IPEの果樹園2015

今週のReview

4/13-/18

 

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アメリとイランとの枠組み合意 ・・・ウクライナ問題の内側と外側 ・・・Appleのパワー ・・・イギリス政府と経済成果 ・・・TPPTTIP ・・・イエメンで始まる覇権戦争 ・・・アメリカ大統領候補たち ・・・AIIBの融資に注目する ・・・グローバリゼーションと4つのトリレンマ ・・・日本の空虚な改革

[長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  アメリとイランとの枠組み合意

YaleGlobal, 2 April 2015

Iran Deal Reached, Struggle For Acceptance Begins

Dilip Hiro

NYT APRIL 2, 2015

A Promising Nuclear Deal With Iran

By THE EDITORIAL BOARD

NYT APRIL 2, 2015

The Fruits of Diplomacy With Iran

By WILLIAM J. BURNS

2013年の暫定合意から,今回の枠組み合意まで,多くの外交的な失敗の試みを超えて,さらに明確な合意ができれば,画期的な合意条件を示すものになる.

短期的には,厳格な検証体制を組み込んだ.平和利用とのグレーゾーンは限られている.イランが履行しなければ制裁措置が再生する.

長期的には,核兵器の開発を放棄させること,そのための核拡散防止体制を強化することに役立つだろう.また,イランが地域の安全保障を重視し,他国における軍事支援を断つことで,地域の近隣諸国やアメリカとの外交関係を改善する方向に進むべきだ.

NYT APRIL 2, 2015

A Foreign Policy Gamble by Obama at a Moment of Truth

By PETER BAKER

Cliff Kupchanは,the Eurasia Groupのイラン専門家である.「現在まで,オバマには外交の遺産が何もない.」 多くの外交における失敗が並ぶ中で,もし成功すれば,イランとの合意は中東政治を永続的に変える重大な成果になる.オバマにとって,これは一か八かの賭けである.

John A. Boehnerは,下院議長である.最近,中東を歴訪して,イランによる地域の不安定化,暴力,テロは増している,と警告した.イランの体制が核兵器を開発しないと思うのは無分別であり,経済制裁の緩和はこの地域を不安定化する.

FT April 3, 2015

Smart money over Iran should be on Obama

ED Luce

FT April 3, 2015

Imperfect deal will help an uneasy peace

Nicholas Burns

FT April 3, 2015

A historic if preliminary deal to stop Irans bomb

オバマは世界の主要諸国が承認した条約をアメリカ議会が破壊することを警告した.そして,共和党の大統領であるリチャード・ニクソンとロナルド・レーガンが,冷戦期に,もっと危険な敵と不完全な取り決めをしたことを思い出すように求めた.

Project Syndicate APR 3, 2015

Five Concerns About the Iran Nuclear Deal

RICHARD N. HAASS

P5+1(安保理常任理事5ヵ国+ドイツ)が認めた,政治的,外交的な転換点である.しかし,そこには多くの疑問が残されている.イランの核開発計画を,その遠心分離器のタイプと数,原子炉のタイプ,保有できるウラン,により制限した.それが望ましい影響を及ぼさない,5つの理由がある.

1に,包括的な合意を6月末までに結ぶ必要がある.今回の合意に関して,国内で批判が起き,政府は姿勢を変えるかもしれない.第2に,経済制裁を解除するタイミングがむつかしい.制裁こそがイランの行動を促す理由だから.

3に,イランにも,アメリカにも,国内の深刻な不確実要因がある.アメリカを大悪魔と呼ぶイランの強硬派,議会をはじめとして,アメリカ国内のはるかに複雑な事情.第4に,合意を実施させる方法がむつかしい.イランの適切な行動を観なければならない.

5に,核開発だけに限らず,イラン外交・防衛政策がもたらす行動は,テロ組織への支援,代理戦争,イラク,シリア,イエメン,など,中東の不安と関係しており,イラン国内の人権問題もある.イランが,帝国の影響力を地域に及ぼす存在と考えるようになれば,それが,将来,核開発計画を進めることになる.

FP APRIL 3, 2015

A Time for Fist-Bumping

BY DAVID ROTHKOPF

FP APRIL 3, 2015

Washington’s Headbanging Diplomatic Duo

BY JAMES TRAUB

FP APRIL 3, 2015

From Washington to Tehran: A Legacy of Failure

BY BRYAN R. GIBSON

NYT APRIL 5, 2015

The Obama Doctrine and Iran

Thomas L. Friedman

19969月に,私はイランを訪問した.そのとき,ホテルのロビーで,「アメリカを打倒せよ!」という標語を見た.しかも,それは旗や映像ではなく,壁にタイルで描かれたものだった.私は思ったものだ.「これはすごい.簡単には外せないぞ.」 20年近くが過ぎて,オバマ政権はイランとの合意案を交わした.あの標語を壁から掘り出す最善の機会かもしれない.アメリカとイランとの冷戦・熱戦はこの地域を36年間も混乱させてきた.それはアメリカ,イスラエル,スンニ派のアラブ諸国が直面する大きなリスク,イランが核保有国になること,を阻止するチャンスである.

オバマ大統領は私を大統領執務室に招いて,この枠組み合意がもたらすリスクと機会とを彼がどのように均衡させたかについて説明した.私が強い印象を受けた大統領の言葉を,私は「オバマ・ドクトリン」と呼びたい.それは私が,ビルマ,キューバ,最新のイランについて,アメリカの長期に及ぶ,それらの国を孤立させる外交政策から離れる彼の決断について質問したときだ.オバマはそれを「関与・包摂engagement」と呼んだ.アメリカもこれら3か国も,際限のない制裁と孤立化よりも関与のほうがはるかに良い,アメリカの中核的な戦略の必要性にかなう,と考えたのだ.彼はさらに,アメリカは圧倒的なパワーを保持している,と付け加えた.新しい重要な可能性を拓くために,計算されたリスクをとる自信を持つ必要がある.イランとの外交取り決めを結ぶこともそうだ.

「われわれは十分に強力であるから,自分自身のリスクを冒さず,こうした試みをテストできる.このことを人々は理解していないようだ.」 われわれがキューバに包摂する可能性を与えることは,キューバの人々にとって大きな改善である.キューバはほんの小さな国である.われわれには安全保障上の何のリスクもない.もしよい結果が得られないと分かれば,われわれは政策を調整することができる.イランについても同じだ.イランは大きな国で,アメリカ市民の死にかかわる活動にも従事している.しかし,真実は,イランの防衛予算が300億ドルでしかないことだ.われわれの防衛予算は6000億ドル近くであり,イランがアメリカと戦争することなど不可能だ.

オバマ・ドクトリンとは何か? それは,われわれは関与し,包摂するだろうが,われわれ自身の行動の自由はすべて保持する,というものだ.

イランは抑止不可能だ,という考え方を,オバマは,全くの間違いだ,という.もしこの問題を外交的に解決できれば,それはより安全で,確実で,同盟諸国を守ることも有利になる.誰がそれを否定できるのか? イランは変わるかもしれない.しかし,もし変わらない場合も,われわれは抑止力,軍事的な優位を保持しているのだ.なぜ可能性をテストしないのか?

イスラエルは状況が異なる,とオバマは言う.ネタニヤフ首相が言うように,イスラエルはもっとリスクに弱い.可能性をテストする余裕はない.オバマはそれを完全に理解している.ユダヤ人の歴史と,その安全保障に関してアメリカに依存するだけではないことも.しかし,アメリカはイスラエルの軍事力が高い水準を維持することに関与しており,将来のいかなる攻撃にも,アメリカはイスラエルと共に戦うと約束している.

サウジアラビアなど,スンニ派のアラブ同盟国に対して,オバマは外部の脅威に対してだけでなく,その内部の脅威に対処するべきだ,と考える.それは疎外された住民たちであり,仕事のない若者,破壊的でニヒリスティックなイデオロギー,絶望のはけ口が政治には何もないと確信している.アメリカはアラブ諸国に外部の脅威に対する防衛力を築くだけでなく,その政治体制を強化することもできると思う.そうすれば,スンニ派の若者たちが政治に絶望して,イスラム国家に向かうようなこともなくなる.こうした対話は難しいが,彼らの最大の脅威はイランが攻撃してくることではない,と話し合う必要がある.

もしイランの指導者たちが,自分たちには核開発計画など必要ない,と言えば,もっとすぐれたイラン人の才能や企業家を育て,世界経済にも参加できるだろう.イランが地域の大国になるために,核兵器は必要ない.私はイラン人に言いたい.地域の大国であるために,反ユダヤや反イスラエル,反スンニを掲げる必要はない.国際的な責任を果たすこと,近隣諸国に対する攻撃的な主張をやめること,反イスラエル,反ユダヤの感情を刺激せず,自国の防衛に十分な軍事力を保持するにとどめることだ.そうすれば,イランには成功した大国になる十分な規模,資源,人口がある.イラン人もそれを認めることを願っている.

議会からの反対について,基本的に重要なことは,われわれが真剣に議論し,重大な意見の対立があるが,私はこれを歓迎する.民主主義はそのように機能すると想定されたことだから.そして現代の国際環境においては,われわれがここで議論することを他の人々も聴いており,読んでいる.共和党員の考えが,私よりネタニヤフ首相に近いことは,秘密でも何でもない.しかし,公的な境界線を守らねばならない.だからわれわれは行政府を動かし,統一したアメリカを代表して外国の指導者と交渉している.アメリカの大統領が,民主党であれ,共和党であれ,分裂した外交政策を示してはならない.

過去に何があったとしても,「現時点で,この地域におけるわれわれの核心的な利益は石油ではない.領土でもない.・・・われわれの核心的な利益は,この土地で人々が平和に暮らすことである.そこに秩序があり,われわれの同盟者が攻撃されることはない.子供たちに燃料タンク爆弾が降ってくることはない.われわれの利益とは,その意味で,この地域が機能するのを保証することなのだ.この大きなプロジェクトも,どこかから始まるのであって,私はそれがイランとの合意だと思う.」

Project Syndicate APR 6, 2015

Why Europe Backs Obama on Iran

CARL BILDT

西側の内部で,地域的,世界的な脅威に対する態度で距離を生じているものは何か?

ヨーロッパ,特に英・独・仏は,10年以上もイランと交渉してきた.そしてジョージ・W・ブッシュ大統領のときに「悪の枢軸」としてイランをとらえたときも,EUの主要国は戦争より外交を重視するべきだと主張した.

このヨーロッパ方式は,着実に,その正しさが認められてきた.アメリカの諜報機関が報告したように,多くの証拠が示すように,イランは核兵器の開発を2003年には放棄していたのだ.その理由は簡単だ.2003年,アメリカがイラクのサダム・フセインの体制を崩壊させたことで,イランにとって深刻な安全保障上の脅威は消滅したからだ.

また,長い間.イランの核開発計画に関して,アメリカとヨーロッパの戦術的な関心は異なっていた.アメリカは深く疑っていたが,ヨーロッパはイランの核兵器開発が行われないことを予想し,結局,アメリカもイスラエルも,ヨーロッパの支持なしに戦争に向けて急ぐことはできなかったのだ.同時に,アメリカの強硬派が行った北朝鮮に対する交渉拒否と厳しい制裁は,その核やミサイルの開発を止められなかった.

議会内に反対する強硬派のいるアメリカに比べて,EUはイランへの制裁解除も早期に行うだろう.実際,ヨーロッパは石油輸入から利益を得ることだけでなく,ウクライナなどで国際秩序の見直しを企てているウラジミール・プーチンとも対抗しているからだ.

アメリカ政府は,議会の強硬派が外交を支配するなら,グローバルな主体として孤立を深めてしまうだろう.

ヨーロッパにも,特にフランスのように,核兵器の拡散に対する歴史的な強硬姿勢を持つ国がある.しかし,ヨーロッパは近隣地域の秩序不安定化で大量難民の波が生じていることを強く懸念している.中東で新しい戦争を起こすことは,自分たちの利益にならない.

たとえアメリカ国内にはイスラエルの強硬論を支持する勢力があるとしても,ヨーロッパの多くの人々はそれをほとんど愚劣な姿勢とみなす.

オバマが最終合意を国内でも支持されるために説得するとき,ヨーロッパは彼の強い援軍となるだろう.それはヨーロッパ方式が正しいと証明するからだ.

NYT APRIL 6, 2015

United States Embassy, Tehran

Roger Cohen

FP APRIL 6, 2015

Can Israel Still Scupper the Iran Nuclear Deal?

BY AMOS HAREL

The Guardian, Tuesday 7 April 2015

Pitfalls lie ahead in the Iran nuclear talks

Ali Ansari

FT April 9, 2015

Detente will force Iran to compromise with US or collapse

Jacob Heilbrunn

この合意に問題があるとしたら,それはネタニヤフ首相が言っているようなことではない.オバマは(ヒトラーを宥和した)ネヴィル・チェンバリンではないし,イスラム国家は第三帝国ではない.むしろ問題は,オバマがテヘランと和解し切らなかった点である.

30年間のイランとアメリカの対立は歴史の例外であった.パーレビ国王の時代には非常に良好な関係があった.それは容易に回復できるだろう.イランとアメリカがイスラム国家に対する同じ敵と戦っていることは,だれも言わないけれど,真実だ.事実上の軍事同盟である.

アメリカは空爆に限定しているが,イランは革命防衛隊の精鋭部隊を投入している.昨年9月,改革派のイラン外相Zarifは,イラク政府とクルド地域の首都をイスラム国家から守ったとき,その重要な2カ月間を放置したアメリカの姿勢を,信じられない思いで非難した.

より包括的な同盟は,中東の安定性をサウジアラビア・エジプト・ヨルダンに頼ることへの対抗勢力として,アメリカに有益である.イエメンでフーシ派の反乱にイランが加担していることをワシントンは憂慮するが,イランのロウハニ大統領は停戦を唱え,すべての勢力を包括した政府を支持している.

一方,サウジアラビアは信頼できないし,しばしば敵対する同盟国であった.その悪意に満ちたスンニ派のワッハーブ主義は世界中でテロを刺激してきた.どの国も,アメリカの十分な誠意には値しない.イランとの和解を完成する方が,地域のバランス・オブ・パワーはより平和的に機能し,アメリカの自由度を高めるだろう.

イランとの和解には経済的利益があり,ロシアを抑える意味もある.しかし,最も重要なことは,デタントがイラン国内の強硬派を最も確実に失脚させることだ.イランの中産階級には教育があり,企業家精神も豊かだ.東ヨーロッパで共産主義の老人支配体制を崩壊させた同じ自由化の圧力が,イランにも及ぶだろう.外国における代理戦争やテロ支援を終わらせるには,イラン国内の改革派指導者を助けることだ.

オバマは,国内の反対派を意識して,強硬な支持論を示した.しかし,両国間の関係をより広く,想像力豊かに語るべきだろう.枠組み合意は,当然,中東におけるグランド・ストラテジーに至る.中東の将来は希望に満ちている,と言うオバマを,愚かな夢想家と思うなら,それは間違いだ.なぜなら,彼の主張は厳正なリアリズムだから.むしろ,ワシントンとテヘランの強硬派は,神聖さなどない同盟を組んで,両国の敵対関係を利用してきた.

かつてパーマストン卿が述べたように,永久に敵である国も,永久に信用できる友好国もない.永久であるのは自国の利益である.それを実現するには,どの国とも手を組むべきだ.

FP APRIL 9, 2015

The Pot of Gold at the End of the Iranian Rainbow

BY KEITH JOHNSON, JAMILA TRINDLE


l  ウクライナ問題の内側と外側

The Guardian, Friday 3 April 2015

Can Ukraine save itself from Vladimir Putin and the oligarchs?

Timothy Garton Ash

ウクライナでは,1人のタタール人Dzhemilevに会った.彼は生まれてすぐにスターリンによる強制移住で多くのタタール人とともにクリミアを追われた.その後,ソビエトの迫害に抗議して,303日間のハンガーストライキを行った.プーチンがクリミアを併合した後,彼はクリミアへの帰還を禁止された.

Hopkoは,ウクライナ外交委員会の議長である.独立広場で闘った若者たちの後継者として,33歳の女性議員となった彼女の物語は,また異なる.彼女もウクライナを,主権を持つ,現代ヨーロッパの国にしたいと願っている.

しかし,こうした話を,われわれはおおむね見逃している.ベルリンでも,ワシントンでも,ブラッセルでも,「ウクライナ」と言えば,30秒以内に,プーチン,NATOEUの話になっている.しかし,たとえ戦争が起きなかったといしても,ウクライナには重大な課題があった.それは4半世紀前に公式の独立を得たウクライナが,政治の汚職・腐敗を一掃し,経済のオリガーク支配を解体することだ.

革命と戦争によって,ウクライナの社会は活性化した.より良いウクライナを築く戦いは,東部で戦争に勝利することに劣らない,困難なものだ.プーチンは,ウクライナ東部で「紛争を凍結」するだけで満足しないだろう.ウクライナが弱く,不安定で,機能しない国家であることを望んでいる.

われわれ,ヨーロッパ人の責任は,プーチンの目標を阻止することだ.しかし,われわれにできるのは,ウクライナ人自身がこの危機によって生じた機会をつかみ,新しい国を築くための条件を,整えるだけなのだ.それ以外は,彼らの戦いが決める.

FT April 7, 2015

America will lose patience with European appeasement

Robert D Kaplan

アメリカ大統領はヨーロッパを守らない.ヨーロッパが自分たちで平和を維持する防衛支出を嫌っているのだから.28カ国の半分しか,GDP2%という防衛予算を取っていない.

それはユーロ危機ともつながる.各国は自分たちの国益だけを主張し,何がヨーロッパにとって最善か,とは問わない.福祉国家の下での快適な生活以上に,守るべきものなどないかのようだ.超国家的なルールによって個々人の権利を守るというのは,ブラッセルの論理であって,市井の人々が重視することはない.

貧血症の国家的目標は,エリートたちを委縮させ,ルンペン・ナショナリズム,左右のポピュリズムに政治を侵食されている.それは歴史を無視した人々だ.歴史は絶えざる脅威によって,誰もが国境線に注意した.バランス・オブ・パワーを重視し,夜警に立つべきだと知っていた.しかし,第2次世界大戦後,ヨーロッパの平和はアメリカによって守られてきた.

70年間は長い.ナポレオン戦争の終結から普仏戦争の勃発までの期間より長い.アメリカによる安全保障は永久に与えられない.オバマはプーチンのウクライナ侵略に強く対抗しなかった.ヨーロッパ自身が防衛しないのに,アメリカがするか?

2次世界大戦を経験した軍人は故人となり,もっと若い,アジアやラテンアメリカからの移民の子供たちが,アメリカの外交・防衛政策を担うのだ.ヨーロッパの安全より,アジアの利益を重視するだろう.アジアの同盟諸国は自分たちも防衛を担う意志がある.

アメリカ大統領は,冷戦の時代ほど,ヨーロッパを守らない.

Bloomberg APR 8, 2015

Feckless Europe Kowtows to China

Clive Crook


l  Appleのパワー

The Guardian, Friday 3 April 2015

Why the fuss about driverless cars? We already have robot politicians

Marina Hyde

The Guardian, Sunday 5 April 2015

Why Apple is the Toyota of hi-tech

John Naughton

イギリスの商店街で,特定の店に若者たちの長い行列ができた.それはカリフォルニアで設計され,中国で生産された,スマートフォンを買うためだ.もちろん,彼らはApple教の信者たちである.この儀式が始まったのはいつか? もちろん,教会が,新しい時計が来るぞ,と告げたときだ.

Appleは,美しく,機能的に,製品をデザインする.それは製品に詰め込む膨大な部品の性能と,市場に大規模かつ迅速に供給する能力において,圧倒的である.2014年の第4四半期だけで,7450万台のiPhoneを売った.平均すると1日に846590台だ.Appleは,複雑な生産システムを膨大な規模で動かすことができる.

かつて,アメリカで生産されていた,無骨な鉄の製品,自動車を,日本のトヨタは真に優秀な製品にするため,生産過程を一新した.同じように,Appleはハイテク製品のトヨタなのだ.

FT April 7, 2015

What do the rich have now that will soon spread?

Andrew McAfee

FT April 7, 2015

Today’s luxury is tomorrow’s normality

Andrew McAfee

Bloomberg APR 9, 2015

Robots Leave Behind Chinese Workers

By Adam Minter


l  イギリス政府と経済成果

FT April 3, 2015

Now unionists want to drive Scotland from the union

Philip Stephens

FT April 6, 2015

The average voter is immune to romance and rhetoric

Janan Ganesh

NYT APRIL 6, 2015

Economics and Elections

Paul Krugman

金融危機以後のイギリス経済のパフォーマンスは驚くほど悪い.2013年に成長を回復したが,一人当たり実質所得は漸く危機前の水準に戻っただけだ.それは大恐慌のときより悪い.

イギリスは選挙を迎えるが,2010年以来,この国を指導してきた連立政権は,繁栄を守るべき役割を担った人々であるが,選挙で退場するのを待っているはずだ.

しかし,ここに不況における経済運営に関して,イギリスだけでなく,すべての民主主義的な政府のための教訓がある.彼らに反対する野党が弱いこともあった.それ以上に,有権者というのは非常に短い記憶しか持たないのだ.彼らは経済政策を,長期の成果ではなく,最近の成長で判断する.5年間のパフォーマンスは最悪だが,最近の2つの4半期には成長している.それこそが政治的には重要なのだ.

つまり,良い経済政策は政治的に評価されない,ということだ.政治的に利口なやり方は,政権を取ったすべての時期に国を不況に追いやって,選挙の直前だけ,有権者が目覚ましい好況の中で投票所に向かうように,その余地を創り出すことだ.

それこそ,現在のイギリス政府がやってきたことを述べたものである.それほど巧妙ではなかったが.

では,選挙が政治家たちに責任を問う仕組みであるなら,経済政策に関して,その役割を果たせない,というのか? この弱点を克服する一つの可能性は,経済政策をエリートの専門委員会に委ねることだ.しかし,この試みの結果はアメリカのボールズ=シンプソンや,ヨーロッパでも,財政均衡をめぐるひどいものだ.

もう一つの,より民主主義的な試みは,有権者に電子情報を普及させることだ.イギリスの経済論叢で顕著な問題は,ニュースメディアの経済分析と,エコノミストのコンセンサスとが,大きく異なっていることだ.ニュースは成長の回復を政府の緊縮策の成果として伝えるが,エコノミストでは少数意見でしかない.

エコノミストは,何が起きているのか正しい説明を探すだろう.それが政治的に及ぼす影響は小さいかもしれない.しかし,選挙は誰が権力を握るかを決めるのであって,誰が正しいかを決めるのではない.

The Guardian, Tuesday 7 April 2015

Tony Blair’s love affair with Europe will not win votes for Labour

Simon Jenkins

Project Syndicate APR 9, 2015

Krugman’s Anti-Cameron Contradiction

JEFFREY D. SACHS

Paul Krugmanのイギリス政府に対する非難は間違っている.Krugmanが称賛するアメリカのオバマ政権の成果とほぼ同じであるから.失業率,雇用,成長,を観ればわかる.

むしろ,Krugmanが主張し続けている,景気回復には財規模な財政刺激策が必要だ,という主張が両国の経過から否定される.


(後半へ続く)