IPEの果樹園2014

今週のReview

6/30-7/5

 

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ワールドカップの政治学 ・・・イラクとシリアの秩序回復 ・・・世界難民の増加 ・・・ネオコンの復活 ・・・アルゼンチン債務とハゲタカ資本 ・・・EUの政治力学 ・・・日本の慰安婦・集団的自衛権・カジノ ・・・自由貿易交渉の中身 ・・・第1次世界大戦から100

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, Yale Global そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  ワールドカップの政治学

FP JUNE 19, 2014

It's Time to Give Uruguay Some Respect

BY DANIEL ALTMAN

フロリダの大きさに5分の1の人口しかないウルグアイは,ワールドカップの応援にまとまって参加し,ブラジルとアルゼンチンとの間の干渉国家である.しかし,その社会は,Montevideoに輝くオペラハウスの周辺地区に住む裕福な白人層と,地方や都市スラムの貧しい混血たちとに分断されている.1990年代の前半に貧困率は半減したが,後半に拡大した格差も漸く縮小に転じた.子供たちはブラジルやアルゼンチンよりも長く教育を受け,ガソリンスタンドにはwifiがある.

ウルグアイのサッカー・チームに似て,この国の若者たちは外国で働くことを知っており,ウルグアイの大学はそれに準備している.製薬業はほとんどない国だが,大学のバイオ科学は優れた内容である.

Project Syndicate JUN 20, 2014

The World Cup’s Sickening Message

KENT BUSE and SARAH HAWKES

ワールドカップのスポンサーはアルコールの会社が多い.毎日,アルコールやタバコ,加工食品で多くの被害者が出ていることをメディアは正しく伝えるべきだ.

The Guardian, Friday 20 June 2014

England's footballers are as confused as England itself

Jonathan Freedland

NYT JUNE 22, 2014

Fooling Mexican Fans

By FRANCISCO GOLDMAN

メキシコ国有石油公社PEMEXに外国投資を認める法案の審議が,ワールドカップの日程に重なる610日から23日に決められたことは,国民から議会の審議を隠すためだ,という疑いを生じている.

与党PRIに代わる政治的選択肢として,メキシコのナショナルチームに似た性格の政党を,選手と同様に底辺から見つけ出して,投票できれば,メキシコは変わるだろう.

FP JUNE 22, 2014

Bosnia Deserved Better

BY DANIEL ALTMAN

Project Syndicate JUN 24, 2014

World Cup Blues

JORGE G. CASTAÑEDA

NYT JUNE 24, 2014

South Africa’s World Cup Illusions

T. O. Molefe

NYT JUNE 26, 2014

Brazil vs. Brazil

Vanessa Barbara

大部分は平和的な抗議デモだった.税金は使わないという約束を破って,工事の資金は97%が政府によるものだ.表現の自由を制限し,住民を拘束し,デモ鎮圧の警察部隊が暴行した.それでも他方で,デモを嫌うブラジル人は弾圧を支持して叫ぶ.


l  シリアとイラクの秩序回復

NYT JUNE 19, 2014

In the Land of Mass Graves

David Brooks

20年前,ルワンダはエスニックな暴力行為が広まって,現在のイラクやシリアと同様,もしくは,もっとひどい状態であった.しかし,今,ルワンダは相対的に見て成功した国である.

この数年の成長率は8%であり,1994年以来,所得は3倍になった.最も驚くのは,20年前に互いの家族を殺し合った者が同じ村に平和的に住んでいることだ.

中東におけるスンニ派とシーア派との内戦状態について,ルワンダの教訓とは何か? 宗派的な虐殺は集団ヒステリーで起きたことではない.殺害は,特別な政治情勢において,上部から指令が出されたのだ.彼らは虐殺を政治的な道具に使った.もしこうした指導者達を辞めさせ,政治の機能を回復するなら,暴力を劇的に減らせるだろう.

1.政府が暴力を独占する.2.専制的な体制でも正当性を得ている.3.パワーを分散する.4.新しい有権者を獲得する.特に,虐殺で男子を失った社会では女性が進出した.5.虐殺を裁き,周知すること.

政治的エリートが賢明に行動すれば,最悪の事態は避けられる.

FP JUNE 19, 2014

Iran Is the Problem, Not the Solution

BY BERNARD HAYKEL

FT June 20, 2014

Middle East: Falling to pieces

Roula Khalaf

ISISthe Islamic State of Iraq and the Levant)は中東のすべての諸国と西側の利害に対する脅威である.彼らの目的はスンニ派諸国の既存の国境線を解体し,支配的な権力構造を破壊することである.もしこのまま放置されて,支配領域を得れば,その目標はグローバルな聖戦にまで及ぶかもしれない.

シーア派であれ,スンニ派であれ,ISISの展開する世界には勝者がいない.この地域のバランス・オブ・パワーが根本的に変わったのは,10年前にイラクでスンニ派の政権が米軍による侵攻で崩壊したからだ.多数派のシーア派がイラクの政権を執ったが,シーア派とスンニ派の対立は,シリア,レバノン,バーレーン,イエメンに及んだ.

それ以来,スンニ派の王朝が支配する湾岸諸国と,イランが支援するシーア派集団とが,内戦を繰り返した.アメリカ,サウジアラビア,イランは,4つの問題で同盟し,あるいは,敵対している.すなわち,ISIS,イランの核開発,シリアの将来,イラクの将来.

アメリカが2001年にイラクを撤退してから,マリキNouri al-Maliki首相はシーア派を権力から排除し,中央政府や軍に対する怨嗟を強めて,ISISが攻撃する材料を与えた.旧バース党の新秩序に従わない者たちが,ISISとともに戦いを復活させた.

イランとアメリカは,1979年のイスラム革命以来,関係が悪化していたが,現在のイラクに関しては協力する十分な理由がある.しかしアメリカは,協力することがイランに,核開発問題で有利な立場を与えることを恐れている.

アメリカが目指すイラクの権力共有は,イランの求めるシーア派の支配と対立する.また,アメリカとイランとの協力は,スンニ派の敵意を強め,ワシントンが伝統的な湾岸諸国との同盟関係を放棄した,というリヤドの疑念を固めてしまう.サウジアラビアの外交は,アラブ世界におけるイランの影響力拡大を阻止することに固執してきた.

中東地域のダイナミズムが,イラクが統一した国家として存続することを難しくしている.スンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランとは冷戦を展開し,近年では,サウジがイラク安定化のアメリカの支援を無視するようになった.

シリア内戦はイラク情勢と結びついている.ISISはシリアの反政府勢力内で重要な役割を果たしているが,アメリカはISISをテロ集団とみなし,より穏健な反政府派を支援している.ISISを抑え込む点で,アサドとアメリカは同じ立場である.しかし,アサドとISISの関係は複雑だ.アサド政権は聖戦主義者を利用している,と西側諜報機関は見ている.アサドはアラウィート派の体制がスンニ派によって脅かされているという構図を示したいのだ.

トルコはイラクとの経済取引が増えている.特に,半独立状態の北部クルド圏だ.イラクの核開発を阻み,シリアでアサドを攻撃する点で,サウジアラビアやアメリカと一致する.しかしトルコは,ISISを含む外国の兵士たちが大量に国境を越えてシリアに流入するのを放置している.アンカラにとって何より重要なことは,イラクのクルド人たちである.彼らがシリアに自治区を拡大するようなことがあれば,トルコにおけるクルド人の分離独立派を刺激すると恐れている.

FP JUNE 20, 2014

A Democracy Made of Straw

BY JAMES TRAUB

バイデン副大統領は常にアメリカの明確な出口戦略を持っていた.2009年半ばに私がインタビューしたとき,彼はイラクの宗派における指導者たちが,最終的には,彼と同じような政治家なのだ,と説明した.だからすべての政治家が直面するジレンマを味わうだろう.選挙が近づけば,シーア派のマリキ首相はスンニ派やクルド人に接近する.「彼が権力にとどまりたいなら,どうするべきか?」と,バイデンは問うた.宗派に固執することはイラクのような多宗教の国家において敗北する考えだ.アメリカからの莫大な援助を受けて,イラク人も紛争を流血なしに政治で解決する方法を学ぶだろう,とバイデンは信じていた.

オバマ政権に関わった元スタッフによれば,ホワイトハウスは,イラクの国民統合も民主的な制度の強化も実現しようとせず,アメリカが撤退するのに十分な国家があればよい,と考えていたのだ.ホワイトハウスは国民の厭戦気分を気にして,イラク軍を35000人にまで減らす数字にこだわった.イラクの指導者たちが残留する米軍の地位に不満を示したとき,政府はすべての軍を撤退させることに決めたのだ.そのときには,すでにイラクは自分の足で立つことができる,と主張するしかホワイトハウスには選択肢がなかった.

最近,副大統領の安全保障顧問であるAntony Blinkenに話を聞いた.彼は今でも,全てのアクターは政治システムの中で,憲法の許す範囲で,協力を試みている,と主張した.政治的な失敗が内戦に向かうよりも,ISISのような外部の脅威によって政治システムが崩壊するかもしれない.マリキはこの脅威に対して各党派を団結させることもできただろう.しかし,マリキはそれに失敗したのだ.スンニ派の過激派やバース党がISISの同盟者になっている.

アメリカ人はいまだに,苦難にあえぐ諸国で人々が物質的な自己利益に従って行動しないことに驚くのだ.宗派抗争や部族主義が,集団的な公益の実現を圧倒し続けている.Blinkenは,イラクを統一国家として維持することは手遅れであるかもしれない,と認めて,しかし「緩やかな連邦制」と,絶え間ない内戦状態とは違う,と主張した.

FT June 22, 2014

Removing Saddam Hussein did not cause this crisis

By Tony Blair

ISISが現れてますます混乱するイラク情勢は,11年前にサダム・フセインを政権から退けたことに始まった.つまり,ブレアが愚かだったのだ,と本紙の編集者は主張した.

しかし,2つの重要な点を認める必要がある.

1に,不介入もまた深刻な結果をもたらすことだ.シリアの場合,その結果は絶望的であった.イギリスやヨーロッパの安全保障専門家がその脅威を自分たちに及ぶと警告している.

2に,アラブの革命の影響がイラクに及ぶことを考えないのはおかしい.もしサダム・フセインがイラクの政権を維持していたら,彼はエジプトのムバラクのように辞任せず,シリアのアサドに似た反応を示しただろう.2003年の決断が何であれ,2014年にわれわれが直面したことは深刻な危機であるはずだ.

サダム・フセインのイラクが安定性と平和の勢力であったかのような議論が書かれている.しかし,フセインはイラク・イラン戦争を開始して,100万人以上の犠牲者を出した.化学兵器を使ってイラン兵を殺害し,それはイランが核兵器を開発する理由にもなった.また,クウェートを侵略し,化学兵器を使ってクルド人に対する虐殺を行い,シーア派を排除し,the Marsh Arabsを破壊した.

私は2003年の決断について人々を説得したいのではない.根本的な挑戦とは,911がわれわれの意識を変えた後,われわれがやったことに起源があるというより,もっと複雑なものである.それは悪しき政治と悪しき宗教が混じり合った,イラクやシリアに限らない,中東全域から世界に及ぶ毒性の混合物である.

われわれはその挑戦を逃げることができない.それはわれわれの安全保障に劇的な影響を及ぼすから.われわれが戦争に疲れても,彼らは戦争に疲れない.イラクやシリアだけでなく,パキスタンやナイジェリアでも,西側社会の中でも,その緊張が存在している.

短期的に,われわれはイラクやシリアを支援するだろう.アメリカが軍事援助の条件としてシリアに政権交代を求めるのは正しい.長期的には,ソフトとハードを組み合わせる必要がある.宗教や文化において若者たちの心を閉ざす公式・非公式の教育システムを変えるべきだ.

イスラム教徒の多数派は過激主義を支持していない.イラクやアフガニスタンのような困難な状況でも,人々は投票所に来て自由を求めた.独裁者からの自由,テロからの自由である.彼らを支援する必要がある.

NYT JUNE 22, 2014

Turkey's Best Ally: The Kurds

Mustafa Akyol

Bloomberg JUN 22, 2014

In Iraq, Think Twice

By Pankaj Mishra

1次世界大戦後,オスマントルコの解体によって,英仏の帝国主義はこの地域を分割支配しようとした.イギリスは油田のあるこの地域をイラク北部に含めた.

アジアやアフリカに対して準ウェストファリア型の平和を懐かしんではいけない.シリア国民は統一を望んだが,分断された.メソポタミアにはさまざまな部族があり,明らかにロンドンは,メソポタミア地域の諸部族の支配がどうなるか,真剣に考えていなかった.それは「すべての平和の終わり」であったとDavid Fromkinは考えた.

冷酷な専制体制だけが,秘密警察や外国勢力の支援で,エスニックと信仰の異なるコミュニティーを混ぜ合わせる「るつぼ」にならない領土の沸騰を抑えてきた.2003年の英米軍による侵攻はその内的な恐怖のバランスを変えた.2011年には,政治的な若者たちの抗議がアラブの春となって各地の既存権力を破壊した.

西側の評論家たちは,この戦争や革命を自由や民主主義の実現として称賛したが,その結果は予想もしないものだった.彼らは衝撃を受け,絶望的な見方を示すが,あくまで自己偏愛的な幻である.または,西側指導者たちの決断力の不足や無関心を非難する.アメリカは,ドイツや日本の占領で成功した,という思いがあるからだ.

しかし,歴史的な条件がまるで違う.当時の軍事力が旧体制を断つ「剣」としてだけでなく,新体制を育てる「犂」でもあったとしたら,そのためにすべてを破壊した後でなければならなかった.それを再現するには,今,あまりにも多くの国家が破壊されるだろう.1918年や1945年を模倣するのは困難だ.

現実には,パワー,富,生産性のバランスが何倍にも拡大しており,エスニックや宗派の忠誠心が,i-Phoneや選挙よりも強い動機になっている.各国の専制体制がパワーを失って,アメリカが地域の大国と組んで無秩序を一時的に抑えるとしても,「剣」を「犂」に変えるような化学変化を起こすことは不可能であろう.

FT June 23, 2014

Tony Blair eyes Abu Dhabi office as he looks to expand Middle East role

By Simeon Kerr in Dubai, Roula Khalaf in London and Heba Saleh in Cairo

theguardian.com, Tuesday 24 June 2014

An appeal to the Quartet on the Middle East to sack Tony Blair

Open letter

われわれはブレア氏が,イラク侵攻を強く主張した人物として,イラクとその周辺の混乱に責任があると考える.

パレスチナの占領は,西側の中東政策におけるもう一つの悲劇的な失敗である.7年間の中東特使として,ブレア氏の成果は何もないに等しい.それはイスラエルの利益にばかり従っているからだ.

ヨルダン川西岸には500か所の検問所や道路封鎖が存在し,ガザ地区は2009年のイスラエルによる激しい爆撃で破壊され,今も人道的な危機にある.イスラエルは今も国作法を無視して入植地を建設し続けている.

中東特使としてのブレア氏を解任するべきだ.

NYT JUNE 24, 2014

ISIS and SISI

Thomas L. Friedman

イスラエルの政治アナリストであるOrit Perlovが,アラブに支配的な2つの統治モデルとしてISISSisiを示した.ISISは「神」の支配,Sisiは「国家」の支配である.

しかし,2つのモデルはともに失敗し続けるだろう.なぜなら,アラブの若者,イスラム教徒たちが最も必要とするものを提供できないからだ.それは,教育,自由,雇用である.それによって彼らは自分の能力を生かすことができる.政治生活において平等な市民になれる.

軍事国家とイスラム国家の2つの神話が完全に失敗であることを,一般の人々が確信するとき,漸くこの地域にも21世紀の可能性が見える.

状況は完全な絶望ではない.チュニジア,クルドのような,政治,宗教,文化の多元主義を受け入れた社会が現れている.ヨルダンやモロッコのような,穏健な,参加型の改革を志向する王朝が存在する.

われわれは彼らを守り,支援するだろう.そのモデルが,政治,教育,信仰の多元主義に向かうのを助ける.しかし,独裁者のいない社会で共存することに成功するかどうかは,彼ら自身にかかっている.

FP JUNE 24, 2014

Through Syria, Darkly

BY KRISTIN LORD, DAVID ROTHKOPF

FT June 25, 2014

Isis risks distracting US from more menacing foes

By Francis Fukuyama

われわれは常に1939年になることを考える.1930年代に,英米はドイツや日本の脅威を過小評価していた.西側指導者としてはウィンストン・チャーチルだけが,それを正しく評価し,ナチズムに対する民主主義の防衛を要請した.第2次世界大戦後の70年間,ベルリン空輸からベルリンの壁崩壊まで,アメリカにも多くのチャーチル的な瞬間があった.

他方で,脅威を過大評価し,事態を悪化させた瞬間も多くあった.たとえば,スエズ危機のアンソニー・イーデン,ベトナム戦争のリンドン・ジョンソン,イラク侵攻のジョージ・W・ブッシュがそうである.それは必要のない,非生産的な戦争であった.外交に対する国際的な支持を失わせた.

今日の論争も,われわれの優先順位を求めている.ロシア,中国,イラクなどで,権威主義的な勢力が動きつつある.ところがオバマ大統領のウェスト・ポイント演説はそれを正しく示せなかった.オバマは,アメリカの直接的な脅威としてテロリズムだけを指摘し,ロシアや中国の世界秩序に対する挑戦は長期的には存在しない,と述べたのだ.

私は,ISISの最近の拡大にもかかわらず,アメリカの核心的な利害に対して,テロが主要な脅威とは考えない.イラクやシリアの内戦状態は,サウジアラビアとイランが支援するスンニ派・シーア派の宗派戦争である.それが人道的な危機になるとしても,イラクに15万人の米軍がいたとき,宗派的な憎悪を抑えられなかったように,われわれにできることはほとんど何もない.

ロシアによるクリミア併合は,冷戦後の国際秩序に対する重大な挑戦である.ヨーロッパの冷戦後の秩序はロシア人が近隣諸国に居住する事実を受け入れることに依存しており,プーチンがこれを問題にした.

さらに,ロシアのパワーは衰退していくが,中国はそうではない.すでに世界第2の経済規模を実現し,この数年でアメリカを抜く可能性がある.わずかな領土紛争に見えるが,そこには東アジアの支配的なパワーとなり,アメリカを西太平洋から追い出して,中国の影響圏を確立する意図がある.

現状はまだ1939年ではないが,アメリカは行動するべきだ.NATOを軍事同盟として再強化し,中国に対する多角的な交渉の枠組みを提示することだ.戦略とは,優先準備を示し,それを説明することである.ネオコン的な強硬策も,孤立主義も,間違った選択肢である.真実は常にその中間にある.

NYT JUNE 25, 2014

Israel’s Puppy, Tony Blair

By MARWAN BISHARA

The Guardian, Thursday 26 June 2014

Six vital steps to peace in Syria

Ban Ki-moon

犠牲者の数は15万人を超えただろう.刑務所はあふれ,処刑や拷問が広まり,人々は餓死している.都市部は廃墟になった.

国際社会はシリアの人々を救うことをあきらめてはならないし,地域が終わりのない残酷さと危機に落ち込むのを許してはならない.前進のために6つの要点がある.

1.暴力の停止.・・・外国がシリアの各派に武器を供給してはならない.国連安保理は武器禁輸を命令するべきだ.

2.住民の保護.・・・国連は人道的な支援を続けている.しかし,シリア政府と,反政府軍の一部は,反対派に同調するコミュニティーへの支援を阻んでいる.さらに,国際社会は支援に必要な資金の3分の1も提供していない.

3.政治的な交渉による解決.・・・国連特使の外交を阻んではならない.シリアは大統領選挙を公正に行わなかった.地域の諸国は戦争終結に責任がある.社会を維持し,信頼と意見交換のチャンネルを開くべきだ.

4.虐殺責任者の告発.・・・国際刑事裁判所がそのためにある.シリアの人々は正義がなされることを待っている.

5.シリアの化学兵器廃棄.・・・多くの殺戮は通常兵器でなされているが,化学兵器の製造と使用を禁止する国際規範の強化は重要だ.

6.紛争の地域的拡大阻止.・・・外国兵士の参加は双方から行われ,暴力と宗派的な憎悪を高めている.過激派はすべてのコミュニティーにとって脅威である.

シリアの戦争を終わらせる最大の障害となっているのは,軍事的に勝利できる,という考えだ.人口密集地域を空爆して支配領域を拡大することが勝利ではない.包囲したコミュニティーを飢えさせて降伏させることが勝利ではない.たとえ短期的に一方が支配できても,その破壊こそが将来の紛争の種をまくのだ.

NYT JUNE 26, 2014

America and Iran Can Save Iraq

By MOHAMMAD ALI SHABANI


l  世界難民の増加

NYT JUNE 20, 2014

Refugees at Levels Not Seen Since World War II

By NICK CUMMING-BRUCE

暴力的な紛争で避難した人々の数が,2013年末に5100万人,第2次世界大戦後の最高水準に達した.それは増加傾向ではなく,2013年に1100万人も跳ね上がったのだ.しかも難民の半数は子供である.

これほど多数の人々を人道的に救出することは不可能であり,破滅的な状況が広がる中で,能力も資源も不足している.

国境を越える難民数は,第2次世界大戦終結時や,1993年にthe Balkans, Afghanistan and Mozambiqueで発生した難民数の方が多かった.しかし,国内の避難民を加えた場合,その数は空前の規模になっている.

難民は発展した諸国に向かうというより,発展途上諸国により多く発生し,そこにとどまっている.

NYT JUNE 20, 2014

In Refugee Statistics, a Stark Tale of Global Strife

By SERGE SCHMEMANN


l  イギリスと中国

The Guardian, Friday 20 June 2014

Britain took more out of India that it put in – could China do the same to Britain?

Ian Jack

李克強首相がロンドンを訪問し,デイヴィッド・キャメロン首相が歓迎した.

中国の英字紙Global Timesthe People's Dailyの記事はすさまじい.「古い,衰退する帝国」に暮らすイギリス人は,涎を垂らす年長の親類と同じように,中国のような興隆する諸民族の忍耐と理解が必要である.「イギリスは単なるヨーロッパの古い国であり,旅行や勉強に行くだけのところだ.」

FT June 24, 2014

London’s renminbi trade will dance to Beijing’s tune

By Paola Subacchi


l  ウクライナとポーランド

FT June 24, 2014

A shadowy conspiracy that saps Poland’s strength

By TonyBarber

このスキャンダルでポーランド政府が崩壊するとか,中央銀行の信用が失墜するとか,NATOを損なうことはないだろう.しかし,安定していた現政権には大きな打撃だ.

ポーランド政府の要人による秘密会話を暴露したのはだれか? プーチンよりも,野党の元首相Jaroslaw Kaczynskiである可能性が高い.

Bloomberg JUN 26, 2014

Stop Playing Putin's Game

By The Editors

アメリカとEUはロシアに国境監視団の受け入れを要求するべきだ.そして,ロシアからの武器や「ボランティア兵士」がウクライナに流入するのを阻止する.


l  中国の不動産バブル

Project Syndicate JUN 20, 2014

China’s Real-Estate Wrongs

YAO YANG

不動産価格の上昇が漸く低下に向かったが,景気が減速しているときに不動産価格が暴落することを政府は恐れている.さまざまな住宅価格規制の中には正しい政策も間違った政策もあり,政府はそれらを区別して廃止するべきだ.


後半へ続く)