IPEの果樹園2015

今週のReview

5/11-/16

 

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霜和 ・・・イギリスの選挙 ・・・通貨戦争 ・・・不平等 ・・・安倍首相 ・・・TPP ・・・地政学の復活 ・・・グリーンな覇権国

[長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  霜和

FT April 30, 2015

A frosty peace beckons for the US and China

Philip Stephens

世界金融危機や北京オリンピックの前に,アメリカのパワーが2050年にどうなっているか,という討論に北京で参加したことがある.

中国のエリートたちは内部に意見対立があることを示すのは嫌うのだが,討論は珍しく白熱した.一方は,アメリカのパワーの基本的条件(地理,人口,資源,経済活力,技術,軍事力)は変わらない,と主張した.他方は,アメリカも大国が示す歴史的な衰退に向かう,と考えた.評決したわけではないが,明らかに前者が優勢であった.

しかし,この討論が数年後に行われていたら,結果は逆であったと思う.ここ数年,東アジアの各地で,アメリカの撤退が議論されている.同盟国も敵対国も,アメリカが現状を維持することを疑っているのだ.

地政学も,人生の多くのことがそうであるように,流行がある.今週,韓国の外交シンクタンクでは,「アメリカは復活するか?」というフォーラムを開催した.彼らの答は,明確にYesだ.安倍首相のワシントン訪問で,日米は新しい防衛協力に合意した.アメリカはアジアに残る,と,関係者の多くは主張する.

アメリカの不況,赤字,政治的混迷が議論されたのは,そんなに前のことではない.今では成長が回復し,赤字が減り,まったく驚いたことに,民主党と共和党が協力している.シェールガス・石油がアメリカの優位をさらに高めた.

アメリカは戻るが,中国がすでに登ってきた.長い時間の乖離を経て,北京は経済的パワーと地政学的野心とを結び付けつつある.南シナ海の空軍施設建設,パキスタンへの援助,中央アジアにおける新しいシルクロード,AIIBなどの地域金融機関設立,など,習近平は中国の要求を抑制しなくなった.

21世紀の世界秩序は,中東の混乱より,アジアにおける米中間の調整をめぐる3つのCにかかっている.それは,co-operation, competition, and conflict である.

北京は,その新しい世界観が何ら攻撃的なものはない,と言う.大国の役割の一つとして,近隣諸国の安全を維持すること,がある.今年や翌年にアメリカを東アジアから追い出す意図はないが,ワシントンが結ぶ2国間同盟は冷戦時代の名残である.アジアが自分でその地政学上の問題を解決する時代が来るだろうし,その指導権を握るのは中国である.西側は「旧い考え方」を捨てるべきだ,と中国の高官は語った.

ワシントンの側では,現在のグローバルな秩序において,中国をステークホルダーにする,という考え方を捨てたようだ.共和党の大統領候補たちはより厳格な姿勢を取り,外交評議会のBlackwillTellisの報告書は中国に対するバランシングを求めた.

アメリカが西太平洋で支配的な地位に正当性を与えているのは,多くの国が中国を恐れ,その対抗するパワーを求めているからである.しかし,中国に対するバランシングを求めながら,同時に,彼らは北京に大きな経済的利害を負っている.アメリカが恒久的な支配力を追求すれば,それは衝突を招くのだ.

もしツキディデスがここにいたら,彼は,すべてが衝突に向かっている,と言うだろう.われわれとしては,歴史がわずかでも進歩したことを望むしかない.事態は悪化するかもしれないが,凍てついた平和,霜和,を維持することができる,と.


l  イギリスの選挙

FT April 30, 2015

General election: The compelling case for continuity in Britain

1930年代以来,平和な時代では初めての連立政権が予想される.

データによって戦略を練る政治家たちは,トニー・ブレアやアンゲラ・メルケルが有権者の中核を取り込んで3度も勝利した,という教訓を無視している.

キャメロンは不安を煽る選挙運動を進めた.すなわち,労働党は経済問題で信頼できない,労働党政権になれば,SNPの分離主義に政府が振り回される,というわけだ.しかし,保守党の側にも,イングランドのナショナリズムを刺激する危険がある.

FTはどの政党に政権を委ねようとも決めていない.しかし,次の政権の目標には明確な優先順位を決めている.

経済の課題は,単に財政赤字を減らすことだけではない.政府は企業と雇用創出を支援するべきだ.消費者信用やロンドンの金融サービスへの依存を減らすべきだ.インフラ,教育,住宅への投資が大きく遅れており,これらを回復して生産性ギャップを縮小すべきだ.新しい憲法を定めて,地域への権力移譲を,合理的,かつ,公平に進めるべきだ.ヨーロッパとの関係も建設的なものに変え,ユーロ圏の外でも,イギリスは重要なパートナーとしてヨーロッパ諸国に加わるべきだ.

選択すべきは,すべての者に高い生活水準をもたらす,ダイナミックで,弾力的で,開放的な経済に向かうか,あるいは,過去に縛られた,委縮したナショナリズムに向かうか? であり,リトル・イングランドか,グレート・ブリテンか? ということだ.

いずれの党も国民の十分な支持を得られない.そうであれば,改革志向の安定した政権になる可能性を求めて,保守党と自民党の連立政権が続くことが望ましい.

FT April 30, 2015

Bribes and evasions on housing and the deficit

Martin Wolf

イギリスの統治は良くない.世論調査が致命的に間違っていなければ,有権者はいずれの党にも多数を与えない.それは正しいだろう.

私の観るところ,イギリスが国内で問われている最大の点は,ダイナミックで安定した市場経済を創り,その利益を広く分かち合う,ということだ.過去の2つの政権はこれを実現できなかった.激しい金融危機の後,弱い回復と,低賛成の停滞であった.この点に関する政権政党の無頓着な気分は印象的である.

エド・ミリバンドの労働党も,残念ながら,ニュー・レイバーが示した選択や競争を称賛する姿勢を明らかに捨ててしまった.これは間違いだ.確かに市場は,特に金融市場は,ひどい間違いを犯すことがある.しかし,市場なしにやって行くことはできない.これは,医療や教育についても,食糧や服と同じように正しいのである.ただし,より難しいが.

逆に,保守党は拡大する不平等の重要性を理解していない.LSECentre for Economic PerformanceCEP)は,不平等が1970年代後半から顕著に増大している,と指摘する.また,2010年以降の課税や給付の変更は大きく逆進的であった.

主要政党の,住宅と財政に関する姿勢を考えてみよう.住宅,正確には,土地に関して,市場がまったく欠けている.CEPによれば,イギリスの面積当たり住宅価格は,世界で2番目に高い.1位はモナコだ.新しい住宅は,同じ人口密度のヨーロッパの国より,40%も小さい.

住宅価格の上昇は,若者を苦しめ,彼らが家族を持てなくする.職業の移動を妨げる.住宅の資産を増やし,不平等を強化して再生産する.担保としての価値を高め,融資の偏向,金融システムの歪みをもたらす.

しかし,主要政党は何もしない.彼らが示すのは,一連の買収だけだ.労働党は家賃に上限を約束し,保守党はグリーンベルトを守って,住宅購入や資産相続に有利な仕組みを提案している.こうした方策はすべて,現在の非効率と不平等を悪化させる.

財政に関しても,労働党は曖昧だが,保守党は赤字削減を約束し,緊縮策を続ける気だ.しかし,いずれもその重点は財政赤字の削減である,と合意している.今は借入コストが異常に低い,長期にはマイナスであることを無視している.財政政策を縛って,すべてを金融政策に委ねてしまう.これは危険なやり方だ.さらに,公共インフラを更新する最善のときを逃してしまう.

イギリスが挑戦すべき課題はもっとある.年金,生産性,医療,教育,福祉の将来,イギリスがヨーロッパや世界で果たす役割.主要政党はこうした多くの課題に答える広い視野を示していない.

いずれの政党も勝利に値しないし,多数を得ないだろう.まさに,そうだ.

The Guardian. Monday 4 May 2015

England must vote to ensure Britain’s liberal centre holds

Timothy Garton Ash

選挙は,かつて見たことが無いほど,ヨーロッパの選挙になっている.小政党が組閣の重要な役割を握って,国家の中でも異なる地域や民族によって異なる政治が観られる.結果は,多数を得られない政党が率いる,連立政権になるだろう.

しかも,この非常にヨーロッパ的な選挙によって,イギリスはRUを離脱し,スコットランドはイギリスを離脱するかもしれない.いくつかの分野で劇的な政府支出の削減が行われ,ますます不平等が現れるかもしれない.イングランドでは特に,市民の自由が失われるだろう.

イギリスの有権者の一人として,私はこうしたことすべてを防ぎたいと思う.スコットランドはイギリスにとどまり,イギリスはEUにとどまり,イギリス社会は市場経済の効率性と社会正義や環境維持を両立させるべきだと願うから.どうすればそれを実現できるのか? その選択は,キャメロンでも,ミリバンドでもなく,もっと複雑なものだと思う.

もしわれわれが大陸的な比例代表制であれば,われわれの投票は代表に反映される.しかし,イギリスは選挙区で最大の得票が一人の代表を決める.それ以外の票は無駄になる.それゆえ,多くの選挙区では保守党か労働党の候補者が当選することは確実である.どちらの政党も支持しない者は,いわゆる「戦術的投票」を行う.

支持するかどうかではなく,だれが当選すれば目的に近付けるか,はートではなく頭で投票を決める.


l  通貨戦争

Project Syndicate MAY 1, 2015

The Dollar Joins the Currency Wars

NOURIEL ROUBINI

先進諸国でも新興市場でも国内需要が弱く,政策担当者たちは成長と雇用を刺激するために輸出志向型成長に向かう傾向がある.それは弱い通貨を求め,金融緩和によって通貨の減価を求める.

しかし,ユーロ圏のQEが促したユーロ安は,昨年すでにGDP8%にも達していたドイツの経常収支黒字をますます増大させた.ユーロ圏内部の不均衡が深刻になっている.

ECBや日銀の量的緩和はドル高をもたらした.一次産品を輸出するオーストラリアやカナダ,多くの新興市場でも,石油など,国際商品価格の下落によって,ドル高が進んでいる.経済や金融が脆弱な国,また,中国でさえ,減価を生じた.中国の過剰生産力が世界市場にはけ口を求めているからだ.

最近になって,アメリカ政府の姿勢が変化した.ドル高の影響は,国内の所得や雇用の回復に悪影響を及ぼさない,という観方を変えたのだ.その姿勢は,政策に反映され,アメリカも「通貨戦争」に参加するだろう.アメリカ政府は,次第に,ドイツ政府の緊縮姿勢について,ユーロ安と他国の内需刺激策を妨げている,と批判するようになっている.

通貨摩擦は貿易摩擦を呼ぶ.アメリカ議会でのTPP批准が難しいと考えるオバマ政権は,「通貨操作」に対する制裁関税を付加するかもしれない.その場合,アジア諸国はTPPから離脱するだろう.

すべての政府が内需を刺激して成長を実現する方が,他国を貧しくする輸出型成長を目指すより良い.そのためには,金融政策に頼るより,もっと財政政策で刺激する必要がある.賃金を引き上げる所得政策でも,通貨戦争より良い.

貿易収支は世界全体でゼロになるから,ゼロサム・ゲームでしかない.それでも,アメリカの参戦は迫っている.


l  安倍首相

Project Syndicate MAY 7, 2015

Japan’s Good Fight

JOHN LEE

安倍首相は,アメリカでオバマ大統領との重要な首脳会談を成功させた.特に,日米防衛ガイドラインを見直し,自衛隊がアメリカ軍の後方支援活動に参加すること,アメリカは日本が管轄する尖閣諸島の防衛に協力すると約束したこと,は画期的である.

アメリカ議会合同委員会での演説を終えても,安倍は帰国せずに,カリフォルニア,シリコンバレーを訪ねた.そして,優雅に衰退するというのが日本の宿命ではないし,アメリカ経済が何度も復活したように,日本経済も復活するのだ,というメッセージを送ろうとした,

安倍は,その政治的・戦略的な目標を実現するため,アジア経済の未来が中国のものになる,という支配的な考え方を否定しなければならない,と知っている.安倍が失敗すれば,アジアの諸政府は地政学的に中国と同盟を組むしかなく,それは自由を犠牲にして繁栄を得ることにつながる.今や,多くの東アジア諸国は安倍の成功を願っている.

中国が成長したことは事実だが,今でも日本の消費者の購買力,日本からの直接投資や技術力,などで見て,中国よりも日本が好まれている.同時に,日本はこの優位を失わないように改革を進めるべきである.特に,労働市場,労使関係の改革だ.それは安倍首相が「3本目の矢」として意識していることである.

もちろん,アベノミクスが成功する保証はないが,中国もさらに困難な改革を迫られている.中国の政治経済制度は,急速な経済成長の30年を経ても,なお冷戦時のままである.法の支配,知的財産,能力主義,国家が好む企業ではなく,本当に価値のある企業に成長の資金や機会が得られるような,制度を構築する過程は,まだ始まったばかりだ.

日本は,アジアの秩序を築く競争から決して退場していない.むしろ,非常に重要な戦略的役割を担い続けるだろう.安倍の訪米は日本の重要性を再確認した.

それは何か皮肉なものがある.第2次世界大戦の日本の敗北を祝う70周年であるが,アメリカと多くのアジア諸国の政府は,安倍の戦いを静かに声援している.この戦いは,アジアを超えて世界にまで繁栄をもたらすものだから.


l  TPP

Project Syndicate MAY 7, 2015

New and Improved Trade Agreements?

JEFFREY FRANKEL

オバマ政権は,議会から貿易促進権限Trade Promotion Authority (TPA)を与えられなければ,TPP交渉をまとめることができない.オバマはTPPへの支持を得るために,環境規制,労働者の権利,地政学的な理由を挙げた.NAFTAは極めて不人気で,オバマはその失敗を繰り返さない,というのだ.

しかし,そうした主張は間違いだ.過去の自由貿易協定はアメリカ(と貿易相手)に利益をもたらしたからだ.TPPを支持する議論も貿易の利益であるべきだ.

貿易の利益は,デーヴィッド・リカードの比較生産費説にさかのぼる.相対的に有利な生産費から利益を得るし,生産性が高まり,購買力も増える.仕事が減ると言う主張は,重商主義の名残である.重商主義者は貿易黒字だけが利益をもたらす,と主張した.

この点でも,アメリカは交渉上の有利さがある.なぜなら,交渉相手の諸国に比べて,アメリカは自由化が進んでいるからだ.TPP参加諸国は高い関税率や非関税障壁を設けており,それが除去されればアメリカの輸出が増え,雇用も増えるだろう.それは,NAFTAWTOが加わった1990年代の経験が示している.

確かに,失業率の高い時期,需要が潜在的な生産水準を下回っている時期には,自由化が難しい.2007-2008年の世界金融危機の後がそうだ.輸出を伸ばしてGDPや雇用を増やす,という重商主義論が支持される.それは赤字国から奪うものだ.

こうした「近隣窮乏化」は報復を招き,すべての者が不利益を強いられる.G20の指導者たちは新しい貿易障壁を抑えることに合意した.

今はアメリカの景気回復が進み,失業率は6%以下で,完全雇用に近い.このような場合,輸出が増えると,雇用増加よりも賃金上昇をもたらすだろう.TPPは,過去の自由貿易協定と同じく,アメリカの中位の実質所得を引き上げる.


l  ギリシャの改革

FT May 4, 2015

Grexit may be the best end for a bad marriage

Gideon Rachman

ギリシャ政府とユーロ圏の他の諸国との関係は,ますます,失敗した結婚に似てきた.互いを見るのも嫌になり,相互の信頼は消滅した.事態を緩和するバンソコだけで,何一つ機能しない.

現実世界で,こうした結婚の解決策は,離婚である.双方が金銭的なコストを覚悟して,それでも新しい関係に向かう.ギリシャとユーロ圏もそうだ.

Project Syndicate MAY 6, 2015

A Blueprint for Greece’s Recovery

YANIS VAROUFAKIS

ギリシャ政府とIMFEUECBとの交渉は数か月たつが,ほとんど前進していない.その一つの理由は,注意が次の資金供給をするかどうか,だけに集中して,ギリシャが回復し,健全な経済に変えることを考えていないことだ.

持続的な回復には,さまざまな分野でボトルネックを取り除くことにより,ギリシャの潜在力を大きく高める相乗的な改革が求められる.生産的投資,信用提供,イノベーション,競争,社会保障,公的部門,司法,労働市場,文化産業,そして,民主的ガバナンス,である.

債務デフレの7年間は,緊縮計画が永久に続くという予想によって.政府・民間の投資が減少し,不安が強められ,脆弱な銀行は融資を止めてしまった.不良債権を抱えた銀行を再建する財源が,政府にもなかった.

経済に不況を脱出する速度を与える十分な投資と信用の増大をもたらすには,2つの公的機関が必要である.開発銀行と,(不良債権処理の)「バッド・バンク」である.

想像してほしい.開発銀行は,欧州委員会のJean-Claude Juncker委員長が提唱する投資計画とリンクする.財政の穴埋めに強いられた公的資産の投げ売りではなく,開発のための政府・民間パートナーシップとして民営化が行われる.

想像してほしい.経済危機の中で納税者の寛大な資金提供で資本を増強したが,「バッド・バンク」が金融部門の不良債権処理を助ける.開発銀行の良好なインパクトにより,投資と信用の流れがギリシャの乾いた経済に吸い込まれる.「バッド・バンク」は利潤をもたらし,「グッド」に転換するだろう.

最後に,想像してほしい.これらが金融,財政,社会保障のエコシステムに何をもたらすか.銀行の株価は大きく上昇し,銀行の資本を保有して大きな赤字となっている政府の損失は消滅し,むしろ黒字になる.開発銀行の配当は,債務削減で長期の損失を強いられた年金基金に流れ込む.このシナリオは,年金を統一し,雇用が回復する中で,危機の間に野蛮な規制緩和で正規雇用を失った人々にも雇用をもたらす.

さらに,想像できるだろう.超低利回りの世界で,ギリシャの劇的な回復が機会を示し,直接投資が着実に流入することだ.これは2008年以前の,債務に依存したポンツィ型のブームではない.

ポンツィ型成長をもたらしたのは,商業銀行から消費の熱狂に流れた融資であった.あるいは,政府が中身のない事業や全くの贅沢に費消したのだ.そうならないために,ギリシャの社会経済,政治システムを改革するべきだ.新しいバブルは,われわれ政府が求める発展ではない.

過去とは対照的に,開発銀行は国内の貴重な資源を生産的な投資に集中する.IT企業,有機農家,輸出指向の製薬会社,国際企業の立地を求め,教育プログラムに投資する.

同時に規制監督局が,商慣行や悪弊を排除し,財政赤字に頼った政府は行動を改める.カルテル,意味のない専門職,官僚制を廃止する.彼らは伝統的に政府を動かしてきたが,われわれの政府は彼らの敵である,と知るはずだ.

民主主義の透明性こそが改革を成し遂げる.われわれの政府はそれを決意している.


l  グリーンな覇権国

NYT MAY 6, 2015

Germany, the Green Superpower

Thomas L. Friedman

ドイツはエネルギー転換を遂げて,太陽や風力による再生可能エネルギーの市場を創りだし,グリーンな大国となった.しかも,ドイツはますますヨーロッパでその重要性を増しており,ウクライナ紛争でロシアに対する制裁を主導した.ヨーロッパが直面している難民危機や中国とロシアの地中海における演習に対しても,ヨーロッパとしての対応を形成することになるだろう.

ドイツは指導することを学びつつあるが,ヨーロッパ諸国がドイツに指導されたくないと考えていることを知っている.だからEUを強化するのだ.

ドイツは21世紀最初のグリーンな覇権国家になるだろう.

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The Economist April 25th 2015

Europe’s boat people

Europe’s boat people: For those in peril

The United States, Japan and trade: Don’t treat trade as a weapon

Japan and the United States: Base issues

Banyan: Forty years on

Greece: On the Gredge

(コメント) ヨーロッパに向かう難民が増えています.同時に,ヨーロッパ諸国は難民を好まず,受け入れず,協力もしません.かつてベトナムのボートピープルを助けた国際システムを,なぜヨーロッパは再現できないのか? 地中海経済のエコシステムは経済としてもつながっており,その再建を掲げることが次の目標になるはずとわかっていても,EU内の政治不安が深刻でそれを議論できないのです.

安倍首相の訪米を,TPPの地政学的な売り込みや,沖縄問題の軽視,という視点から批判しています.そして,ギリシャはますます危機に向かって近づきます.

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IPEの想像力 5/11/15

The Economistが描く「ヨーロッパの難民危機」を読みながら,アジアの紛争が大規模な難民を出すとき,日本はどう対応するのだろうか,と考えました.

周辺地域で経済の崩壊や独裁体制のほころびが生じた結果,自国の将来に希望を持てない若者は,もっとよい条件で自分の力を試したい,と願うでしょう.たとえ非合法な越境の仲介業者が高額の支払を求めても,また,多くの船が漂流して,沈没による犠牲者が増えたと聞いても,彼らは自国でそれを超える恐怖と絶望を味わっているのです.

EUは移民・難民の受け入れを拒み,その結果,意図しない形で,ギリシャとトルコは移民を拒む国境の壁を建設しました.人の流れはさらに困難なルートに向かい,さらに移民たちは多額の支払を求められ,その苦難が増すことになります.

長期的には,ヨーロッパの周辺地域に治安の回復を促し,経済の再建,成長や雇用が刺激されるヨーロッパとの貿易,投資,教育や技術の移転を積極的に制度化することでしょう.それは,マーシャル・プラン,東欧民主化後のEU拡大,によって示されたことです.しかし,イラク戦争,アラブの春はEUの理想を委縮させ,ユーロ危機とウクライナ紛争は,決定的に内向きの政治,ナショナリズムや移民排斥,EU離脱,分離独立,を強めたと思います.

さまざまな危機をEUが吸収する政治・統治の能力を示せば,移民・難民を積極的に受け入れる水準も高まるでしょう.しかし,現在,The Economistが主張する対策は2つです.1.アフリカにおいて,すなわち移民流出国の側に,移民・難民資格の審査を行うEUのセンターを設けること.2EU側は,移民・難民受け入れの統一基準を設けて,それを満たす移民・難民を各国のGDPなどによって割り当てること.

アジアでも,ADBAIIBが競ってインフラ整備に投資し,成長を加速するとき,また,南シナ海や各国の境界線で紛争が激化するとき,難民が増えるでしょう.国際的な協力や地域の受け入れ態勢が重要になります.日本は積極的な提案を準備しているのでしょうか?

1992年の「日本における外国人労働者問題」や2002年の「書評 伊豫谷登士翁著『グローバリゼーションと移民』」を書きました.私は,為替レートや金融政策と同じように,外国人労働者の移動が,政策に関する国際合意されたルール,それを監視する国際移民システムを成立させ,国際協力体制と情報ネットワークによって次第に解決されるのではないか,と思いました.

あるいは,ヨーロッパに移民政策を調査したとき,移民は旅行者と同様に,各地の旅行代理店・情報センターで行き先を選択し,正しい手続きで自由に行える,円滑な過程になっていることを想像しました.

地域紛争は,難民たちが避難先で訴える国際会議を通じた政治圧力を意識して,関係各国が速やかに解決するようになります.

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