IPEの果樹園2014

今週のReview

6/9-14

 

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アメリカと安全保障 ・・・ポーランドと中国 ・・・中国のバブル ・・・アジア秩序の分裂 ・・・EUの分裂 ・・・プーチンの夢 ・・・シコルスキー ・・・金融大不況後の世界 ・・・天安門事件25周年 ・・・ヨーロッパの灰色革命 ・・・ECBの金融緩和 ・・・ノルマンディー上陸作戦

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, Yale Global そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  アメリカと安全保障

FP MAY 29, 2014

The Strategy Killer

BY KRISTIN LORD

ホワイトハウスと国務省は2つの安全保障政策をめぐる文書の作成に奮闘している.それはthe National Security Strategy the Quadrennial Diplomacy and Development Review (QDDR)である.そのためにはアメリカの挑戦と機会を評価し,優先順位を示す.

挑戦の核にあるのは,グローバルな暴力の高まりであり,そのエスカレーションが起きる前に暴力的な紛争を予防することだ.アフリカ,中東,南アジアにおいて深刻な暴力が広がっているだけでなく,南シナ海,ビルマ,ウクライナ,などでも緊張が高まっている.多くの場合,国際機関は効果がない.

冷戦終結は国家間の戦争を終わらせたと多くの者が期待した.ルワンダでも,バルカンでも,和解を進め,オバマ大統領は911によって始まった紛争の時代を終わらせると約束した.

しかし,暴力の規模と範囲が増大して,それがわれわれの感情と良心を苛み,アメリカの利益を損なっている.経済成長やエネルギー安全保障,人権,テロ対策,人身売買,環境保護,グローバルな健康問題,などは互いに緊密に結びついている.

たとえば,シリア内戦がそうだ.5万人の市民を含む,15万人以上が殺害され,650万人が難民となり,260万人が国外に逃れた.シリアのGDP2010年以来40%減少した.推定5000人から1万人の外国人兵士が内戦に参加し,多くはイスラム原理主義を支持している.彼らが帰国する場合のリスクがある.

国家間の戦争の脅威も再現しつつある.ロシアの特殊部隊がウクライナを侵略し,ヨーロッパの再武装化が進む.日本と中国,中国とベトナムの間で,緊張が高まり,アジアの戦争が恐れられている.紛争を抑える選択肢はあるが,急がねばならない.

暴力の起源は紛争だけではない.司法制度や治安維持が崩壊した国で,貧しいコミュニティーを強制労働や略奪,非合法な拘束,強姦などから守る者がなく,多数の貧困を招いている.既存の開発支援はこうした面に効果がない.われわれの考え方や行動を変えるべきだ.

軍事力の限界を認め,もっと長期の投資を平和構築に向けるべきだ.外交だけでなく,平和の「選挙区」となる住民を守る.より強力で効果的な,非暴力のパワーを必要としている.外交,対話,紛争解決,市民運動,メディアによる国民対話.

暴力によって勝利できると考える限り,対話のテーブルに就かないような冷酷な独裁者もいる以上,軍事力は必要だ.しかし,積極的な平和は和解と正義を求める.まず重要なことは,警察や治安部隊による合法的な暴力の使用である.それは政治的な制度構築を助け,市民社会の発展を助け,リビアやアフガニスタン,パキスタン,ビルマのような国でも民衆の対話を可能にする.

アメリカが世界から退却しても,暴力は収まらない.それはアメリカをさまざまな形で傷つける.協力で繁栄するアメリカは,グローバルな関与を支持しなければならない.

NYT MAY 29, 2014

The Wars Not Fought

Timothy Egan

FP MAY 29, 2014

What We Talk About When We Talk About Leadership

BY G. JOHN IKENBERRY, DANIEL KURTZ-PHELAN

オバマ批判が党派を超えた嘆きの声になっている.オバマの下でアメリカは引き下がり,指導する意欲,偉大なことへの関心を失った.その結果,「国際秩序」は解体しつつある.ロシア,中国,北朝鮮,シリア,彼らは攻勢に出て,アメリカの警告を無視する.大統領はレポーターに,誰も理解してくれない,と言うだけだ.

そして嘆きの声は続く.この弱さに対する答えは,力の行使しかない.それなしには,国際秩序は生き残れず,第2次世界大戦と冷戦を経て,われわれの築いてきた自国の安全保障と海外にまで広まる繁栄は終わってしまう.

ウェスト・ポイントにおけるオバマの演説はこれに応えなかった.介入するのか,撤退するのか.オバマはその反対に応えない.オバマは「国際秩序の強化と実行」を唱える.反対派が無視しているのは,オバマが前任者と違って最も力を注いできたのが,国際秩序を再生すること,反対派が示すアメリカの間違った指導力を是正することである.

指導するかどうか,が問題なのではない.どのような秩序なら,アメリカが指導するのにふさわしいか,ということを問題にしているのだ.アメリカは,過去70年間,秩序を形成し,維持できたが,それは単に軍事的な力によるのではなく,世界政治の基礎に拠って立つ強さがあったからだ.第2次世界大戦後のリベラルな国際システムには,国際機関,同盟,自由貿易,政治的なパートナーシップがあった.このシステムは,リベラルな民主主義諸国を,経済進歩と安全保障の協力を育てるルールと制度を通じて結び付けた.NATOからマーシャル・プラン,国際連盟からブレトンウッズである.

同盟国や制度はときにアメリカの行動の自由を制約したが,そうすることでアメリカの行動は正当な,持続的な,長期に及ぶものになった.大国の挑戦は抑えられ,小国がアメリカに対抗する同盟を組むことも避けられた.民主主義,開放,法の支配,人権,といったグローバルなアピールが可能になった.

新興諸国の対抗や気候変動,テロ,などは,成功の副産物である.しかし,オバマがこうした機関を改革しようとすると,アメリカ議会や上院が反対した.IMF改革,海洋法,TPPTTIP.東アジア・サミットやシリアに関する,軍事力ではない関与の仕方を目指すことがオバマ演説に示されていた.

軍事力と同様に,こうした国際システムの改革努力が,アメリカの指導力と国際秩序の成功を説明するのである.アメリカ最大の武器はここにある.

FT May 30, 2014

Fighting talk amid the shrinking of American might

Christopher Caldwell

WP May 30, 2014

Obama’s leadership is right for today

By Fareed Zakaria

FP MAY 30, 2014

Obama's Light Touch and a Heavy Hand

BY JAMES TRAUB

各地で増加するイスラム・テロに対する,オバマが述べた「南アジアからサヘルにまで及ぶパートナーのネットワーク」という構想には疑問がある.テロに対抗することの限界を知るべきだ.

2003年に侵攻したイラクにはテロがなかったけれど,今はある.パキスタンやイエメンへの侵攻はもっと小規模であった,すなわちドローンによるが,多くの国民はアメリカに感謝するより憤慨している.パキスタンへの数十億ドルの開発支援は世論に効果がなかった.マリでアメリカが訓練した軍隊は反政府軍になった.

外国の軍隊を訓練することは,莫大な費用が掛かり,その効果は期待外れである.アメリカの債券いまわす財源がなくなってしまう.

NYT MAY 31, 2014

Obama’s Foreign Policy Book

Thomas L. Friedman

FP JUNE 4, 2014

Obama's 'Don't Do Stupid Shit' Foreign Policy

BY DAVID ROTHKOPF

FP JUNE 4, 2014

No-Bluff Putin

BY STEPHEN M. WALT

ウクライナの危機について,何人かの楽観的なコメントを観た.たとえば,オバマ大統領はプーチンの侵略に対する多国間主義を自賛している.またNYTTom Friedmanは,クリミア併合は何もかも失敗だった,という.ロシア経済は悪化し,天然ガス合意の価格は下げられ,NATOは活性化し,ヨーロッパはエネルギー依存をやめるだろう.ヨーロッパの防衛支出も増やす議論が始まった.

確かに,一部のタカ派が言うような,ロシアは安全保障上の脅威ではない.しかし,オバマやフリードマンと違って,私はプーチンが利益を得たと計算していると思う.彼らはプーチンの動機をよくわかっていないのだ.

1に,NATOの拡大を長期に(永久に)阻止した.第2に,クリミアを確保した.住民に支持され,セバストポールの軍港を支配し,黒海には数兆ドルの石油・天然ガスがあるだろう.第3に,ウクライナの指導者たちに,プーチンがウクライナを苦しめる多くの方法を持っていることを思い出させた.第4に,NATO活性化やヨーロッパの防衛費はありえない.むしろNATO内の分裂は深まった.第5に,中国との天然ガス供給合意は,ヨーロッパへの供給価格より低いが旧ソ連圏よりは高い.プーチンは西側に代わる市場があることを示した.

プーチンが事態の悪化を望まなかったのは,望んだものすべてを手に入れたからだ.

FT June 5, 2014

Nato must reassure its members in the east

Ivo Daalder


l  ポーランドと中国

NYT MAY 29, 2014

The Autocracy Challenge

David Brooks

1990年代初め,共産主義の国家はどうなるか,と議論された.ソ連のように政治と経済を改革するか,中国のように経済だけを改革するか.そのように単純な実験ではないが,結果的に中国式が勝利し,今では民主化よりも専制国家が増えている.

しかし,多くの専制国家はよく似たライフ・サイクルを示す.専制体制は,彼らが利益をもたらす独裁者であると主張する.彼らは西側にも親しくなり,自由化の話もする.しかし彼らの体制は,ほとんど常に,腐敗しており,非効率である.権力を維持するためにナショナリズムを煽り,国家の統一を高めるような地域の戦争に向けた準備をしている.国内が不安定であるほど,周辺諸国に対して好戦的な放射線を発揮する.専制支配者は自分がケ小平の役割を担うと主張するが,しばしば,ロバート・ムガベになる.

これからの時代に,国境線で攻撃的な主張をする専制支配者が増えるだろう.地域紛争は激化し,エスニックな緊張,世界秩序の解体が進む.

アメリカはこれにどう対処するべきか? オバマは,過度の介入や自信過剰が,自制よりも深刻な問題だと考えている.それはイラク戦争から考えたかもしれないが,もっと長い期間を取れば結果は異なる.第1次・第2次世界大戦は,アメリカの関与が少なかったから広がったのだ.

Robert Kaganも,過去70年間,アメリカは介入しなければ破局になることをよく理解していた,という.例えば,1990年代,ジョージ・HW・ブッシュとクリントンは,17か月おきに独裁者を抑え,民主主義を広めるための軍事行動を選択した,という.

アメリカ外交は,一方で,国際協力や理想を唱え,他方,底辺の暴力に対抗し,秩序を維持した.二重化した外交の本質を見失えば,オバマは世界を混乱させる.

FT June 2, 2014

One day, two revolutions and uncertain destinies

By Timothy Garton Ash

25年前に世界は変わった.198964日,ポーランドの半自由化選挙がソ連圏全体の共産主義を終わらせる時代を開いた.同時に,天安門の虐殺事件で中国は全く異なる道をたどった.その結果は,ウクライナと南シナ海に至る.

私はその日の午後に,大喜びの友人とワルシャワの新聞売り場に戻ったときのことを決して忘れないだろう.中国の抗議参加者が間に合わせの担架で北京の通りを運ばれる粗い映像がテレビに流れていた.

その日以来,天安門の亡霊が東欧諸国に忍び寄った.東ベルリンからソフィアまで,「天安門を忘れるな・・・!」と人々は囁いた.「もし行きすぎたら,ここでも同じことが起きる.」 その意味で,中国の悲劇はヨーロッパの恵みになった.非暴力と,交渉,妥協が常に求められたのだ.

他方,中国共産党の指導者たちは,逆の意味でヨーロッパの共産主義崩壊から学んだ.「ソ連,東欧で,共産党が権力を失った教訓から,われわれは深い啓示を受けた.」と,ある幹部は2004年に語った.彼らは成長を重視し,大衆が考えていることに注意し,指導部を定期的に交代させ,階級の違いを超えて,最も優秀な学生を共産党に採用した.そして,いかなる自発的な社会組織も集団行動も厳しく取り締まった.

どちらの道もこの4半世紀の過程で成果を上げた.中国は成長の優秀な例となり,個人の自由も大きく拡大した.その国営テレビはこれをウクライナの流血やカオスと比較している.中国の方が良かった,と.しかし,自由で,繁栄する,民主的なポーランドはあまり映さない.

ポーランドが1989年に示したことは,根本的にオリジナルなもの,すなわち,平和的体制転換のモデルであった.しかし,その後の変化はオリジナルではない.西ヨーロッパの政治・経済・法システムに,ポーランドも次第に向かうだろう.

他方,1989年の中国では,共産党指導者としてケ小平は,自由を求める自発的な男女の反抗に対して,過去に何度もあったように,対策を命じた.発砲せよ,と.しかし,その後の変化はきわめてオリジナルな試みであった.レーニン主義的な資本主義だ.共産党が資本主義導入の前衛となった.その将来は,独創性ゆえに,全く予測できない.

ケ小平が言ったように,足で探って川を渡れるのか? 政治と経済の衝突から,新しい革命に至るのか? 危機は政治改革の触媒となるのか,それから関心をそらすためにナショナリズムを刺激するのか? 南シナ海で冒険的な軍事行動が示すように? あるいは,ナショナリズムが政治改革をもたらすのか?

歴史は予想外の変化に満ちている.最後の対比は,ワルシャワの記念日にオバマ大統領も参加したことだ.他方,北京では64日のすべてが圧殺された.事実も,写真も,名前も,母親たちが喪に服することさえも.

中国も独自に平和的な道を見出すものと信じる.素晴らしい成果と,間違いに対する修正を含めて.東欧と全く異なる道を経てきたが,困難な過去に向き合うことで,中国も安定したシステムを獲得できる.

FT June 3, 2014

Poland’s post-communist success only part of the region’s story

By Neil Buckley

FT June 4, 2014

Poland’s return to Europe: lessons for Ukraine, Russia and the west

Jeffrey Sachs

1989年の早春,私は連帯の経済顧問であった.私は連帯の指導部に,経済的な崩壊がうまく繁栄をもたらした,歴史の過去のエピソードを詳しく話した.第2次世界大戦後のドイツの奇跡が,私の最も重視した話だ.当時,ドイツ経済を指導したルードヴィッヒ・エアハルトは,市場諸力と,巧みな金融政策,大規模な西側からの支援,債務免除,を利用して,ナチ体制の戦後の灰燼を,市場と社会政策との強力な組み合わせに依拠する,世界クラスの活気ある経済に転換した.」

ポーランドは,まさにその軌跡を遂げた国の隣である.ドイツとEC(今のEU)に隣接しているという有利さがある,ということを強調した.


l  中国のバブル

FP MAY 29, 2014

My Name Is China, and I Have a Pollution Problem

BY KATE GALBRAITH

Bloomberg MAY 30, 2014

No, China Isn't Really Rebalancing

By William Pesek

FT May 30, 2014

Family defend Beijing ‘nail house’ from the wrecking ball

By Lucy Hornby in Beijing

爪の家 ‘nail house’ というのは,都市の開発で取り壊される,最後に残った家を意味する.それは進歩の傷跡である.急激な工業化と都市化が,農村でも,町でも,都会でも,住宅を壊滅させる.

Bloomberg JUN 2, 2014

What Is China's Biggest Weakness?

By William Pesek

中国の債務危機は必ず起きる.それを引き延ばし,成長を続けることは,最終的な破滅を大きくする.中国の指導者たちは経済の減速を避けようと必死である.しかし,日本,アメリカ,ヨーロッパの債務問題はひどい結末に至った.中国もそうだ.

金融的な拡大の結果について,これほど十分な例があるのに,なぜ習近平は破滅を避けようとしないのか? それは天安門の亡霊を恐れているからだ.

FT June 3, 2014

Arresting China’s slowdown: the search for sustainable growth

Yukon Huang

中国の減速を避けるためには,債務を減らす努力を続けながら,投資と,輸出と,消費とが少し増えなければならない.10年前,アジア通貨危機の際には,同じような債務危機を抱えながらも,WTO加盟による世界市場があったので成長を回復できた.今は事情が違う.アメリカもヨーロッパも,景気回復は難しい.

成長を低下させる最大の障害は不動産市場の停滞だ.この10年間で5倍になった不動産価格の上昇が危機に至るという者も多いが,中国は異なる.都市の住宅市場ができたばかりであるから.10年前に,住宅の民営化と地方政府による開発業者への土地売却が始まった.異様な価格上昇ではあるが,それは社会主義体制が隠してきた資産価値を市場が確立する過程であって,通常の意味での「バブル」ではない.

しかし,この数年間の上昇は行き過ぎであった.これを是正するには輸出と投資がショックを吸収するべきだが,それができない状況で,政府は消費に期待している.アジアの成功した経済が示すように,大都市への移住は生産性を高め,そこに発生した利益を農民や労働者が消費につなぐからだ.労働者の賃上げを恐れてはいけない.


l  アジア秩序の分裂

FT May 30, 2014

Abe says Japan will support nations in disputes with China

By Demetri Sevastopulo in Singapore

NYT MAY 31, 2014

China Accuses U.S. and Japan of Incitement

By HELENE COOPER

FT June 1, 2014

Beijing hits out at US and Japan alliance

By Demetri Sevastopulo in Singapore

FT June 2, 2014

Is this the freeze in America’s Asia pivot?

Kurt Campbell

アメリカがアジアを包摂する具体的な中身は何か? 中国,インド,ASEANTPP,日韓関係,北京とハノイとの衝突.アメリカは,アジアをめぐる地域機関,国際機関に参加し,重要な役割を担うだろう.

Project Syndicate JUN 2, 2014

Securing the Rule of Law at Sea

SHINZO ABE

日本は国際的な役割を担える.アメリカとともに,アジア諸国と三角形の協力関係を築くだろう.

法の支配が重要だ.海洋法はギリシャにさかのぼり,誰が作ったものでもない.海はだれのものにもせず,すべての者が利用できる方が有益である.

個々の国同士だけでなく,アジア諸国が共同の行動ルールを決めることだ.中国との紛争も,軍事的にではなく,話し合いで解決したい.

Project Syndicate JUN 2, 2014

Korean Unification and Global Peace

BYUNG-SE YUN

2015年,国際連合は70周年を祝う.しかし,朝鮮半島の人々は分断されて70年経つかもしれないと嘆く.それは冷戦の一部として膠着したままである.

世界が大きく変わったにもかかわらず,北東アジアは多くの問題を共有している.歴史,領土,海洋の安全保障,それらがナショナリズムの再生とともに,政治的な誤算によって軍事衝突を招く危険がある.

2013年に政権に就いた朴クネは,「信頼政治」を外交方針として掲げた.猜疑心に満ちた雰囲気を,信頼と協力の雰囲気に変え,新しい朝鮮半島,新しい北東アジア,新しい世界を築く.その最大の障害は北朝鮮の核兵器である.

朴は,朝鮮統一の具体的なビジョンとして,ドレスデンで演説した.人道支援,南北双方の福祉と繁栄を高めるインフラ整備,両国民の統合化,である.

東西ドイツを分断した地政学が23年前に劇的に変化した.同じように,南北朝鮮の2つの国連代表プレートを,1つに換える日が来るはずだ.

NYT JUNE 2, 2014

Navigating a Post-Samsung Era

Young-Ha Kim

FT June 5, 2014

What Xi and Putin really think about the west

Philip Stephens

プーチンも,習も,西側のようになることはないようだ.オバマは2つの戦争を終わり,3つ目の戦争をはじめなかった大統領として歴史に記憶されたがっている.プーチンのロシアと習の中国が目指すものは違うが,オバマの弱さを共有している.

Project Syndicate JUN 5, 2014

A Chinese Monroe Doctrine?

JASWANT SINGH


l  EUの分裂

FT May 30, 2014

Europe’s crisis of legitimacy is not confined to the EU

Lorenzo Bini Smaghi

Project Syndicate MAY 30, 2014

Strengthening Europe’s Limited Power

JEAN PISANI-FERRY

パワーを制限することは,パワーを弱くすることと混同される.しかし,パワーの範囲を限定することが必要であり,その範囲においてはパワーを強化するものだ.

NYT MAY 30, 2014

Reflecting on European Election Lessons

By ANATOLE KALETSKY

Project Syndicate MAY 31, 2014

Europe’s Nationalists on the March

JOSCHKA FISCHER

ナショナリズムはヨーロッパ統合の基礎にならない.それは解体をもたらすものだ.そのことを20世紀の戦争が教えた.相互不信がそれを生み出す.

theguardian.com, Tuesday 3 June 2014

Syriza can be the future for Greece, and for Europe too

Costas Douzinas

Project Syndicate JUN 3, 2014

A Manifesto for European Change

TONY BLAIR

Project Syndicate JUN 5, 2014

Europe Is Still Standing

DANIEL GROS

EUに懐疑的な勢力が5分の1を得票した.しかし,その結果がヨーロッパの拒否であったというのは正しくない.

まず,世論調査では,自国の諸制度よりもヨーロッパの諸制度を信用する方が高い率を示している.EU全体を平均すると,ヨーロッパ議会を支持する人は40%で,それは各国議会を支持する25%よりも高い.さらに,アメリカ議会の最近の支持率は10%にも満たない.

ヨーロッパで経済危機に苦しんでいる諸国では,特に若者が最も被害を受け,ギリシャで顕著なように,左派の,「反緊縮」の諸政党に投票した.これらの政党はEUを拒否しているのではなく,逆に,EUに対して,より大きな連帯を求めている.

国内改革に失敗している政府の国ほど,ギリシャのように,反EUの得票が大きい.他方,改革を進めているポルトガルやスペインは,輸出が伸びて経済が回復しつつある.またイタリアではレンツィ首相が具体的な改革に取り組み,自国の問題をEUのせいにしていない.反EUは支持されなかった.

EUへの拒否反応は北部ヨーロッパで深刻だ.特にイギリスとフランスでは,失業と国境に関する管理の欠如がEUへの不満を高めている.それが懸念されるのは,EUとほとんど関係ない問題のために反EUのポピュリスト政党が宣伝を効果的に展開して,選挙で成功したからだ.

さまざまな研究が示すように,「ウェルフェア・ツーリズム」(社会保障の良い国を探して移民する)は限られており,移民流入は経済成長にプラスである.しかし,ポピュリストたちは,外に対する恐怖を煽った.

EUはこうして,もっと大きな連帯を求める若い,南部の加盟国と,もっと厳しい国境管理を求める高齢の,北部の加盟国によるジレンマに苦しむ.しかし,緊縮策を緩和し,シェンゲン協定(自由移動)を弱めても,特に英仏における不満は収まらないだろう.経済状態や政策の失敗は,EUではなく,各国政府の責任である.各国で改革を進めなければ,問題は解決できない.

オランド大統領はフランスで改革に向けた合意を形成し,キャメロン首相はイギリス経済の成長に移民が有益であると国民に説得しなければならない.


l  プーチンの夢

Project Syndicate MAY 30, 2014

Putin’s Brave New World

ANDREI PIONTKOVSKY

プーチンの戦略は,彼の個人的な安全のために必要なのだ.専制支配者は法を利用するが,権力を失えば,法に拠って守られない.プーチンはそれを知っている.すべての政策は,彼が生きている限り,権力を手放さないために行われる.

キエフの独立広場で起きた革命は,自分の権力を失わせる,とプーチンは理解した.ロシアに服従する,腐敗した権力者が地位を奪われた.ウクライナはヨーロッパの政治・経済モデルに向かった.プーチンはそれを恐れ,阻止するために侵略した.

プーチンは権力を神話によって擁護してきた.旧ソ連圏に広がるエスニックなロシア人の保護を唱え,また,若い有能なKGB職員として,ロシアがチェチェン人との泥沼の戦争に陥って分裂するのを阻み,資源を利用して経済の安定化と繁栄をもたらした,という神話である.

神話が失われたときに何が起きるのか,プーチンはソ連崩壊において詳しく経験した.その失敗を繰り返さないために,メディアを支配し,自分をロシアの救世主として,民族の指導者として宣伝した.しかし,その危険性は,ヒトラーがすべてのエスニックなドイツ人の統合を唱えたときと同じだ.

国際システムの基礎を破壊するような主張を,冷戦においてスターリンは維持した.「相互確証破壊」を西側が受け入れたからだ.国際システムを変えることはできないが,プーチンも戦術としてこれを使う.旧ソ連圏ではフリー・ハンドで権力を行使し,西側を限定的な核戦争で脅すのだ.NATOEUを阻止したことで,すでにその勝利は示された.

ヨシフ・スターリンの最晩年に並ぶほど,国際関係は悪化している.スターリンは3つの戦略で体制を再生しようとした.第3次世界大戦の準備,共産党権力の秩序解体,ユダヤ人の絶滅,である.ロシアと,そして世界が,これらの結末を避けられたのは,1953年にスターリンが死んだからだ.

FP JUNE 2, 2014

The Great Game on Central Asia's High Plain

BY GEORGI KANTCHEV

FP JUNE 5, 2014

Vladimir Putin's Impotent Eurasian Union

BY CASEY MICHEL


後半へ続く)