IPEの果樹園2014

今週のReview

10/13-/11

 

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成長回復をめぐる神学論争 ・・・雨傘革命の転換点 ・・・中東への軍事介入 ・・・中国経済の動揺と模索 ・・・イギリスの分権化 ・・・火山とロボットの国 ・・・アメリカ衰退論の中身 ・・・北朝鮮で何か ・・・資本移動の対策

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  成長回復をめぐる神学論争

Project Syndicate OCT 3, 2014

The New Philosophers

HAROLD JAMES

オーストラリアのG20財務相サミットで、アメリカのJack Lewは、ヨーロッパの「異なる思想」を批判した。それはヨーロッパの不況対策に関する不満を示すものだ。

ECBMario Draghi総裁も、ドイツのような財政基盤の強い国に刺激策を求めた。世界の多くの国はドイツが財政刺激策をとるべきだと考えている。しかし、ドイツ人や、北欧諸国、おそらく中国人エコノミストは、それに冷淡だ。なぜなら刺激策というのは、もっと大きな額を求める声につながり、財政再建を無効にする、と思うからだ。

刺激か緊縮か、という論争は繰り返し行われた。1970年代、80年代、アメリカとドイツ、日本は、世界経済の機関車役に関して議論した。しかし、論争は利害関心の差であって、「思想・哲学」の違いではなかった。アメリカは追加の需要を求め、独日は輸出産業を守ろうとしていた。

論争が、公平さや責任に関するイデオロギー的な疑問、で対立すれば、すべてのものに最善の結果を目指す実際的な見通しがなくなってしまう。アメリカ人とヨーロッパ人は、単に世界観が違うだけでなく、全く異なる世界に住むのだ。

プラトンとアリストテレスとは1000年も対立する論争を残し、カント派と功利主義との対立は数世紀に及ぶ。2003年のイラク戦争はその後の世界政治を拘束した。

近代の民主的政治過程・構造は、哲学的論争に向いていない。民主主義は異なる利害関心に取引を促し、妥協を組み合わせて一般的に受け入れられる解決策を示す。G20が機能するには、政治、経済、安全保障などの関心を共有し、そうした問題を持ち込まないことが重要だ。

確かに、異なる哲学の間でも合意は不可能ではない。16世紀初めに、宗教改革でプロテスタントのMartin Lutherと正統派カソリックの神学者Johannes Eckとが論争した。現代では、1944年のブレトンウッズ会議がそうだ。専門家たちは新しい政治・経済秩序を創造したのだ。

ECBの論争は、長期的な財政再建を妨げないような、刺激策の余地を示そうとしている。それは新しい国際協調を可能にするだろう。政治過程で大西洋間の協力が止まる中で、アメリカ連銀とECBは政策を革新して景気回復を模索した。ECBはその基礎に立って、知的・哲学的な融合を目指している。

しかし、中央銀行のこうした役割は反動を招く危険がある。解決策は論争を招き、非民主的であるからだ。それはまたあまりにも複雑で、成功しそうにない。ミクロな改革を前提にすると失望に終わり、逆効果でもある。古い哲学の違いが再浮上するのだ。


l  雨傘革命の転換点

NYT OCT. 3, 2014

Hong Kong’s Great Test

By MARTIN LEE

76歳になって,私は香港で催涙ガスを浴びるとは思わなかった.完全装備の暴動鎮圧部隊で民主化を支持する群衆を政府が処理しようとしたことに,私は衝撃を受けた.

抗議活動は続いた.人々は,一旦,催涙ガスから逃げたが,さらに抗議を強め,警官隊の攻撃は危機を拡大し,彼らの決意を強めた.その多くはまだ投票権も持たない若者たちだったが,われわれの自由を守ろうとした.

暴動鎮圧部隊が事態を静観する姿勢に転じた月曜日には,街頭に人々があふれ,一種のお祭りのようになった.Leung Chun-yingが辞任を拒む記者会見をしたとき,緊張が高まったが,香港の人々には余裕があった.

なぜ我々は抗議するのか?

それは,これが香港の重要な価値を守る最後の砦であるからだ.中国から長く分離されていた香港には,法の支配,出版の自由,良い統治,司法の独立,基本的人権の擁護,という価値があり,北京の強権によって脅かされている.

われわれは孤立して勝利できない.1997年に北京も約束した価値を守るためには,多国籍企業や世界の民主主義諸国が,香港を支援することだ.ワシントンとロンドンは,もっと香港の人々を支持するべきだ.

私は2つのシナリオを恐れる.1つは,北京が衝突を避けて,事態を鎮静化するためにちっぽけな褒美をデモ隊に与え,国際社会に成果を喧伝することだ.そしてデモは力を失う.

もっと悪いのは,北京が世界による監視を無意味だと考え,弾圧を決定することだ.数週間の弱い抗議しかないだろう,と.

世界は中国がグローバル社会の責任あるメンバーかどうか,見守っている.香港はその重要なテストである.

FT October 6, 2014

Hong Kong should focus its fight on the tycoon economy

By Joe Studwell

幸い,抗議のデモ隊は政府庁舎に入らなかった.そうなっていたら,北京は中国国家への攻撃とみなしただろう.

香港が必要としているのは,習近平国家主席を追い詰めることではない.彼の心に共鳴させることだ.抗議デモは香港の富裕層に,香港の反競争的,反消費者的な仕組みに焦点を向けるべきだろう.

香港は自由市場だ,と,ヘリティージ財団のように,思っているとしたら,それは間違いだ.最も裕福な少数者のためにある「フィッシュ・スープ」なのだ.多くの人々は貧しく,不満を強め,汚染された環境に生きる.

あらゆるところにカルテルがある.スーパーマーケットの2社独占,ドラッグストアも2社独占,バスのカルテル,電力の2社独占,コンテナの積み下ろし港,その利用料金は世界最高だ.そして,特に「4家族」が支配する建設業だ.住宅市場は空前の水準にある.株式市場,ガバナンス,税制,何でも富裕層に有利だ.

1989年以後,共産党は都市貧困層への再分配を進めたが,香港は何もしていない.習の推進する反汚職,反独占の運動は,香港でこそ必要だ.

だから抗議デモは,習の理解する言葉で要求し,超富裕層を懲らしめる平和的な戦術を採用するのだ.そして,できるなら,カルテルを粉砕する.

香港の大富豪たちは死滅するか? 決してそうはならない.彼らは脅威的な企業家精神を持つ者たちだ.経済の変化に適応し,価値を生み出す方法を見出す.

多数者のための香港が始まる.習が香港の問題をよく理解すれば,政治的な解決策はあるはずだ.そして2022年には,より開放的な選挙も実現するだろう.


l  中東への軍事介入

FT October 3, 2014

The war on Isis defies logic

Gideon Rachman

「なぜ皆が軍事力の行使を熱望するのか?」 と,オバマは不満を述べた.誰かがワシントンのオフィスで,自分は強い,と思いたいから軍事力を行使する,というのは間違いだ.

しかし,それから数か月して,オバマはイスラム国家への空爆を始めた.その短期的な目標が達成できるだろう.空爆はヤジディ教徒を守り,Mosulダムから聖戦主義者を引き離す.しかし,より広範な空爆で中東の情勢を改善することはできないし,むしろ事態の悪化も懸念される.

将来の混乱を予期させるものに,リビアの現状がある.人道的な危機に対して西側が空爆で介入した.3年前にカダフィMuammer Gaddafiは殺されたが,今もリビアは暴力のカオスにある.地域の,アルカイダとも連携すると思われるイスラム主義武装組織がトリポリを支配し,政府は避難した.イスラム主義者に中東の首都を支配されないように空爆する,という議論は,リビアで起きていることを無視している.

西側は地上軍を派遣したくないし,国家再建にも関わりたくなかった.NATOが空爆した後,リビア自身の国内勢力に委ねた結果が,この混沌である.

ISISを撃退したとしても,その後の中東に明確な政治的ビジョンはない.権力の真空を埋める,信頼できる政治勢力は見当たらない.

イラク政府がその姿勢を変えるという約束も,信頼できないだろう.シリアでは,ISISと戦う意味では協力できるアサド政権を,西側は退陣するように求めてきた.国民を虐殺する政権と手を組むことは考えたくないのだ.他方,シリアの穏健派反政府勢力は,アメリカが武器援助や訓練を行っているが,まだ役に立たない.

西側には選択肢がなくなった.イラクには大規模な侵攻と国家再建を試みて失敗した.リビアでは空爆だけで,国家再建をしなかった.シリアでは空爆もしなかった.いずれのケースも結果は政治的な崩壊である.

空爆の宣言は楽観や興奮をもたらした.それはいつものことだ.残念だが,その後の失望も避けられないだろう.


l  中国経済の動揺と模索

Project Syndicate OCT 6, 2014

China’s Financial Floodgates

JOSÉ ANTONIO OCAMPO and KEVIN P. GALLAGHER

高成長を続けた中国で,資本勘定の自由化によって成長の減速を逆転させる誘惑に,人民元の国際化を望む政府が負けるかもしれない.

しかし,新興諸国の経験は,資本自由化がマクロ経済の不安定化につながったことを示している.国際資本移動は景気変動を増幅する傾向が強い.IMFも,今ではその姿勢を変えて,資本自由化には,その計画,タイミング,順序が問題であり,コストより利益が上回るような国内金融市場と規制を求めている.

新興諸国だけでなく,日本やユーロ圏の経験も,資本移動がマクロ政策を難しくすることを教えている.中国は漸進的な,プラグマティックな改革による成長に成功してきた.資本自由化も急いではならない.

Project Syndicate OCT 8, 2014

China’s Balancing Act

ADAIR TURNER

中国の成長減速は,短期的に,世界経済に対する最大の脅威である.

政府の目標である7.5%の成長実現より,この2-3年で金融危機や不況を招かず構造転換することが重要だ.2008年の金融危機後,中国は成長を維持するために大きな信用膨張(GDP150%から250%へ)を生じた.雇用の創出は,不動産や建設部門に大きく依存している.

信用膨張に依存するほど,無駄な投資,不良債権の累積,金融危機のリスクが高まる.幸い,中国の人口転換は労働市場で賃金の引き上げを促し,社会的緊張を緩和する雇用のブームに役立つだろう.債務や不動産に依拠した高成長を抑えられる.

債務の膨張を処理するとき不況が起きる.しかし中国は特殊である,と言われる.第1に,政府部門が大きい.第2に,財政的な刺激策の余地がある.それでも,深刻なリスクが残されている.

政府は市場の力を取り入れると主張している.すなわち,金利を自由化し,債務超過の銀行を救済せず,資本勘定を自由化する.それは債務を減らすために需要が減少する経済にとって,破滅を促す条件だ.

構造転換を進める中国は,債務削減の影響を緩和する財政刺激策を活用し,金融自由化の前に銀行の不良債権を処理しておかねばならない.


l  イギリスの分権化

Project Syndicate OCT 9, 2014

The Evolution of Devolution

BARRY EICHENGREEN

スコットランドの独立は否決されたが,イギリスが一層の地方分権に向かうのは避けられない.ウェールズも,北アイルランドも,同じである.しかし,地方分権はさらに進むのではないか? ヨークシャーは? イングランドの地方はどうか?

悲観することはない.アメリカを見れば,全く異なる経済規模や政治制度でも,50の異なる州が機能している.カナダやオーストラリアもそうだ.

何を学ぶべきか?

まず,中央政府もしくは連邦政府は,十分な財政基盤を保持しなければならない.防衛や外交だけでなく,主要な経済政策を実施できなければならない.

例えば銀行システムを監督し,もし銀行が危機になれば,アメリカの連邦預金保険公社のように,これを救済する財源を確保できる(アメリカ財務省が融資する)ことだ.財源の主要部分を地方に移譲することは間違いである.その場合,銀行同盟は救済のための財源を持たず,ユーロ圏の失敗を再現する.

アメリカでは社会政策を各州に分権化している.しかし,そのような地方政策も連邦が監視している.

また,各州の政府が財政赤字を増やして中央政府からの財政移転を求める傾向は,財政均衡に関するルールに合意しておくことだ.地方政府の債務と財政赤字に制限を設けることは,各州が政策を放棄することを意味しない.しかし,ユーロ圏のように,財政均衡を課すことで,財政政策が景気変動を増幅するのは間違いだ.

地方分権を恐れることはない.しかし,分権化してはならないもの,機能が失われるものを,知っておくことが重要だ.


l  火山とロボットの国

Bloomberg OCT 3, 2014

Japan's Tragic Wake-Up Call

By William Pesek

日本の御嶽山が噴火し,昨日,47番目の遺体が発見された.90マイルしか離れていない,さらに大きな火山が噴火する可能性もある.富士山だ.開発の進んだ世界で最も地震が多い国として,日本が本当に48基の原発を茶華道しなければならないのか,真剣に再考するべきだ,と地震学者も反原発活動家も主張する.

反対派の一人として,安倍晋三首相が原子力産業を育成する姿勢だけでなく,12600万人の安全のために日本経済の将来が重要だ.

御嶽山の悲劇は,火山帯の上に位置する不幸だけでなく,それを豊富な自然資源とみなす可能性も示している.中国やインドは大気汚染で窒息しかかっているが,日本はエネルギー需要を,水力や風力,最も重要なものとして地熱エネルギーで満たすことができるからだ.

かつて安倍の盟友でありながら,今では反原発を唱える小泉元首相は,「専門家は御嶽山が噴火することを警告しなかった.」という.「地震,津波,噴火が日本中で起きるのだから,原発を持ってはいけない.」

日本は環境学者や地熱学者の助言を聞くべきだ.2012年,孫正義はthe Japan Renewable Energy Foundationに学者を招き,日本のエネルギー政策を転換しようとした.20125月には,ワシントンのGeothermal Energy Associationが,日本は23000メガワットを地熱発電できる,と報告した.

しかし,安倍政権は資金を理由に否定した.アメリカでは企業と政府の癒着が,日本では原子力業界が反対した.しかも,エネルギー価格の引き下げはアベノミクスの一つの柱であった.

小泉が主張するように,グリーン・エネルギー革命は,量的緩和や円安,財政刺激策にできないこととして,新しい経済・環境システムを創造し,富と雇用,グローバルな称賛を集められる.

2020年の東京オリンピックに加えて,大規模に再生可能エネルギーに投資すれば,日本経済の未来は非常に明るく,活気に満ちているだろう.御嶽山はそのチャンスを与えてくれたはずだ.


l  アメリカ衰退論の中身

Project Syndicate OCT 6, 2014

America’s Overrated Decline

JOSEPH S. NYE

アメリカの政治は行き詰まり,指導力は失われていくのか? 確かに主要政党間のイデオロギー対立は深まったが,第111議会は,財政刺激策,社会保障,金融規制,軍縮条約,同性愛者の軍務,に関して法案を通過させた.

イデオロギー対立はこれまでもあった.アメリカ憲法は,政治が分裂してチェック・アンド・バランスが働き,市民の自由を政府が侵さないように求めている.

アメリカの制度に関する信頼の低下は,民主主義やアメリカへの強い支持と同時に起きている.それは人々の姿勢が変化したことを示す.連邦政府より,州政府や地域社会の協力を好むのだ.

連邦制度への信頼が高かったのは,大不況から脱出し,第2次世界大戦に勝利した時代である.それに比べて,1960年代後半と1970年代に信頼が大きく失われた.それはアメリカだけの問題ではない.また,新興経済の登場で世界経済への「超越的パワー」を失うのは当然だ.

ローマ帝国の衰退と同一視するべきではない.


l  北朝鮮で何か

FP OCTOBER 8, 2014

Why We Should Hope Kim Jong Un Returns From His Mysterious Absence

BY ISAAC STONE FISH

キムジョンウンKim Jong Un金正恩が姿を消してすでに36日になる.病気か? クーデタか? それは世界にとって良いことか?

北朝鮮の最も危険な側面は,その行動が予測できないことだ.金正恩も,その側近や家族も,西側はほとんど情報を持っていない.北京が最も多く接触しており,北京から情報を得られるが,それは偏っている.

金体制が崩壊することは,長期的には望ましい.朝鮮半島は再統一され,北朝鮮のガバナンスは改善する.しかし,短期的には韓国の経済負担だけでなく,難民流出が中国に,核兵器や核物質のテロ組織への流出はアメリカに,大きなリスクをもたらす.

何かが起きているようだ.北朝鮮の幹部3人が,104日,韓国を訪問した.

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The Economist September 20th 2014

Mission relaunched

The British constitution: Now for the English question

Corporate savings in Asia: A $2.5 trillion problem

Germany’s economy: Three illusions

Ukraine in turmoil: A Somalia scenario?

Devolution and nationalism: Let England shake

Devolution to cities: Devo Manc

(コメント) スコットランド住民投票の結果を受けて,関連記事が多く載っています.地域分権から分離独立への動きをどう見るか,むしろ,連合王国の仕組みを問い直すことに論争を挑みます.

経済活動や政治的意思決定がロンドンに集中することを,スコットランドやウェールズはどのように考えるのか? アイルランドは一部を除いて独立し,イングランドはスコットランドやウェールズのような独自の議会を持たず,マンチェスターのような都市は周辺自治体と統合した地方の政治体を結成しています.

政治的統合に正しい答えはなく,歴史的な経緯と地域のアイデンティティ,経済的な有効性,などが繰り返し制度的な合意を問い直します.

日本と韓国の企業が保有する過剰な貯蓄,ドイツ経済が過信する経済モデルについて,経済過程の不均衡を悪化させている点を直視した改革を求めています.

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IPEの想像力 10/13/14

The Economistに,オバマの風刺漫画が載っていました.

「世界は耐えられない.少数の行為がわれわれの集団的な未来を暗くしている.」

「われわれは戦うための国際的な連携を育て,世界に対する脅威に立ち向かう.」

「協調した行動によって,われわれの意図は達成できる.これらの卑劣な悪魔どもを弱らせ,消滅させるのだ.」 ・・・背後に映るのは,図:世界の主要な温暖化ガス排出国=インド・中国・アメリカ.

「・・・絵が違うだろう・・・!?

そう,オバマはとても忙しい.多分,忙しすぎる,と思います.

雑誌の表紙には,空爆の使命を帯びた操縦士の制服姿で、ヘルメットを抱えたオバマが描かれ,軍事介入の再開を(おそらく)祝福しています.やるしかないだろうが,成功は難しく,任期中には終わらない使命である,と.

アメリカ経済の再建を掲げて,アフガニスタンやイラクの戦場からアメリカ兵を帰還させることがオバマの公約でした.そのアフガニスタンでは,大統領選挙後の内紛がようやく収拾され,他方,イラクの宗派間戦争も,首相の交代という形で,何とか,宥和に向かうと期待されます.

オバマは,西アフリカのエボラ・ウィルスが感染を拡大する諸国にも,アメリカ軍を派遣しました.すでにスペインやアメリカで,帰国した関係者からもエボラ・ウィルスの感染が確認され,隔離されています.

オバマが成立させた医療保険制度も,すべての州が採用しておらず,その費用や効果については強い批判があります.金融機関の救済によっても,景気回復は弱く,人々は生活水準の悪化や雇用の不安を大統領の失敗とみなします.量的緩和は大胆に進められましたが,反対も多く,金融制度の規制と強化には成果がなかった,として,次のバブルが懸念されています.

メキシコとの国境には,ホンジュラスなど,中米からの難民が増えて,特に,未成年者の保護に苦慮しています.移民排斥を掲げる国境の町には自警団が組織され,境界の要塞化が進みます.移民に関する法・制度改革も,自由貿易圏も,アメリカ経済にとって死活的に重要な問題ですが,オバマはイスラム国家と対抗し,戦闘服で登場する方を優先しました.

多くの目標と限られた手段,特に,財政再建は,たとえ国際通貨を発行できるアメリカでも必要です.小国なら,通貨危機や財務危機が指導者の選択肢をさらに制約するでしょう.それでも指導者は政治的な優先順位を決め,その資源を配置します.

国内の安定した支持があれば,指導者の選択の余地は広がります.オバマや習近平から,スコットランドが独立したときの首相にまで,共通して,より多くの雇用,より平等な分配,賃金の上昇,産業の更新・転換に向けて,優れたビジョンを描くことが求められます.

連休中,マクドナルド,ユニクロ,アマゾンにお世話になりました.ハンバーガーを買ったり,靴下やパンツ,本を買ったりしたわけです.次々に客が入ってくるし,レジはいっぱいです.日本の経済が低迷しているのは,こうした企業が少ないからでしょう.

彼らに共通しているのは,ヘッドセットをして働いていることです.お昼のマクドナルドは殺気立つほどの忙しさです.作業が細部まで合理化され,さまざまな備品が配置された中で,スタッフたちはディスプレイをにらみ,キーを叩きます.

原材料や労働力,生産,流通,販売がグローバル化し,緊密に管理されていることを感じます.アマゾンの倉庫で働く労働者たちが,アメリカの裁判所で,セキュリティー・チェックの時間も労働時間として計算するかどうか,争っているそうです.それは,かつて鉱山で地上から採掘現場までリフトに乗って移動する時間が争われたことと同じだ,という記事を読みました.

炭鉱労働者たちのように,下請け企業や派遣労働者の就労システムが組織する,こうした見えない労働者たちは,若く,有能で,限界まで合理化された仕事をこなしても,厳しい世界労働市場の条件にさらされています.企業の利益は労働者や国民の利益につながっていない,と思います.

御嶽山の噴火と地熱発電とを結びつけたW. Pesekの論説に賛同します。化石燃料でも、原子力でもない、地熱エネルギーの利用を促進して、日本政府は技術開発やインフラ整備を図ってほしいです。そして、日本の再生可能エネルギーと技術で北京の空を清浄化できたら、中国経済の成長や習近平政権の安定化、日中協力の重要な柱になるはずです。

ガバナンスは競争しています.香港でも,シリアでも,ブラジルでも,朝鮮半島でも.

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