IPEの果樹園2015

今週のReview

5/4-/9

 

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イランへの関与外交 ・・・独裁と民主主義の経済競争 ・・・中国の大戦略 ・・・ギリシャのデフォルト ・・・安倍首相の訪米 ・・・自由貿易協定 ・・・米中関係の管理

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  イランへの関与外交

Project Syndicate APR 24, 2015

Leading By Engaging

ANNE-MARIE SLAUGHTER

オバマ大統領は,その就任演説から,「関与」の外交政策を主張してきた.彼は,前任者であるジョージ・W・ブッシュ大統領の「悪漢国家」を孤立化させる政策を拒んだのだ.その成果は,ミャンマー,キューバ,イランに示された.

しかし,関与は,それ自体が目的ではない.2国間と地域における関係を変えるための手段である.その意味で,それぞれの国に対して,まだ多くの課題が残されている.

2016年の大統領選挙で共和党の候補者たちが何を言うとしても,オバマの代行政策は成果を上げている.それにもかかわらず,アメリカの影響力が低下したことが議論されることには,2つの答がある.

1に,アメリカ国内の政治的な行き詰まりが大統領の国際交渉力を大きく損なっている.第2に,国際機関を介したような,多角的関与が必要になっており,これは2国間の関与よりも難しい.

次の大統領に求められるのは,こうした新しい関与政策である.


l  独裁と民主主義の経済競争

Project Syndicate APR 24, 2015

Democracy Versus Growth?

HAROLD JAMES

ヨーロッパの景気回復が弱いことから,経済成果を高めるのに適した政治形態をめぐる古くからの論争がよみがえった.

この数十年を観ても,政治体制に関する経済成果の証拠は振幅を繰り返した.1980年代には,チリのピノチェト独裁体制下で,また善政としてだが,同様に独裁的なリー・クアンユーのシンガポールで,優れた経済成果が示された.他方,工業化された世界の民主主義諸国は,不況と停滞に苦しんだ.

ヨーロッパでは「ヨーロッパ硬化症」と言われた.民主主義は,成長を損なうような特集利益団体の要求に弱い,と政治学者たちは言った.権威主義体制の方が,長期的な経済成果をもたらす政策の実行に適している,というわけだ.

この見解は,ベルリンの壁崩壊,で変わった.東欧における共産主義の崩壊,中央計画体制の廃止は,新しい理解をもたらした.現実的で,腐敗していない改革案があれば,短期的な損失にもかかわらず,多数の人々が選挙で改革を支持する,ということだ.またラテンアメリカでは,左派政党が政権に就いて,有権者たちの希望を満たし,成長を回復するために,最善の方法が市場原理を受け入れることだ,と認めた.こうして1990年代には,民主主義が優勢であった.

しかし,論争は終わらない.世紀の転換期から,中国が超高速の成長を実現し,権威主義体制の優位を顕著に示したからだ.中国共産党は,世界経済の乱気流を見事に回避した.ロシアのプーチン,トルコのエルドアン,エジプトのシシ,ハンガリーのオルバンは,市場の安定化と成長のためには,民主主義を犠牲にするべき時がある,と主張した.

無限に続くようなユーロ危機によって,ヨーロッパの指導者からもそのような意見が示された.危機が始まった頃,現在は欧州委員会の委員長になっているユンカーが,次のように発言して有名になった.「われわれは何をすべきか知っているが,それをした後,どうやったら再選されるかがわからないのだ.」

20105月,ヨーロッパの指導者たちはギリシャに改革を実施させることができず,IMFを改革実行の規律のために参加させた.最近も,ドイツのショイブレ財務大臣は,「もし誰かが議会に改革を強制してくれたら,フランスは喜ぶだろう」と発言して物議をかもした.

権威主義体制は,短期的に無責任な政策を拒んで成果を上げるかもしれないが,長期的には持続できない.有権者に責任を問われない体制は,必ず腐敗し,非効率になる.中国は,今,その問題に苦しんでいる.

民主主義の課題は,長期的に持続可能な政策を実行し,しかも,民主主義的な過程でそれを行うメカニズムを開発する,ということだ.1990年代に東欧の有権者たちが示したように,他の選択肢が無いと理解すれば,彼らはそれを支持した.逆に,ギリシャのように,他の道があると思えば,犠牲を拒むだろう.

政治家たちは,計画をあまりに改変したり,何度も後戻りしたりせずに,決断しなくてはならない.たとえば,大恐慌後のアメリカ議会は,スムート=ホーリー関税法で,破滅的な輸入関税を強いた.それゆえ通商政策は,大統領に権限を委譲し,有権者の圧力から隔離する方が良い,と決定したのだ.同様に,ヨーロッパの財政規律も,長期的で持続可能な戦略に関する議論を経た後,議会ではなく,国民投票に委ねるのが良いだろう.決定された後,その実施は加盟諸国に委ねられる.

民主的な意思決定の代替案は,権威主義体制ではなく,政策の実施メカニズムである.冷静に考え抜かれた方策が,危機に対する感情的な反発によって損なわれないようにすることだ.


l  中国の大戦略

Project Syndicate APR 27, 2015

The AIIB and Global Governance

ANDREW SHENG and XIAO GENG

アメリカと日本の政府が反対したにもかかわらず,中国が主導するAIIBは,57カ国が設立メンバーとなって,グローバルな経済発展に役立つ機関として始まった.その成否は,AIIBの幹部による意思決定にかかっている.

中国は,ブレトンウッズの枠組み内で発言権を組み直すことにより,参加し続けることを受け入れただろう.英独仏の各4.3%に対して,その3倍の経済規模を持つ中国は3.8%であった.経済規模に見合った発言力を要求する中国に対して,それを拒むなら,新しい機関を提案するしかない.

AIIBは,グローバルな公共財としてだけでなく,中国の政治目標となったthe “one belt, one road” initiativeを実現する.中国からヨーロッパに至るシルクロードと,東南アジアや中東をつなぐ海のシルクロードを21世紀に建設する.連結こそが経済成長のカギであるからだ.道路,鉄道,港湾,空港,通信インフラといったシステムを国内で建設した中国は,それをさらに周辺地域に拡大するつもりだ.アメリカは東に「旋回」するが,中国に西に展開する.

AIIBの昨日は,1960年代に世界銀行が果たしていたものに近い.しかし,世界銀行は1980年代後半からワシントンコンセンサスを掲げて,政治経済の現実を無視した自由化の条件を課すようになった.

ブレトンウッズのシステムを改革するだけでなく,グローバルガバナンスはもっと急速に変化しなければならない以上,AIIBの登場を歓迎するべきだろう.


l  ギリシャのデフォルト

VOX 27 April 2015

The coming defaults of Greece

Charles Wyplosz

ギリシャのジレンマはReinhart and Rogoff (2009)が示す2つの事実に特に関連する.

1.デフォルトはありふれた事実である.2.ギリシャは特にデフォルトを繰り返した国である.

それゆえ興味深いのは,通貨同盟内でギリシャがデフォルトする,という事態をどう見るか,である.

デフォルトと通貨同盟からの離脱とは自動的に結びつかない.ドルの通貨同盟における政府のデフォルトは,カリフォルニアのオレンジ郡,ミシガンのデトロイトのように,中心から外れた政府がデフォルトしても通貨同盟が維持できることを示している.その場合,1.通貨の切り下げはできない,2.通貨供給できる中央銀行はない.これらの点で,ユニークであった.

ギリシャ政府は独自通貨を回復する誘惑を感じている.しかし,その短期的なコストは,短期的な利益を超えるだろう.アルゼンチンがドルに対するカレンシー・ボードを離脱した例は,自国通貨が存在していたため,ギリシャのケースに比べて容易であった.むしろ,それでもアルゼンチンが経験した政治的混乱に注意するべきだ.

他方,長期的には,ドラクマが大幅に減価して,ギリシャ経済が回復するかもしれない.そうなれば,ユーロ圏内で締め付けられた経験から,通貨の自律性に感謝するだろう.大きなショックと惨めな数年,あるいは,永久に続くユーロ圏の制約,そのトレードオフである.バランスを決めるのは難しい.不明確な制度の条件によるからだ.特に,

ギリシャは財政規律を回復するのか?

中央銀行は良質な金融政策を提供できるのか?

ユーロ圏はGrexitからのすべての教訓を学んで,政策や場がナンスを改善するのか?

通常の条件では,政府がデフォルトしてもファイナンスの必要はない.通貨同盟にもとどまれる.経常赤字があるとしても,それは民間で融資されている.ギリシャの場合,ユーロ圏を離脱しなければならないマクロの圧力は生じない.

しかし,条件が通常ではない.危機の場合,デフォルトはそれを悪化させる.人々がデフォルトとユーロ圏離脱を同一視するなら,それは自己実現的な予言になるからだ.彼らはギリシャの金融機関に貯蓄を置きたがらない.すでに,資金が大量に流出している.201412月以来,銀行預金の約5分の1が引き出された,と推定される.

銀行の取付に対処するのは,科学ではなく,アートである.第1に,資本流出規制,もしくは預金封鎖.第2は,公的資金の投入,同時に,支払不能の銀行を国有化.

誰がそれを決めるのか? デフォルトした政府に緊急時の財源があるのか,それはないとすると,中央銀行がそれ自身で資金を供給するのか? 要するに,ECBである.De Grauweが明確に示したように,政府債務危機は,ユーロが彼らにとっての外国通貨であるから起きるのだ.

銀行への取付けが起きたとき,ECBがそれに融資しなければ,ギリシャは最悪の条件でユーロ圏を離脱しなければならない.スロモーションの銀行取付が起きる中で,ECBはそれを回避するthe Emergency Liquidity Assistance facilityを提供するが,それには条件や制限がある.ギリシャがユーロ圏を離脱すれば,その国債はECBの融資に適した担保ではなくなる.

Grexitを回避するには,デフォルトを回避し,ECBが最後の貸し手であることを示すしかない.自己実現的な予言になってしまう悪循環に対して,これを止めるには,循環の最初,もしくは最後に,介入して阻止することを表明する.すなわち,ギリシャ政府の債務を削減する,と表明する.銀行取付に対する十分な財源を用意した,と表明する.この表明は,融資条件の合意とは独立に,無条件に行われる.

ギリシャ債務の約80%は,すでにヨーロッパ諸機関やIMFなど,公的なものである.すでに十分なことをした,と彼らは考える.デフォルトは,融資を譲許に変えるだけだ.ギリシャにとって良いこともない.

各国の国民によって選出される政府が,Grexitを阻止する行動を取ることはないだろう.ユーロ圏を守る権限を認められたECBだけが,再び,何でもしなければならない.


l  安倍首相の訪米

FT April 26, 2015

US should back Japan but not at any price

安倍晋三は1週間に及ぶアメリカ訪問を開始する.ワシントンは安倍を国賓として迎え,アメリカ議会両院合同会議での演説も行う.

ワシントンは安倍のナショナリズムを警戒しているが,この30年間で最も一貫した指導者として称賛している.アベノミクスだけでなく,アメリカが長年求めてきた日本の防衛政策に関する改革を目指しているからだ.

しかし,ワシントンは安倍への全面的な支持を示すべきではない.特に,中国との関係である.アメリカは日本を中国封じ込めの手段と見られてはならない.そのような印象は,中国の拡大において平和的な姿勢を失わせる.

安倍の訪米には,この点で,3つの注目する分野がある.第1に,歴史観だ.安倍は,70年前に終わった第2次世界大戦に関して,謝罪することを嫌う日本人の一人である.自国の行為については何も語らず,歴史を直視せよと日本に説教する中国は,日本人をいらいらさせるだろう.それでも侵略した側として,自分で謝罪が終わったと決める立場にはない.

2に,防衛政策だ.安倍は日本の平和憲法を改正し,国際安全保障に参加する余地を作りたがっている.ペンタゴンはこれを全面的に支持する.中国の軍事力拡大に不安を抱く近隣諸国も,それを支持する.これは中国に対抗する防衛協定でないなら,中国も参加する地域安全保障として,有益な可能性を持つ.

最後に,通商政策だ.TPPは,中国を含まない12カ国によって交渉されている.アメリカ上院が一括交渉権限を大統領に認める必要がある.また,TPPも中国に対する地政学的な同盟ではなく,できるだけ早期に,中国の参加を実現するべきだ.

安倍の訪米は,中国を国際社会に招き入れる意味があり,中国の排除が目的ではない.

FT April 29, 2015

Honest-ish Abe talks up Obama’s pivot

ED Luce

安倍の演説は,ネタニヤフのような熱烈な称賛を呼ばなかったが,その防衛政策の面で,「アジア旋回」を唱えるアメリカを喜ばせた.TPPに関して期待されたような議会への約束はなかった.アメリカ兵の苦しみに悔恨を示す新しい表現はあったが,アジアの諸国には何も付けくわえず,日本を賛美する教科書への見直しが変わることはない.

それでもアメリカは防衛面で中国へのバランスを重視し,日本が共同で抑止力を高める,という主張に喜んだかもしれない.しかし,日本が中国との関係を改善しない限り,それは両刃の剣である.

Bloomberg APR 29, 2015

Blame George Kennan for Abe's Bad History

By James Gibney

戦後日本のアメリカによる占領と改革は,理想主義者と現実主義者との混合物であった.理想主義者は,日本を「アジアのスイス」にしたかった.経済と社会を自由化し,平和主義の第9条を含む憲法を残した.現実主義は,ジョージ・F・ケナンなど,日本を「太平洋における安全保障システムの要」にしたかった.

ケナンたちは占領政策を180度転換し,証拠不十分で岸伸介を戦犯容疑から解放した.岸はその見返りに,日米安保条約を成立させた.それはNATOと並ぶ,戦後アメリカの戦略的成果であった.その孫として,安倍の防衛政策はその延長にある.

しかし,もしケナンではなく,リベラルな改革派がそのまま支配的であったなら,現在の日本はもっと活気に富んだ,ダイナミックな社会になっていただろう.


l  自由貿易協定

NYT APRIL 29, 2015

On Trade: Obama Right, Critics Wrong

Thomas L. Friedman

私は太平洋や大西洋の同盟諸国と自由貿易協定を結ぶことを強く支持する.それは,単に経済的な理由からではない.

これらは世界の民主主義的な資本主義において,その経済的な保障だけでなく,安全保障を高度に実現するものだから.それこそわれわれが第2次世界大戦後に築いてきた「ルールに依拠した世界」を維持するために必要だから.

世界は,秩序ある部分と無秩序な部分に分割されてきた.ヨーロッパから見ると,それは恐ろしい.リビア,イエメン,シリア,イラク,アラブ世界の中核が崩壊して,宗派と部族の間で内戦状態になっている.水不足や環境の危機が悪化する.

しかし,決定的な点は,それらがオスマン,イギリス,フランスの帝国を失った,脱植民地,脱権威主義体制の世界であることだ.持続的な秩序は,コミュニティとして,人々の社会契約として,下から築かれるしかない.しかし,チュニジアを除いて,それは起こらず,人々は難民となって秩序ある島々に逃れようとする.ヨーロッパ,イスラエル,ヨルダン,レバノン,クルド人地区.

地中海をふさぐリビアのカダフィがいなくなって,ヨーロッパを目指す非合法移民の流れは止まらなくなった.NATOは「非航海海域」を設けるのか?

ロシアや中国は,彼らのやり方で秩序の改変を試みるだろう.21世紀において,自由市場と民主主義の諸国が,秩序ある世界の中核としてグローバルな統合化のルールに合意することは非常に重要である.そこには貿易,労働,環境の基準が含まれる.

TPPの合意を求めて,オバマは中国企業や中国人労働者に有利な秩序ができてしまう,と述べた.われわれが,今,しなければ,20年たって,後悔するだろう.まったくそうだ.ただし,20年ではない.もっと早いはずだ.


l  米中関係の管理

FP APRIL 27, 2015

Where Do We Draw the Line on Balancing China?

BY STEPHEN M. WALT

中国に対するバランシングを始めるときだろうか?

国際政治は,バランス・オブ・パワーによって規範や制度,政治的枠組み,すなわち「現状」を維持する.しかし,バランス・オブ・パワーが変化すれば,新興国は自国に有利な形で「現状」を変化させる.この傾向もまた完全に正しい.

それゆえ,中国のパワーがこれからも増大するのであれば,現在の国際秩序は調整するべきであろう.中国が,他国の作った制度や領土的枠組み,特に,中国が弱いときにできたものを,そのまま受動的に認めると考えるのは愚かである.

どの程度まで,中国が求める調整を受け入れるのか? アメリカは,そして同盟諸国は,どこに線を引くのか?

ここで考えるべきは,中国の方がアメリカ市場への輸出に大きく依存し,アメリカが明白に軍事的な優位を保っていることだ.それでも,アメリカは世界全域で介入することを止め,その地域や問題を選択して,巧妙な戦略を組み立て,同盟諸国との関係を外交的に利用しなければならない,ということだ.

ネオコンの外交は,まったくその逆であった.共和党の大統領候補たちは,その失敗から何も学んでいないようだ.

Project Syndicate APR 30, 2015

A New Blueprint for US-China Relations

GARETH EVANS

これからの数十年間,世界の平和を維持するために重要な問題とは,アメリカと中国がその相対的なパワーの変化をどのように扱うか,ということだ.それに比べれば,ロシアも,中東も,それほど重要ではない.

最近,the Council on Foreign Relationsのレポートで,Robert Blackwill and Ashley Tellisがアメリカのグランド・ストラテジーを議論した.その中で,アメリカはグローバルなシステムにおける優位を維持するために,経済・政治・軍事的な手段で中国の台頭にバランスを取るべきだ,と主張した.

これに対して,the Harvard Kennedy SchoolBelfer Center for Science and International Affairsから出たレポートで,Kevin Ruddは「建設的リアリズム」を主張している.ラッドは,台湾,南シナ海・東シナ海の領域,アメリカの同盟関係,中国の軍備近代化,政治体制の正当性,のように,ある領域では意見の対立が存在し,今後も紛糾することを認める.双方は安易な解決策を避け,慎重に扱うべきだ.

しかし,システミックな協力が可能な建設的部分もある.アメリカは中国をもっと対等に扱うことで,2国間,地域,グローバルなレベルで,もっと困難な問題に両国で取り組むことができる.2国間では,テロ,サイバー・セキュリティー,予定外の軍事行動,包括的な核拡散防止.

地域では,朝鮮半島の非核化,再統一,日本との歴史問題,通商協定,東アジアサミット.グローバルには,気候変動,G20,人民元の国際化,IMF・世界銀行,その他の国際機関の改革.

西側には,ベテランのチャイナ・ウォッチャー,David Shambaughなど,中国は破局に向かう,という予測から,こうした国際協力や国際制度の調整が不要である,という者もいる.しかし,ラッドは,中国が成長を持続し,アメリカや世界はそれに調整を必要とする,と考える.

アメリカ大統領候補の誰も,アメリカがナンバー・ワンであるという話を好む.しかし21世紀が20世紀と違う平和な時代であるように願う者は,アメリカが,「優位」や「支配」という言葉を使わず,協調や協力を議論するようになることを望む.

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The Economist April 18th 2015

Dynasties

Turkey and Armenia: A time to heal

Reform in China: The quiet revolution

China’s economy: Coming down to earth

Marco Rubio: Young, gifted and not Barack

Central America: Stemming the migrant tide

Germany and asylum: Is Troglitz everywhere?

(コメント) 政治家や企業が家族によって世代を超えて長期の繁栄を維持する,という現象は,株式公開や普通選挙制度によって消滅する,と思われていました.ところが,そうではない,という特集記事を載せています.それには理由があって,なくなりそうにないから,それが有害ではなく,有益なものであるようにするべきだ,と.

私は記事が間違っていると思います.

中国の株式市場や銀行の不良債権が,バブル破たんと不況をもたらす,という警鐘に対して,反対する記事が載っています.これは興味深く,説得的です.中国は大陸規模の経済であって,いくつかの都市や産業が衰退し,あるいは,バブル破たんしても,全体の改革を進めることが重要だ,と中国政府の姿勢を称賛します.

他にも,アメリカ共和党の若い大統領候補はキューバからの移民の子どもであり,中央アメリカからの未成年の移民に対する対策をオバマ政権が積極的に示したこと,ドイツに流入する難民に対する国民の不満,を読み,雑誌を置いて考えました.

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IPEの想像力 5/4/15

Kissingerが描くウェストファリア型の国際秩序は,平和の維持を,現在の国際秩序の安定化として強調する傾向がある.

私は,次の国際秩序が日中間の対立よりも,和解と制度化によって実現するだろう,と思った.しかし,安倍氏を支持するナショナリストや,日中の軍備強化を重視する者は,それを理想主義者の妄想にすぎない,と怒る(笑う)だろう.

中国の留学生に,どうして日本人は安倍首相を支持しましたか? と聞かれたことがあります.・・・

アメリカを訪れたのが,安倍首相ではなく,社会進歩党の若い,41歳の首相であれば,オバマとの会談や両院合同委員会での演説内容も違ったはずだ.

演説には3つの強調点があった.防衛政策,TPP,歴史問題,である.いずれも,そこにいない中国に向けた日米の共同声明にもなった.

防衛政策では,日本が平和主義の憲法を尊重した地域安全保障を構築する,と宣言し,アメリカはこれに協力したい,と述べるだろう.安全保障は,戦争によって得るものではなく,繁栄を共有すること(貿易と投資)で確立できる.日本政府は,アジアや世界から核兵器をなくすことを真剣に考え,各国と協力して行動する.

国境をめぐる紛争を凍結し,長期的な視点で,経済的繁栄に役立つような,交渉による解決を模索する.軍事的な緊張や威嚇に対しては,日本国内の安全保障に関する国民合意を形成し,日米が協力して高度な防衛網を築く.危機管理と漸進的な軍縮が共通の目標である.

TPPは,国内産業の競争条件を整理し,日米を超えて,アジア太平洋の経済的繁栄をすべての国,すべての市民が共有できる制度を目指す.合意内容や交渉過程は,その具体的な内容を事後的に精査できるように整理し,議会や市民団体の質問や要求に政府が応える.それは交渉に参加しなかった中国や.他の諸国に対しても,十分に開かれたものになる.

歴史問題について,首相は,日本が起こした戦争において犠牲となった,内外の人々に心からの哀悼の意を表す.それだけでなく,従軍慰安婦や,南京大虐殺,など,重大な戦争犯罪を疑われるケースに関して,関係者や識者を招いた真相究明委員会を組織する.誰が,どのような犯罪行為を命じ,犯したのか,証拠に基づき,調査報告書を世界に公表する.

アメリカを訪問した日本の首相は,中国残留孤児の娘であり,厚生労働大臣は,日本国籍を得た在日朝鮮人である.首相はリンカーン記念センターを訪れ,ナショナリズムを超えて,アジアの改革を指導する新しい世代が登場することをアメリカ人に示したい,と述べる.

共同記者会見でも,多くの時間を使って,ボルティモアの暴動に関する質問に答えるオバマ大統領を助け,首相はアメリカが人種差別問題で歴史の壁を克服する努力をたたえるだろう.

自由の女神像に登って,非合法移民問題,貧困,人種差別,環境問題,社会保障制度,などが,アメリカの新しい理想をどのように実現するか,大いに期待している,と大統領を励ます.中国人コミュニティが,日米の指導者に抗議するのではなく,中国の様々な国内問題を解決する協力関係に期待する,と表明する.・・・

これはたわいない妄想かもしれない.しかし,他国に例のないことではない.政治は想像力を実現するパワーを持っているはずだ.

日本の有権者は,一部の例外を除いて,安倍氏の歴史観や戦争論を支持したわけではない,と私は答えました.安倍氏は,国内の政治基盤を得るために,さまざまな改革にも取り組んだ.アベノミクスと憲法改正の行方は,まだ全く分からない.次の指導者を観てほしい.

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