前半から続く)


l  イギリスの政治

The Guardian, Sunday 8 March 2015

Selling off Britain is not a sign of strength, but profound weakness

Will Hutton

イギリスは多くの私的・公的な資産を売却し,外国の保有にしてきた.グローバリゼーションの趨勢は変えられないが,それはイギリス国民を豊かにするように選択されたか?

FT March 9, 2015

The only future for the UK is a federal one

Janan Ganesh

NYT MARCH 9, 2015

Britain’s Time of Turbulence

Matthew d’Ancona

保守党にも,労働党にも,有権者は明確な支持を示さない.SNPUKIPがますます影響を及ぼす.イギリス議会制度が解体する可能性もある.

Project Syndicate MAR 11, 2015

Britain in the Wilderness

GORDON BROWN

イギリスUKEUを離脱するべきではない.

イギリスUKの抜けたEUは,独仏枢軸が強化され,ロシアの影響が強まる.アメリカは弱くなったイギリスUKを無視し,スコットランドは再度の独立を要求する,内向きになったイギリスBritainはヨーロッパを嫌い,ヨーロッパからの分離を繁栄の時代と同一視する.

しかし,UKはヨーロッパの成長戦略を担う重要な位置を占める.貿易,投資,移民,何よりシティは,EU離脱によって莫大な損失を強いられる.


l  中国の経済政策

FT March 8, 2015

For all the sound and fury, China depends on foreign forces

Tom Mitchell in Beijing

Bloomberg MAR 8, 2015

Let China Make a Soft Landing

By The Editors

中国の金利引き下げは,人為的な人民元安と破壊的な輸出拡大による成長維持を意図している,と警戒されている.しかし,中国の急激な減速「ハード・ランディング」を避けるために,世界は人民元安を受け入れるべきだ.

FT March 9, 2015

What the Fed says about China behind closed doors

Shawn Donnan in Washington

NYT MARCH 10, 2015

Beijing’s Fear of Technology

By JAMES ZIMMERMAN

 (China Daily) 2015-03-10

A silver lining has come in fight against smog

By Zhang Xiaode

(China Daily) 2015-03-10

Clearing air pollution won't be done in a day

NYT MARCH 11, 2015

For Chinese Economy, Strengths Are Now Weaknesses

By NEIL GOUGH

FT March 12, 2015

The contradiction at the heart of China’s new growth target

George Magnus

北京の全国人民代表大会は,成長率をおよそ7%に下げることを決めた.しかし,結果を決めるのは経済発展戦略の矛盾であって,官僚制や政治家の宣言ではない.

中国の経済拡大はますます債務の増大に依存するようになっている.それゆえ7%の成長には債務依存の増大がともなう.GDPに対する債務の比率は,2008年以降,ほぼ倍増し,今後数年で,さらに倍増するだろう.なぜなら債務水準は高く,成長率は低くなるからだ.増大する債務,過剰な不動産や生産設備,増大するデフレ圧力が,金融や経済の安定性を脅かす.


l  イスラム国家

FT March 8, 2015

Isis are modern vandals smashing centuries of history

Gerard Russell

The Guardian, Tuesday 10 March 2015

Why the revolutionary Kurdish fight against Isis deserves our support

Owen Jones

Project Syndicate MAR 10, 2015

Countering Islamic Extremism

PETER SINGER


l  日本経済の構造改革

NYT MARCH 8, 2015

In a Test of Wills, Japanese Fighter Pilots Confront Chinese

By MARTIN FACKLER

FT March 9, 2015

The unseen casualties of Japan’s lost decades suffer in silence

Sahoko Kaji

外国から日本への旅行者は,特に,大都市しか観ないと,何でもカッコよかった,という印象を持つ.地方の住民だけがショーウィンドーの裏側を知っている,しかし日本の「失われた10年」では,地方でもある程度は輝き続けた.

「日本」はしばしば幽霊のように恐れられる.デフレ,長期停滞,変化への抵抗.しかし,多くの日本人にとって,特に一定の集団には,「日本化(日本病)」はそれほど致命的なものではなかったのだ.

あなたが,雇用の60%を占める正規雇用,45%を占める50歳以上,65%を占める大都市居住者,であれば,そして,特に男性であれば,1990年代に始まった失われた10年は影響しなかった.あなたには,退職するまでずっと,良い,安定した所得があり,退職後も男性平均賃金の3分の2を年金で得られた.物価は下落していたから,ごく最近まで,賃金がほとんど上がらなくても良かった.終身雇用制であれば,年齢とともに賃金が上がった.

それゆえ,金融資産の80%50歳以上の人々に保有されている.あなたが彼らの子供であれば,それは良いことだろう.

しかし,日本化には副次的な効果もあった.金利はほとんどゼロになって,百万円の預金でも,その金利で変える者はほとんどなかった.だから人々は100円ショップに集まった.失われた10年は,日本人が愛した一体感や調和という考えを損なった.不確かな職と不確かな将来しかない人々は,目標を持てなくなった.自殺率は,1990年代,経済停滞が明白になった時代に急速に上昇し,今も世界平均よりも60%も高い

失われた10年に苦しむ人々の多くが静かに耐えている.雇用主との衝突,絶望した若者の,突発的な事件,原発反対運動,などはあるが,街頭デモは起きていない.犯罪率は低下している.しかし,この平穏は表面的なもので,その下に危険な混乱の傾向が隠されている.20代の若者の投票率は,60代のわずか半分だ.民主主義は,特権を持たない者の怒りを取り上げない.若者に接近する政治家は少なく,不満を持つ者は無視されている.

政府は,生前贈与を奨励したが,相続する資産など持たない者はどうするのか? パートタイム労働者が,特に地方では,低所得,低教育,低賃金職,という悪循環から抜け出せない.

人口ピラミッドがマッシュルームのように医療保険の費用を増し続ける.政府支出の約30%が社会保障費である.2025年までに,働く人1.8人で引退した人1人を扶養する.GDPに対する政府債務の比率は240%である.

アベノミクスの3本の矢は,即席の効果だけで,財政・環境・人口から観た持続可能な成長は実現できない.

Bloomberg MAR 10, 2015

It's Time for Japan to Punish Tepco

William Pesek

東京電力Tepcoが漸く告白してから5日たつまで,その東京本社に捜査の手は入ったのか? 監督機関の責任者は解任されたか? 安倍首相は,政治圧力を駆使して,チェルノブイリ以来,最悪の原発事故を起こした責任を果たすように強いたのか? 他の民主主義国であれば当然のことだが,そのどれ一つも日本では行われなかった.

蔓延するクローニズムがそれを可能にしているのだ.

FT March 11, 2015

Far from dying, Abenomics may yet be coming up roses

David Pilling

アベノミクスの成果は容易に見られない.2014年を通じて,日本は0.03%生産が縮小した.デフレ脱出も難しい.日銀はQQEを拡大した.しかし,日本経済の見通しはプラスである.

ディスインフレ過程が続いているのは石油価格の下落が大きい要因だ.しかも,それは需要回復による「インフレ」を導くものだろう.アベノミクスが始まったとき,石油価格上昇と円安でインフレが起きても,エコノミストの称賛の割に,消費者の支出する力は失われていた.今年は,まったく逆のことが起きる.企業の利潤は増え,輸出も好調で,衰退期の造船業まで復活した.安倍政権からの圧力もあって,企業は春闘で賃金を引き上げる.物価は一定もしくは減少し,賃金は上昇するから,ミニ消費ブームが起きるだろう.

労働市場はここ数年で最もタイトである.生産が伸びており,人口減少の要因もある.アベノミクスが始まってから女性の労働参加が増えたが,その多くは低賃金労働であった.それが変化しつつある.企業はパートタイム労働者を,もっと待遇の良い正規雇用に転換し始めている.Jesper Kollは,日本が豊かな諸国で唯一の中産階級を増大させる国になる,という.

もちろん,財政再建や高齢化に対する中・長期の問題は解決されていない.しかし,アベノミクスは,勝利を宣言するには早すぎるが,その死亡や埋葬を議論するのはまだ早い.

 (China Daily) 2015-03-12

Seventy years of selective postwar history

By Jean-Pierre Lehmann


l  アメリカの覇権

Project Syndicate MAR 9, 2015

American Hegemony or American Primacy?

JOSEPH S. NYE

アメリカが,イギリスと同じように,衰退する覇権国であるという意見が広まっている.しかし,この歴史的類推は間違いだ.

イギリスが,現在のアメリカほど,支配的であったことはない.確かにイギリスは第2.第3の国の海軍を合わせたのに等しい海軍を保有し,帝国を築いたが,相対的に見たパワーが現在のアメリカよりもはるかに小さかった.第1次世界大戦の開始時に,イギリスは主要諸国中,兵士の数で第4位,GDPで第4位,軍事支出で第3位であった.

またイギリスの帝国は現地の軍隊に依存していた.第1次世界大戦時に,イギリス軍八百六十万人の内,3分の1は海外植民地から集められた.それゆえ,ナショナリストの影響が強まるにつれて,ロンドン政府の政策は制約された.そして第2次世界大戦までに,帝国はイギリスの資産よりも負債になっていた.

アメリカについて「帝国」を語るのは大雑把な主張であり,アメリカは植民地を持たず,それゆえ,かつてのイギリスよりも政策を変更する自由度が大きい.

歴史的類推で混乱するのは,覇権の明確な定義が無いことだ.覇権は帝国主義ではない.アメリカは植民地を持たない.アメリカは国際システムのルールを定める力を持つ.しかし,それは相対的なものであり,他の大国との関係は不明確である.パワーの主要な資源を支配する,という定義も,19世紀のイギリスには適用できない.同様に,1945年以後のアメリカも,ソ連との関係で制約されていた.

アメリカはリベラルな性格の階層的秩序を指導した,という者もいる.多角的な制度やルールを提供するという意味で,公共財の供給を通じて,すべての参加国が利益を受けたのであり,アメリカのパワーが衰退しても維持できる,と考える.

しかし,それはフィクションであって,事実ではない.アメリカが同じ考えの諸国とグローバルな秩序を築いた,というのではなく,ヨーロッパに限られるし,参加しない国は常に善意で接したわけではない.アメリカは「ハーフ・ヘゲモニー」であった.1945年に,第2次世界大戦の結果として,アメリカは世界のGDPの約半分を占めた.1970年には,それが戦争前の水準である4分の1に戻った.しかし,政治.軍事的な視点では,世界秩序は2極であって,ソ連は他国でも共産主義政権を樹立し,アメリカは東欧で民主化革命を支援できなかった.

こうした歴史的背景を基礎に,「首位である」ことを,3つのパワーの源泉,軍事・経済・ソフトについて,均等性を超えた関係にあるものとして,より正確に定義できる.そして,アメリカがその関係を失うのか,と問うなら,少なくとも今世紀の前半において,アメリカはパワーの首位性を維持するし,グローバルな勢力均衡で中心の役割を担う.

しかし,グローバルなパワーと秩序の性格には重要な変化が生じるだろうし,それが世界の安全保障や繁栄に何をもたらすかは,まだ分からない.

Project Syndicate MAR 9, 2015

The Indispensable American Partner

ANA PALACIO

アメリカの「孤立主義」だけでなく,その「例外主義」も破壊的な影響を及ぼす.ヨーロッパはそれを抑える点で,欠かせないパートナーである.

FT March 12, 2015

Why the business of risk is booming

Philip Stephens

FT March 12, 2015

US accuses UK over China stance

Geoff Dyer in Washington and George Parker in London


l  人種と政治

NYT MARCH 8, 2015

Race, History, a President, a Bridge

Charles M. Blow

NYT MARCH 9, 2015

A Complicated Future for a Banlieue on the Outskirts of Paris

By MIRA KAMDAR

公共圏やディスコースの哲学を築いたハーバーマスJürgen Habermasでさえ,イスラエルに関してコメントすることを拒んだ.


l  怨嗟の国際関係論

FT March 9, 2015

Greece, Russia and the politics of humiliation

Gideon Rachman

この1年間で,私が最も多くの記事を書いたのは,ロシア,ユーロ圏,中東,東アジア,であった.これらに共通するのは,国家を動かす「屈辱」という国民感情だ.

首相に選出される前,Alexis Tsiprasは述べた.「月曜日に,国民的な屈辱は終わるだろう.われわれは外国から命令されることを終わらせるのだ.」 Tsiprasが首相として最初に行ったことの一つが,第2次世界大戦中,ナチス占領に抵抗して処刑された兵士たちの記念碑を訪問したことだった.

ロシアが西側に敵対するのも,傷ついた国民的なプライドの問題である.プーチンとその同世代の指導者たちは,ロシアが世界的な大国であった,ソ連の時代から,ウクライナに限らず,西側によって味わった屈辱を意識している.ロシア人は,彼らがもはや傲慢なアメリカの嫌がらせに対して我慢しない,と示したいのだ.

中国が対外的な関係に示すのも,「恥辱の100年」という言葉に示される屈辱感だ.1840年代の西側による帝国主義から,1945年に日本を敗退させるまで,中国の教科書や博物館は,若者たちに弱い中国が外国勢力に味わった屈辱を伝え,習近平は「新しい大国間関係」をアメリカと対等なものとして唱える.

イスラム原理主義者の広める感覚も,西側がイスラム圏を侮辱し,弾圧した,というものだ.それはパレスチナやアメリカのイラク占領を貫く感覚だ.そして,2011年,アラブの春では,彼らの惨めさや屈辱が自分たちの政府に対する怒りとして表現された.イスラム圏全体に広まった.しかしその後,再び,外部の者や西側を非難することが支配的になっている.

人間の行動を説明するプライドや屈辱に関して,ルソーは指摘した.国際関係論の「リアリスト」は国家のパワー追求を強調する.それは,他方で,パワーを持たない諸国の屈辱と反発を重視する.


l  インド

FT March 10, 2015

India has a real chance to excel on growth

Martin Wolf

NYT

What Indians Won’t See

By SOHAILA ABDULALIMARCH 12, 2015


l  アメリカとイラン

FT March 10, 2015

US Republicans risk writing off leverage on Iran talks

Geoff Dyer in Washington

NYT MARCH 11, 2015

Ford and Helsinki, Obama and Iran

By TYLER CULLIS


l  フロンティアの資本規制

Project Syndicate MAR 10, 2015

Global Capital Heads for the Frontier

DANI RODRIK

フロンティア市場経済“frontier market economies"は,低所得で,小規模の未発達な金融市場しかない国である.(Bangladesh and Vietnam in Asia, Honduras and Bolivia in Latin America, and Kenya and Ghana in Africa

フロンティア経済に流入する資本は50%も増えたが,各国政府はこれを歓迎するべきか,憂慮すべきか,考えている.今や,資本移動の自由化を称賛することはなくなった.概ね,資本流入は投資よりも消費を増やし,経済の浮動性を増して,苦痛の多い金融危機を頻発させるからだ.外部からの財政規律をもたらすよりも,債務の累積と放漫財政,銀行のバランスシートの悪化をもたらした.

IMFは資本自由化を課題として公認する姿勢を見せたが,その後の金融危機を経験して立場を変えた.今では資本規制も政府の政策ツールとして公認している.

それにもかかわらず,IMFは資本規制を最後の手段として,また,資本自由化に必要な前提条件を満たすことで,その欠陥を抑えることが正しい政策だ,と考えている.しかし,その見解は,1.あまりにも多くの前提条件を並べて,要するに発達した金融市場を導入することを意味しており,また,欧米の発達した金融市場でさえ,深刻な危機を免れなかったことを軽視している.

2.資本自由化論は,新興諸侯が資本不足で投資機会を十分に利用できていない,と前提している.しかし,新興諸国の問題は貯蓄の不足よりも,さまざまな制度や税制,外部性によって,投資に収益が期待できないから,投資の需要が無いことなのだ.だから資本流入が増えても,それは消費を増やすか,通貨価値の増価によって,ますます輸出部門の投資機会を抑え,投資需要を減らしてしまう.

だから,資本流入規制をすることは,新興諸国にとって「次善の策」として正当なのである.その副作用も含めて,新興諸国がこれまで試みた,さまざまな資本規制の経験を比較研究して,資本規制の正しい条件をプラグマティックに研究することが重要である.


l  ワールド・カップを阻止する

FP MARCH 10, 2015

Can Anyone Stop the World Cup in Qatar?

BY DANIEL ALTMAN

無権利状態の出稼ぎ労働者がスタジアム建設で多数死亡したカタールのワールド・カップ開催を,FIFAは強行しようとしている.これを阻止するために,いくつかの代替策を示そう.

スポンサー企業が反対すれば,開催を阻止できるだろう.そして,ブランド商品を売りたがっている企業に,消費者がボイコットするなら,彼らはスポンサーを止める.この方法は実現困難だ.消費者は余りにも多く,分散している.

他方,サッカー選手たちは限定されており,より高度に組織されている.彼らがカタール開催に反対するなら,ワールド・カップは実現しない.しかし,彼らもボイコットまでは主張しない.選手たちはサッカーに試合に政治的な形で組み込まれているからだ.FIFAのトーナメントに変わる同等の権威ある大会を開催すれば,選手たちはボイコットできる.


l  シリアの燃料爆弾

NYT MARCH 11, 2015

The Carnage of Barrel Bombs in Syria

By ABDEL

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The Economist February 28th 2015

Planet of the phones

North Korea’s economy: Spring release

Reforming Japan: Just do it

The economic recovery: Not quite what it seems

Brazil’s liberals: Niche no longer

German foreign policy: A lurch onto the world stage

Greece and the euro: Doing the splits

Italy’s labour market: Marching to a different tune

Charlemagne: Soaring hopes, dark fears

Buttonwood: Polls apart

Sporting mega-events: Just say no

(コメント) 2007年,スティーブ・ジョブズがスマートフォンを導入してから,AppleiPhone21世紀の性格を決める技術になった.その普及速度は史上空前の者であり,すでに人類の成人の半数が保有している.2020年までに80%が保有するだろう.・・・

同時に,21世紀は,北朝鮮の市場改革や,ブラジルのサッチャー革命,ロシアの隠れた戦争によっても性格を変えます.

印象的であるのは,ドイツ,ギリシャ,イタリア,ウクライナの改革をめぐるヨーロッパの模索(成功すれば躍進)であり,民主的な選挙と金融市場をめぐる政治権力の性格・制約が考察されている記事です.

日本の政府には,さっさとやれ,世界的なスポーツイベントには,止めてしまえ,と,明快です.

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IPEの想像力 3/16/15

木星の衛星には必ず生物がいる(・・・いないとしたら,その方が不思議だ),と専門家が断言しました.次の目標は,この生物を地球に連れ帰ることだろう,・・・!?

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政権交代が可能な選挙制度と,論争点を絞った少数政党が参加した連立政権の柔軟な組み換え,どちらが優れているのか?

年功序列と長期的な安定雇用を重視した旧来の雇用システムの維持と,成果主義を重視した,解雇と再就職,派遣や一時雇用が正規雇用との違いを生まない,柔軟な労働市場の改革と,どちらが重要か?

東京一極集中と,大阪都構想や道州制のような地方分権・連邦制と,どちらが望ましいか?

日米安保体制と,アジア経済統合と,どちらを重視するべきか?

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馬の前に馬車を置く,という言葉を,今週は2度見かけました.それは,ユーロ圏の緊縮と構造調整に関する問題,そして,フロンティア諸国への資本自由化問題,です.財政同盟や政治同盟を欠く通貨同盟も,新興(フロンティア)経済への資本流入も,その前提が間違っているから,上手く行かない,というわけです.

政策や制度の是非を議論するだけでなく,その効果が波及する経路や実現過程を問題にし,成功の条件を明確にすることが政治学と経済学の共通した目標です.大きな政治経済改革であれば,何から始めるべきか,その導入の時期や早さ,政策の順序が議論されます.

通貨統合や資本取引の自由化は,それによって市場が健全に,安定的に,機能するのであれば,資源配分や競争,所得分配に良い効果を生み出すと思います.問題は,現実の主体や政治集団がそのような「自由化」に対して,政治経済過程において,評価・反応することです.

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ギリシャ,トルコがNATOから離脱することをアメリカは懸念します.また,ネタニヤフのアメリカ議会演説は,イスラエルとの関係によってアメリカが外交を制約されることを転換し,ドイツもユダヤ人への配慮とは切り離して,独自に中東外交を議論する機会になりそうです.

EUの統合を維持する,というドイツの目標が,次第に,メルケルを活発な交渉姿勢に導く考え方になりました.ドイツは,第2次世界大戦のナチスに関する反省,絶対的な平和主義,巨大なスイスというイメージから,「覇権」ではない,さまざまな宥和を仲介する「ミドル・パワー」に変身しつつあります.

ドイツの外交と戦略の形成,国民合意に向けて,大統領と外相が試みた国民への説得,公開討論,インターネットを通じた意見交換とその公開,などから,日本政府は積極的に学ぶべきです.私は,民主党政権が行った「税と社会保障をめぐる一体改革」が,各地の公聴会を組織したことを思い出します.それは,何度も繰り返すべき,優れた試みでした.

イタリアの労働市場改革は,安倍政権が進めるものと良く似ています.そして,ウクライナが抱える債務と戦争のコスト,将来への不安は,ある意味で,日本の震災・津波の被災地を復興する計画,福島原発の汚染水や廃炉をめぐる,戦争よりもっと深刻な,不安を想像させます.

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民主主義的な政府は,完全な政策も,絶対的な権力も持たず,しばしば外交や安全保障で混乱した対応に陥り,国境を越えた資本移動や企業の行動,貿易や移民,犯罪組織,脆弱な情報ネットワーク,などに苦しみます.

法人税の引き下げ,外国人労働者の受け入れ,労働市場改革,消費税の引き上げ,農協改革,医療保険制度改革,年金・失業手当・生活保護,原発処理・エネルギー政策,安全保障,憲法改正,・・・

重要な課題を,特集利益集団を超えて国民に問いかけ,解決に向けた議論と行動を促す,粘り強いプラグマティックな姿勢が,優れた政治の条件です.日本でも,自民党と民主党が交代して改革を推進する役割を引き受け,互いの影響力や集団への信頼関係,厳しい批判を制度化するなら,結果的に残された政治の軌跡がそれを示すのではないか.

木星の衛星に生物がいるとしたら,それ(彼・彼女?)が地球で観るのは,改革によってよみがえったウクライナと,日本であってほしいです.

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