前半から続く)


l  日銀,プルトニウム,人口減少

NYT NOV. 29, 2014

Japan Is Back in the Hunt for Whales

By THE EDITORIAL BOARD

FT December 1, 2014

Moody’s downgrades Japan’s credit rating

Ben McLannahan in Tokyo

FP DECEMBER 1, 2014

Japan Has Enough Plutonium to Make Thousands of Nukes

BY JEFFREY LEWIS

日本政府は六ヶ所村の再処理工場の完成を再び延期した.再処理の見通しがないままプルトニウムを蓄積し続けている.日本がそれで核兵器を生産する意図はないとしても,他の諸国が原子力発電所から核兵器を作るためにプルトニウムを貯蔵する試みを刺激してしまうだろう.

日本政府が300億ドルを投資した施設を閉鎖することは,確かに,非常にむつかしいだろう.しかし,日本がこの地域安全保障にも配慮して,再処理計画を変更する先例を作ってはどうか?

Project Syndicate DEC 1, 2014

The Return of Currency Wars

NOURIEL ROUBINI

日銀による「近隣窮乏化」円安政策は,アジア(China, South Korea, Taiwan, Singapore, and Thailand)と世界(The European Central Bank and the central banks of Switzerland, Sweden, Norway, and a few Central European countries)に反動をもたらす.すべてはドル高に向かい,アメリカ連銀も金利引き上げを遅らせるかも知れない.

こうした通貨不安が生じている理由は,金融危機後の債務削減,財政再建により,金融政策だけが利用可能な政策手段となっているからだ.世界的に見ても,債務国・赤字国の緊縮に対して,黒字国の拡大策は十分ではない.世界の需要は減少し,成長の減退,デフレが生じている.その結果,通貨戦争がもたらすのは,成長ではなくゼロサム・ゲームだ.

金融緩和はゼロサムではないが,財政緊縮などと合わせて,景気刺激になっていない.赤字削減が先行して,金融緩和は遅れている.その逆が正しいのに,政府は積極的なインフラ投資を行わない.流動性だけでは民間投資は起きない.

緊縮の政治経済学が最適の政策を否定する.政府は,たとえ非効率でも,既存の支出,雇用,民間補助金を継続することを優先する.世界の景気回復は貧血症を解消できない.ある意味では,我々はすべて今や日本人だ.

FT December 2, 2014

Japan QE is cheap yen policy in disguise

Henny Sender

偽装された円安促進政策としての量的緩和を日本が採用したことは,アジア諸国の通貨安を加速するだろう.韓国のウォン,台湾・ドルだけでなく,中国人民銀行の予想外の金利引き下げもその影響を示すものだ.また,ドイツも第三国市場で日本企業と競争している.

しかし通貨戦争は,世界需要が不足し,経済が停滞する中では,好ましい長期的な結果をもたらさない.通貨安と金融緩和で一時的な資産市場価格の上昇が起きるけれど,需要を喚起する実物経済に向かう投資ではない.人工的な比較優位を作り出しても,将来の成長を犠牲にして,すぐ消えてしまう.

Project Syndicate DEC 2, 2014

Can Japan Reboot?

KENNETH ROGOFF

日本の問題は単純だ.金融危機後,人口が高齢化する先進国で成長を回復できるか? その答えは単純ではない.

アベノミクスは持続的なインフレをもたらすことに失敗した.劇的な金融緩和で人々の心理状態を変えるはずだったが,女性,高齢者,移民の労働力は大きく増えず,財政政策は不十分で,構造改革もできなかった.

日本政府の債務は莫大だ.日本は確かにヘッジファンドではないが,その脆弱さは否定できない.インフレが実現したら長期金利が上昇する.新興市場の成長減速や,日本へのプレミアムが上昇する可能性はある.

日本の一人当たり実質国民所得は既に他の先進諸国に比べて低下しつつある.構造改革のないアベノミクスは成功しない.

FT December 3, 2014

Japan: A ballot on Abenomics

David Pilling and Ben McLannahan

NYT DEC. 3, 2014

Whitewashing History in Japan

By THE EDITORIAL BOARD


l  石油価格下落

The Observer, Sunday 30 November 2014

Falling oil prices offer the west a great chance to refashion itself. Let’s seize it

Will Hutton

この18か月間の世界最大の石油産出国は,サウジアラビアを抜いて,アメリカだった.府ラッキング技術によって,今後も世界最大であるだろう.これまで半世紀の世界経済が逆立ちした.OPECは石油価格を引き上げる力を持たず,生産削減の合意も成立しなかった.

石油価格は4年ぶりの最低水準,1バレルあたり70ドルまで下がっている.産出の増加と,中国も含めて新興市場の成長が減速したころで,石油の過剰が問題になっている.石油価格下落は世界景気にとって良いニュースだ.石油価格上昇は消費者から石油輸出国に資金を移す.産油諸国はそれを厖大な外貨準備として預金してしまうから,世界景気を抑制するのだ.

ヨーロッパ経済は石油輸入を通じてその利益を受ける.他方,プーチンのロシアは,金融,政治,安全保障,ビジネスの支配層が不利益を受ける.ウクライナへの介入も低下するだろう.

しかし西側政府は石油価格下落だけに頼ってはいけない.それだけではデフレを強めるかもしれない.攻撃的な景気拡大策が必要だ.ECBも,ドイツも,欧州委員会も,この機会をとらえることだ.

中東の石油に依存しなくなったアメリカでは孤立主義が強まるかもしれない.権力の真空に,ナショナリスト,テロリスト,宗教的原理主義者,中国,などが紛争に介入する.UKIPや保守党右派は,過去のユートピア世界に住んでいる.

FP DECEMBER 1, 2014

Can OPEC Kill the U.S. Oil Boom?

BY KEITH JOHNSON

Bloomberg DEC 1, 2014

Good, Bad and Ugly of Lower Oil Prices

By Mohamed A. El-Erian

石油産業の投資が削減される.ヨーロッパのデフレ傾向が強まる.金融市場,商品市場が混乱する.

特にロシアだ.一方では,プーチンがウクライナへの介入をあきらめて,事態の鎮静化と制裁の解除に向かう.他方,プーチンは対外的な冒険主義を加速するかもしれない.その場合,制裁が追加され,ロシアが対抗し,ヨーロッパが不況になる.

石油価格下落のもっとも醜い結果である.

FT December 2, 2014

Two cheers for the sharp falls in oil prices

Martin Wolf

1970年代のオイルショックとその後の影響が80年代の逆オイルショックを生んだ.今も似ている.もしこの水準がかなり続くとしたら,何が起きるだろうか?

1.消費者を通じて年間13000億ドルの需要刺激策を世界は受ける.2.超低インフレ期待と,中央銀行のインフレ警戒感を失わせる傾向が生じる.3.エネルギー集約的部門の高利潤と,エネルギー部門の利潤と支出の削減.4.石油輸出国から石油輸入国への所得再分配.5.資産価格,為替レートの変化.6.石炭依存やエネルギー効率の低下を促す.

FT December 2, 2014

Falling oil price shatters Asia’s assumptions

Jeremy Grant

FT December 3, 2014

Oil price slide a mixed blessing for China

Lucy Hornby in Beijing

世界最大の石油輸入国として,中国は最大の受益者である.しかし,現実は複雑だ.中国は世界第4位の石油産出国でもある.国内生産や海外生産を増やしてきたが,それ以上に国内消費が増えた.

地域的なデフレや周辺諸国の政府,銀行の融資先も心配だ.中国の成長を支えたのは石炭であり,石炭価格も下落している.石炭の産出地域は財政危機になっているが,少数民族の多い新疆地区へのインフラ投資は減らせない.


l  台湾地方選挙

FT November 30, 2014

China: Fear of a deflationary spiral

Josh Noble and Gabriel Wildau

FT November 30, 2014

Taiwan election results threaten to derail China rapprochement

Lucy Hornby

中国との和解政策を取った台湾の国民党が地方選挙で大敗北した.

Bloomberg NOV 30, 2014

Taiwan Needs a Reboot

By William Pesek

FT December 3, 2014

Taiwan stirs a political earthquake for China

David Pilling

民進党は,中国からの独立を求める国民投票を実施しようとして,中国・北京政府と激しい対立になった.イギリスのEU離脱を求めるUKIPと似ている.しかし,民進党は次の大統領選挙で勝利する可能性がある.北京政府は今回の選挙結果に衝撃を受けている.独立を決めれば中国との戦争になる.中国の軍事力を考えて,民進党の代表Tsai Ing-wenは独立の主張を控えている.

有権者は,独立問題よりも,賃金,不動産価格,不平等に関心がある.イギリスの有権者と同様,彼らも中国の影響力拡大を問題の原因とみなし,与党の国民党を責めた.


l  資源とプーチンの呪い

FT November 30, 2014

The oil price will set the test for Putin’s resource nationalism

Kirill Rogov

クレムリンにおいてプーチンの政治力は2つの源泉から得られてきた.石油の高価格と,熱狂的な愛国心,である.石油価格が下落した今,プーチンは愛国心だけで生き延びるのだろうか?

石油・天然ガスを国有化することで,資源が豊富な国は有権者の利益を実現できた.しかし,国有化は民間投資の動機を失わせ,その資源を奪って,経済のパフォーマンスを改善できなかった.コストは上昇し,消費の増加が尽きて,石油の富は政府の寛大さを示すことに消耗された.すなわち,社会給付,年金,公務員の高給,軍事予算である.

これは,イラクのフセイン,ヴェネズエラのチャベスも試みた,資源ナショナリズムである.そして,こうした政治指導者たちは,地域の指導権を求め,愛国心を刺激するために近隣諸国との紛争を画策した.

それが完全な全体主義支配になるかどうかは,3つの条件にかかっている.すなわち,大衆的な支持,エリートたちの黙従,そして,経済が急激に悪化しないこと,である.この最後の,経済成長こそ,大統領にとって致命的な条件だ.クレムリンは,経済を維持するために紛争を鎮静化すべきか,迷っている.

しかし,資源ナショナリズムによる支配は逆転を許さない.自然資源を枯渇させるだけで,繁栄は創り出せない.石油価格が下落したとき,プーチンはますます愛国心を必要とするから,西側との紛争を激化させるしかないだろう.

Project Syndicate DEC 1, 2014

Common Sense on Conflict Minerals

MICHAEL GIBB

「そのダイヤモンドはどうやって手に入れたのか?」 資源の世界貿易の背後には人々の苦悩がある.世界で最も貧しい,脆弱な国家は,資源を輸出して豊かになる必要がある.しかし,資源が豊富な諸国は,その住民の多くが非常に貧しい.アフリカの4か国(Sudan, South Sudan, the Central African Republic, and the Democratic Republic of Congo)を見ても,資源をめぐる内戦で,住民の多くが国内難民となっている.

様々な国際企業が,欧米の消費者に届くまで,紛争地帯の資源の取引にかかわっている.こうした企業は,次第に,社会的な責任を求められる.住民の安全や人権を保護するのは国家の役割と考えられたが,紛争地域においては国家がそれを果たさない.ますます企業がその一部を果たすべきだと考えられている.OECD,国連,アメリカ政府,ヨーロッパ議会,などがガイドラインを設けて企業行動を監視し始めている.

Bloomberg DEC 1, 2014

Putin Gambles on a Weak Ruble

By Leonid Bershidsky

FT December 2, 2014

Demise of South Stream big setback for Putin

Project Syndicate DEC 2, 2014

Why Did Putin Turn?

HAROLD JAMES

西側の評論家たちはプーチンの外交政策を誤解している.彼らは,2007-2008年の金融危機以後に生じた地政学の変化を,ロシアの魂が現れた心理劇とみなす.なぜプーチンが,近代化,若い,西側支持の立場から,攻撃的な歴史の見直しに変化したのか,その理由を理解していない.

一方では,プーチンに共感する者がいる.その前提は,西側がその約束を破って,NATOEUを東欧に拡大したことだ.しかし,そのような約束はなかった.実際,1990年に東西ドイツが再統合したとき,アメリカはそれをNATOに加えるしかなかった.1990年代にヨーロッパの経済・安全保障を中東欧に拡大したが,ロシアは関心を示さなかった.

他方で,プーチンを非合理的な,幻想にとらわれた人物,とみなす者もいる.しかし,かつてもっとも近代的な,頼りになる指導者と言われたプーチンが,ラスプーチンのような狂人になった,とは考えられない.

より正しく理解するには,ロシアの外交政策を時代順にみることだ.その変化は2008年のグルジア危機だった.ロシア人の飛び地を守るために,支援と介入が行われた.その過程はクリミアに受け継がれている.すでに2007年のミュンヘン安全保障会議で,プーチンは地政学的な挑戦を明確にしていた.新興諸国(ブラジル,インド,中国,ロシア)は,不当な一極世界に代わる国際秩序を築くべきだ,と.

翌年の金融危機で,アメリカの時代が終わった,と考えた.危機の前に,ロシアは多国籍企業と組んだ近代化や経済多様化を進めたが,危機により,こうしたグローバル資本主義への服従姿勢を放棄した.そして,もっと国家中心の資本主義,特に中国にモデルを求めた.

アメリカが世界的な関与を引き下げ,アラブの春に対しても混乱した弱い対応しか示さなかったこと,ユーロ危機が長引いたことに,伝統的なソ連型の地政学思考がよみがえったのだ.この点で,スターリンの外交は非常に合理的であった.

大恐慌によって資本主義は分裂し,戦争に至る,とスターリンは考え,それは正しかった.ナチスが侵攻してきたのだ.しかし,ヒトラーが敗北した後,英米は戦争しなかった点で,スターリンは間違った.今も,西側は世界金融危機を恐慌にしなかったけれど,プーチンは同じシナリオを描いている.

FP DECEMBER 2, 2014

Putin's Pipe Dreams

BY KEITH JOHNSON

NYT DECEMBER 2, 2014

Is Moldova Another Ukraine?

By JOHN GUIDA

FT December 3, 2014

The German club of Putin understanders

Roula Khalaf

FT December 3, 2014

Can Vladimir Putin’s popularity weather a perfect economic storm?

Neil Buckley in London

SPIEGEL ONLINE 12/04/2014

Stuck in the Middle

Polish Intellectuals Sound the Alarm on Russia

By Jurek Skrobala

NYT DEC. 4, 2014

Putin Stresses Foreign Policy and Economic Goals After ‘Difficult Year’

By NEIL MacFARQUHAR

Bloomberg DEC 4, 2014

Putin Can't Handle Life Without Luck

By Leonid Bershidsky


l  アメリカの不平等

Project Syndicate NOV 30, 2014

The Rising Costs of US Income Inequality

LAURA TYSON


The Guardian, Monday 1 December 2014

Economic dishonesty is the deadliest deficit of all

Polly Toynbee


l  大西洋をはさむ移民論争

FT December 1, 2014

Obama is a lonely western liberal on immigration

Gideon Rachman

西側の政治家たちが最も心配していることは何か? 成長,不平等,環境問題,教育,・・・ 最近の議論を聞くと,何より,移民問題だ.

しかし,最近,アメリカとヨーロッパの政治は反対方向を向いた.オバマは非合法移民を国外追放から守るように指示し,ヨーロッパではポピュリストたちが反移民の主張を強めている.

OECD諸国の外国生まれ人口は,国民の11-13%でほぼ均衡している.情報通信手段の発達,輸送コストの低下は,裕福な,成長率の高い諸国を巨大な磁石にしている.それを規制すれば非合法な入国が増える.移民たちは国民が嫌がる分野で低賃金の労働を引き受ける.しかし,彼らは賃金を下げる,公共住宅を奪う,と非難されている.不況や不平等が問題になれば,ポピュリスト政治家たちは容易に移民を非難して人気を得ることができる.

アメリカのオバマは,反移民論を非アメリカ的で,人道に反する,と攻撃した.それは中道左派の政治家として,共和党からラティーノの支持を失わせ,民主党を有利にする意味もある.他方,キャメロンはUKIPに保守層を奪われることを恐れ,反移民論を選択した.

そこにはグローバリゼーションの考え方にも違いがある.オバマは国境の管理を時代遅れとみなし,要塞や警察国家より,変化に慣れることを求める.しかしキャメロンやサルコジは,国境管理を重視し,有権者の不満を優先する.

それはまた,大西洋の両岸で政治システムが異なっていることを示す.アメリカは移民の国を自覚し,多くの土地がある.2大政党が確立し,反移民だけで極右が政治勢力を形成することはむつかしい.他方,ヨーロッパにはそれらの条件がない.

それゆえ,ヨーロッパの移民論争はまだ続くだろう.

FT December 1, 2014

The migration numbers game

Shawn Donnan

移民の洪水をめぐる激しい政治論争と現実は異なっている.50年前と同様,われわれの多くは生まれた土地に暮らし続けている.移動するのは世界人口の3%でしかない.中国では,毎月,180万人が都市に流入している.

Project Syndicate DEC 1, 2014

The UK’s Immigration Distraction

BILL EMMOTT

FT December 2, 2014

Clock ticks over US spending bill as immigration tensions simmer

Megan Murphy in Washington

Bloomberg DEC 4, 2014

Sweden -- Yes, Sweden -- Leads Anti-Immigration Shift

By Leonid Bershidsky


l  イギリスの予算案

The Guardian, Wednesday 3 December 2014

Ignore Osborne’s bombast: there’s a reason Britain is back to growth

Simon Jenkins

FT December 3, 2014

Autumn Statement: A political chancellor’s delusional plan

Martin Wolf

FT December 3, 2014

Labour is stuck in the political doghouse

Janan Ganesh

FT December 3, 2014

Autumn Statement 2014: A mixed bag from the chancellor

Stephanie Flanders

FT December 4, 2014

Even if Osborne’s outlook is deluded, he did not dream it up

Stephanie Flanders


l  子どもの政治利用

The Guardian, Wednesday 3 December 2014

Politicians shouldn’t use their children as props

Anne McElvoy


l  国際政策協力

VOX 03 December 2014

Challenges ahead: Managing spillovers

Olivier Blanchard, Luc Laeven, Esteban R Vesperoni

世界金融危機以後,政策担当者たちは金融政策と財政政策との結びつき,国際的な波及,国際政策協調の可能性,を再発見した.それはIMFの政策研究会議the IMF’s 15th Jacques Polak Annual Research Conferenceのテーマ“Cross-Border Spillovers”となった.変動レート制は各国のマクロ政策に自由を与えなかった.むしろグローバルな金融市場の循環に巻き込まれている.


l  政府を訴える権利

NYT DEC. 3, 2014

When Corporations Sue Governments

By MANUEL PÉREZ-ROCHA


l  チキンを食べる

NYT DEC. 3, 2014

Abusing Chickens We Eat

Nicholas Kristof


l  強権政治家の時代

FT December 4, 2014

This is the year of the political strongman

Philip Stephens

強権政治家の時代がもどってきた.経済は,国家権力の道具でしかない.

彼らは過去に対して謝罪しない.どんどん教科書を書き換える.自国の栄光を際立たせるために,歴史は変えられる.同様に,過去の恥辱が強調される.ドイツは悔悛によって生まれ変わった.安倍は謝罪に飽き飽きした.

習近平の見直しはアヘン戦争にまでおよぶ.プーチンは今も,ソ連崩壊が間違いであったと残念に思う.彼らの目には,現在のルールは西側が決めたものだ.軍事力と同盟関係のほうが,国際関係の正しい要素である.

20世紀後半の多角主義的秩序は気休めでしかなく,国家間の関係は本質的に変わっていない.グローバリゼーションは逆転し,カントではなくホッブズが,大国間政治の基本である.はるかに野蛮な世界を生きるために,西側もそれを再学習している.

NYT DEC. 4, 2014

Is Democracy Dead?

By TONY BLAIR

民主主義に対する不満が強い.それは十分に有権者の期待に応えていない.改革が必要だ.急速に変化する世界で,企業は活発に組織を確信し続けている.政治システムはそれができない.現代のガバナンスはイデオロギーによって競うのではなく,政治的な効率性を競うのだ.

現代の指導者が経験するパラドックスだ.改革の要求は強まるのに,それに反対する多くの強力な利益団体が存在する.改革は,たとえそれが有権者の利益になるとしても,しばしば,有権者から激しい反対を受ける.特に,教育や社会保障に関する改革を唱えるとき,政権を失う危険を冒すことになる.

もっと政治家の報酬を引き上げ,もっと才能ある政治家の若手をシステムに供給しなければならない.政治家と有権者の関係を変えるべきだ.政府は民間部門と経験や人材を交換する.投票するだけでなく,住民・国民はもっと困難な選択を共有する.


l  銀行と消防士

FT December 4, 2014

Banking: Financial firefighters

Tom Braithwaite, Gina Chon and Henny Sender


l  スウェーデンの金融・政治不安

FT December 4, 2014

Sweden’s political instability is a warning to the rest of Europe

Richard Milne — Oslo

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The Economist November 23rd 2014

Russia’s wounded economy

The Russian economy: The end of the line

Japanese elections: Same race, same horse

China’s monetary policy: The People’s Blank of China

Germany’s economy: The sputtering engine

(コメント) ロシア,日本,中国,ドイツに関して読みました.石油価格が下落し,不況のデータで一気に選挙を決断し,あるいは,中央銀行が引き締めから緩和に転じ,経常収支の黒字どころか予算も黒字にすることを躊躇し始めた,という話です.それぞれに問題は複雑で,この政策転換が正しい,と断言できる政治家もエコノミストもいません.

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IPEの想像力 12/8/14

「民主主義は死んだのか?」と,イギリスの元首相ブレアTONY BLAIRは問います.情報が普及し,通信技術が発達した時代に,「民主主義」が十分な成果を迅速に有権者にもたらしていない,と彼は認めます.

民主主義とは「投票」だけではありません.資本主義システムや民主制の下で,人々の向上心は高まり,改革の要求がますます強まるのに,それに見合った改革を進めようとすると政治は行き詰まり,制度が硬直化する.ブレアは,こうした「民主主義のパラドックス」が指導者たちを苦しめている,と考えます.

近頃,読み終わるのが惜しいなと思う本は,大村はま『新編 教室をいきいきと 1』(ちくま学芸文庫)です.いつも時代小説を探しに行く駅前のワゴンセールで,たまたま見つけました.(2 は注文して買いましたが,3 は出版されていないようです.)

この本を読みながら,政治やガバナンスについても,私は教育から学ぶべきだと思いました.

著者は「いきいきと学ぶ教室」にするのは難しい,と書いています.「型にはまったような同じことば」で指示するだけではいけない.「心の底から出てきた迫力のようなもの」を伝えないと,子どもたちは「よし!」という気持ちにならない.

「だいたい子どもは,叱らないほうがよいのです.それよりも面白い勉強に引き付ける工夫をしたほうがいいのです.」

「あまり成績が振るわないひとも一生懸命にやっているんだから,ばかにしてはいけない」と,子どもたちに諭す先生がいる.著者は,それだけでは解決しない,と考えます.「人をばかにする,下に見るということのほんとうにない教室,そういう教室にしなければ,たとえば話し合いなどということは成立しません.」

著者が示す解決とは,「できないと思われている子どもに,現実に成果を上げさせる」ことです.ああ,こんな素晴らしいことのできる人なのか,と驚かせなければならない.「ばかにしていたことを後悔し,正しい目で,その人をほんとうに尊敬をもって見る」というところまで持っていく,と書きます.

そのためには,同じ材料,同じ方法ではなく,他の人と比較することができないような,めいめいが担当したことを,自分の話をする,というのがよい.「比較するという考えが浮かばない,出てこない,ということが大切です.」 そして,その子どもがほんとうに感心できる話をできるまで,助けなければならない.それが指導者の務めである.

もしそれができないのであれば,そのテーマ,その目標は,指導者である自分にとって無理だった,と知るべきだ.自分の力が不足し,できる子を伸ばし,できない子どもも見劣りしないところまで持っていく,教育者としての力が足りなかった,と.

「話し合い」による政治,民主主義,はどうでしょうか?

移民が多すぎる,と言うけれど,むしろこれほど発達した移動手段や通信手段があるのに,移民は少なすぎると思います.大きな所得の差があるとき,必ずしも移民によらずに,貿易や技術移転,投資によっても,その差を縮めることができるはずです.

移民論争は各地で起きています.その内容は似ていますが,論争の方向は異なります.オバマはアメリカの伝統や人道主義の視点で反移民論を攻撃しますが,キャメロンはますますポピュリスト政党に支持者を奪われ,それを意識して移民規制を求めます.もし厳しい貧困状態が,出稼ぎや人口流出の理由であれば,インフラ投資や成長だけでなく,移民も優れた解決策です.しかし,政治の在り方によって,その答えは異なります.

生まれた土地への愛着,自分が育った土地,両親や友人たちと暮らした土地へ帰ることを望むのは自然です.しかし,生活の快適さや自然環境の清浄さ,美しい景観,など,所得の差を補って,その土地に人々を引き寄せる力が発揮されるには,新しい政治が求められます.

世界を「小さな教室の中の子どもたち」と見るのは極端でしょう.しかし,困難な問題を解決するには,「いきいきと学ぶ民主主義」を実現する政治家を増やすことだ,と私は思います.

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