(前半から続く)
l 日本
FT March 27, 2015
An ageing
population as an excuse for a Japanese currency war
John Dizard
日本の高齢化が世界にデフレを輸出する.かつて前川総裁がデフレに対する金融政策を正当化したことは,今や通貨戦争の外交を正当化するものになった.
FT March 30, 2015
Japan’s reforms
push companies to unlock cash
Jean-Christophe de Swaan
FT March 30, 2015
Japan expected to
join Asian Infrastructure Investment Bank
Henny Sender in Hong Kong
Bloomberg MAR 31,
2015
Japan's Newest
Export: Deflation
William Pesek
l イエメン空爆
The Guardian, Sunday
29 March 2015
The Saudi-Iran
powerplay behind the Yemen conflict
Nussaibah Younis
イエメンで,イランが支援するフーシ派の拡大に対して,サウジアラビアが空爆を行ったことは,中東全域にサウジアラビアとイランとの対立が影響を及ぼす事態を悪化させた.サウジとイランとの相互不信は1979年のイスラム革命にさかのぼる.
しかし,リヤドはイエメンの反政府派の行動が,単にイランの支援で起きていると考えてはならない.それは前政権の失策にも関係している.住民たちの不満に対して,その権利を認め,交渉のテーブルに招くべきだ.
FT March 29, 2015
Saudi intervention
risks all-out civil war in Yemen
NYT MARCH 31, 2015
Saudi Arabia’s
Ominous Reach Into Yemen
By THE EDITORIAL BOARD
NYT APRIL 1, 2015
Nasser’s Ghost
Hovers Over Yemen
By JESSE FERRIS
1962年,サウジアラビアの国王はエジプト軍が隣国イエメンに入るのを不安に見守っていた.10年前に革命に成功したナセルは,イエメンに革命を輸出しようとしていたからだ.
今,オバマ政権がイランと和解する姿勢を示すことに,サウジは深刻な不安を感じている.
l 水不足
FT March 29, 2015
Climate Shock: The
Economic Consequences of a Hotter Planet
Review by Pilita Clark
Project Syndicate
MAR 30, 2015
Why the Sustainable
Development Goals Matter
JEFFREY D. SACHS
FT March 31, 2015
India: At the
coalface
James Crabtree
NYT MARCH 31, 2015
Water Pricing, Not
Engineering, Will Ease Looming Water Shortages
By SCOTT MOORE
ブラジル最大の都市,サンパウロも水不足で,このままでは人口2000万人が週に2日間しか水を利用できなくなる,という.
都市計画の失敗,気候変動,水供給の工学的な解決に依存した結果,地球上の多くの都市が水不足に苦しんでいる.巨大な運河,貯水池,送水パイプ,など,カリフォルニア,アリゾナ,どこでも水供給は人口増加に追いつかない.
アメリカ南東部における「メガ干ばつ」について,NASAの警告に応じて,3つの重大な政策転換が示された.エンジニアから経済的な市場アプローチの解決へ向けて,1.利用できる水の上限規制と取引権市場を設ける.農業も住民のための水道も,全国規模で,これに参加する.2.干ばつ地域への支援策を止め,長期的な適応を支援する.3.政治的指導力を発揮し,水利用のトレードオフに関する率直な議論を促進する.
FT April 2, 2015
California’s hopes
for water turn to dust
Sarah Mishkin in San Francisco
Project Syndicate
APR 2, 2015
Chinese Coal Cuts
MARK L. CLIFFORD
l イラン核合意の意味
The Guardian, Monday
30 March 2015
At last a nuclear
deal with Iran is in sight. The chance must not be spurned
Simon Tisdall
元来から,親西側のイランは,しかし,すべての当事国に.合意を促す理由がある.
NYT MARCH 30, 2015
Iran Matters Most
Roger Cohen
制裁でイラン国民を服従させることは不可能だ.ウラン濃縮と核兵器の知識を持つことも否定できない.イランを爆撃するより,外向的に合意して,核武装を抑える方が良い.それ以外に現実的な選択肢はない.
アメリカは,たとえば,イスラム国家の制圧にイランと協力できる.他方,中東地域でサウジとイランの宗派間対立と紛争が拡大することは止められない.
SPIEGEL ONLINE
03/31/2015
A Bad Deal with
Iran Is Better than None
By Omid Nouripour
SPIEGEL ONLINE
03/31/2015
Geopolitical
Tremors
America, Nuclear
Talks and the New Middle East
NYT APRIL 1, 2015
A Nuclear Deal With
Iran Isn’t Just About Bombs
Nicholas Kristof
制裁によっても,爆撃によっても,今後,10年でイランが核兵器を保有することは阻止できない.しかし,外交によって,イランを親米的な国家に変えることはできる.
FT April 2, 2015
Doubts that
threaten a deal with Iran
Philip Stephens
合意で,テヘランの核武装を確実に阻止できることはない.永久に交渉し続けて,合意を検証するしかない.イランが,軍事的な方法ではなく,その目的を達成できると理解するしかない.
FP APRIL 2, 2015
Dismantling Threat
of an Atomic Bomb; Iran, World Powers Move Toward a Deal
BY COLUM LYNCH, JOHN HUDSON
FP APRIL 2, 2015
Iran Deal Threatens
to Upend a Delicate Balance of Power in the Middle East
BY DAVID KENNER
l ウクライナ
Project Syndicate
MAR 30, 2015
Last Chance for
Ukraine and Europe
GEORGE SOROS
l 米中時代とAIIB/TPP
Project Syndicate
MAR 30, 2015
China and Global
Governance
JAVIER SOLANA
VOX 30 March 2015
China’s military
and growing political power
Peter E. Robertson
(China Daily)
2015-04-01
EU must change its
outlook and capitalize on China's initiatives
By Fu Jing
(China Daily)
2015-04-01
US should not
choose to remain outside the AIIB
Global Times
2015-3-31
Bipolarization far
more likely than onset of true ‘Chinese Century’
By Yan Xuetong
FT April 1, 2015
Round two in
America’s battle for Asian influence
David Pilling
TPPがオバマ大統領の外交における最大の遺産と見なせる.
アメリカは,中国主導のAIIBに関して惨めな喜劇役者を演じた.アメリカ政府の反対を無視して,イギリスに続き,ドイツから韓国まで,多くの国が中国側に走ったのだ.
この敗北に代わる大きな勝利を目指したいところだが,TPP合意の実現も成否は半々である.世界GDPの40%を占める日米の2大経済圏を統合し,11カ国が参加する予定だ.それはアメリカのアジアへの関与を確立する.TPPは,軍事・安全保障の「アジア旋回」を,通商面で表現する.
その意味で,TPPは中国を排除している.ベトナムの参加を認めながら,計画経済や市場介入を理由に中国の参加を拒んだ.地域の生産と貿易の核になっている中国を排除することには問題がある.AIIBと同様に,中国が独自に,アメリカを排除した貿易協定を目指すかもしれない.
TPPには,中国の反発だけでなく,アメリカの内外で強い反対がある.それはアメリカ企業に有利な市場開放やルールを目指すものだと見なされている.またアメリカ国内でも,労働組合や市民団体が反対している.民主党は,製造業の空洞化や中産階級の賃金を下げるという理由で,貿易自由化を嫌っている.オバマ政権がTPP合意のための交渉権限を共和党が支配する議会から得ることも,非常にきわどい.
それでも,TPPが成立すれば,オバマ外交の重要な遺産となるはずだ.
FT April 1, 2015
Asia forum shows
off China’s vigour and homage of its neighbours
Henny Sender in Boao, Hainan Island
FP APRIL 1, 2015
‘Obama Is Sitting
Alone at a Bar Drinking a Consolation Beer’
BY BETHANY ALLEN-EBRAHIMIAN
NYT APRIL 2, 2015
Stampede to Join
China’s Development Bank Stuns Even Its Founder
By JANE PERLEZ
l 「テロとの戦い」と幼稚園の教育
FP MARCH 30, 2015
The Pentagon Ups
the Ante in Syria Fight
BY SEÁN D. NAYLOR
FP MARCH 30, 2015
Make No Mistake —
the United States Is at War in Yemen
BY MICAH ZENKO
FP MARCH 31, 2015
Just Say No
BY STEPHEN M. WALT
「テロとの戦い」(「暴力的な過激派との戦い」の別称)は,ますます「麻薬との戦い」に似てきた.
莫大な費用をかけて,逆効果でしかない大失策だ.アメリカは,麻薬の輸送を阻止し,外国でケシやコカの栽培を根絶し,国内の麻薬ディーラーや利用者を一網打尽にするため,数1千億ドルを費やした.しかし,持続する,意味のある成果を得られなかった.生産者は他へ移り,密輸は新しいルートを見つけた.麻薬の乱用はほぼ同じ水準だ.麻薬との戦いを40年も続けた末に,「自由の土地」であった国が,世界最大の囚人人口を持つ国になった.
同じことを,アルカイダなどの脅威に対応したアメリカの努力が示している.失敗の連続だった.オバマの失敗である,という非難は正しくない.アメリカの中東政策は,20年以上も,超党派で継続してきたからだ.一部の疑問を受け入れず,アメリカ政府は「二重の封じ込め」,サウジアラビアやエジプトとの関係を過度に重視し,イスラエルには無条件の支持を与えたが,その結果は? 9・11であった.
その後,ブッシュ政権はさらにまずい対応を拡大した.アフガニスタン,イラク,ソマリア,イエメン.アメリカの軍事介入は続くが,持続する成果はない.グアンタナモ,拷問,暗殺,といった対テロ政策は,ジハードに向けた新しい反西側の宣伝を助けた.オバマ政権が軍事介入を躊躇したことは,コストを抑えた,厳密な攻撃を好んだだけだ.空爆,ドローン,特殊部隊,安価で,しかし,同様に効果はなかった.
最大の間違いは,軍事力の行使に過度に依存したことだ.ジハードの脅威を解決するために,その危険が生じると考えた国に侵攻した.それは一時的な成果を示せても,長期的な戦略問題を解決せず,ジハードが生じる条件,過激派の拡大する社会を生み出した.
中東圏の最大の課題は,効果的な,正当性を示す政治制度を構築することである.破壊や殺害をする能力は,機能する統治制度に転換できない.
第2に,アメリカ政府は,その政策が自分たちに敵対する者を増やすことを意識しなかった.
最後に,過去の失敗を繰り返した者たちが,アメリカ外交を決定し続けた.
麻薬との戦い,と同じである.
NYT APRIL 1, 2015
Tell Me How This
Ends Well
Thomas L. Friedman
私は先週,中国にいた.いつも,中国が世界をどのように見ているかは興味深い.ときには,地元の新聞を読むだけでも深い洞察が得られる.
On March 25, The China Dailyには,北京の当局が幼稚園を捜査した,という詳しい記事が載っていた.幼稚園児に数学や英語を教えて,大学入試に準備するのを,過重な負担として非難していた.私はすぐに,中国教育省のSWATチームが幼稚園のドアを蹴破って,「そのペンと教科書を置け! 机から離れるんだ.そうすれば誰も痛い目にあわない!」というシーンを思い浮かべた.
同じ新聞が,最近の,イランに近いシーア派とサウジに近いスンニ派との,イエメンにおける戦闘を伝えていた.衝突は,イエメン第2の都市,Taizで起きた.Taiz! 私は驚愕した.2013年5月に,私はその町で環境破壊のドキュメンタリー番組を作っていたからだ.Taizに注目したのは,イエメンの生態系が破壊された結果,Taizの住民たちは1カ月に36時間ほどしか水道から水がでなくなっていた.
私はそこにオバマの問題点を観た.オバマは中東に関して間抜けたことを述べ,失策を続けてきた.たとえば,後のことも考えずに,リビアの支配体制を崩壊させた.この地域にこれ以上関わりを深めることには用心している.70年に及ぶガバナンスの失敗を経て,アラブの国家システムは崩壊したのだ.
アジアはそれと対照的である.第2次世界大戦後,アジアにも多くの専制支配者が現れたが,彼らは人民に基本的にこう言った.「お前たちの自由は奪う.その代わりに,良い教育とインフラ,それを可能にする輸出志向型の成長を与える.それは結果的に,中産階級を増やし,自由を得るだろう.」 他方,同じ時期に,アラブの専制支配者たちはこう言った.「お前たちの自由は失われ,その代わりに,アラブとイスラエルの紛争を与える.」
2002年,アラブの社会科学者のグループが国連・アラブ・人的開発報告書を発表した.アラブ世界には,自由,知識,女性の権利が不足している,と述べていた.しかし,アラブ連盟はこれを無視した.2011年に,アラブ民衆は流れを変えるために立ちあがった.例外的な近代化を進めていたチュニジアを除いて,各地に民衆の覚醒が広がった.国家は崩壊し,宗派間・民族間対立が沸騰する地域となった.というのも,この地域は失業し,不満を高めた若者たち,数学よりも宗教を教える,機能しない学校しかなかったからだ.
エジプト大統領Abdel
Fattah el-Sisiは,アラブの安全保障に対する脅威に応える,と主張して,その根源にあるペルシャ人とイスラム原理主義に協力して対抗する,という.そうだろうか? 1979年以来,アメリカによる500億ドルの援助を受けても,まだエジプト国民の25%が文字を読めないのに.それは,中国では5%,イランでも15%でしかない.
エジプトは軍隊をイエメンに派遣するだろう.それは国民の25%が文字を読めない国による,生態系の破壊によって水道が利用できない町に起きた,預言者ムハマドの後継をめぐるシーア派とスン¥ニ派との,7世紀から続く紛争を鎮圧する,という最初のケースである.
中国の幼稚園児でも知っている.それは,成功の方程式ではない.
l 朝鮮半島の冷戦
FT March 31, 2015
The nightmare of a
Korean cold war thaw
Gideon Rachman
ヨーロッパで冷戦が終わっても,東アジアには冷戦が続いている.北朝鮮崩壊は,それが実現すれば,世界を震撼させるだろう.
韓国政府は再統一の利益を宣伝する.労働力供給や,大陸への地上輸送ルートである.しかし,韓国の若者には再統一への関心が無い.ドイツの再統一は,それが所得格差で3:1のケースだが大きな負担をもたらし,韓国と北朝鮮の40:1という再統一に悲観をもたらす.
主要諸国には,それぞれ,朝鮮半島の再統一を避けたい理由がある.
l 新興市場通貨
FT March 31, 2015
Forex reserves in
emerging markets begin to shrink
James Kynge and Jonathan Wheatley
FT April 1, ¥2015
Emerging markets:
The great unravelling
James Kynge and Jonathan Wheatley
l ISIS
NYT APRIL 2, 2015
Make ISIS' Leaders
Face Justice
By JOHN B. BELLINGER III
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The Economist March 21st 2015
China on the world stage: A bridge not far enough
The Asian Infrastructure Investment Bank: The infrastructure gap
Hong Kong-mainland relations: Aisles apart
Germany, Greece and history: Pointing fingers
Political consultants: Spinning a win
(コメント) アメリカと中国の国際金融アーキテクチュアに関わる競争です.その論理は,まだ始まったばかりで,これから深められると思います.
他方,香港がショッピングに殺到する大陸からの旅行者に憤慨し,ドイツとギリシャが歴史に関する賠償や返済に関して衝突することが,日本の現在から少し先を観るように教えています.
民主主義でも開発独裁でもなく,政治コンサルタント,という,選挙政治のプロたちが,政党や有権者よりも重要になる時代です.
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IPEの想像力 4/6/15
賃上げ,農協改革,労働市場改革,普天間基地,TPP,・・・アベノミクスを軽視し,安倍政権を短命な,超保守派政権と侮蔑していた内外の情報分析家たちは,そのしぶとさと一貫した改革意識に,遅くなったとは言え,敗北を認めるしかありません.
しかし,それは安倍首相や自民党政権,その前の民主党政権の功罪としてではありません.フロンティアに立ち向かう政治家たち,安倍にしても,橋下にしても,あるいは,民主党の枝野にしても,大塚にしても,ガッツのある,能力の高い,特異な政治家たちが日本の政治経済システムを破壊し,再生する過程が,本当に始まっている,と次第に評価するようになったからです.
政治家たちの苦闘と国民の意識をつなぐには,それを描き出すにふさわしい文章があるはずです.政治経済秩序の変化に関する深い考察を担う,ジャーナリストや理論家がもっと必要です.
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オバマ政権の遺産が問われています.それは,ふり返れば,日米の共同統治時代を築く条件を示すものでした.
オバマは,安全保障において,「アジア旋回」を明示してきました.しかし,その前提となる中東や石油からの自由を確保するのに手間取っています.
「アラブの春」は,オバマの世界戦略の外で起きた大きな衝撃であり,誤算でした.結果的に,「テロとの戦い」を終え,「アジア旋回」のためにTPPを推進する政治的なパワーを,ある期間,アメリカは失ったと思います.他方,ロシアや中国は独自の戦略を示す好機を手にしました.
それでもオバマは,中東和平や,サウジアラビアの石油,だけでなく,イランを含めた地域安全保障の基礎を転換します.イラク再建,シリア内戦,イスラム国家を含めて,中東秩序の再編による安定化と繁栄を人々が共有できるように,オバマはアメリカの優位を秩序の転換に傾けました.
アメリカがアジアを目指すのは,それが世界経済のダイナミズムを支配するからです.アジアにおける安全保障を確立するには,日中韓の合意を必要とします.北朝鮮の核問題がその最初の課題です.
他方,ヨーロッパの政治経済秩序は,東西ドイツ再統合の後,ユーロ危機によって支配されました.各地で,移民・難民問題が論争になり,統合化の政治目標は後退しています.
オバマのインタビューは,その積極的関与による国際秩序の転換を支持する姿勢を,イランとの核合意にも示した,と感じます.http://www.nytimes.com/2015/04/06/opinion/thomas-friedman-the-obama-doctrine-and-iran-interview.html?ref=opinion
オバマ政権が残した課題に,次のアメリカ大統領や日本政府は何と答えるのでしょうか?
その言葉が示す国は,イランとイスラエルですが,関与による転換は,キューバ,ウクライナ,ロシア,でもあり,北朝鮮,台湾,中国,かもしれません.あるいは,その言葉を発する国は,アメリカではなく,中国なのでしょうか?
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NHKの衛星で,香港の春節を祝う花火を観ました.香港やシンガポールの不安は,日本やアジアが共有するものです.各地の分離独立派,金融センター・不動産利益同盟,ハイテク新興企業・地域経済群,衰退・高齢化・社会保障同盟,など,アジア政治の新集団が地平線の向こうから登場します.
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