IPEの果樹園2015

今週のReview

4/6-/11

 

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イギリスの選挙 ・・・ユーロ圏の不均衡 ・・・リー後の社会契約 ・・・Google時代の企業と投資 ・・・アメリカの雇用増 ・・・水不足 ・・・イラン核合意の意味 ・・・米中時代とAIIB/TPP ・・・「テロとの戦い」と幼稚園の教育

[長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  イギリスの選挙

The Guardian, Friday 27 March 2015

It is not just parliament’s buildings that require extensive renovation

Timothy Garton Ash

イギリス議会の建物が大規模な改修のために解体される.しかし,大幅な改修が必要なのは建物だけではない.議会は国民から広く軽蔑されている.

ドイツ人にとって,国民的なシンボルとはブランデンブルグ門だ.ポーランド人のクラクフ王宮,中国人の,今も毛沢東の巨大な肖像画を掲げている天安門広場もそうだ.イギリス人にとっては何か? それは議事堂である.議会政治の歴史を切り拓き,継承してきた,代議制による民主主義こそ,イギリスを象徴するものだ.

しかし,今や国民の評価は歴史上の低位にある.ラジオ番組で,一時的にロンドンを離れて議会を開く話になれば,多くの人が2度と戻らない方が良いと主張した.

他国にはない,PMQs (prime minister’s questions)のような改革もあるが,さらに一層の改革を求められている.議事は中身のないものとなり,台詞はあらかじめ用意されている.単なる,怒りの応酬である.

議員は党の指導者たちに依存し,党首は何でも政治的な専門家たち(special political advisers – known as spads)に依存している.それは民主主義ではなく,“the spadocracy”である.むしろジャーナリストが大きな役割を担っている.立法府の審査は不十分である.上院や裁判官は選挙にさらされていない.しかも,議員たちは賄賂を受け取っている.

The Guardian, Sunday 29 March 2015

Three new tribes of voters will dominate this election

Paul Mason

今まさに各政党の戦略家たちは有権者を人口学的に分類しているはずだ.しかし,彼らは大きな見取り図を欠いている.この選挙は,新しい,もっと大きな政治的分割に支配されるはずだ.ミクロな人口学の分割ではなく,彼らの夢を理解する必要がある.それは3つの地理・空間的な部族に還元できる.私はそれらを,Scandi-Scotland, the asset-rich south-east and post-industrial Britainと呼びたい.

主要政党はどこも,この出現しつつある戦線を正しく理解していない.そして,存在しないセンターを,まだ奪おうとしている.

北欧・スコットランド族Scandi-Scotlandは,世論調査に従って,次の選挙はスコットランド独立が問われていることを示すものだ.それは住民投票で否決されたはずだ,と思うなら,間違っている.スコットランド人の多くは,独立に反対投票した者も,自分たちを「暖かい南の北欧」と考えている.それは左派的な社会民主主義であり,グローバルな志向と,ヨーロッパへの親近感を示す.英連邦派の諸政党が連携を呼び掛けても,彼らにとって,この夢をUK内で実現できるかどうか,が問題だ.

それは,誰も語りたがらない第2の地理的・空間的な分断,南北格差から生じたものだ.持続する経済的な現実により,南東部イングランド人には明確なアイデンティティーとして,南東部・資産富裕族the asset-rich south-eastが存在する.すなわち,資産価値の保有者である.住宅価格がしめす地図は,ロンドンとその周りの南東部だけが膨れ上がり.他の地域はやせこけた付け足しでしかない.黄身ばかりの目玉焼きだ.その不平等は自由な市場の時代とともに古く,階級やエスニシティを超えて,南東部イングランドの志向を形成する.

彼らはイギリスが金融化された経済として成功することを願っている.この金融マシーンが機能する限り,たとえ不平等が拡大しても,両替商でも,タクシー運転手でも,ラップ・ダンサーでも,司書でも,そこには仕事があるはずだ.ブレア派はこの変化を理解したが,それに労働党を適応させたけれど,その変化がすべての国民に及ぶことも,スコットランドやウェールズ,イングランド北部が忠誠を維持することも,なかったのだ.

3の地理的アイデンティティーは,まだ脱工業化ブリテン族post-industrial Britainとして完成していないが,存在する.イングランド北部,ウェールズ南部,沿岸部の町や大都市において,「錆びついた旧工業地帯」ではなく,ハイテク時代を生き,グローバルな視点を持つ.しかし,彼らは産業時代の良識を持ち,資産家に反発し,強いローカルなアイデンティティーを持つ.それは労働市場のグローバル化と衝突する.

これら3つの異なる部族が,1つの政治システムに共存できるのか? 住民投票の際に明らかになったが,「発熱した南部」は結局のところ保守主義やリベラリズムと結び付き,スコットランド人の望む左派の社会民主主義政権を拒むだろう.イングランド北部のエスニックな紛争,労働組合の衰退,労働党からUKIPへの支持者の離反,を観て,脱工業化ブリテン族との同盟を求めても,議会多数派は支配できないと結論する.

3750億ポンドの金融緩和,インフラ建設計画の殺到するロンドンは,南東部の活気を取り戻す.賃金は上がらず不満があるとしても,資産富裕族の金融マシーンが中高年者に機能する限り,対立は住宅市場から閉め出された若者との世代的なものでしかない.

疑念と分裂を生じているのは脱工業化ブリテン族だけであり,SNPと保守党は支持者の心をつかんでいる.労働党はそうではない.脱工業化ブリテン族は2つの対立する党派に挟まれて矛盾を感じ,労働党は生存を脅かされている.「2つの国民」や「センター」を議論している政治は現実を観ていない.現在の政治的枠組みと矛盾している3つの夢を観るべきだ.


l  ユーロ圏の不均衡

FT March 29, 2015

The real eurozone problems are hidden under the bonnet

Wolfgang Munchau

さまざまな論点はあるが,全体の枠組みを観れば,ユーロ圏には顕著な不整合が存在する.

不整合はさまざまな異なる姿を示されている.たとえば,ドイツと南欧諸国のスーパーマーケットで物の値段を比べてみる.すると,同じユーロが大きく異なる購買力を示すことに気づくだろう.アメリカの町ではありえない.しかも高所得の北欧の物価の方が,低所得の南欧の物価より安い.

経常収支でも,国際投資(貯蓄の流れ)でも,単位労働コストでも,ユーロ圏内に不均衡がある.ところが,これを円滑に解消するルートが無いのだ.

単位労働コストを一致させるには,ギリシャなど南欧の物価と賃金が,ドイツの物価と賃金に比べて低下する必要がある.経験から,たとえ不況でも賃金は下がりにくいから,ドイツが物価と賃金を上げるのが良い.そのためには,ドイツ政府が大規模な財政刺激策を取ることだ.

しかし,ドイツ政府は景気循環を通じて財政均衡を約束した憲法に制約されているから,それをしない.そこでドイツはギリシャに緊縮策を求めて物価を下げさせ,それを続ける限りは融資を行ってギリシャへの財政移転を支持するのだ.メルケルは,こうしたユーロ危機の管理と継続で,債務を免除しなくても永久に持続できるだろう.

しかし,不均衡の調整を拒否した通貨同盟は,その緊張に耐えられない水準に向かう.


l  リー後の社会契約

FT March 27, 2015

Singapore: Life after Lee

Jeremy Grant

リー・クアンユーが亡くなった後,シンガポールはどうなるのか? 彼自身が,最後の本で,100年後にシンガポールがどうなっているか,わからない,と書いた.無能な政府に委ねれば,シンガポールはなくなっている,と.

シンガポールは,その経済的な成功により,政治的・社会的な転換を強いられている.彼が築いたガバナンスは存在するが,その現実が変化した.

極端に清潔で,権威主義的な,都市国家としての性格は,リー・クアンユーの父権主義的な権威に由来している.彼の息子Lee Hsien Loongが首相になってから,厳格な刑罰は緩和されてきた.メディアも自由化され,より多元主義的な政治に向かうだろう.リー・クアンユーの統治のマイナス面についても議論を始める者がいる.ある専門家は,人々がトップ・ダウンのシステムを弱めたいと願っている,と言う.多様な社会の成熟と複雑さをを反映した政治を求めている.

社会契約の刷新が目指されている.特に,不動産価格の上昇と分配の不平等が問題視されている.シンガポールの成長で,流入する移民が住宅やインフラを不足させた.Lee Hsien Loongは父の権威を持たないが,有能な政治家として,積極的な再分配政策に向かう予算を示した.富裕層に増税し,社会福祉とインフラ投資を充実させる.

新しい社会契約を求めるPAPの方針に,反対する政治家もいる.それは,ヨーロッパの衰弱国家に向かう,と.他方,労働運動の指導者は新しい政治世代の登場を求めている.


l  Google時代の企業と投資

Project Syndicate MAR 27, 2015

Secular Stagnation for Free

RICARDO HAUSMANN

資本主義は何かが根本的に腐食している.かつてない低金利にもかかわらず,ほとんどの先進諸国で投資の水準が,2008年の危機前に比べて,大きく低下している.

マイナス金利でなければ完全雇用を実現するほど投資が行われない.それはA.ハンセンに従って,L.サマーズが示した「長期停滞」論だ.ケインジアンは,これに対して,量的緩和のような非伝統的金融政策,財政刺激策,より高いインフレ目標,などを支持する.しかし,それは資産バブルや財政破綻をもたらしかねない.

停滞の原因をめぐっては,意見が一致しない.貯蓄過剰論は,人口増加率は低下し,平均寿命が延び,退職年齢は変化しないから,人々はますます多くの貯蓄を必要とする,と説明する.しかし,それは変化を説明するほど大きくない.また,投資機会が不足している,という説明もある.機械が大幅に安くなって,また,技術革新のスピードも減速した.

技術革新について楽観的な論者たちも,それがGDPを増大させないことを指摘する.Google, Wikipedia, Skype, Twitter, Facebook, YouTube, Waze, Yelp, Hipmunk, Pandora,などが,私たちの生活を豊かにしている.しかし,そのサービスの多くは無料である.その有益さはGDPに算入されていない.Edward Glaeserが論じたように,アメリカの中位の所得を得ている家族は,1970年より所得水準が低下したと思われているが,彼らが携帯電話もインターネットもない1970年の生活に戻りたいとは願わないはずだ.

それは投資機会に問題を残す.技術革新と財のタイプが変化した.第2次世界大戦後の好況期には,人々がエアコンや自動車,新聞を買った.それを供給する企業は投資できた.しかし,情報集約的な財は,追加のソフトをコピーするコストがゼロである.それに対して代金を請求することは難しい.

ラジオやテレビの放送は同じ問題を,コマーシャルで解決した.広告型のビジネス・モデルはGoogleを成功させたが,その資金はますます無料のサービスを増やしている.それが代替するサービスや財は利益を失ってしまう.

新しい技術の可能性は,非市場型の支払を組織する方法や,利潤なしでも積極的に投資できる方法を見つける必要がある.


l  アメリカの雇用増

NYT MARCH 27, 2015

Mornings in Blue America

Paul Krugman

この1年で,アメリカ経済には2つの重要なことが起きた.それらは,少なくとも政治を支配していたイデオロギーにとって,起こり得ないことだった.第1に,雇用を破壊するとオバマケアをどれほど激しく非難していたとしても,アメリカの雇用は増えたのだ.第2に,それは1990年代以来の最大規模,330万人であり,テキサスよりもカリフォルニアで多くの雇用が生じた.

この事実が政治に与える影響は重大だ.オバマへの非難,レーガン時代への自信,企業家の心理,これら3つの保守派に特有のイデオロギーが破産したことを意味する.


l  水不足

NYT MARCH 31, 2015

Water Pricing, Not Engineering, Will Ease Looming Water Shortages

By SCOTT MOORE

ブラジル最大の都市,サンパウロも水不足で,このままでは人口2000万人が週に2日間しか水を利用できなくなる,という.

都市計画の失敗,気候変動,水供給の工学的な解決に依存した結果,地球上の多くの都市が水不足に苦しんでいる.巨大な運河,貯水池,送水パイプ,など,カリフォルニア,アリゾナ,どこでも水供給は人口増加に追いつかない.

アメリカ南東部における「メガ干ばつ」について,NASAの警告に応じて,3つの重大な政策転換が示された.エンジニアから経済的な市場アプローチの解決へ向けて,1.利用できる水の上限規制と取引権市場を設ける.農業も住民のための水道も,全国規模で,これに参加する.2.干ばつ地域への支援策を止め,長期的な適応を支援する.3.政治的指導力を発揮し,水利用のトレードオフに関する率直な議論を促進する.


l  イラン核合意の意味

NYT APRIL 1, 2015

A Nuclear Deal With Iran Isn’t Just About Bombs

Nicholas Kristof

制裁によっても,爆撃によっても,今後,10年でイランが核兵器を保有することは阻止できない.しかし,外交によって,イランを親米的な国家に変えることはできる.

FT April 2, 2015

Doubts that threaten a deal with Iran

Philip Stephens

合意で,テヘランの核武装を確実に阻止できることはない.永久に交渉し続けて,合意を検証するしかない.イランが,軍事的な方法ではなく,その目的を達成できると理解するしかない.


l  米中時代とAIIB/TPP

FT April 1, 2015

Round two in America’s battle for Asian influence

David Pilling

TPPがオバマ大統領の外交における最大の遺産と見なせる.

アメリカは,中国主導のAIIBに関して惨めな喜劇役者を演じた.アメリカ政府の反対を無視して,イギリスに続き,ドイツから韓国まで,多くの国が中国側に走ったのだ.

この敗北に代わる大きな勝利を目指したいところだが,TPP合意の実現も成否は半々である.世界GDP40%を占める日米の2大経済圏を統合し,11カ国が参加する予定だ.それはアメリカのアジアへの関与を確立する.TPPは,軍事・安全保障の「アジア旋回」を,通商面で表現する.

その意味で,TPPは中国を排除している.ベトナムの参加を認めながら,計画経済や市場介入を理由に中国の参加を拒んだ.地域の生産と貿易の核になっている中国を排除することには問題がある.AIIBと同様に,中国が独自に,アメリカを排除した貿易協定を目指すかもしれない.

TPPには,中国の反発だけでなく,アメリカの内外で強い反対がある.それはアメリカ企業に有利な市場開放やルールを目指すものだと見なされている.またアメリカ国内でも,労働組合や市民団体が反対している.民主党は,製造業の空洞化や中産階級の賃金を下げるという理由で,貿易自由化を嫌っている.オバマ政権がTPP合意のための交渉権限を共和党が支配する議会から得ることも,非常にきわどい.

それでも,TPPが成立すれば,オバマ外交の重要な遺産となるはずだ.


l  「テロとの戦い」と幼稚園の教育

FP MARCH 31, 2015

Just Say No

BY STEPHEN M. WALT

「テロとの戦い」(「暴力的な過激派との戦い」の別称)は,ますます「麻薬との戦い」に似てきた.

莫大な費用をかけて,逆効果でしかない大失策だ.アメリカは,麻薬の輸送を阻止し,外国でケシやコカの栽培を根絶し,国内の麻薬ディーラーや利用者を一網打尽にするため,数1千億ドルを費やした.しかし,持続する,意味のある成果を得られなかった.生産者は他へ移り,密輸は新しいルートを見つけた.麻薬の乱用はほぼ同じ水準だ.麻薬との戦いを40年も続けた末に,「自由の土地」であった国が,世界最大の囚人人口を持つ国になった.

NYT APRIL 1, 2015

Tell Me How This Ends Well

Thomas L. Friedman

私は先週,中国にいた.いつも,中国が世界をどのように見ているかは興味深い.ときには,地元の新聞を読むだけでも深い洞察が得られる.

On March 25, The China Dailyには,北京の当局が幼稚園を捜査した,という詳しい記事が載っていた.幼稚園児に数学や英語を教えて,大学入試に準備するのを,過重な負担として非難していた.私はすぐに,中国教育省のSWATチームが幼稚園のドアを蹴破って,「そのペンと教科書を置け! 机から離れるんだ.そうすれば誰も痛い目にあわない!」というシーンを思い浮かべた.

同じ新聞が,最近の,イランに近いシーア派とサウジに近いスンニ派との,イエメンにおける戦闘を伝えていた.衝突は,イエメン第2の都市,Taizで起きた.Taiz! 私は驚愕した.20135月に,私はその町で環境破壊のドキュメンタリー番組を作っていたからだ.Taizに注目したのは,イエメンの生態系が破壊された結果,Taizの住民たちは1カ月に36時間ほどしか水道から水がでなくなっていた.

私はそこにオバマの問題点を観た.オバマは中東に関して間抜けたことを述べ,失策を続けてきた.たとえば,後のことも考えずに,リビアの支配体制を崩壊させた.この地域にこれ以上関わりを深めることには用心している.70年に及ぶガバナンスの失敗を経て,アラブの国家システムは崩壊したのだ.

アジアはそれと対照的である.第2次世界大戦後,アジアにも多くの専制支配者が現れたが,彼らは人民に基本的にこう言った.「お前たちの自由は奪う.その代わりに,良い教育とインフラ,それを可能にする輸出志向型の成長を与える.それは結果的に,中産階級を増やし,自由を得るだろう.」 他方,同じ時期に,アラブの専制支配者たちはこう言った.「お前たちの自由は失われ,その代わりに,アラブとイスラエルの紛争を与える.」

2002年,アラブの社会科学者のグループが国連・アラブ・人的開発報告書を発表した.アラブ世界には,自由,知識,女性の権利が不足している,と述べていた.しかし,アラブ連盟はこれを無視した.2011年に,アラブ民衆は流れを変えるために立ちあがった.例外的な近代化を進めていたチュニジアを除いて,各地に民衆の覚醒が広がった.国家は崩壊し,宗派間・民族間対立が沸騰する地域となった.というのも,この地域は失業し,不満を高めた若者たち,数学よりも宗教を教える,機能しない学校しかなかったからだ.

エジプト大統領Abdel Fattah el-Sisiは,アラブの安全保障に対する脅威に応える,と主張して,その根源にあるペルシャ人とイスラム原理主義に協力して対抗する,という.そうだろうか? 1979年以来,アメリカによる500億ドルの援助を受けても,まだエジプト国民の25%が文字を読めないのに.それは,中国では5%,イランでも15%でしかない.

エジプトは軍隊をイエメンに派遣するだろう.それは国民の25%が文字を読めない国による,生態系の破壊によって水道が利用できない町に起きた,預言者ムハマドの後継をめぐるシーア派とスン¥ニ派との,7世紀から続く紛争を鎮圧する,という最初のケースである.

中国の幼稚園児でも知っている.それは,成功の方程式ではない.

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The Economist March 21st 2015

China on the world stage: A bridge not far enough

The Asian Infrastructure Investment Bank: The infrastructure gap

Hong Kong-mainland relations: Aisles apart

Germany, Greece and history: Pointing fingers

Political consultants: Spinning a win

(コメント) アメリカと中国の国際金融アーキテクチュアに関わる競争です.その論理は,まだ始まったばかりで,これから深められると思います.

他方,香港がショッピングに殺到する大陸からの旅行者に憤慨し,ドイツとギリシャが歴史に関する賠償や返済に関して衝突することが,日本の現在から少し先を観るように教えています.

民主主義でも開発独裁でもなく,政治コンサルタント,という,選挙政治のプロたちが,政党や有権者よりも重要になる時代です.

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IPEの想像力 4/6/15

賃上げ,農協改革,労働市場改革,普天間基地,TPP,・・・アベノミクスを軽視し,安倍政権を短命な,超保守派政権と侮蔑していた内外の情報分析家たちは,そのしぶとさと一貫した改革意識に,遅くなったとは言え,敗北を認めるしかありません.

しかし,それは安倍首相や自民党政権,その前の民主党政権の功罪としてではありません.フロンティアに立ち向かう政治家たち,安倍にしても,橋下にしても,あるいは,民主党の枝野にしても,大塚にしても,ガッツのある,能力の高い,特異な政治家たちが日本の政治経済システムを破壊し,再生する過程が,本当に始まっている,と次第に評価するようになったからです.

政治家たちの苦闘と国民の意識をつなぐには,それを描き出すにふさわしい文章があるはずです.政治経済秩序の変化に関する深い考察を担う,ジャーナリストや理論家がもっと必要です.

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オバマ政権の遺産が問われています.それは,ふり返れば,日米の共同統治時代を築く条件を示すものでした.

オバマは,安全保障において,「アジア旋回」を明示してきました.しかし,その前提となる中東や石油からの自由を確保するのに手間取っています.

「アラブの春」は,オバマの世界戦略の外で起きた大きな衝撃であり,誤算でした.結果的に,「テロとの戦い」を終え,「アジア旋回」のためにTPPを推進する政治的なパワーを,ある期間,アメリカは失ったと思います.他方,ロシアや中国は独自の戦略を示す好機を手にしました.

それでもオバマは,中東和平や,サウジアラビアの石油,だけでなく,イランを含めた地域安全保障の基礎を転換します.イラク再建,シリア内戦,イスラム国家を含めて,中東秩序の再編による安定化と繁栄を人々が共有できるように,オバマはアメリカの優位を秩序の転換に傾けました.

アメリカがアジアを目指すのは,それが世界経済のダイナミズムを支配するからです.アジアにおける安全保障を確立するには,日中韓の合意を必要とします.北朝鮮の核問題がその最初の課題です.

他方,ヨーロッパの政治経済秩序は,東西ドイツ再統合の後,ユーロ危機によって支配されました.各地で,移民・難民問題が論争になり,統合化の政治目標は後退しています.

オバマのインタビューは,その積極的関与による国際秩序の転換を支持する姿勢を,イランとの核合意にも示した,と感じます.http://www.nytimes.com/2015/04/06/opinion/thomas-friedman-the-obama-doctrine-and-iran-interview.html?ref=opinion

オバマ政権が残した課題に,次のアメリカ大統領や日本政府は何と答えるのでしょうか? 

その言葉が示す国は,イランとイスラエルですが,関与による転換は,キューバ,ウクライナ,ロシア,でもあり,北朝鮮,台湾,中国,かもしれません.あるいは,その言葉を発する国は,アメリカではなく,中国なのでしょうか?

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NHKの衛星で,香港の春節を祝う花火を観ました.香港やシンガポールの不安は,日本やアジアが共有するものです.各地の分離独立派,金融センター・不動産利益同盟,ハイテク新興企業・地域経済群,衰退・高齢化・社会保障同盟,など,アジア政治の新集団が地平線の向こうから登場します.

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