ＩＰＥの果樹園2014
今週のReview
11/3-8
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民主主義と富裕層 ・・・ベルリンの壁崩壊25周年 ・・・プーチンによる国境変更 ・・・移民政策の失敗 ・・・アメリカによる金融抑圧 ・・・日本の最後のチャンス ・・・イギリス独立党の迷妄 ・・・ヨーロッパのストレステスト ・・・ブラジル大統領選挙
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT:
Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, そして、The Economist (London)
［これは英文コラムの紹介です．私の関心に従って，いくつか要点を紹介しています．関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください．著者と掲載機関の著作権に従います．］
l 民主主義と富裕層
NYT OCT. 23, 2014
Plutocrats Against Democracy
Paul
Krugman
指導者が真実を語るのはよいことだ．特に，その意図に反して語る場合．香港の行政長官Leung Chun-yingが，民主化デモがその要求を実現できない本当の理由を明白にした時もそうだ．
投票をオープンにすれば，月に1800ドル以下しか所得のない香港住民の半数が投票することになる．それが政治や政策を変えてしまうのだ，と．その政策では，富裕層はあまり豊かになれず，より所得の低い者たちを支援することになる．
Leung長官は，所得が少ない者，香港住民の半数は（悪い政策を支持するから）投票するな，と言いたいのだ．同じことを，47%の有権者が自分に投票しなかった，というMitt Romneyは述べた．なぜなら彼らは所得税を支払わず，自分の生活に責任を持たないから．また，Paul Ryan議員は，彼らが危険であるのは，政府に支払うより政府から奪う者たちだからだ，と主張する．
政治的な右派は常に民主主義を嫌う．保守派は選挙の際に自由市場のイデオロギーを叫ぶが，その本心は恐怖だ．汚れた下層階級が大規模に投票して，富裕層に課税し，貧困層に寛大な贈り物を与え，経済を破壊する，と．
ここでいう右派の多くは政治的エリートであり，アメリカ人多くが急速に経済的奴隷制に向かって下落した過去数十年間にも，全く違い世界で暮らしていた．金融規制緩和がもたらした富裕層の黄金時代を無視して，果てしない再分配がアメリカ最大の問題だ，と主張する．
それは妄想である．経済ポピュリズムは破滅を意味しない．確かに低所得層は，富裕層に比べて，自分たちに有利な政策を求め，最高税率を高くする．しかし，彼らは何もかも奪うとか，雇用の創出もできなくなる，というのは歴史に反している．1940年代以降の先進経済諸国はすべて福祉国家である．それは増税と歳出の悪循環や，ヨーロッパ経済の衰退を意味しない．
経済を破壊しないが，所得階層の上位1%ではなく，上位0.1%にとっては，その富を大きく損なう．富豪たちはどうするか？
一つは，有権者への虚偽の宣伝だ．富裕層への課税で貧困層を助けることは経済を滅ぼす，「雇用を創る」者たちへの減税こそすべての者の繁栄をもたらす．現実には，そうした約束の多くが失敗しているが，そんなことは気にしない．
もう一つは，人種やエスニックによる分断化を強めることだ．第三に，政府の計画を失敗させる．あるいは，実施を阻む．だから有権者は異なる政策による結果を知ることがない．
モッブ（愚かな群衆）に対する富裕層の戦略は，どれも間接的で，不完全だ．完璧な答えはLeung長官が示したように，下から50%には投票させない，あるいは，90%に投票させないことである．
アメリカの政治家たちは，そこまではっきりと言わない．すなわち，富裕層だけが政治的権利を持つべきだ，と．アメリカ政治の真実とは，富裕層と民主主義との戦いであることだ．
FT October 24, 2014
Democrats battle sour economic mood
Robin
Harding in New York
NYT OCT. 25, 2014
The American Dream Is Leaving
America
Nicholas
Kristof
アメリカ社会で機会をつかむ最善のエスカレーターは教育である．しかし，最近の研究によれば，それは故障している．
アメリカの若者たちは，前の世代よりも教育を受けていない．アメリカは何十億ドルンもロシアとの軍備競争に費やしているが，教育で競争するべきだ．ロシアはアメリカに代わって，工業諸国で最も多くの大学進学率を達成している．
アメリカン・ドリームの社会的・経済的な移動性を高める潤滑油が教育である．しかし，アメリカン・ドリームは外国に移住したようだ．
私の父は第2次世界大戦の難民だった．ウクライナとルーマニアを逃れて，パリに着いた．彼は完ぺきなフランスを話した．しかし，彼は，フランスが階層化された社会であり，東欧から来た無一文の難民にとって機会を得られない，まして，その子供たちが上昇する機会のないところだと感じた．そこで彼はアメリカに向かった．彼は全く英語を話せなかった．1951年，アメリカに着いたとき，手にしていたNew York Timesから英語を学び始め，Reed Collegeを経て，シカゴ大学に進み，Ph.Dを取得して大学教授になった．
彼はアメリカン・ドリームを体現したのだ．1951年には，彼の判断が正しかった．しかし，今は違うだろう．経済や教育による上昇の機会は，アメリカよりもヨーロッパの方が大きい．
19世紀の初め，アメリカのほとんどの州で，白人の大多数に対すく無料の初等教育が提供されていた．しかし，イギリスでは1870年でも，14歳のわずか2%しか教育を受けていなかった．1970年代までに大衆教育を実現したはずのアメリカが，今や19世紀のイギリスになってしまった．優れた教育をエリートに提供しながら，大衆教育は崩壊している．
エスカレーターを修理するべきだ．
FT October 30, 2014
US billionaires uncommonly good at
beating campaign money rules
Richard
McGregor in Washington
l ベルリンの壁崩壊25周年
The Guardian, Friday 24 October 2014
25 years since the Berlin Wall came
down. Now Germany must be bold
Anne
McElvoy
25年前，東ドイツからの友人とベルリンの壁の近くを散策し，ビールを飲んだ．私たちは今も，共産主義の下でビールを飲み，資本主義になってからトイレに行った，と冗談を言う．
ハンガリーがオーストリア国境に小さなアンナを開けた．ゴルバチョフが東ドイツに来て，衰弱した指導者Erich Honeckerが交代したけれど，ペレストロイカはうまく行きそうになかった．
当時，あなたは尋ねた．次になるが起きるにせよ，ベルリンの壁は残るだろう，と私は答えた．しかし，数週間後，カードの城は崩れ始め，東ドイツは消滅した．
1990年に再統一した後，長い時間がたったように思うが，Ossis and Wessis（西と東の出身者）が一緒になるのは難しかった．鉄道のサービスが統一された．そして，特に東の政治家が西に輸出された．私は今も，小さな中道右派の野党で副報道官をしていた，若いころのAngela Merkelを思い出す．うぶな，聡明な若い女性で，the Milkmaidというあだ名を得た．
結局，ドイツは「一緒に成長する」という目標を見事に達成した．安定した国として，経済パフォーマンスは悪くても労働市場の改善で雇用をもたらす，労働組合の協力で福祉を改善した．しかし，統一がもたらしたヨーロッパにおいて，決して安心はできなかった．イタリア，スペイン，ギリシャは経済統合のリスクであり，フランスの描く政治統合は夢想でしかなかった．
メルケルは，東ドイツのプロテスタント的な，超デフレ緊縮策と，ドイツ人と企業の貯蓄を促し，ユーロ圏を苦しめている．多くの点で，今のドイツはこの指導者の縮図である．ヨーロッパ最強の経済国家ではなく，地味で退屈な国であることを自慢する．確かに，2度の世界大戦を経て，60年の民主主義ではまだ十分でないのだろう．
プーチンのウクライナ介入に制裁を行使したメルケルの姿は，1989年にドレスデンでKGB工作員として，民主化運動に参加したメルケルを犯罪者リストにファイルしていたプーチンの姿を想像させる．
ドイツは，ヨーロッパの経済と安全保障を担う，自由な大国として完全に復活するべきだ．
FT October 26, 2014
Germans must show their country can
still be a force for freedom
Robert
Zoellick
1989年，ジョージ・・・ブッシュ大統領がドイツ統一を支持したのは，アメリカがヨーロッパと結ぶ長期的なパートナーとして統一ドイツを求める，戦略的なロジックがあったからだ．ドイツは，強化された統一ヨーロッパの一部でなければならなかった．
双方が，変化する世界で，新しい戦略的対話を行う時期である．ドイツは，安全保障は除くが，ヨーロッパ統合のフロンティアに位置している．アメリカはドイツの長期計画を知りたがっている．ドイツは，アメリカの資源，能力，価値観，意志が政策を満たせないと疑っている．
ドイツは，新しい30年戦争ともいわれる，ヨーロッパの変化を，政策の形成や交渉によって解決できる唯一の国だ．グローバルなパワー・シフトについてドイツのショイブレ財務大臣が示唆した．またアメリカは，ドイツがヨーロッパを超えて，アジアの問題にも役割を引き受けるのか，注目している．
戦略的な外交の展開には，大衆の支持が欠かせない．ドイツの過去に対する敏感さと，アメリカの未来に向けた姿勢が結びついて，この先1世代のパートナーシップが形成されるだろう．
FT October 26, 2014
Germany’s left should be brought in
from the cold
NYT OCT. 26, 2014
History Without Hitler?
By
TIMOTHY W. RYBACK
100年前の今週，1914年10月29日，木曜日の早朝に，ドイツ軍の前線で死にかけた兵士が，20世紀の歴史を変えることになった．その朝，アドルフ・ヒトラーはバヴァリア第16予備歩兵連隊の3000人の中にいた．ベルギー南部で，イギリス軍に向けて，ビート（砂糖大根）の畑とカラマツの森を抜けて進んでいた．
そのとき，友軍の誤爆を受けたのだ．弾丸はコートの袖を全て破り去ったが，奇跡的に，ヒトラーは無傷だった．
3週間後，ヒトラーは再びからくも死を免れた．迫撃砲が着弾したテントから，その5分前に，他の兵士3人と移動を命じられたのだ．その後の4年間，彼は足に爆弾の破片を受け，またガスで失明する危険を冒したが，死を免れた．あまりにも多くの死者をもたらす戦争における，一人の死は非常に小さいことだが．
もしヒトラーが木曜日の朝に死んでいたら，歴史はどうなっただろうか? 20世紀は? ドイツの歴史は? 「反事実的な仮定による歴史」は，間違った，無駄なことか? 現在の世界を考えるとき，こうした思考が有益である．
1919年，ヒトラーが見たドイツは，抑圧的であるが安定した王制から，できたばかりの立憲民主制に向かう移行期にあり，それはアラブの春を経たチュニジア，エジプト，しいリアに似ている．
ドイツが最初に実現したワイマール共和国は，優れた憲法を持つが，その希望と欠陥との間で動揺し，左右両派の過激な行動の犠牲となった．ミュンヘンのボルシェビキによるソビエト・バヴァリア共和国，右派によるベルリンの権力掌握，地方の軍閥が現れ，街頭でドイツ人同士が殺し合った．
「かつてあれほど秩序の整った，われわれの時代の文化を指導する諸民族の一つであった国，憲法によって自由と民主主義が保障された国が，どうしてこうなりえたのか?」と，アインシュタインの元同僚Emil Gumbelは書いた．彼は暴力の高まりを，最近の戦争による「心理的な野蛮化」，政治的殺害を称賛するニュースメディア，公的な暗殺者に目を向けない司法制度，の責任だと考えた．
元軍人で，王制の支持者，1925年の選挙で大統領となったヒンデンブルグPaul von Hindenburgは，より根本的な問題を見ていた．「民主主義的支配は民衆の必要に応えられない」と決意し，2期目の1933年2月に，ヒトラーを首相に任命したのだ．ヒンデンブルグは，ナチの指導者が共産主義の脅威を粉砕し（そして，粉砕した），（無能な）民主主義的多党制を解体し（その後，解体した），ドイツに王制を回復するだろう（しかし，回復しなかった），と考えた．ナチスを王政復古の道具に選んだのだ．
ニュルンベルグ裁判で絞首刑となる直前，Hans Frankは「総統はあの瞬間のドイツでだけ実現可能な人間であった」と述べた．10年後では，共和国が確立されていたし，10年前には王制があった．ヒトラーが登場する可能性はなかった．王制が滅び，共和制が安定しない，まさにこの時期に現れた．歴史の完璧な嵐の中で，ヒトラーは機会をものにし，ドイツと，全てのヨーロッパを，完全な破滅に投げ込んだ．
他の政治指導者であれば，何を実現したのか，確実なことは何も言えない．ヒトラーのいない歴史とは，ただ，移行期の諸社会が持つ潜在力と陥穽について，より深く考えることだろう．
Bloomberg OCT 26, 2014
How Germany Conquered Europe in 25
Years
By
Pankaj Mishra
11月9日で，ベルリンの壁崩壊から25周年である．今では，それがベルリンの復活と，ドイツがヨーロッパ最高の地位に就く出発点であったとわかる．
壁が崩壊してすぐに，ドイツの再統一が問題になった．イギリスとフランスの指導者たちはそれを心から恐れたのだ．マーガレット・サッチャーとフランソワ・ミッテランは，協力して再統一を阻止したい，と考えた．
現在，イギリスもフランスも，国内の政治不安を抱えて，指導者たちはドイツに対抗することなどできない．ドイツ自身はイスラエルからのユダヤ人移民も加わり，トルコ人やアラブ人も加えた共存の実験を進めている．国内にストライキや輸出減の経済不安や，人種差別主義，異端的な野党もできたが，一層深刻な問題は，ロシアなど，外国にある．
かつてヨーロッパの破壊者であったドイツは，ヨーロッパ救済を求められている．
l プーチンによる国境変更
FT October 24, 2014
Putin unleashes fury at US ‘follies’
Neil
Buckley
NYT OCT. 24, 2014
Russia’s Halfway House
By
MAXIM TRUDOLYUBOV
FT October 27, 2014
Ukraine, Russia and Europe’s bloody
borders
Gideon
Rachman
数年前，プーチンは当時のポーランド首相Donald Tuskに，ウクライナの分割について話した．ロシアが東部，ポーランドが西部を得る，というわけだ．それは大騒動になった．
EU内には，ロシアがウクライナ東部に侵攻した現状を受け入れ，安定化するのが良い，という強い意見がある．ウクライナ分割を支持する，いわゆる「リアリスト」の意見だ．
他方で，スウェーデンの外相を退いたばかりのCarl Bildtのような，ヨーロッパ国境の書き換えはすべて破滅的な失敗である，という意見もある．「ヨーロッパの国境線は，多かれ少なかれ，何世紀にも及ぶ流血と戦争で決められたものだ．」 それを一部でも変更することは，再び流血をもたらす．
ロシア政府は，歴史的にも文化的にも，ロシアの一部であったクリミアを併合したことを正当化して，それをウクライナにも同様に主張している．しかし，ロシアがウクライナを分割できるなら，他の者も刺激される．たとえば，ミニ・プーチンと呼ばれるハンガリーのViktor Orban首相のように，ウクライナ，スロヴァキア，セルビア，ルーマニアの国境を越えて，ハンガリーの歴史的な領土を主張する者がいる．
ロシアに甘いと言われるドイツ政府だが，国境の変更には強く反対している．ドイツ政府が，第2次世界大戦後にポーランドやロシアによって失われた領土への要求を取り下げたのは，1970年であった．そのいくつかの地域はドイツにとって中心的な土地である．たとえば，ロシアが飛び地としているKaliningradは，かつてのKönigsbergであり，ドイツの偉大な哲学者イマヌエル・カントが生まれた土地だ．
カントはかつて，行為の道義性を「普遍的な法」として判断せよ，と述べた．すなわち，同じことを万人が行うとしたら，どうなるのか? と．それに従えば，ロシアがウクライナの一部を得ることは間違いである，と理解できる．
かつて自国の領土であった隣国の土地を要求するなら，ヨーロッパ大陸の全体が震動するだろう．
Bloomberg OCT 30, 2014
Ukraine's Last Chance
By
Leonid Bershidsky
l マクドナルド
FT October 24, 2014
McDonald’s: Eating their lunch
Neil
Munshi
世界最大のチェーン・レストランである，3万5000店，年間売上280億ドルのマクドナルドが，新しい食品サービス産業が次々に登場する挑戦企業に苦戦している．人々の味覚も大きく変わった．
l BTとカフカ
FT October 24, 2014
Hello, BT automaton. Kafka here . . .
Robert
Shrimsley
あなたはだれかを証明するよう求める電話がかかってくる．
l 中国の債務累積
FT October 24, 2014
The journey from luxury to thrift
will test Beijing’s mettle
James
Kynge
債務を嫌う文化にもかかわらず，中国の債務比率が急速に増大した．それは世界金融危機の影響を緩和する必要があっただけでなく，政府による競争力改善の補助金であったからだ．住宅建設や生産設備投資が，もはや維持できないような規模に達している．ゴーストタウンや過剰設備，返済されない融資が増えてくるだろう．
貯蓄重視の生活を奢侈的な消費に変えるのは容易だが，逆転させるのは難しい．
FT October 24, 2014
Realising China’s sustainable growth
rate
Yukon
Huang
中国の成長率が3-4%に落ちるという予測が出ている．現在の7%程度を維持するために，国内民間消費や輸出だけでなく，政府支出を変えるべきだ．
Bloomberg OCT 27, 2014
It's Time to Give China Some Time
By
William Pesek
l 移民政策の失敗
FT October 24, 2014
How to close the door on an
accidental mass migration
By
David Goodhart
イギリスの移民政策は，多くの有権者が求める，移民流入の抑制と，移民のもたらす大学や経済への利益を損なうことなく，また，イギリスがEUにとどまる，という目的との間で，バランスを取ってきた．
しかし，ユーロ圏の不況が続く中で，景気が回復したイギリスへの移民が増加し，UKIP（イギリス独立党）のようなポピュリズムが高まっている．国民投票を前に，キャメロン首相はEU内の移民の自由を制限するように求めているが，それはEU離脱につながる間違った主張だ．
移民支持派は，事実を見て，排外主義を拒むように求める．しかし，移民がもたらす得失には明白な差がないだろう．むしろ，1997年以来，500万人もの移民純流入は，人々が好ましいと思う水準を超えていた．大量移民は，経済ではなく，文化や価値観を脅かす．
移民を支持するのは，大都市のリベラル派だ．社会的・地理的移動性，個人の自律，自己実現を重視し，友愛よりも平等を好む．移民に反対するのは，コミュニタリアン（共同体主義者）だ．郊外や小さな町に住み，高等教育は受けておらず，変化を嫌い，安全と継続性，平等より友愛を重視する．大都市派は主権を取引し，富を増やすために国境を管理する．共同体派は主権を全て保持するわけではないが，国境線が生存の問題であり，外国から来る移民より市民の権利を重視するように求める．
首相は冷静になって，双方の妥協点を見出すべきだ．EU市民の移住を拒むことは離脱につながる．移住権を他国で雇用のあるものに限るとか，社会保障や低所得者用住宅のサービスを，たとえば，居住して2年間は制限する，という合意なら，EU加盟諸国の合意を外交交渉によって形成できるだろう．
FT October 29, 2014
Europe’s rudderless strategy on boat
people
かつて南欧や東欧から，貧しい移民たちが命がけで大陸を移動し，新しい生活を得た．今，中東やアフリカの混乱が，地中海を超えたヨーロッパへの移民を増やしている．イタリアへの非合法移民が，昨年は6万人であったが，今年はすでに10万人を超えた．
イタリア政府が憤慨したのは，EU諸国が難民救出に協力しないからだ．2013年にLampedusa島の沖合で，難民船が沈没して366人が死亡してから，イタリア政府は人道的に難民救出作戦Mare Nostrumを続けてきた．
EUはようやく独自の救出策を打ち出したが，言い訳でしかない．イギリスのように，救出は難民を促すことになる，と反対する声もある．協力するのは，少数の国に偏っている．
EU共通の境界警備Frontexは予算が少な過ぎる．農業補助金として600億ユーロを支出しながら，Frontexの予算はわずかに1億ユーロだ．加盟諸国は難民受け入れを分担するべきだ．アフリカ諸国には，難民の非合法仲介をビジネスとする犯罪集団の取り締まりを求める．
しかし，究極的には共通の経済的繁栄を実現することが応えである．移民流出国からの輸入にEU市場を開放し，経済の発展を促す．あるいは，難民を受け入れ続けるしかない．
l 量的緩和
FT October 24, 2014
The risk that QE will generate
inequality
Bloomberg OCT 24, 2014
Here's What the Fed Will Do
By
Mohamed A. El-Erian
l マクロ経済政策
VOX 24 October 2014
Macroeconomic policy mix in the
transatlantic economy
Moreno
Bertoldi, Philip R. Lane, Valérie Rouxel-Laxton, Paolo Pesenti
VOX 30 October 2014
Reflections on the new 'Secular
Stagnation hypothesis'
Lawrence
Summers
l アメリカによる金融抑圧
Project Syndicate OCT 24, 2014
American-Made Financial Repression
ANDREW
SHENG and XIAO GENG
先日亡くなったマッキノンRonald McKinnonは，1973年に「金融抑圧」（政府が国債を減らすために金融市場から資金を流す）という概念を発表した．それは新興市場諸国の金融部門が低開発の理由を示す．
彼はその晩年，同様に画期的な概念，ドル・人民元本位制，を提唱した．彼の見るところ，この制度が金融抑圧を促し，世界の金融安定性と成長とを妨げたのだ．問題は，どうやって両国を，特にアメリカを，その特権を棄てて協力的な制度に移行させるか，ということだった．
ドルの世界支配が金融抑圧をもたらすようになったのは，歴史的な転換によるものだ．マッキノンが指摘したように，ドルが第2次世界大戦後に国際通貨になったことで，ヨーロッパやアジアの金融抑圧と分断は解消できた．それまで高いインフレ率と実質マイナス金利，過度な規制がはびこっていた．アメリカが生産的で，競争力を持つ間は，諸通貨をドルに固定することには利益があった．ドルは各国にマクロ経済の安定化にアンカーを提供して，構造的な改革を促すための財政・金融の規律を与えたからだ．
しかし，2つの攪乱がこうした利益を奪った．第1に，1971年，アメリカはドルと金の兌換を破棄した．そして人工貨幣だけに依拠した変動レート制を採用した．第2に，1980年代，90年代の「日本叩き」があった．日本の競争力をそぐための貿易制裁を脅しとして，1ドル=360円から80円へ，大幅な円高を推進した．こうした世界第2の経済がデフレと停滞に苦しんだ．
アメリカが調整を貿易相手国に強制したことで，ドルは「紛争を呼ぶ」通貨となった．日本，ドイツ，中国のように，黒字国は次々と，デフレのリスクにさらされた．それを拒むと，為替レートを「過小評価」しているという非難を浴びた．
マッキノンの解決策は，アジア諸国が共通通貨を採用して，ドルの浮動性に対抗することだ．そのため，状況によって，資本規制も採用する．人民元は年平均約3%でドルに対して増価し，経常収支黒字を抑えてきた．成長率は7%を維持したが，キャリー・トレードによる投機的な資本流入が起きた．それが中国の金融政策を制約し，金融抑圧を強めた．
アメリカは「中国叩き」を止めて，財政赤字を減らし，そうすることで中国の金融緩和と消費刺激策の余地を与えるべきだ．こうした米中間の協力が，世界の金融システムを安定化し，金融抑圧や貿易制限を解消して，成長を助ける．
FT October 26, 2014
China strives incoherently for the
‘socialist rule of law’
Rebecca
Liao
YaleGlobal, 30 October 2014
China’s Tianxia: Do All Under Heaven
Need One Arbiter?
June
Teufel Dreyer
l インド
NYT OCT. 24, 2014
Modi’s Idea of India
By
PANKAJ MISHRA
（後半へ続く）