前半から続く)


l  アメリカ国境の子供たち

FT July 18, 2014

Trouble at the borders adds to Obama’s woes

Christopher Caldwell

NYT JULY 19, 2014

On Southern Border, Mexico Faces Crisis of Its Own

By RANDAL C. ARCHIBOLD

FP JULY 23, 2014

Derailed on the Death Train

BY ALEX HORTON


l  世界金融の民族誌

FT July 18, 2014

A peek into the IMF machine

Gillian Tett

世界金融危機をめぐって多くの議論があった.グローバル・ガバナンスが必要だ,と言う.しかし,BISIMF,世界銀行で,中央銀行家や閣僚,金融専門家たちは,一体,何をしているのか?

ワシントンのファンド・マネージャーから作家になったLiaquat Ahamed の新著Money and Tough Love: On Tour with the IMFは,IMFを観察した記録である.しかも,政策のロビー活動やビジネス交渉をエコノミストとして描くのではなく,珍しい部族に出くわした民族誌学者のように,あるいは,ジャングルに住み着いた植物学者のように,IMFの会合やその職員たちが総会や派遣された加盟国で行う仮面舞踏会の人間的側面を観察する.

IMFが本当は何をしているのか,生活のリズム,文化的なシンボル,記号的な階層秩序,諸部族の認知やパワー,こうした視点で研究した成果が少なすぎる.


l  所得格差

Project Syndicate JUL 18, 2014

The Great Income Divide

KEMAL DERVIŞ

NYT JULY 23, 2014

What I Saw on Rikers Island

By CECILY McMILLAN

私は,2012年にウォール街占拠運動でニューヨークのZuccotti Parkから警官隊が抗議する人々を排除したとき,ニューヨーク市警を襲撃した.3か月の禁固刑という判決を受け,54日間をRikers Islandで過ごした.それは市の刑務所だ.

そこでは暴力やハラスメントが横行し,囚人はしばしば医療を拒まれた.警官たちはそれらを無視した.囚人たちは尊厳を破壊された.

NYT JULY 23, 2014

An Idiot’s Guide to Inequality

Nicholas Kristof

FT July 24, 2014

Corporatism not capitalism is to blame for inequality

By Edmund Phelps

多くの国で1960年代のダイナミズムが失われた後,生産性の上昇率は低下した.この問題を,不平等に関する論争にしたのは間違いだ.平等や安定性を唱えるコーポラティズムが中産階級の道徳的退廃や非効率を生み,革新を妨げ,利潤を減らし,ウォール街に投棄を追求させ,不平等を拡大した.不平等が生産性上昇を妨げたのではない.

コーポラティズムが支持する物質的な生活の改善は短期主義にもつながった.

NYT JULY 24, 2014

Why Voters Aren’t Angrier About Economic Inequality

Eduardo Porter


l  スコットランド独立

NYT JULY 18, 2014

Scottish Independence Is Inevitable

By NEAL ASCHERSON

918日に国民投票を行うことは,この小さな国を永久に変えてしまうだろう.

「私はAlex Salmondを信頼できない.SNPに投票したことは一度もない.しかし,今,考えてみるに,反対票を入れる理由は何もない.」

The Observer, Saturday 19 July 2014

Scottish referendum: As a nation and a family, we are now a house divided

Kevin McKenna

FT July 24, 2014

England may pay dearly for staying united with Scotland

By Vernon Bogdanor

NYT JULY 24, 2014

On Britishness and Belonging

Kenan Malik


l  ロボット

NYT JULY 19, 2014

The Future of Robot Caregivers

By LOUISE ARONSON


l  インド

FT July 20, 2014

In Modi’s India, waterways are a geopolitical issue

By AnjanaAhuja

Project Syndicate JUL 24, 2014

India’s Chinese Dream

LEE JONG-WHA

Bloomberg JUL 24, 2014

Wal-Mart Effect Silences India's New Leaders

By Chandrahas Choudhury


l  欧米の経済成長格差

NYT JULY 20, 2014

The Fiscal Fizzle

Paul Krugman

FT July 21, 2014

Markets and the Fed have to practise a new dance

By Henry Kaufman

Project Syndicate JUL 21, 2014

The Transatlantic Growth Gap

DANIEL GROS

2008年に頂点に達した世界金融危機は,大西洋の両側でほぼ同じような影響を生じた.しかし,2009-10年から始まった成長率の格差は,なぜ生じたのか?

過去3年間(2011-13),アメリカ経済は約6%で成長した.人口増加を考慮しても,ヨーロッパに比べて4.5%も高い.その主要な違いは消費である.アメリカでは成長し,ヨーロッパでは減少した.それは,まさにブラッセルが強制した緊縮策に対する非難の声と一致する.

しかし,公共部門の消費は,この時期,ヨーロッパでほぼ一定であった.他方,アメリカではかなり減少していた.民間投資の減少は,格差の一部しか説明しない.ユーロ危機は周辺部の投資を抑えたが,アメリカでも投資需要は少なかった.

アメリカの個人消費が回復したのは,その債務負担が早く減少したからだ.ではなぜ,失業者の増えた,賃金も低下した時期に,アメリカの民間債務は減少したのか? その答えは,遡及権の無いモーゲージ(住宅ローン)と,迅速な破産処理,である.

ヨーロッパの低成長は緊縮策やECBのせいではない.労働市場の改革や製品市場の改革を急ぐことも重要だが,果汁債務に苦しむ家計を救済する処理を改革することも重要だ.

Project Syndicate JUL 22, 2014

The Fed in Denial

SIMON JOHNSON

Project Syndicate JUL 22, 2014

Europe’s Options

MICHAEL J. BOSKIN

ヨーロッパには3つの選択肢がある.1.現状維持.2.構造改革.債務削減にはブレディー・ボンドも発行するべきだ.3EU制度改革.ユーロ圏の二重化.

Project Syndicate JUL 23, 2014

Fighting the Fed

MARTIN FELDSTEIN

中央銀行の独立性にもいろいろある.イングランド銀行は目標の決定に関して政府に従い,それを達成する手段に関する独立性を持つ.他方,マーストリヒト条約により,ECBはどちらに関しても独立性を持つ.

アメリカ議会は連銀に対するルールを強化する法案を準備している.連銀は強く反対しているが,議会を支配する共和党は法案を通過させる力がある.大統領が拒否権を発動するか,将来,共和党の大統領が承認するか,わからない.少なくとも連銀はインフレ率に強い関心を払うだろう.

Project Syndicate JUL 23, 2014

Europe’s Surplus of Stagnation

ROBERT SKIDELSKY

2008-09年の大不況後,ヨーロッパの成長率が低い.来年のGDP成長率も1.7%と予想されている.

1つの解決策は,ユーロ安である.しかし,目標を示したり,預金金利をマイナスにしたりしても,為替レートを決める政策にはならない.総需要について何もしないからだ.

英米日は通貨供給を増やして,回復を刺激し,通貨価値の低下をそのメカニズムに組み込んでいる.ECBのドラギ総裁も量的緩和を示唆したが,行動しようとしない.

さらに,需要不足にはユーロ圏内の経常収支不均衡が関係している.ユーロ圏内でドイツの経常黒字は最大である.ドイツは常に黒字を出してきたが,再統一後の建設投資の時代には,貯蓄を超える投資を行った.2000年代に入って特に黒字が増大し,2007年の金融危機前に,GDP7.4%に達した.

しかし,今やユーロ圏全体が黒字に向かい,それがユーロを強くして赤字諸国の回復を妨げている.かつてアメリカ財務省もドイツの黒字を批判し,P.クルーグマンはドイツの黒字維持が緊縮策のコストを強めている,と批判した.経常収支の黒字国が需要を増やす政策を取らなければ,赤字国は需要を削減するしかない.また緊縮策の影響も,黒字国のドイツが行動して緩和するべきである.

ドイツはこうした主張を拒み,黒字を自分たちの勤勉として誇りにした.赤字国は自分で財政支出を抑えるべきなのだ.

1941年,ケインズはこの問題について,(ユーロ圏と同じ)固定レート制下の赤字諸国が需要を削減する一方で,黒字諸国は需要を拡大する対称的なメカニズムを制度化するように提案した.しかし,彼の提案は拒否された.

黒字国が自発的な調整を行うことも可能であり,中国がそうであった.世界金融危機の前,2007年に,中国の対外黒字はGDP10.1%であったが,2013年末には2%に急減していた.

なぜ中国は調整を選択し,ドイツはしないのか? その違いは,ドイツが赤字諸国に対して政治的な圧力を保持しているからであろう.緊縮策の利益が債権者にとって大きい以上,この政治力は黒字国に有利な政策を意味する.

そうであれば,ドイツに対抗する力をECBとドラギ総裁が示すしかない.


l  1次世界大戦と30年戦争

FP JULY 21, 2014

A Time of Unprecedented Instability?

BY DAVID ROTHKOPF

Project Syndicate JUL 21, 2014

The Waste of War

JEFFREY D. SACHS

Project Syndicate JUL 21, 2014

The New Thirty Years’ War

RICHARD N. HAASS

中東地域に就いて解決策を求めることは難しい.かつてヨーロッパで30年戦争が起きた条件と多くの点で似ており,外部からは地域の危機を管理するしかないだろう.

何よりも核兵器・核物質の拡散を防ぐこと.中東へのエネルギー依存を減らすこと.難民が流入しているヨルダンとレバノンへの支援を強めること.トルコやエジプトの民主主義を促すためには,市民社会の成長と憲法による権力の分散を支持する.

ISISのようなテロ集団の撲滅は共通に支持される.イラクの分割やクルドの独立も認めるべきだ.しかし,どこでも国境線を引き直すことで秩序を確立できる,という意味ではない.

The Guardian, Tuesday 22 July 2014

The first world war and the colour of memory

Santanu Das


l  インドネシア大統領選挙

Bloomberg JUL 21, 2014

Democracy's Appeal at Stake in Indonesia

By William Pesek

NYT JULY 22, 2014

Joko Widodo, Populist Governor, Is Named Winner in Indonesian Presidential Vote

By JOE COCHRANE

FT July 23, 2014

Prabowo Subianto to challenge Indonesia poll result

By Ben Bland in Jakarta

FT July 23, 2014

Joko Widodo must not waste his mandate in Indonesia

FP JULY 24, 2014

Average Joko

BY KATE LAMB


l  中国の政治社会変化

FT July 22, 2014

Casualties of China’s one-child policy

By Patti Waldmeir in Shanghai

FT July 22, 2014

Chinese moves trump Fed’s effect on US bonds

By Diana Choyleva

FT July 22, 2014

Trouble at sea reveals the new shape of China’s foreign policy

Kurt Campbell

中国の外交は変わったようだ.これまで,中国では国内の重要課題が優先されてきた.過去の対外的な衝突は指導部からの指示ではなく,官僚制の中の特別な個人によるものだった.しかし,今は違う.習近平が,毛沢東以来,早期に主席と共産党総書記の両方の地位を得たことに関係あるだろう.

FT July 23, 2014

Why China’s hunt for tigers and flies is bound to fail

David Pilling

中国中央電視台China Central Televison (CCTV)の人気アンカーRui Chenggangが,政府の汚職追放キャンペーンで逮捕された.この36歳の自信にあふれるニュース司会者が,北京のスターバックを伝統文化に反すると批判し,オバマ大統領の姿勢をアジア全体に利益をもたらしていないと疑問視し,アメリカの駐中国大使をアメリカの債務に関わらせて皮肉った.

この事件は習の汚職追放キャンペーンがどこまで広がったかを示している.この政治運動はだれも予想しなかったほど深く,長く,続けられている.中国の治安部門トップであったZhou Yongkangも逮捕された.追放処分は社会のすべての分野に及んでいる.饗宴や高価な時計を着けることで下位の共産党幹部が責められている.中国政府の最大の利益提供者である国営石油公社も標的となっている.

汚職は発展途上諸国に広くみられるし,アジアの改革にとって好ましい.しかし,その激しさは,習の指導体制を固めるというだけでは説明できない.習は汚職が共産党支配を脅かす最大の問題であると認めたのかもしれない.党の再教育センターは常に満杯である.

しかし,2つに理由で,汚職追放は失敗に終わるだろう.1.やり方が間違っている.法によって裁かず,共産党が裁いている.罪状は公表されない.2.政治キャンペーンとして,毛沢東の指導した追放運動に似てきた.国民の不満は以前の指導部だけでなく,現在の指導部に向かうだろう.


l  アルゼンチン債券

VOX, 22 July 2014

It takes more than two to tango: Cry, but not for Argentina, nor for the holdouts

Jeffrey Frankel


l  国連軍

FP JULY 22, 2014

When the Blue Helmets Are to Blame

BY DAVID BOSCO


l  ルクセンブルグ

FT July 23, 2014

Luxembourg tax regime: Under siege

By Vanessa Houlder


l  フランス

SPIEGEL ONLINE 07/23/2014

A Tour of France

What Is Wrong with the Grand Nation?

By Alexander Smoltczyk


l  ギリシャ

FT July 24, 2014

Greece: A fragile calm

By Ralph Atkins and Kerin Hope

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The Economist July 12th 2014

Don’t leave us this way

Scottish nationalism: How did it come to this?

If Scotland votes “yes”: Dear Prime Minister and First Minister…

The economics of independence: A costly solitude

Israel and Palestine: The new normal

Crime in Latin America: From cage to enlightenment

The staid young: Oh! You pretty things

(コメント) スコットランドの独立に関する住民投票が近づいています.なぜ独立を求めるのか? なぜ英連邦を維持するキャンペーンは弱いのか? スコットランドにおける政治経済状況はどうなっているのか? 独立派のユートピアニズムは正しいか? 指導者として考えるべきことは何か?

イスラエルやハマス,パレスチナ自治政府も,独立国家をめぐる紛争の犠牲者をさらに増やしています.

ラテンアメリカ諸国における犯罪者の減少をもたらす政策転換も,イギリスの若者たちが,酒や麻薬,セックスを求める反社会的な行動に及ぶより,勉学に向かうようになったのも,「社会は変わる」という現代の社会=生命現象を想わせます.

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IPEの想像力 7/28/14

The Economistには,イギリスの変貌・分裂の予兆が述べられていました.イギリスでは,若者たちのサブカルチャーが変化し,スコットランド独立が問われ,EU離脱の可能性もあります.

イギリスと言えば,フーリガンたちの飲酒と暴行が他国の入国管理にまで影響したことを思い出すでしょう.若者たちの行動が以前よりも社会規範や法を逸脱し,学校からドロップアウトし,未成年で出産し,アルコールや麻薬の依存症に苦しみ,失業と貧困から抜け出せない,としたら,その国の政治や経済において破滅的な結果をもたらすのは確実です.

しかし幸い,記事によれば,イギリスの若者はまじめになったのです.酒を大量に飲まず,煙草も吸わず,麻薬には手を出さない.傷害を犯さないし,なかなかセックスもしないし,妊娠・中絶もしていない.性病の感染が減少しています.

その結果,激しい若者文化を利益の源としてきたビジネスは沈滞し,メディアやジャーナリズも流行りません.なぜこんなことになったのか? 政府と警察の対応や,新しい法律などが効果的であったからかもしれません.

しかし,記事はもっと複雑な社会的変化を挙げています.たとえば,男女の平等化です.女性の社会的地位が上昇し,有能で英明な女性が多くなると,荒れた男性中心文化,筋肉誇示はむしろ軽蔑されるからです.また西側社会が以前に比べて白人だけに支配されず,禁欲主義的なイスラム教徒も含めて,社会的寛容さが重視されるようになった,とも指摘しています.

あるいは,グローバリゼーションの経済構造変化は,未熟練労働者の職場が発展途上諸国に移転され,単調な作業は移民労働者が担うようになって,ますます能力と教育が重視されるようになりました.若者たちは資格や学歴を求めて学校に通い,以前より長い期間,高い授業料を意識しなければなりません.

親の行動も変化しました.子供は減り,親はますます長く子どもと一緒に住んで,その行動を監視し,指導を試みます.自分たちはベビー・ブーム世代でサブカルチャーを謳歌したけれど,自分の子供が厳しい競争に直面しなければならないことを知っており,「良い親」でなければならないことに強い責任を感じているのです.

若者たちにとって,クラブ・カルチャーは高価な遊びになりました.むしろビデオゲームやソーシャル・メディアを部屋で楽しむ方が,バス停で安価なビールやタバコを楽しむより,健康的であると考えます.

それは,良いことなのか? 若者たちは幸せか? と言えば,おそらくそうではないでしょう.いつも監視されて,競争の圧力にさらされ,自由が無い,と感じているからです.かつて,自分たちの不幸は社会制度や政治に責任がある,と考えて反抗し,異議を唱えた姿勢は見られません.インターネットで知る情報より自分が劣っていることを不満に思い,他方,政治や改革には関心が無いのです.集団的な解決策を好まず,困難な状況が通り過ぎるのを,頭を低くして耐えるだけです.

私は,イギリスと似た国際政治上の位置にある日本が,異なる変貌を遂げてきたことを感じました.日本の若者たちは,飲酒,麻薬,セックス,暴力,犯罪に向かう一部の集団がいる半面,多くは(自覚しないまま)右傾化しています.大阪や東京の首長が中央政府を批判し,分権化や独自の外交・安全保障を求めて,政治全体が中国圏(EZ: Euro Zoneと比べて,CZ: China Zone)から離脱しようとしています.

しかし,それは成功しないと思います.

たとえば2050年,高齢化と貧富の差が拡大する中で,移民労働者が流入する頃には,日本もラテンアメリカのように,移民や犯罪者への差別をなくし,法の厳罰化ではなく,むしろコミュニティーの治安活動,警察と協力した若者の再訓練・再雇用プログラムを始めると思います.そして,若者たちの新しい文化が日本の伝統文化を見直して再生したとき,中国圏CZを恐れる議論を最終的に克服できる,広がりと深さも手に入れるでしょう.

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