IPEの果樹園2015
今週のReview
3/23-28
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日本の金融政策 ・・・イスラエル選挙結果 ・・・AIIBとアメリカ外交の転換 ・・・ユーロ圏の課題 ・・・ウクライナと西側 ・・・ギリシャとドイツ ・・・中国の成長 ・・・政治家の変心 ・・・中国政府は崩壊するか? ・・・養鶏場 ・・・イランとの合意 ・・・グローバルな都市化の設計 ・・・ガニの新構想 ・・・オバマとTPP合意
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial
Times, The Guardian, NYT: New York
Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 日本の金融政策
Bloomberg MAR 12,
2015
Japan's Cautionary
Tale for South Korea
William Pesek
Project Syndicate
MAR 16, 2015
Japan’s Accounting
Problem
ADAIR TURNER
日銀による数兆ドルもの債務の貨幣化を,正統派は,ハイパーインフレになる,と恐れている.日本政府はすでにGDPの230%の債務を負っている.それは,1990年,バブル破裂後,財政支出で赤字を増やしたからだ.この債務を「支払う」ことは,その言葉どおりには行えないだろう.
IMFによれば,日本は2030年までに債務のGDP比率を80%に下げるだけでも,2014年,プライマリー予算でGDP比6%の赤字から,2020年までに5.6%の黒字に転換し,その後,10年間,黒字を維持しなければならない.こんなことをすれば,デフレと不況で責められるだろう.
政府が債務を返済するよりも,日銀が債券を購入した.その購入額は,政府の新規債券発行額を超えている.日銀の莫大な量的緩和策は,その目的を,債券価格,金利,為替レート,輸出,などと説明するが,最も顕著な効果は,政府が財政赤字を続ける資金を与えることだ.
公式には,日銀が政府債券をすべて売却することになっている.しかし,そんな必要はない.日銀は債券を満期まで保有するだけだ.その資金が過度の融資やインフレ,資本流出をもたらすなら,日銀は銀行の準備率を引き上げるだろう.
2003年,ベン・バーナンキは,財政赤字を貨幣化して,企業や家計に支出能力を直接に追加するよう提案した.当時,日銀はこの点案を拒んだが,今やっていることは同じである.もっと早くやっていれば,デフレを抑えて,より高い成長率を実現しただろう.そして,現在,もっと少ない政府債務が残されているだろう.
日本は,事後的な債務の貨幣化に向かっている.その大規模な財政赤字によって,「失われた10年」はそれほど破滅的ではなかった.むしろ,ユーロ圏こそ心配するべきだ.財政赤字を厳しく制限し,2008年の金融危機後,ECBの貨幣化を禁止していた.ユーロ圏の失業率は11.2%に達している.しかも,日本に比べて,エスニシティ,宗教,など,不完全にしか統合されていないマイノリティが多い.
NYT MARCH 19, 2015
Japan’s Recovery Is
Complicated by a Decline in Household Savings
By JONATHAN SOBLE
1970年代半ば,日本の家計は所得の4分の1を貯蓄した.その後,貯蓄率は低下したが,それでも他国に比べて,一貫して,高い水準にあった.最近,ベビー・ブーマー世代が引退するようになって,その貯蓄を消費するようになった.
l 政治的成熟
The Guardian Friday
13 March 2015
Why our leaders
can't be heroes any more
Jonathan Powell
英雄的な政治指導者は民主主義国で現れなくなった.それは,むしろ良いことだろう.
l イスラエル選挙結果
The Guardian Friday
13 March 2015
Binyamin Netanyahu
has failed. There’s a better way to achieve security for Israel
Avi Shlaim
3月17日,イスラエルの有権者たちは2つの異なる未来を選択しなければならない.右派の与党リクードLikudは,左派の労働党と中道派の小政党が統一した新しいシオニスト同盟(Herzog,Livni)の挑戦を受けている.
Binyamin Netanyahuが率いるリクードは,ヨルダン川西岸の大部分を永久にイスラエルが支配すると約束し,パレスチナ人との和平交渉を排除している,イスラエル国民の3分の2は2国家案を支持するが,2000年にオスロ和平プロセスが崩壊した後,和平を話し合うパレスチナ人のパートナーがいないと考えている.その結果,国内問題ではHerzogを支持するが,安全保障ではNetanyahuが支持された.
Netanyahuの戦略と外交は,大イスラエルのシオニスト的イデオロギーである.それはパレスチナ国民の西岸における権利を否定し,「イスラエルの土地全体」にユダヤ人の権利を要求する.パレスチナ人はイスラエルのユダヤ市民に対する生存の脅威を与えており,西側のパレスチナ国家支援はこの脅威を強めるだけである.これに対抗する唯一の方法は,西岸と東エルサレムにおけるユダヤ人の入植とインフラ建設を加速することだ.
リクードの強硬派が繰り返す議論は,西岸から撤退した前例である.2005年8月,リクードが率いたAriel
Sharon政権が「一方的非関与」として,ガザ地区からイスラエル防衛軍と8000人のユダヤ人入植者を引き上げた.Netanyahuはリクード内でこれに反対し,Sharonを押い出して,新政党を結成させた.
Netanyahuによれば,ガザ地区がハマスに支配され,境界地帯でロケット弾が降り,イスラエル市民へのテロ攻撃が起きるようになったのは,すべて,その結果である.もしイスラエルが,この失敗を西岸で繰り返せば,同じ結果になるだろう.
しかし,Netanyahuは撤退の動機を完全に歪曲している.Sharonは,非関与戦略を和平への「ロード・マップ」として売り込んだが,交渉を拒んでいた.パレスチナ国家の出現を阻止すると決意していたのだ.彼が撤退した本当の目的は,一方的にGreater
Israelの境界線を引くことで,可能な限りパレスチナ住民が少ないパレスチナの領土を併合することだった.
2006年1月,自由かつ公平な選挙でハマスが勝利すると,Sharonの後継者たちは新政府を認めず,それを破壊する経済戦争を始めた.また,2007年3月,ハマスとファタハの統一政府を無視した.パレスチナの穏健派政府がイスラエルと長期の和平を交渉しようとしたとき,イスラエルには交渉相手がいなかったのだ.イスラエルは,ファタハが権力を掌握するように促したが,ハマスは先手を打ってガザでの暴力的な権力奪取を阻止し,それに対するイスラエルの封鎖が今も続いている.
イスラエルの比関与は,結果的に,ガザ地区を屋根のない監獄にしただけであった.ハマスとイスラム過激派による攻撃は,こうした封鎖と交渉拒否の不幸な,避けられない副産物である.それはイスラム的な狂信ではなく,イスラエルの促したパレスチナ内戦とその反作用である.2005年の撤退から本当に学ぶべきことは,民主的に選出されたパレスチナ人の代表と交渉して解決することによってのみ,暴力の連鎖は終わり,イスラエル市民の安全が得られる,ということだ.
この6年間でイスラエルは3度の軍事侵攻をガザ地区に行ったが,市民の死傷者,インフラの破壊がはなはだしかった.しかも,問題を解決せぬまま,ハマスは支持されたのだ.イスラエルの将軍たちがガザの「牧場を刈りに行く」と言うとき,政治的,人道的な問題を,野蛮な軍事力だけで抑え込むイスラエルの政策は道義的に破綻している.
The Guardian Monday
16 March 2015
With Israeli Arabs
united, this election can bring positive change to everybody
Ayman Odeh
NYT MARCH 16, 2015
Israel’s Gilded Age
Paul Krugman
イスラエルのネタニヤフ首相は,アメリカを戦争に巻き込みたいのか? もし本気でアメリカの外交政策を変えたいなら,大統領を侮辱し,その敵と同盟することは間違いだろう.そうではなく,本当の目的は,イスラエルの有権者に戦争の気分を煽り,選挙の焦点を国内の経済的不満からそらせたいのだ.そうすることで,火曜日の選挙で支持を高めることができる.
しかし,イスラエル国民は経済の何に不満なのか? イスラエル経済は普通の基準で見て良好である.金融危機のダメージを最小限に抑え,長期的には,先進諸国の中で高い成長を示し,ハイテク国家に変身した.
それは同時に,イスラエル経済に大きな不平等をもたらした.かつて,キブツに示されるような,平等主義の理想を実現した国家であったが,それは1990年代初めまでだった.その後,分配の格差が急速に増大した.今や,アメリカとともに,先進経済で最も不平等な社会である.それは社会や政治に深刻な影響を与えている.
所得の中央値の半分から下の人口が占める割合は,1992年から2010年に倍増して,10.2%から20.5%になった.子供の貧困率は4倍に増加し,7.8%から27.4%になった.低所得の過程は,周りの社会から疎外され,政治にも参加しにくくなり,貧しい家庭で育つ子供たちは永久に貧困を強いられる.
トップ1%の人口に富と権力が極端に集中している.イスラエル株式市場の総価値の半分になる企業群を,the Bank
of Israelによると,約20家族が支配している.彼らが支配する企業から他の企業を通じた支配の「ピラミッド」によって,その影響はさらに広がっている.
イスラエルの不平等は,熟練労働者への強い需要を生じるハイテク社会にともなう,自然な結果であると思うかもしれない.あるいは,アラブ人や異端的なユダヤ教徒に貧困が示されるだけだろう,と.しかし,そうではない.貧困は政策選択の結果である.
イスラエルは貧しい人々を引き上げる努力をしない.アメリカに比べても,さらに支援が少ない.そして,イスラエルのオリガーク達は,その地位を発明や企業家精神で得たのではなく,1980年代の政府の民営化によって,企業を支配するようになった家族の成功がもたらしたのだ.それはまた,政府の政策にも,主要銀行に対しても,不当に大きな影響を行使できる地位だった.
多くのイスラエル国民は,ネタニヤフをこうした問題の一部である,とみている.だからネタニヤフは,選挙の争点を不平等から戦争へと転換したのだ.ブッシュの時代にそれはおなじみのものだ.
FP MARCH 16, 2015
The Last Days of
King Bibi
BY GREGG CARLSTROM
Bloomberg MAR 16,
2015
Netanyahu Can Only
Blame Himself
By Daniel Gordis
NYT MARCH 17, 2015
An Israeli Election
Turns Ugly
NYT MARCH 17, 2015
An Uneasy Coalition
for Israel
Roger Cohen
もし選挙がネタニヤフに対する住民投票であるなら,彼は勝つだろう.3期9年に及ぶ政権で,彼の政治的なガッツは示されたが,その政治的成果は少なかった.
彼の勝利は,右派の高揚感にもかかわらず,イスラエル社会の深い分断を示し,もはや避けがたい不確実な時代が続くことを示すものだ.
The Guardian 18
March 2015
Netanyahu deployed
the politics of fear. It worked like magic
Aluf Benn
イスラエルの選挙はいつも,驚き,隠れた弱点,世論調査や評論家の当てにならないこと,を示す.
選挙終盤,ネタニヤフ,愛称ビビ,はその才能を駆使して逆転した.電撃的な公式訪問において,ネタニヤフは右派の有権者に極右勢力や宗教政党と手を切ると思わせ,リクードへの支持を求めた.その効果は絶大であった.
しかし,彼の妻がボトル再利用のデポジットから利益を得ていた疑惑が打撃となった.ネタニヤフはスキャンダルから目をそらせるため,ワシントンに飛んで議会演説をしたが,有権者は影響されなかった.
そこで,政治において常習的な,効果的手法として,「外国の資金援助」による謀略,オバマ政権,反対派のメディアが彼を失脚させるために動いており,その結果は,アラブ人に依存する左派政権の誕生だ,と非難した.私を選ぶか,左派政府を選ぶか,その選択だ,と主張した.
選挙前夜には,パレスチナ国家を否定し,いかなる領土的な譲歩もない,と宣言した.選挙当日,アラブ人の大群が投票所に向かっている,と警告し,右派の投票を呼び掛けた.
これこそ,ビビの真髄である.恐怖や不安を刺激し,イスラエルのアラブ市民に対するあからさまな人種差別を主張し,反対派や批判を裏切り者と呼び,権力を駆使する者に立ちあがれ,と呼びかける.それは,オバマ政権,旧左派エリート,主流派メディア,元将軍やインテリ,すべての彼に反対する者である.
選挙は,かつての連立相手となった中道左派を排除した,右翼政権に終わるだろう.パレスチナ人との和平交渉はなく,イスラエルをユダヤ国家にするため自国の民主主義を変造する.西岸の入植拡大は,欧米からの批判を強める.パレスチナ人は国連を通じた独立を求めるだろう.
FT March 18, 2015
Bibi’s triumph and
the challenge for Obama
FT March 18, 2015
Israel’s tribal
impasse behind Netanyahu’s dramatic victory
Daniel Levy
Project Syndicate
MAR 18, 2015
Bibi’s Big Surprise
ITAMAR RABINOVICH
NYT MARCH 18, 2015
Netanyahu Will Make
History
Thomas L. Friedman
ネタニヤフの勝利は,②国家案を否定したことによって,そのいくらかを負っている.しかし,1国家と言うのは,時間とともに,非ユダヤの民主国家になるか,あるいは,非民主的なユダヤ国家になる,という意味である.
今回の選挙で最大の敗北を味わったのは,アメリカのユダヤ人と,イスラエルを支持した非ユダヤ人である.
NYT MARCH 18, 2015
Netanyahu’s Win Is
Good for Palestine
By YOUSEF MUNAYYER
FP MARCH 18, 2015
From Tel Aviv to
Turtle Bay
BY JOHN HUDSON, COLUM LYNCH
Bloomberg MAR 18,
2015
Israel Chose Bibi
Over Barack
Eli Lake
The Guardian
Thursday 19 March 2015
Dear Mr Netanyahu:
Sorry we dared to dream. Yours, Israel’s Arab population
Sayed Kashua
FT March 19, 2015
Bibi’s triumph and
the challenge for Obama
FT March 19, 2015
Netanyahu’s
scorched earth victory adds to Israel’s loneliness
David Gardner in Beirut
Project Syndicate
MAR 19, 2015
Isolating Israel
DAOUD KUTTAB
l AIIBとアメリカ外交の転換
FT March 13, 2015
Transatlantic spat
exposes deeper cracks
Gideon Rachman
アメリカとイギリスの見解の相違が目立っている.イギリスはもはやアメリカとともに闘う国際政治の覇者であることを求めない.外交も,経済的な利益が優先だ.中国が提唱したAIIBの設立に参加を表明した.
アメリカの国連大使であるSamantha Powerは,ヨーロッパやイギリスの防衛予算削減に「強い関心」を表明した.FTの記事で,アメリカ政府高官は,イギリス外交が「中国にすり寄る姿勢」に苦情を示した.それはイギリスがAIIBの設立メンバーに参加表明したからだ.
イギリスがアメリカとの甘い「特別な関係」を重視した時代は終わった.アメリカは中国の台頭とアジア太平洋の支配を阻止する決意だ.しかし,イギリスは中国との通商・金融関係を強化したい.そして,米中のパワー争奪を,傍観者として見物している.
イギリス外交は,もはや帝国の時代を知らない政治家の世代によって,国際秩序を担う意識を優先しなくなった.ウクライナ危機でも,リビア危機でも,キャメロン首相の姿勢は明白だ.経済再建と財政支出の抑制,が政府の主要な関心であるから,防衛費は削減される.選挙を控えて,防衛費より年金を重視することは有権者の意識を反映している.
FT March 13, 2015
Britain and the US
at loggerheads over China
FT March 13, 2015
Chinese internet:
Commerce and control
Charles Clover
NYT MARCH 13, 2015
With Plan to Join
China-Led Bank, Britain Opens Door for Others
By JANE PERLEZ
FT March 15, 2015
US should work with
the Asian Infrastructure Investment Bank
Fred Bergsten
アメリカ政府は,中国が提唱するAIIBに対して,同盟諸国を含めて参加しないことを主張してきた.しかし,それは間違いだろう.
アジアが必要とするエネルギー,電力,輸送,通信,その他のインフラ投資の需要は莫大であり,それに応じる銀行に反対することは間違っている.アメリカはAIIBが,国際融資の基準を無視し,透明性や汚職追放の取り組みに既存の国際機関と対立するだけでなく,中国の政治的・軍事的な目的を達成する手段になると警戒している.
しかし,そのような問題を批判するにも,参加するより,外から主張するだけで良い,とは言えない.オバマ政権が,議会に国際的に合意されたIMF改革の批准を説得できないときに,AIIBを拒むのは,近視眼的で,偽善的なものに見える.アメリカが中国を敵視し,封じ込めようとしている,という中国の見方を強め,対立が深まるだろう.
アメリカ政府は立場を改めて,中国のイニシアティブを歓迎し,中国が建設的な指導力を担う姿勢を積極的に評価し,固める方が良い.
Global Times
2015-3-15
Chinese investment
brings new life to Afghanistan as country recovers
By Farman Nawaz
FT March 16, 2015
China’s money
magnet pulls in US allies
Gideon Rachman
先週,私は韓国に居て,中国の呼びかけに韓国政府が応じるのは時間の問題であると思った.オーストラリアもそうだ.もはや明確に参加を拒んでいるのは,アメリカと日本だけである.
中国はアジアにおけるアメリカとのパワーをめぐる闘争で,領土紛争におけるアメリカの関与を効果的に抑えられなかった.しかし,そのことから学んだようである.最近,近隣諸国に対するあからさまな要求は控え,親シルクロードの建設や,中央アジアへのインフラ投資を含む,経済関係の強化を主張している.AIIBもその1つだ.
日本,オーストラリア,フィリピン,韓国は,アメリカに安全保障を大きく依存しており,中国との貿易関係が重要になるにつれて,ジレンマを抱えている.例えば,韓国の安全保障は,北朝鮮や,将来は中国との対抗で,アメリカの支援を必要とする.しかし,今や韓国の輸出の4分の1が中国向けであり,アメリカ向け輸出は12%でしかない.
AIIBの経過は,米日間のTTP交渉の合意も刺激する.両国は中国抜きのTPPを,反中国クラブではない,と言うが,他の諸国の中国と結ぶ自由化交渉に影響する.そして,アメリカの軍事力と中国との経済関係との間で,どちらを優先するかは,その国が中国にどの程度の脅威を感じているか,によって決まるだろう.
だから日本は最後までアメリカに従っているし,また,中国が威嚇よりも,政治的・外向的な関与を強めるなら,アメリカの同盟国でも中国の側につくだろう.
FT March 17, 2015
China: With friends
like these
James Kynge and Gabriel Wildau
中国が負う政治的なリスクも大きい.中国の戦略的な利益が,必ずしも,中国の貿易相手国にとって,経済的利益と同様に,支持されるとは限らない.
FT March 17, 2015
Europeans defy US
to join China-led development bank
George Parker in London, Anne-Sylvaine Chassany in Paris and Geoff
Dyer in WashingtonAuthor alerts
FT March 17, 2015
Two giants with an
opportunity for partnership
Kishore Mahbubani
今日,世界で最も重要な2国はアメリカと中国である.しかし,明日になれば,それは中国とインドになる.5月に北京で行われる2人の指導者,Xi
Jinping and Narendra Modiの会談は,今年の最も重要な事件である.
わずか35年前,開発経済学者の誰も,世界でもっとも人口の多い2国が最も早く成長する国になるとは予測しなかった.中国とインドは貧困に苦しみ続けるという悲観論が支配的であったのだ.
現在,2国は勝利の犠牲者となって,特に,もし敵対を深めるなら,成長の減速に苦しむかもしれない.特に,国境紛争は両国間で最大の問題である.
しかし,2人の指導者が国家の将来を見通す優れた政治家であるなら,1980年に鄧小平が提案したように,紛争地域の東西を,ほぼ支配している通りに,国境として認め合うことができるだろう.当時,インドはこれを拒んだが,インドのモディに政治的な勇気があれば,今回,同じ提案をインドから示すことだろう.そしてモディは,それが鄧小平の案を彼が復活させたものである,と言うのだ.今なら双方は合意できる.
製造業主導の成長を数十年間続けた中国では,資本が豊富で,労働者の不足が生じている.他方,インドには資本不足と労働者の余剰がある.2国のシナジー効果は大きいだろう.中国からインドへの直接投資は双方の利益になる.また,中国はインフラ建設の超大国である.インドにはそれが不足している.
確かに,双方には信頼が不足している.否定的な報道が満ちている.信頼醸成のために,原子力の平和利用で協力し,原子力燃料供給にインドを迎え入れ,3国間の新しい原子炉設計を歓迎する.インドにも,中国が成功している多くの自由貿易圏を設け,特に,パキスタンとの国境地帯,パンジャブ地域に設置するのがよい.パキスタンは,インドと中国との間にある刺だから,インドとの対立を解消することが重要だ.
中国は,インドがアメリカと接近することを懸念している.他方,インドはアフガニスタンとパキスタンの安定化を求めている.中国はこうした点で効果的な利害の収斂を促せるだろう.
FT March 17, 2015
China will not
thank perfidious Albion for joining its new bank
Jamil Anderlini in Beijing
Project Syndicate
MAR 17, 2015
Making Space for
China
JIM O'NEILL
FP MARCH 17, 2015
Britain Launches
European Rush to Join AIIB. Now What?
BY DANIEL RUNDE
FT March 18, 2015
‘Accommodating’
Beijing may be no bad thing
David Pilling
ダライラマ,香港民主化,今度はAIIB.イギリスは中国に繰り返し譲歩し,アメリカの不安を招いている.アメリカ政府高官は,中国に合わせることが最善の道ではない,と言う.
では,台頭する強国に対して,何が最善の道であるか?
アメリカは,既存の国際秩序に対して,中国が死のルールに従い,順応するべきだ,と主張する.しかし,世界銀行への中国の投票権は3.8%でしかない.また,アジアの海上航行をめぐるルールは,アメリカがその安全を保障しているが,中国から見れば,それは西側の作ったルールに中国が跪くことを意味している.
絶えざる「順応accommodation」である,とアメリカ政府がイギリスの対中国政策を批判するが,では,絶えざる「封じ込め」が正しい,と彼らが考えているのではない.
オーストラリアの研究者で,元安全保障官僚であるHugh Whiteは,米中が対等の資格で参加し,さらに,インドや日本なども参加する,新しい枠組みについて政治的な合意を結ぶべきだ,と主張する.反対する者には,それが余りにも19世紀的で,影響圏のイメージに近い.そこでの「解決策」を他の劣位の諸国は受け入れざるをえないのか? 中国が,さらに台湾の再統合,仇敵である日本に対する威嚇を行うとき,どうするのか?
「順応」ではなく「宥和」と呼んで批判するのは,ヒトラーのナチス政権を「宥和」しようとしたイギリスとフランスは,結局,いっそうの攻撃的なドイツを敵に戦争することになった.もし「宥和」であると批判するなら,それは現代の中国をヒトラーのドイツと見なしていることになる.その場合,「宥和」は間違いだ.
しかし,もしそうでないなら,批判は間違った判断であるだけでなく,中国を戦争の道に向かわせることになる.中国が既存のルールに従うだけでなく,国際的な規範に影響する国になることも受け入れるなら,まさに他国はそれに「順応」する必要がある.
FT March 19, 2015
Accommodating China
and disappointing America
Robert Shrimsley
l ユーロ圏の課題
FT March 13, 2015
Quantitative easing
and the decline of the euro
FP MARCH 13, 2015
QE’ing the Can Down
the Euro Road
BY PAOLA SUBACCHI
FT March 16, 2015
Japan’s big lesson
for the eurozone
Peter Tasker
海外旅行者の大群が日本の円安バーゲンに押し寄せている.金融緩和の日本の経験は,ユーロ圏にとって有益な教訓となるだろうか?
しかし,ヨーロッパが東を向いて,中国人の観光客を待つのはまだ早い.むしろ,その教訓は,忍耐が必要だ,というものだ.安倍が政権を取って,2012年末から,アベノミクスは始まったが,その反応は弱かった.デフレは解消せず,景気も回復しない,という悲観論ばかりが目立っていた.日銀のQQEが株高と円安で企業利益を増やし,雰囲気を変えたのは最近のことである.
日本とヨーロッパには重要な違いもある.1.日本は移民を積極的に受け入れていない.2.日本は,少なくとも資産に関して,より平等な社会である.3.ユーロ圏では,財政政策や政治における分割が特殊な困難を生じている.だから,安倍のような「3本の矢」を示せない.
そして,日本と違って,多くの失業者,政治的な過激主義が広まっている.金融緩和を待つ時間を耐えるには,一層の政治的な成熟が求められる.ただし,その最初の利益を受ける観光業がGDPの大きな部分であるギリシャは,大きな利益を受けるだろう.中国語の勉強に励むときだ.
FT March 17, 2015
Draghi QE is
stoking bond bubble risk
John Plender
Project Syndicate
MAR 17, 2015
How Far Will the
Euro Fall?
ANATOLE KALETSKY
ユーロはどこまで下がるのか? アメリカの金利とユーロ圏の金利は乖離する傾向を示したから,だれもがドル高に賭けて儲かっている.
しかし,まだ今でも金利差が拡大し,さらにユーロ安が続くのか? そうではないかもしれない.1.ドル高がアメリカの景気を悪化させる.2.アジアや中東の諸国がドルからの分散を進めてきた,金融・地政学的な理由はなくならない.3.アメリカとユーロ圏の貿易不均衡はすでに巨額である.4.ユーロ安による競争力,ECBの金融刺激策,フランス,イタリア,スペインで高まる財政刺激策への動き,これらが重なってヨーロッパの景気回復が期待できる.
わずか1%か2%の金利差で資金を移す投資家たちは,たった1日で簡単にすべてを失ってしまうことも起きるだろう.
FT March 18, 2015
Anti-capitalist
protesters target ECB in Frankfurt
Claire Jones, Frankfurt
l ウクライナと西側
Project Syndicate
MAR 13, 2015
From Munich to Kyiv
PETR KOLÁŘ and JURAJ MESÍK
1938年,イギリスのチェンバレン首相がミュンヘンから戻って,われわれの時代の平和を守った,と主張したとき,チャーチルが英仏の決断を批判したのは有名だ.「あなたたちは戦争と不名誉とを選択した.」 しかし,チャーチルは言った.「あなたたちは不名誉を選択した.そして,それは戦争になるだろう.」
悲しいことに,キャメロン首相,オランド大統領,メルケル首相,オバマ大統領は,同じことをしている.チェコとスロヴァキアの,100人を超える知識人たちが,ヨーロッパの指導者たちに向けて公開書簡を発表した.宥和の道を取らないように,と彼らは西側に求めたのだ.
プーチンの目的は,西側の民主主義拡大を阻止することである.ここに戦争は始まっている.プーチンにとって,交渉は弱さでしかない.ロシアを阻止する軍事支援,経済制裁,そしてウクライナへの効果的で包括的な援助が必要だ.難民に毛布を寄付しても,戦争を,そして西側の不名誉も,止められない.
NYT MARCH 19, 2015
The Gains From
Ukraine
By RYAN EVANS
Bloomberg MAR 19,
2015
Don't Punish Russia
for Compromising in Ukraine
Leonid Bershidsky
(後半へ続く)