(前半から続く)
l イランとの合意に向けて
NYT APRIL 10, 2015
The Revolution
Lives!
David Brooks
NYT APRIL 10, 2015
North Korea’s Real
Lessons for Iran
By ROBERT L. GALLUCCI and JOEL S. WIT
イランとの合意を画期的な機会をつかむものだ,というオバマ大統領の言葉に,北朝鮮に対する各交渉に関する失敗を指摘する声がある.イスラエルのネタニヤフ首相は,北朝鮮のように核武装する,前に攻撃せよ,という.
北朝鮮との交渉を指導したわれわれには,そこから学ぶべき教訓があった.それは歴史を誤解した者たちに重大な批判となる.
1994年,アメリカに敵対する北朝鮮が核兵器を開発するという予測に直面して,クリントン政権は北朝鮮との核合意を結んだ.北朝鮮は,核兵器開発をあきらめることと交換に,エネルギー支援と制裁の解除,アメリカとの関係改善を求めた.1990年代後半になって,北朝鮮は合意に反し,騙していることが分かった.アメリカは条約を破棄し,今や北朝鮮は核兵器を製造している.この5年間で100発の核爆弾を作るだろう,と,ネタニヤフはアメリカ議会で指摘した.
しかし,われわれの条約は破棄されたが,合意は成果を上げたのだ.1994年の条約が無ければ,北朝鮮はもっと早く核兵器を開発しただろう.もっと早く核を備蓄し,より大きな核兵器のストックを持ったはずだ.長崎型の核爆弾を毎年30発,この10年で生産するほど,北朝鮮の核開発計画が進んでいる,と諜報機関が認めたから,われわれは合意したのだ.そして20年後の今も,北朝鮮はその水準に達していない.
北朝鮮との条約が崩壊したことで,悪辣な国家とは取引するな,と主張することは間違いだ.条約の評価するのは,それが事態を条約が無いときより改善したか,それは軍事的な選択肢より好ましいか,と問うことなのだ.イランとの合意も,この基準から見て正しいと言える.
合意によって事態を打開できる希望がありながら失敗に終わった北朝鮮のケースから学ぶべき正しい教訓とは,合意に達するのは難しいが,その条約を守らせることはもっと難しい,ということだ.
アメリカは「問題が解決した」という気分に流れてはいけない.合意の後,アメリカ政府は他の外交問題に関心が流れ,北朝鮮に約束を守るよう促す2つの手段を忘れてしまった.すなわち,良好な政治関係の確立と,経済制裁の解除,である.それは北朝鮮の行動を正当化しないが,合意はアメリカ側に継続した関心を求めるものであった.
イランとの枠組み合意には,この点で,約束を守ることを監視し,その違反があった場合に対応する手続きも明確に定め,アメリカとその他のパートナー諸国が参加する,監視機関が設けてある.もし違反が見つかれば,順を追って,秩序ある形で明確な対抗措置が取られる.この点で,北朝鮮が違反したことを発見したアメリカ政府は,有効な対応策を取れなかった.そして,ブッシュ政権は,その機会を利用せず,非難しただけだった.クリントン政権がしたように,脅威や違反を許さないような政治関係を築くべきであったのだ.
条約は,ほんの始まりでしかない.
FP APRIL 12, 2015
Deal or No Deal?
Actually, That’s Not the Right Question.
BY STEPHEN M. WALT
条約の細部は,結局,それほど重要なのか? 国務省の元スタッフJeremy Shapiroは,洞察に富んだ評論を書いた.条約の細部は重要ではなく,他の世界とイランとの関係が条約によって将来どのようになるか,それが重要なのだ.
イランの核開発計画は,中東におけるアメリカの指導力とその同盟諸国,特に,イスラエルとサウジアラビア,に挑戦するという,もっぱら象徴的な意味が重要であった,と.
シャピロは正しい.条約の細部は重要ではない.イランの目的は,核兵器を保有することや,核武装の敷居を超えることではない.イラン政府は1970年代から核開発計画を進めていた.しかし,今でも核兵器は開発していない.その間に,イスラエルは核兵器を作った.パキスタンもインドも作った.南アフリカも作ったが,それを放棄した.北朝鮮も作った.しかし,イランは作らなかった.本当に核武装したいなら,作れただろう.
そこには戦略的な理由があった.もしイランが核武装したら,中東における他の諸国も核兵器を求めるだろう.しかし,イランは地域における潜在能力が高いから,核に制約されるより,核兵器のない中東地域において支配を確立した方が良い,と考えたはずだ.テヘランが明日にもアメリカが体制転換を試みると考えていないなら,核兵器を持たない方が戦略的に優位である.
さらに,もしイランが核兵器を持てば,テロリスト集団や他の国が核兵器を手に入れたとき,イランが与えた,という非難を浴びる.持たなければ,そのような非難を恐れなくても良い.それは的外れな理由に思うかもしれないが,サダム・フセインは核兵器に関しての疑念だけでアメリカによる軍事侵攻を招いた.
イランが核兵器を保有しないのは,歴史が示すように,それが重大な優位につながらないからだ.ソ連は核兵器を作ったが,核兵器が冷戦を起こしたわけではない.ソ連は,核兵器でNATOを滅ぼすことも,ユーラシアを支配することも,「資本主義を葬る」こともできなかった.何より,ソ連の崩壊を防げなかったのだ.中国は1964年に核武装したが,それは中国を大国にせず,鄧小平の改革と30年続いた急成長がそれに成功した.核兵器を得た他の国も,国際的地位を劇的に高めた国はなかった.
イランが核武装しても,地域の他の国に命令できるわけではない.ブッシュやオバマが無数の核兵器を持っていながら,その限られた政治的効用しか得ていないことは確かだ.イランがアメリカやその同盟国に核兵器を使用すれば,それははるかに甚大な核による報復を招くのである.イランの指導者が誰であれ,そのような自殺願望はない.
核の合意の細部には重容易性はなく,シャピロが言うように,イランとその他の世界との関係がどのように変化するか,が重要なのだ.それこそ,サウジアラビアやイスラエルが本当に恐れていることである.
イラン革命以来,そして特に,国連による厳しい制裁から,「ペナルティ・ボックス」に入ったイランが,次第に,そこから抜け出すのだろうか? この問題が重要であるのは,イランという国の長期的に見た潜在能力が高いからである.イランの人口は約7800万人であり,サウジアラビア3800万人,イラク3300万人,イスラエルは700万人余りである.経済規模も,政府による失政や汚職にもかかわらず,約5000億ドルであり,サウジアラビアの7500億ドルよりは少ないが,イラクやイスラエルより大きい.
もしイランが世界市場に開放されたら,その能力は一気に高まり,拡大された中東圏でも,単独で最大の国力になるだろう.
それはワシントンにとっても脅威なのか? アメリカの戦略的利益を思い出すべきだ.アメリカは,中東が概ね勢力均衡を保ち,敵対的な単独の国家が地域を支配し,その資源を管理するのを阻むことに利益を観る.そして,かつてより一層分裂した中東について,それは難しい目標ではない.
イランが開放され,アメリカとの外交関係を回復することで,アメリカは地域の勢力均衡を外交によって維持できる.いずれの国も,アメリカとの関係を良好に保ち,利用しなければならないからだ.中東において,対抗するソ連は消滅し,アメリカの中東に対する石油依存は減り,イラン政府もアメリカに対して今以上に良好な関係を求めるだろう.それは,たとえイランが急速に拡大しても,はるかに強力なアメリカがサダム・フセインを排除したイラクを配できなかったように,イランも地域の安定化に苦しむからだ.
明敏なアメリカの戦略家たちは,どの国もアメリカの中東における戦略的関係を独占できないことを歓迎するはずだ.
もちろん,イランとの核合意は万能薬ではない.両国間には歴史的な対立があり,多くの問題や意見の相違がある.ソ連や,毛沢東主義の中国と同様,そのイデオロギーや長期的目標を強く嫌うとしても,イランを正当な大国として認め,地域の重要なプレーヤーとして,外向的に関与するべきだ.
NYT APRIL 14, 2015
Saudis Should
Welcome the Iran Deal
By VALI R. NASR
イランを世界経済に再統合することが合意の目的だ.それだけがイランの攻撃的な目標を穏健な形に修正できる.サウジアラビアなどはイランを信用せず,イエメンに軍事介入し,イランへの制裁強化を求める.しかし,それは中東地域の不安定化を加速し,イランに核武装の強い決意を促すだけだ.すべての国が参加できる中東の政治秩序を目指すべきだ.
FP APRIL 14, 2015
Iran Is Winning the
War for Dominance of the Middle East
BY THANASSIS CAMBANIS
FP APRIL 14, 2015
The Iran Long Game:
Bush vs. Obama
BY GORDON ADAMS
l 政府の優位
NYT APRIL 10, 2015
Where Government
Excels
Paul Krugman
反政府のイデオロギーは間違っている.民主党員は,突然,そのことに気付き始めた.現代では,市場によって民間部門が広く経済を動かしている.しかし,政府が民間よりも有効な分野はある.「公共財」だ.それだけでなく,社会保障や年金も,政府によって運営する方が優れている.
l 米中の国際システム
(China Daily)
2015-04-10
Birth of truly
global Chinese navy
By Zhou Bo
NYT APRIL 11, 2015
Chinese Mischief at
Mischief Reef
By THE EDITORIAL BOARD
NYT APRIL 12, 2015
Roads to Ruin
By WILLIAM F. LAURANCE
Bloomberg APR 14,
2015
Hong Kong's Peg to
Instability
William Pesek
アメリカ・ドルとの固定レート制を放棄するべきだ,という主張を,これまで一つの理由で拒んできた.安定性だ.この制度は,32年間,香港の国際的な信用を維持するちょうつがいであった.しかし,中国の貨幣が香港に流入する今,真実は逆である.香港の株式市場,不動産市場は,過剰な資金流入に不安定性を高めている.それは香港の貧富の格差,社会的緊張にも強い悪影響を及ぼす.
もし過剰なインフレ圧力を抑えたいなら,香港通貨庁は過小評価された香港ドルの価値を高めるべきだろう.その予想は一層の資金流入を招く.香港ドルの固定制は意味を失ったのだ.香港は,シンガポールのように通貨バスケットに固定するか,さらに人民元に固定するべきであろう.そのためには,中国政府が人民元の自由化を進めねばならない.
FT April 15, 2015
Interview: Li
Keqiang on China’s challenges
Lionel Barber, David Pilling and Jamil Anderlini
NYT APRIL 15, 2015
What’s Up With You?
Thomas L. Friedman
「1国2制度」は,香港返還の際に,中国との関係を示すために発明された言葉である.しかし,ますます深まるアメリカと中国との結び付いたシステムについて,この言葉は重要である.
両国間で,年間6000億ドルの貿易を行い,27万5000人の中国人留学生がアメリカで学び,2万5000人のアメリカ人が中国で学ぶ.中国はアメリカ農産物の最大の市場であり,アメリカ政府の最大の債券保有者である.昨年,中国からのアメリカ投資がアメリカからのっ中国投資を初めて超えた.
しかし,2つの異なるシステムは互いに困惑を生じている.李克強の改革も,反政府派の弾圧と侵攻起業家の育成とは矛盾しないのか?
FP APRIL 15, 2015
Is the Asian
Infrastructure Investment Bank Good for India?
BY RUPA SUBRAMANYA
l エノラ・ゲイ
NYT APRIL 11, 2015
The Enola Gay: A
Minor Mystery, Solved!
By TED GUP
l ヒラリー・クリントンの立候補
FT April 12, 2015
Why women are
Hillary’s key
ED Luce
The Guardian,
Monday 13 April 2015
Why Hillary Clinton
would make the perfect US president
Deborah Orr
The Guardian,
Monday 13 April 2015
In Hillary
Clinton's America, there's room for equality, diversity and pick-up trucks
Megan Carpentier
NYT APRIL 13, 2015
It Takes a Party
Paul Krugman
The Guardian,
Wednesday 15 April 2015
A female president?
Nice, but not why I want Hillary Clinton
Hadley Freeman
FT April 15, 2015
Hillary Clinton campaign
stresses how ‘ordinary’ she is
Megan Murphy in Monticello
l 南アフリカ共和国
NYT APRIL 12, 2015
The End of the
Rainbow Nation Myth
By SISONKE MSIMANG
l TPP合意に向けて
FT April 13, 2015
China will react
with displeasure if America tries to weaponise trade
Michael Levi
アメリカの雇用に及ぼす影響を国民が強く懸念しているなかで,政府は自由貿易協定を推進する理由を,ますます地政学的な説明に求めている.
確かに,貿易と投資に関する優れた協定は地政学的にも有益であり,その失敗は深刻な損害をもたらすだろう.しかし,政府はしばしばそれを過剰に強調する.
TPPは,アジアの同盟諸国,特に日本の,改革を助け,その経済を強化する.アジア域内での経済関係が多様化し,その意味で,中国への依存を減らす.合意は,よりリベラルな形で,北京に参加を求める.
しかし,地政学的な主張は,よほど慎重でなければ,TPPが中国に対する「封じ込め」策であるという不安を高める.WTO加盟がそうであったように,中国の改革を促す形で参加を求めることと,中国に対抗する軍事同盟を強化することとは,まったく別の問題だ.
歴史的には,指導的な国が外交・軍事条約で経済安全保障を追求した.そして,ある意味で,日本が1930年代に攻撃に出た理由は,グローバルな経済システムから切り離される不安であった.しかし,アメリカの同盟諸国には中国との対抗を望まない国もあるし,アメリカ国民の一部は地政学的な説明を嫌うだろう.アメリカ人は脆弱性をより強く意識し,経済統合の利益を信用しなくなっている.
Project Syndicate
APR 13, 2015
Asia’s
Multilateralism
JOSEPH E. STIGLITZ
アメリカ政府がAIIBに反対したのは間違いだった.アジアには膨大なインフラ需要がある.貿易を妨げる最大の要因はインフラの未整備だ.また,世界は需要不足に落ち込み,政府による公共投資を求めている.アメリカ型国家間でのアジアの制度化や中国の指導力を求めていたことを思えば,AIIBにヨーロッパから参加の申請が続いたことは歓迎するべきだ.
NYT APRIL 14, 2015
Don’t Keep the
Trans-Pacific Partnership Talks Secret
By MARGOT E. KAMINSKI
FT April 13, 2015
Nordic dilemma over
how much to include the populist parties
Richard Milne, Nordic Correspondent
l ロシアとウクライナ
Project Syndicate
APR 13, 2015
Overcoming the
Ukraine Crisis
JEAN-MARIE GUÉHENNO
Project Syndicate
APR 14, 2015
The Challenge of
Russia’s Decline
JOSEPH S. NYE
FP APRIL 15, 2015
Ruble on the
Rebound
BY JAMILA TRINDLE
l ガザ
FP APRIL 13, 2015
‘Gaza Is a Tomb’
BY BEL TREW
l ヨーロッパの移民問題
FP APRIL 13, 2015
Italy Opens the
Door to Disaster
BY HARALD DOORNBOS, JENAN MOUSSA
6000ドルを支払って,ヨーロッパの北部を目指す移民たちが乗る船は,警備隊に逮捕されるのを恐れて船長が逃げ出し,漂流する棺桶になった.
l アメリカの低賃金問題
FT April 14, 2015
US labour: High
stakes on low pay
Gary Silverman in New York
l 日米関係
FP APRIL 14, 2015
How Strong Is the
U.S.-Japan Relationship?
BY BRUCE STOKES
第二次世界大戦終結から70年を経て,貿易摩擦や安全保障の問題を経た今も,日米関係は双方にとって重要である.しかし,その将来の可能性は,中国や韓国も含めた新しい挑戦と,諸国民の態度に依存している.
The Guardian, Wednesday
15 April 2015
Cuba has shown us
that sanctions don’t work – so why keep using them?
Simon Jenkins
l ヨーロッパとグーグル
FT April 15, 2015
Brussels finally
takes on Google in an open fight
l IMF
Project Syndicate
APR 15, 2015
How to Reform the
IMF Now
PAULO NOGUEIRA BATISTA and HECTOR R. TORRES
IMF改革を進めるために,合意された提案を,アメリカ議会の承認が必要な部分と,そうでない部分に,分割するべきだ.
Bloomberg APR 15,
2015
IMF Preaches to the
Choir
By Mohamed A. El-Erian
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The Economist April th 2015
Space and the city
Special economic zones: Not so special
Special economic zones: Political priority, economic gamble
The South: The present past
Defence and diplomacy: Little Britain
(コメント) 土地が希少であるのは,都市化が進むだけでなく,住民と政治家が多くの利用規制を行っているからだ,と指摘します.もし規制を撤廃すれば,世界経済を1兆ドルから2兆ドルも拡大する,という刺激策です.
「経済特区」が世界中で増えているのも,同じ視点で支持するのか,というと,そうではありません.むしろ,特区ではなく経済全体の自由化,インフラ整備や官僚制の改革が必要だ,と主張します.
アメリカが南北戦争後も社会政治構造に一定のゆがみを残すのはなぜか? イギリスが貿易費を減らし,外交における重要な役割を見失うことが何を意味するか? 日本について,同じことを考察したくなります.
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IPEの想像力 4/20/15
NHKの番組「まち歩き」は観ていて楽しい番組です.金沢の印刷所を夫婦二人で営む姿には,あくせくした世間を忘れさせる,「幸せな仕事」がありました.
先日,車検に出した自動車を取りに,ガソリンスタンドへ行きました.近くなのですが,自動車が無いから,歩いて行くと少し遠いです.
車検のシステムは,すでに2年に1度ですから,なかなか高価です.もし法律で強制されなければ,もっと検査の期間を延ばすでしょう.故障しなければ,検査などしないかもしれません.しかし,もしかすると,車検の制度があるから,事故の犠牲者が減っているだけでなく,自動車整備工の職業が安定的に維持できるのかもしれません.
店では,明細書を基に,交換した部品や作業の内容を説明してくれます.彼の説明を聴いていると,作業は難しいけれど,同時に,とても楽しそうです.これは,なぜ部品ではなく工賃が高いのか? と尋ねると,わざわざ整備中の他の車をジャッキで上げて,該当する部分を見せながら,その作業を説明してくれました.
しかし,何か手違いがあったようで,その後,おカネを渡した担当の若い整備工が戻らず,なかなか清算してくれません.店長が不在で,電話で指示を受けながら,明細書を書き直していたようです.デジタル時代の人間的な失敗です.
そうした不手際があっても,私は待ちながら,自動車の整備工になりたいな,と思いました.もし所得に大きな差が無ければ,いろいろなりたい仕事があるはずです.いっそ,すべての労働の報酬を同じにしたらどうでしょうか? もちろん,社会的な必要性に応じて,資源配置を誘導する追加の報酬が示されます.「計画経済」の原理です.また,仕事の優秀さや完璧さなどを消費者が称賛する場合,チップを渡します.一定の水準を満たせない労働者には,再訓練を命じます.
キューバはそうではないかな,と思いました.社会主義の思想や運動は,<資本の運動>によって支配された管理体制を,労働者たちが打ち破る試みであったはずです.
たまたま,デイヴィッド・ハーヴェイの『資本の謎』をパラパラ見ていると,彼の独特な概念,「空間的Fix」というのが出てきました.資本は抽象的な価値の形で競争的に増殖を繰り返し,その増大そのものが,次の増加率を制約するようになります.それなら成長率を下げればよいはずですが,そのような合意はできないからこそ,増加率を実現できた投資家やビジネスの指導者が称賛され,次々に新しい方法を見出すわけです.
技術革新,不動産投資(空間的回避),金融化,フロンティアの拡大(原始的蓄積),・・・いずれも拡大率を維持する条件を与えるのは,恐慌を繰り返すことです.国境を越えた資本の運動は,国際通貨危機や移民,そして,辺境における紛争や大国間の世界戦争に至るかもしれません.
もし経済システムを修理Fixして,社会的な合意によって積極的な資源の再配置ができるなら,恐慌も,戦争も,大きく減ると思います.
つまり,成長などしなくても良い,社会的に必要な仕事に対して追加の報酬を支払う,という社会契約と国際秩序が,平和と,楽しい労働の世界を各地にもたらす,<脱>資本の,新しい条件なのです.ロボットや核による戦争で一掃されていなければ,私たちの孫の世代には,きっと実現していると思います.
次に車検に出すときは,彼が電気自動車や介護ロボットの整備を説明してくれるでしょう.
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