IPEの果樹園2014
今週のReview
6/9-14
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アメリカと安全保障 ・・・ポーランドと中国 ・・・中国のバブル ・・・アジア秩序の分裂 ・・・EUの分裂 ・・・プーチンの夢 ・・・天安門事件25周年 ・・・ヨーロッパの灰色革命
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l アメリカと安全保障
FP MAY
29, 2014
The
Strategy Killer
BY KRISTIN LORD
ホワイトハウスと国務省は2つの安全保障政策をめぐる文書の作成に奮闘している.それはthe National Security Strategy とthe Quadrennial Diplomacy and Development Review (QDDR)である.そのためにはアメリカの挑戦と機会を評価し,優先順位を示す.
挑戦の核にあるのは,グローバルな暴力の高まりであり,そのエスカレーションが起きる前に暴力的な紛争を予防することだ.アフリカ,中東,南アジアにおいて深刻な暴力が広がっているだけでなく,南シナ海,ビルマ,ウクライナ,などでも緊張が高まっている.多くの場合,国際機関は効果がない.
冷戦終結は国家間の戦争を終わらせたと多くの者が期待した.ルワンダでも,バルカンでも,和解を進め,オバマ大統領は9・11によって始まった紛争の時代を終わらせると約束した.
しかし,暴力の規模と範囲が増大して,それがわれわれの感情と良心を苛み,アメリカの利益を損なっている.経済成長やエネルギー安全保障,人権,テロ対策,人身売買,環境保護,グローバルな健康問題,などは互いに緊密に結びついている.
国家間の戦争の脅威も再現しつつある.ロシアの特殊部隊がウクライナを侵略し,ヨーロッパの再武装化が進む.日本と中国,中国とベトナムの間で,緊張が高まり,アジアの戦争が恐れられている.紛争を抑える選択肢はあるが,急がねばならない.
軍事力の限界を認め,もっと長期の投資を平和構築に向けるべきだ.外交だけでなく,平和の「選挙区」となる住民を守る.より強力で効果的な,非暴力のパワーを必要としている.外交,対話,紛争解決,市民運動,メディアによる国民対話.
暴力によって勝利できると考える限り,対話のテーブルに就かないような冷酷な独裁者もいる以上,軍事力は必要だ.しかし,積極的な平和は和解と正義を求める.まず重要なことは,警察や治安部隊による合法的な暴力の使用である.それは政治的な制度構築を助け,市民社会の発展を助け,リビアやアフガニスタン,パキスタン,ビルマのような国でも民衆の対話を可能にする.
FP MAY
29, 2014
What
We Talk About When We Talk About Leadership
BY G. JOHN IKENBERRY, DANIEL KURTZ-PHELAN
オバマ批判が党派を超えた嘆きの声になっている.オバマの下でアメリカは引き下がり,指導する意欲,偉大なことへの関心を失った.その結果,「国際秩序」は解体しつつある.ロシア,中国,北朝鮮,シリア,彼らは攻勢に出て,アメリカの警告を無視する.大統領はレポーターに,誰も理解してくれない,と言うだけだ.
そして嘆きの声は続く.この弱さに対する答えは,力の行使しかない.それなしには,国際秩序は生き残れず,第2次世界大戦と冷戦を経て,われわれの築いてきた自国の安全保障と海外にまで広まる繁栄は終わってしまう.
ウェスト・ポイントにおけるオバマの演説はこれに応えなかった.介入するのか,撤退するのか.オバマはその反対に応えない.オバマは「国際秩序の強化と実行」を唱える.反対派が無視しているのは,オバマが前任者と違って最も力を注いできたのが,国際秩序を再生すること,反対派が示すアメリカの間違った指導力を是正することである.
指導するかどうか,が問題なのではない.どのような秩序なら,アメリカが指導するのにふさわしいか,ということを問題にしているのだ.アメリカは,過去70年間,秩序を形成し,維持できたが,それは単に軍事的な力によるのではなく,世界政治の基礎に拠って立つ強さがあったからだ.第2次世界大戦後のリベラルな国際システムには,国際機関,同盟,自由貿易,政治的なパートナーシップがあった.このシステムは,リベラルな民主主義諸国を,経済進歩と安全保障の協力を育てるルールと制度を通じて結び付けた.NATOからマーシャル・プラン,国際連盟からブレトンウッズである.
同盟国や制度はときにアメリカの行動の自由を制約したが,そうすることでアメリカの行動は正当な,持続的な,長期に及ぶものになった.大国の挑戦は抑えられ,小国がアメリカに対抗する同盟を組むことも避けられた.民主主義,開放,法の支配,人権,といったグローバルなアピールが可能になった.
新興諸国の対抗や気候変動,テロ,などは,成功の副産物である.しかし,オバマがこうした機関を改革しようとすると,アメリカ議会や上院が反対した.IMF改革,海洋法,TPPとTTIP.東アジア・サミットやシリアに関する,軍事力ではない関与の仕方を目指すことがオバマ演説に示されていた.
軍事力と同様に,こうした国際システムの改革努力が,アメリカの指導力と国際秩序の成功を説明するのである.アメリカ最大の武器はここにある.
l ポーランドと中国
FT
June 2, 2014
One
day, two revolutions and uncertain destinies
By Timothy Garton Ash
25年前に世界は変わった.1989年6月4日,ポーランドの半自由化選挙がソ連圏全体の共産主義を終わらせる時代を開いた.同時に,天安門の虐殺事件で中国は全く異なる道をたどった.その結果は,ウクライナと南シナ海に至る.
私はその日の午後に,大喜びの友人とワルシャワの新聞売り場に戻ったときのことを決して忘れないだろう.中国の抗議参加者が間に合わせの担架で北京の通りを運ばれる粗い映像がテレビに流れていた.
その日以来,天安門の亡霊が東欧諸国に忍び寄った.東ベルリンからソフィアまで,「天安門を忘れるな・・・!」と人々は囁いた.「もし行きすぎたら,ここでも同じことが起きる.」 その意味で,中国の悲劇はヨーロッパの恵みになった.非暴力と,交渉,妥協が常に求められたのだ.
他方,中国共産党の指導者たちは,逆の意味でヨーロッパの共産主義崩壊から学んだ.「ソ連,東欧で,共産党が権力を失った教訓から,われわれは深い啓示を受けた.」と,ある幹部は2004年に語った.彼らは成長を重視し,大衆が考えていることに注意し,指導部を定期的に交代させ,階級の違いを超えて,最も優秀な学生を共産党に採用した.そして,いかなる自発的な社会組織も集団行動も厳しく取り締まった.
どちらの道もこの4半世紀の過程で成果を上げた.中国は成長の優秀な例となり,個人の自由も大きく拡大した.その国営テレビはこれをウクライナの流血やカオスと比較している.中国の方が良かった,と.しかし,自由で,繁栄する,民主的なポーランドはあまり映さない.
ポーランドが1989年に示したことは,根本的にオリジナルなもの,すなわち,平和的体制転換のモデルであった.しかし,その後の変化はオリジナルではない.西ヨーロッパの政治・経済・法システムに,ポーランドも次第に向かうだろう.
他方,1989年の中国では,共産党指導者として鄧小平は,自由を求める自発的な男女の反抗に対して,過去に何度もあったように,対策を命じた.発砲せよ,と.しかし,その後の変化はきわめてオリジナルな試みであった.レーニン主義的な資本主義だ.共産党が資本主義導入の前衛となった.その将来は,独創性ゆえに,全く予測できない.
鄧小平が言ったように,足で探って川を渡れるのか? 政治と経済の衝突から,新しい革命に至るのか? 危機は政治改革の触媒となるのか,それから関心をそらすためにナショナリズムを刺激するのか? 南シナ海で冒険的な軍事行動が示すように? あるいは,ナショナリズムが政治改革をもたらすのか?
歴史は予想外の変化に満ちている.最後の対比は,ワルシャワの記念日にオバマ大統領も参加したことだ.他方,北京では6月4日のすべてが圧殺された.事実も,写真も,名前も,母親たちが喪に服することさえも.
中国も独自に平和的な道を見出すものと信じる.素晴らしい成果と,間違いに対する修正を含めて.東欧と全く異なる道を経てきたが,困難な過去に向き合うことで,中国も安定したシステムを獲得できる.
FT
June 4, 2014
Poland’s
return to Europe: lessons for Ukraine, Russia and the west
Jeffrey Sachs
「1989年の早春,私は連帯の経済顧問であった.私は連帯の指導部に,経済的な崩壊がうまく繁栄をもたらした,歴史の過去のエピソードを詳しく話した.第2次世界大戦後のドイツの奇跡が,私の最も重視した話だ.当時,ドイツ経済を指導したルードヴィッヒ・エアハルトは,市場諸力と,巧みな金融政策,大規模な西側からの支援,債務免除,を利用して,ナチ体制の戦後の灰燼を,市場と社会政策との強力な組み合わせに依拠する,世界クラスの活気ある経済に転換した.」
ポーランドは,まさにその軌跡を遂げた国の隣である.ドイツとEC(今のEU)に隣接しているという有利さがある,ということを強調した.
l 中国のバブル
Bloomberg JUN 2, 2014
What
Is China's Biggest Weakness?
By William Pesek
中国の債務危機は必ず起きる.それを引き延ばし,成長を続けることは,最終的な破滅を大きくする.中国の指導者たちは経済の減速を避けようと必死である.しかし,日本,アメリカ,ヨーロッパの債務問題はひどい結末に至った.中国もそうだ.
金融的な拡大の結果について,これほど十分な例があるのに,なぜ習近平は破滅を避けようとしないのか? それは天安門の亡霊を恐れているからだ.
FT
June 3, 2014
Arresting
China’s slowdown: the search for sustainable growth
Yukon Huang
成長を低下させる最大の障害は不動産市場の停滞だ.この10年間で5倍になった不動産価格の上昇が危機に至るという者も多いが,中国は異なる.都市の住宅市場ができたばかりであるから.10年前に,住宅の民営化と地方政府による開発業者への土地売却が始まった.異様な価格上昇ではあるが,それは社会主義体制が隠してきた資産価値を市場が確立する過程であって,通常の意味での「バブル」ではない.
l アジア秩序の分裂
Project
Syndicate JUN 2, 2014
Korean
Unification and Global Peace
BYUNG-SE YUN
2015年,国際連合は70周年を祝う.しかし,朝鮮半島の人々は分断されて70年経つかもしれないと嘆く.それは冷戦の一部として膠着したままである.
世界が大きく変わったにもかかわらず,北東アジアは多くの問題を共有している.歴史,領土,海洋の安全保障,それらがナショナリズムの再生とともに,政治的な誤算によって軍事衝突を招く危険がある.
2013年に政権に就いた朴クネは,「信頼政治」を外交方針として掲げた.猜疑心に満ちた雰囲気を,信頼と協力の雰囲気に変え,新しい朝鮮半島,新しい北東アジア,新しい世界を築く.その最大の障害は北朝鮮の核兵器である.
朴は,朝鮮統一の具体的なビジョンとして,ドレスデンで演説した.人道支援,南北双方の福祉と繁栄を高めるインフラ整備,両国民の統合化,である.
東西ドイツを分断した地政学が23年前に劇的に変化した.同じように,南北朝鮮の2つの国連代表プレートを,1つに換える日が来るはずだ.
l EUの分裂
Project
Syndicate JUN 5, 2014
Europe
Is Still Standing
DANIEL GROS
EUに懐疑的な勢力が5分の1を得票した.しかし,その結果がヨーロッパの拒否であったというのは正しくない.
まず,世論調査では,自国の諸制度よりもヨーロッパの諸制度を信用する方が高い率を示している.EU全体を平均すると,ヨーロッパ議会を支持する人は40%で,それは各国議会を支持する25%よりも高い.さらに,アメリカ議会の最近の支持率は10%にも満たない.
ヨーロッパで経済危機に苦しんでいる諸国では,特に若者が最も被害を受け,ギリシャで顕著なように,左派の,「反緊縮」の諸政党に投票した.これらの政党はEUを拒否しているのではなく,逆に,EUに対して,より大きな連帯を求めている.
国内改革に失敗している政府の国ほど,ギリシャのように,反EUの得票が大きい.他方,改革を進めているポルトガルやスペインは,輸出が伸びて経済が回復しつつある.またイタリアではレンツィ首相が具体的な改革に取り組み,自国の問題をEUのせいにしていない.反EUは支持されなかった.
EUへの拒否反応は北部ヨーロッパで深刻だ.特にイギリスとフランスでは,失業と国境に関する管理の欠如がEUへの不満を高めている.それが懸念されるのは,EUとほとんど関係ない問題のために反EUのポピュリスト政党が宣伝を効果的に展開して,選挙で成功したからだ.
さまざまな研究が示すように,「ウェルフェア・ツーリズム」(社会保障の良い国を探して移民する)は限られており,移民流入は経済成長にプラスである.しかし,ポピュリストたちは,外に対する恐怖を煽った.
l プーチンの夢
Project
Syndicate MAY 30, 2014
Putin’s
Brave New World
ANDREI PIONTKOVSKY
プーチンの戦略は,彼の個人的な安全のために必要なのだ.専制支配者は法を利用するが,権力を失えば,法に拠って守られない.プーチンはそれを知っている.すべての政策は,彼が生きている限り,権力を手放さないために行われる.
キエフの独立広場で起きた革命は,自分の権力を失わせる,とプーチンは理解した.ロシアに服従する,腐敗した権力者が地位を奪われた.ウクライナはヨーロッパの政治・経済モデルに向かった.プーチンはそれを恐れ,阻止するために侵略した.
プーチンは権力を神話によって擁護してきた.旧ソ連圏に広がるエスニックなロシア人の保護を唱え,また,若い有能なKGB職員として,ロシアがチェチェン人との泥沼の戦争に陥って分裂するのを阻み,資源を利用して経済の安定化と繁栄をもたらした,という神話である.
神話が失われたときに何が起きるのか,プーチンはソ連崩壊において詳しく経験した.その失敗を繰り返さないために,メディアを支配し,自分をロシアの救世主として,民族の指導者として宣伝した.しかし,その危険性は,ヒトラーがすべてのエスニックなドイツ人の統合を唱えたときと同じだ.
国際システムの基礎を破壊するような主張を,冷戦においてスターリンは維持した.「相互確証破壊」を西側が受け入れたからだ.国際システムを変えることはできないが,プーチンも戦術としてこれを使う.旧ソ連圏ではフリー・ハンドで権力を行使し,西側を限定的な核戦争で脅すのだ.NATOやEUを阻止したことで,すでにその勝利は示された.
ヨシフ・スターリンの最晩年に並ぶほど,国際関係は悪化している.スターリンは3つの戦略で体制を再生しようとした.第3次世界大戦の準備,共産党権力の秩序解体,ユダヤ人の絶滅,である.ロシアと,そして世界が,これらの結末を避けられたのは,1953年にスターリンが死んだからだ.
l 天安門事件25周年
FT
June 1, 2014
Tiananmen
Square: the long shadow
By Jamil Anderlini
自由の女神を模した「民主主義の神」を囲んで,数万人の抗議集会が生まれた.数百人か,おそらくは数千人の殺戮が6月3日の夜から翌未明まで続いた.
ベルリンの壁とソビエト連邦が崩壊した後,中国の教育システムは一新され,ナショナリズムが強調され,共産党は臣民たちと新しい契約を結んだ.財を成すことは許す.しかし,政治には一切,手を出すな.
党は事件を記録から葬ったが,その影響は集団的な良心の呵責として残った.指導者たちは若く,国外に逃れたものも2度と中国に換えることは許されず,難民となった.その両親が老いても,その葬式にも,帰国できなかった.
NYT
JUNE 2, 2014
25
Years Later, Details Emerge of Army’s Chaos Before Tiananmen Square
By ANDREW JACOBS and CHRIS BUCKLEY
天安門広場を学生たちが占拠してから2か月目に入ろうとしたとき,指導部内部は混乱を恐れ,分裂していた.軍の最高指揮官たちが本部に呼ばれて,抗議する者たちを軍事力で鎮圧することに支持を求められた.
強力な38師団を率いるXu Qinxian少将が上官に反対した.抗議は政治問題であり,これは軍事力によってではなく,交渉で解決されるべきだ.
「私は,たとえ解任されても,歴史において犯罪者になりたくなかった.」と,彼は歴史家Yang Jishengに語った.
Xu Qinxianは即座に逮捕されたが,その反対は党指導部に衝撃を与えた.軍の反乱が連想されて,学生反乱を共産党の危機と考える姿勢が固まった.
Project
Syndicate JUN 3, 2014
Surviving
Tiananmen
MINXIN PEI
25年前に,想像するのも難しいだろうが,中国共産党CCPは全国規模の民主化運動によって権力を失うところであった.晩年の鄧小平が示した冷徹さと,人民解放軍の戦車によって,かろうじて生き残ったのだ.
今や,2つの問題に答が求められる.この25年間を中国共産党はどのように生き残ったか? これから25年を生き残れるか?
最初の問いへの答えは,政策の調整,賢明な戦術,幸運,である.
深刻な失策が起きた.弾圧後,指導部の保守派は自由化政策を逆転させた.それは中国経済を不況に陥れた.しかも1991年にソ連が崩壊し,中国共産党はパニックに襲われた.
しかし,87歳の鄧小平は再び党を救ったのだ.そのエネルギーと政治力を総動員して,市場改革を復活させ,その後の中国共産党に対する信用を大きく高めた空前の成長を実現した.
同時に,市民の自由を拡大し,消費文化や大衆娯楽が出現するのを促進した.この新しい「パンとサーカス」は,中国共産党が大衆的な支持を得,反政府派を弾圧するのを容易にした.そして注意深く,ナショナリズムと排外主義を育成したのだ.
弾圧にも微調整があった,最高度の技術を駆使したインターネットの万里の長城や,ハイテク武装した治安警察を整備したのだ.
小規模の反政府集団に対しては,その指導者を取り除く戦略が採用された.反政府的な指導者は,有名であっても,投獄や国外追放にした.
しかも,中国共産党には多くの幸運があった.1992年からの改革はグローバリゼーションと一致しており,大量の資本が流入し,技術が利用でき,西側の消費市場が実質的に開放されていた.こうして中国は世界の工場になり,2007年までに輸出が10倍以上になった.
さらに人口変化も味方した.いわゆる人口の配当を得て,豊富な労働人口がある一方で,子供や老人が減った.政府は保険や年金の支払いを節約できたのだ.
これから25年を中国共産党が生き残るには難しいはずだ.これらの有利な条件が失われたか,失われつつあるからだ.市場改革は失われて,官僚制度がはびこっている.彼らは植民地化した国家に依拠して,いかなる改革も拒むだろう.
天安門後の中国共産党が採った戦術で生き残るのは,ナショナリズムと排外主義だけになる.
習近平体制は2つの新機軸を示した.前例のない腐敗追放キャンペーンと市場改革の前進である.それは成功しているように見えるが,エリートたちの反対は中国民衆の支持なしには克服できないだろう.そして,政治的な動員は一党支配体制の死につながる.
l ヨーロッパの灰色革命
FT
June 4, 2014
Jean-Claude
Juncker – the People’s President
Robert Shrimsley
ルクセンブルグの元首相であるJean-Claude Junckerが欧州委員長に指名を目指している.自らthe “People’s President”と称して,集まった支持者たちにあいさつした.
しかし,これに反対する者たちの反響はさらに大きく広がった.シャンゼリゼー通りは怒りに燃える群衆で通行できなくなった.ヨーロッパ各地の広場に集まった群衆は,「灰色革命」the Grey Revolutionと呼ばれるようになった.すでにストラスブールのヨーロッパ議会の外に,抗議のテント村が形成されつつある.
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The Economist May 24th 2014
India’s strongman
Narendra Modi: Promising the good times
Reviving India’s economy: Modi’s mission
China and Russia: Best frenemies
Chinese patents: Ever more inventive
(コメント) サッチャーの改革を「自由経済と強い国家」と呼ぶわけですが,それにならってModiの登場は「民主主義と強い国家」と呼ばれるでしょう.
インドの経済を改革して成長を高めるModi首相の分析がすべてです.その人物や選挙戦術,経済政策に対する姿勢は,記事がほめ過ぎているのかもしれません.しかし,歴史的なチャンスである,というのが印象的です.
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IPEの想像力 6/9/14
天安門事件の写真が,その歴史的な衝撃を伝えています.自転車と一緒に,道路わきに積み上げられた,若者たちの死体.自転車の倒れた広場に伏して,銃弾を避ける若者の緊張した顔.それは,自転車と戦車の戦争でした.
ソフトバンクのロボットを観て,アトムの時代を予感します.日本が素晴らしいニュースになる数少ないケースです.高齢化し,急速に人口を失う日本が,かつて生みだした2人のヒーロー.ゴジラとアトムが日本と世界を救うのでしょうか?
ヨーロッパの「灰色革命」を読んで,彼らの怒りを感じます.ヨーロッパ官僚制の頂点から欧州委員会委員長になろうとする人物に対して,自然発生的な抗議デモが主要諸都市に発生し,まるでフーバー村のように,テント村がヨーロッパ議会を取り巻きます.
経済成長,雇用,自由貿易は,経済学の重要な目標ですが,政治を通じてしか実現できません.それらは,政治やナショナリズム,戦争の関数なのです.
インドは,中国と同じ成長の条件を多く持ちながら,市場改革やインフラ整備は進まず,中国の成長に及びませんでした.それは国民会議派のインド政府が,連立政権を組んで権力を分散させ,市場改革を実行する指導力を示せなかったからだ,とThe Economistは批判します.しかし,モディ首相は違う.BJPだけで,542議席のうちの282議席を取ったから.
インドの貧しい村人たちは,国民議会派のもたらす封建的な慈善活動よりも,モディの唱えた経済成長・物質的な豊かさに参加することを望んだのです.彼の選挙運動は,巧妙で,金がかかっていた.おそらく10億ドルを費やした.モディは,ガンディー王朝と違って,政治のアウトサイダーであり,お茶売りの息子であることを宣伝した.自ら下層カーストの出身であるから,カーストに依拠した地域政党の支持基盤を奪い取った.モディなら,グジャラート州の実績をインドの発展に拡大できる,と人々は信じたのです.
天安門事件後の25年間,中国の高成長は,民主化を恐れる共産党指導部が大衆文化や娯楽として国民に与えた,現代の「パンとサーカス」でした.Ashはそれを,レーニン主義的資本主義,と呼びました.同時に,インターネットには「万里の長城」に匹敵する情報隔離・検閲のシステムを築き,反体制グループの指導的人物を投獄し,あるいは,国外追放にします.それは,「繁栄と個人的な自由を認めるから,政治には,一切,口を出すな」という新しい社会契約であった,とM. Peiは「奇跡」の中身を問い直します.
ポーランドの民主化が成功したのは,天安門事件があったからです.選挙で勝利した民主化運動は,ソ連による軍事介入を恐れ,運動の急進化を抑制しました.戒厳令による弾圧を超えて,連帯は平和的な体制転換を実現します.またロシアと違ってポーランドの市場改革が成功したのは,ドイツの戦後復興というモデルが存在し,ドイツ資本主義を隣国として持っていたからです.
ヨーロッパ議会選挙では,経済危機と不況・失業が極右勢力の得票を増やしました.緊縮策や移民流入を恐れる国民の声を代表するために,保守派は,グローバリゼーションやEUを否定し,ナショナリズムによって,緊縮策も移民も止めることができる,と主張したのです.しかし,本当に国民の多くは,それが答になると考えたのでしょうか? 私は違うと思います.
トニー・ブレアは,情報公開法がとんでもない間違いだった,と書いています.自由な貿易や投資のできる共同市場を築き,移民も共通通貨も,そのための優れた条件となるはずでした.しかし,政治はますます加速して,短期化し,メディアは政治家たちの失敗を探し求めます.中身のある外交は難しくなり,他方,メディアを管理した「民主主義」が成果を誇って,外国のジャーナリストを攻撃します.
私は,安倍首相が社民党の勝又議員の質問に苦笑したテレビ映像を観て,疑念を抱きました.誰が聴衆なのか? 安倍氏にとって,自分を支持する「改憲」論者,「愛国」主義者,中国・韓国を「嫌う」強硬論者,だけが聴衆であれば,苦笑する姿は理解できます.護憲派の社民党が,これほど勢力を失っても,まだ同じような質問をしている.時代は変わった.国際情勢を良く見ろ,と.
しかし,首相が日本の指導者であるなら,異なる党派,反対する人々の意見を真剣に聴くべきです.そして,かれらを説得する真摯な姿勢,国民合意の形成を通じて,日本が変化する意味をアジアや世界に向けて示すのです.韓国や中国の民衆を説得できる指導者でなければ,日本の平和は築けない,と思います.
日本にもテント村を,アジアにも共通言語を,そして,各国には新世代の民主的な指導者を,私は観たいと思います.
インド人がガンジス川を清流にするインフラ投資に挑むなら,日本人もアジアの非核化とエネルギー革命に挑んでほしいです.
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