(前半から続く)
l ウクライナ危機
FP AUGUST 15, 2014
Putin’s
New Clothes
BY MICHAEL WEISS
NYT AUG.
17, 2014
Why
We Fight Wars
Paul Krugman
第1次世界大戦は「すべての戦争を終わらせる戦争」であると言われた.しかし,その後も戦争は各地で続いている.なぜか?
かつて戦争は楽しみや戦利品のために起きた.しかし近代においては,戦争がたとえ勝利した場合でも,その費用を超える利益をもたらすことはない.1910年に,Norman Angell はその著書“The Great Illusion” ですでにそれを指摘した.戦争はあまりにも大きな負担となった.それでも戦争は続いている.なぜか?
指導者たちがこの事実を理解していないこともある.プーチンはウクライナを侵略して利益を得ることは簡単だと思ったのだろう.イラクに侵攻したブッシュ政権もそうだった.
しかし,より大きな問題は,戦争になれば,どのような政府にも国民の支持が高まることだ.最近,Justin Fox はthe Harvard Business Reviewで,ウクライナ危機の原因がロシア経済の低迷であった,と示唆した.プーチンの政治力は経済の長期未通りに依存する面があるから,成長が減速すれば,その政治体制は注意をそらすために戦争を始めた.
戦争はロシアの経済的利益を大きく損なう.しかし,分離独立派を支援したプーチンにとって,彼らの敗北を受け入れることは政治的なメンツを失う.
さらに,権威主義体制が経済パフォーマンスに正当性を大きく依存しているなら,中国の経済的奇跡が終わったとき,その指導者たちが抱く戦争の動機に注意するべきだ.
FT Aug 18, 2014
Poland’s
past points to the future of its neighbours
By Tony Barber
1989年8月24日は特別な日だ.ポーランドのカソリック新聞の編集者で,連帯の活動家でもあったTadeusz Mazowieckiが,ワルシャワ機構の加盟諸国で初めて,非共産党員の首相に任命されたのだ.
25年経って,ポーランドは民主的な主権国家であり,ますます繁栄する市場経済を持ち,NATOとEUに加盟している.ウクライナとベラルーシの将来が同じように実現するとは言えないが,少なくとも,ポーランドで25年前に,その後に起きた変化を話したら,狂っていると思われたはずだ.しかし,その変化は起きたのだ.
FP
AUGUST 18, 2014
Beyond
Ukraine: NATO Solidarity in a Time of Crisis
BY BOHUSLAV SOBOTKA
FT
August 19, 2014
Russian
agriculture struggles to meet self-sufficiency challenge
By Kathrin Hille in Moscow
SPIEGEL
ONLINE 08/19/2014
Battle
for Ukraine
An
Inside View of the Surreal Donetsk War Zone
By Christian Neef in Donetsk
FT
August 20, 2014
Ukraine’s
economy: Broken down
By Robin Wigglesworth and Roman Olearchyk
NYT AUG.
21, 2014
When
Sanctions Lead to War
By PAUL J. SAUNDERS
ロシアのウクライナ侵攻を1914年の第1次世界大戦に類似していると主張する歴史家や研究者が多い.しかし,より重要な比較がある.それは1941年の真珠湾攻撃だ.
アメリカは戦争を避けて,経済制裁によって他国が方針転換することを促した.しかし,1940-41年以来,主要国に対して厳しい制裁を加えることはなかった.
それはアメリカが日本帝国に,1941年7月,石油禁輸や資産凍結を命じたときだ.当時,アメリカは,日本による東南アジアの支配を阻もうとして,インドシナ半島や中国から撤退するように求めた.しかし,逆に日本は,アメリカの制裁によって東南アジアを支配することは不可欠であり,アメリカ海軍を破壊することが必要だと考えた.
当時,アメリカ政府は日本がアメリカを攻撃するほど愚かではない,と確信していた.しかし日本政府は,アメリカが日本に大国としての役割を否定するように求めていると考え,それは日本帝国の威信にとって受け入れがたい要求だった.日本の指導者たちは経済制裁と戦争との区別をしなかった.戦争を回避しても,時間が経つほど不利である,と考えた.また,アメリカは政治的に弱く,厳しい戦争や長期の戦争には耐えられない,と信じていた.
この歴史的な教訓は,第1に,制裁は明確な警告をともなわなければならない.そうしなければロシアの侵攻は止められない.ロシアは西側の制裁に挑戦して,エストニアやラトビアに侵攻するかも知れない.NATO加盟国や核兵器の配備も,もしプーチンが政治的な生き残りを守るためなら,戦争を避けられない.
それゆえ,2.プーチンに妥協の余地を与えるべきだ.条件によって,政治体制の生き残りを許すことだろう.プーチンを完全に絶望的な状況に追い込んではいけない.
l オバマ外交のリアリズム
FP AUGUST 15, 2014
The
Pinprick President
BY JAMES F. JEFFREY
NYT AUG. 15, 2014
As
World Boils, Fingers Point Obama’s Way
By PETER BAKER
The Observer, Saturday 16 August 2014
The
Observer view on Obama and the limits of presidential power
Observer editorial
FT Aug 17, 2014
Obama’s
Hippocratic oath enfeebles his diplomacy
Edward Luce
NYT AUG.
19, 2014
Will
the Ends, Will the Means
Thomas L. Friedman
FP
AUGUST 19, 2014
Is
Barack Obama More of a Realist Than I Am?
BY STEPHEN M. WALT
オバマは私が思っていた以上に優れたリアリストなのかもしれない.彼は決断力がないのではなく,強硬な人道主義的介入論者たちの助言を拒んでいる.そしてアメリカの利害を守るために,アメリカが負担することなく敵を傷つけ,しばしば最大の負担を強いられる民衆にも,事態を悪化させるだけの支援を抑制している.
オバマが好きな映画は『ゴッドファーザーPart II』である.大統領選挙候補を争ったヒラリーを国務長官に指名した.「友人をそばに置き,敵はさらに近くに置く.」
ドン・コルレオーネもその息子も,脅迫せず,暴力をふるわず,しかし,必要なときは完全な無慈悲さで敵を葬った.「個人的な問題ではなく,これはビジネスだ.」
オバマ外交を非難する声は多い.Ukraine, Syria, Iraq, Afghanistan, Gaza, or East Asia アメリカの弱さが世界を不安定化している,という.しかし,安易に介入や軍事力を求める彼らが見ていないのは,アメリカの安全保障と成長を確保する方法である.
実際は,アメリカがすでに安全保障も繁栄も高い水準で実現しており,他地域の紛争に関わることでこれらを改善する見込みは少ないだろう.むしろ,それを改善するより悪化させる危険があるのだ.Ian Bremmerが指摘したように,アメリカがシリアの反政府勢力に行う武器供与は,ISISを強化しただろう.
第1に,ロシアとウクライナ紛争で,オバマはヨーロッパとその責任を共有したが,これまで負担を強いられているのはウクライナ,ロシア,EUである.ウクライナを中立国家にして,他の諸問題でロシアと協力することが,全ての関係諸国の利益になる.しかし短期的に,オバマはすべての損失をプーチンに負わせ,紛争がウクライナ,ロシア,EUを苦しめることに成功している.
第2に,イスラエルのネタニヤフ首相だ.2国家案を支持するオバマとケリー国務長官は,中東和平を損なうネタニヤフの方針を止めることができなかった.そこで,長期的に自滅する政策とわかっていても,ネタニヤフがしたいようにさせた.それはガザの住民を最も苦しめたが,オバマは放任した.イスラエルは孤立し,政府は国民が反対する1国家案に向かっている.
第3に,イスラム国家だ.それはアメリカにとって脅威ではない.しかし,イスラム国家拡大への恐怖が,イラクの無能なマリキ首相を退陣させ,クルドとの協力を促している.
第4に,中国の扱いだ.中国の攻撃的な主張に,オバマはアジアを訪問してアメリカの関与を保障した.しかし,アジアの友好諸国がアメリカの安全保障にただ乗りすることを許さず,むしろ中国の攻勢を放置して,彼らがアメリカに競って協力する情勢を維持している.
オバマ外交は,Andrew Sullivanが好んで言うように,アニメのRoad Runnerのように,敵のコヨーテを自ら痛めつけることに成功している.それはアメリカの利害を最も重視した,私以上に明確なリアリストの外交なのかもしれない.
Global Times 2014-8-19
Clinton-Obama
debate reveals policy divide
By Norman Birnbaum
l 中国の市場と支配
Bloomberg AUG 15, 2014
Has
China Lost Its Magic Wand?
By William Pesek
魔法の杖ではなかった.中国経済は減速する.その多くの予兆がある.
FT Aug 18, 2014
Hong
Kong pro-China rally draws fake crowd allegations
By Julie Zhu and Mark Wembridge in Hong Kong
NYT AUG.
18, 2014
In
China, Myths of Social Cohesion
By ANDREW JACOBS
「多くの中国人が知っている話はまったくの偽物だ.」
権力を握って60年,中国共産党は自分たちの支配の正当性を高め,その失敗を隠すために,多くの歴史的な物語を利用してきた.20世紀に数百万の餓死者を出した原因も,毛沢東の失策ではなく,悪天候にされている.朝鮮戦争の責任もアメリカにあり,韓国の学者たちが認めているような北朝鮮による侵攻ではない.
しかも,漢民族の移民によってエスニック・アイデンティティを消されつつある.
FT
August 19, 2014
Renminbi
fights back as PBoC intervention subsides
By Gabriel Wildau in Shanghai
FT
August 20, 2014
Guest
post: French, Swiss central banks swell rush to hold renminbi
By Jukka Pihlman, Standard Chartered
FT August
20, 2014
A
sense of destiny inspires China’s maritime claims
By Philip Bowring
Project
Syndicate AUG 21, 2014
China’s
Fire Next Time
YU YONGDING
中国の金融市場が崩壊する,という噂があった.住宅市場や,地方政府債の市場が引き金になると思われた.しかし,最近経済は安定化し,7%の成長を実現するようだ.しかし,金融危機は去っていない.それは延期されただけだ.
根本問題は警報を発し続けている.不動産市場のバブル,地方政府債の累積,シャドー・バンキングの膨張,企業の債務比率の増大,など.特に,借り入れコストの上昇,非金融部門の利潤率の低下,企業債務比率の上昇が結びついている.
l インドの変貌
FT
August 18, 2014
Seize
the moment for India’s revival
Project
Syndicate AUG 18, 2014
India’s
East Asian Dream
SANJEEV SANYAL
FP
AUGUST 19, 2014
The
Last Gandhi
BY SADANAND DHUME
l 気候変動
Project
Syndicate AUG 18, 2014
Saving
the House
JAVIER SOLANA
国際金融機関より,気候変動の方が協力を要する.温暖化を回避できる技術革新や,ダメージを抑える投資が発展途上諸国で必要だ.
l ドイツの諜報活動
FP
AUGUST 18, 2014
Spies
Like Us: Germany Spies on Allies, Too
BY DAVID FRANCIS
l 北朝鮮
FP
AUGUST 18, 2014
Frequent
Flyer Diplomacy and the Plane to Pyongyang
BY JEFFREY LEWIS
ケリー国務長官は,北朝鮮に対しても,"frequent flyer" diplomacyを再開するべきだ.
l スコットランド独立論争
theguardian.com,
Wednesday 20 August 2014
Yes
or no, things could get nasty after the Scottish referendum
Martin Kettle
スコットランド独立の国民投票は,それが成立してもしなくても,イングランドの将来を変える.
イングランド住民の多くは,独立したスコットランドがポンドを使用することに反対だし,EU・NATO加盟についても支持しないだろう.ただし,独立後,国境管理を復活させることには反対している.
独立しない場合でも,スコットランドに対するイングランドの感情は悪化する.スコットランドの議員はイングランドの法案に投票できない,と多くの意見が示している.一人あたりの財政支出を同じにするべきだ(現状に比べて10%の削減)と主張する.双方の分離は続き,財政の分権化も進むだろう,と予想している.
投票後,良いことばかりを並べた夢想的なシナリオは,極度にナイーブであった,と分かるはずだ.独立を選べば,イングランドは自国民の利益を優先する.独立しない場合でも,イングランドの感覚は損なわれ,独立派が報酬を得るような行動には反対する.
国民投票に向けたキャンペーンは,幸い,反イングランドや,反スコットランドの感情を刺激することなく,原則をめぐって進行した.しかし,ナショナリズムの反応は相互的なものであり,投票後に事態が悪化することもありうる.
FT
August 20, 2014
The
fruits of independence
By John McDermott
l ソフトバンクのアメリカ進出
FT
August 20, 2014
US
may be a gamble too far for Masayoshi Son’s SoftBank
David Pilling
FT
August 20, 2014
M&A
boom must evolve to create growth
By Mohamed El-Erian
l メキシコと開発戦略
FT
August 20, 2014
Our
reform programme will build a better future for Mexico
By Enrique Peña Nieto(president of Mexico)
過去20か月で,11の構造改革が完成した.エネルギー部門,競争促進,特に情報通信分野,累進課税,金融改革,GDPに比べた徴税率の引き上げ,それらは国民の購買力を高め,市場を通じて成長と雇用を高める.国民の基本的権利を高め,教育を受ける権利,法と刑事訴訟の明確化,透明な政府,選挙制度改革,を進めた.
新しいメキシコは,開放的で,生産的で,競争的である.健全な財政と高度な人的資源を得て,世界経済に積極的な役割を果たし,国民生活を改善する.
Project
Syndicate AUG 20, 2014
In
Search of Convergence
RICARDO HAUSMANN
アダム・スミスが『国富論』を書いた1776年に,世界で最も裕福な国(おそらくオランダ)の一人当たり所得は最も貧しい諸国のそれより4倍多かった.200年後,オランダはインドの20倍,インドの24倍,裕福になった.
しかし過去30年間は,この差が縮小してきた.今ではインドの11倍,中国の4倍,豊かなだけである.新しい収斂の時代が始まった.しかし,ニカラグア,コートジボアール,ケニア,など,今も格差が拡大している国がある.
豊かになるとは,過去200年間,何を作るか,どうやって作るかについての知識が爆発する過程であった.その能力が高い国はより多様で複雑な財・サービスを生産した.それゆえ,「習得の罠」が生じる.優れた財を持たない貧しい国は,より多くの財を必要としない.複雑な財・サービスになるほど,そのギャップは拡大する.
しかし,グローバリゼーションはこの問題を転換した.長い生産過程を分割して,それぞれを違う場所に配置したのだ.各国はより短い,限られた能力を持てばよい.かつて自給体制を採用したアルバニアも開放政策を採用し,衣料部門に参加した.中国とIBMは,最初はThinkpadの組立を下請けし,その後,部品も生産し,設計も行い,その部門全体を買収してLenovoになった.
新しい作業や技術を学ぶことが重要であり,輸入代替はそれを妨げる.しかし,このことはレッセ・フェールを意味しない.逆に,世界経済と結びつける積極的な政策が必要だ.戦略を欠けば,他国民のために組立作業を続けるしかない.
l James Foleyの斬首ビデオ
FP
AUGUST 20, 2014
Would
American Money Have Saved James Foley?
BY JAMES TRAUB
Bloomberg AUG 20, 2014
What
James Foley's Murder Says About Islamic State
By Marc Champion
FT
August 21, 2014
Britain’s
problem with jihadism
l アジアの共存戦略
FT August 20, 2014
A
sense of destiny inspires China’s maritime claims
By Philip Bowring
FT
August 21, 2014
Asia’s
strategic choices: subtle or stark?
Kurt Campbell
アジアの繁栄の中で,消費者はさまざまなブランドを選択できるようになった.国境を越えて,さまざまな地域のブランドが好まれている.
しかし,他方で,歴史的緊張や不信感が高まり,政治エリートや政府の間で,戦略的な関係の見直しが議論されている.このアジア太平洋地域で驚くべきことは,アメリカとの政治・安全保障関係を保持する諸国が,ますます中国との貿易・経済関係を重視しなければならないことだ.
その基礎には,米中関係の「大きな取引grand bargain」があった.アメリカは中国を政治的に包摂し,その経済的な近代化を支持してきた.すなわち,アメリカ市場を開放し,中国の輸出を受け入れ,アジア全体の平和と安定性を促す役割を引き受けたのだ.それに対して中国は,アメリカの軍事的プレゼンスや指導力を支持してきた.
今,双方で,戦略的な関係を見直す議論が起きている.アメリカは「ツキディデスの罠」に陥っていると懸念する者がワシントンにおり,中国は公式に,アメリカがグローバルな役割を放棄するように求め,アメリカの同盟関係や軍事力は中国の台頭を阻止するためにあると主張する者が北京にいる.
オーストラリア,シンガポール,インドネシア,韓国,など,地域の主要諸国がアメリカとの強固な政治的関係と中国との経済関係を基礎にしていながら,緊張関係の高まる中で戦略的な選択を迫られている.しかし,もし本当に選択を始めた場合,アジアは一気に冷戦状態に向かうだろう.
その重大な選択を強いるのは,米中関係ではなく,日中関係の悪化であろう.日本は,戦後の抑制を放棄し,中国の攻撃的な姿勢に対する同盟関係を諸国とともに築こうとしている.
FP
AUGUST 21, 2014
NATO's
Brave New World
BY JAMES STAVRIDIS
l 人種差別
NYT AUG.
21, 2014
Enough
Hate for Everyone
Kenan Malik
l イスラエル
Bloomberg AUG 21, 2014
Israel's
Failed Assassination Strategy
By Rami G. Khouri
イスラエルによるハマス指導者の暗殺は平和や解決をもたらさない.
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The
Economist August 7th 2014
A
personal choice
Prostitution
and the internet: More bang for your buck
China’s
far west: A Chechnya in the making
The
British diaspora: And don’t come back
Hong
Kong’s finances: Going with the flow
(コメント) インターネットの活用で,セックス産業も個人間の自由な契約に似てくる,という記事が論争的です.
中国が新疆ウィグルで作る新しいチェチェン問題を重視しています.イギリス人の大学卒業生は,ますますイギリス以外で雇用されています.
そして香港は,北京政府との密接な関係を貿易・金融業の発展に利用してきました.今や,それは不安材料にもなります.西側との紛争が激化するロシアからは,ドルに固定した,しかもアメリカの影響を受けない,香港ドルに資本移動が起きています.とはいえ,香港ドルの金利はアメリカ連銀が決めるのです.中国・人民元が完全に変動制を採用して金融政策を分離するまで.
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IPEの想像力 8/25/14
ミニスカートの街娼,電話ボックスや公衆トイレに貼られた写真,電話番号,あるいは,のぞき部屋,公娼街の飾り窓,・・・国によって売買春の在り方は異なります.
・・・アメリカでは,ネヴァダ以外,売春が非合法であり,その年間取引額は140億ドルと推定されたが,これも大きく過小評価された数字だ.イギリスでは売春行為が合法であり,ポン引きや売春宿は非合法だ.それはGDPを53億ポンド(89億ドル)も増やしている.売春ではなく,買春を非合法化する国が増えている.スウェーデンは1999年に買春を犯罪にした最初のケースであり,その後,ノルウェー,アイスランド,フランスが続いた.しかし,セックスの売買は常に存在した.・・・
The Economistは,以前から,貿易自由化だけでなく,セックスも,麻薬も,ギャンブルも,自由化を支持しています.女性にとっても,男性にとっても,それは「仕事」である,と考えます.
なぜセックスをめぐる自由な関係に,国家が法的な制限を持ち込むのか? 売買春は家族の価値観と衝突します.倫理規範を損なう.非合法化は他の犯罪や暴力(組織)と結びつく.社会的な弱者が売春婦となり,彼らが差別・排除されて最底辺層に落とされ,そこから抜け出せない.
インターネットにおけるウェブサイトの利用は,法律の強制力によってではなく,自由な個人の選択によって問題を解決する,とThe Economistは考えます.売春はより安全で,健全な,社会サービスの一つになるのです.ネットの情報を利用して,仲介人や客の暴力から解放され,異常者を排除し,特別なプレーには追加料金が生じ,豊胸手術もそれに見合う高い価格が得られます.国家介入による歪みや公的資源の浪費はなくなります.
数千人,数万人のセックス・サービスに関する個人ウェブ広告がサイトによって集約され,そのサービス内容や写真,動画,通信,顧客によるランキング,プレイ・レヴュー,なども掲載されています.自分の好みや利用したい都市を選択して検索すれば,サービスのリストが提示されます.
もちろん,1万人の売春広告を観て,これは素晴らしい,と思う人もいるでしょうが,そうでもない,と私は思います.むしろ,露出されたセックスに辟易する人も多いでしょう.・・・セックスの楽しみや満足とは何か? それは,その人の性格,社会・経済条件,文化,年齢や経験,など,さまざまな要因で変化すると思います.
インターネットが,その規範を破壊し,個々の要求を解放するのは,他のさまざまな問題と同じです.ネット市場も,ネット犯罪も,爆発的に増加しました.
たとえ売春が「仕事」であるとしても,他の3K労働のように機械化され,あるいは,排除されたマイノリティーや外国人に集中し,あるいは,ヴァーチャル化していくでしょう.売春ツアーやスカイプによるのぞき部屋も世界中で社会規範を破壊しています.
ネット上の市場化でも,個人の自由を守る以外に,合法化の範囲と行動規範,監視・強制機関が求められるでしょう.エロチックな想像力をめぐる装置・ドラッグ・組織などが,既存社会と独立に存在するわけではないからです.
暴力や搾取,犯罪から解放された,フリー・セックス・クラブの時代がネットを介して実現するかもしれません.他方で,家族の倫理,離婚,性愛,移民労働者,など,市場契約が必ずしも「人間社会」の理想をもたらすわけではありません.セックスの理想と「自由な売買春」とは違います.
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