前半から続く)


l  ギリシャの債務組換え交渉

Project Syndicate FEB 13, 2015

Reforming Greek Reform

DANI RODRIK

Syrizaは,緊縮策を否定する,ラディカルな左派政党である.伝統的なヨーロッパの官僚が考えることを無視している.

ギリシャの交渉手段は,たった一つ,ユーロ圏離脱Grexitの脅しである.ギリシャと債権者であるトロイカ(欧州委員会,ECBIMF)とが債務をめぐる経済学について合意する,と期待することは難しい.ドイツは緊縮策の緩和に全く応じないからだ.彼らは緩和が経済的に逆効果であり,ギリシャの破たん状態を再生するだけだと考えている.

Grexitの脅しが効果を持つには,ドイツがそれを真剣に受け取り,しかも,どの結果としてギリシャの経済状態が改善する,という見通しが必要だ.

経済学はこれにどう答えるか.第1の条件は,ギリシャのユーロ圏離脱はその影響を切り離せる,という者がいる.ギリシャの規模は小さく,その経済はスペインやポルトガル,イタリアと大きく異なっているからだ.しかし,結果は予測不可能だろう.ドミノが生じたときのコストはあまりにも大きい.メルケル首相は,Grexitを真剣にとらえねばならない.

2の条件は,実現が非常に難しい.破滅シナリオは多くある.まず,資本規制と金融市場の隔離は避けがたい.その結果は,政策や物価が予測不可能であり,実物経済にも大きな影響を及ぼす.

しかし,同様に通貨圏を離脱した結果,プラスの経済的効果を生じたケースが存在している.1931年,イギリスは金本位制を離脱し,ポンドを安くし,金融政策を緩和できた.それは離脱を遅らせた国よりも良い結果を示した.また2001年,アルゼンチンはUSドルに対する為替レートの固定制度を放棄した.それは,2つの四半期を経て,急速な成長を実現できた.

どちらのケースも,金融主権を回復し,より競争的な貨幣を得たことで,輸出需要が増大し,経済の回復を支持したのだ.Grexitでも同じことが起きるだろう.

ギリシャは緊縮策を続けて,実質賃金が15%以上も低下し,内的切下げで同じことを生じたはずだ.しかし,結果は失望するものだ.輸出は伸びず,緊縮策のせいで輸入が減って経常収支を改善した.つまり,ドラクマを回復してもギリシャ経済の成長にはつながらない,ということだ.エネルギー価格,融資不足,停滞部門への特化,政策不安,など,他の要因が輸出を妨げている.

ギリシャは,こうした問題を解決する改革案を出すことで,トロイカの構造改革に従うよりも経済状態を改善できる.そして,Grexitが実際に起きることを防ぐのだ.

VOX 14 February 2015

Seize the moment: How to avert an impending train wreck

Michael Burda, Holger Schmieding

FT February 15, 2015

Athens must stand firm against the eurozone’s failed policies

Wolfgang Munchau

FT February 16, 2015

Impose capital controls in Greece or repeat the mistake of Cyprus

Hans-Werner Sinn

危機のたびに資本逃避が起きる.現在,ギリシャは,3年前のキプロスと同じように,預金者たちがユーロを大量に引き出し,国外に運んでいる.ほとんどの預金者は電子的な取引で行う.201412月だけで,76億ユーロ,ギリシャGDPの約4%である.

2012年のキプロスでは,ECBが銀行の支払いをEmergency Liquidity Assistanceで保証した.それは実質的にユーロ圏の他の中央銀行が融資することだ.資本逃避を融資することに濫用された結果,ECBがこれを閉じたとき,95億ユーロのELA融資を受けたLaiki Bankが支払い不能になった.キプロスはのちに,ユーロ圏の他の諸国から100億ユーロの救済融資を受けた.

ECBは,その保証がなければ倒産するしかないギリシャの銀行を,ユーロ圏諸国の納税者の負担にするべきではない.キプロスの失敗を繰り返さないために,資本規制を導入するべきだ.

SPIEGEL ONLINE 02/16/2015

Greek Finance Minister Varoufakis

'Austerity Has Done Nothing to Solve Greece's Problems'

Interview by Thomas Hüetlin and Alexander Neubacher

SPIEGEL ONLINE 02/16/2015

Euro Poker

Greece and EU at Loggerheads Ahead of Monday Meeting

By Martin Hesse, Christian Reiermann and Christoph Schult

Project Syndicate FEB 16, 2015

Playing Chicken with Democracy

HAROLD JAMES

近代の民主政治は2つのタイプの課題を含むと考えられる.1つは,一般原理に基づき法を定めること.もう1つは,課税と政府支出を介して資源を再配分すること.一国の内部では,これらの課題は相対的に複雑ではない.しかし国際関係が入ってくると,政府に強い制約が加わる.

ギリシャがEU加盟国として受ける制約はそれだ.ヨーロッパであれ,世界であれ,すべて統合化には,国内的な選好や法律に関する調整の作業が求められる.また課税が資本や高所得者の国外逃避を招くなら,富を再分配する政府の能力も制約される.

Syrizaは,ギリシャの債務を削減するために2つの主張を行った.1つは,戦間期におけるドイツで民主主義の実験が失敗に終わったのは,国際的な債権者が緊縮策を強制したからだ,というものだ.もう1つの話は,ドイツのワイマール共和国が1933年に崩壊した後,ギリシャは最も苦しんでいる国の1つだった.ナチスの占領期にギリシャ政府はドイツに融資を強制されたが,それは返済されなかった,というものだ.

Syrizaの歴史解釈はいくつか間違っている.第1次世界大戦後のドイツは,1932年までに,賠償金を支払うことができないと分かっていた.支払い停止がドイツを不安定化したのではなく,逆に,一層の過激な計画へ向かわせたのだ.ヒトラーが権力を握ったとき,資源再配分の課題はまったく新しいアプローチによって解決された.すなわち,他国の資源を再分配したのだ.

ギリシャの提案している債務免除は,ヒトラーと同じく,他国の資源を奪うものだ.それが実現すればユーロ圏全体に緊張が及ぶ.Varoufakis財務大臣は,最近,より大きな,パワーを持つ民主主義諸国は,弱小国を粉砕することで,自分たちの民主的基礎を破壊している,と述べた.しかし,彼も考えるべきだ.小国が国際システムを破壊することは容易かもしれないが,それによって自分たちの基盤を破壊する.

民主主義が隣国に負担を強いるために利用されるなら,統合は不可能である.民主主義も国際秩序も,ともに犠牲となるだろう.金融的な危機が感染するのと同様に,ゼロサム的な心理は政治的に感染する.

まず政治的な課題を解決するべきだ.それには,ユーロ圏のすべての選挙された政府が参加する仕組み(おそらく,ユーロ圏財務相会議)を必要とする.交渉が各国政府のチキン・ゲームにとどまる限り,その結果はカオスである.市場だけでなく,政治でも.

Project Syndicate FEB 16, 2015

Fiscal Austerity Versus European Society

KEMAL DERVIŞ

NYT FEB. 16, 2015

Weimar on the Aegean

Paul Krugman

ドイツの経験を語るときは,1923年のハイパーインフレーションだけが取り上げられる.しかし,現在のギリシャ債務に関しては,1930年代前半のBrüning政権が行った,金本位制を維持するための緊縮策を議論するべきだ.

ドイツ賠償金に関して,イギリスとフランスは,新しい民主主義国家のドイツを潜在的なパートナーとしてではなく,自分たちを征服した敵国であり,そのときの損失を償わせることだけを考えた.しかし,彼らが考えた以上にドイツ経済は損なわれていたのだ.1つは,戦争による破壊だが,もう1つは,過大な支払義務であった.それを強いるために,フランスはドイツの工業中心地,ルール地方を占領することまでやった.それはドイツの民主主義を損ない,近隣諸国との関係を悪化させた.

ギリシャが強いられた債務返済も,政府支出の削減によって実行されたが.その緊縮策による経済の縮小で財政赤字が十分に減らず,一層の支出削減を必要とした.ヨーロッパの債権諸国は,返済の弾力性を加えることが,自分たちの利益になることを知るべきだ.

The Guardian, Tuesday 17 February 2015

A maverick currency scheme from the 1930s could save the Greek economy

George Monbiot

The Guardian, Tuesday 17 February 2015

The only way for Greece is out of the eurozone

Simon Jenkins

FT February 17, 2015

Greece and the eurozone can still reach a deal

NYT FEB. 17, 2015

Greek Bureaucracy, Not Just Austerity, Is an Economic Drag

By LIZ ALDERMAN

NYT FEB. 17, 2015

Give Greece Room to Maneuver

By THE EDITORIAL BOARD

Bloomberg FEB 17, 2015

Three Reasons Merkel Is So Stubborn

By Mark Gilbert

なぜメルケルはギリシャに対する緊縮策を頑なに拒むのか? 3つの理由があるだろう.1Grexitを恐れるより,最悪国ギリシャの離脱を歓迎する.2.ヨーロッパの財政再建路線に利用できる.3.ゲーム理論に関心がない.

Bloomberg FEB 17, 2015

Tsipras Needs to Rethink His Timetable

By Mohamed A. El-Erian

The Guardian, Wednesday 18 February 2015

Pablo Iglesias is right to evoke the guillotine and the French revolution

Olivier Tonneau

FT February 18, 2015

Keeping Greece in the euro is about far more than money

Marc Chandler

NYT FEB. 18, 2015

Power Broker in Greek Debt Crisis Could Be the E.C.B.

By JACK EWING

FT February 19, 2015

Germans rebuff Greek ‘Trojan horse’

Peter Spiegel in Brussels, Stefan Wagstyl in Berlin and Kerin Hope in Athens

FT February 19, 2015

Spanish politics: Podemos’ populist surge

Tobias Buck in Madrid

FP FEBRUARY 19, 2015

Greece Should Not Give In to Germany’s Bullying

BY PHILIPPE LEGRAIN

FP FEBRUARY 19, 2015

The United States Isn’t Immune to Grexit Fallout

BY DAVID FRANCIS

Bloomberg FEB 19, 2015

Why Germany Rejected Greece's Peace Offering

By Leonid Bershidsky


l  世界経済の脅威

Bloomberg FEB 13, 2015

Band-Aids for Greece, Ukraine and Global Economy

By Mohamed A. El-Erian

今週,3つの会談が,世界経済に対する3つの脅威を解消しようとした.1つは水曜日,メルケル首相とオランド大統領が,ミンスクで,ロシアとウクライナの大統領と会談した.

2つ目は,水曜日の早い時間に,ユーロ圏諸国の財務大臣が,ブラッセルで,ギリシャとの合意を模索した.

3つ目は,木曜日,ドイツのメルケル首相とギリシャのチプラス首相が,妥協点を探して,会談した.

今週の初めには,その何人かがイスタンブールでG20蔵相・中央銀行総裁の会議に参加していた.そして,非正統的な金融緩和の継続を支持した.

政治的案指導力なしには,意味のある妥協と包括的な解決策は見いだせない.

FT February 17, 2015

Unbalanced hopes for the world economy

Martin Wolf

なぜドル高が進むのか? それは,かつて1980年代と,世紀転換期にそうであったが,今度も貿易収支,経常収支の不均衡を拡大するのか? デフレ圧力は強まり,アメリカ連銀の金融引き締めは難しいだろう.


l  イスラム国家の野蛮さ

NYT FEB. 13, 2015

The First Victims of the First Crusade

By SUSAN JACOBY

NYT FEB. 14, 2015

Unpaid, Unarmed Lifesavers in Syria

Nicholas Kristof

NYT FEB. 16, 2015

Islam and the West at War

Roger Cohen

西側とイスラム世界が戦争しているのではない,というのは間違っている.あいまいなイデオロギーの違いで殺し合っているのではない.西側文明に対する致命的な憎悪によってイスラム主義者の運動は広まっている.

誰を,何を,責めるべきか? 2つの見方がある.1つの見方は,西側を責める.イスラエルの支援は西側の帝国主義の姿であり,イラク戦争,グアンタナモやアブグレイブでの野蛮さ,ドローンによる殺人,石油のためにイスラム過激派を支援するサウジと同盟する偽善.

もう1つの見方では,アラブ世界を責める.独裁者がイスラムの政治を弾圧し,脆弱な制度や宗派主義が市民参加を阻む.陰謀説ばかりで,若者たちには仕事や希望がない.イスラム国家の誘惑に負ける.

オバマの新しい戦争はその一環であるが,歴史はオバマに対して厳しいだろう.アラブの春をめぐる解放運動への支援は失敗し,シリアへの支援拒否も含めて,混沌と過激派が広まった.

NYT FEB. 16, 2015

The Limits of Third-Generation Jihad

By GILLES KEPEL

FP FEBRUARY 17, 2015

Inside the Fight Over Obama’s Terror Summit

BY JOHN HUDSON

FT February 18, 2015

The hideous dialectic of Isis savagery

By David Gardner

リビア沿岸でエジプトからの出稼ぎ労働者を集団的に斬首したビデオを流した.イスラム国家は,その野蛮さによって誰にも恐怖と憤慨を引き起こすだけでなく,彼らの資源として,西側による「十字軍」を熱望しているのだ.それは911の前にアルカイダのAyman al- Zawahiriが主張したように,アメリカを挑発して攻撃を誘発することで,聖戦の種をイスラム世界にばらまくことができる,というものだ.

NYT FEB. 18, 2015

The ISIS Theater of Cruelty

By HUSSEIN IBISH

イスラム国家の広めるプロパガンダには,西側政府や敵対するイスラム諸国の指導者を憤慨させることより,その民衆から兵力を得る意図がある.アメリカなどの空爆にもかかわらず,イスラム国の兵力が縮小したようには見えない.それはスペイン内戦以来の,大規模な国際義勇軍を得ているからだ.

イスラム国家に対する同盟を組織するだけでなく,そのイデオロギーに対抗できる魅力あるメッセージを表現しなければならない.

FP FEBRUARY 18, 2015

Somalia on the Mediterranean

BY CHRISTOPHER S. CHIVVIS

YaleGlobal, 19 February 2015

Alienated Muslim Youth Seek Purpose, Thrills in Joining Jihad

Joji Sakurai


l  IRと「愛」

FP FEBRUARY 13, 2009

IR theory for lovers: a valentine’s guide

BY STEPHEN M. WALT

明日のバレンタイン・デーにちなんで,国際関係論が提供する「愛」に関する考察を紹介しよう.

まず,愛とはロマンチックなパートナーシップであるが,それは国際関係の基本概念である同盟に等しい.われわれは,それがときに不合理な情熱の表現であったり,互いの自律性を不可避的に制約するものであったりすることを知っている.国際関係論者の多くが,同盟の制度化は関係の実効性と持続期間を強化する,と考えている.結婚のように,公式な関係を結ぶことは慎重に考慮すべき重要な変化である.

一極化か多極化か,バランス・オブ・パワー,行動の予測,エスカレーション,宥和,は「愛」にも当てはまる.あなたは国際関係論を学ぶことで,素晴らしい愛を見つけるだろう.さらに,統合された資源やネットワークを活用する,すなわち,子どもを育てる.


l  イギリスの選挙

FT February 15, 2015

Inept response to Farage’s Ukip could deal a blow to mainstream

Matthew Goodwin

The Guardian, Tuesday 17 February 2015

Labour’s economic vision is not exactly Keynes, but it’s a start

Will Hutton

FT February 19, 2015

General election will decide future of the British state

Martin Wolf

選挙結果によって,イギリスの税制は変化し,おそらく増税しなければならない.防衛や社会保障費(高齢化のコスト分担)をめぐって,各政党は異なる未来を示している.難しい選択である.選挙は,われわれにとって重要だ.

FT February 15, 2015

Let the NHS lean more on the private sector


l  自由貿易協定

The Guardian, Monday 16 February 2015

Don’t believe the anti-TTIP hype – increasing trade is a no-brainer

Cecilia Malmström and Jonathan Hill

FP FEBRUARY 17, 2015

The Geopolitical Stakes of America’s Trade Policy

BY MICHAEL FROMAN


l  アベノミクスの春闘

FT February 18, 2015

An activist raid forces new logic on Fanuc robot factory

David Pilling

FT February 18, 2015

Japan wages: Manufacturing consent

Robin Harding and Kana Inagaki

春闘はかつてのようなストライキを実行する力もなく,賃金引き上げに影響力を持たなくなっていたが,アベノミクスの救命隊になるだろうか?

デフレ脱出を金融緩和だけに頼り,財政刺激策の余地は少なく,円安によっても輸出部門は中国への工場移転で国内雇用を拡大せず,消費税引き上げや石油価格の下落もデフレの再来を促している.日本経済は新しい需要を求めている.安倍政権は政治的介入を示唆してでも,春闘において企業が賃金引き上げを示すように求めている.

年功制の排除,など,労働市場改革の意味も問われる.


FT February 19, 2015

How short-term thinking hampers long-term economic growth

Gillian Tett


l  Walmartの賃上げ

FT February 19, 2015

Why Walmart’s raise is good for business

Martin Sandbu

NYT FEB. 19, 2015

Walmart Raising Wage to at Least $9

By HIROKO TABUCHI

Bloomberg FEB 19, 2015

Why Wal-Mart Is Raising Its Everyday Low Wages

By Megan McArdle


l  アフリカへの軽工業移転

Project Syndicate FEB 19, 2015

Africa’s Path from Poverty

JUSTIN YIFU LIN

貧しい国でも急速に豊かになることができる.私は台湾に生まれ,中国に移住したから,そのことを2度も経験した.アフリカで,それを3度目に経験する.

貧しい国が豊かになる正しい戦略は,第2次世界大戦後に日本が実行し,その後,アジア諸国が採用したように,豊かな諸国から軽工業・製造業を移転することだ.

内陸国エチオピアを観ればよい.10年前に,この国に投資するものはなかった.しかし,アジスアベバの近くに工業団地を開設し,政府は中国企業を誘致した.Huajian靴工場は20121月に開設され,約600人を雇用したが,年末には2000人以上のエチオピア人を雇用し,今では3500人以上が働き,年間200万足以上を輸出している.

アフリカの賃金はバングラデシュからも工場を移転できるほど安い.アフリカの農業労働者は過剰であるが,その他に職場はない.新しい工場で労働者として育ったものから,経営者が現れるだろう.モーリシャスは1970年代に工業団地を設け,繊維・衣服の輸出産業を育てた.そのほとんどが台湾と香港の工場だった.しかし今では現地の経営者によって所有されている.

輸出市場が圧倒的に重要であり,同時に,インフラなどが整備できれば,アフリカ諸国は市場統合を進めるだろう.


NYT FEB. 19, 2015

How to Talk to Israel’s Voters

By MICHAEL A. COHEN and MATTHEW DUSS

********************************

The Economist February 7th 2015

Capitalism’s unlikely heroes

Activist funds: An investor calls

Immigration: Let the states decide

Japan after the tsunami: Grinding on

Banyan: Still fighting

German-Americans: The silent minority

Immigration: Rolling out the welcome mat

Currencies: Money-changers at bay

Free exchange: Linked in

(コメント) 講義がなく,いくらか時間をかけて読むせいか,次々,面白い論説を見つけます.

資本主義の欠陥は様々な視点で議論されますが,株式会社,という制度も不満の源です.資本市場や巨大貯蓄機関とグルになって,経済の動きを悪用しているように思います.それに直接的な攻撃を加えるファンドも現れている,というのは痛快です.

通貨・為替市場を動き回る資本に比べて,移民の制度化が遅れていることは,世界的に見た社会モデルを歪めています.ユーロ危機もそうですが,アメリカが示す移民政策の危機も,もっと新しい工夫で解決する可能性が開かれている,という記事にも感心します.

為替レートも債務組換えも交渉の制度化とバランスを取る政策手段が必要です.しかしそれも,東アジアの日中韓では,政策交渉が進まないムードを変えることから始まります.戦争の記憶を政府が交渉のために利用する状況は,いずれの国民も苦しめます.

******************************

IPEの想像力 2/23/15

曇り空にときおり小雨が降る中,寝屋川ハーフマラソンに参加しました.何度か歩いたものの,2時間8分余りで完走できました.坂道,曲がり角,すれ違いの多いコースで,距離もわからず,走りにくかったです.しかし,足が痛くなって途中棄権するのを恐れていたので,ゴールできてとても満足でした.

走る人が増えているということです.平和を求め,豊かさを求め,家族や会社のために,働くことを使命として受け入れ,それは幼少期から学校で,受験勉強で,大きなストレスとなりました.社会を恐れ,人間関係を嫌う人々が増えたと思います.しかし,走るのは自由です.

*****

開発を唱える独裁者にも自由を求めた革命にも失望し,アラブ世界の若者はイスラム過激派に向かい,あるいは,ヨーロッパへの移民になっています.欧米では緊縮策や金融ビジネスに集中する富と債務の重圧で雇用の機会を奪われ,長期の失業に苦しみ,あるいは,テロに走る若者が増えています.他方,日本で若者や多くの高齢者がランニングを楽しむのも,現代の社会や政治に広がるストレスを表しているのかな,と思いました.

日本にとっては,まだ,通貨危機も,債務危機も,国境を超える軍事力の行使も,辺境におけるテロ組織の拡大も,潜在的な脅威なのです.

だからこそ,それらが顕在化するとき,地域が共有する交渉メカニズムや指導者間の信頼関係を損なうことに無頓着な政治姿勢が問題を悪化させます.今週のReviewからアイデアを拾えば,アフリカへの軽工業・製造業移転,ギリシャの成長連動債券,アメリカ州政府の移民歓迎政策と都市再生,が日本やアジアを刺激します.

日本が戦後の復興と高度成長を実現したように,アジア諸国がそれに続き,アフリカや中東諸国にも製造業が移転されるのを,私たちは積極的に支援し,その成長に参加することができます.日本企業がインフラ整備に参加し,日本の金融機関が貯蓄を地域の成長連動債券に投資し,日本企業が生産拠点と共に技術指導や品質管理を移転し,日本市場を開放して彼らの工業製品を輸入します.

日本が東北の被災地で製造業の復活や新興企業の育成,農業への労働力の供給を考えるとき,アジア,アフリカ,中東からの留学生や短期雇用契約を制度化して,自国で十分な教育や労働の機会を得られない若者たちに,日本で活躍する機会を提供します.そして,もし彼らが日本語や日本文化に深い理解と共感を得たのであれば,彼らが永住し,国籍を取得して,彼らの母国や世界各地のネットワークを日本で活用する展望を示し,奨励します.

それは実現可能な未来のシナリオとして,可能性の中に必ず存在しているはずです.それが実現しないのは,私たちが変化を恐れ,既得権を守り,確実なシナリオを得たいと願うからでしょう.それが長期的には,さまざまな脅威の予想外の発現によって変えられてしまうとしても,デフレや国債の累積,ネット依存の若者が示す閉塞感,社会保障など高齢化の重圧に,あえて解決策を示して人々の合意を促す者は現れません.

*****

しかし,そんなはずはない.日本でも,アジアでも,必ず,志のある人々が現れて社会や秩序の在り方を変えたはずだから.変えてほしいと願う人々の思いに反応し,覇気を示した者たちが成功し,あるいは,失敗したことを,きっと歴史は多く示しているのでしょう.

そして,ウクライナ東部の和平をめぐる交渉について,ギリシャの債務処理とユーロ圏やギリシャ国内の改革,ヨーロッパやアメリカにおける移民・難民の窮状,イスラム国家の野蛮さ,量的金融緩和の限界やリスク,通貨戦争,債務危機を繰り返す国際収支と資本移動のルールをめぐって,また,失業や貧困の問題を重視した市場制度や資本主義の再編についても,日本の若者たちが今こそ真剣に学ぶ時代なのです.

走るように,学んでください.

******************************