(前半から続く)
l 安倍首相の訪米
Bloomberg APR 24,
2015
When Women Thrive,
So Will the World
By Shinzo Abe
Bloomberg APR 26,
2015
Japan Needs to Cut
Rice Farmers Down to Size
William Pesek
FT April 26, 2015
US should back
Japan but not at any price
安倍晋三は1週間に及ぶアメリカ訪問を開始する.ワシントンは安倍を国賓として迎え,アメリカ議会両院合同会議での演説も行う.
ワシントンは安倍のナショナリズムを警戒しているが,この30年間で最も一貫した指導者として称賛している.アベノミクスだけでなく,アメリカが長年求めてきた日本の防衛政策に関する改革を目指しているからだ.
しかし,ワシントンは安倍への全面的な支持を示すべきではない.特に,中国との関係である.アメリカは日本を中国封じ込めの手段と見られてはならない.そのような印象は,中国の拡大において平和的な姿勢を失わせる.
安倍の訪米には,この点で,3つの注目する分野がある.第1に,歴史観だ.安倍は,70年前に終わった第2次世界大戦に関して,謝罪することを嫌う日本人の一人である.自国の行為については何も語らず,歴史を直視せよと日本に説教する中国は,日本人をいらいらさせるだろう.それでも侵略した側として,自分で謝罪が終わったと決める立場にはない.
第2に,防衛政策だ.安倍は日本の平和憲法を改正し,国際安全保障に参加する余地を作りたがっている.ペンタゴンはこれを全面的に支持する.中国の軍事力拡大に不安を抱く近隣諸国も,それを支持する.これは中国に対抗する防衛協定でないなら,中国も参加する地域安全保障として,有益な可能性を持つ.
最後に,通商政策だ.TPPは,中国を含まない12カ国によって交渉されている.アメリカ上院が一括交渉権限を大統領に認める必要がある.また,TPPも中国に対する地政学的な同盟ではなく,できるだけ早期に,中国の参加を実現するべきだ.
安倍の訪米は,中国を国際社会に招き入れる意味があり,中国の排除が目的ではない.
FT April 27, 2015
US-Japan defence
pact aims to check China
Geoff Dyer in Washington
NYT APRIL 27, 2015
Japan and U.S. Set
New Rules for Military Cooperation
By MICHAEL R. GORDON and JULIE HIRSCHFELD DAVIS
FP APRIL 27, 2015
Abe Is Back, Japan
Not So Much
BY TOBIAS HARRIS
Bloomberg APR 27,
2015
Japan's Economy
Needs Shock Therapy
By William Pesek
FT April 28, 2015
Why Japan is
vulnerable
John Plender
日本人の国債に偏った貯蓄に大きく依存する現在の低金利状態は,永久には続かない.日本はますます金利上昇に対して脆弱な金融条件を蓄積している.その潜在的なリスクが顕在化するとき,財政危機は,国債を保有する銀行システムの危機と重なるだろう.
NYT APRIL 28, 2015
No Deal, but
Progress on Trans-Pacific Trade, Obama and Shinzo Abe Say After Meeting
By JULIE HIRSCHFELD DAVIS
(China Daily)
2015-04-29
Tale of two regions
after World War II
By Jean-Pierre Lehmann
FT April 29, 2015
Honest-ish Abe
talks up Obama’s pivot
ED Luce
安倍の演説は,ネタニヤフのような熱烈な称賛を呼ばなかったが,その防衛政策の面で,「アジア旋回」を唱えるアメリカを喜ばせた.TPPに関して期待されたような議会への約束はなかった.アメリカ兵の苦しみに悔恨を示す新しい表現はあったが,アジアの諸国には何も付けくわえず,日本を賛美する教科書への見直しが変わることはない.
それでもアメリカは防衛面で中国へのバランスを重視し,日本が共同で抑止力を高める,という主張に喜んだかもしれない.しかし,日本が中国との関係を改善しない限り,それは両刃の剣である.
FP APRIL 29, 2015
Japan’s Abe Sells
Trade Deal to Congress
BY JOHN HUDSON, JAMILA TRINDLE
FP APRIL 28, 2015
U.S. and Japan
Improve Security Ties. On Trade? Not So Much.
BY DAVID FRANCIS
Bloomberg APR 29,
2015
Blame George Kennan
for Abe's Bad History
By James Gibney
戦後日本のアメリカによる占領と改革は,理想主義者と現実主義者との混合物であった.理想主義者は,日本を「アジアのスイス」にしたかった.経済と社会を自由化し,平和主義の第9条を含む憲法を残した.現実主義は,ジョージ・F・ケナンなど,日本を「太平洋における安全保障システムの要」にしたかった.
ケナンたちは占領政策を180度転換し,証拠不十分で岸伸介を戦犯容疑から解放した.岸はその見返りに,日米安保条約を成立させた.それはNATOと並ぶ,戦後アメリカの戦略的成果であった.その孫として,安倍の防衛政策はその延長にある.
しかし,もしケナンではなく,リベラルな改革派がそのまま支配的であったなら,現在の日本はもっと活気に富んだ,ダイナミックな社会になっていただろう.
FT April 30, 2015
The west can look
for answers in Japan’s lost decades
Yoichi Funabashi
日本が「失われた10年」によって欧米の停滞回避に役立つとしたら,それは政治家の政策転換を促す点である.反対派や選挙区の利益団体を恐れて,日本の政治家,政策担当者は行動しなかった.政策を評価する独立した機関が必要である.
Project Syndicate
APR 30, 2015
An Asian Community
Can Wait
KOICHI HAMADA
国際金融市場では,各国が,金融政策や為替レートに関して,ルールをめぐって競争している.国際経済体制に合意することは,深いところで,政治的なプロセスなのである.
TPPやシルクロード基金,AIIBなど,地域の経済統合が熱心に議論されている.アジアでも,人民元や日本の円に為替レートを固定する,あるいはヨーロッパのように,共通通貨を導入することが議論される.しかし,アジアでは為替レートを変動させることが,繁栄と,ショックの回避にとって,最善の手段であろう.
AIIBに参加することを,日本とアメリカは拒んだ.その選択の基準は,自国の繁栄をもたらすかどうか,ということだろう.AIIBのガバナンスは不透明であり,事実上,中国が拒否権を持つ.投資基準はまだ示されていない.「コミュニティ」アプローチのメリットを過大評価してはいけない.それは危機の波及にもつながる.
特に,中国の金融は,間違った投資が膨張し,資源配分が悪化して,2008年の金融危機前にアメリカが陥ったのと似た状態である.確かに,ヨーロッパ諸国はAIIBに参加したが,彼らは中国経済のショックから日本よりも関わることが少ないからだ.日本はAIIBに参加せず,その投資がどのように行われるかを見守るべきだ.
NYT APRIL 30, 2015
War, Repentance and
Japan
By CAROL GIACOM
l 自由貿易協定
NYT APRIL 24, 2015
Economists Actually
Agree on This: The Wisdom of Free Trade
By N. GREGORY MANKIW
議会がオバマに一括交渉権を認めるかどうか,まだ不明確である.多くのエコノミストが貿易の自由化に賛成するが,政治はそれに従わない.
有権者には,貿易に関して,特に3つのバイアスがあるからだ.1.外国人の利益を自国民の利益より低く評価する.2.市場に委ねるより,政府に介入を求める.3.労働の節約より職場の維持を好む.
NYT APRIL 29, 2015
On Trade: Obama
Right, Critics Wrong
Thomas L. Friedman
私は太平洋や大西洋の同盟諸国と自由貿易協定を結ぶことを強く支持する.それは,単に経済的な理由からではない.
これらは世界の民主主義的な資本主義において,その経済的な保障だけでなく,安全保障を高度に実現するものだから.それこそわれわれが第2次世界大戦後に築いてきた「ルールに依拠した世界」を維持するために必要だから.
世界は,秩序ある部分と無秩序な部分に分割されてきた.ヨーロッパから見ると,それは恐ろしい.リビア,イエメン,シリア,イラク,アラブ世界の中核が崩壊して,宗派と部族の間で内戦状態になっている.水不足や環境の危機が悪化する.
しかし,決定的な点は,それらがオスマン,イギリス,フランスの帝国を失った,脱植民地,脱権威主義体制の世界であることだ.持続的な秩序は,コミュニティとして,人々の社会契約として,下から築かれるしかない.しかし,チュニジアを除いて,それは起こらず,人々は難民となって秩序ある島々に逃れようとする.ヨーロッパ,イスラエル,ヨルダン,レバノン,クルド人地区.
地中海をふさぐリビアのカダフィがいなくなって,ヨーロッパを目指す非合法移民の流れは止まらなくなった.NATOは「非航海海域」を設けるのか?
ロシアや中国は,彼らのやり方で秩序の改変を試みるだろう.21世紀において,自由市場と民主主義の諸国が,秩序ある世界の中核としてグローバルな統合化のルールに合意することは非常に重要である.そこには貿易,労働,環境の基準が含まれる.
TPPの合意を求めて,オバマは中国企業や中国人労働者に有利な秩序ができてしまう,と述べた.われわれが,今,しなければ,20年たって,後悔するだろう.まったくそうだ.ただし,20年ではない.もっと早いはずだ.
l テスコの失敗
The Guardian, Sunday
26 April 2015
Tesco’s fall tells
a wider story about our failing capitalism
Will Hutton
資本主義では,企業は利潤を生む機会として組織されている.株主と経営陣のために,消費者のためではなく,企業は経営され,労働者に苦痛とリスクを押し付ける.
l グーグル対ヨーロッパ
FT April 27, 2015
The political storm
over the Googleplex
Gideon Rachman
NYT APRIL 28, 2015
Europe’s Google
Problem
Joe Nocera
l 米中関係の管理
FP APRIL 27, 2015
Where Do We Draw
the Line on Balancing China?
BY STEPHEN M. WALT
中国に対するバランシングを始めるときだろうか?
Robert Blackwill and Ashley Tellisは,最近の論説で,明確にYesと答えた.中国は確実に国力を高めており,アジアにおけるアメリカの役割を減少させたいと望み,結局は国際システムを支配することを目指している.この挑戦に対して,アメリカは,中国の台頭を支援するより,それに対するバランシングを目指すべきだ.
彼らは,アメリカ経済の再生,アジアにおける同盟諸国に有利な通商体制,重要技術の移転拒否,アジアにおけるアメリカと同盟諸国の軍事力強化,を挙げている.同時に,米中関係を高度な水準で包摂し,管理することが望ましい.その目標は,中国がその増大するパワーを間違った形で使用しないようにすることだ.
言うまでもないが,リアリストの私が,こうした主張に反対するのは難しい.しかし,問題はどのようにバランスするか,どこに線を引くのか,である.
国際政治は,バランス・オブ・パワーによって規範や制度,政治的枠組み,すなわち「現状」を維持する.しかし,バランス・オブ・パワーが変化すれば,新興国は自国に有利な形で「現状」を変化させる.この傾向もまた完全に正しい.
それゆえ,中国のパワーがこれからも増大するのであれば,現在の国際秩序は調整するべきであろう.中国が,他国の作った制度や領土的枠組み,特に,中国が弱いときにできたものを,そのまま受動的に認めると考えるのは愚かである.
どの程度まで,中国が求める調整を受け入れるのか? アメリカは,そして同盟諸国は,どこに線を引くのか?
中国の経済規模や貿易額が増大し,各国はささいなことで中国との関係を悪化させることをためらう.それゆえ中国は,重要でない分野の譲歩を迫りながら,それらが蓄積して国際秩序に決定的な変更をもたらす,典型的な「サラミ戦略」を実行している.
ここで考えるべきは,中国の方がアメリカ市場への輸出に大きく依存し,アメリカが明白に軍事的な優位を保っていることだ.それでも,アメリカは世界全域で介入することを止め,その地域や問題を選択して,巧妙な戦略を組み立て,同盟諸国との関係を外交的に利用しなければならない,ということだ.
ネオコンの外交は,まったくその逆であった.共和党の大統領候補たちは,その失敗から何も学んでいないようだ.
FT April 30, 2015
A frosty peace
beckons for the US and China
Philip Stephens
Project Syndicate
APR 30, 2015
A New Blueprint for
US-China Relations
GARETH EVANS
これからの数十年間,世界の平和を維持するために重要な問題とは,アメリカと中国がその相対的なパワーの変化をどのように扱うか,ということだ.それに比べれば,ロシアも,中東も,それほど重要ではない.
米中関係が危険な性格に変わるのは,双方が衝突する経路に入るときだ.中国側では,習近平が指導力を固め,国際的にも,南シナ海の領土要求など,アジアからアメリカの支配を排除すると決意している.アメリカが中国の台頭を押さえつけ,封じ込めようとしている,と考えるからだ.
最近,the
Council on Foreign Relationsのレポートで,Robert
Blackwill and Ashley Tellisがアメリカのグランド・ストラテジーを議論した.その中で,アメリカはグローバルなシステムにおける優位を維持するために,経済・政治・軍事的な手段で中国の台頭にバランスを取るべきだ,と主張した.
これに対して,the
Harvard Kennedy SchoolのBelfer
Center for Science and International Affairsから出たレポートで,Kevin Ruddは「建設的リアリズム」を主張している.ラッドは,台湾,南シナ海・東シナ海の領域,アメリカの同盟関係,中国の軍備近代化,政治体制の正当性,のように,ある領域では意見の対立が存在し,今後も紛糾することを認める.双方は安易な解決策を避け,慎重に扱うべきだ.
しかし,システミックな協力が可能な建設的部分もある.アメリカは中国をもっと対等に扱うことで,2国間,地域,グローバルなレベルで,もっと困難な問題に両国で取り組むことができる.2国間では,テロ,サイバー・セキュリティー,予定外の軍事行動,包括的な核拡散防止.
地域では,朝鮮半島の非核化,再統一,日本との歴史問題,通商協定,東アジアサミット.グローバルには,気候変動,G20,人民元の国際化,IMF・世界銀行,その他の国際機関の改革.
西側には,ベテランのチャイナ・ウォッチャー,David
Shambaughなど,中国は破局に向かう,という予測から,こうした国際協力や国際制度の調整が不要である,という者もいる.しかし,ラッドは,中国が成長を持続し,アメリカや世界はそれに調整を必要とする,と考える.
ラッドは,元オーストラリア首相で,中国語に堪能である.アメリカと中国で,多くの重要人物と緊密な連絡を取っている.次の国連総長候補である.
アメリカ大統領候補の誰も,アメリカがナンバー・ワンであるという話を好む.しかし21世紀が20世紀と違う平和な時代であるように願う者は,アメリカが,「優位」や「支配」という言葉を使わず,協調や協力を議論するようになることを望む.
l イギリスの選挙
FT April 28, 2015
The British economy
after the coalition
Martin Wolf
FT April 28, 2015
The populist surge
has peaked but it will leave a bitter legacy
Tony Barber
FT April 29, 2015
An election
campaign that is too full of gimmickry
Project Syndicate
APR 29, 2015
Lies, Damn Lies,
and the British Election
CHRIS PATTEN
Project Syndicate
APR 30, 2015
Brittle Britain
ANATOLE KALETSKY
l 中央銀行
FT April 28, 2015
Central banks
choose Pythonesque approach as new tool
Roger Blitz
FT April 30, 2015
Healthy liquidity
diet needed to survive future financial shocks
Gillian Tett
l ボルティモアの人種暴動
FT April 28, 2015
America’s troubling
racial tinderbox
NYT APRIL 28, 2015
What Came Before
Baltimore’s Riots
By THE EDITORIAL BOARD
NYT APRIL 28, 2015
In Baltimore, We’re
All Freddie Gray
By D. WATKINS
FT April 29, 2015
‘No training, no
money, no hope, no way of getting out’
Demetri Sevastopulo in Baltimore and Sam Fleming in Washington
1958年のマーチン・ルーサー・キングJr牧師が暗殺された時以来,アメリカ最大の暴動が広がった.その時代を知る人は,何も変わっていない,という.
ボルティモアは,工業化が終わって,新しい時代に取り残された.人口が減少し,特に旧市街では黒人や貧困層が増え,白人は流出した.失業率が高く,空室室も高い.行政は新しい地域の開発や整備に金を使い,貧困地帯には支出しなかった.若者が集まる地域のスポーツセンターも,財政難を理由に閉鎖された.住民たちは強く反対したという.
警察は「非寛容」政策を採用し,軽微な犯罪でも投獄した.暴動に参加する若者が多かったため,警察は親に,子供が家に帰るよう説得することを求めた.しかし,若者たちはだれも守ってくれなかった.親たちは,たとえいても,仕事がなく,あるいは,刑務所にいた.
NYT APRIL 29, 2015
Goodbye to Freddie
Gray and Goodbye to Quietly Accepting Injustice
Michael Eric Dyson
NYT APRIL 29, 2015
When Baltimore
Burned
Nicholas Kristof
Bloomberg APR 29,
2015
Obama's Absurd
Response to Baltimore
By Ramesh Ponnuru
Bloomberg APR 29,
2015
Why Baltimore Will
Matter in 2016
By Jonathan Bernstein
l ネパールの大地震
Bloomberg APR 28,
2015
Harsh Lessons of
Nepal's Disaster
By Pankaj Mishra
FP APRIL 30, 2015
An Earthquake
Exposes Nepal’s Political Rot
BY PARAMENDRA BHAGAT
ネパールの大地震について,援助の要請や国民を励ますためにテレビに映る政治家はいない.自身の前からネパールは,深刻な政治的分裂と社会の機能不全が広がっていた.国民的な悲劇が,それを解消させる兆しはない.
l サウジの政変
FT April 29, 2015
Understanding the
Saudi king’s succession bombshell
Roula Khalaf
l アイルランドの復活
FT April 29, 2015
Ireland: Embracing
change
Vincent Boland
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The Economist April 18th 2015
Dynasties
Turkey and Armenia: A time to heal
Reform in China: The quiet revolution
China’s economy: Coming down to earth
Marco Rubio: Young, gifted and not Barack
Central America: Stemming the migrant tide
Germany and asylum: Is Troglitz everywhere?
(コメント) 政治家や企業が家族によって世代を超えて長期の繁栄を維持する,という現象は,株式公開や普通選挙制度によって消滅する,と思われていました.ところが,そうではない,という特集記事を載せています.それには理由があって,なくなりそうにないから,それが有害ではなく,有益なものであるようにするべきだ,と.
私は記事が間違っていると思います.
中国の株式市場や銀行の不良債権が,バブル破たんと不況をもたらす,という警鐘に対して,反対する記事が載っています.これは興味深く,説得的です.中国は大陸規模の経済であって,いくつかの都市や産業が衰退し,あるいは,バブル破たんしても,全体の改革を進めることが重要だ,と中国政府の姿勢を称賛します.
他にも,アメリカ共和党の若い大統領候補はキューバからの移民の子どもであり,中央アメリカからの未成年の移民に対する対策をオバマ政権が積極的に示したこと,ドイツに流入する難民に対する国民の不満,を読み,雑誌を置いて考えました.
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IPEの想像力 5/4/15
Kissingerが描くウェストファリア型の国際秩序は,平和の維持を,現在の国際秩序の安定化として強調する傾向がある.
私は,次の国際秩序が日中間の対立よりも,和解と制度化によって実現するだろう,と思った.しかし,安倍氏を支持するナショナリストや,日中の軍備強化を重視する者は,それを理想主義者の妄想にすぎない,と怒る(笑う)だろう.
中国の留学生に,どうして日本人は安倍首相を支持しましたか? と聞かれたことがあります.・・・
アメリカを訪れたのが,安倍首相ではなく,社会進歩党の若い,41歳の首相であれば,オバマとの会談や両院合同委員会での演説内容も違ったはずだ.
演説には3つの強調点があった.防衛政策,TPP,歴史問題,である.いずれも,そこにいない中国に向けた日米の共同声明にもなった.
防衛政策では,日本が平和主義の憲法を尊重した地域安全保障を構築する,と宣言し,アメリカはこれに協力したい,と述べるだろう.安全保障は,戦争によって得るものではなく,繁栄を共有すること(貿易と投資)で確立できる.日本政府は,アジアや世界から核兵器をなくすことを真剣に考え,各国と協力して行動する.
国境をめぐる紛争を凍結し,長期的な視点で,経済的繁栄に役立つような,交渉による解決を模索する.軍事的な緊張や威嚇に対しては,日本国内の安全保障に関する国民合意を形成し,日米が協力して高度な防衛網を築く.危機管理と漸進的な軍縮が共通の目標である.
TPPは,国内産業の競争条件を整理し,日米を超えて,アジア太平洋の経済的繁栄をすべての国,すべての市民が共有できる制度を目指す.合意内容や交渉過程は,その具体的な内容を事後的に精査できるように整理し,議会や市民団体の質問や要求に政府が応える.それは交渉に参加しなかった中国や.他の諸国に対しても,十分に開かれたものになる.
歴史問題について,首相は,日本が起こした戦争において犠牲となった,内外の人々に心からの哀悼の意を表す.それだけでなく,従軍慰安婦や,南京大虐殺,など,重大な戦争犯罪を疑われるケースに関して,関係者や識者を招いた真相究明委員会を組織する.誰が,どのような犯罪行為を命じ,犯したのか,証拠に基づき,調査報告書を世界に公表する.
アメリカを訪問した日本の首相は,中国残留孤児の娘であり,厚生労働大臣は,日本国籍を得た在日朝鮮人である.首相はリンカーン記念センターを訪れ,ナショナリズムを超えて,アジアの改革を指導する新しい世代が登場することをアメリカ人に示したい,と述べる.
共同記者会見でも,多くの時間を使って,ボルティモアの暴動に関する質問に答えるオバマ大統領を助け,首相はアメリカが人種差別問題で歴史の壁を克服する努力をたたえるだろう.
自由の女神像に登って,非合法移民問題,貧困,人種差別,環境問題,社会保障制度,などが,アメリカの新しい理想をどのように実現するか,大いに期待している,と大統領を励ます.中国人コミュニティが,日米の指導者に抗議するのではなく,中国の様々な国内問題を解決する協力関係に期待する,と表明する.・・・
これはたわいない妄想かもしれない.しかし,他国に例のないことではない.政治は想像力を実現するパワーを持っているはずだ.
日本の有権者は,一部の例外を除いて,安倍氏の歴史観や戦争論を支持したわけではない,と私は答えました.安倍氏は,国内の政治基盤を得るために,さまざまな改革にも取り組んだ.アベノミクスと憲法改正の行方は,まだ全く分からない.次の指導者を観てほしい.
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