IPEの果樹園2014
今週のReview
11/24-29
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中国とロシアの歴史観 ・・・G20サミット ・・・アフリカの政治 ・・・従軍慰安婦と安倍政権 ・・・アメリカ・中国・インドの世界秩序 ・・・ヨーロッパとイギリスの景気回復 ・・・アラブの政治論争 ・・・日本の政治経済 ・・・現代外交政策の教訓 ・・・ホンジュラスの殺人
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 中国とロシアの歴史観
YaleGlobal, 13 November 2014
WWII Celebration Plans by Putin and
Xi to Score Points
Stein
Tønnesson
ロシアと中国は第2次世界大戦終結70周年を祝う記念式典を共催する.そして,この戦争の意義と,勝利がもたらした戦後秩序の保持を両国で確認する.それは,習にとって,靖国,尖閣で,アメリカによる日本の立場の擁護を批判するものだ.安倍の靖国神社参拝を,ロシアは中国とともに批判する.
ヨーロッパでは,ロシアの同盟諸国であったイギリスやフランス,ポーランドが,ドイツも参加した形で,戦争の記憶を共同で想起する.ロシアはウクライナに進行した結果,こうした西側諸国からの制裁を受けているが,中国との緊密さを示すことは孤立を緩和する.
さらにロシアは,中国との天然ガスの長期契約やさまざまな食糧の輸入に依存している.他方,ヨーロッパとの戦争記念行事に参加することは困難な情勢だ.習が唱える「新しい大国間関係」は,こうしたロシアの姿勢にとって歓迎できる.
中国は,日本が安保理の常任理事国になることに反対し,安倍による憲法改正にも反対する.蒋介石が撤退した後の南京大虐殺や,日本軍の侵攻を中国人民が耐えたから,アメリカ軍に勝利の機会があった.記念行事は,その意味を世界とアメリカに再考させるためにも重要だ.
中国自身の,国民党軍をめぐる評価の転換も,この点を主張する前提となった.共産党は,以前のように階級間の闘争を強調するより,今は国民党と共通のナショナリズムを支持している.中国とロシアは,日本との領土問題を共有している.他方,アメリカは現在の同盟国である日本,ドイツ,イタリアとの戦争や,原爆投下を記念することに消極的である.
現在の危機管理メカニズムに関しても,中国とロシアは共通の関心を持っている.
Bloomberg NOV 18, 2014
Merkel Is Playing Long Ball With
Putin
By
Leonid Bershidsky
G20でプーチンを非難するのは間違いだ,と書いた.それに対して,間違った「融和策」だ,と批判するものが多い.しかし,プーチンを冷遇することは国内向けの手軽な政治姿勢でしかない.他方,メルケルはプーチンと数時間も対話した.
東ドイツに生きたメルケルは,その経験から独自に,プーチンがソ連型のタカ派政治に向かっている,と感じている.しかし,プーチンを軍事的な対抗策で止めることは間違いだろう.それはロシアとの戦争になってしまうから.ドイツには経済的なパワーがある.それはロシアを貧しくすることも豊かにすることもできる.ただし,その効果には長い時間が必要なのだ.
実際,東ドイツが崩壊するまでには40年もかかった,と知っている.メルケルの対話姿勢は,西側の指導者やロシア政府の顧問たちと違って,ロシアとの長い制裁が効果を発揮することを確信しているのだ.
l G20サミット
NYT NOV. 13, 2014
China, Coal, Climate
Paul
Krugman
APECサミットは,まるで「スタートレック」の世界指導者たちのように見えて,恥ずかしい感じがした.いつものように,彼らはすでに下位の部門でやっていることを,麗々しく,合意文書に仕上げているだけだから.
しかし,何か重大なこともあったようだ.中国とアメリカが炭素の排出量で合意した,というのは重大な取引だった.
この合意の重要性を理解するには,化石燃料産業の反対派がいかに強い圧力を持っているか,知らねばならない.彼らは業界とその召使たちだ.今や,そこにはすべての共和党員が加わって,地球を救う行動には何でも反対している.
アメリカ自身が,共和党の支配する議会と難しい交渉を要する.中国にも,西側の国際合意に参加することで自国の政策を制約される,と反対する,新興超大国を目指すナショナリストたちがいる.
決して楽観できるものではないが,米中が原則で合意したことは,地球にとって良いことだった.
l アフリカの政治
NYT NOV. 14, 2014
Burkina Faso’s Reverberating Crisis
By
PIERRE ENGLEBERT
Burkina
Fasoの最大の問題は,アフリカのどこでもそうだが,公式には民主的な統治が,容易に支配集団の権威主義的体制を永久化することに利用されてしまうことだ.人々は投票し,議会は招集され,法案が可決されるとしても,実際に支配しているのは,権力のパトロンたちと同盟を結ぶ者たち,そして,治安関係者の隠れたネットワークなのだ.
このシステムは社会の大部分から代表制を遠ざけ,政府の資源やポストへのアクセスを通じて,莫大な不平等を生み出している.システムがもたらす鬱屈,疎外,憤りは,Burkina Faso議会を破壊したデモ参加者による破壊が示している.
l 従軍慰安婦と安倍政権
NYT NOV. 14, 2014
The Comfort Women and Japan’s War on
Truth
By
MINDY KOTLER
中曽根康弘が,1942年,日本海軍の中尉としてボルネオ諸島のBalikpapanに駐留したとき,飛行場の建設の監督を任された.しかし,兵士たちは性的な暴行,ばくち,喧嘩ばかりに時間を費やし,作業は進まなかった.
中曽根はその解決策として軍の売春宿,「慰安所」を組織した.4人のインドネシア人女性が軍の風紀を改善した,と,その成果を彼は海軍のレポートで推奨している.
中曽根中尉の慰安所開設は,第2次世界大戦前後,インド洋・太平洋の日本帝国陸軍・海軍の政策として,何千も再現された.ナウルからベトナムまで,ビルマからチモールまで,征服した土地で女性たちが兵士への最初の褒賞とされた.
中曽根が慰安所を開設したことは,彼の1978年の回想録に書かれている.当時は,そうした行為が普通のことであり,政治家になるキャリアとして問題にならなかった.中曽根康弘は,1982年から87年まで,日本の首相であった.
しかし,今では,日本軍が慰安所にかかわったことは激しい論争になっている.安倍首相は,歴史的記録を,自国を陥れるための嘘であると示すことに全力を注いでいる.その主張は急速に事実から離れてしまい,日本政府の説明では,従軍慰安婦にされた女性たちではなく,日本人が犠牲者なのである.安倍政権は,日本帝国の戦時における名誉と現代の国家的威信を回復するために,その一環として,歴史の見直しを進めている.
現在の日本政府が,かつて政府が従軍慰安婦に関して謝罪した「河野談話」を嫌っているのは明白である.朝日新聞の20年以上前に書かれた記事が間違った証言に基づいていたことを理由に,それが喚起した国際的な非難や,国連の報告書も撤回されるべきだ,と安倍政権は求めた.しかし,多くの証言や事実に依拠して報告書の作成にあたったRadhika Coomaraswamyはそれを拒否した.
さまざまなやり方で,女性や少女たちが戦争の犠牲になった.日本軍の慰安所システムや植民地,プランテーション,日本軍が征服した領土で起きたことだ.アメリカ人の看護婦たち,オランダ人の母親たち,イギリス人,オーストラリア人の女性たちも含まれる.
強姦や人身売買が今も世界中で起きている.こうした暴力をなくすことを望むなら,安倍政権が歴史を否定することに抵抗しなければならない.
l アメリカ・中国・インドの世界秩序
FT November 17, 2014
Can China bring peace to south Asia?
Ahmed
Rashid
この2か月以内に,インド,パキスタン,アフガニスタンの政治指導者が中国の習近平国家主席に会った.彼ら3人は,中国からの大規模な経済投資によって,異なる結果を期待している.
同時に3国は,中国がその経済に占める重要な地位を梃子にして,数十年に及ぶ3国間の対立とテロ集団の浸透を終わらせてほしい,と願っている.そのテロ集団はイスラム国家とも結びつきつつある.
習の目的は中国の西域におけるウイグル人のテロ活動を制圧することだ.中国はインドに200億ドル,パキスタンに10年間で420億ドル,アフガニスタンに1億ドルの投資(そして平和が回復されたらより多くの支援)を約束した.彼らは,アメリカとNATOが撤退した後,中国がその役割を担うつもりか,心配している.
中国は,初めて,アフガニスタン安定化のための国際会議を主催した.李克強首相は,参加国が敵対心を棄てて,協力することに求めた.北京政府は今,カブール政府とタリバンとの会議も検討している.
中国にとって,インドとパキスタンをアフガニスタン安定化のために協力させることが重大な課題である.ここでも中国は,中国とアジアとを結ぶインフラ投資を利用できる.それはアメリカが持たない交渉手段だ.
アメリカ人はいつか去るだろうが,中国人は永久にアジアにとどまる.
Global Times 2014-11-17
Country’s transition hangs in
balance
Martin
Jacques (Jacques)
中国の成長は,急激な社会変化をともない,それを可能にするために国家が重要な役割を果たした.人口の30%が農村から都市に移動する中で,国家は教育や社会福祉のシステムを整備した.
中国における国家は,欧米と違い,少なくとも2000年以上の歴史を持ち,中国人や中国文明そのものの一部である.それは欧米の国民国家ではなく,文明国家である,と私は考える.
1945年以後,中国共産党はこの国家システムを利用して権力を固めた.しかし,この国家に示される中国のガバナンスは,同じ歴史と状況を無視して他の土地に移植できない.中国人が移住した土地を除いて,中国のガバナンスは輸出できないだろう.それは共産主義の問題ではなく,人々が中国の文明国家というガバナンスの一部になるかどうかの問題だ.
欧米諸国も自分たちのガバナンスの再考を始めているが,その解決策はまだ見つからないだろう.中国にも解決すべき問題は多いが,それは欧米型のガバナンスに向かうことを意味しない.
FT November 20, 2014
India’s Narendra Modi joins the
great power game
Philip
Stephens
地政学的な決断は,しばしば,予想外の大きな影響をもたらす.プーチンがウクライナ東部に侵攻したのは,ヨーロッパにおける欧米の攻勢に反発したからだと考えられている.しかし,インドから見れば,それは違う意味を持った.西側から制裁を受けたロシアは,中国に接近するしかなくなるからだ.長期の天然ガス契約も,国際価格で見て最低水準の合意であった,とインドは見た.中国に対抗するため,伝統的にソ連・ロシアと緊密な関係を維持してきたインドにとって,それは懸念すべきことだ.
今後も,インドと中国は貿易や投資を増やすだろう.しかし同時に,モディは日本やアメリカを投資や技術の提携相手として重視し,インド近隣諸国への中国からの投資,そしてアジア外交において,バランスを取る必要を強く感じたのだ.
l ヨーロッパとイギリスの景気回復
FT November 17, 2014
The bond market’s dance over European
debt will not last forever
Barry
Eichengreen
スペイン,アイルランド,ポルトガルの政府債券価格が再び市場で急落した.投資家たちはヨーロッパ政府の戦略を信用していないからだ.それは,できる限り問題を先送りするもの,に見えるのだ.
計画によれば,2030年までにGDPに対する政府債務比率を60%以下に抑えるため,プライマリー・バランスを黒字にする,という.しかし,それほど長期に政府予算が黒字を維持することは,通常,考えられない.
確かに,歴史的には例外もあった.1970年代半ば以降で,10年以上,GDPの5%も黒字を維持したケースが3つある.1995年からのノルウェー,1990年からのシンガポール,1995年からのベルギーの黒字だ.
ノルウェーとシンガポールは非常に開放的な小国で,外部のショックに弱い.ノルウェーは石油・天然ガスの高価格期に黒字を政府系投資信託でプールしていた.ベルギーも,ユーロに参加するため,その参加条件を満たすことが最優先された.また,並行して,政府機関の改革が行われていた.地方から中央へ,税制や権限が移転され,その改革を終えた後,黒字は消滅した.
確かに,EU諸国には赤字を減らす強い外的な圧力が働いている.しかし,国内の有権者はそれに反対している.債務を減らすために緊縮策を続けることは,どの政府にも不可能だ.
幸い,それに代わる解決策がある.一つは,成長してGDPを大きくすることだ.ヨーロッパの見通しは悲観的である.もう一つは,債務の削減だ.ギリシャに対して行われたが,まだ少なすぎた.より根本的な削減が必要だ.
l アラブの政治論争
NYT NOV. 15, 2014
Who Are We?
Thomas
L. Friedman
イスラムの名において,19人の若者による9・11の自爆テロが起きたとき,スンニ派アラブ世界では論争が起きた.信仰や彼らの社会がどうしてテロリストたちを生んだのか? しかし,アメリカのイラク侵攻とその後の失策が問題をあいまいにした.
ここドバイでは,イラクとシリアにおけるイスラム国家“caliphate”について,またその信仰を共有しない者に対する残虐行為について,「われわれとは誰のことか?」という論争が起きている.
ISISはイスラム社会が生み出したテロ組織だ.今,ここで,イスラム社会を実現する,という思想が広まっている.それは西側も含めた世界中から若者を引き寄せている.そのイデオロギーは,禁欲的で,多元社会を否定する,サウジアラビアに支配的なワッハービズムが暴力的なものに変異してできた.Twitter や
Facebookによって子供たちにも直接浸透する.
ISISとは,単なる宗教問題ではなく,低開発,セクト主義,教育の不足,性的な抑圧,女性の尊厳の否定,そして,あらゆる知的な分野で多元主義を欠く,イスラム社会の説明原理に問題がある.
かつて人々はイスラムが完璧で,外部の世界はわれわれを憎む,と信じていたが,ISISの依拠する本を読み,もはや彼らのいるモスクに行かず,無神論者になりたいという.彼らはイスラムを代表しない.
地方の,貧しい若者たちがISISに引き寄せられるのは,単に,自分が支配者になれるからだ.こうした少年たちは,タバコをふかし,酒を飲み,刺青をする.その一人は女性に髪だけでなく全身を隠すhijabを着けるように求めた.それを拒めば,お前の人生を破壊できる地方の女性たちがやってきた,お前を叩くぞ,と脅した.彼は女性を支配する力を得たいのであり,イスラムは口実でしかない.
宗教改革が必要だ.しかしそれ以上のものである.イラクとシリアのイスラム国家は,経済,治安,政治を完全に破滅させた.世界に明白は善悪だけを要求する.ISISのイデオロギーに対抗するには,市民として近代の競争と繁栄を享受できるまで,権利を行使し,教育を受けられるように,長期に及ぶ投資が必要だ.
私が真理をつかんだ,という人物に反対することのできるよう,若者たちを鍛える必要がある.思想を解体し,原理主義に対する自律性を保持するような若者たちなら,自爆テロに向かう前に,それを疑い,考えただろう.
l 現代外交政策の教訓
FP NOVEMBER 18, 2014
The Top 5 Foreign Policy Lessons of
the Past 20 Years
BY
STEPHEN M. WALT
矛盾したシグナルが示される世界で,ロシア,中国,アメリカに及ぶ高慢さと権力政治の醜さをわれわれは知った.近年の政治問題と正しい外交政策を判断する原理,5つの教訓を考える.
1.大国間政治,パワー・ポリティクスは,今も重要だ.・・・冷戦が終わったとき,多くの者がパワー・ポリティクスは終わった,と述べた.例えばビル・クリントンは,パワー・ポリティクスによる計算が無意味になる,新しい時代が来た.世界は市場と,共有された民主的価値,インターネットにより統合される.そして人類は,裕福になること,生活の改善に集中するだろう,と,最初の大統領選挙で主張した.
もちろん,アメリカはパワー・ポリティクスを棄てなかった.クリントン,ジョージ・W・ブッシュ,オバマは,アメリカが世界最強の国家である地位を維持するように努めた.アメリカが「グローバルな指導力」を発揮できるのは,西半球における唯一の大国であるからだった.それがアメリカに世界中で介入する自由を与えた.彼らはそのことを理解していた.
しかし,同様に,近隣諸国にますます攻撃的な姿勢を強める中国も,ウクライナに介入したロシアも,それを理解していた.インド,トルコ,日本も,地域の大国として伝統的な地政学的関心を強めている.今も,大国間政治が外交を支配しているのだ.
2.外交政策を決めるのはローカルな政治である.・・・冷戦終結後の楽観論は,世界がグローバリゼーションによって統合され,異なる価値や歴史を持つ社会もさまざまな国際機関の下で次第に収斂し,アイデンティティ・ポリティクスは代表制の中で解決され,重要な政治問題(貿易,投資,労働基準,人権,軍備管理,マクロ経済政策)はすべてグローバルだ,と考えた.
しかし,ローカルなアイデンティティは再強化された.イスラエルとパレスチナの紛争,カタロニア,クルド,スコットランドの分離主義,ミャンマー,中国,ロシア,インド,サブサハラ・アフリカの少数民族,アフガニスタン,イラク,リビアの政府分裂,テロリズムに広がり.アメリカのメルティング・ポット神話は,それを見えにくくした.
3.ひどい国家よりもさらに悪いことは,国家がないことだ.・・・アメリカの外交政策を決めるエリートたちは,外交問題を他国の政府の邪悪さや無法さとして非難する.国際政治とは,競合する国家間の利害対立ではなく,アメリカとその同盟諸国という良い国家と,われわれに同意しない悪い国家との間の,の道義的争いである.ソビエト帝国に率いられた革命的共産主義,「悪漢国家」Iraq, Iran, Libya, Syria,
North Korea, and Serbia,がそうだ.彼らは独裁,人権蹂躙,歴史の見直し,大量破壊兵器を求めた.その解決策は,体制転換,である.悪い支配者を取り除き,住民たちの状態を改善する,アメリカと協力する政府に転換する.
しかし,その結果は,弱い,腐敗した,極度に分裂した政府であり,住民たちの状態をもっと悪化させた.全体主義的な社会に効果的な政府を建設することは,非常に難しかった.特に暴力的な体制転換の後には.貧しい,分裂した社会が,効果的な中央政府を持たず,権力の真空において最悪の過激な集団が広まった.
4.「すべてを受け入れるか,破壊するぞ」という外交は失敗する.
5.慢心,倨傲こそが,外交を誤らせる.
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The
Economist November 8th 2014
Welcome
back to Washington
American
democracy: Powering down
Japan’s
economy: Big bazookas
Japan
and Abenomics: Riding to the rescue
East
Asian firms in China: A bridge over troubled waters
Burkina
Faso: Not so pretty now
The
Berlin wall: Twenty years on
Immigration:
What have the immigrants ever done for us?
(コメント) 選挙や政治の意思決定システムを変えなければ,その国のガバナンスはますます意味を失くしてしまう,とアメリカの中間選挙,そして,アベノミクス解散が示します.
アジア諸国の政治対話が難しい中で,企業の国際投資・雇用が,その協調の不足を補っていると言えそうです.アフリカの政治を代表するブルキナファソの混乱,他方,「ベルリンの壁」後に復活した「ドイツ問題」は,政治のパワーアップを真正面から要請します.
移民を非難する小政治家たちが,経済に貢献し,財政にも貢献する移民たちの事実を知るように,ここでも新しい政治的代表・発言システムが必要です.
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IPEの想像力 11/24/14
安倍政権や日本政治の保守化が,中国外交とアメリカ国内政治からの「日本の遊離」,もしくは「有毒化」を生じ,日本の外交と成長モデルを将来において長く苦しめる,・・・100年の禍根,を残すのではないか? という予感をぬぐえません.
政治表現の多くはカバーであり,欺瞞である,と思います.日本のティーパーティ,日本のファーガソン,日本の移民政策論争はありますが,日本にはオバマがいません.
なぜ中間選挙の敗北は,オバマに妥協を促さなかったのか? なぜ安倍首相は,消費税引き上げ延期を争点に衆議院を解散したのか?
オバマ政権は共和党支配の議会と妥協し,インフラ整備や自由貿易協定で協力するのではないか,と予想されました.しかしオバマが取り上げたのは,共和党が反対する移民法改正であり,ヘーゲル国防長官の辞任(中東への軍事介入を抑制する)であり,イランとの核合意を目指すことでした.アメリカ政府は,中国とのG2を選択し,温暖化ガス排出の抑制に向けても動き始めたのです.
オバマは高い理想主義を掲げ,戦争・軍事力によって問題を解消するより,外交・理想によって問題の解決策を共有することを唱えました.既存の問題理解の枠組みを解体し,共通の利益を増やして,問題解決のメカニズムを導入するために交渉する,という姿勢は,政治に新しい情熱を与えたと思います.
しかし,米軍撤退後のイラクやアフガニスタンで治安や政治情勢が悪化し,イランとの合意や核廃絶の呼びかけが成果に至らず,ロシアや中国が周辺地域において進める秩序再編も阻止できませんでした.国内景気回復に恩恵を感じない有権者の不満を,共和党の宣伝は致命的な傷に広げました.医療保険制度改革でも,エボラ・ウィルス対策でも,オバマ攻撃が大統領の能力に関する期待を破壊することに成功したわけです.
虚偽の政治論争に敗北したオバマは,しかし反撃に転じ,国民のラディカルな政治力を喚起します.移民の国外退去を行わないという大統領指令や,ファーガソンにおける警察官の不起訴処分が引き起こした暴動は,共和党支配下の議会に圧力を強めるでしょう.オバマは自身のレガシーを問うだけでなく,これはパワー・ポリティクスです.ヒラリー・クリントンやリベラル派が保守派に対して論争を挑む,大統領選挙の舞台づくりを始めました.
安倍氏はどうか? 消費税の引き上げ延期を国民に問いたい,と主張し,アベノミクスを進めることで成長する,という方針に信任を得たい,とも言います.それを誰も信じないまま,争点の無い選挙は進みます.
アベノミクスは安倍氏の政治的主張ではありません.彼が考えたものでもありません.日銀の金融緩和がデフレ解消や構造改革に応じた刺激策・緩和剤になるかどうか,エコノミストたちは論争していますが,選挙の争点にはなりません.もし政治家が問うとしたら,その結果に関する責任です.安倍政権が国民に何をもたらしたのか? 分裂した野党の主張は定まりません.
私の印象では,安倍政権の成果とは,富裕層の利益,地価・株価回復への期待感,労働者や家計の失望感です.そして,日本の中国外交とアジア共同体構想を半世紀も後退させたのが,安倍政権でした.中国市場や中国企業との関係なしに,また,中国外交や中国の安全保障を無視して,日本が優れた成長モデルや外交を,長期的に,実現できるとは思えません.
オバマ政権は,国内の温暖化否定論者に対抗するため,中国との温暖化防止に関する合意を重視します.他方,日本政府は侵略戦争否定論者として,アメリカから問題視され,見解の違う中国や韓国との対話能力を失っています.
安倍氏のふりまく虚偽の政治論争に,ラディカルな政治力を喚起する若い政治家を見出すことが,この選挙の最大の争点です.「われわれとは誰のことか?」 と明確に問う政治家が次の指導者です.
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