IPEの果樹園2014
今週のReview
9/1-6
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習体制の時代 ・・・アートとしての金融政策 ・・・カジノ ・・・人種差別を見るとき ・・・ユーロ圏の成長 ・・・中東世界の秩序 ・・・NATOの改革 ・・・ロシアとの合意 ・・・秩序ある世界へ ・・・ユーロ圏の改革 ・・・アベノミクスの退潮 ・・・不平等と成長
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign
Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, Yale Global そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 習体制の時代
China Daily 08/21/2014
Deng
Xiaoping: Architect of morden China
FT August 22, 2014
Deng
anniversary eclipses Mao’s as Xi builds reformist credentials
By Tom Mitchell in Beijing
鄧小平Deng Xiaopingの生誕110周年記念が,政府・共産党によって盛大に,毛沢東の生誕祭以上に,祝われた.現在の習近平は鄧小平の改革をモデルとして重視するからだ.市場改革によって,中国経済が本当に市場による資源配分を許すなら,鄧小平の改革に負けないものとなる.
あるいは,それは習への権力集中と,個人カルトを意味するだけか?
Bloomberg AUG 24, 2014
Keeping
China Honest in Hong Kong
By Adam Minter
習近平体制になって,中国の姿勢は攻撃的になっている.南シナ海や東シナ海で領土問題を激化したように,香港に関するイギリスとの基本合意も修正する姿勢を強めた.普通選挙ではなく,候補者を選別する選挙委員会が市民の投票を無意味にしてしまう.
FT August 25, 2014
Property
bubble is ‘major risk to China’
By Jamil Anderlini in Beijing
l アートとしての金融政策
FP AUGUST 21, 2014
Developing
Nations Anxiously Watch Fed at Jackson Hole
BY JAMILA TRINDLE
欧米市場が停滞しているので金融緩和が進み,かつて誰も投資対象と考えなかったような,象牙海岸,キプロス,エクアドル,などの諸国に大量の投資が流入している.こうした諸国への投資家たちはジャクソン・ホールJackson Holeの議論に強い関心を示し,アメリカ連銀が金融引き締めのサインを出すことがないか,注目している.
バフェットの文句をまねて,新興市場へ流入する投資が減るとき,誰が裸で泳いでいるのか,わかるだろう,と警戒している.
FT August 22, 2014
The
rules of central banking are made to be broken
By Barry Eichengreen
ジャクソン・ホールに集まった中央銀行家たちには,失われた時代へのノスタルジアがある.それは,中央銀行家が伝統的な金利の変更だけで金融政策を実施できた時代だ.
特に,中央銀行家たちはゼロ金利が長引く時代を早く抜け出したがっている.中央銀行が担保付証券やコマーシャル・ペーパーを購入する量を減らしたいのである.こうした操作は金融市場に介入し,好ましくない副作用を生んでいる.アメリカでも,イギリスでも,ユーロ圏でも.
しかし,彼らは危険な心情に流されている.金利の目盛を1つか2つ動かせば,正しい結果をもたらす,という理想化された過去を求めているのだ.高血圧の患者を前にした医者のように.中央銀行は常に,財務省証券だけでなく,コマーシャル・ペーパー,その他の企業のいろいろな債券を購入してきた.
中央銀行業を簡潔な公式に集約する試みは,それが金本位制下の為替レートであれ,最近のようなインフレ目標であれ,他の問題と摩擦を生じた.たとえば,インフレや産出が変化したとき金利を動かす方法について,連銀を縛るテイラー・ルールだ.
なぜ中央銀行家たちはこのような機械的な金融政策の間違いを犯すのか? その一つの理由は,1970年代,80年代の金融政策が続けて失敗したことだ.政策担当者たちの裁量が信頼できないから,彼らを単純なルールに縛りつけた.
もう一つの理由は,分析モデルや分析方法が高度に洗練されたことだ.連銀スタッフたちが最初に1970年代にエンジニアリングからそれらを導入した.他の中央銀行もそれに続いた.もし経済の構造が一連の固定的な数式で表現できるなら,金利をファイン・チューニングすることも容易であろう.
ミルトン・フリードマンはそうした流れに属するが,モデルを文字通りに受け取ることはしなかった.経済構造の不確実性は大きすぎるからだ.しかし,こうしたテクニックの見せ掛けの正確さと,それがもたらす偽りの科学主義が,最適なフィードバック・ルールを実施するのが自分たちの仕事だ,という中央銀行家の信念を強めた.アイスボックスの中身が溶け始めたら冷却装置を動かすスイッチを押すだけだ.
そのような理想の世界はかつて存在したことがないし,これからも存在しないだろう.世界がますます金融的に洗練されると,貨幣と信用との間に線を引く政策決定の困難は増す.
中央銀行は金融的な安定性だけに責任を持って経済を規制し,他の政府機関と切り離す,というのは非現実的である.問題は,どこに線を引くか,である.
第1に,中央銀行の専門的な対応力がある分野に対して(繊維産業を復活させることは中央銀行にできない),第2に,金融政策にとって重要な意味を持つ問題について(ECBのように,財政赤字の削減ではなく),第3に,物価と金融の安定性を維持する視点を失わない限り(改革を促すために金融緩和を抑えるECBは間違い),中央銀行は諸問題のウェイトを判断するしかない.
中央銀行の仕事は,今も,科学ではなく芸術である.
VOX, 22 August 2014
Pricing
to market and Eurozone membership: Evidence from Latvia
Alberto Cavallo, Brent Neiman, Roberto Rigobon
Bloomberg AUG 22, 2014
Larry
Summers Is On to Something
By Mark Whitehouse
FT August 24, 2014
Central
banks at the crossroads
中央銀行家たちは,その部族的な忠誠心は堅いが,目指す方向は分裂しつつある.特に,2008年の危機に際して最初から金融緩和に積極的に参加したECBが,その後,2010年には中途半端な介入に終わり,デフレの危険があるとわかっていながら量的緩和は延期し続けている.
FT August 26, 2014
Rising
risk of currency market volatility
By Mohamed El-Erian
l カジノ
Bloomberg AUG 21, 2014
Japan
Plays Roulette With Casinos
By William Pesek
カジノを最も必要とする場所に設置するべきだ.安倍首相は,日本を「ラスヴェガス化」して刺激するつもりらしいが,そうであれば,カジノがそれにふさわしい場所を決めるべきだ.
貧しく,失業者も多い沖縄は,日本の米軍基地負担を過分に引き受けている,など,多くの理由で望ましい.しかし,3・11の震災後,復興が重要な課題である東北こそ,最適の土地だろう.
The Observer, Saturday 23 August 2014
TV
gambling – irresistible and utterly pernicious
Kevin McKenna
イギリスには35万人以上のギャンブル依存症がいる.不況,オンライン・ギャンブルの普及で,近年,ますます増加している.イギリス中で,年中,24時間,ギャンブルできる.
l 人種差別を見るとき
The Guardian, Friday 22 August 2014
Ferguson’s
black community must not be given the same ‘justice’ as Trayvon Martin
Gary Younge in Ferguson
ミズーリ州,ファーガソンのすぐ外で,水曜日の午前10時に,30歳代の黒人男性が,8人の白人警察官に停止させられ,質問を受けた.彼は極めて慎重にポケットが空っぽであることを示し,非常にゆっくりと移動して彼らに叫んだ.それは純粋な憤懣の独白であった.彼を逮捕した男たちに対してだけでなく,彼らが代表するシステムに対して.
革命に関する多くの書物の第1章は,権力がいかに腐敗し,人々がいかに惨めな状態で,苦しんでいるか,という叙述で始まる.それは心理学的な章である.人々は嫌がらせを受け,恐怖を味わってきた.しかし,彼らは恐怖を克服し,自由を得るのだ.
この2週間で何が達成されたのか,と疑う者は,これがそうだ,と言おう.軍のように武装した警察部隊に対して,数百の黒人たちが対峙する.彼らはこの不平等,不公平に焦点を向けた.警察に対して挑戦し,自分をさらす勇気を得た.
Michael Harrington が記念碑的な著作 The Other Americaで示したように,貧困は単に無視されているのではなく,見えないのだ.ファーガソンの白人エリートたちは,初めて黒人を見た.
世界のメディアが見守る中でも,近くの郡からきた警察官はセミオートマチックの拳銃を抗議する人に向けて言った.「おれはおまえを撃ち殺したくてしようがない.」 そのあまりの劣悪さに,治安維持をハイウェーパトロールが交代した.しかし,監視されている中でも行動を抑制できない警察が,監視されなければ何をするのか.
連邦政府は介入した.しかし,次はどうなるのか? 抗議活動は弱まっている.連邦警察は撤収する.裁判所が(Michael Brownを撃った)Darren Wilsonを裁くのだ.以前の例では,司法がこうした人物を無罪放免することもある.
theguardian.com, Friday 22 August 2014
Obama’s
message of hope and change is all but lost amid the chaos of Ferguson
Patricia Williams
オバマがアフリカ系アメリカ人として最初の大統領になったとき,アメリカ人が変わる,という希望を与えた.ニューヨーク在住の芸術家,Carrie Mae Weems はビデオを制作して,オバマが次々に変化する姿を示した.model citizen, communist infiltrator, immigrant, foreigner, friend, black Jesus, brown Hitler, American dream, chicken, monkey, zebra, joker, minstrel.
しかし,この2週間のオバマに対する攻撃は,ウクライナ,ガザ,イラク,リビア,アフガニスタン,パキスタンについて繰り返され,オバマが国内問題で政治的な介入をする余地も奪っている.共和党はオバマを社会保障制度改革で告発しようとし,ヒラリー・クリントンも皮肉な論評を加えた.多様な個人からなる抗議活動に,大統領が関わることは難しい.
アメリカの社会と政治には深刻な亀裂が生じている.Republican v Democratic, anti-abortion v choice, Tea Party v traditional conservative, climate change denial v ecological activism, immigration reform v walls on the border, gun nuts v the world.
分裂した国民の中で,オバマは大統領としても,憲法学者としても,司法省の指揮官としても,論争を苦労して進むことになる.しかし,彼が何を言っても,人々は彼を「良きアメリカ市民」としてではなく「アフリカ系アメリカ人」と見ている.オバマの自制を,効果的な発言のできない,よそよそしい,論争を逃げたものと非難する.
オバマは直ちにファーガソンに乗り込んで,事件に憤慨し,これを利用しなければならない,と主張する者もいる.大統領の権威を示すときだ,と.しかし,それは一層の攻撃を呼ぶだろう.
FT August 22, 2014
US
race relations: Days of rage
By Neil Munshi and Gary Silverman
FT August 22, 2014
Mapping
crime – or stirring hate?
Gillian Tett
The Observer, Sunday 24 August 2014
Ferguson
is a story going back decades. And there is no new ending
Patrick Sharkey
Bloomberg AUG 24, 2014
Ferguson
Reveals Blacks' Unfinished Journey
By Albert R. Hunt
NYT AUG. 24, 2014
A
Funeral in Ferguson
Charles M. Blow
Michael Brownの母は,涙を流しながら,その苦悩を語った.彼の父も,ストイックな,決意を込めた話し方だった.しかし,そこには空白の場が隠しようもない.
月曜日に,彼らは世界が見守る中で少年を埋葬することになっているからだ.
愛する者を失うのは悲しいことだ.しかも自分より若い者,それがまだ若い,少年であれば,親としての苦しみは深いはずだ.子供は自分より長く生きる.その定めがくるうからだ.
母親は,誰かが電話で(息子の死を)知らせてきた時のことを語った.父親は,彼らが息子に会わせてもらえず,自分たちだけにしてくれなかった,と言った.4時間半も放置されて,誰も,何も答えてくれなかった.
人が悪者によって殺されたのではなく,警察官に撃ち殺されたのである.それは明らかに疑問であり,答えを求めている.
悲劇にあって,息子に代わり,彼らは立ち上がり,真実と正義を求めて抗議するだろう.彼らのように強ければ.しかし,子供が死んだら,自分たちは取り残され,力を失うだろう.
だから,中部時間の月曜,午前10時.葬儀が始まるとき,悲嘆にくれる2人のことを想ってほしい.
SPIEGEL ONLINE 08/26/2014
'We're
Like Animals To Them'
An
American City's Daily Racism
By Markus Feldenkirchen
「彼らはわれわれを人間と思っていない.」 「シカを撃つように,われわれを撃つ.」
かつて,野球場では黒人の席が決まっていた.今ではそのような人種隔離規制は廃止された.しかし,席はそのままだ.
NYT AUG. 27, 2014
Is
Everyone a Little Bit Racist?
Nicholas Kristof
l ユーロ圏の成長
Project Syndicate AUG 22, 2014
A
European Lost Decade?
MICHAEL HEISE
インフレ率は0.4%にまで落ち,景気回復は弱い.ECBの金利はほぼゼロで,民間融資の伸びず,公的債務は増え続けている.ヨーロッパは日本の1990年代,「失われた10年」を経験しつつあるのか?
欧日の危機の経過は似ている.債務に依存した不動産投資とバブル,深刻なバランスシート不況.日本の諸銀行は担保価値の減少と不良債権の増加で,巨額の損失を自己資本で償却できなかった.支払い不能の企業に融資を続け,長期の,苦しい処理過程,低投資,低成長をもたらした.民間需要の減少を補うために政府は債務を増やして,15年間で2倍のGDP比230%に達した.
しかし,幸い,ヨーロッパが日本と同じ経過をたどる必然性はない.第1に,ヨーロッパの不動産バブルは日本より小さかった.その損失も少ない.
また,国によっては公的債務を増やす程度が異なっており,スペイン,ポルトガル,アイルランドの企業が負う過剰債務は,ドイツ,フランス,イタリアによって相殺されている.ヨーロッパ全体では債務削減は限られている.
最後に,ヨーロッパの資産価格の調整幅は小さく,株価はすでに2007年の水準を回復している.それに対して日本の株価は,4万円近くまで上昇した後,今でも1万5000円程度でしかない.
ヨーロッパには,日本の失敗から学ぶ,という利点もある.日本政府は経済成長を高める構造改革を進めることに失敗し,労働市場や銀行の不良債権処理も遅かった.金融緩和だけでは改革は進まない.1990年代の日本も,現在のアメリカも,大量の流動性を供給したが企業や家計は借り入れを増やさなかった.
ECBが量的緩和に進むべきだ,と主張するのは間違いだ.それは日本がやったことだ.超低金利も財政再建を政府が延期することにつながった.公的債務の累積と低成長,という日本と同じ状態にユーロ圏を陥らせる.
FT August 27, 2014
The
German locomotive has become Europe’s liability
By Marcel Fratzscher
ドイツ経済の原則は,ロシア向けの輸出が減ったせいではない.ドイツ自身の構造的な要因によるものだ.
ユーロ圏に対する消極的な姿勢はその一つだ.フランスやイタリアの経済停滞と困窮は,構造改革を挫き,金融安定化を損なうものだ.輸出の原則よりも,ドイツ企業が生産的な投資を控えていることが重要だ.
経営者たちが懸念するのはビジネス環境の不確実さである.ロシアとの紛争,金融危機の再燃不安,増税,規制強化,政治不安,ユーロ統合への逆風が各地で強まっている.
ドイツにとっての最大の課題は,より多くの投資が雇用と生産性の改善につながり,家計所得を恒久的に高めることだ.そのためにはドイツがその財政基盤の強さを生かして行動しなければならない.インフラや教育への投資はヨーロッパの中でも最も低い諸国に属する.その政治的影響力を駆使して,ブラッセルやEU諸国を励まし,投資と成長をもたらす改革を実行させることだ.
FT August 28, 2014
ECB
QE: will it happen and what next?
By Laurence Mutkin
l 反ユダヤ主義
FT August 22, 2014
Anti-Semitism
is a menace to us all
l 中東世界の秩序
Project Syndicate AUG 22, 2014
The
Middle East’s Three Timelines
VOLKER PERTHES
中東の秩序には3つの時間軸がある.日常の闘争や政治をめぐる短期,数十年の地政学的なシフトを示す中期,そして,社会・文化的な変容を示す長期だ.
多くの関心が短期の事件に向けられている.イスラエルとハマスの戦闘,イランの核開発計画,エジプトやバーレーンの反政府運動とその弾圧,シリアやイラクにおける人道的危機.
しかし,第1次世界大戦とオスマントルコの滅亡を経て誕生した国家システムを理解しなければ,地域の現代史と政治を把握することは不可能だ.英仏帝国主義によるいわゆるサイクス=ピコ体制,この地域に現れたシリアとイラク,ヨルダン,レバノン,そして,サウジアラビアや湾岸地域のさまざまな国家システム.
イスラエルとパレスチナの対立.域外から1970年代にイギリスに代わったアメリカの役割と,最近になって加わった中国やインド.イランとサウジアラビアの地域的指導権争い,地域の脅威を抑えるために周辺から及ぶ介入,1400年に及ぶスンニ派とシーア派との構想.クルド人の国家がいよいよ実現する可能性もある.
外部の勢力は,常に,こうした決して消えることのない勢力間の争いによって利用される.
FT August 24, 2014
Opaque
structure adds to challenge of defeating Isis
By Sam Jones in London
Project Syndicate AUG 25, 2014
The
Middle East Crack-Up
SHLOMO AVINERI
NYT AUG. 25, 2014
The
Making of a Disaster
Roger Cohen
500人以上,おそらく800人ものイスラム教徒のイギリス人がシリアやイラクで聖戦主義の戦闘に参加している.フランスもおよそ900人.
研究財団の所長Ghaffar Hussainは言う.「若いイギリス人イスラム教徒たちは自分のアイデンティティーに混乱しており,事件を狭い枠組みで考えてしまう.聖戦主義者は善と悪の単純な物語を,仲間意識と確実さを提供する.ISISは彼らに大闘争の一翼となることを教える.」
ヨーロッパ諸国にも,おそらく,歴史的な罪がある.植民地住民には,自由や民主主義,法の支配という価値を尊重してこなかった.アラブの春が,そのような過激主義を抑える社会転換をもたらすという期待は,もはや失われた.
オバマ大統領は,前任者のブッシュが残した「テロとの戦い」という言葉を使わず,非軍事的な手段で対応した.しかし,すでに9・11やイラク戦争の後遺症を超えて,各地に転移したテロを抑える役割を軍事的にも担うしかない.
先週,イギリスなまりの英語を話す,フードをかぶったISISの手下がFoleyを処刑したとき,その脅威はあまりにも明白になった.
アメリカは多くの失策を犯したが,最大の失敗はイデオロギー的なものだ.
NYT AUG. 25, 2014
Afghanistan’s
Moment of Reckoning
By THE EDITORIAL BOARD
FT August 26, 2014
Look
to Syria to halt the deadly march of Isis
By Richard Haass
ISISが拡大するのを防ぐには,国民の支持を得られない欧米が地上軍を出せない以上,シリア政府軍と協力するしかない.それは住民を虐殺する戦争犯罪者のアサドを将来の指導者として承認することになるが,ISISの拡大を放置することに比べれば,より小さなコストである.
FT August 27, 2014
Syria’s opposition should steel itself to wait, not fight
By Bassma Kodmani
FP AUGUST 27, 2014
Libya's
New Power Brokers?
BY MARY FITZGERALD
FP AUGUST 28, 2014
The
New Arab Cold War
BY STEVEN A. COOK, JACOB STOKES, ALEXANDER BROCK
中東では多くの代理戦争が起きて,イラクやレバノンから北アフリカにまで広がっている.それは中東地域の指導権をめぐる諸国家間の汚れた戦争であり,暴力の蔓延である.
最近,エジプトとアラブ首長国連邦がリビアのイスラム過激派に行った空爆も,こうした戦争の一つである.オバマ政権は中東に関わることを否定し,撤退を進めてきたが,事態を放置すれば一層の混乱が拡大する.それを一つの秩序に向かわせる力はアメリカにしかないのである.
l NATOの改革
NYT AUG. 22, 2014
NATO’s
Second-Class Members
Slawomir Sierakowski
ポーランドは15年,バルチック諸国は10年,NATOに加盟してから経過した.それでも新加盟国には旧加盟国のようなNATO軍の基地がない.ロシアはウクライナで戦闘を支援しており,NATOの新加盟諸国に対する安全保障は疑われる.
特にドイツは,ロシアとの約束(新加盟国にNATOの軍事基地を置かない)を守り,「エスカレーションを避ける」ためにロシアを刺激してはならない,と主張する.しかし,それは1938年の,悪名高いミュンヘン会談,「宥和策」,によく似ている.
NYT AUG. 22, 2014
Turkey’s
Failed Foreign Policy
By AARON STEIN
WP AUG. 22, 2014
Obama’s
legacy could be a revitalized NATO
By Anne Applebaum
オバマの遺産について質問された.私はその質問に驚いたが,インタビュアーは私が驚くことに意外な反応を示した.あと2年ある.しかし,2年で何ができるというのか?
政治の世界で2年は,人生ほど長い.2年前に,ウクライナがロシアと戦争することは想像できなかった.2年後の中東の地図も想像できない.1948-49年の2年間で,NATOの書類は整備された.
残された2年間で,オバマ大統領はNATOが生まれ変わるための再交渉を進めて,それが単に冷戦の遺物ではなく,今も生き続けていることを示すべきだ.加盟国に防衛予算の増額を求め,明確な目標を定め,毎年の軍事演習に参加し,加盟国は他の加盟国の安全保障を担い,ロシアが示したような特殊部隊や情報戦争に備え,冷戦後の軍備縮小を交渉し,中距離ミサイルの制限・廃止を求める.抑止は機能したし,今後も機能するだろう.
指導者間の真剣な議論が必要だ.
NYT AUGUST 27, 2014
Is
NATO a Bulwark in Need of Reform or a Relic?
By HANNA KOZLOWSKA
(後半へ続く)