IPEの果樹園2014

今週のReview

9/22-27

 

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スコットランド独立をめぐって ・・・オバマの中東介入 ・・・国際金融システム改革 ・・・賃金の低迷 ・・・G20サミット

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  スコットランド独立をめぐって

NYT SEPT. 11, 2014

Auchtermuchty to England

Roger Cohen

「保守党なんてスコットランドに雷鳥を撃ちに来るだけじゃないか?

英首相David Cameronは,保守党員の一人として,責めを負うべきだ.スコットランド人にとって,彼は,生まれついての金持ちの一人であり,パン1斤の値段も知らない連中だ.地方のことなど関心がない,金にまみれたロンドンのシンボルだ.

スコットランドは,スカンジナヴィア型の社会民主主義を望んでいる.それはウィスキーのできるノルウェーだ.

世論調査で独立反対派の優勢は消えてしまい,Cameronの自信は消滅した.ポンドの価値は急落している.

FT September 12, 2014

What happens after a Yes vote will shock the Scots

Martin Wolf

どれほど穏和に始まっても,その交渉は厳しく,容易にまとまらない.

金曜日に悪夢が始まるかもしれない.僅差で独立が決まった場合だ.南では保守党のキャメロン首相が,307年に及ぶ安定した連合を破壊した責任を問われている.しかし,イングランドだけの方が保守党には有利だ.野党である労働党にはそんな慰めもない.スコットランドのナショナリズムはイングランドのナショナリズムを刺激する.それはイギリス独立党に有利だ.彼らはイングランドのEU離脱を主張する.この離婚したカップルは友人であるだろうが,当然,よそよそしい.

独立支持派が勝利した瞬間から,UK(イングランド連合政府)はスコットランドの福祉に関心を失う.しかしスコットランドが独立するまで,UK政府は交渉を主催し,しかも,スコットランドに対して自分たちの利益を主張する.

それは不確実な時代の始まりだ.中でも通貨が問題である.金融ビジネスを保障し,規制しているUKが失われる.スコットランドの預金保険は無価値になり,レイキャビク式の金融危機に向かうかもしれない.慎重なスコットランド人であれば,彼らは預金を南に移すだろう.

スコットランドの銀行が不確実さを抑えるためには,スコットランド内部で収支を合わせなければならず,融資を減らすことになる.預金の移動を抑えるように資本規制には反対が強いだろう.通貨危機に対する保証を与えるとしたら,それはUKではなく,スコットランド政府になるが,そのコストに耐えられない.

スコットランドはポンドを使用し続けるというが,それは銀行同盟と意味が違う.残ったUKが銀行同盟を採用するには国民投票が必要だ.それを支持するとしても,スコットランドの財政赤字には厳しい条件を付けるだろう.金融規制もイングランド銀行が決定する.それはUKに対してのみ責任を負うのだ.

銀行同盟なしにスコットランドがポンドを使用する場合,イングランド銀行の支援は得られない.スコットランドは通貨供給に見合うポンドの準備を確保し,そのために資本流入と輸入を超える輸出を増やす必要がある.しかしそれは,長い間,してこなかったことだ.しかも,ユーロ危機が示したように,自国通貨を自由に発行できない国は,危機に際して国債市場を安定化できない.スコットランドの債務はGDP90%に達するが,Ireland, Portugal and Spainはもっと低い水準で危機に陥った.

スコットランド自治政府のAlex Salmond首相は,UKが銀行同盟を受け入れない場合,UK債務(のスコットランド部分)を引き受けない,と主張した.それもあるが,独立支持派が勝利すれば,何もかもを交渉によって決めるしかない.例えば,UKと合意できるまでは北海油田の収入も確定しないのだ.

スコットランドがEUに加盟することも前提してはいけない.スペインは自国の分離独立派を抑えるために反対するはずだし,もし加盟するにも,為替レートメカニズムに参加する必要がある.それは自国通貨や中央銀行を意味し,ポンドを維持することができない.では独自通貨をどうやって開始するのか? 年金や他の給付の支払をどうするのか?

こうした交渉は複雑で,苦渋に満ち,長期に及ぶだろう.そして交渉が終わるとき,イギリス人はこのような離脱を選択した者を嫌い,スコットランド人は自分たちの権利と思っていたものが得られなかったと気づく.UKは消えて,深く分裂した島に代わるのだ.

スコットランドは産業を失いたくなかったらUKより高い税率を採用できないと知る.国際の金利は高くなる.つまり,財政はもっと緊縮的になるのだ.

僅差で独立反対派が勝利した場合も,将来,住民投票が繰り返されるだけだ.それくらいなら,分離した方が良い.そして,あとはSalmondに委ねよう.

NYT SEPT. 14, 2014

Scots Must Vote Nae

By NIALL FERGUSON

スコットランドは植民地独立の最後ではない.スコットランドとイングランドは対等に合併した.

スコットランドの王室がイングランドを吸収したのだ.スコットランド人の王様を頂くことをイングランド人が受け入れやすいように,「グレイト・ブリテン」と称した.

スコットランドは1999年に独自の議会を回復し,多くの権限を委譲され,自治を高めた.半分の独立国を得たのだ.なぜ完全に独立しないのか?

経済問題のリスクは大きいだろう.通貨も,債務も,北海油田も.独立が決まれば投資は失われ,大企業がイングランドに流出する.雇用が失われる.

しかし,経済的な困難を指摘しても,独立賛成派は意見を変えないだろう.その感情は理解できる.

彼らを説得するとしたら,ナショナリズムではなく,スコットランドの長い伝統であるコスモポリタニズムに訴えることだ.ヨーロッパには多くのナショナリズムが大陸を分割して苦しめたが,スコットランドは例外であった.

Bloomberg SEPT 14, 2014

Scots Aren't the Only Angry Bunch

By Pankaj Mishra

今週,UKは国土の3分の1,人口の8%を失うかもしれない.そしておそらく,その首相も.以前から予測されていたイラクの分割より,イギリスの分割を国連安保理は恐れることになった.

それは長期の変化であった.Jason Cowleythe New Statesmanの編集者)は,1980年代のサッチャーによる民営化,規制緩和,不公平な課税が,スコットランドのナショナリストよりも独立を促した,と述べている.その脱工業化は,イングランド以上にスコットランドで強い影響を生じたからだ.それゆえ保守党はスコットランドでほぼ消滅してしまった.

また多くのスコットランド人は,サッチャーの継承者を自認し,シティに取り入るばかりのトニー・ブレアが指導する労働党も嫌いだった.その前衛的な市場主義,特に国民健康保険制度NHSの民営化に反対した.

2者択一の住民投票を認めたキャメロンの無責任さも責められているが,イングランド分裂は世界的趨勢の一部である.公正な成長や福祉を実現できない政府は,どこでも支配の正当性を致命的なまでに失っている.

20世紀前半,自治権の要求は無能なガバナンスや主権喪失,愚かな戦争や経済危機まで,政治的な分解の序章であった.1900年には予想もしなかったことだが,清王朝,ハプスブルク帝国,オスマントルコ帝国が,1918年には崩壊していた.

グローバリゼーション,近代的な教育,工業化,都市化,識字率を高め,大衆消費をもたらした中央集権的な国民国家の政治システムが,その後の1世紀で機能しなくなった.

かつて他人日義理の富裕層を豊かにした工業資本主義は国民全体に福祉の向上を実現することで社会的な合意を得ていたが,20世紀前半と同様,グローバリゼーションは国民の連帯感と忠誠心を損なった.携帯電話の普及は,効率的な市場や国民的統一をもたらすだけでなく,分離主義の要求も強めるだろう.

腐敗した政治システムに満ちた現代の世界でも,その正当性は失われ,内部からのアナーキーな革命によって一気に崩壊する脆弱性が増している.破たん国家と破綻しつつある国家が消滅する世界で,スコットランド住民投票は各地のさらなる地震を予告した.

FT SEPTEMBER 15, 2014

This is a very bad time to break up Britain

Gideon Rachman

最近まで,スコットランドが独立するとは思わなかった.しかし,今やそれが現実になりそうだ.私は動転した.世界がますます危険な場所になっているときに,イギリスを分割するとは,なんと不適当なことか.

住民投票は,私のアイデンティティーや安全がいかに強くイギリスの国籍と結びついているか,気づかせた.移民の子供であるから,私は入国書類に,ロンドン生まれ,イギリス人,と書くとき,いつも感謝と喜びを感じる.私の先祖たちはそうではなかった.祖父母は東欧の異なる国から南アフリカに,ホロコーストの直前,移住した移民たちであった.アパルトヘイトの国で子供を育てることを嫌い,彼らは再び移住した.私は子供たちが同じ国で生まれたことを個人的な勝利と感じている.

世界各地に旅行するたびに,私はイギリスの安定性を感じる.先週はウクライナで過ごしたが,世界の安全な場所に戻ることができる自分の幸運を感じた.イギリスは,20世紀のヨーロッパ大陸と違い,さまざまな熱狂的政治に染まらなかった.

スコットランド人がイングランド人を,社会正義をかえりみず,偏狭で,戦争が好きだ,と非難するのを聞くとき,私は憤慨する.それは私が経験したこと,イングランドに受け入れられた何百万人の移民たちが経験したことと矛盾するからだ.

スコットランドのナショナリズムに対するこの感覚はイングランドに広まっている.これまで住民投票と独立交渉は冷静に受け入れられてきたが,急速に醜悪なものに変わるかもしれない.僅差で独立が否定されても,境界の両側に不満と怨嗟が残るだろう.

国際環境がこの数十年間で最悪のときに,私は独立の意味を考える.プーチン大統領は核兵器を自慢し,2週間でキエフを征服できると述べた.これに対してEUは弱く,分裂している.アメリカはあまり関わりたくない.フランス大統領選挙では,極右候補が最高の支持率を得ている.中東ではイラクの広大な領域をカルト集団が支配し,シリアでは内戦が続く.今年,すでに無数の難民がヨーロッパの海岸に着いた.

しかし,スコットランドではロンドンまでしか外交・国際情勢の議論がない.スコットランドは「違法な戦争」を始めないし,「核兵器を撤去させる」というだけだ.そしてウクライナも独立の際に核兵器を撤去し,それを大いに悔やんでいる.ヨーロッパの安全保障問題に言及する者は,脅迫だ,と黙らされる.

もし独立すれば,スコットランドのナショナリストたちは,「トーリーの紳士たち」よりもっとひどい,危険な連中が世界には多くいることを知るだろう.しかし,それに気づいたときには手遅れだ.誇りあるスコットランド人で,NATO司令官であったGeorge Robertsonは誇張でなく述べた.世界の「暗黒の諸勢力は」それ(独立)を歓迎するだろう,と.

FP SEPTEMBER 17, 2014

What Economists Don't Understand About Scots

BY DANIEL ALTMAN

スコットランドは独立するべきか? エコノミストたちは答えを知っているという.人々はなぜ彼らの言うことを聞かないのか?

ポンドを維持するという考えを棄てるべきだ,とPaul Krugmanは言う.スコットランドの資源に頼るのは不確実さが大きすぎる,とBarry Eichengreenはいう.もっと人々に投資を促し,EUが独立の不確実さを抑えるべきだ,とJoseph Stiglitzはいう.EUUKの代わりにならない,とAdam Posenは言う.EUNATOはスコットランドの独立と加盟を直ちに承認するべきだ,とJeffrey Sachsは言う.

スコットランド人はエコノミストの助言を聞かないだろう.そんな例は世界中にある.

たとえば日本人は,778%という関税をかけてコメの輸入を阻止する.それでも20世紀に貿易に依存して成長したのだ.コメ農家は日本の体の一部,社会構造に組み込まれているのだろう.

フランスの労働市場もそうだ.雇用の安定性は国民に保障された資格と思っているから,たとえそれが新しい雇用を妨げ,失業を増やすとしても,変える気はない.あるいは韓国だ.その繁栄する経済にとっても南北再統一のコストは耐え難いほど大きい.それでも彼らは再統一を願う.

スコットランドの独立も,同様に,経済学を超えた問題だ.エコノミストたちは,限られた知的領域を知るだけで,社会学も,スコットランド文化も知らない.彼らが経済学の表彰台に乗ったからと言って,市井のスコットランド市民の意見よりも聞くべきだろうか? そんな必要はない.

スコットランド人は,共和国が良いとか,ヨーロッパと緊密に統合したいとか,文化が違うとか,左派の政治傾向が強いとか,さまざまな理由で独立を支持するだろう.


l  オバマの中東介入

NYT SEPT. 16, 2014

Take a Deep Breath

Thomas L. Friedman

この戦いは,われわれの戦争なのか? 彼らの戦争なのか? なぜこれほど急に,これほど強く,われわれはISISを恐れるようになったのか?

これは中東におけるバランス・オブ・パワー(サウジアラビア,イラン,トルコ)を変える戦争だ.アメリカが介入しなければ,彼らは自分で戦うだろう.アメリカが介入すれば,彼らはそれが何を意味するか疑い,戦わずに様子を見る.

これはイスラム圏の戦争だ.イスラム圏では,これまでサウジアラビアが石油の富を使ってサラフィストと政治取引を結んできた.サウジは地域の政治を支配し,サラフィストには資金や寺院建設を支援して,彼らの宗教支配を拡大する.アルカイダやISISもその一部だ.

サウジアラビアはサラフィストとの合意を破棄するしかない.そして政治と宗教の改革を進めることだ.


l  国際金融システム改革

VOX 15 September 2014

Restoring financial stability with economic growth

James Boughton

国際金融システムがうまく働いていないから,改革は強く求められている.

特に,2009年に合意したIMF改革をアメリカ議会が承認することは非常に重要だ.それは旧勢力(ヨーロッパ)から新興勢力へのパワーの再配分を意味する.

各地域における金融機関もIMFと一致して行動することが必要だ,それはチェンマイ・イニシアティブやEUが合意したことで前進している.

さらに必要な改革としては,第1に,SDRを利用してIMFに独自の金融資産を創出させることだ.USドルに代わって,SDRが国際金融システムの主要準備資産になる.またSDRに人民元を組み込むべきだ.さらに重要な政治的意味を持つのは,過剰な準備資産をSDRに交換できる代替口座を設けることだ.これはアメリカを含む主要国の政治的合意を必要とする.

2に,IMFと非公式な国際協力との関係を確立することだ.かつて,G5G24が重要な役割を果たしたが,今ではG20が世界経済の変化するバランスを反映している.そして,IMFの政策をG20が決定するようになった.

1980年ころから,雇用と成長の実現ではなく,金融安定性が追及されて,私はそれを「新しいアングロサクソン・コンセンサス」と呼んだ.皮肉にもその政策が安定性を損なったのだ.

2009年からは,金融活動の規制や国境を越える金融取引に規制が強化されるようになった.それに従って,かつて完全雇用と金融的安定性とを実現するためマクロ政策を協調した戦後の政治的関与を,政府は回復する必要がある.


l  ECBとヨーロッパ政府

VOX 12 September 2014

Is the ECB doing QE?

Charles Wyplosz

ECBが発表した量的緩和は,アメリカ,イギリス,日本と違って,需要によって制約される.ユーロ債の発行やその保有者はドイツの金融機関が多い.ユーロ圏の政府債をECBが購入することには反対が強い.

それでもECBの量的緩和が成功するとしたら,債券売買が損をしないようにECBがリスクを取るからであり,それがユーロ安による輸出を刺激するからだ.その結果,銀行がリスク回避を弱め,融資が増えることが一層の通貨供給につながる.


l  賃金の低迷

FT September 18, 2014

Pay pressure

By Chris Giles, Sarah O’Connor and Ben McLannahan

賃金が停滞する時代に,どうすれば賃金を引き上げることができるのか? 不満は高まり,政治的な軋轢,長期の経済停滞という懸念を生じている.その打開策に関する合意はない.

政治的な左派では,Joseph Stiglitzは,即座胃に需要刺激策を実施し,最低賃金を引き上げることを支持する.しかし右派では,Dierdre McCloskeyが市場の規制に反対する.

グローバリゼーションに対して,社会的な利益の点で,ベイシック・インカムを支持する者もある.


l  G20サミット

Project Syndicate SEP 16, 2014

The G-20 to the Rescue?

WAYNE SWAN

G20のブリスベーン・サミットが開催される.オーストラリア政府は世界経済の構造的な問題にも注目し,財政的な刺激策を協調するべきだ.

ところが政府は事態を良好な推移に委ねる姿勢を取り,G5による合意形成に戻るような気配を示し,広範な国際協調を軽視している.それが発展途上諸国やアジア地域の関心を失わせる.

政府の積極的な行動で世界経済の停滞を打破するべきだが,オーストラリア政府の否定的な姿勢がそれを妨げる.

Project Syndicate SEP 17, 2014

The System is Working

DANIEL W. DREZNER

G20サミットが開催される.グローバル・ガバナンスの失敗を嘆くことが習慣となっているが,それは間違いだ.2008年の不況を緩和する点で,グローバルな経済秩序は有効に機能した.

過去の世界的な景気後退に比べて,世界経済は強く回復し,貿易や投資は数年で危機前の水準を超え,世界の貧困は減少している.なぜ世界経済やシステムが失敗したという間違った認識が強いのか?

多くの評論家たちが経済学や経済政策の現実を知らず,国際政治に重点を置いている.そして「通貨戦争」といった発言に振り回される.

また,集団的な誤解は彼らのノスタルジアにある.第2次世界大戦後の指導者や国際機関を懐かしがる.しかし,現実には過去の国際機関も多くの障害に苦しんだ.

国際秩序のアドヴァイザーたちは西側に多い.回復が遅いのは世界経済ではなく,西側の諸国である.そしてその原因は国内にある.それにもかかわらず,彼らの理解は自分達の周りの環境に支配されている.

システムの機能を妨げるのは,むしろ彼らの間違った認識である.

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The Economist August 30th 2014

The criminalization of American business

The euro zone: That sinking feeling (again)

India in Asia: Eastern promises

State-owned Enterprises: Fixing China Inc

Germany’s economy: Watching the wages

Japan’s bond market: Quantitative freezing

(コメント) アメリカ,ユーロ圏,インドのもたらす不安と機会が考察されています.アメリカの司法当局が国境を越えて企業の行動を監視し,裁判所ではなく経営者との秘密交渉で莫大な課徴金を得る,というのは,新しい秩序に向かうリヴァイアサンの兆候かもしれません.ユーロ圏の経済政策やインドの外交も同様です.

中国の国有企業,ドイツの賃金による調整メカニズム,日本の金融政策は,経済成長を維持するために市場と国家が関係する新しい仕組みを模索しています.

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IPEの想像力 9/22/14

国家について,最近のニュースで特に関心を集めたのは,イスラム国家とスコットランド独立問題でした.

イスラム国家のニュースは,英米人の捕虜を斬首する,その狂信と野蛮さを強調しています.他方,The Economistの記事は,外国から参加している戦闘員の推定を示します.近隣のチュニジア,サウジアラビア,ヨルダンから2000人以上が参加し,フランス,オーストリア,ベルギー,などからも数百人が参加しています.参加した若者の声は,私たちの社会に広まる不満と強烈な信仰心との結び付きを示します.

スコットランド独立を阻止したのは,独自の国家,特に通貨を持つことの難しさでした.独立は否定されましたが,ロンドンの指導者たちが約束した「自治権拡大」の流れは止められません.EUを離脱するより,イギリス自身がEUに似てくるわけです.

ウクライナ危機をめぐって,国境を変更し,戦争のルールを変えた,プーチンの強硬姿勢が,国連安保理を機能不全にするかもしれません.アメリカにも,EUにも,NATOにも否定できない,威信を求める国家の横暴は,世界各地に伝染します.

国際政策協調の意味は,常に,変化し続けています.それは深く,広く,複雑な網の目にくさびを打ち込む,豪胆な指導者たちを求めています.

豊かな大国も,長期の停滞や失業を懸念しています.G20が世界需要の回復策を模索しました.ドイツの賃金上昇は国際収支の不均衡をユーロ圏内で調整するかもしれません.他方,日銀の国債購入が民間市場を抑圧してしまうことが懸念されます.オバマ大統領は,イスラム国家への掃討作戦を国際協調として実現したがっています.また,エボラ・ウィルスの感染拡大を阻止するため,アメリカ軍を派遣しました.

中央アジアの複雑さは,小国の安定を難しくします.かつてソ連に侵攻され,タリバンに占領され,アメリカに侵攻されて,その後,NATOの占領下で安定化を模索してきたアフガニスタンは,大統領選挙による平和的な政権移行を実現できませんでした.アメリカ軍とNATOが撤退し,タリバンが復活することを,パキスタンだけでなく,インドや中国,トルコ,ロシア,イラン,なども加わった,安定的な政治秩序に組み込むことが求められています.

しかし,どうやって? 政治や外交の秘術は,危機を新しい秩序に転換するとき発揮されます.ガニの経歴に驚きました.アシュラフ・ガニ大統領と,アブドラ・アブドラ行政長官,という体制の下,彼らが秘術を尽くすことを予感します.

アリババが株式公開によって集めた資金27000億円は,技術革新や,関連分野で企業買収と経営合理化に使われるのでしょう.それは世界のIT分野だけでなく,中国経済の変貌も加速します.国連サミットに合わせて,気候変動を抑え,化石燃料からの転換を求める30万人のデモが起き,日本では,赤トンボが農薬のせいで急激に減少している,という記事を読みました.

新しいリヴァイアサンの誕生は,まだ,多くの混沌とした苦しみの過程にあります.

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鈴木英治の時代小説が面白いことに気づいて,とても喜んでいます.小説家というのは偉い,と思います.架空の世界を描くために細部を書き込み,架空の人物を動かして感情や言葉のわずかな差異で陰影を創り出す.描きこまれた季節や職業に,何か惹かれるものを隠しています.

「勝手にフルマラソン」,挑戦しました.なんとか42キロ余りを走破しましたが,実際は,30キロの壁に打ちのめされ,脚や腰,背中の痛みをぼやき,終盤はほとんど歩いていたのです.

9.6キロのコースを4周して,さらに4キロを,5時間19分でフィニッシュです.確かに目標タイムは5時間10分でしたが,これはゆっくり走ることが目標であり,要するに,失敗です.まだ体が付いて行かなかった,と反省しています.

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