IPEの果樹園2015
今週のReview
4/13-/18
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アメリとイランとの枠組み合意 ・・・ウクライナ問題の内側と外側 ・・・イギリス政府と経済成果 ・・・イエメンで始まる覇権戦争 ・・・AIIBの融資に注目する ・・・グローバリゼーションと4つのトリレンマ
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l アメリとイランとの枠組み合意
NYT APRIL 5, 2015
The Obama Doctrine
and Iran
Thomas L. Friedman
1996年9月に,私はイランを訪問した.そのとき,ホテルのロビーで,「アメリカを打倒せよ!」という標語を見た.しかも,それは旗や映像ではなく,壁にタイルで描かれたものだった.私は思ったものだ.「これはすごい.簡単には外せないぞ.」 20年近くが過ぎて,オバマ政権はイランとの合意案を交わした.あの標語を壁から掘り出す最善の機会かもしれない.アメリカとイランとの冷戦・熱戦はこの地域を36年間も混乱させてきた.それはアメリカ,イスラエル,スンニ派のアラブ諸国が直面する大きなリスク,イランが核保有国になること,を阻止するチャンスである.
オバマ大統領は私を大統領執務室に招いて,この枠組み合意がもたらすリスクと機会とを彼がどのように均衡させたかについて説明した.私が強い印象を受けた大統領の言葉を,私は「オバマ・ドクトリン」と呼びたい.それは私が,ビルマ,キューバ,最新のイランについて,アメリカの長期に及ぶ,それらの国を孤立させる外交政策から離れる彼の決断について質問したときだ.オバマはそれを「関与・包摂engagement」と呼んだ.アメリカもこれら3か国も,際限のない制裁と孤立化よりも関与のほうがはるかに良い,アメリカの中核的な戦略の必要性にかなう,と考えたのだ.彼はさらに,アメリカは圧倒的なパワーを保持している,と付け加えた.新しい重要な可能性を拓くために,計算されたリスクをとる自信を持つ必要がある.イランとの外交取り決めを結ぶこともそうだ.
「われわれは十分に強力であるから,自分自身のリスクを冒さず,こうした試みをテストできる.このことを人々は理解していないようだ.」 われわれがキューバに包摂する可能性を与えることは,キューバの人々にとって大きな改善である.キューバはほんの小さな国である.われわれには安全保障上の何のリスクもない.もしよい結果が得られないと分かれば,われわれは政策を調整することができる.イランについても同じだ.イランは大きな国で,アメリカ市民の死にかかわる活動にも従事している.しかし,真実は,イランの防衛予算が300億ドルでしかないことだ.われわれの防衛予算は6000億ドル近くであり,イランがアメリカと戦争することなど不可能だ.
オバマ・ドクトリンとは何か? それは,われわれは関与し,包摂するだろうが,われわれ自身の行動の自由はすべて保持する,というものだ.
イランは抑止不可能だ,という考え方を,オバマは,全くの間違いだ,という.もしこの問題を外交的に解決できれば,それはより安全で,確実で,同盟諸国を守ることも有利になる.誰がそれを否定できるのか? イランは変わるかもしれない.しかし,もし変わらない場合も,われわれは抑止力,軍事的な優位を保持しているのだ.なぜ可能性をテストしないのか?
イスラエルは状況が異なる,とオバマは言う.ネタニヤフ首相が言うように,イスラエルはもっとリスクに弱い.可能性をテストする余裕はない.オバマはそれを完全に理解している.ユダヤ人の歴史と,その安全保障に関してアメリカに依存するだけではないことも.しかし,アメリカはイスラエルの軍事力が高い水準を維持することに関与しており,将来のいかなる攻撃にも,アメリカはイスラエルと共に戦うと約束している.
サウジアラビアなど,スンニ派のアラブ同盟国に対して,オバマは外部の脅威に対してだけでなく,その内部の脅威に対処するべきだ,と考える.それは疎外された住民たちであり,仕事のない若者,破壊的でニヒリスティックなイデオロギー,絶望のはけ口が政治には何もないと確信している.アメリカはアラブ諸国に外部の脅威に対する防衛力を築くだけでなく,その政治体制を強化することもできると思う.そうすれば,スンニ派の若者たちが政治に絶望して,イスラム国家に向かうようなこともなくなる.こうした対話は難しいが,彼らの最大の脅威はイランが攻撃してくることではない,と話し合う必要がある.
もしイランの指導者たちが,自分たちには核開発計画など必要ない,と言えば,もっとすぐれたイラン人の才能や企業家を育て,世界経済にも参加できるだろう.イランが地域の大国になるために,核兵器は必要ない.私はイラン人に言いたい.地域の大国であるために,反ユダヤや反イスラエル,反スンニを掲げる必要はない.国際的な責任を果たすこと,近隣諸国に対する攻撃的な主張をやめること,反イスラエル,反ユダヤの感情を刺激せず,自国の防衛に十分な軍事力を保持するにとどめることだ.そうすれば,イランには成功した大国になる十分な規模,資源,人口がある.イラン人もそれを認めることを願っている.
議会からの反対について,基本的に重要なことは,われわれが真剣に議論し,重大な意見の対立があるが,私はこれを歓迎する.民主主義はそのように機能すると想定されたことだから.そして現代の国際環境においては,われわれがここで議論することを他の人々も聴いており,読んでいる.共和党員の考えが,私よりネタニヤフ首相に近いことは,秘密でも何でもない.しかし,公的な境界線を守らねばならない.だからわれわれは行政府を動かし,統一したアメリカを代表して外国の指導者と交渉している.アメリカの大統領が,民主党であれ,共和党であれ,分裂した外交政策を示してはならない.
過去に何があったとしても,「現時点で,この地域におけるわれわれの核心的な利益は石油ではない.領土でもない.・・・われわれの核心的な利益は,この土地で人々が平和に暮らすことである.そこに秩序があり,われわれの同盟者が攻撃されることはない.子供たちに燃料タンク爆弾が降ってくることはない.われわれの利益とは,その意味で,この地域が機能するのを保証することなのだ.この大きなプロジェクトも,どこかから始まるのであって,私はそれがイランとの合意だと思う.」
l ウクライナ問題の内側と外側
FT April 7, 2015
America will lose
patience with European appeasement
Robert D Kaplan
アメリカ大統領はヨーロッパを守らない.ヨーロッパが自分たちで平和を維持する防衛支出を嫌っているのだから.28カ国の半分しか,GDPの2%という防衛予算を取っていない.
それはユーロ危機ともつながる.各国は自分たちの国益だけを主張し,何がヨーロッパにとって最善か,とは問わない.福祉国家の下での快適な生活以上に,守るべきものなどないかのようだ.超国家的なルールによって個々人の権利を守るというのは,ブラッセルの論理であって,市井の人々が重視することはない.
貧血症の国家的目標は,エリートたちを委縮させ,ルンペン・ナショナリズム,左右のポピュリズムに政治を侵食されている.それは歴史を無視した人々だ.歴史は絶えざる脅威によって,誰もが国境線に注意した.バランス・オブ・パワーを重視し,夜警に立つべきだと知っていた.しかし,第2次世界大戦後,ヨーロッパの平和はアメリカによって守られてきた.
70年間は長い.ナポレオン戦争の終結から普仏戦争の勃発までの期間より長い.アメリカによる安全保障は永久に与えられない.オバマはプーチンのウクライナ侵略に強く対抗しなかった.ヨーロッパ自身が防衛しないのに,アメリカがするか?
第2次世界大戦を経験した軍人は故人となり,もっと若い,アジアやラテンアメリカからの移民の子供たちが,アメリカの外交・防衛政策を担うのだ.ヨーロッパの安全より,アジアの利益を重視するだろう.アジアの同盟諸国は自分たちも防衛を担う意志がある.
アメリカ大統領は,冷戦の時代ほど,ヨーロッパを守らない.
l イギリス政府と経済成果
NYT APRIL 6, 2015
Economics and
Elections
Paul Krugman
金融危機以後のイギリス経済のパフォーマンスは驚くほど悪い.2013年に成長を回復したが,一人当たり実質所得は漸く危機前の水準に戻っただけだ.それは大恐慌のときより悪い.
イギリスは選挙を迎えるが,2010年以来,この国を指導してきた連立政権は,繁栄を守るべき役割を担った人々であるが,選挙で退場するのを待っているはずだ.
しかし,ここに不況における経済運営に関して,イギリスだけでなく,すべての民主主義的な政府のための教訓がある.彼らに反対する野党が弱いこともあった.それ以上に,有権者というのは非常に短い記憶しか持たないのだ.彼らは経済政策を,長期の成果ではなく,最近の成長で判断する.5年間のパフォーマンスは最悪だが,最近の2つの4半期には成長している.それこそが政治的には重要なのだ.
つまり,良い経済政策は政治的に評価されない,ということだ.政治的に利口なやり方は,政権を取ったすべての時期に国を不況に追いやって,選挙の直前だけ,有権者が目覚ましい好況の中で投票所に向かうように,その余地を創り出すことだ.
それこそ,現在のイギリス政府がやってきたことを述べたものである.それほど巧妙ではなかったが.
では,選挙が政治家たちに責任を問う仕組みであるなら,経済政策に関して,その役割を果たせない,というのか? この弱点を克服する一つの可能性は,経済政策をエリートの専門委員会に委ねることだ.しかし,この試みの結果はアメリカのボールズ=シンプソンや,ヨーロッパでも,財政均衡をめぐるひどいものだ.
もう一つの,より民主主義的な試みは,有権者に電子情報を普及させることだ.イギリスの経済論叢で顕著な問題は,ニュースメディアの経済分析と,エコノミストのコンセンサスとが,大きく異なっていることだ.ニュースは成長の回復を政府の緊縮策の成果として伝えるが,エコノミストでは少数意見でしかない.
エコノミストは,何が起きているのか正しい説明を探すだろう.それが政治的に及ぼす影響は小さいかもしれない.しかし,選挙は誰が権力を握るかを決めるのであって,誰が正しいかを決めるのではない.
l イエメンで始まる覇権戦争
Project Syndicate
APR 6, 2015
Iran Versus Saudi
Arabia
JOSCHKA FISCHER
「新しい」中東が,日々,示されている.それは西側の大国(第1次世界大戦までの英仏,1940年代から最近までのアメリカ)が支配的な権限を握っていた「古い」中東ではない.そこには地域を安定化する外部の覇者がいない.地域の覇権国家を欠いたまま,危険な,戦略的真空状態が広がっている.
アメリカはもはやその意志も能力ももたない.アメリカの軍事力がすべて引き揚げることは難しいが,戦略的な利益を失う場合を除けば,アメリカが介入することは少ない.このアメリカの慎重な姿勢が生じる真空を,さまざまな国家や非国家が満たそうとしている.特に,イランとサウジアラビアだ.地域の優位を争う代理戦争が,レバノン,シリア,イラク,そして今やイエメンでも始まった.
中東では常に,信仰とエスニシティが重要だ.イランはシーア派の国家であり,その人口規模は,他のスンニ派のアラブ諸国を恐れさせる.地政学,宗派対立,エスニシティは,新しい中東を危険なメレンゲにしている.歴史は外部勢力の介入が無駄なことを示す,彼らの間で決めるべきだ,と主張するのは簡単だが,リスクはエスカレーションと拡大の末に,グローバルなレベルに及ぶ.シリアがそうだ.中東には石油資源があり,世界各地のテロを宗教的に正当化し,各国が核兵器を保有することに関心を持つ.
アメリカがイランとの核開発に関する枠組み合意を成立させたことと,サウジアラビアがスンニ派の連合軍でイエメンに軍事介入したことは,偶然の一致ではない.イスラエルやサウジアラビアは,イランとアメリカとの間で,いかなる合意もイランの地域的な支配を強化する,と反対している.それはアメリカの,事実上の戦略的パートナーが交代することを意味するからだ.
新しい中東が必要とするのは,核兵器でも,宗教的な憎悪でもない.軍事介入のための外交でもない.彼らは集まって交渉し,集団的な安全保障を発展させる必要がある.それに参加するすべての国が正当な利益を保障される.外交と,相互の深い理解が無ければ,新しい中東は世界の火薬庫のままである.イランとの合意は,まだ,その始まりでしかない.
l AIIBの融資に注目する
Project Syndicate
APR 6, 2015
Will China’s
Infrastructure Bank Work?
KENNETH ROGOFF
AIIBについては,アメリカの反対や同盟諸国に参加を控えさせる外交が失敗だった,という議論ばかり盛んに行われている.しかし,もっと多くの関心を,国際的な(多国間)開発融資期間が多くのプロジェクトで失敗したことに向けられるべきだ.
国際開発融資期間が成功するのは,それが「知識」の銀行,経験,実践,技術,などを地域で共有するときである.逆に,大きな失敗を犯すのは,現行エリートの利益に奉仕するが,環境や社会に与える影響を無視して,開発の優先順位が低い,記念碑的な巨大建造物に融資するときである.
アメリカがAIIBに反対した理由,ガバナンスが悪い,中国の政治的目的に利用される,というのは,アメリカ自身が世界銀行に行ったことを観るなら,偽善と非難されるだろう.実際,中国が国際的な指導的役割を引き受ける上で,比較的小規模なインフラの国際融資から始めるのは望ましいことだと思う.
しかし,すでに中国は開発融資を行っているが,曖昧な融資過程に加えて,その実績は疑わしい.だからAIIBが,先進諸国からも新しい理事国を加えて,融資教務について透明性やガバナンスを改善するのは良いことだ.
問題は,アジアがどのような支援を必要とするのか,という点だ.発展途上諸国が成長に対する障害として重視するべきは,資金ではなく,制度の弱さ,ガバナンスの貧しさである.契約の上で巨大なプロジェクトへの融資が成立しても,計画の実現には多くの経験がいる.
開発援助であれば,返済の必要な融資より,完全な譲許が優れている.インフラ建設の中国モデルは,住民の反対を無視して,道路,橋,ダムを建設するが,環境破壊を出し,労働者の権利を損なっている.それは容易に他国に輸出できるものではなく,ソ連型モデルと類似している.
どれだけ融資するかではなく,どのようなプロジェクトに融資するか,という視点で,AIIBの議論を進めるべきだ.
l グローバリゼーションと4つのトリレンマ
VOX 06 April 2015
Capital flows and
domestic and international order: Trilemmas from macroeconomics to political
economy and international relations
Michael Bordo, Harold James
為替レートに関する古典的なトリレンマ論は,固定為替レートの下で,資本の移動性と金融政策の自律性とのトレードオフを表すものだった.この議論は,政府の直面するさまざまなトリレンマに拡大できる.それは,グローバリゼーションに直面する政府の政策選択肢が,マクロ経済の目標と政治的現実とのバランスになることを示している.
トリレンマ#1 マクロ経済
Padoa-Schioppa (1982) がMundell’s (1963)のトリレンマに通商政策を加えて4つにした(不整合のカルテット).それは貿易から通貨統合に向かったヨーロッパ統合を意識したものだ.また,Rey
(2013)は,変動レート制でも金融政策の自律性は得られないことを指摘した.
トリレンマ#2 金融安定性
資本勘定の取引自由化は,しばしば銀行や金融システムの安定性を破壊した.特に新興市場では,国際資本移動と銀行部門の脆弱性が結び付いて,国際的な金融危機の原因となった.1830年代のアメリカ,19世紀後半のアルゼンチン,1920年代の中央ヨーロッパ,1990年代のアジア新興市場,2000年になってからの南ヨーロッパ,など,多くの例が知られている.
政府が支払不能の銀行を救済し,あるいは支払保証したことは,しばしば,その約束を守れず,金融の不安定化を拡大することになった.
トリレンマ#3 民主主義
国家は,それが民主的でも,独裁的でも,資本市場の開放による利益を歓迎する.民主主義では,有権者の短期的な要求を満たす政府から,金融政策を独立させることを求める.それゆえ,金融政策の自律性と資本移動とのトレードオフが生じる.
民主主義政府には,資本移動と,金融政策に関して,時間的不整合が生じる.金融緩和は人々がその刺激を予想して行動を変えれば,効果を失う.資本流入は,それが短期的な刺激となっても,突然の流入停止によって,投資が失敗に終わる.政府は短期的な効果のみを考慮し,長期のコストを後の政権に押し付ける.
金融的な不均衡は政治的に魅力がある.政府とインサイダーたちは国際的に求められるような改革を唱えて,資本流入を増やそうとする.資本移動の悪影響を注意するアウトサイダーの警告は無視される.
しかし,金融的緊張が生じると,資本市場開放のコストは高まり,諸政党はもはやその結果を受け入れなくなる.有権者は既存政党を嫌い,反システム,ポピュリストの政党を支持する.左派のポピュリストは,不当に大きな調整コストが貧困層に押し付けられている,と攻撃する.右派のポピュリストは,調整が外国の債権者の利益となり,国家主権を否定している,と攻撃する.民主主義の原理が,国家主権の強化に利用される.こうした逆転は大恐慌でも起きた.
20世紀後半の信用拡大の大きな循環とともに,大恐慌の悲惨な記憶が薄れた.そして新興市場における危機に関して,グローバリゼーションと民主主義との関係を一般的に議論するEichengreen
(1996). Rodrik (2000 and 2007)が現れた.すなわち,高度なグローバリゼーションと,民主主義,国民国家の自律性,とは矛盾するというものだ.それは,ユーロ危機,世界金融危機により,裕福な工業諸国についても言われるようになった.
民主主義政治は2つの対応をとる.
1.行動の一般原則を合意する.2.(それに従い)資源を再配分する.
しかし,生産要素が国境を超えて容易に移動するとき,たとえば,資本に課税することは難しい.高税率は資本を国外に逃避させるからだ.それは,高所得者に対する課税も,一般的な法に関しても,政府の力を制約する.
トリレンマ#4 国際関係
民主主義と同様,安定した「国際秩序」も資本流入をもたらす.資本移動性と「国際秩序」との間で,民主主義的な政府が選択できる政策は限定される.
安全保障に対する条約とその関与が,単なる金融的なメカニズム以上に,債権国政府に銀行融資を継続させることになる.同盟関係は投資家に安全保障を与える.資本移動性の高まりによって,民主的であれ,非民主的であれ,各国は強力な債権国との関係を強化する.
また,危機における国内の政治的資源再分配は,他国にも影響し,国境を超える資源再分配を求める政治的要求を生じる.「他者に支払わせろ!」 という要求だ.同盟関係や緊密な政治同盟は,こうした不安定化をもたらす民主主義の動きを抑制する.
資本移動性,民主主義,安定した国際秩序は,同時に成立しない.
4つのトリレンマは,民主的な政府の直面する政策選択の制約を示すものだ.しかし,現実には,純粋な資本移動性や金融政策の自律性は存在しない.中間的な制約された目標に対して,さまざまな政策が可能である.また,民主主義をより広い国際秩序の中で考察することが,偏狭なゼロサム思考の政治から抜け出すことを可能にする.大きな安全保障の枠組みを受け入れることで,資本移動性や安定化の枠組みを合意できる.
しかし,ブレトンウッズ型のグローバル・コンパクトを安易に賛美してはならない.それは強い恐怖の助けなしには機能しないからだ.第2次世界大戦後,グローバルな危機が制御できなくなることを各国は強く恐れていた.その教訓とは,残念ながら,ダイナミックの改革の前には,事態が極度に危険な状態を示す必要がある,ということだ.
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The Economist March 28th 2015
The White House in 2016: Cruz the bruiser
Lee Kuan Yew: The wise man of the east
Lee Kuan Yew: Asia’s city-statesman
Tourism in Japan: Treasure hunt
Singapore after Lee Kuan Yew: After the patriarch
Iran and Shia militias: The Shia crescendo
Nigeria’s oil: Crude politics
Charlemagne: In Germany’s shadow
(コメント) アメリカ大統領選挙の共和党候補に現れた Ted Cruz に驚きました.しかし,Lee Kuan Yewの刺激した論評は,アジアでも,シンガポールでも,こうした指導者を葬るような転機が訪れたと感じます.
日本の景気刺激策で,最も成功したのは円安と株高,と思ったら,中国人観光客のショッピングであったわけです.安倍首相も中国非難を控えるはずです.
イラン,ナイジェリア,ドイツの記事に興味を覚えました.
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IPEの想像力 4/13/15
理想的な社会についても,トリレンマ論があるのでしょうか?
私たちは,富を創る社会的なネットワークに参加することで豊かになります.しかし,それがもたらす結果について,社会的な理想から大きく外れていると感じた人々は,公的な意志による介入を求めるでしょう.こうして,市場と社会的正義とは,政治的な意志を形成することで,理想的な社会を保証しているはずです.
NHKドキュメンタリーWAVE「沸騰するキューバの市民ツーリズム」を観ました.
医療や教育が無料であるのは,キューバ社会主義の理想を表す美点だと思います.そして,その費用負担は大丈夫なのか? と心配になります.キューバは世界各地の紛争地域や被災地域,エボラ・ウィルス感染拡大地域にも,医療支援を行い,その理想を世界に示して称賛されました.
その一方で,アメリカによる禁輸や経済制裁は,ソ連崩壊,ヴェネズエラの混乱,など,国際支援を失ったキューバの経済運営を著しく困難にしているのです.アメリカによる制裁解除,国交正常化は,アメリカや世界の市場を介して,キューバ国民も豊かになる機会を増やすでしょう.
しかし,社会的な正義はどうなのか? 彼らの不安を和らげるには,政治への信頼が欠かせないはずです.政治が動かせる手段,その能力は,市場統合により急速に失われます.
キューバの葉巻は有名ですが,イチゴが非常に高価である,とテレビで紹介していました.ペソと兌換ペソとの違いは,貿易を制限されたことで生じたシステムが,政府による資源配分を維持する仕組みにもなっています.今,禁輸が解除され,2つの為替レートを円滑に一致させることができれば,キューバは貿易の利益を得て,国民の所得水準がフロリダに近づくはずだ,と思いました.
政府による配給制,許可制に代わって,市場の競争が始まります.市民たちが民宿やレストランを開いて.外国人観光客から兌換ペソを手に入れます.オバマ・ドクトリンは,禁輸や制裁ではなく,市場開放によって,異なる政治体制を徐々に市民の要求に応えるシステムに同化させていく試みです.それは,中国が香港を取り込む試みと,類似した過程かもしれません.
すべての人々が参加する政権,機能する政治経済システム,地域安全保障,・・・オバマはイランとの合意を超えて,中東世界のすべての政府,すべての住民に呼びかけます.それはチャンスである,と.
市場自由化・統合,マクロ政策の自律性,金融の安定性,民主主義,安定した国際秩序・安全保障,こうしたグローバリゼーションの重層するトリレンマは,新しい市場圧力にさらされるキューバの政府や市民たちを苦しめます.もし人々の積極的な試みが,さまざまな協力の枠組みと結びつかないなら,東欧民主化や「アラブの春」,ユーロ危機でも,政治経済秩序の不安定化に向かいました.
社会主義の,あるいは,理想社会のトリレンマは,世界化する市場の圧力に応じて,各地の政治過程を再編する能力を問うのです.
日本の統一地方選挙では,知事選挙の多くで与野党が現職候補に相乗りし,地方議会選挙では無投票当選が増え,投票率が低下しました.大阪では,維新の党以外はすべて敵だ,というシングル・イシュー選挙に変わり,自民党内部の候補者争いから鞍替えした政治家が,保守党からUKIPに移ったように,多かったのかもしれません.
定時制の夜間議会や,託児所を備えた議会,という話を,若い政治学者がしていました.むしろ市民の義務として,投票するし,必ずだれもが議員になる,という古典的時代に回帰する予感がします.社会主義,民主主義,市場統合,それを合意できる,有能で,敏捷で,深い思索とガッツのある政治家・政治システム・国際秩序を見出す中で,キューバも,アメリカも,このカオスから抜け出します.
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