前半から続く)


l  安倍首相

Project Syndicate MAY 1, 2015

Toward an Alliance of Hope

SHINZO ABE

FP MAY 1, 2015

Shinzo Abe’s Sorry Apology

BY SUNG-YOON LEE, ZACH PRZYSTUP

Project Syndicate MAY 7, 2015

Japan’s Good Fight

JOHN LEE

安倍首相は,アメリカでオバマ大統領との重要な首脳会談を成功させた.特に,日米防衛ガイドラインを見直し,自衛隊がアメリカ軍の後方支援活動に参加すること,アメリカは日本が管轄する尖閣諸島の防衛に協力すると約束したこと,は画期的である.

アメリカ議会合同委員会での演説を終えても,安倍は帰国せずに,カリフォルニア,シリコンバレーを訪ねた.そして,優雅に衰退するというのが日本の宿命ではないし,アメリカ経済が何度も復活したように,日本経済も復活するのだ,というメッセージを送ろうとした,

安倍は,その政治的・戦略的な目標を実現するため,アジア経済の未来が中国のものになる,という支配的な考え方を否定しなければならない,と知っている.安倍が失敗すれば,アジアの諸政府は地政学的に中国と同盟を組むしかなく,それは自由を犠牲にして繁栄を得ることにつながる.今や,多くの東アジア諸国は安倍の成功を願っている.

中国が成長したことは事実だが,今でも日本の消費者の購買力,日本からの直接投資や技術力,などで見て,中国よりも日本が好まれている.同時に,日本はこの優位を失わないように改革を進めるべきである.特に,労働市場,労使関係の改革だ.それは安倍首相が「3本目の矢」として意識していることである.

もちろん,アベノミクスが成功する保証はないが,中国もさらに困難な改革を迫られている.中国の政治経済制度は,急速な経済成長の30年を経ても,なお冷戦時のままである.法の支配,知的財産,能力主義,国家が好む企業ではなく,本当に価値のある企業に成長の資金や機会が得られるような,制度を構築する過程は,まだ始まったばかりだ.

日本は,アジアの秩序を築く競争から決して退場していない.むしろ,非常に重要な戦略的役割を担い続けるだろう.安倍の訪米は日本の重要性を再確認した.

それは何か皮肉なものがある.第2次世界大戦の日本の敗北を祝う70周年であるが,アメリカと多くのアジア諸国の政府は,安倍の戦いを静かに声援している.この戦いは,アジアを超えて世界にまで繁栄をもたらすものだから.


l  TPP

Project Syndicate MAY 1, 2015

Will the TPP Help Latin America?

ANDRÉS VELASCO

Project Syndicate MAY 7, 2015

New and Improved Trade Agreements?

JEFFREY FRANKEL

オバマ政権は,議会から貿易促進権限Trade Promotion Authority (TPA)を与えられなければ,TPP交渉をまとめることができない.オバマはTPPへの支持を得るために,環境規制,労働者の権利,地政学的な理由を挙げた.NAFTAは極めて不人気で,オバマはその失敗を繰り返さない,というのだ.

しかし,そうした主張は間違いだ.過去の自由貿易協定はアメリカ(と貿易相手)に利益をもたらしたからだ.TPPを支持する議論も貿易の利益であるべきだ.

貿易の利益は,デーヴィッド・リカードの比較生産費説にさかのぼる.相対的に有利な生産費から利益を得るし,生産性が高まり,購買力も増える.仕事が減ると言う主張は,重商主義の名残である.重商主義者は貿易黒字だけが利益をもたらす,と主張した.

この点でも,アメリカは交渉上の有利さがある.なぜなら,交渉相手の諸国に比べて,アメリカは自由化が進んでいるからだ.TPP参加諸国は高い関税率や非関税障壁を設けており,それが除去されればアメリカの輸出が増え,雇用も増えるだろう.それは,NAFTAWTOが加わった1990年代の経験が示している.

確かに,失業率の高い時期,需要が潜在的な生産水準を下回っている時期には,自由化が難しい.2007-2008年の世界金融危機の後がそうだ.輸出を伸ばしてGDPや雇用を増やす,という重商主義論が支持される.それは赤字国から奪うものだ.

こうした「近隣窮乏化」は報復を招き,すべての者が不利益を強いられる.G20の指導者たちは新しい貿易障壁を抑えることに合意した.

今はアメリカの景気回復が進み,失業率は6%以下で,完全雇用に近い.このような場合,輸出が増えると,雇用増加よりも賃金上昇をもたらすだろう.TPPは,過去の自由貿易協定と同じく,アメリカの中位の実質所得を引き上げる.


NYT MAY 1, 2015

The End of California?

Timothy Egan


NYT MAY 1, 2015

A War to End Jihad

By EUGENE ROGAN


l  デトロイトの復活

FT May 1, 2015

What Detroit can teach us all

Gillian Tett

デトロイトは破産し,その後,住宅の3分の1を撤去・改修して,復活した.われわれは多くのことを学べるはずだ.政治家たちは,他ではないような形で,積極的に協力して闘った.カリフォルニア,プエルトリコ,ギリシャ.その他,西側社会の多くでも,政治の指導力が求められている.


l  ギリシャの改革

FT May 4, 2015

Grexit may be the best end for a bad marriage

Gideon Rachman

ギリシャ政府とユーロ圏の他の諸国との関係は,ますます,失敗した結婚に似てきた.互いを見るのも嫌になり,相互の信頼は消滅した.事態を緩和するバンソコだけで,何一つ機能しない.

現実世界で,こうした結婚の解決策は,離婚である.双方が金銭的なコストを覚悟して,それでも新しい関係に向かう.ギリシャとユーロ圏もそうだ.

Bloomberg MAY 4, 2015

Greece's Firebrand Finance Minister Deserves to Be Heard

By Mohamed A. El-Erian

ギリシャの財務大臣Yanis Varoufakisには,会ったことが無い.しかし,彼は困難な交渉に新しい活気をもたらした.

偶発事件からギリシャがデフォルトし,ユーロ圏を離脱するリスクを,抑えるべきだ.

Project Syndicate MAY 6, 2015

A Blueprint for Greece’s Recovery

YANIS VAROUFAKIS

ギリシャ政府とIMFEUECBとの交渉は数か月たつが,ほとんど前進していない.その一つの理由は,注意が次の資金供給をするかどうか,だけに集中して,ギリシャが回復し,健全な経済に変えることを考えていないことだ.

持続的な回復には,さまざまな分野でボトルネックを取り除くことにより,ギリシャの潜在力を大きく高める相乗的な改革が求められる.生産的投資,信用提供,イノベーション,競争,社会保障,公的部門,司法,労働市場,文化産業,そして,民主的ガバナンス,である.

債務デフレの7年間は,緊縮計画が永久に続くという予想によって.政府・民間の投資が減少し,不安が強められ,脆弱な銀行は融資を止めてしまった.不良債権を抱えた銀行を再建する財源が,政府にもなかった.

経済に不況を脱出する速度を与える十分な投資と信用の増大をもたらすには,2つの公的機関が必要である.開発銀行と,(不良債権処理の)「バッド・バンク」である.

想像してほしい.開発銀行は,欧州委員会のJean-Claude Juncker委員長が提唱する投資計画とリンクする.財政の穴埋めに強いられた公的資産の投げ売りではなく,開発のための政府・民間パートナーシップとして民営化が行われる.

想像してほしい.経済危機の中で納税者の寛大な資金提供で資本を増強したが,「バッド・バンク」が金融部門の不良債権処理を助ける.開発銀行の良好なインパクトにより,投資と信用の流れがギリシャの乾いた経済に吸い込まれる.「バッド・バンク」は利潤をもたらし,「グッド」に転換するだろう.

最後に,想像してほしい.これらが金融,財政,社会保障のエコシステムに何をもたらすか.銀行の株価は大きく上昇し,銀行の資本を保有して大きな赤字となっている政府の損失は消滅し,むしろ黒字になる.開発銀行の配当は,債務削減で長期の損失を強いられた年金基金に流れ込む.このシナリオは,年金を統一し,雇用が回復する中で,危機の間に野蛮な規制緩和で正規雇用を失った人々にも雇用をもたらす.

さらに,想像できるだろう.超低利回りの世界で,ギリシャの劇的な回復が機会を示し,直接投資が着実に流入することだ.これは2008年以前の,債務に依存したポンツィ型のブームではない.

ポンツィ型成長をもたらしたのは,商業銀行から消費の熱狂に流れた融資であった.あるいは,政府が中身のない事業や全くの贅沢に費消したのだ.そうならないために,ギリシャの社会経済,政治システムを改革するべきだ.新しいバブルは,われわれ政府が求める発展ではない.

過去とは対照的に,開発銀行は国内の貴重な資源を生産的な投資に集中する.IT企業,有機農家,輸出指向の製薬会社,国際企業の立地を求め,教育プログラムに投資する.

同時に規制監督局が,商慣行や悪弊を排除し,財政赤字に頼った政府は行動を改める.カルテル,意味のない専門職,官僚制を廃止する.彼らは伝統的に政府を動かしてきたが,われわれの政府は彼らの敵である,と知るはずだ.

民主主義の透明性こそが改革を成し遂げる.われわれの政府はそれを決意している.

Bloomberg MAY 7, 2015

Greece Saunters Across the Autobahn

By Michael Lewis

Bloomberg MAY 7, 2015

Greece Needs Some Post-Soviet Medicine

By Leonid Bershidsky


l  国連事務総長

Project Syndicate MAY 4, 2015

How to Select the Next UN Secretary-General

NGAIRE WOODS and NINA HALL


l  粛清の時代に比べて

NYT MAY 5, 2015

Is It 1937 Yet?

By MASHA GESSEN

ロシアについて書く者は,あるいは,ロシアに住む人や,ロシアのことを考える人は,「自体がどれほど悪いのか?」 としばしば問いかける.「ペレストロイカの前と同じくらいひどいのか?」 「プーチンはスターリンと同じくらいひどいか?」 その中でも最も強い問いかけは,「まだ1937年ではないのか?」 というものだ.1937年はスターリンによる大粛清が始まった年として認められている.ロシア人の記憶する最も恐ろしい年だ.

プーチンは,全体主義国家のイデオロギー装置を復活させたが,全面的なテロを使用してはいない.まだ,今はましである.


l  地政学の復活

FP MAY 5, 2015

The Problem With Kissinger’s World Order

BY JAMES TRAUB

地政学の復活が主張されている.しかし,キッシンジャーの国家による勢力均衡への回帰は間違っている.


l  グリーンな覇権国

NYT MAY 6, 2015

Germany, the Green Superpower

Thomas L. Friedman

ドイツはエネルギー転換を遂げて,太陽や風力による再生可能エネルギーの市場を創りだし,グリーンな大国となった.しかも,ドイツはますますヨーロッパでその重要性を増しており,ウクライナ紛争でロシアに対する制裁を主導した.ヨーロッパが直面している難民危機や中国とロシアの地中海における演習に対しても,ヨーロッパとしての対応を形成することになるだろう.

ドイツは指導することを学びつつあるが,ヨーロッパ諸国がドイツに指導されたくないと考えていることを知っている.だからEUを強化するのだ.

ドイツは21世紀最初のグリーンな覇権国家になるだろう.


l  ヨーロッパの移民危機

NYT MAY 6, 2015

Open Up, Europe! Let Migrants In

By PHILIPPE LEGRAIN

NYT MAY 7, 2015

Australia’s Rigid Immigration Barrier

By GABRIELLE APPLEBY


FT May 7, 2015

Netanyahu, not Obama, has the power to make peace

Philip Gordon


l  プーチンと習

FT May 7, 2015

Putin and Xi: not quite the allies they seem


l  インド

FT May 7, 2015

India: Learning a hard lesson

Amy Kazmin

NYT MAY 7, 2015

India’s Chilling Crackdown

By THE EDITORIAL BOARD

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The Economist April 25th 2015

Europe’s boat people

Europe’s boat people: For those in peril

The United States, Japan and trade: Don’t treat trade as a weapon

Japan and the United States: Base issues

Banyan: Forty years on

Greece: On the Gredge

(コメント) ヨーロッパに向かう難民が増えています.同時に,ヨーロッパ諸国は難民を好まず,受け入れず,協力もしません.かつてベトナムのボートピープルを助けた国際システムを,なぜヨーロッパは再現できないのか? 地中海経済のエコシステムは経済としてもつながっており,その再建を掲げることが次の目標になるはずとわかっていても,EU内の政治不安が深刻でそれを議論できないのです.

安倍首相の訪米を,TPPの地政学的な売り込みや,沖縄問題の軽視,という視点から批判しています.そして,ギリシャはますます危機に向かって近づきます.

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IPEの想像力 5/11/15

The Economistが描く「ヨーロッパの難民危機」を読みながら,アジアの紛争が大規模な難民を出すとき,日本はどう対応するのだろうか,と考えました.

周辺地域で経済の崩壊や独裁体制のほころびが生じた結果,自国の将来に希望を持てない若者は,もっとよい条件で自分の力を試したい,と願うでしょう.たとえ非合法な越境の仲介業者が高額の支払を求めても,また,多くの船が漂流して,沈没による犠牲者が増えたと聞いても,彼らは自国でそれを超える恐怖と絶望を味わっているのです.

EUは移民・難民の受け入れを拒み,その結果,意図しない形で,ギリシャとトルコは移民を拒む国境の壁を建設しました.人の流れはさらに困難なルートに向かい,さらに移民たちは多額の支払を求められ,その苦難が増すことになります.

長期的には,ヨーロッパの周辺地域に治安の回復を促し,経済の再建,成長や雇用が刺激されるヨーロッパとの貿易,投資,教育や技術の移転を積極的に制度化することでしょう.それは,マーシャル・プラン,東欧民主化後のEU拡大,によって示されたことです.しかし,イラク戦争,アラブの春はEUの理想を委縮させ,ユーロ危機とウクライナ紛争は,決定的に内向きの政治,ナショナリズムや移民排斥,EU離脱,分離独立,を強めたと思います.

さまざまな危機をEUが吸収する政治・統治の能力を示せば,移民・難民を積極的に受け入れる水準も高まるでしょう.しかし,現在,The Economistが主張する対策は2つです.1.アフリカにおいて,すなわち移民流出国の側に,移民・難民資格の審査を行うEUのセンターを設けること.2EU側は,移民・難民受け入れの統一基準を設けて,それを満たす移民・難民を各国のGDPなどによって割り当てること.

アジアでも,ADBAIIBが競ってインフラ整備に投資し,成長を加速するとき,また,南シナ海や各国の境界線で紛争が激化するとき,難民が増えるでしょう.国際的な協力や地域の受け入れ態勢が重要になります.日本は積極的な提案を準備しているのでしょうか?

1992年の「日本における外国人労働者問題」や2002年の「書評 伊豫谷登士翁著『グローバリゼーションと移民』」を書きました.私は,為替レートや金融政策と同じように,外国人労働者の移動が,政策に関する国際合意されたルール,それを監視する国際移民システムを成立させ,国際協力体制と情報ネットワークによって次第に解決されるのではないか,と思いました.

あるいは,ヨーロッパに移民政策を調査したとき,移民は旅行者と同様に,各地の旅行代理店・情報センターで行き先を選択し,正しい手続きで自由に行える,円滑な過程になっていることを想像しました.

地域紛争は,難民たちが避難先で訴える国際会議を通じた政治圧力を意識して,関係各国が速やかに解決するようになります.

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