前半から続く)


l  ガザ戦争と空爆

NYT AUG. 1, 2014

This Time, a Different Kind of War Between Israel and Hamas

By SERGE SCHMEMANN

NYT AUG. 2, 2014

How This War Ends

Thomas L. Friedman

この戦争はどのように終わるのか? ここにいるのはトンネルや壁を築いた,アラブ,パレスチナ,イスラエルの一世代である.誰も橋や門を築く気はない.

1つだけ途がある.ハマスはパレスチナの統一政府に参加し,和平を実現する.しかし,エジプトもイスラエルも封鎖を解く.そして穏健派のアラブ諸国は,パレスチナの復興基金に出資する.

The Guardian, Sunday 3 August 2014

Gaza is not as I expected. Amid the terror, there is hope

Paul Mason

FT August 4, 2014

Arab turmoil makes Israel reckless and complacent

Gideon Rachman

国連の学校を爆撃したイスラエルには弁解の余地がない,とアメリカは激しく非難した.

冷戦終結,アラブの春,など,世界は大きく変わったが,イスラエルとパレスチナの紛争は繰り返されている.国際政治は,短期的に,イスラエルへの非難を和らげている.しかし長期的には,イスラエルは重要な友好関係を失い,パレスチナにはさらに強硬な武装勢力が登場することになるだろう.

Project Syndicate AUG 4, 2014

Ethics in Gaza

PETER SINGER

ハマスの戦術がイスラエルの反撃を招いた.ハマスのロケット攻撃に,イスラエルは自衛する権利がある.ロケット発射台を破壊し,トンネルを破壊した.イスラエルは民間人の犠牲者を減らす配慮を示している.ハマスはそうではない.

戦争は地獄だ,と言うだけでは答えにならない.民間人の死傷者を減らすべきだ.完全な平和主義と,道徳性を無視した戦争状態との間には,戦争の邪悪さを抑えるべき中間地帯がある.

NYT AUG. 4, 2014

Israel’s Colonialism Must End

Ali Jarbawi

FP AUGUST 4, 2014

How to Fix It

BY JIMMY CARTER, MARY ROBINSON

学校や病院を爆撃するイスラエル自衛軍の行動には正当性が何もない.また,双方が市民への攻撃を行っている.それは戦争においても犯罪行為だ.国際社会は,まず,7年に及ぶガザ地区の封鎖を解くことを目標にするべきだ.ガザからエジプト,イスラエル,海への人やモノの移動は完全に自由にする.

イスラエルの隣にパレスチナ国家が成立し,エルサレムに平和が続くことを,双方は目標にするべきだ.まず,ハマスを正当な交渉相手と認めるべきだ.

FP AUG. 4, 2014

Hamas's BFFs

BY JONATHAN SCHANZER

FP AUG. 4, 2014

Obama's Faulty Logic on Gaza Is Going to Hurt U.S. Standing All Across the Middle East

BY PAUL BONICELLI

FT August 5, 2014

In search of lasting peace in Gaza

Project Syndicate AUG 5, 2014

Why Bomb Civilians?

IAN BURUMA

2009年のガザ侵攻で,当時のイスラエル外相Avigdor Liebermanは,アメリカの日本との戦争にたとえた.地上軍の投入は必要ない.敵は空からの爆撃で降伏する,と.

しかし,なぜ学校や発電所,病院,モスク,人口の密集した地区を爆撃するのか? 政府は,そこにパレスチナのミサイルが隠されている,と説明する.しかし,イスラエルの指導者は,こうした爆撃によってパレスチナ人の戦意をくじくことができる,と考えているようだ.

これは「戦略爆撃」という概念である.敵の「致命的なセンター」を破壊することで,人々の意志を破壊できる,と言うのだ.1920年代に,イタリアのGuilio Douhet,アメリカのWilliam Mitchell,イギリスのHugh Trenchard,などが実行した.その頂点は,アメリカが広島と長崎に原子爆弾を使用したことである.Avigdor Liebermanが意図したのはこれであろう.

ナチス・ドイツはイギリスの諸都市London, Birmingham, and Coventryを,日本は1930年代に中国の都市Shanghai, Chongqing, and Hankowを,1940年,ドイツはロッテルダムを,空から破壊した.1943年以降,イギリスのArthur “Bomber” Harrisは,ドイツのほとんどすべての都市を空爆し,夜はイギリス空軍,昼はアメリカ空軍が爆撃した.

日本の都市に対する空爆はさらにひどかった.広島・長崎に先立って,Curtis LeMay将軍率いるアメリカ空軍USAAFは日本の主要都市を焼夷弾で焼き尽くした.

戦略爆撃は「全体戦争 “total war”」から導かれた概念である.その場合,市民は戦闘員であり,戦闘な攻撃目標である.1965年,LeMayは北ベトナムを空爆し,彼らを「石器時代に戻す」と恐喝した.

問題は,戦略爆撃が一度も成功しなかったことである(すでに政府が降伏していたロッテルダム以外).ロンドン,ベルリン,東京,ハノイの戦意は挫けなかった.むしろ市民たちは,たとえ嫌われていた指導者であっても,彼らを保護するために何かできる,自分たちの指導者を支持した.

なぜ効果のない戦略が使用され続けるのか? 指導者の冷酷さ.あるいは,敵ではなく,自分たちの国で戦意を高めるために.

空爆の利点はほかにもある.それは自国の犠牲を生まないことだ.第1次世界大戦の犠牲者の多さを記憶していた人々は,第2次世界大戦で自国兵士を失わずに敵を攻撃できることを重視した.多くのイギリス軍パイロットが亡くなったけれど,地上軍の侵攻はもっと多くの死者を出しただろう.空軍の優位は,1920年代のメソポタミアでも,1945年の日本でも,大量殺戮をコストなしに実行した.

かつてチャーチルが述べたように,空爆は「安価に」帝国を治安維持する方法であった.はるか上空から,十分に多くの人民を殺戮することで,反乱を停止できる.今,オバマがアフガニスタンやパキスタン,イエメンでドローンを使用するのも,同じ原理だ.

しかし,その勝利は幻である.市民を殺せば,新しい反徒を生むからだ.ネタニヤフがそれを知らないとしたら愚かであり,それを知って空爆を続けるなら,全ての平和が無駄だとあきらめているのだろう.

SPIEGEL ONLINE 08/05/2014

Gaza Crisis

'The Real Danger to Israel Comes from Within'

Interview Conducted by Julia Amalia Heyer

NYT AUG. 5, 2014

Start With Gaza

Roger Cohen

NYT AUG. 5, 2014

Dear Guests

Thomas L. Friedman

FP AUGUST 5, 2014

The Death of Sympathy

BY GREGG CARLSTROM

FP AUGUST 6, 2014

Who Won the Gaza War?

BY AARON DAVID MILLER

FP AUGUST 6, 2014

On Israel's Defeat in Gaza

BY DAVID ROTHKOPF

NYT AUG. 8, 2014

Israel’s Hard Choice on Hamas

By DANIEL NISMAN and RON GILRAN


l  アメリカ・アフリカ会議

Project Syndicate AUG 2, 2014

The African Dream

PAUL KAGAME, UHURU KENYATTA and YOWERI MUSEVENI

FT August 3, 2014

A new American strategy for business in Africa

By JosephStiglitz

資源の採取だけでは若者たちの雇用が増えない.ドローンの基地を建設して治安を高め,ビジネスと雇用の機会を増やすために協力することだ.

FT August 4, 2014

Pentagon confronts militant dilemma in Africa

By William Wallis in Washington and Katrina Manson in Nairobi

FT August 5, 2014

Beijing invites US to link up over Africa

By Geoff Dyer in Washington

NYT AUG. 5, 2014

Obama’s Africa Summit

By THE EDITORIAL BOARD

FT August 7, 2014

Africa shows potential to drive global growth

By William Wallis in Washington


l  イスラエル国家

Bloomberg AUG 3, 2014

Israel, Trapped by Nationalism

By Pankaj Mishra

グローバリゼーションの時代に,19世紀の国家主権や国籍,領土,を求めるナショナリズムは実現できない.人々はますます相互依存を深め,国境は穴だらけの通過性を高めている.

2国家案という目標だけでは,彼らの膨張したナショナリズムは永続する平和や地域の安全保障をもたらさない.

FT August 7, 2014

Israel: Worlds apart

By John Reed

NYT AUG. 7, 2014

Israel’s Fair-Weather Fans

By SHMUEL ROSNER

The Guardian, Friday 8 August 2014

Please don’t tell me what I should think about Israel

Hadley Freeman


l  100円ショップ

NYT AUG. 3, 2014

A Tale of Two Dollar Stores

By LOUIS HYMAN

北アメリカ最大の2つのダラー・ショップ(100円ショップ)Dollar Tree and Family Dollarが合併する.それはヘッジファンドに多くの利益をもたらすが,低所得者層の利益にはならない.その目標は,市場を支配して納入先から安価な商品を集めるWalmartのやり方である.しかし,2つの納入システムは異質である.


FT August 4, 2014

Small-scale vision is right for post-imperial Britain

By JananGanesh


Bloomberg AUG 4, 2014

Asia's Next Crisis Is a Flood of Debt

By William Pesek


l  アメリカの金融政策と新興市場

FP AUGUST 4, 2014

Your Dollar, Our Problem

BY KEVIN P. GALLAGHER

新興市場や発展途上諸国がアメリカの量的緩和QEを嫌うのは,キャリー・トレードによる民間資本の流入と流出が経済に破壊的な影響を及ぼすからだ.


l  不平等と経済政策

FT August 5, 2014

The inequality debate avoids asking who is harmed

By Adam Posen

不平等が関心を集め,富裕層や再分配,相続税,規制強化が論争されている.しかし,誰が,どのように,苦しめられているのか? そのことを議論しなければ,不平等に関する政策だけで彼らの問題を解決することはできない.

重要なことは,不安定な雇用や,人種,性別,宗教,などによる社会的な排除である.アメリカでは黒人が白人よりも多く失業し,貧困に苦しみ,ヨーロッパのイスラム教徒,特に,若者たちは社会から排除されている.アメリカでも地理的な移動性は低下しており,住む地域によって雇用機会や教育,長期的な健康まで影響される.


l  マカオ

FT August 5, 2014

Luck runs out for Macau gaming stocks

By Josh Noble in Hong Kong

マカオの賭博業も,中国の富裕層や旅行ブーム,賭博業者の寡占状態を維持していたが,急成長から下降に変わった.


l  オバマ外交

SPIEGEL ONLINE 08/05/2014

Global Missionary

John Kerry's Faltering Effort to Redefine US Foreign Policy

By Holger Stark

Bloomberg AUG 6, 2014

Obama Is No Foreign Policy Wimp

By Noah Smith


l  スコットランド独立論争

The Guardian, Wednesday 6 August 2014

Scottish independence would not spark a War of the Worlds

Deborah Orr

FT August 6, 2014

History lesson from a Scottish declaration

By John McDermott

FT August 6, 2014

Hard truths about Scotland’s future

FT August 7, 2014

Thetruth and lies of Scottish and EU secessionists

By BillEmmott

スコットランド独立を問う18日の住民投票を前に,2人の政治家(Alex Salmond, the pro-independence Scottish first minister, and Alistair Darling, leader of the Better Together campaign)が350人の観衆を前に,テレビ討論に立った.

討論は,政治家たちの弁舌を駆使した魅力とともに,その選択の予測できない将来を確実に見せる意味では陰鬱なものであった.スコットランド独立のコストとベネフィットも,EU加盟国として残れるかも,不確実なものだ.

なぜなら結果は何十年もかけて長期的に変化して決まるのであり,それは各人の戦略的な方針によるものである.2020年代,30年代,40年代,イギリスやスコットランドがどのような経済状態,安全保障,グローバリゼーションと保護主義にあると思うか.それによって判断は変わるだろう.

しかも,政策の変化や分離の条件もわからないのだ.

イギリスのEU離脱に関する国民投票もそうだ.サッチャーは,イギリスがブラッセルの官僚制に支配されるのを決して受け入れなかった.何としてでもEUを変える.しかし,イギリスはヨーロッパの中で生きる.その意味は,EUが選択の問題ではないこと,そして,戦略が問題だということだ.


FT August 6, 2014

A critical autumn nears for EM currencies

By Delphine StraussAuthor alerts


l  中東からの離脱

FP AUGUST 7, 2014

Do No (More) Harm

BY STEPHEN M. WALT

アメリカが第2次世界大戦後に何度も深くかかわってきた中東情勢は悪化するばかりである.カダフィが失脚したときにハイ・ファイブを交わしたリベラルのタカ派も,リビア情勢の悪化に裏切られた.あらゆる前提条件を取り払って,その方針を再考するときだ.

アメリカがどのような外交を掲げても,中東には,アメリカが望むような,長期的に信頼できる同盟国が存在しない.エジプト,トルコ,シリア,イラン,ヨルダン,など.いずれも深刻な問題がある.イスラエルとの「特別な関係」は,同時に,アメリカに対する反感を生み,アメリカの外交を制約してきた.他方,パレスチナ自治政府は腐敗し,非効率で,内部分裂している.

しかし,中東情勢はアメリカの死活的な利益ではなく,アメリカの安全保障を脅かさない.アメリカ人にほとんど意味のない中東で,わざわざアメリカが兵士や財源を投入して事態を悪化させているのは,愚かなことである.

2次世界大戦後,単一の勢力によって石油豊富なペルシャ湾岸が支配されるのを阻止するのがアメリカの戦略的目標であった.しかし,今,混乱を深める中東を支配できる勢力など考えられない.

外交の目標に,さまざまな地域の民衆を助ける道義や,大量破壊兵器の拡散を防ぐ戦略的必要を説く者もいる.しかし,過去20年間の介入は,むしろそれらを悪化させた.アメリカの軍事介入がなければ,ISISのようなイスラム国家の運動や,イランの核開発計画などは,今よりも弱く,抑えられただろう.

アメリカは中東から身を引くべきである.これは孤立主義ではない.戦略的な離脱,関与の抑制,である.アメリカ外交における優先順位を下げるのだ.中東地域は各国の好きなようにさせるが,もし彼らが助けを求めてきたら,厳しい条件を付けて,アメリカの外交方針によって判断すればよい.

それは,アメリカが中東和平からも身を引くことを意味する.アメリカ国内で政治家たちがイスラエルの関心を否定できないのであれば,アメリカはイスラエルの見方として外交を制約されている.たとえ善意からでも,アメリカはそのまま中東和平でも立場を制約され,仲介は失敗する.むしろアメリカは,中東各国が独自に行動し,イスラエルが望むなら「大イスラエル」主義を許すことだ.それが民主主義を破壊し,新しいアパルトヘイトとして国際社会で孤立しても,それはアメリカの利害を侵すものではない.アメリカは,エジプト,イスラエル,その他,いくつかの諸国に対する経済援助を廃止する.

アメリカの関与が,中東における混乱をさらに悪化させることは避けられる.それはアメリカの兵士や財源を守り,アメリカに対するテロを減らすだろう.また,人道的な目的で,特定の介入や支援を行うことは続ける.

Bloomberg AUG 8, 2014

Can Obama Rise to the Moment in Iraq?

By Meghan L. O'Sullivan


l  中国貿易

Project Syndicate AUG 8, 2014

The Tricks of China’s Trade

ZHANG MONAN


l  移民政策

VoxEU, 8 August 2014

How immigration benefits natives despite labour market imperfections and income redistribution

Michele Battisti, Gabriel Felbermayr, Giovanni Peri, Panu Poutvaara

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The Economist July 26th 2014

A web of lies

Israel and Gaza: Stop the rockets, but lift the siege

Energy in Central Asia (1) Mi CASA no es tu CASA

Energy in Central Asia (2) Power failure

Argentina’s debt saga: Unsettling times

Charlemagne: Alone at the top

(コメント) ロシアのプーチンが張りめぐらせた「嘘の網」.ヨーロッパにおけるアメリカの地位を得たドイツの将来.イスラエル.中央アジアにおけるエネルギー戦略の展開.日本が良い意味で話題になれるでしょうか?

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IPEの想像力 8/11/14

国民の中から数名が,国家の権力を担い,その官僚制や軍備,通貨や税制を駆使して,国民のために内外の秩序を描きます.安倍政権に「日本問題」が解けるでしょうか?

『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2014No.8に載った,2つの論説の紹介に興味を持ちました.ジェニファー・リンド「日米同盟の古くて新しい試金石」,アンドリュー・エリクソン,オースチン・ストレンジ「中国の人工島造成戦略の意図は何か」です.

リンドは,中国のサラミ戦略(アメリカが軍事支援するには小さな領土を少しずつ侵食し続けることで,アジア諸国にアメリカの関与について不信感を高める戦略)への対抗策をベルリン危機から学びます.ソビエトやドイツ政府は,孤立したベルリンに至るアウトバーンの通行許可書を発行する東ドイツの押印を論争していました.正しい対応は,ケネディー政権のように,双方に原則を示し,軍備強化で関与を高めることです.

アメリカは「(通行許可を示す)ゴム印のために戦争」しない.しかし,米軍はベルリンにとどまり,そのアクセスを確保することが中核的利益であり,それを守るために行動する,と.では,東シナ海や南シナ海で,アメリカの「中核的利益」とは何か? アメリカが軍事行動を起こすレッド・ラインをどこに引くのか?

他方,エリクソンとストレンジは,200カイリの国際ルールを逆手に取った人工島の建設・要塞化(「強靭化」)が諸国でエスカレートすることを指摘します.それは,中国の利益になるとも限りません.海洋の強靭化競争が,アジアの秩序を求めます.

日本は,アメリカを目標として,工業化や成長,生活水準の上昇に努めてきました.しかし,日本がアメリカになることはないでしょう.むしろ中国がアメリカに似ています.中国の開放型成長を助け,合意されたルールの制度化と各国の国内制度改革が進めば,アメリカに代わる世界経済の中枢になる可能性がアジアにあります.

アベノミクスは難しい局面に至りました.

英米(中国も)では住宅バブルが懸念され,金融引き締めに転換しつつあります.日銀が金融政策の質的・量的緩和が続けることも難しくなるでしょう.日本企業が生産拠点を国外に移転してしまい,円安にしても輸出が伸びない.貿易赤字が増大しているからです.

消費税引き上げ(同時に,法人税引き下げ)と,デフレを抑えるために財政刺激策を繰り返す,という発想は,GDPに対して高まる債務依存を解決できません.デフレ解消のためには,増税より成長が必要であり,成長のためには消費や民間投資が欠かせません.

アベノミクスは,円安や株価上昇,そして,幸運にも決まった東京オリンピックなど,公共投資と地価上昇でデフレを脱出し,TPPASEANによる貿易拡大,法人税引き下げによる(海外からの)投資(国内回帰)を促進する戦略でした.

それに比べて,焦点の定まらない,信念を欠いた,上からの<構造改革>は,見せ掛けの論争,野党・改革派の封じ込め策だと思います.

安倍首相の政治的信念は,他の事件によって明らかです.中国との関係悪化,ナショナリズムの奨励,軍備拡大,外交・防衛政策の積極的展開,NHKなど,メディアの政治支配,さらに愛国心教育,戦後民主体制・平和憲法の改正です.

もう1つの論説(キース・ゲッセン「漂流するロシアの自画像」)が,プーチンと安倍首相との親近感を示していると思いました.それは帝国という過去へのノスタルジアです.

「ロシアの政治エリートたちは,結局のところ他の国々も罪を犯しているわけで,『過去の罪のために自国を責めすぎるのはやめよう』と決意したようだ.」

ドイツは,第2次世界大戦後の「ドイツ問題」を,東西分割ではなく,EUとソ連崩壊によって解決しました.ユーロ危機やプーチンのロシアは新しい挑戦です.しかしアベノミクスには,その最初から,日本の具体的な成長イメージ,国民を励ます内外の理想的秩序が欠けています.

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