(前半から続く)
l 中国の築く秩序
FT MAY 15, 2015
Chinese housing
inventories: a threat to growth?
Rafael Halpin
中国の国家統計局は,4月の住宅販売が16%の増加であったというデータを公表した.それは2013年11月以来,最大の増加率である.しかし,住宅建設の経済全体に及ぼす積極的な影響は,高い在庫率によって疑わしい.
Project Syndicate
MAY 15, 2015
Channeling China’s
Aspirations
MARK ROE
中国はその経済的・軍事的なパワーを使って,アメリカに対抗する秩序を築き始めた.アメリカはこれを阻止するように行動してきたが,経済的な台頭と軍事的対抗とは区別するべきだ.新興の経済大国がそのパワーをどのように利用するのか,AIIBのように,アメリカが積極的に取り込む余地がある.
Bloomberg MAY 17,
2015
Janet Yellen Takes
a Back Seat to China
William Pesek
FT May 17, 2015
China gets serious
about reflation
Gavyn Davies
FP MAY 18, 2015
China’s Not Backing
Down in the South China Sea
BY SIDDHARTHA MAHANTA
ワシントンは南シナ海を中国の思い通りにさせるつもりはない.
今週末のケリー国務長官による北京訪問は,米中間で何も問題はなく,5550億ドルの貿易と,良好な協力関係が進展していることを示すためのものだった.
しかし,両国は南シナ海で中国が主張する主権に対して,アメリカがそれを許さない行動を示したことを無視できないはずだ.アメリカ国防総省は,南シナ海の紛争海域に対する監視飛行を行う計画を発表した.また,スプラトリー環礁の12マイル圏内をパトロールする監視艇を出す.
中国の軍事・外交関係者は,中国が南シナ海で,国際的な責務として,無人の埋立地を探索や救命活動の拠点にしようと努めている,と主張した.彼らはこの海域に中国の主権があると信じている.
アメリカの行動は両国間の緊張を生むものだが,中国もアメリカも紛争を望んでいないのは良いことだ,という.そして,事態の悪化を防ぐメカニズムや「行動規範」に合意できるだろう,と中国国防省の研究所(the
Center for International Security Cooperation)所長Sr. Col. Zhou Boは述べた.
FT May 19 2015
The lessons of
China’s noodle cartel
Tom Mitchell in Beijing
FT May 19 2015
China effect weighs
on emerging market exports
James Kynge
FT May 20, 2015
America’s flawed
strategy towards AIIB
アメリカ政府によるAIIB反対は,自己破壊的な喜劇になった.中国は西側の多角主義を強化する姿勢を示し,それに反してアメリカは同盟諸国を翻弄した.アメリカはその過ちを認め,秩序の改革に参加するべきだ.
Project Syndicate
MAY 20, 2015
The Irresistible
Rise of the Renminbi
RICHARD KOZUL-WRIGHT
Project Syndicate
MAY 20, 2015
Development Finance
with Chinese Characteristics?
DANIEL POON
Bloomberg MAY 20,
2015
China's Cold War
Nostalgia
By Noah Feldman
FP MAY 21, 2015
Provoking Beijing
in the South China Sea Will Only Backfire on Washington
BY FENG ZHANG
FP MAY 21, 2015
Hong Kong’s Not
Special
BY ALVIN Y. H. CHEUNG
FT MAY 22, 2015
China bets on
expanding its way out of debt
FT MAY 22, 2015
China’s rebalancing
challenge
Rafael Halpin
Project Syndicate
MAY 22, 2015
New-Model
Development Finance
ANNE-MARIE SLAUGHTER
AIIBは,アメリカ外交の大失策である.アメリカは同盟諸国が参加することを阻止しようとして失敗し,アメリカが主導したIMF改革を批准することにも失敗している.地政学的に見て,中国は第2次世界大戦後の国際秩序,欧米中心のグローバル・ガバナンスに対する公式の競争的制度を樹立した.
それは発展途上諸国にとっても利益になる.開発に必要なインフラ投資を促進できるからだ.しかし,AIIBには,世界銀行のような人権や環境に関する条件が無い.それは,貧しい諸国に生きる個人にとって,「底辺への競争」を促すものである.
また,AIIBは政府間の財政移転であり,それは開発における権力と富のあり方に影響する.こうした資源の再配置は,国際システム,国家内部,企業,投資機関,市民社会グループ,地方政府,などが開発に担う役割を変える.
アメリカ国務省と国際開発局とは,開発に関する新しいモデルを推進している.アメリカ政府は開発のための投資に参加するアクターの1つでしかない.多元的な投資が,持続的で包括的な開発を実現する.たとえば,Power Africaでは,現地社会の開発に対する取り組み,民間投資によるイノベーションの促進,さまざまなステークホルダーの参加,相互の説明責任,などが結び付いている.
Power Africaは,投資契約ごとに,受入国政府,民間部門,投資国政府によるチームが形成される.結果を重視したプラグマティックな姿勢は,テーマごとに市長がグローバルに連携する取り組みにも示されている.
もちろん,こうしたアプローチをアメリカが好むのは,アメリカの連邦政府に財源が無く,中国は中央集権的に豊かな財源を提供できるからだ,と疑うこともできる.しかし長期的には,アメリカが支持する開発投資のモデルの方が,政府間の資源移転という旧来のモデルより,持続的に成果をもたらすだろう.
FT MAY 15, 2015
Free Lunch: Bye bye
Blanchard
Martin Sandbu
l 成長と大気汚染
Project Syndicate
MAY 15, 2015
Democracy’s Missing
Meaning
RICHARD K. SHERWIN
FP MAY 15, 2015
Smog and the Social
Contract
BY DANIEL ALTMAN
ある晴れた日に,韓国の首都,ソウルで,高層ビルの屋上に立てば,ハンガン(漢江)にかかる多くの橋を容易に見ることができる.しかし,大気汚染が都市をヴェールのように包む日は,わずか3つか4つしか見えず,この1000万都市の周囲にあるはずの山並みも見えない.
これほど急速に,これほど豊かになった国が,その福祉の基本的要素である大気の質を,これほど悪化させているのはなぜか?
2000年に入って大きく改善しつつあるものの,今も空気中の微粒子の水準は非常に高い.韓国の一人当たりGDPは2万8100ドルで,スペインと同じ水準にあるが,大気汚染ははるかに悪く,Yale
University and Columbia University によるthe Environmental Protection Indexで178カ国中の166位である.健康面の影響に関する限り,韓国は先進西側経済よりも,ソ連崩壊後の工業国家に似ている.
ソウルの大気汚染の背後には,中国など,他の新興工業諸国にも共通の,より深い,深刻なダイナミクスが働いている.これらの国では,市民たちが高い生活水準と福祉の他の側面,すなわち,人権や市民権から,消費や環境の基準まで,を交換している.それは権力者の言う,特殊な社会契約なのだ.「お前たちが他の問題で不平を言わないなら,政府は所得水準を高め続けるだろう.」
シンガポールのこの契約は,世界トップ水準の所得と,政治活動や報道の自由を含む,市民権の制約とをもたらした.それはまた,違う形で,湾岸諸国の外国人労働者にもあてはまる.確かに,権利や保護の水準が何であれ,より高い所得は幸福感を増すだろう.
しかし,所得と権利との交換は,場所によっては,崩壊しつつある.2014年,香港の学生たち,カタールの出稼ぎ労働者,3月にはベトナムの労働者がストライキを行った.
それぞれに異なった理由がある.中国本土の急速な賃金上昇にもかかわらず,香港では所得が伸びず,本土と密接な関係のある大企業だけが経済を支配していた.カタールの出稼ぎ労働者の条件はあまりにも悪く,本国に戻るのを恐れなくなった.ベトナムの新しい法律は,労働者の貯蓄を政府が利用する点で,彼らの考える法の支配を破るものだった.
社会契約に関する不満が何であれ,それはお金で解決される.より多くの財源を正しく人々に与えることだ.幸い韓国のように,不平等が小さく,成長する国にはそれができる.しかし,アメリカはそうではない.
アメリカでは労働者の保護を破棄し,労働組合を解体し,賃金を下げることで,将来の高い所得水準を約束した.しかし,彼らはほとんど成功しなかった.両親が下位80%の人々で,上位20%に入るチャンスは,わずか16%でしかない.
2016年の大統領選挙で,こうした問題が議論されるのは間違いない.韓国や中国,ベトナムと同様に,「社会契約は守られているか?」
l ブレトンウッズの改革
NYT MAY 16, 2015
Past Time to Reform
Bretton Woods
By THE EDITORIAL BOARD
第二次世界大戦末期に,アメリカがほとんどの経済力を支配したとき,IMFと世界銀行は設立された.ヨーロッパと日本は戦争で破壊され,中国は激しい内戦を続け,インドはイギリスの植民地であった.
しかし,世界経済はその後大きく変化したにもかかわらず,2つの国際機関は改革されてこなかった.トップ人事はヨーロッパとアメリカが独占し,協力してルールを支配した.中国がAIIBでそれに対抗したのは,中国のパワーが増大したことに比べて,西側の改革が遅いからだ.
l アジアのデフレ
FT May 18, 2015
Reforms needed to
combat threat of Asian deflation
Frederic Neumann
l 不況と政府
Project Syndicate
MAY 18, 2015
Inspiring Economic
Growth
ROBERT J. SHILLER
大恐慌に対して1933年3月にF.D.ルーズベルトが述べたように,成長を妨げる障害は現実に存在せず,人々の心の中に,その不安として存在しただけであった.世界金融危機を経た今もそうだ.
政府が参加した投資計画には,それを変える力がある.
VOX 19 May 2015
Secular stagnation:
The history of a heretical economic idea
Roger Backhouse, Mauro Boianovsky
Project Syndicate
MAY 20, 2015
A World of
Underinvestment
MICHAEL SPENCE
l 北朝鮮
NYT MAY 18, 2015
North Korea’s
Horrors
By THE EDITORIAL BOARD
l ロボット
FP MAY 18, 2015
In Defense of
Killer Robots
BY ROSA BROOKS
NYT MAY 20, 2015
Why Robots Will
Always Need Us
By NICHOLAS CARR
l 核の傘
FP MAY 18, 2015
Raindrops Keep
Falling On My Nuclear Umbrella
BY VAN JACKSON
l Ferguson対Skidelsky
Project Syndicate
MAY 19, 2015
No Pain, No Gain
for Britain?
ROBERT SKIDELSKY
経済史家Niall
Fergusonは,オックスフォードの歴史家,故A.J.P. Taylorを思わせる.しかし,Fergusonは,政治的にネオコンを支持し,ケインズ主義を攻撃するためには,無節操になる.
オズボーン蔵相の財政緊縮策はイギリス経済に多大なコストを追加した.経済パフォーマンスだけではそれが見えない.財政緊縮が投資に与えるプラスの影響は,間違いである.労働党政権や選挙運動に関する財政赤字やケインズとの結び付きも,彼の主張と異なっている.
Niall Fergusonの主張は,選挙運動で保守党が流したプロパガンダでしかない.
Project Syndicate
MAY 19, 2015
The Economic
Consequences of Mr. Osborne
NIALL FERGUSON
事実が間違っているから,ケインズと同様に,その意見を変えるべきなのだ.KrugmanやSkidelskyにはそれができない.
オズボーンの財政再建は正しかったし,それはケインズ主義者が警告したような深刻な不況をもたらさなかった.投資家は自信を回復した.ケインズ主義的な刺激策を取っても成功しなかっただろう.
l 卒業生への訓示
FP MAY 20, 2015
The Five-Minute
Commencement Speech
BY STEPHEN M. WALT
多年にわたって,才能ある人々の卒業式の訓示を聴いたが,感動した話はないと思う.もっと短くしたら良かった,と思うだけだ.
そこで,5分で終わる失業式の訓示(もしくは,“What IR Theory Can
Teach You about Living a Happy and Productive Life”)を示そう.
1.変化することに慣れよ.2.コミュニケーションの能力を高めよ.3.信頼できるという評価を得よ.4.戦略的に,事前に考えよ.5.同盟相手を慎重に選べ.
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The Economist May 9th 2015
The dawn of artificial intelligence
Artificial intelligence: Rise of the machines
Making Indonesia grow: Jokowi’s to-do list
Financial services: The fintech revolution
Retail banking: The great pruning
America, Iran and the Gulf: Obama shakes up the sheikhs
Germany and economics: Of rules and order
(コメント) AI人工知能が,人間の脳をモデルとしてパターン認識の学習を開始し,そのデータ量が圧倒的なスピードで処理されることで,次第に,人間の領域を征服し始めているようです.
金融にシリコンバレーがやってきた,という特集記事も興味深いです.もはや金融ビジネスは富や権力のシンボルではなく,携帯電話のアプリに過ぎなくなる時代が来るでしょう.
イランとの合意後,オバマが約束する湾岸諸国への武器供与は,アジアの未来かもしれません.インドネシアやドイツに関する記事も面白いと思いました.
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IPEの想像力 5/25/15
独立時計職人の話を観ました.
自分のイメージで時間を形にする.独創的なデザインと,精密なメカニズムによって,時間が過ぎるのを形や動きによって示します.こうした時計を持てば,過去や未来のことを考えます.
時間を測る,時を示す,ということに,これほどさまざまな意匠が施されて,それ自体が個性的な,まるで生物を観るような,時の感触を与えます.
評価の高まった職人が,多くの注文を受けて,職人を何人も雇った工房を管理することに疲れ,自分がそもそも楽しみで作った時計の中に喜びを感じなくなった,とスランプの時期を語っていました.
高級時計の市場も,富裕層に依存し,超高層ビルや建設工事のクレーンの数と同じく,急速な富裕化やバブルの指標かもしれません.
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安全保障法制の論争が始まっています.
懸念とは異なり,安倍政権と自民党は,国会答弁を通じて,自分たちの法制化への支持を高めるように,論争に応じていると思いました.そして,集団的安全保障や自衛隊の海外における武力行使を,反対するにせよ,支持するにせよ,野党は正面から取り上げて,前向きな議論をしていると思います.
それは国際情勢や東アジア,中国やアメリカとの関係に関して,国民も政治家も真剣に議論する必要を実感しているからでしょう.
領土や経済問題で深刻な紛争が生じたとき,日本はどうするのか? 日米安保体制だけで将来の不安がすべて解消されるのか? 米軍基地問題では,沖縄が最終的な日本政府の判断を受け入れません.
日本が自衛のために武装するとしたら,それは強力な攻撃的武器を含まないと思います.日本人が目指す安全保障とは何か? 地域や世界の安全保障にどのような形で関わるのか? 国民が納得するまで,トータルな安全保障のあり方を,真剣に議論してほしいです.
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瓜破霊園までランニングしました.
私の父母の家から,3キロたらずです.あまり緑地はなく,斎場と墓地がほとんどでした.しかし,小さな池と共同の慰霊碑があり,向かいに花を生ける碁盤目状の柵があります.
ここが,天気によって,また四季の中で,異なる感傷と故人との対話を与えてくれるのかな,と思いました.
一人になった母が寂しいと思うだろうから,私は家に来て,テレビを観たり,料理をしたり,一緒に買い物に行きます.そして,ランニングして,亡くなった父に問いかけます.
ベンチには,友人に会いに来た老人たちがいます.日本が豊かな国であるなら,都市の中でも,死者とその遺族や友人には,もっと広い,美しい緑地と,静かな時間を提供してほしいです.
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人工知能の特集記事に驚きました.
AIは人類を滅ぼす悪魔の召喚である,と一流の科学者が警告しています.
不思議な例が挙げてありました.「ポルノ」を定義することは難しいが,大人なら,何が「ポルノ」であるか,観ればわかる,というのです.法律でも,裁判所でも,法律で「ポルノ」を正しく定義することは問題になります.
ところが,AIは「ポルノ」を理解する,というのです.それはAIが厳密な定義を知っているからではなく,膨大な情報から,「ポルノ」をめぐる共通のパターンを認めるからです.AIは,単語の意味も,文法も知らないまま,膨大な言語の使用例だけで,その言語を理解できるようになるのです.
こうしたAIが発達すれば,もはや人間がAIよりも優れた領域は非常に限定される,と言われます.
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その犯行は悪魔祓いであった,というニュースに,驚きと得心に至りました.
各地の神社仏閣に油のような液体を振りかける,という「犯罪」は,さっぱりわからない,何かのいやがらせか,売名行為,愉快犯,と思いましたが,それでは腑に落ちません.
・・・アメリカに渡った,日本人の医師が,・・・キリスト教に覚醒し,教団を設立した.日本での布教活動では,神社仏閣に悪霊が棲むと説明し,除零するために聖なる油を撒いた? わけでしょうか.
中東における宗派争いや,イスラム国家の蛮行,アメリカの巨大宗教団体,信者の政治的影響力,などが,一気に身近になりました.
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人が生きる時間を,正確に刻む時計に,あるいは墓標に,特別な思いを込める能力を,次第にAIも獲得し始めます.戦争や宗教を理解したAIが,本当に,悪魔の召喚となるかもしれません.
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