの話にあるだろう.もし飛べるということを少しでも疑うなら,その瞬間から永久に人は飛べなくなるのだ,と.

FT June 4, 2015

Toyota: Rebirth of a brand

Kana Inagaki

劇的な再編を試みるトヨタは,どこに向かうのか?

NYT JUNE 4, 2015

A New Role for Japan’s Military

By SHINICHI KITAOKA

憲法9条を改正するべきだという主張は,その前半の戦争放棄,ではなく,後半の陸海空軍を持たない,という部分を改正することである.1954年,日本はすでに自衛隊を持った.日本は自国の防衛と国際秩序に従うのであり,現状を変えるものではない.

Bloomberg JUN 4, 2015

Japan's Peter Pan Problem

By William Pesek

中央銀行の政策が,ピーター・パンのおとぎ話に依拠して進められることに,私は悲痛な感じがした.しかし,その話は考える価値がありそうだ.

ピーター・パンは大人になることを拒んで,ネバーランドという小さな島に住む.12700万人の日本には不適当なたとえだ.むしろ『不思議の国のアリス』がよいだろう.他方で,成長することのない黒田の量的緩和は,ピーター・パンに似ている.


l  核廃絶の夢が終わった

NYT JUNE 3, 2015

Lost Opportunity on Nuclear Disarmament

By THE EDITORIAL BOARD


NYT JUNE 3, 2015

Fear of Almonds

Mark Bittman


l  大西洋の通商同盟

SPIEGEL ONLINE 06/04/2015

Trans-Atlantic Ties

It's Time To Rebuild Trust

A Commentary By Karen Donfried and Wolfgang Ischinger

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The Economist May 23rd 2015

Geopolitics in the Gulf: The new Saudis

Saudi Arabia: The challenged kingdom

Europe’s Green parties: Verdant pastures

Free exchange: Basically unaffordable

(コメント) サウジアラビアの変身が議論されています.石油の富とイスラム教の聖地を持つサウド家の領土が,イランによる国際秩序の再編に刺激されて動き始めたようです.

ヨーロッパの緑の党と,ベーシック・インカムについて,関心を持って持ちました.新しい政治運動が生き残るかどうか,また,新しい政策思想が実現するかどうか?

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IPEの想像力 6/8/15

戦後70年を記念する安倍首相の談話について,首相を助ける懇談会の座長代理である北岡伸一氏が書いています.「歴史認識と謝罪 別の議論」(読売新聞67日朝刊 地球を読む)

歴史認識については,日本だけの問題ではなく,中国や韓国,アメリカにも望みたいことがいろいろある,と短く指摘します.「談話」がこれに正面から取り組むものであることを,私は期待します.

ところが,メディアは「侵略,植民地支配,反省,謝罪」の4つのキーワードをめぐって,表面的な関心を示す.これを批判して,北岡氏は考察します.

「侵略も戦争も,昔からある.問題はその違法性である.かつて戦争も侵略も,必ずしも悪いこととはされていなかった.」 「植民地支配も,かつては違法ではなかった.」

これは為政者の視点です.権力を握り,統治をおこなう者が,何をして,何をしてはならないか,特に,国家を超えて,それを制限することができるのか,今も議論され続けています.北岡氏は,欧米諸国が第1次世界大戦のあまりの惨禍に驚いて,また,アメリカ大統領の植民地主義を廃棄し,国民国家を原理とする提案に妥協して,為政者の手を縛る方向に転換した,と述べています.しかし,当時,日本はこの流れに逆らったわけです.

大恐慌の中で,アメリカは高関税政策に転換し,その影響で各地のブロック経済化が強まりました.ドイツ,イタリア,ソ連,そして,日本でも,平和的な経済発展より,軍事力による植民地拡大が優位を得たのです.北岡氏は,この無謀な戦争で,一般市民や捕虜が受けた劣悪の待遇,南京大虐殺,従軍慰安婦のことを.過去の過ちとして認め,反省しなければならない,と考えます.

戦後の日本が,この反省に立って,アメリカの築く国際秩序のもとで,平和的な経済発展を遂げたことは,さらに将来の世界秩序にも積極的に貢献する姿勢として,現在の安全保障関連法案も併せて,謝罪より重要だ,と主張します.

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帝国の終焉は,国際秩序の歴史的な転機となります.中東が今もそうである,と指摘するだけでなく,R.D.Kaplanは帝国システムの再生が必要であるとまで考えます.それは中東の広い地域で,ヨーロッパのような国民国家に匹敵する,世俗の権力システムが育っていないからです.

アジアにおける帝国(英蘭仏日米)の終焉は,何より,インドと中国の主権回復でしたが,中東とは違う意味で,その鳴動が現在も続いていると思います.シンガポールも台湾も,朝鮮戦争もベトナム戦争も,帝国の終焉がアジアで続いていることと関係します.

日本が戦後70年談話で示す歴史認識は,アジアにおける冷戦終結(帝国の終焉)とその後を展望するものになるのでしょう.

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北岡氏の視点は,国家の為政者の側に限られています.その責任や罪を問うのも,国際法の歴史的な局面に従います.

それでよいのだろうか? と思いました.

日本が国家を超えて行った虐待や虐殺に対して,その戦争や侵略,植民地支配が,国際法で正当化できるか,違法性をどう見るか,というのは,国家を超えた住民からの告発,責任者への処罰,謝罪や賠償の要求に,政治はどう答えるのか? 戦後の国家間で合意を要する問題です.国交正常化と和解の歴史過程を評価する必要があるでしょう.

なぜ岸信介の孫である安倍晋三が日本の首相となり,従軍慰安婦や南京大虐殺を軽視し,謝罪を嫌って,侵略戦争を正当化するのを許すのか? 日本の政治家たちは,極右団体・メディアの広める間違った歴史認識をただすこともなく,軍備増強が平和のために必要だ,と主張するのか? ・・・私は留学生たちに質問されるとき,答えなければなりません.

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帝国というのは,国際政治経済学の基本テーマでした.帝国(そして戦争)が再現するのを抑えるのは,国際法だけでは不可能だ,と思います.軍事力よりも経済発展により,しかも,環境を破壊しない,一人一人の豊かさを実現する,国境を超えたシステムを育てることで,私たちは成功するかもしれない,と研究者たちは考え始めました.

ユーロ危機,イスラム国家,さまざまなウィルスや感染症,政府による盗聴・検閲,人種差別主義やナショナリズムの政治運動,大きな所得格差の再現,富裕な諸国の高齢化・人口減少と,貧しい諸国の若者たちが教育・雇用の機会もなく,宗教対立や内乱・クーデタに翻弄される土地から大規模に逃れること,・・・それらを深く理解した「談話」が,日本から発信されることを期待します.

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