IPEの果樹園2014
今週のReview
6/16-14
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イラク戦争の再開 ・・・アジアの地域安全保障 ・・・EUの政治空間 ・・・歴史的転換 ・・・帝国主義のパラドックス ・・・温暖化のアメリカ政治 ・・・日本の変貌 ・・・民主主義の解体と再生 ・・・ブラジル・ワールド・カップ
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l イラク戦争の再開
NYT JUNE 10, 2014
The
Real War of Ideas
Thomas L. Friedman
モスルがスンニ派の過激派によって占領された.彼らはシリアの国境を越えてやってきた.それは東地中海に広がる2つの思想の戦いである.しかし,あなたが考えているような思想ではない.
イラクで選出されたNouri al-Malikiマリキ首相は,スンニ派過激集団と対抗する独裁者である.マリキが刺激したシーア派の好戦論も,スンニ派の好戦論と同様に,思想の敗者である.選択するべき思想は,スンニ派やシーア派の過激思想the extremistsではなく,環境保護派the environmentalistsである.
過激派も環境保護派も,シリア,イラク,トルコ,レバノンの国境を失くして,単一の政治システム,あるいは,エコシステムに統一されることを求めている.もし過激派が勝利すれば,実際に勝利しつつあるが,この地域は人的かつ環境的な惨禍に苦しむ地域となる.もし環境保護派が勝利すれば,それは人々がこの空間を共有していることを学ぶからであろう.彼らは互いに破壊し合うか,「母なる自然」によって滅ぼされることを知る.
クルディスタンの環境保護派と会って話した.そして,目が覚めた.中東は諸国家によって分割されているが,全ての住民は水力・生物的なエコシステムに生きている.それがますます脅かされているのである.
1990年代に,イラクのクルド人地域は二重の制裁に苦しんだ.国連によるイラク制裁とイラク政府による制裁だ.その結果,クルドは燃料として燃やすために森林を伐採してクルド・オークの森林やその生態系を破壊し,ペルシャ・レオポルドのような巨大生物が危機に瀕している.
環境保護派のAzzam Alwashは述べた.世界の多くの人はイラクを,石油,砂漠,戦争と思っている.しかし私にとってのイラクは,雪に覆われた北部のクルド山地である.そこから続く谷に水と耕地がイラク南部にまで広がっている.われわれが食べる物は,クルドの山脈が与えたミネラルによってできている.
ティグリスとユーフラテスの主要な源は,トルコ東部とイラクに住むクルド人の山岳地域である.しかし,干ばつが増え,ディーゼル・ポンプによる取水が増え,トルコの農業や人口増加,イラクの石油産業が多くの水を必要とする.トルコはすでに20か所に巨大ダムを建設し,数百の堰を設けている.またトルコはイラクやシリアにおけるクルド人の反政府勢力や,シリア政府とも敵対している.
過激派にとって国境は存在しない.モスルを占領したように,スンニ,シーア,クルドの過激派が国境を越えて戦争する.環境保護派にとっても国境は存在しない.統合された河川や水体系が問題だ.
環境保護派は「コモンズ」から出発する.すべての者が豊かになり,すべての者が共有する.過激派は「排除」で始まる.すべての者が恐怖を感じる.東地中海の未来は,他のすべてのイズムを否定し,環境保護派の思想を支持している.
FT June 11, 2014
The
nightmare emerging in Iraq
イラク第2の都市,人口200万人のモスルが,戦闘もなくイスラム過激派勢力the Islamic State of Iraq and al-Sham (ISIS)によって支配されたことで,イラクが統一国家として存続することさえも疑問になる.
政治的失敗は昨年,マリキ首相がスンニ派の指導者たちを政権から追放したことにさかのぼる.それが,指導者たちを穏健すぎると批判していたスンニ派の聖戦主義者たちに,復活の機会を与えた.昨年の死者数は8000人に達し,2007-08年のピークに戻った.
スンニ派の拠点であったが,アメリカ軍がベトナム戦争以来の激しい戦闘で支配したファルージャの再征服に,半年前,ISISは成功した.聖戦はユーフラテス渓谷北部を制圧し,バクダッドを目指す.
マリキは先月の総選挙で勝利したが,世論は分裂した.強権的な指導者としてマリキが不当な3期目を得た.隣国シリアの内戦が影響するのは確かであるが,イラクのスンニ派はシリアの過激派と結び付いていなかった.マリキの失策がISISを呼び込んだのだ.マリキ政府の防衛や治安能力は低く,組織は腐敗している.
ISISに効果的な圧力を加える必要がある.迅速さが重要だ.マリキがクルド地域の指導者とスンニ派に協力を求める必要がある.しかし,クルドンからの協力の申し出をマリキは拒否した.
l アジアの地域安全保障
Project Syndicate JUN 5, 2014
A
Chinese Monroe Doctrine?
JASWANT SINGH
中国の外相がインドを訪問する.Modiはどのような話をするのか? インドと中国という世界最大の人口を持つ国が結ぶ関係は重要な意味を持つ.
インドと中国の関係は,特に経済に関して改善している.ただし,中国の黒字に傾く貿易不均衡が,インドには不満である.他方,安全保障では,両国の間に世界で最も大きな国境紛争を抱えている.昨年,中国軍がインドの支配地域に侵入して築いた拠点も,まだ残ったままである.中国の姿勢は,言葉の上では穏健であるが,その行動は攻撃的で,周辺の多くの国と紛争を激化させている.
Modiは,地域の安全保障システムを築く話し合いにおいて,双方の利益をもたらす解決策があると考える.しかし,中国がその覇権を地域的に確立する以外の解決策を受け入れない,というのが問題だ.
FT June 9, 2014
Keep
the lid on Pandora’s box or Asia will pay dearly
Gideon Rachman
1970年代の末から,アジア諸国は戦争することを考えなくなった.ビジネスの競争に徹して,豊かになったのだ.しかし今また,警戒すべき朝貢が一斉に現れている.軍事演習,異常接近,監視艇や漁船の衝突.安全保障会議では互いの防衛担当者が非難を浴びせている.
アジアはパンドラの箱を開けてしまったようだ.
なぜアジアなのか? そのもっとも注目される理由は,中国の経済成長によって,経済規模が日本を超え,アメリカに匹敵するようになったことだ.この中国の興隆に対して,日本は警戒し,防衛力を強化し,アメリカも国際システムを守ろうとする.
しかし,その紛争となっている無人島や岩礁は,歴史的に見て,戦争の原因となるには最も微小なケースである.各国は紛争を交渉・調停によって解決するべき理由がある.それを妨げているのは,何よりも中国が一切の交渉を拒否していることだ.「中国人民の偉大な再興」を掲げる政府は,「9つの点線」を譲るつもりがない.国民はそれを教育によって確信している.
他のアジア諸国は,国際的な法やルールを重視するが,国際司法裁判所の役割を中国は認めていない.また,アメリカも海洋法を批准しておらず,日本政府は紛争の存在を認めない.
しかし,各国が交渉と取引による解決の余地を受け入れることから,アジアの紛争調整メカニズムを生み出す条件を整備するべきだ.
l EUの政治空間
FP JUNE 5, 2014
Britain's
Great Unraveling
BY ANDREW HAMMOND
イギリスは,世界人口の1%にも満たず,世界GDPの3%ほどでしかない.しかし,その国際的影響力は,イギリスが帝国を失ったにもかかわらず今も重要である.将来のイギリスの繁栄と国際的な地位を大きく失わせる問題が起きている.それは,スコットランド独立とEU離脱である.
スコットランドの独立は,残された北アイルランドやウェールズとの連邦にも影響するだろう.また,スコットランドのEU支持率は高いから,スコットランド独立がEU離脱を有利にする.イギリスがEUを離脱することは,EU改革にとっても損失だろう.
スコットランドがEUに加盟できるという保証はない.すべての加盟国が承認しなければならないが,少なくとも,カタロニア問題を抱えるスペインは承認に反対している.たとえ加盟できても,イギリスが得ている条件よりも不利になり,EUの重要な決定には参加できない.他方,スコットランド独立は,イギリスへの直接投資を損ない,イギリスの財政基盤を減らして,緊縮策を強化する条件となる.
財源問題はイギリスのトライデント潜水艦や核基地の整備問題をさらに困難にする.スコットランドにある核施設をイングランド内部に移設するには巨額の費用が掛かる.
スコットランド独立は,さまざまな国際会議におけるイギリスの発言力を失わせる.G7/G8,G20,NATO.国連安保理の改革を進めるとき,イギリスは常任理事国の地位を失うかもしれない.強固な,統一された,実効性のあるパートナーとして,イギリスが統一を保ち,EUに加盟していることをアメリカ大統領も求めた.
l 歴史的転換
FT June 10, 2014
Three
events that shaped our world
Martin Wolf
今年は,第1次世界大戦開始から100年,ノルマンディー上陸作戦から70年,ソ連圏崩壊と天安門事件から25年,である.
歴史は繰り返さないが,韻を踏む.グローバリゼーションは世界の貧困を減らし,中国とインドの素晴らしい成長をもたらしたが,世界金融危機はその逆転を示唆し,世界の政治には新興国との緊張が高まっている.核兵器は戦争の発生を抑えるが,紛争はなくならない.
この100年間の教訓は,人類が協力する運命にあるが,人類は今も非常に部族的な生活に縛られている,ということだ.協力と抗争との緊張関係は続く.
l 帝国主義のパラドックス
Project Syndicate JUN 6, 2014
America’s
Late Imperial Dilemma
IAN BURUMA
オバマの姿勢は左右から批判されている.アメリカは世界にその意志を押し付ける特別な地位にある,と彼らは考えるからだ.左派は民主主義や人権を理由に挙げるが,右派は英雄など求めない.アメリカが最強の国であるからだ.
アメリカの指導を必要と考えるのは,他者に利益をもたらす警察が失われた世界はカオスに陥り,悪しき勢力が繁栄する,という前提があるからだ.Robert Kaganは,アメリカの指導力が失われると,独裁者の行動を刺激するだけでなく,民主的な諸国の同盟も難しくなる,と主張する.すなわち,東アジアでは,中国だけでなく,日本の行動もアメリカから離れて,独自に軍備を強化し始め,信頼できなくなるのだ.
こうした議論は,帝国の末期によく行われたものだ.20世紀のヨーロッパ諸帝国は,彼らの植民地の住民たちに,その独立を遅らせようとした.まだ早い.お前たちには独立できる準備がない.西側の支配者がおまえたちに責任を果たすことを教育してやるから,それまで待て,と.
これは帝国主義のパラドックスである.植民地である限り,彼らは支配的な地位から排除され,準備できないのだ.自分たちのことに責任を持とうが持つまいが,彼らは決定から排除される.
帝国は長期にわたって秩序と安定性を維持できた.しかし,帝国主義者たちは,今のアメリカのように,支配することに疲れ,植民地人は我慢できなくなった.帝国の秩序が衰退したとき,Kaganが指摘するように,混乱が訪れた.
1947年,イギリスが撤退したインドで,それが起きた.パキスタンが分裂し,ヒンズー教徒とイスラム教徒が殺し合って100万人が死んだ.しかしこれは,だからイギリスの支配を続けるべきだった,というのか? そうではない.むしろ彼らの緊張関係は植民地の分割統治がもたらした結果であった.
同じことは,ある程度,パックス・アメリカーナにも言える.「自由世界」の指導者は,民主的な諸国も,多くの独裁国家も,同じように従わせてきた.アメリカが「リベラルな秩序」を維持したのは,第2次世界大戦や冷戦の結果であった.こうしたことがいつまでも続くはずはないから,帝国のパラドックスが再生する.他国がアメリカに従う限り,彼らは十区の安全保障までアメリカに頼る.他方アメリカは,同盟国の事情から手を引こうとするが,彼らがいうことを聞かなくなるのは嫌がる.2009年に日本で政権交代が起きたとき,日本が対米・対中関係を見直すことをオバマ政権は邪魔した.
ウェスト・ポイントの演説で,オバマは東アジアにほとんど触れなかった.しかし,オバマの慎重な外交姿勢で最も利益を受けるのは東アジアである.オバマは正しい直観から,アメリカの軍事的な優位が低下することを認めているから,アメリカが次の不必要な戦争に巻き込まれないようにするだろう.それは帝国のジレンマを解決できないが,それでも東アジアにとって,彼の批判者たちが唱える軍事力の行使を抑える点で正しいだろう.
l 温暖化のアメリカ政治
NYT JUNE 8, 2014
Interests,
Ideology And Climate
Paul Krugman
人間が作る地球温暖化に関して,われわれは3つのことを知っている.1.温暖化の防止には迅速な行動が必要だ.2.それは経済成長を損なう.3.成長抑制の程度は小さいが,政治の行動は非常に困難だ.
なぜ困難か? その主要な理由は既得権があるからではない.確かに業界は政治献金をしているが,もっと重要な理由はイデオロギーと反知性主義である.
1980年代にも保守派は酸性雨の規制に成長を損なうという理由で反対したが,現実には,キャップ・アンド・トレードの制度が硫黄分の除去に成功して,コストを最小限に抑えた.2009年から,北東部諸州では炭素の除去にキャップ・アンド・トレードを用いて,排出量は大幅に減ったが,アメリカの他の州に比べて成長率も高かった.環境保護主義は経済成長の敵ではないのだ.
しかし,今も反対する声は強い.
「石炭との戦い」は雇用を損なわないか? 確かに雇用は減るだろう,しかしm心配するほどではない.むしろ,1970年代末に,アメリカで25万人を雇用していた石炭業が,その3分の2を失ったのは,生産量を増やしたにもかかわらず,はるかに小人数しか労働者を必要としない採掘方法に変わったからだった.石炭労働者が負けたのは,リベラルな経済学によってではなく,石炭産業の革新によってである.
では,なぜ今も環境保護派に対する激しい反対があるのか? それはAyn Randの思想を真面目に学んだ世代が,自己利益の追求はすべて正しく,政府は解決策ではなく,問題を作るだけである,と信じているからだ.市場への介入はすべてリバタリアンの世界観に反する.
さらにアメリカ人には,強い反知性主義の伝統がある.地球温暖化は科学者の合意を基礎に勧められたため,保守派はそれをエリートたちの陰謀と宣伝した.それは巨大な政府によって税金を奪われることでしかない,と.
温暖化防止の敵は,経済イデオロギーと科学への反感である.
l 日本の変貌
(China Daily) 2014-06-09
Who
are the new Japanese?
By Eric X.Li
戦後のアジアの成長には2つの支柱があった.アメリカの帝国的な秩序と,中国の成長である.今や,アメリカが変調をきたした.そこで安倍晋三が登場し,新しい日本がアメリカの役割を,少なくともアジアで引き受ける,という.実際には,中国を唯一の敵にして.
アメリカが日本の火遊びに付き合えば,アジアの成功の2つの支柱とも失われる.人口減少と経済停滞に苦しむ日本は,中国の成長を恐れているだけだ.安倍が信じる新しい日本人とは,その祖父母たちと同じであると称賛するが,中国人や韓国人にとって,それが虐殺を思い出すものであっても気にしないのだ.
Bloomberg JUN 11, 2014
Japan's
Abe Is the World's Best Leader
By Noah Smith
私は安倍を疑っていた.彼の最初の政権が破滅的であったし,2012年に再登場しても,経済の難しい改革には手を付けずに,円安を促して憲法改正を狙っているだけだ,と思っていた.
しかし,私は間違っていた.はっきり言えば,安倍は今,世界で最も有能な政治指導者である.
浜田宏一と黒田東彦の助言を得て,安倍は恒久的なマネタリズムを採用し,デフレ脱出に成功した.成長が回復し,ついに賃金も上昇し始めた.
保守的なナショナリストから変貌し,女性の地位向上,法人税減税,年金基金を高利回りのリスク投資に向け,規制緩和,TPP参加,さらには,毎年20万人の移民受け入れを主張した.
中国や韓国と敵対して靖国参拝を行ったのは確かに問題だった.しかしその後,国際派のリベラリズムに転身し,中国の威嚇からアジア諸国を守る,と主張している.
何より,安倍は日本のそれまでの指導者になかった輝きを示した.
l 民主主義の解体と再生
Project Syndicate JUN 11, 2014
Rethinking
Democracy
DANI RODRIK
民主化の第3の波といわれるほど,世界は民主主義を享受している.しかし,同時に,民主主義国家の成長は減速し,民主主義の将来は疑わしい.
先進諸国では,民主主義が成長を実現できず,社会の不満を吸収できないことが問題になっている.発展途上の世界では,市民的な自由や政治的自由が実現していない.真の民主主義には,政治的な代表制と,権力者の制限,が必要である.法の支配を欠く民主的な選挙は,多数の独裁制に向かわせる.
こうした民主主義は実現したのは,国民国家で産業革命とその社会変動.大衆動員を成功させた国だけであった.リベラルな民主主義とは,それ自体が,ストレス下にある国民国家の見出した解決策であった.
しかし,国民国家は上下から攻撃を受けている.経済グローバリゼーションは,社会的結束のために政府が既存の資源配分や再分配に影響を与える経済政策の効果を奪う.さらに政策担当者は厳しい競争と国民からの要求にさらされ,困難な政策をグローバリゼーションのせいにして延期する.発展途上諸国では,しばしば権力者の制限が不十分で,リベラルではない民主主義や,競争的な権威主義体制が現れる.EUにおける中央銀行の独立性や財政規律も,官僚支配を強めている.
しかし,官僚支配体制は自己破壊的である.民主的な正統性を欠いた政策は機能しないからだ.ヨーロッパは政治統合を深めるか,経済統合を遅らせるか,選択に直面している.他方,張って途上諸国の軍による介入は,対立しつつも抑制と権力の交代を受け入れる「民主主義の文化」が育つのを,ますます阻むことになる.
権力の抑制を確立するには,野党に投票することで,与党を敗北させるしかない.グローバリゼーションや,非リベラルな国家の圧力に,リベラルな民主主義が生き延びるには,民主主義の新しい意味を発見することだ.
l ブラジル・ワールド・カップ
Project Syndicate JUN 10, 2014
Brazil’s
Own Goals
MATT SLAUGHTER and JAANA REMES
ブラジルは国際的な注目を集めるが,その経済は世界経済から切り離されており,もっと緊密な連結を実現しないと,将来の成長や繁栄を失う恐れがある.
確かに世界第7位の経済規模に拡大したが,その原動力は商品需要,人口の配当,消費ブームであった.中産階級に入れない貧困層が多く,一人当たりGDPでは95位と,大きく劣っているのだ.もっとインフラに投資して緊密な統合を実現し,レアル高により競争力低下も是正して,貿易を増やすことである.
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The Economist May 31st 2014
A world to conquer
How to keep roaring: Business in Asia
Japan’s demography: The incredible
shrinking country
Remembering Tiananmen: The lessons of
history
Ukraine’s presidential poll: A two-tone
election
China: Wild at heart
(コメント) アジア企業の世界戦略が起動する,と特集記事は分析します.人口動態は労働力を減らし,高齢化に向かいます.安価な信用供給,為替レート,高い競争力,も終わるでしょう.成長が減速する中で,技術革新やブランドで欧米企業に対抗しなければなりません.消費者は良い品質を求め,インターネットで厳しく比較します.アジア企業はグローバリゼーションの条件を活かすしかないのです.重役会議も英語で,新規採用は世界各地で,一気に企業を世界標準にする? The Economistの予想ですが.
日本,ウクライナ,中国,に関する記事が興味深いです.
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IPEの想像力 6/16/14
将来を予測することは研究者の嫌うところです.しかし,政治家なら,自国と周辺地域の将来の姿を常に考えているはずです.そこには,政治によって,さまざまな異なる経路があるからです.
外交,農業,貧困,高齢化,という問題を,日本の政治家たちは,20年,30年先にどうなる,どうしたい,と考えているのか.
もしイギリスがEUから離脱し,内部の政治統一を失えば,国際的な地位を大きく低下させるでしょう.それに比べて,日本にはアジアの地域統合を促す仕組みが欠けています.この先,日本を弱くする条件とは,アメリカや中国,韓国との関係を損ない,アジアで孤立することです.
たまたま,久米書店という本の紹介番組を観ていると,農業には多くの工程がある,という文章を紹介していました.農家を営むことには,有機的に結びついた多くの知識が詰まっており,その工程に応じて革新的な試みを追加できるから,農業はとても面白い,と彼らは語っていました.
かつて,工場監督官や労働基準監督官の制度は,産業革命や急速な工業化に介入して,それを人間にとって生活の改善であるような「文明のシステム」にする優れた試みであったと思います.農業や医療のように,多くの規制と公的な補助金や保険で維持されている分野についても,政府と企業・個人とを組み合わせ,積極的に革新する自由を与えるべきです.
補助金や関税には,特殊利益団体が関係します.本当に国民負担や老人の福祉を考えた制度を創るには,医療や介護の基準を見直す必要があるでしょう.保険制度による負担を,繰り返し,国民に問うシステムを起動すると良いでしょう.また,社会福祉監督官を育てて,全国各地,国民各層から評価や改善点を集めます.
介護労働者の報酬を高めるために,老人の所得を増やすのが良いでしょう.老人がその年齢層の平均賃金の6割.もしくは,生活最低保証額を受け取るようにします.受給資格として,資産を持たない老人に限ります.貯蓄や土地・家屋などを,子供への相続や,国庫に贈与することで,誰でも老人の住宅利用や生活給付を受けられます.
各地に老人のための住宅施設を設けますが,それは既存の住宅をリフォームしたシェアハウスにします.町の中で,地域の工務店や食堂,ケータリングに需要を与え,高齢者自身の就労も可能にするのが良いでしょう.老人たちが地域のコミュニティー活動に参加し,託児所や保育園を手伝うこともできます.
こうして日本は,高齢者の医療や生活保障システムを開発し,輸出します.それは,異なる言語や文化を超えて,「福祉の帝国」として評価されます.私はそれを,高齢化のルイス・モデル,と呼びます.高齢者は社会の負担ではなく,新しい社会システムを発見する過程に参加します.幸せな老人が多い社会で,労働者たちは社会保険を負担し,移住して働きたいと思うでしょう.
優れた福祉監督官が十分に老人の満足感や介護労働者の条件をモニターすれば,老人ホームの競争促進が優れたサービスや多様な試みを実現するでしょう.外国から介護労働者を短期雇用する制度も,外国人の永住権取得や国籍取得に向けた積極的な同化論・多文化論とともに,各地で具体的な経験と論争を積み重ねる中から答えを見つけるべきです.
若者の失業や非正規労働者が増えて,ホームレスが深刻な問題になったのは最近のはずです.今は,都市の裏通りや,公園,街並みから,彼らの姿が消えたように感じます.しかし,グローバルな資本主義は次の危機を準備しているでしょう.
高齢化にとどまらず,環境,教育,女性,など,社会的革新で世界を指導する国が必要です.日本も挑戦してください.
若者たちに,大学入試なんて要らない,と思うのです.さまざまな資格や能力が必要なら,公文式や専門学校,インターネット学習を組織する方が優れています.大学が育てる人間とは,社会的革新を目指す改革者,破壊者,革命家です.旧弊を打破し,社会的利益を掲げ,多くの人を巻き込んで行動する若者の覇気を,大学は教えてくれません.図書館と制度・政策をつなぐ研究支援,フォーラム機能があれば,どこでも,それが大学です.
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