IPEの果樹園2014
今週のReview
10/20-/25
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オバマの功罪 ・・・香港民主化運動 ・・・イスラム国家とトルコ ・・・アメリカと国際システム ・・・日本病の世界化 ・・・豊かな国の脆弱性 ・・・早熟脱工業化
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l オバマの功罪
FP OCTOBER 9, 2014
Shake It Up
BY
DAVID J. ROTHKOPF
オバマは、ドローン攻撃で主権を侵害し、NSAの諜報行為を容認し、グアンタナモを閉鎖できず、移民法の改正もしていない。気候変動の国際交渉や新興諸国の危機にも対処できていない。政権を去った安全保障・外交分野の高官たちPanetta, Robert Gates,
and Hillary Clintonは、オバマの姿勢を批判した。
David
Ignatiusは、オバマの国際面での政策的功罪を顧みて、そのスタッフの交代を示唆する。オバマ政権の外交・戦略を動かすシステムが破たんしているのだ。破滅的な第1期にもかかわらず、ジョージ・W・ブッシュは、第2期において、そのチームに重大な変更を命じた。それは主要政策の変化や同盟関係の組み替えに示され,成功した。
外交・安全保障のシステムが破たんした理由は2つある。大統領の側近たちによる影響が強くなりすぎた、いわばバブルだ。そして、大統領自身の姿勢だ。国務省と国防総省とは緊張関係にあり、矛盾した政策を示した。エジプト、ウクライナで、国務省とホワイトハウスから混乱したメッセージが届いた。ときには、ナイジェリアの誘拐された少女たちに対する、あるいは、プーチンの側近に対する、中身のないジェスチャー、単なるショーでしかなかった。
同盟諸国との関係はかつてなく低調で、プーチンやアサドのような敵は強力だ。アフリカ・サミットも、エボラ対策も、失敗している。第1期で重要政策として掲げた、中国やアジア同盟諸国との関係重視は空費された。
この政権は戦略を持たない、世界に占めるアメリカの役割に関してビジョンがない、国益を追求するために国際的にどのような行動が必要か、考えていない。優れたスタッフやアイデアが示されても、それは個性のごちゃ混ぜになっている。高官たちの混乱と裏切りのひどさは、リチャード・ニクソン政権以来だ。
オバマ自身がその失敗の一部なのである。
The Guardian, Monday 13 October 2014
Should the US have chosen Hillary
Clinton instead of Barack Obama?
Timothy
Garton Ash
救世主に何が起きたのか? 6年前、選挙に勝利した時、人々は“yes we can!”と口ずさんで、通りで踊った。ヨーロッパでも皆が彼を話題にし、いつか、歴史を振り返るとき、この日から、海面の上昇が緩和され、地球が破壊をまぬがれて治癒に向かう、と記録されるはずだった。
しかし11月4日の中間選挙で、民主党の候補者たちは誰も、オバマと一緒に並びたくない。支持率は40%の近く。ヨーロッパでは誰も話題にしない。
確かに任期はまだ2年あるが、彼にとって重要な課題に取り組むことは終わった。髪は白く、孤立して、疲れた話し方をする。まるでゴルフコースにいるみたいだ。
オバマが、1945年以後のもっとも困難な時代を過ごした大統領であるのは確かだ。1930年代以来の最悪の金融危機、ブッシュが残した破滅的な、不必要な戦争、両極化し、献金にまみれて、機能しない議会を抱えた政治システム、さらに、1000年に1度のようなグローバルなパワー・シフト。
一つ、興味深い疑問が浮かぶ。2008年の大統領選挙で、有権者は順序を間違えたのではないか?
アメリカ史上、最初の女性大統領ではなく、黒人大統領を人々は選んだ。しかし、2人を比べて、当時のクリントンのほうが政府を率いる経験や強い意志を持っていたように思う。2016年では、彼女はもう69歳だ。そしてクリントン政権で、オバマは上院議員として、また2期目の国務長官や副大統領として経験を積み、この危険な世界に挑戦する力を養うべきではなかったか?
歴史に、もし、が許されるなら。
l 香港民主化運動
FT October 10, 2014
Ten days that shook Hong Kong
David
Pilling
雨傘と黄色のリボンがシンボルだ.レ・ミゼラブルから“Do You Hear the People
Sing?”の歌を,革命賛歌として広東語で歌う.それは挫折した学生蜂起のバリケードから歌ったものだ.催涙ガスを防ぐボロボロの雨傘.そのイメージは,北京で戦車に立ち向かった男と同様に,圧倒的な権力に挑戦する彼らの理想主義にふさわしい.何万もの学生たちが,商業と金融の町を祝祭とコミューンに変え,そして暴徒鎮圧部隊や暴力集団に攻撃される中で,戦場に変えた.
これはヨーロッパの「カラー革命」(東欧の社会主義体制崩壊)ではない.われわれは民主主義を求める市民運動だ.香港学生連合の副議長Lester Shumは言う.
700万人の香港の学生たちが,14億人に近い人口を支配する北京の共産党政権に対抗する,という,この運動のパラドックスを示している.彼らの怒りの標的は行政長官CY Leungだが,その背後の一党支配体制にも向かう.北京政府は,イギリス植民地支配の幻想に耽る未熟な大学生たちの,完全な民主主義の実験,など許すつもりはない.
普通選挙への要求が強まった背景は,香港の変化が人々の深刻な不満,未来への不安を高めていることだ.中国の影響力が増し,香港住民は生活スタイルを脅かされている.ガードマンの男性は,“Not Made in China”というロゴ入りTシャツを着ている.中国からの資金流入が不動産の価格を,香港住民の手の届かない,異常な水準に高めたことへの不満が強い.
政治への圧力は何年も前から高まっていた.Occupy Central with Love
and Peaceは,市民的不服従の運動が以前から準備してきたものだ.それは10月初めに開始するはずだった.しかし,中年世代の指導者たちが驚いたことに,17歳の学生Joshua Wongが9月26日に先頭に立って,政府庁舎に集まった.それは25年前の天安門に似ている.香港の中心部は,世界でも高度に集約された高層ビル群であり,大銀行や富裕層の住宅が創る影の中で,学生たちのデモ隊はキャンプした.
刺激スプレーや催涙ガスで攻撃された学生たちは,傘とゴーグルだけで防御した.暴動鎮圧として世界中の多くの都市で行われているが,香港では衝撃的な野蛮さとみなされた.そして,多くの人々が学生たちに同情し,デモに参加したのだ.
もし彼らがそれを革命と思うのであれば,それは歴史上の最も礼儀正しい革命である.これほど多くの「どうぞ」と「ありがとう」を占拠地区で聞くことはないだろう.デモ隊はゴミも片づけた.水やバナナ,冷やしタオルが手渡された.雨が降れば誰かが傘を差し掛け,記者たちの筆記が中断されないように助けた.
香港は中国だが,中国の他の都市とは異なる.報道の自由,ソーシャル・メディアは閉鎖されていない.Joshua Wongが逮捕されても,48時間以内に釈放された.「私は学生たちと,現状を変えようとする彼らの情熱に,深く感謝している」と教師のJo Tongは語った.41歳のフリーランス・ライターは言った.「このストライキが経済に損害を与えるのはわかっているが,私にとって,正義,自由,平和は,金よりも重要だ.」
政府庁舎の前にキャンプする14歳のClarence Ngは,もし警察が攻勢に出たら,学生たちは対抗するべきか? と訊かれた.彼は躊躇なく答えた.「いや.彼らは家に帰るべきだ.対抗するのは危険すぎる.」 そして言った.「われわれは若い.未来はわれわれのものだ.将来,われわれは登場し,再び声を上げる.」
NYT OCT. 11, 2014
Leader Taps Into Chinese Classics in
Seeking to Cement Power
By
CHRIS BUCKLEY
習近平は,その改革を正当化するとき,共産党のこれまでの指導者たちを引用するだけでなく,5000年をさかのぼり,中国の古典に依拠しようとする.特に,儒教の復活と,韓非や商鞅のような法家の思想を重視する.
西洋の思想ではなく,ガバナンスと統治に関して,中国の古典的な知識から多くの有益なことが学べる,と主張する.戦国時代の法家は,マキャヴェリさえも手ぬるいと思われる助言を示し,恐怖によって秦の帝国を築いた.
2年前に権力を確立して以来,習近平は,反体制派,少数民族の反乱,官僚の汚職,外国との領土紛争,に関わってきた.また共産党は,香港における民主的選挙の要求を拒み,2週間に及ぶ街頭デモを反中国の外国勢力が扇動した無法行為と非難する.
習が,毛沢東や鄧小平だけでなく,儒教などの伝統的価値を復活させるのは,国民の懐古的な時代精神を吸収するためである.そして,商業が広まり,不平等が拡大して,論争が顕著になった時代を,習の政策も再現しているからである.
FT October 12, 2014
Beijing and Hong Kong protesters
poles apart on lessons to be drawn
By
Jamil Anderlini in Beijing
香港市民や西側の希望に反して,習とその同志たちが香港により大きな自由を与える見込みはない.ある高官は,大衆に自由を与えても,彼らはより大きな自由をほしがるだけだ,と述べた.最初から何も与えない方が良い.
世界で最も厳しいメディア・教育・世論の管理体制を敷く国が歴史を解釈するとき,それは世界の見方と大きく相違する.
ソ連崩壊はシステムの内的な矛盾によって避けがたいものであった,と西側の人々は考える.しかし習は,必要なことをできる人間がいなかったからだ,と考える.1989年の天安門事件を念頭に,ソ連崩壊はゴルバチョフの自由化政策と「外国勢力」(特にアメリカ)の介入に責任があった,というのだ.
また,香港の民主化はイギリスの植民地であった155年間に何も進まなかった,と主張する.しかし,現在の香港の自由と民主主義が共産党の善意によって実現している,と主張するのは間違いだ.
イギリス外務省の公開した資料は,1950年代に香港で民主化を問題にしたとき,中国の指導者たちは激しく反対した.そして,軍事侵攻を含む,いかなる手段も取る意志を示した.当時の周恩来首相が,中国は香港の現状維持を求め,香港の自治に向かういかなる行為も「非友好的」とみなす,と警告した.1960年代,70年代の試みにも同様に反対した.
Project Syndicate OCT 15, 2014
China’s Choice
WONG
CHIN-HUAT
中央集権体制は中国を2000年間も支配してきた.その体制に反対する者は秩序を乱す危険なものとみなされた.挑戦者は,結局,自身の王国を築き,帝国の王座を奪った.
19世紀後半まで,支配エリートの一族は権力闘争に敗れた後,処刑されるのが普通だった.それゆえ指導者たちは政府や地域の紛争を協力して対処することがなかった.中華帝国では官僚が国家試験の成績で登用され,地域の利害を代表することではなかった.地方官僚も,中央政府の利益に奉仕することで評価され,地域のコミュニティーを代表しなかった.
なぜ香港人はイギリス植民地支配下で選挙を強く要求したことがないのに,中国により指名された行政長官には突如として反対したのか? と中国政府は感じる.その答えは,香港人は忠誠心を欠き,外国の影響や資金を受け取っているからだ,となる.そして,1989年の天安門広場で取ったような,野蛮な弾圧策を選択するかもしれない.
しかし,参考にするべき正しい基準は,いわゆる228虐殺(事件),である.1947年2月28日に,台湾で,中華民国は反政府抗議を弾圧した.香港と同様に,台湾は外国支配下で近代化した後,汚職と権力の乱用に満ちた中国へ再統合された.虐殺は,台湾独立運動に向かう出発点となった.
香港の民主派は,軍事力や経済的基礎がないことを知っており,独立を求めていない.しかし,もし暴力によって弾圧すれば,分離・独立を主張している,という北京の強硬派が示す警告は自己実現するだろう.
幸い,暴力的弾圧以外の選択肢がある.デモは静観することで勢いを失うだろう.ただし,さまざまな記念日に若い世代がデモに参加している.
他の選択肢は,香港の政治システムを変えることだ.北京は,香港の自由選挙で地方に陜慮奥菜指導者が誕生することを懸念しているとしたら,議会システムを導入するべきだ.地域の比例代表制は,民主派と政府支持者の間に分裂し,連立政権しか実現できない.しかも香港経済が中国に大きく依存していることを知っているから,地方政府が中央の権威に完全に敵対することは不可能である.
中国は,香港の改革を通じて政府間紛争を制御する仕方を学ぶだろう.グローバルな大国として,中国が代表政治を否定し続けることは非現実的である.
l イスラム国家とトルコ
FT October 14, 2014
Erdogan’s final chance to make peace
with the Kurds
David
Gardner
中東を覆うさまざまな危機に対して,トルコが安定のアンカーであり,イスラム近代化のモデルとなる,と長く期待されてきた.しかし,Recep Tayyip Erdoganの強権体制は,その平和外交がクルド人の国家を誕生させる危険を感じて後退し始めた.それが注目されたのは,シリアとの国境線を超えたKobaniで,イスラム国家の攻勢が強まったからだ.
Erdoganは,トルコ軍を派遣することでクルド人を救出し,和解に進むべきだ.彼が望んだように,クルド人の自治区がトルコとイラク北部で結び付きを深め,トルコの影響圏拡大となるだろう.しかし,もしKobaniの崩壊と虐殺を容認するなら,トルコ自身の分裂に向かうだろう.
l アメリカと国際システム
NYT OCT. 11, 2014
I.S. = Invasive Species
Thomas
L. Friedman
地政学的変化やグローバリゼーションを考えるとき,私は自然界の説明を利用する.アメリカ国立植物園のウェブサイトに有益な説明がある.
「侵入植物が繁茂することは,自然のエコシステム維持を危険にさらす.それは建設現場や道路による切断された場所でよくみられる.」
ISISが用いる言葉は,イラクにもシリアにもなかったものだ.ISISが繁茂したのは,その土地の人々が繰り返し侵略や混乱に苦しんだからだ.
われわれは軍事訓練や武器供与を過大評価し,アラブでもアフガニスタンでも住民たちが求めているものは過小評価している.それは好ましい,正当なガバナンス,である.
将軍に訊けば知っている.あるいは,庭師に訊け.
FT October 13, 2014
America, Britain and the perils of
empire
Gideon
Rachman
1919年のイギリス政府も多くの戦争に関わっていた.その多くは,Afghanistan, Waziristan, Iraqのような地域である.当時の外務秘書官AJ Balfourは,文明化を望まない少数の人々を文明化するために,われわれは財源と兵士を使い尽くすだろう,と不平を述べた.
第1の教訓は,政治家の能力よりも,イギリスが直面した問題の手に負えない性格が重要だ.利用できる資源には限界があった.
第2に,財源が枯渇し,国民が戦争に疲れていれば,世界の警察官を務めるのは非常に困難だ.
第3に,紛争地域が異常に重なっているのは,その文化や地理が永久に政治不安と戦争をもたらす,リスクの多い地域がある,ということだ.
第4に,1919年の政府混乱は世界が新しい不安定性に向かう兆候であった.それは新しい世界大戦に至った.グローバルな大国が支配力を失い始めると,世界急速に秩序を失う.
l 日本病の世界化
FT October 13, 2014
If you believe the bond markets, we
are all Japanese now
By
Peter Tasker
日本がバブル崩壊後の異常な低金利を経験していたとき,それは次第に正常に戻ると考えられた.しかし,むしろ逆のことが起きた.世界の債券市場は,世界経済が不幸な日本の経路をたどっていることを示している.
どこでも成長の見込みは低下し,低インフレが続いている.日本の政策ミスから学んで,金融機関の処理を急ぎ,財政赤字にこだわらず,超低金利を活かして刺激策を取るべきだ.
l 豊かな国の脆弱性
Project Syndicate OCT 13, 2014
The Age of Vulnerability
JOSEPH
E. STIGLITZ
アメリカのGDPは増加したが,分配は不平等化し,人々は賃金の低下や資産価値の喪失,職場の安定性を失った.人々は地位の低下に直面しても,回復することが難しい状況にある.
GDPによって経済システムの評価を行うのは間違いだ.
健康や教育も考慮した国連のHuman Development Report 2014によれば,アメリカは,ノルウェー,オーストラリア,スイス,オランダに次いで,第5位である.不平等を考慮すれば,アメリカは第23位に大きく低下する.このような急激な低下は他の先進諸国に見られない.ギリシャやスロヴァキアに劣る.
l 早熟脱工業化
Project Syndicate OCT 13, 2014
Are Services the New Manufactures?
DANI
RODRIK
発展途上諸国の「キャッチアップ」による高成長は続くのか? 「輸出市場工業化」による成長は今後も可能か?
サービス部門の成長に依拠した新しい成長モデルが提起されたが,生産性の高いサービス部門で労働力を吸収する力には疑問がある.発展途上国が成長と雇用,分配を実現する途は,工業化がグローバル・ヴァリュー・チェーンに組み込まれ,中国があまりにも急激に生産力を拡大したことで,閉ざされた.
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The
Economist October 4th 2014
The
party v the people
Hong
Kong protesters: No exit
The
world economy: Wealth without workers, workers without wealth
Special
Report: The third great wave
Gaza
after the war: A sea of despair
Commodity
prices: Oil and trouble
The
history of inequality: Breaking the camel’s back
(コメント) 街頭デモに訴えなくても、住民たちがその意見を政治に反映できる政治的仕組みを、北京は見出す必要がある、と記事は主張します。その通りです。
香港の若者たちは、北京との結びつきを持つ者が重視され、中国本土の大学出身者が就職でき、メディアが北京の政策を強く批判せず、不動産価格が上昇しても十分な対策を取らない行政府に、不満です。セントラル選挙運動を、一気に加速した、高校生の学生運動指導者がNYTのビデオで語る情熱に、きっと感銘を受けるでしょう。
特集記事は、情報革命、インターネット革命、ロボットによる労働者の代替が進む世界経済です。しかし、同じ世界には、戦争後のガザに見るような、絶望的政治状況があります。
講義で扱う、国際的不平等の拡大や国際商品価格の循環的変動が、現在の私たちの経済にも決定的な影響を及ぼしていることが記事になっています。
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IPEの想像力 10/20/14
技術革新があまりにも大きな波であることに、私たちは不安を感じます。情報処理・通信・輸送(ICT)の能力が労働をどのように変えるのか? また,国家や国際システムにどのような変容を求めているのか?
コンピューターの処理能力は,1988年から2003年の間に,4300万倍に増大した,とErik Bryniolfsson and Andrew McAfeeは推定します.人間にしかできないと期待された,たとえば,専門医による診断や複雑な手術も,離婚専門弁護士の仕事も,コンピューター化されるでしょう.
かつて、機械化が進む工場に不安を覚えた労働者や研究者たちは、労働の未来を構想しました。労働時間を、たとえば、1日6時間、週3日に短縮する。社会的な共通資本(住宅・都市)を充実させる。芸術家や自然愛好家として自由な労働を増やす。
今では、コンピューターやロボットが人間の労働力に代替します.かつて産業革命が人間の筋力を石炭と蒸気機関に代えたように,より広い分野で,より高度な知識や対応を必要とする職場でも,急速に人間の機会は失われてしまう・・・❓
コンピューターの能力が急激に高まれば,無人運転自動車のように,ロボットはますます多くの職場で人間を追い出します。通信や輸送がますます低コストになって,生産者と、新しいアイデア,消費者とを直接に結びつけ、それは多くの人々に雇用や所得の機会を拡大しつつ、同時に、他の多くの人々から機会を奪います.
しかも、それは職業と能力の両極化を進め,低賃金や労働の強化、より多くの富を創造しながら、より少数の者しかそれを得られない時代が来る、と予想されます。もしそうであれば、富を得られない、機会を奪われる人々が強く反対するでしょう。技術の普及には、分配や社会関係,政治システムにも改革が必要なのです。
また、国際的なネットワークの中で、発展途上諸国の工業化が難しくなる、いわゆる「早期脱工業化」の危険があります。これから工業化する発展途上国は、日本や韓国、中国のように、フルセットで工業力を形成できなくなります。それは雇用や所得の全般的な上昇をもたらさず、投資や資産の海外移転、政治不安、移民・難民、など、国際システムを不安定化するかもしれません.
つまり,技術革新が普及し,その優れた効果を実現する過程には,社会制度や政策の革新,国家やガバナンスの姿を大きく変える必要があります.もちろん,それは素晴らしいことです.新しい雇用が十分に提供され,社会の平等性や安定性を維持できるなら.
新しい時代の自由貿易派として、The Economistは、国家が国内の雇用や産業を維持するために、間違った規制や保護を増やすことに反対し、そのような政治家に警戒します。政府は技術の普及を助け、その社会的なコストを抑えるように、教育や所得の機会、雇用構造の転換を支援するよう求めます。
1.グローバリゼーションが新しい需要と供給との関係を創り出す.アフリカのスラムからでも、中国やインドの需要にこたえる商品を売る。
2.高等教育がインターネットによって普及する.大学教育の利用者は一気に増え、低廉化し、新しいアイデアをグローバルに製品化・企業化する。
3.革新や移行を促すベーシック・インカムを認める。雇用が十分に提供できなくても、国家は保護や規制に頼らず、基本的な生活を保障する社会契約に向かう。
国家は何を求められているのか? 政府に何ができるか? 社会保障システムの拡大と改革.教育・雇用機会の改善.サービスも含めた貿易の自由化.富の分配に対する政治的介入.あるいは,富の社会化とベーシック・インカム.
社会的に豊かで、人々の政治意識の高揚を吸収できる頑健なシステム(新しいリヴァイアサン)だけが、コンピューター、インターネット、ロボットに依拠した、人間的労働と文明の未来です。
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