IPEの果樹園2014

今週のReview

9/8-13

 

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フランスの内閣改造 ・・・スコットランド独立と通貨 ・・・外交と秩序 ・・・ウクライナ危機 ・・・中国の国内問題 ・・・NATOの再生 ・・・香港の選挙 ・・・ISIS空爆 ・・・ECBの量的緩和 ・・・アメリカの白人問題 ・・・モディと安倍 ・・・チャーター・シティ

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  フランスの内閣改造

NYT AUG. 28, 2014

The Fall of France

Paul Krugman

2012年からフランス大統領であるオランドFrançois Hollandeは,選挙運動で,ヨーロッパ経済の早期の回復を損なった緊縮策に反対していた.緊縮策の知的な根拠は弱く,すぐに破たんしたから,彼は政策転換を推進する諸国の指導者になるはずだった.ところが政権を執ると,すぐに態度を改め,一層の緊縮を主張するようになった.

しかし,まったくの腰抜けだ,と言うわけではない.オランドは決意を示した行動も取るが,残念ながら経済政策の転換についてではない.ドイツやEUの緊縮策に抵抗した閣僚を追放することに力を示す.

それがどれほど間違っているか理解するには,ヨーロッパ経済の低迷と,フランス経済の間違った悪評を知る必要がある.

アメリカと同様に,2008年の金融危機から回復することを模索するユーロ圏・18か国は,2010年に債務危機を経験し,債権諸国が,政府支出削減や税率引き上げにより,労働者家族に厳しい条件を強いた.しかも,ドイツなどの黒字諸国は,こうした緊縮策による需要不足を補う拡大策をまったく取らなかった.ECBも,アメリカ連銀やイングランド銀行のような,劇的な民間支出促進策を採用しなかった.

その結果,ヨーロッパ経済の回復は2011年まで遅れ,完全な回復は訪れていない.あらゆる兆候から見て,ヨーロッパは日本型のデフレの罠に向かっている.

ところがニュースは全く違ったフランスを伝えている.それは政治的な動機を疑わせる.高い税金と規制で,フランス経済は機能しない,というのだ.数字はそれと矛盾する.ヨーロッパの平均よりも優れた成長を示し,黒字のオランドより優れている.巨額の貿易赤字もないし,金利は低い.

フランス社会党の指導者として,オランドはこうした政治的なフランス非難を信じてしまったように見える.さらに,財政赤字と緊縮策,不況,財政赤字,という悪循環に自ら陥っているのだ.他方,ドイツは今も「財政再建と成長は矛盾しない」という,手におえない反応を示している.拡大的な緊縮策などない,という経験を無視するのだ.

ヨーロッパは緊縮策を打破する指導者を求めている.オランドがそうなるはずだった.

FT August 29, 2014

France: Rock bottom

By Hugh Carnegy

The Observer, Saturday 30 August 2014

France is in turmoil as advocates of austerity and investment fight it out

Will Hutton

先週の月曜日,Manuel Valls首相が辞任した.オランド大統領は,党内左派との共存を放棄し,左派・反ドイツ・反グローバリゼーションのArnaud Montebourgを,ビジネス界の好むロスチャイルド風ソーシャル・リベラル派のEmmanuel Macronに交替させた.こうして露骨にビジネス寄りの第2Valls内閣を指名したのだ.

1930年代型の不況を克服することによって第2Valls内閣の評価が決まることは明らかだ.EU,ドイツ,ECB,銀行家,金融界に対する非難が高まっている.それは経済の問題にとどまらない.ドイツの再統一により,それ以前は西ドイツとのパートナーシップがフランスに重要な政治的優位を与えていたEU運営の条件は失われた.

右派の分裂も左派に劣らない.その中で,フランスの次の大統領が,極右・国民戦線のマリー・ル・ペンMarine Le Penになる可能性がある.VallsMacronの内閣が景気回復に失敗すれば,ル・ペンの率いるフランスがEUを離脱し,EU崩壊に至るだろう.そのときヨーロッパは,近隣窮乏化政策に走り,競争的切り下げ,保護貿易,不況を激化させる.ユーロ懐疑論者たちが,勝利という破滅を実現する.

内閣の辞任は,先週のArnaud Montebourgによる演説が発端であった.彼は大統領候補者選挙で3位になった実力者である.彼は,フランス製品のための戦いを唱え,若い投資家たちを「第3次産業革命のサンキュロット」と呼んだ.彼らを自由貿易や無慈悲な金融界の「見えざる敵」から国家が守り,育てるべきだ,と.そしてルイ14世の宰相にちなんで,「参加型コルベール主義」"participative colbertism"を唱えた.

経済大臣の我慢は147日で切れた.論敵たちが唱える,ヨーロッパを停滞に閉じ込めている「ドイツ右派」の緊縮信仰に,Montebourgは立ち向かってきた.これに対してVallsは「彼か,自分か」という選択をオランドに求めた.新しく経済大臣になったMacronは,社会党の「週35時間労働」のような主張をまじないとして軽蔑していた.2年前に,「金持ちは嫌いだ」,「真の敵は金融界だ」と言っていたオランドの変化は驚くほどである.

フランスにはイギリス以上に多くの多国籍企業があり,その経営者たちが世界市場でフランスのシェアを拡大している.旧技術に企業は投資しない.不確実さも多い.労働市場の弾力性を求めて労働組合と衝突し,あるいは,参加型コルベール主義を試みても,投資は起きない.それは停滞に終わる.

VallsMacron2つのことをしなければならない.そのEU寄り,ドイツ寄りの姿勢を利用して,ドイツにECBの金融的拡大策を支持させること.ECBは銀行システムを再建し,政府の財政刺激策を支援する.また彼らは新サンキュロットを支援する洗練された方法を開発しなければならない.雇用や解雇は必要に応じて行えるが,労働者や企業家のリスクを緩和することだ.要するに,福祉システム,労働市場,技術革新システム,それら全てを改革することよって,資本主義的で,しかも労働者にやさしいシステムを実現することだ.

社会的なリベラリズムとは,そういう意味である.

NYT SEPT. 3, 2014

Franco-German Decoupling

Sylvie Kauffmann

オランド大統領は3人の閣僚を追放した.それは経営者同盟から大喝采を受けた.「私は経営者たちを愛する」と,社会主義者の大統領は宣言した.

しかし,その背後には,900キロ離れたドイツからの影響があったのだ.

今やフランス経済のますます多くの分野をドイツが決定する.内閣改造が起きたのも,左派の大臣Arnaud Montebourgがインタビューで,緊縮策についてドイツを非難したからだ.それは何も目新しいことではないが,フランス政府はパートナーであるドイツ政府を批判しない,という警戒線を破った.

しかし,ユーロ危機は両国によるEU推進のエンジンに明らかな亀裂を生じ,カップルは解消された.ドイツのシュレーダー首相が危機の前に改革を進め,他方,フランスは競争力を失ってヨーロッパのダイナミズムを損なっている.同じ改革でも,ヨーロッパ経済が成長していた時期と今とでは困難の度合いが大きく異なる.

ドイツの経済紙Handelsblatt“The French Patient”と言う記事で “the economic decline of what used to be a proud nation.” と書いた.Der Spiegel誌も “A Tour of France: Examining the New Sick Man of Europe,” を載せた.

オランド大統領は,南欧諸国と連携してドイツの緊縮策に抵抗したが失敗し,次に,閣内の左派にはメルケルを批判させ,自分はドイツとの同盟を重視する姿勢を示したが,(ドイツに緊縮策を緩和させるのは)成功しなかった.

オランドはドイツから譲歩を得ることをあきらめていない.同時に,ドイツも単独でEUを指導することを恐れている.特に,ウクライナ危機のように,外交や安全保障ではフランスとの協力姿勢が重要だ.

Bloomberg SEP 4, 2014

Europe's German Problem

Clive Crook

EUの見せ掛けと能力との差がこれほど開いたのは初めてだ.その責任はドイツにある.・・・それはフェアではない? 金融危機はアメリカが悪いし,ウクライナ危機はプーチンのせいだ.

しかし,EUの経済政策は明らかに間違った.特に,ドイツのインフレ嫌いがヨーロッパの経済政策を失敗させた.ロシアとの貿易やエネルギー輸入も,経済制裁への消極姿勢や安全保障の後退も,ドイツに重大な責任がある.

確かに,ドイツは歴史的な経験から政策に制約を課した.ドイツの金融破綻や軍国主義よりも,現状は優れている.しかし,過剰な是正策にヨーロッパが変調を強いられた.

もっとヨーロッパのデフレと戦い,もっとプーチンの軍事的な挑戦に対抗しなければならなかった.特に,EUがロシアを貿易やエネルギーで取り込みながら,安全保障を軽視したことは,ロシアが反対することを考えていなかった点で失策だ.それにもかかわらず,ウクライナまでEUNATOに加盟する方針を支持し,プーチンのロシアが求める影響圏を無視した.ドイツの選択はロシアに対抗する力を失う結果になった.

貿易と平和を愛するドイツがヨーロッパを指導したことは幸せだった.しかし,時代は変わった.


l  アフガニスタン

YaleGlobal, 28 August 2014

The Trans-Afghan Pipeline Initiative: No Pipe Dream

Marc Grossman

FP AUGUST 29, 2014

Afghan Elections: Back in Full Crisis Mode

BY IOANNIS KOSKINAS

カルザイは大統領を退任する.国際社会はそれを歓迎するが,アフガニスタンの大統領選挙が大規模な不正投票の疑惑で結果を出せないままだ.アメリカ政府は妥協案を懲戒しているが,Abdullah AbdullahAshraf Ghaniの両候補者は勝利を主張しており,アメリカの目指す民主主義の理想には従わない.

アメリカはマーシャル・プラン並みの軍事・経済援助を行うために現地政府の協力を必要とした.カルザイが信頼できる相手であるか,十分な情報はなかった.アメリカはカルザイに注意を集め過ぎたのだ.


l  スコットランド独立と通貨

theguardian.com, Friday 29 August 2014

In Scotland or Catalonia, the pitch is for difference without much difference

Peter Preston

The Guardian, Sunday 31 August 2014

Something incredible is happening in Scotland. And if the result is a yes vote the shock to the UK will be extreme

Paul Mason

FT August 31, 2014

Scotland and the wish tree

John McDermott

独立支持者は何を願うのか? スコットランドの民主主義,ナショナリズム,資源管理,成長・雇用,エスニシティ,異なる現実を創る力,自尊心.

ある人は,民主主義を信じるから賛成し,ある人は,スコットランドのナショナリズムを支持するが,それは国家という器を必要としないから,独立には反対投票する,という.

Bloomberg SEP 2, 2014

Scotland Is Inching Out of U.K.

By Mark Gilbert

Project Syndicate SEP 3, 2014

Should Scotland Leave the Pound Zone?

HAROLD JAMES

住民投票によりスコットランドが独立すれば,イギリスとヨーロッパの政治体としての構成に革命を起こすだろう.それはカタロニアから北イタリアまで,さまざまな分離独立運動を大きく刺激する.しかし,独立の経済的な衝撃ははるかに不明瞭だ.

独立推進派は,主にスコットランドが別個のアイデンティティを持つと強調する.しかしスコットランドの歴史と伝統は,もちろんそれ自身のものだが,イングランドやイギリス諸島の他の部分と何世紀も交流してきたことで形成された.

緊急の問題は貨幣だ.独立したスコットランドはイギリスのポンドを使用できるのか,するべきか? 住民投票のこの数か月の議論で,スコットランド,英連邦,ヨーロッパの貨幣が,独立の経過によって大幅に変化しうることが分かった.

独立派はポンドを維持できるという.しかし,イギリスのGeorge Osborne大蔵大臣はAlex Salmondの通貨同盟案を明確に否定した.

しかも,ナショナリストたちの考えはユーロのマイナス・イメージと重なる.単一通貨は共通の金融政策を必要とする.通貨同盟全体で経済条件が異なれば,ときに,個々のメンバーが不当な政策に従うことになるだろう.

例えば,2000年に入って,建設ブームが起きていたアイルランドやスペインはもっと緊縮的な金融政策,高金利と融資/資産の比率を持つべきであった.しかし,ユーロ圏加盟国として,政府も民間部門も低金利を利用できた.金融危機の後,政策担当者たちは銀行に融資を再開させようとしたが,不良債権処理を進める財源はなかった.

今,英連邦は同じジレンマに直面している.ロンドン圏の不動産ブームは金融引き締めを必要としている.しかし,弱弱しい景気回復の中で金利を引き上げることは,経済全体に破滅的な影響を及ぼす.

さらに,ロンドンはドイツに似て,巨額の経常黒字を維持している.それは,ドイツの黒字がユーロ圏の他の部分にデフレを強いているように,潜在的ながら,深刻な問題を意味する.

通貨の変動は,ある特定の強力な,そして,支配的な部門に従う.イギリスの場合は金融部門だ.2007-08年の急激なポンドの減価は,輸出競争力を介して,イギリスに非常に貴重な経済的刺激を与えた.ユーロ圏加盟国にはない金融政策の弾力性が,英連邦にはある.

しかし,金融部門が回復すると,ポンドの価値は2008年に18%も回復し,輸出競争力を失った.シティにとって良いことは,必ずしも,経済の他の部分にとって良くないのだ.

スコットランドをロンドンから切り離すことは,間違った主張をもたらす.確かに,Adam Smithが認めたであろうが,ロンドンの商人組合はイギリスの経済政策を歪めている.しかし,スコットランドが独自の通過を得ても,北海油田や天然ガスへの強い経済的依存により,石油によって変動する通貨になる.石油価格が上昇するとき,スコットランドの他の部門は通貨の増価に苦しむだろう.競争力を失った産業は赤字を出し,破綻する.経済活動はますます集中し,特化する.

調整の負担を為替レートに頼ることは間違いだ.スイスやノルウェーのような開放型の小国は,世界金融危機の際に通貨の大幅な増価に苦しんだ.スイスは,ユーロに対する為替レートの変動に上限を設けたのだ.

したがってスコットランドはより大規模な通貨圏,より多様化した経済に結びつくことを求めるだろう.ユーロを採用することを考えてはどうか?

The Guardian, Thursday 4 September 2014

Scottish independence: A yes vote will produce a leaner, meaner Scotland

Simon Jenkins

この半年は民主主義の祭典だった.政治的討議に,何の壁も通行禁止の標識もなくなった.投票率は80%に達するだろう.それ自体が勝利である.重要な問題について,政治参加が失われていなかった.

イングランドの支配者たちは,スコットランドの半分,アイルランドの大部分が嫌悪と不信を示していることに衝撃を受けただろう.独立反対派のキャンペーンは資金をつぎ込んだ「恐怖作戦」であった.独立とは,ポンドを失い,王室を失い,核ミサイルを失い,頭脳を失い,BBCを失い,その代わりに,貧困とテロリストを得るだけである,と.

私はロンドンに住んで,反対に投票することで,ロンドンが新しい連邦制を始めてくれることを願う.しかしエディンバラに来て,一人のスコットランド人であるとき,議論することはない.独立賛成に投票するだろう.

双方が継承と約束を並べたが,投票が終われば,その主張は事実上それほど大きな違いをもたらさない.より明確なスコットランドであるが,イングランドにも近い.共通の市民権,境界の開放性,共通通貨,合同銀行,福祉・安全保障・税制・放送に関して制度が合意される.

独立は,北海油田と財政移転がほぼ相殺し,エネルギー消費者からの補助金を失い,1000億ポンドの債務を管理しなければならない.しかし,スコットランドの投票は経済的な脅迫に屈しないだろう.通貨の問題は政治家たちが解決せよ.

反対運動の並べる統計も,賛成派のSalmondが描く空想的な社会主義も,正しくない.金融危機がギリシャ型の不況からSalmondの失脚をもたらせば,スコットランドは保守党が政権を得て,オフショア資本主義に変わる.

よりスマートなスコットランドは,Denmark, Norway, Ireland or Slovakiaのように,俊足の企業家たちにとっての理想郷になるべきだ.

1922年にアイルランドが分離したとき,英連邦は終わったのだ.スコットランド人は民主主義の本質を議論しているのであり,誰が支配するべきかを問う.それは憲法の議論であって,収支表ではない.ヨーロッパ各地で人々はより大きな地域の自治を求めている.中央政府がそれを聞かないときだけ,ユーゴスラビアのように分裂する.

独立に賛成であれ,反対であれ,住民投票すること自体が国家の誕生期なのである.

FT September 4, 2014

If Scots keep the pound they forgo independence

Martin Wolf


l  外交と秩序

FT August 29, 2014

Chooseenemiescarefully but be less picky aboutallies

By Philip Bobbitt

キッシンジャーと毛沢東が笑顔で握手する写真は,外交誌上で最も繰り返し参照された.キッシンジャーが共産主義国同士の対立に乗じるために手を組んだことはもちろんだ.中国が滅ぼそうとしてきた国家システムに毛沢東を招き入れた.

独裁者とも対話するべきか? もちろん,いつもそうしてきた.アフガニスタンでは,タリバンを追い出すために各地の軍閥と手を組んだ.ではISISを倒すために,シリアのアサド政権とも手を組むべきか? われわれはアサドを国民に対する残虐行為で非難し,退陣を要求してきた.

F.ローズベルトは共産主義を抑えるために中米の独裁者と手を組んだ.ファシズムとの戦いでは,悪魔とも手を組んだ.それはスターリンだった.1941年,ヒトラーがソ連に侵攻したことは決定的瞬間であった.そのときチャーチルは語った.「もしヒトラーが地獄に侵攻するなら,私は下院に悪魔を特別参考人として招待するだろう.」

国家の第一の義務は,それを生み出した社会の生存を守ることである.

「アサド政権は悪魔かもしれないが,ISISよりましな悪魔だ.」とRichard Haassは書いた. NATO軍の地上戦.アラブ連盟との協力.シリアの反政府・穏健派の強化,といった他の選択肢には勝利の見込みがない.イランとの同盟もそうだ.

われわれの目標は地域の平和である.しかも,それは西側を敵視しない秩序である.イラン社会が法の支配を認める必要がある.それは不可能かもしれない.シーア派とスンニ派との停戦もそうだ.

キッシンジャーがしたような巧妙な外交により,排除するより包摂するべきだ.

NYT AUG. 30, 2014

Diplomat and Warrior

Roger Cohen

NYT SEPT. 1, 2014

The Revolt of the Weak

By DAVID BROOKS

アメリカを脅かす深刻な問題はない.しかし,文明の基礎を侵す中規模の問題が各地にある.アメリカ外交の戦略家たちはこうした問題にうまく対処できていない.

それは弱者の革命だから.弱い国家(ロシア),弱い運動(ISIS)が,文明のルールに従った競争に勝てないから,ルールブックを無視する.それは数世紀にわたって発展した規範である.

政府は秩序と経済的利益を人々にもたらすべきだが,その内面の精神生活を支配しない.アメリカやNATOは文明のルールを守る意識がない.

FT September 4, 2014

The world is marching back from globalisation

Philip Stephens


l  ウクライナ危機

FT August 29, 2014

Putin raises the stakes in Ukraine

FT August 30, 2014

This means war: miscalculations have pushed Ukraine and Russia over the edge

Ian Bremmer

ロシアのウクライナ侵攻をありのままに言うことは,不都合な真実である.ロシアはそれを戦争と呼ばない.アメリカやEUもロシアによる「侵入」を非難している.

誰も戦争を望まない.ロシアが分離独立派の地域支配を最小限の支援で維持できると考えているだけでなく,ウクライナ政府側も,ロシア系反政府勢力を軍事的に制圧できると考えている.しかし,通常,大きな戦争は誤算と国内の矛盾した政治圧力によって生じた.ここでもそうだ.

西側は制裁でプーチンの侵略を抑えられると期待した.ウクライナ政府の誤算は最悪だ.彼らは分離独立派を鎮圧し,ロシアの介入はないと期待した.NATOの軍事的な支援もあると願っていたが,何も行われていない.それはバルチック諸国やポーランドを不安にする.ウクライナ経済の破綻も経済支援が緊急に必要だ.

Petro Poroshenko大統領は難しい選択を強いられる.ロシアと妥協するには交渉が必要だ.しかし,国内の政治圧力はますます交渉ではなく強硬策を求めている.Arseniy Yatseniuk首相はNATO加盟を申請した.

NYT AUG. 31, 2014

Arm Ukraine or Surrender

By BEN JUDAH

NYT SEPT. 2, 2014

Finland’s Lesson for Ukraine

By RENÉ NYBERG

フィンランド人であるとは,強い隣国への服従を学ぶことだ.「フィンランド化“Finlandization”」である.Zbigniew Brzezinskiは,それがウクライナの唯一の道だ,と主張する.私は同意できない.

フィンランド化はロシアの成果ではなく,第2次大戦とそれ以後の,ロシアによる占領と隷属化を免れたフィンランドの成果である.フィンランドだけが赤軍に支配されなかったが,それは非対称的なパワーを制御してきたからだ.

フィンランドは,占領に軍事的に対抗する強い意志を示すとともに,占領がソ連の利益にならないことを示した.

FP SEPTEMBER 2, 2014

Here are three steps we should take in response to Putin's invasion of Ukraine

BY THOMAS E. RICKS

Project Syndicate SEP 3, 2014

A Western Strategy for a Declining Russia

JOSEPH S. NYE

ロシアのウクライナに対する行動に対抗する戦略を,無党派の外交専門家による研究会議Aspen Strategy Groupが話し合った.

重要なことは,軍事力による領土の再分割を認めないことだけでなく,ロシアを完全に孤立させないことだ.ロシアはウクライナだけでなく,核不拡散,反テロ,北極圏,イランやアフガニスタンなど,地域問題,といった多くの問題で西側と関係を築いている.ロシアは核兵器,石油・天然ガス,情報技術,ヨーロッパに近接した地理,などによる優位を利用して問題を起こす力がある.

石油価格の上昇によりBRICSに分類された.しかし,ロシアは衰退する国家だ. 1世紀前のオスマントルコ崩壊が示したように,衰退した帝国も国際システムに破壊的な影響を及ぼす.プーチンの愚かなイデオロギーに振り回されて,ユーラシア同盟はソフトパワーを持たず,政治的な腐敗が資源や才能を浪費しており,西側からの投資も集まらない.人口は減少し,工業的なバナナ共和国から,西側との衝突はロシアをますます中国のガソリン供給所に変えてしまう.

冷戦の再現は双方の利益にならない.ロシアの当面の行動を封じ込めるだけでなく,国際システムに包摂することだ.

NYT SEPT. 3, 2014

A Way Out for Ukraine and Russia

By ANATOL LIEVEN

プーチンの権力はあまりにも深くウクライナの戦略に関わっているから,キエフ政府が軍事的に勝利することを許すことはない.西側がウクライナで勝利する見通しは必ず失敗に終わり,モスクワとの合意だけが事態を鎮静化できる.

もし分離独立派を抑えるほどキエフ政府への軍事的な支援を強化すれば,それはロシアの軍事介入を招き.西側も軍事力を投入しるしか阻止できないが,西側介入の可能性はない.

プーチンのウクライナ戦略が高い支持を得ているのは,アメリカが支援したキエフにおける政権転覆は,西側による反プーチンの陰謀であり,ロシアの死活的な利益を否定したものと理解されているからだ.歴史を少しでも知る者は,ロシアがウクライナを保護下に置く関心の強さは,西側の関心とまるで違う.

その意味では,クレムリンの姿勢は抑制されている.ウクライナの攻勢に対して,ロシア軍はKharkov and Odessaまで支配を拡大することができたはずだ.またモスクワはポロシェンコの大統領選出を承認した.クリミア同様,ウクライナ全体を西側の友好国からロシア側に引き戻すことを求めた1年前より,要求を後退させている.

NATOがウクライナ防衛のために軍事行動を取る意思がないことは明白である.選択すべきは,ウクライナが完全な西側の国(EU/NATO加盟)になるか,ロシアの領土の一部として消滅するか,ではない.ウクライナの独立を維持したまま,Donbass地域に高度の自治権を認めるか,半分凍結された軍事紛争を抱えたまま,ウクライナがその他の発展の可能性を損なうか,である.

前者の場合,ウクライナの西側との関係は深まり,民主主義や成長を模索できる.

FP SEPTEMBER 3, 2014

The West's Tricky Economic War With Russia

BY JAMILA TRINDLE

FP SEPTEMBER 3, 2014

Moscow's Next Victim

BY VLADIMIR SOLOVIEV

Bloomberg SEP 3, 2014

Give Putin's Peace a Chance

Leonid Bershidsky

FT September 4, 2014

Putin’s Ukraine offensive puts Obama on the defensive

By Geoff Dyer

FP SEPTEMBER 4, 2014

Putin's Nuclear Option

BY JEFFREY TAYLER

Bloomberg SEP 4, 2014

NATO Would Make Things Worse for Ukraine

By Marc Champion


l  中国の国内問題

FT August 29, 2014

China’s misleading economic indicators

Yukon Huang

FT August 31, 2014

China’s ‘great rejuvenation’ threatens to harden racial attitudes

By Jamil Anderlini in Beijing

アメリカ,ミズーリ州,ファーガソンにおける白人警察官による黒人銃殺事件は,ロシア,イラン,中国,北朝鮮のような権威主義体制のプロパガンダに好都合な材料となった.

中国の国営放送は,過剰な調子ではないが,人種差別がアメリカ社会に深く根を張った慢性病であり,社会を分裂させていることを伝え,他国を非難するより自国内の問題に集中せよ,と助言した.

中国の経営幹部や知識人は,たとえそれ以外の面で洗練されている者でも,強い人種差別的な感覚を持っている.黒人,外国人,特に,日本人には,会ったことがない人々の間でも日常的に蔑称が用いられる.

対外的に開放した時代や,漢民族が蛮族と呼んだ支配層を受け入れた清王朝などもあったが,現在の人種差別は習近平の唱える「中華文明の復興」キャンペーンによって促進されている.たとえ自分では歴史的な地位の復活を意味しただけも,歴史を都合よく利用した,ナショナリズムに偏る教育システム,プロパガンダ,そして外国勢力の犠牲者という意識の浸透は,このスローガンに不吉な色彩を与える.

FT September 1, 2014

The fight for ‘China’s sorrow’

黄河の環境破壊を緩和し,自然保護を目指す試みが始まっている.

Project Syndicate SEP 1, 2014

Down with Dengism

MINXIN PEI

鄧小平の生誕110年を祝う行事が多くあった.鄧思想についての主張は,その死後,盛んに行われたが,鄧小平は偉大なプラグマティストとして毛沢東の失策を質しただけではない.小正平自身,他の指導者と共通して,2つの考え方に囚われていた.経済発展には中国共産党の強い指導力が必要だ.一党独裁体制下でのみ急速な近代化は成功する.

近代化に対する中国共産党内部の反対に直面し,鄧小平はZhao Ziyang趙紫陽に党・政治システムの改革を求めた.しかし,その改革が法の支配や民主的選挙を許す段階で,鄧小平は明確にこれを拒んだ.それは鄧思想の悲劇である.

習近平は政治システムが経済発展の限界となり,政治的な腐敗で富が国民に分配されない問題の重要性を認識している.

NYT SEPT. 4, 2014

China’s Education Gap

By HELEN GAO


後半へ続く)