IPEの果樹園2014

今週のReview

6/30-7/5

 

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イラクとシリアの秩序回復 ・・・ネオコンの復活 ・・・アルゼンチン債務とハゲタカ資本 ・・・EUの政治力学 ・・・日本の慰安婦・集団的自衛権・カジノ ・・・第1次世界大戦から100

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  シリアとイラクの秩序回復

FT June 20, 2014

Middle East: Falling to pieces

Roula Khalaf

ISISthe Islamic State of Iraq and the Levant)は中東のすべての諸国と西側の利害に対する脅威である.彼らの目的はスンニ派諸国の既存の国境線を解体し,支配的な権力構造を破壊することである.もしこのまま放置されて,支配領域を得れば,その目標はグローバルな聖戦にまで及ぶかもしれない.

シーア派であれ,スンニ派であれ,ISISの展開する世界には勝者がいない.この地域のバランス・オブ・パワーが根本的に変わったのは,10年前にイラクでスンニ派の政権が米軍による侵攻で崩壊したからだ.多数派のシーア派がイラクの政権を執ったが,シーア派とスンニ派の対立は,シリア,レバノン,バーレーン,イエメンに及んだ.

それ以来,スンニ派の王朝が支配する湾岸諸国と,イランが支援するシーア派集団とが,内戦を繰り返した.アメリカ,サウジアラビア,イランは,4つの問題で同盟し,あるいは,敵対している.すなわち,ISIS,イランの核開発,シリアの将来,イラクの将来.

FP JUNE 20, 2014

A Democracy Made of Straw

BY JAMES TRAUB

バイデン副大統領は常にアメリカの明確な出口戦略を持っていた.2009年半ばに私がインタビューしたとき,彼はイラクの宗派における指導者たちが,最終的には,彼と同じような政治家なのだ,と説明した.だからすべての政治家が直面するジレンマを味わうだろう.選挙が近づけば,シーア派のマリキ首相はスンニ派やクルド人に接近する.「彼が権力にとどまりたいなら,どうするべきか?」と,バイデンは問うた.宗派に固執することはイラクのような多宗教の国家において敗北する考えだ.アメリカからの莫大な援助を受けて,イラク人も紛争を流血なしに政治で解決する方法を学ぶだろう,とバイデンは信じていた.

オバマ政権に関わった元スタッフによれば,ホワイトハウスは,イラクの国民統合も民主的な制度の強化も実現しようとせず,アメリカが撤退するのに十分な国家があればよい,と考えていたのだ.ホワイトハウスは国民の厭戦気分を気にして,イラク軍を35000人にまで減らす数字にこだわった.イラクの指導者たちが残留する米軍の地位に不満を示したとき,政府はすべての軍を撤退させることに決めたのだ.そのときには,すでにイラクは自分の足で立つことができる,と主張するしかホワイトハウスには選択肢がなかった.

アメリカ人はいまだに,苦難にあえぐ諸国で人々が物質的な自己利益に従って行動しないことに驚くのだ.宗派抗争や部族主義が,集団的な公益の実現を圧倒し続けている.Blinkenは,イラクを統一国家として維持することは手遅れであるかもしれない,と認めて,しかし「緩やかな連邦制」と,絶え間ない内戦状態とは違う,と主張した.

FT June 22, 2014

Removing Saddam Hussein did not cause this crisis

By Tony Blair

ISISが現れてますます混乱するイラク情勢は,11年前にサダム・フセインを政権から退けたことに始まった.つまり,ブレアが愚かだったのだ,と本紙の編集者は主張した.

しかし,2つの重要な点を認める必要がある.

1に,不介入もまた深刻な結果をもたらすことだ.シリアの場合,その結果は絶望的であった.イギリスやヨーロッパの安全保障専門家がその脅威を自分たちに及ぶと警告している.

2に,アラブの革命の影響がイラクに及ぶことを考えないのはおかしい.もしサダム・フセインがイラクの政権を維持していたら,彼はエジプトのムバラクのように辞任せず,シリアのアサドに似た反応を示しただろう.2003年の決断が何であれ,2014年にわれわれが直面したことは深刻な危機であるはずだ.

サダム・フセインのイラクが安定性と平和の勢力であったかのような議論が書かれている.しかし,フセインはイラク・イラン戦争を開始して,100万人以上の犠牲者を出した.化学兵器を使ってイラン兵を殺害し,それはイランが核兵器を開発する理由にもなった.また,クウェートを侵略し,化学兵器を使ってクルド人に対する虐殺を行い,シーア派を排除し,the Marsh Arabsを破壊した.

私は2003年の決断について人々を説得したいのではない.根本的な挑戦とは,911がわれわれの意識を変えた後,われわれがやったことに起源があるというより,もっと複雑なものである.それは悪しき政治と悪しき宗教が混じり合った,イラクやシリアに限らない,中東全域から世界に及ぶ毒性の混合物である.

われわれはその挑戦を逃げることができない.それはわれわれの安全保障に劇的な影響を及ぼすから.われわれが戦争に疲れても,彼らは戦争に疲れない.イラクやシリアだけでなく,パキスタンやナイジェリアでも,西側社会の中でも,その緊張が存在している.

短期的に,われわれはイラクやシリアを支援するだろう.アメリカが軍事援助の条件としてシリアに政権交代を求めるのは正しい.長期的には,ソフトとハードを組み合わせる必要がある.宗教や文化において若者たちの心を閉ざす公式・非公式の教育システムを変えるべきだ.

イスラム教徒の多数派は過激主義を支持していない.イラクやアフガニスタンのような困難な状況でも,人々は投票所に来て自由を求めた.独裁者からの自由,テロからの自由である.彼らを支援する必要がある.

NYT JUNE 24, 2014

ISIS and SISI

Thomas L. Friedman

イスラエルの政治アナリストであるOrit Perlovが,アラブに支配的な2つの統治モデルとしてISISSisiを示した.ISISは「神」の支配,Sisiは「国家」の支配である.

しかし,2つのモデルはともに失敗し続けるだろう.なぜなら,アラブの若者,イスラム教徒たちが最も必要とするものを提供できないからだ.それは,教育,自由,雇用である.それによって彼らは自分の能力を生かすことができる.政治生活において平等な市民になれる.

軍事国家とイスラム国家の2つの神話が完全に失敗であることを,一般の人々が確信するとき,漸くこの地域にも21世紀の可能性が見える.

FT June 25, 2014

Isis risks distracting US from more menacing foes

By Francis Fukuyama

私は,ISISの最近の拡大にもかかわらず,アメリカの核心的な利害に対して,テロが主要な脅威とは考えない.イラクやシリアの内戦状態は,サウジアラビアとイランが支援するスンニ派・シーア派の宗派戦争である.それが人道的な危機になるとしても,イラクに15万人の米軍がいたとき,宗派的な憎悪を抑えられなかったように,われわれにできることはほとんど何もない.

ロシアによるクリミア併合は,冷戦後の国際秩序に対する重大な挑戦である.ヨーロッパの冷戦後の秩序はロシア人が近隣諸国に居住する事実を受け入れることに依存しており,プーチンがこれを問題にした.

さらに,ロシアのパワーは衰退していくが,中国はそうではない.すでに世界第2の経済規模を実現し,この数年でアメリカを抜く可能性がある.わずかな領土紛争に見えるが,そこには東アジアの支配的なパワーとなり,アメリカを西太平洋から追い出して,中国の影響圏を確立する意図がある.

現状はまだ1939年ではないが,アメリカは行動するべきだ.NATOを軍事同盟として再強化し,中国に対する多角的な交渉の枠組みを提示することだ.戦略とは,優先準備を示し,それを説明することである.ネオコン的な強硬策も,孤立主義も,間違った選択肢である.真実は常にその中間にある.

The Guardian, Thursday 26 June 2014

Six vital steps to peace in Syria

Ban Ki-moon

犠牲者の数は15万人を超えただろう.刑務所はあふれ,処刑や拷問が広まり,人々は餓死している.都市部は廃墟になった.

国際社会はシリアの人々を救うことをあきらめてはならないし,地域が終わりのない残酷さと危機に落ち込むのを許してはならない.前進のために6つの要点がある.

1.暴力の停止.・・・外国がシリアの各派に武器を供給してはならない.国連安保理は武器禁輸を命令するべきだ.

2.住民の保護.・・・国連は人道的な支援を続けている.しかし,シリア政府と,反政府軍の一部は,反対派に同調するコミュニティーへの支援を阻んでいる.さらに,国際社会は支援に必要な資金の3分の1も提供していない.

3.政治的な交渉による解決.・・・国連特使の外交を阻んではならない.シリアは大統領選挙を公正に行わなかった.地域の諸国は戦争終結に責任がある.社会を維持し,信頼と意見交換のチャンネルを開くべきだ.

4.虐殺責任者の告発. 5.シリアの化学兵器廃棄. 6.紛争の地域的拡大阻止.

シリアの戦争を終わらせる最大の障害となっているのは,軍事的に勝利できる,という考えだ.人口密集地域を空爆して支配領域を拡大することが勝利ではない.包囲したコミュニティーを飢えさせて降伏させることが勝利ではない.たとえ短期的に一方が支配できても,その破壊こそが将来の紛争の種をまくのだ.


l  ネオコンの復活

FP JUNE 20, 2014

Being a Neocon Means Never Having to Say You're Sorry

BY STEPHEN M. WALT JUNE 20, 2014

2001年から2006年ごろまで,アメリカ外交はネオコンの中核的な計画に従った.この膨大な規模の社会科学実験はこれ以上ないほどの破滅的な結果を示した.アメリカは数兆ドルを失い,数千人を死亡させ,イラクその他に殺戮と混沌をもたらしたのだ.

これほどひどい結果を出したことで,ネオコンを永久に誰も信じないようになった,と思うだろう.しかし,そうではない.

1に,恥知らずであること.

彼らは自分たちが間違ったことなど気にしない.正しいか,間違いか,ということをそもそも気にしないのだ.政治的目的のために,真理は迅速に消耗される.彼らはイラク戦争を主張して,情報を操作し,全くのでたらめを主張したことも知っている.

「リチャード・ニクソンやシルヴィオ・ベルルスコーニのように,ネオコンが復活し始めているのは,彼らがどれほど間違いを犯しても気にしないからであり,世間から注目されるためには何でも言うし,何でもするからだ.彼らは自分たちの繰り返した失敗がもたらした悲劇的な犠牲者にまったく無関心である.ネオコンであるというのは,思うに,申し訳ないと言う必要がないことなのだ.」


l  アルゼンチン債務とハゲタカ資本

Bloomberg JUN 20, 2014

What to Do When Governments Default

By Mohamed A. El-Erian

債務を支払えない,あるいは,支払いたくないとき,国家には何ができるか?

2001年,厳しい不況により,アルゼンチンは約950億ドルの債券を政府が支払えなくなった.保有者の90%以上が,ドルで30%ほどの新しい債券を受け取ることに同意した.しかし,一部の債権者は政府がもっと支払う方に賭けた.今週,アメリカ最高裁はそれを支持したのだ.

この決定は,すでに複雑な協力の問題を一層困難なものにする.国家が支払い困難になったとき,最善の解決策は秩序正しく債務を減らし,景気回復を実現することだ.しかし,それに関わる集団は「公平な」分担について合意するための厳しい交渉を経験する.民間債権者は政府や国際機関が自分たちの損失を救済融資で肩代わりすることを願う.債権者の一部は多数派を犠牲にして,もっと有利な取引を求める.公的債権者は,リスクを軽視する民間債権者が例外的な支援を受け取ることを嫌う.

合意の形成とその実施は,しばしば,政府に対する緊急融資ができるIMFのような部外者に委ねられる.2012年のギリシャ債務削減交渉が示したように,それは論争的な問題を含み,難しい判断を求められる.政府は本当に支払い不能なのか? どれくらい,いつ,支払えるのか? いくつもの法律に関わるグローバルな契約変更をどのように実施するか? 合意に関わるすべての者,債権者も債務者も,合意を実行することを検証し,強制できるか?

協調ゲームを求める,創造的で機能する枠組みを発見する,ということが究極の目的だ.集団的な結果を無視して,個別の利益を最大化する競争的行動を阻止する.

民間部門は円滑な救済融資を求め,公的部門はそれが国民に支持されず,不公平であると考えている.何もしなければ経済は悪化し,すべての者が苦しむ.危機を予防することが最善であるが,それに失敗したときは,IMFの参加がより良い結果を導くと期待できる.

FT June 24, 2014

Defend Argentina from the vultures

Martin Wolf

Financial TimesLondonオフィスから遠くないところに,債務不履行者が投獄されたthe Marshalsea prisonがある.モラルハザードに関する当時のタリバンは,そのような厳罰が必要だ,と主張した.その後,1869年に,債務者の投獄は廃止され,破産が導入された.経済と社会が救われたのだ.」

不幸や無責任で債務が支払えなくなる.社会にとっては,人々が企業を再開することが望ましい.そこで破産法ができた.国家の破産も同じことだ.彼らが自国通貨で借りているときは,インフレによって債務を減らすことができる.しかし,外貨建の債務にはこれができない.ユーロ圏の政府が苦しんでいるように.

しかし,政府債務のデフォルトは,その債務のすべてに破産を認め,資産を売却する裁判所がない.それゆえ,債務国があまりにも簡単に破産する危険と,あまりにも厳しく債務の返済を強いられる危険がある.アルゼンチンはその両方だ.


l  EUの政治力学

NYT JUNE 25, 2014

Turning From Europe’s Past

Nikos Konstandaras

フランドル地方の小さな町Ypresで,第1次世界大戦で起きた1世紀前の虐殺を記念するEU指導者たちの会合がある.60年以上の平和を経て,われわれの指導者たちは脅威を過小評価しているのではないか.

Ypres28カ国の指導者たちが話し合うのは,経済成長,競争力,雇用から,ウクライナ危機やイラクに及ぶだろう.EU機関のトップを決める人事もだ.

イギリスがEU離脱に向かっている.キャメロン首相は自分の戦術によって罠に落ちた.イギリスのヨーロッパ懐疑論を刺激して,2017年に国民投票を行うことで,EUにより緩やかな統合を要求した.しかし経済危機の後,より緊密な協力が求められているのだ.このまま離脱を刺激するか,あきらめて戦術を逆転し,国内で支持を失うか?

より緊急の問題はフランスの影響力低下である.改革の社会・政治コストを恐れて,フランスは成長力を失い,ドイツに抜きんでた指導者の地位を与えてしまった.共通の利益のために集まった同等の諸国の同盟は,全体を犠牲にする機会主義的な同盟に変わる.歴史は同盟から転じた帝国に満ちている.

ベルリンの地位は強化されて,ユーロ安による競争力も得た.しかし,ドイツの求める財政規律は近視眼的である.そして,ユーロ圏の利益を主張するECBの声は弱弱しい.

ギリシャの改革にはEUの支援や助言が必要である.新しいEUのメカニズムは,銀行同盟のように,財政・金融政策の弾力性を高め,成長を目指している.

EUの存続は,政治家に委ねておくには重大過ぎる.夢想家,知識人,学者,起業家,年金生活者,労働者,失業者が,EUの隅々から集まって,新しいアイデアを示すときだ.それは戦争のない講和会議のようなものである.


l  日本の慰安婦・集団的自衛権・カジノ

NYT JUNE 22, 2014

Japan’s Historical Blinders

By THE EDITORIAL BOARD

従軍慰安婦に対する日本政府の関与を否定する安倍首相は,新しい報告書を得て,以前の政府見解を見直す方針をさらに進めようとしている.日本のナショナリストはそれを認めないが,世界の主要な研究者は,慰安婦たちが政府の関与する売春所で,兵士のために働いたことを認めている.日本と韓国の関係が悪化する中で,日本政府が地域の安全保障でアメリカと協力する,と主張することは矛盾している.

Project Syndicate JUN 23, 2014

How to End an Insurgency

YURIKO KOIKE

国内の反政府軍,the Moro Islamic Liberation Frontを武装解除したBenigno Aquino, Jr.は,その勇気と粘り強さで,中国にも対抗できるだろう.ルールによる地域秩序を確立するために,日本とアメリカは彼を支援する.

Bloomberg JUN 25, 2014

Japan Plays Its Casino Card

William Pesek

カジノ解禁で,安倍首相は日本経済の活性化を推進できるだろう.彼の改革能力が試される.

国会の議決を避けているのは,犯罪やギャンブル中毒に対する懸念ではない.日本社会はギャンブルに寛容で,パチンコ,競馬,競輪,競艇,など,他の国に劣るものではない.むしろラスベガスが苦しんだように,同じギャンブルの既得権層が反対しているのだ.


l  自由貿易交渉の中身

Project Syndicate JUN 24, 2014

Free-Trade Pitfalls

HANS-WERNER SINN

EUとアメリカのTTIPthe Transatlantic Trade and Investment Partnership)は,世界GDP50%以上,世界貿易の3分の1を占める.成功すれば成長を刺激し,所得水準を高めるだろう.

しかし,消費者保護が不十分であるとか,既得権によって歪められている,という批判がある.さらに,ロシアや中国を排除した「貿易版NATO」のような合意は,むしろ貿易の地域外への分散を促し,域内の利益を失わせる.それゆえ,できるだけ多くの国が参加することが望ましい.

域内の投資保護が,実質的なCO2規制として利用されている.さらに,EUは,債務の支払いができない加盟諸国について,外国投資家の保護を提供する.これは形を変えた債務国の負担肩代わりであり,ユーロ債発行と同じ,EU内の債務共有化メカニズムである.それは金融市場の債務に対する是正効果を奪い,次の債務危機を準備する.


l  1次世界大戦から100

Project Syndicate JUN 25, 2014

The Return of the Sleepwalkers

DOMINIQUE MOISI

1次世界大戦の始まりから100年を経て,世界は再び大きな戦争を準備しているのか? 中東,ウクライナ,東シナ海・南シナ海.

1914年に比べて,現在に深刻な危機を生じる理由は2つある.

1に,核兵器がもたらした「相互確証破壊」という厳密な安定性が失われてきた.それは冷戦がエスカレートするのを防いでいたが,今やイランは核兵器より原理主義者の影響力拡大が深刻な脅威であると主張する.ウクライナはロシアとの紛争で,核兵器よりもエネルギーの封鎖が深刻な脅威であると考えている.被爆国の日本でさえ,安倍首相は核兵器を保有する中国に対抗すると主張している.

2に,ヨーロッパが世界政治の中心ではなくなった.ヨーロッパが築いたような平和の制度や交渉のゲームを持たない地域で,重大な危機が重なっている.

1914年と同じように,安全保障は非常に複雑で,経験の足りない政治家たちが受け入れ可能な妥協案を見いだせないまま,戦争は避けられない,と認める危険がある.

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The Economist June 14th 2014

Terror’s new headquarters

Energy subsidies: Scrap them

Banyan: Across the Himalayas

(コメント) 週末の時間が足りず,通読して要約できませんでした.

ISISが勢力を拡大したのは,トルコの国境管理,ヨーロッパ諸国の身代金支払い,アサドによる過激派の釈放,そして,マリキ首相によるイラク政府のスンニ派排除,オバマ大統領の失策が重なったからです.オバマは,非決定による「構造的権力」を,こうした形で発揮したと言えるかもしれません.

記事は,このショックを契機として,イラク政府は政治的団結を回復し,オバマは外交を転換するしかない,と考えます.少なくとも,シリアやイラクの住民はイスラム原理主義の支配する社会を望まないのです.

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IPEの想像力 6/30/14

経済の規模はますます拡大し,文化的,民族的な同質性はそれより狭く,政治的な合意形成のために議論や対話ができる範囲はさらに限られる,とC.P.キンドルバーガーは指摘します.

キンドルバーガーの論説は,経済学の帝国主義を緩和し,むしろ積極的に他の分野,政治学,社会学,歴史から知識を輸入することを唱えていました.その話は,貿易論や移民論,多国籍企業論から,最適通貨圏論,そして金融危機における最後の貸し手に至ります.

国家の連邦制や権力の集中化,都市と金融センターが地理的に集中する傾向を,キンドルバーガーは指摘しています.平和な時代には平等な参加者の間でルールによって問題を解決できますが,危機に際しては,他者に利益をもたらしてくれるような指導者・指導国が現れることを願うしかないのです.それは政治・経済の文化や伝統に従うでしょう.あるいは,戦争です.

毎週,戦乱や紛争,危機の話をしていると,質問してくれる学生がいました.

「(暴力が社会的な協力関係を破壊し,穏健な政治勢力を破滅させ,交渉による解決より殺戮と征服を唯一の答えにするような社会状態を創り出すとしたら),何がそこから抜け出す契機となるのでしょうか? もっと別の答えはあるのですか?

私は戦争や戦闘を経験したことがありません.CNNが伝えるイラク戦争の映像や,戦場を経験した兵士たちの証言,いくつかの小説を読み,映画やネットの画像を観ただけです.

どのように終わるのか,将軍たちに尋ねたら,当たり前だ,という顔で教えてくれるかもしれません.戦争は無限に続けられない,と.

戦線が膠着し,停戦が合意され,外交交渉によって,関係諸国が戦後秩序に合意することで戦争は終わる.あまりにも支配地域を拡大すること自体が,兵站や防衛ラインを延長してしまい,その国の負担を増し,敗北の条件となる.同時に,支配する地域の住民がすすんで協力しない限り,長期的な占領は必ず抵抗運動を刺激する.

核戦争や,ゲリラ戦,テロは,そうではないでしょう.宗教的な情熱が戦争行為を正当化するような場合,すなわち聖戦を確信して,異教徒の殺戮や自分たちの死を「神の国」の実現に向けた浄化とみなし,肯定する集団と戦うとき,戦争の終り方は違ったものになるかもしれません.

「集団的自衛権を,どうして日本は認めないのでしょうか? 自衛の権利(として軍事力の行使)を認めることが戦争につながる,というのは,飛躍があると思います.なぜ議論することも拒むのですか?

日本の平和主義にも,歴史があります.おそらく戦争を経験した世代,安保条約に反対した世代,冷戦後の国際秩序やイラク戦争を重視する世代,そして,中国や韓国との領土問題が焦点となる世代,それぞれの異なる意見があるはずです.安全保障の条件が大きく変化しました.

憲法9条だけで「戦争放棄」を真に実現するなら,国境線の変更や他国の侵攻を軍事的に止めることはできません.退却して,ゲリラ戦を挑むか,征服されるか,国外に逃れて亡命政府を組織するか.憲法9条の描く平和像は具体的に示されてこなかったと思います.

私は,憲法9条を守って,日本が核兵器や原発を保有せず,集団的自衛権を認めるべきだ,と考えます.ただし,集団的な安全保障として,核を保有するかもしれません.

集団的自衛権には,その本質において限界があります.集団によって安全保障を高めるには,負担がともないます.他国が自国の防衛に参加しなければならないのは,自国も他国の防衛を負担するからです.軍事同盟には「ただ乗り」される危険と,他国の戦争に「巻き込まれる」危険があります.防衛の分担や,秩序を共有しなければなりません.

日本政府は,軍事力の行使が紛争解決の手段として無効であるような地域秩序,国際秩序を実現したいと考えます.それはどのようなものか? どうやって実現するのか? もっと議論して,安全保障の考え方を国民に示してほしいです.

私たちが共有する文化は,グローバリゼーションの時代にも失われません.むしろ愛着を強める傾向が,各地で,波状的,突発的に,現れるようです.

平和とは,宗教と戦争を切り離し,国家を超えた安全保障のルールを定め,繁栄を共有できる地域を守り,協力し,拡大することです.

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