IPEの果樹園2014

今週のReview

8/25-30

 

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アメリカの黒人差別問題 ・・・21世紀の戦争 ・・・金融政策論争 ・・・ISISと新しい空爆 ・・・国際通貨制度改革 ・・・ウクライナ危機 ・・・オバマ外交のリアリズム ・・・中国の市場と支配 ・・・スコットランド独立論争 ・・・メキシコと開発戦略 ・・・アジアの共存戦略

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, Yale Global そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  アメリカの黒人差別問題

NYT AUG. 14, 2014

The Search for Calm in Missouri

By THE EDITORIAL BOARD

セントルイス市の郊外ファーガソンFergusonに,上位の政府機関が介入するのは賢明なことだ.前夜は,武器を持たない黒人の若者たちが抗議するのを,白人の警官隊がゴム弾や催涙ガスで鎮圧する,という過剰警備の光景が広がった.ミズーリ州知事Jay Nixonは,漸く街を回り,ハイウェー・パトロールとの交代を命令した.

オバマ大統領は,警察の「過剰な強制」戦術を非難し,事件を報道するジャーナリストへの嫌がらせや逮捕を非難した.そして,連邦機関が事件を捜査することを明言し,18歳の黒人男性Michael Brownに何が起きたのか,確定しなければならない,と述べた.世界が映像を監視する中で,抗議は暴動に変わった.

市警察署は,殺害の脅迫を受けている,という理由で,黒人青年を撃った警官の氏名を公表しなかった.しかし,群衆は警察の過剰な暴力によって行動を刺激されている,警察の行為は住民を守るより,挑発している,と新聞記者たちは述べている.市政府は警察を「非軍事化」するべきだ,という.

住民たちは,警察官の過去の行動記録を調べる権利を持つ.警官が,警備するコミュニティーの住民であったかどうか,知る権利がある.同様のケースについて,アメリカ中で平和的な抗議行動が起きている.

白人の支配的な市政府・警察が,69%は黒人である21000人のファーガソン住民に対して,失った信頼を回復するのは難しいだろう.ファーガソンや,同様に人種的な分離を示す町で,真の対話を行い,通りから武器を排除しなければならない.

theguardian.com, Friday 15 August 2014

Like Michael Brown in Ferguson, to be poor and black renders you collateral

Gary Younge

若者が死ぬはずのない場所で死んでいる.映画館,学校,大学キャンパス.その死は,突如,モラルの混乱に向かう.

貧しい黒人の居住区で10代の若者が撃たれても,しばしば,それは地方紙に小さく載るだけだ.コミュニティーを超えては,彼らの死が小さなため息をもたらすだけである.アメリカの黒人労働者たちは弱い立場にある.巻き添えになるだけだ.

Jesmyn WardMen We Reaped)は書いた.「数字が示すように,歴史,人種差別,貧困,経済的パワーが重なって,黒人の価値は決まった.Nothing何もない.」

公民権運動から50年を経て,法律は変わった.しかし,人種差別は頑固に残っている.ファーガソンは住民の3分の2が黒人である.しかし,警察官の6%以下,市議会の16%,教育委員会の0%が黒人である.それは占領下の町に見える.

ニューヨークでは,この10年で400万回以上の職務質問が行われた.NYPDによれば,その90%は何の罪もない黒人とヒスパニックであった.

ニューヨーク警察本部長Ray Kellyは述べた.彼が黒人やラティーノを標的にするのは「彼らが家を離れたら,いつも警察の標的であることを教えて,彼らに恐怖を植え付けるためだ.」

黒人コミュニティーにおける警察の軍事化は,この2世代にわたって強化されてきたことである.Michelle Alexanderthe New Jim Crow)は書いた.1972年には,アメリカ全土でわずか100回ほどの麻薬にかかわる準軍事的な強制捜査があっただけだ.「1980年初めまでに,SWATSpecial Weapons and Tactics 特別機動隊)の年間出動回数は3000回になり,1996年に3万回,2001年には4万回となった.」

大統領になって何がしたいのか? と妻Michelleに訊かれたオバマは答えた.“The world will look at us differently. And millions of kids across this country will look at themselves differently. That alone is something.”

しかし,アメリカの人種差別はその形が変わったのであり,黒人たちを見直したわけではなかった.雇用や所得は不平等であり,資産の格差は拡大した.警察は恐怖で町を支配した.停止を命じ,職務質問し,銃撃し,射殺している.

Michael Brownのことに戻れば,彼はオバマが2012年の大統領選挙で勝利した11月の夜,宣誓した姿を観て,自分の見方を変えたかもしれない.アメリカ政府の最高位に就くことも,彼の選んだいかなる分野で自分の能力を発揮することもできる,と思ったかもしれない.しかし,彼を銃撃した警察官は,将来のアメリカ大統領を銃殺したとは思わなかった.だから,Michael Brown以前のすべての黒人たちと同様に,(警察の標的とならずに)街を歩くこともできない.

FT August 15, 2014

Warrior cops on America’s streets

NYT AUG. 16, 2014

Playing Soldier in the Suburbs

Ross Douthat

アメリカにも1970年代初めに,誘拐などを行う危険なテロ集団があった.1974年の春に銃撃戦で,6人のテロリストたちは射殺され,警察官には負傷者も出なかったのは,少数精鋭の警察官を育てていたからだ.8年前から,ワッツ暴動後,戦闘準備態勢にある警察官が活躍し,アメリカ最初のSWATになった.

しかし,国内のテロ集団が制圧された後も,警察の武装強化は終わらなかった.特に,1990年代,そして911とその後の政策がこれに加わった.

われわれのテロ対策と予算が,地方の警察まで強力な武装体制を整備し,あれほど短時間で,ファーガソンの町を軍事占領状態に変える力を与えた.

NYT AUG. 17, 2014

Frustration in Ferguson

Charles M. Blow

武装警官たちは,ミズーリ郊外よりもバクダッドの方が似合うだろう.

NYT AUG. 17, 2014

In Ferguson, Black Town, White Power

By JEFF SMITH

政治学者Harold Lasswell1936年に書いたように,政治とは「誰が,いつ,何を,どのように,手に入れるのか」に関する研究だ.

産業の変化,都市の分割,人口移動,住民団体の組織化,など.白人の支配する黒人の町ができた.郊外地区の財源はハイウェーと交通違反の罰金である.それも,貧しい黒人の方が多く支払っている.

「縮小する町では,しばしば政治が悪化し,ゼロサム・ゲームになる.しかし,団結すれば規模の経済が発揮され,経済機会を増やす借入能力の拡大を可能にし,人種的な緊張を強いる経済圧力を緩和し,町を牛耳る仲間内の白人支配を打破できる.」

NYT AUG. 17, 2014

The Mayor, the Cops and the Chorus of Outrage

By LAWRENCE DOWNES

The Guardian, Monday 18 August 2014

In Ferguson the violence of the state created the violence of the street

Gary Younge

誰も一層の暴力を望まない.しかし,キング牧師が述べたように,「暴動とは,その声を聞いてもらえない者たちの言葉である.」

“A lot of people have lost faith in the establishment … They’ve lost faith in the democratic process. They’ve lost faith in non-violence … [T]hose who make this peaceful revolution impossible will make a violent revolution inevitable, and we’ve got to get this over, I need help. I need some victories, I need concessions.”

しかし,キングはそれらを得ることができなかった.翌年,ミネソタからタンパにかけて,150以上の暴動が起きた.

2年前,ロンドンの暴動の後,私は書いた.犯罪が含まれているという主張は,それがあたかも唯一の暴徒の動機であり,状況を無関係とみなすように,愚かなことだ.ここで起きている政治的な行動についての,部分的な記述にすぎない.彼らは略奪を始めており,万引きではない.彼らは警察による町の支配に挑戦しており,警察自動車のホイールキャップを盗んでいるのではない.ある集団が,法と社会慣習を軽視する力に参加しているなら,彼らの行動は政治的なものだ.

確かに,暴動には多くの問題は生じる.正当な憤りや政治的反抗だけでなく,暴動に乗じて蛮行を楽しむもの,恐怖を好む者が集まる.抵抗はしばしば美化されるが,醜いものである.

暴徒は分極化する.主張を支持する者は減り,共感者も国家に取り込まれ,警察による鎮圧を支持する.人々は問うだろう.暴力的な抵抗で何が達成できるというのか? その通り.それが正しいのは,こう問い直すときだ.暴動の前にあった「平和」の本質は何か? と.

落ち着いて,冷静になろうと言う者は,問わねばならない.あなたの息子,兄弟,恋人,が同様に射殺されると知っても,冷静でいるのか? 人々には占領に抵抗する権利がある.

暴動は,他の選択肢を持たないものの最も粗雑な手段である.裕福な人々は暴動を起こさない.彼らには多くの形で影響力があるから.暴動は階級的な行動である.

問題は,彼らの声を誰が聞いているか,である.

The Guardian, Tuesday 19 August 2014

The Guardian view on the Ferguson riots

Editorial

FT August 21, 2014

Ferguson isn’t my first race riot

Gary Silverman


l  21世紀の戦争

Project Syndicate AUG 14, 2014

The Coming CLASS War

ANDREW SHENG

クラウゼヴィッツや孫氏の言葉は,ますます混乱を深める21世紀においても正しい.

戦争は伝統的に領土をめぐって行われた.領土の定義は,5つの分野を組み合わせて発展した.すなわち,陸,海,空,宇宙,そして,サイバー空間である.世界が直面する現代の“CLASS war”を,これらの分野に従って定義すれば,それはcreed信念, clan部族, culture文化, climate気候, and currency貨幣,をめぐる戦争である.

1に,宗教や信念は,歴史的に戦争の主要な原因であったが,最近も,聖戦主義グループの拡大,ナイジェリア,ミャンマー,タイ南部,フィリピン,などで,暴力的な衝突が起きている.

2の部族も,ヨーロッパ,トルコ,インド,その他で,移民や,職をめぐる争いとともに紛争を起こしている.植民地主義によるアフリカの分割,ソビエト連邦の崩壊によって残されたロシア人,なども,長期的な不満の源だ.

3に,特異な歴史や制度を持つ社会が創り出した文化の違いがある.世界人口の18%でしかない欧米が経済(世界GDPの半分)を支配し,不当に大きな影響力を占めているが,他地域の大国が現れて西側に挑戦し始めている.世界市場だけでなく資源も枯渇し,食糧を奪い合うことが紛争を生むだろう.

それはグローバリゼーションの終わりを意味する.すべての国が比較優位を実現し,食糧も資源も手に入るという前提は崩れた.経済制裁が増え,経済ルートは封鎖され,世界貿易はバルカン化する.国家さえ,価値や資源をめぐって互いに争うもっと小さな単位に分裂する.

紛争につながる最後のリスクは貨幣である.先進諸国の中央銀行が行う拡大的な金融政策は,大規模で,浮動的な資本流入を新興経済にもたらし,不安定化と「通貨戦争」を生じている.世界の主要準備通貨であるドルをつかって,アメリカ政府は国際銀行業を規制し,外交政策の道具にしている.

BNPパリバへの制裁金や,アルゼンチン公債のデフォルトを拒む支払い命令など,アメリカ中心の金融システムに依存することを新興諸国は嫌うようになった.IMFや世界銀行に対抗する国際金融機関をBRICSが設立したのもドル支配を嫌うからだ.

オバマはアメリカの指導力を前提に,その方法を問題にした.しかし,それは根本的な戦争状態が現れる流れを軽視した発想だ.


l  金融政策論争

NYT AUG. 14, 2014

The Forever Slump

Paul Krugman

やり過ぎだ,と,まだ足りない,との論争(日本化を避ける論争)が続いている.ヨーロッパの景気は回復せず,デフレへのリスクが高まっている.他方,アメリカは,ヨーロッパに比べて危機が軽かっただけでなく,FRBYellen議長がECBより問題を正しく理解している.

FT Aug 18, 2014

The Fed’s regimen will not remedy Europe’s ills

By PhilippHildebrand

Project Syndicate AUG 18, 2014

How Money is Made

KARL-THEODOR ZU GUTTENBERG and RICHARD A. WERNER

金融政策が民間銀行の融資を拡大する役割を担う姿勢が見られる.しかし,それが生産的な融資であるか,資産市場のブーム・アンド・バストを増幅するか,慎重に判断しなければならない.

FT August 19, 2014

Japan’s warning to eurozone bond markets

By John Plender

ドイツは財政赤字を抑制し,ECBQEを採用しない.そのせいでユーロ高も加わった.ユーロ圏の景気はアメリカ向けの輸出に依存し,アメリカの軍事支出に頼っている.構造改革を進めることがユーロ圏の成長をもたらす.

FT August 19, 2014

Keep rates low until the hidden jobless return to work

By Adam Posen

Jackson Holeに集まる中央銀行家たちの会議では,金融緩和に対する労働市場の影響が中心テーマになる.それこそFRBYellen議長とその同僚たちの問題である.

インフレ率を抑えれば成長は取り戻せるが,失業率は高いまま継続すると,容易に低下せず,成長力を失ってしまう.失業率が高いことを重視して,インフレ率が高くてもQE終結を急ぐべきではない.

1980年代,Volcker議長は,インフレ・スパイラルが続くうちは,高失業率になっても金融緩和を急がなかった.今はそれと逆である.

Bloomberg AUG 19, 2014

Will the Calm in Global Markets Last?

Jim O'Neill

金融市場の平静さは続くのか? 少なくとも,地政学的な危機の多くは予測されたシナリオを超えたものではない.金融市場も雇用を重視している.アメリカの雇用が回復すればQEは終わり,景気回復に向かう.むしろ,そうでない場合の方が予測は難しい.

FT August 20, 2014

Draghi has to do, as well as say, whatever it takes

By RichardPortes

FT August 21, 2014

Dramas to match scenery at Jackson Hole

By Ralph Atkins

FT August 21, 2014

Why inflation remains best way to avoid stagnation

By Tim Harford

Project Syndicate AUG 21, 2014

Italy’s Downward Spiral

HANS-WERNER SINN

VOX, 21 August 2014

How to jumpstart the Eurozone economy

Francesco Giavazzi, Guido Tabellini

ユーロ圏もQEと財政支出を拡大しなければならない.それに対してドイツなどから政治的な反対があるけれど,緊縮策は成功しない.

Bloomberg AUG 21, 2014

Central Bankers Set Stage for Jackson Hole

By Mohamed A. El-Erian


l  ISISと新しい空爆

theguardian.com, Friday 15 August 2014

Iraqi politics needs an overhaul – and now is the perfect opportunity

Ghaith Abdul-Ahad

NYT AUG. 18, 2014

To Aid Kurdistan, Look Beyond Iraq

By ALIZA MARCUS and ANDREW APOSTOLOU

オバマが地上軍の投入を拒むなら,アメリカはクルド・ナショナリズムに対する政策を変えるべきだ.イラクが国家として生き延びるためには,今や,強力なクルド国家が連邦制の中に存在することを推進することだろう.

FT August 19, 2014

The Arab world has to take on Isis in its own backyard

By ShashankJoshi

SPIEGEL ONLINE 08/19/2014

Caliphate of Fear

The Curse of the Islamic State

By SPIEGEL Staff

イラクやシリアのYazidisヤシディ教徒はISISもしくはイスラム国家の迫害を逃れて逃亡している.また,ISISの攻撃を受けるクルド人支配地域に対して,ヨーロッパ諸国は支援を行い,アメリカも空爆を再開した.

シリアのRaqqaを首都として,イスラム国家はすでに存在している.すべての女性がniqabヴェールを着け,ズボンは禁止された.窃盗犯は手を切り落とされる.反対する者は公開ではりつけにされ,頭部を切り落とされる.こうした残虐行為をソーシャルメディアに流している.

女性の髪を黒く染めるためにだけ少数の床屋が開店している,結婚式でも音楽を禁止し,市場で売られるヤギやヒツジの後半身には性器を見せないためにカバーがかけられる.1日に5度の礼拝を欠かせば,誰であれ命を失くす危険がある.

イスラム国家は2003年のアメリカによるイラク侵攻後に,アルカイダの一部が過激化して分離したものだ.シーア派のマリキ首相がスンニ派を抑圧し,イスラム国家のような民兵にスンニ派の支持が集まった.

湾岸諸国やサウジアラビアのようなスンニ派の諸国から資金を得ている.また,その兵力はシリアに6000から8000人,イラクで同盟する民兵は15000人以上いる,と推定されている.その中には2000から3000人のヨーロッパから参加した兵士もいるようだ.

イスラム国家は一種の国家のように社会サービスを提供し,徴税している.彼らはアルカイダを超える残虐性と狂信性を示し,また最新の通信メディアや映像による宣伝にたけている.

NYT AUG. 19, 2014

The Real Middle East Crisis Is Economic

By MICHAEL SINGH

中東の問題は,その経済活動が世界から切り離されていることだ.たとえば中国や韓国に比べて,GDPに対する貿易額は小さく,それに比例して,経済成長も大きく劣っている.

FP AUGUST 19, 2014

Five Questions by Which to Judge Obama’s Decision to Return U.S. Forces to Combat

BY PETER D. FEAVER

アメリカ国民は,明確な限定付きながら,支援に関する不満を抑えてオバマの決断を支持しているように見える.それゆえ大統領は5つの重要な疑問に答えるべきだ.

1.イスラム国家がわれわれを攻撃する動機を与えないか? 2.イスラム国家はアメリカの主要な脅威なのか? 3.アルカイダへの攻撃で,イスラム国家は抑止されるのではないか? 4.イスラム国家を攻撃するのを遅らせた方が,その脅威を国民が理解しやすいのではないか? 5.空爆だけで十分か? もっと介入する必要があるか?

FP AUGUST 20, 2014

Welcome to Extremistan

BY DAVID J. ROTHKOPF


l  最低賃金

FT August 15, 2014

Raising the minimum wage is the wrong way to deal with low pay

By Kevin Murphy and Robert Topel


l  イノベーション

FT August 15, 2014

How to ignite the creative spark

Gillian Tett

イノベーションについて,政治家やCEOsは多くのことを語るが,よくわかっていない.どうすれば新しい発想が刺激できるのか? この問題は,ヨーロッパでもアメリカでも,生産性の上昇を決める重要な要因だ.

FT August 21, 2014

No need for banks in an era of intellectual capital

By Felix Salmon


l  国際通貨制度改革

Project Syndicate AUG 15, 2014

The Fragmentation of Bretton Woods

MOHAMED A. EL-ERIAN

1944年に連合諸国44カ国が集まったブレトンウッズ会議でIMFと世界銀行は成立した.それらは各国に,近視眼的な政策を取らないよう,世界経済の安定性や地政学的なリスクを抑えるように機能した.1930年代の世界不況が近隣窮乏化政策を生じたことに学んだからだ.

IMF/世界銀行から利益を受けなかった国はほとんどないが,これらの機関の改革に反対する国が多い.そのため,ますます多くの,システムで重要な役割を果たす諸国が,IMF/世界銀行の役割を妨げるような手段を採用しつつある.

数週間前,BRICS諸国は,流動性の危機に応じる準備をプールし,また,独自の開発銀行を立ち上げた.彼らは,異なる文化,地政学,歴史的なつながりを求めるというより,欧米諸国がIMF/世界銀行のトップを独占する旧来のルールを改革しないことへの不満を共有している.ヨーロッパ諸国は,ユーロ圏の公的債務危機に際して,IMF融資のルールを歪曲した.新興諸国は,こうした機関が能力主義や競争,透明性を唱えて,彼らに融資しないことを嫌っている.

また,ブレトンウッズの多角主義的な枠組みは,特恵的な地域貿易協定が増えていることでも侵食されている.

しかし,国際機関の改革は国内の政治的反対を克服しなければできない.不況や国内政治の分極化は,アメリカがそうであるように,改革を妨げている.国際制度改革の遅れは,安全保障にまで言及しないが,経済と金融の見通しを悪化させている.

VOX, 18 August 2014

Great Depression recovery: The role of capital controls

Kris James Mitchener , Kirsten Wandschneider

資本規制に関する見方が最近変化した.しかし,大恐慌の時期に行われた資本規制の効果を分析すれば,資本規制はマクロ経済の安定化に役立たないことがわかる.


後半へ続く)