前半から続く)


l  シコルスキー

SPIEGEL ONLINE 05/30/2014

Mr. Perfect from Warsaw

The Rise of Poland's Foreign Minister

By Jan Puhl

ポーランドの外相,Radoslaw Sikorskiが,ウクライナ危機の中で注目を集めている.

彼は51歳.アメリカのジャーナリスト,Anne Applebaumと結婚した.ウクライナ危機でポーランドは重要になった.フランスは地中海にしか関心がない.ドイツはロシアとの良好な関係を維持したい.しかし,ポーランドはウクライナの友人だ.「戦略的なパートナー」とシコルスキーはキエフで述べた.

FP MAY 30, 2014

Sikorski Is No Savior

BY OLA CICHOWLAS

NYT JUNE 3, 2014

Europe’s Man in Warsaw

Clemens Wergin


l  金融大不況後の世界

Project Syndicate MAY 31, 2014

The Great Backlash

NOURIEL ROUBINI

大不況が大恐慌Ⅱに悪化するのは阻止できた.しかし,欧米経済の回復は弱く,グローバリゼーションの逆転が懸念されている.

経済政策でも,選挙でも,その変化を観るには,大恐慌の世界が戦争に向かったときと同じくらい深刻な,危機を回避する覚悟が必要だ.

VOX, 5 June 2014

Capital controls in the 21st century

Barry Eichengreen, Andrew K Rose

2008-2009年の世界金融危機の後,IMFを含めて,資本規制が各国の政策として受け入れられるようになってきた.それは国内市場の歪みを解決する最善の策が国内で採れないときに,次善の策として説明される関税に似ている.

しかし,資本規制を政策として頻繁に変更した過去の例はほとんどない.資本規制を採用している国は,他の多くの規制も採用している.そして,いったん採用された資本規制は容易に解除されず,長期に及ぶ.そのために,次善の策としても,資本規制を採用することが目的にあった者かどうか,慎重な検討が必要だ.


l  ピケッティ

Project Syndicate MAY 31, 2014

Unjust Deserts

J. BRADFORD DELONG


l  天安門事件25周年

FT June 1, 2014

China clampdown ahead of Tiananmen massacre anniversary

By Jamil Anderlini in Beijing

FT June 1, 2014

Tiananmen Square: the long shadow

By Jamil Anderlini

自由の女神を模した「民主主義の神」を囲んで,数万人の抗議集会が生まれた.数百人か,おそらくは数千人の殺戮が63日の夜から翌未明まで続いた.

ベルリンの壁とソビエト連邦が崩壊した後,中国の教育システムは一新され,ナショナリズムが強調され,共産党は臣民たちと新しい契約を結んだ.財を成すことは許す.しかし,政治には一切,手を出すな.

党は事件を記録から葬ったが,その影響は集団的な良心の呵責として残った.指導者たちは若く,国外に逃れたものも2度と中国に換えることは許されず,難民となった.その両親が老いても,その葬式にも,帰国できなかった.

NYT JUNE 2, 2014

25 Years Later, Details Emerge of Army’s Chaos Before Tiananmen Square

By ANDREW JACOBS and CHRIS BUCKLEY

天安門広場を学生たちが占拠してから2か月目に入ろうとしたとき,指導部内部は混乱を恐れ,分裂していた.軍の最高指揮官たちが本部に呼ばれて,抗議する者たちを軍事力で鎮圧することに支持を求められた.

強力な38師団を率いるXu Qinxian少将が上官に反対した.抗議は政治問題であり,これは軍事力によってではなく,交渉で解決されるべきだ.

「私は,たとえ解任されても,歴史において犯罪者になりたくなかった.」と,彼は歴史家Yang Jishengに語った.

Xu Qinxianは即座に逮捕されたが,その反対は党指導部に衝撃を与えた.軍の反乱が連想されて,学生反乱を共産党の危機と考える姿勢が固まった.

FP JUNE 2, 2014

I'm Scared to Discuss Tiananmen, and the Internet Is Partly to Blame

BY TEA LEAF NATION CONTRIBUTOR

FT June 3, 2014

Chinese students far removed from Tiananmen of 1989

By Lucy Hornby in Beijing

Project Syndicate JUN 3, 2014

Surviving Tiananmen

MINXIN PEI

25年前に,想像するのも難しいだろうが,中国共産党CCPは全国規模の民主化運動によって権力を失うところであった.晩年の鄧小平が示した冷徹さと,人民解放軍の戦車によって,かろうじて生き残ったのだ.

今や,2つの問題に答が求められる.この25年間を中国共産党はどのように生き残ったか? これから25年を生き残れるか?

最初の問いへの答えは,政策の調整,賢明な戦術,幸運,である.

深刻な失策が起きた.弾圧後,指導部の保守派は自由化政策を逆転させた.それは中国経済を不況に陥れた.しかも1991年にソ連が崩壊し,中国共産党はパニックに襲われた.

しかし,87歳の鄧小平は再び党を救ったのだ.そのエネルギーと政治力を総動員して,市場改革を復活させ,その後の中国共産党に対する信用を大きく高めた空前の成長を実現した.

同時に,市民の自由を拡大し,消費文化や大衆娯楽が出現するのを促進した.この新しい「パンとサーカス」は,中国共産党が大衆的な支持を得,反政府派を弾圧するのを容易にした.そして注意深く,ナショナリズムと排外主義を育成したのだ.

弾圧にも微調整があった,最高度の技術を駆使したインターネットの万里の長城や,ハイテク武装した治安警察を整備したのだ.

小規模の反政府集団に対しては,その指導者を取り除く戦略が採用された.反政府的な指導者は,有名であっても,投獄や国外追放にした.

しかも,中国共産党には多くの幸運があった.1992年からの改革はグローバリゼーションと一致しており,大量の資本が流入し,技術が利用でき,西側の消費市場が実質的に開放されていた.こうして中国は世界の工場になり,2007年までに輸出が10倍以上になった.

さらに人口変化も味方した.いわゆる人口の配当を得て,豊富な労働人口がある一方で,子供や老人が減った.政府は保険や年金の支払いを節約できたのだ.

これから25年を中国共産党が生き残るには難しいはずだ.これらの有利な条件が失われたか,失われつつあるからだ.市場改革は失われて,官僚制度がはびこっている.彼らは植民地化した国家に依拠して,いかなる改革も拒むだろう.

天安門後の中国共産党が採った戦術で生き残るのは,ナショナリズムと排外主義だけになる.

習近平体制は2つの新機軸を示した.前例のない腐敗追放キャンペーンと市場改革の前進である.それは成功しているように見えるが,エリートたちの反対は中国民衆の支持なしには克服できないだろう.そして,政治的な動員は一党支配体制の死につながる.

NYT JUNE 3, 2014

Tiananmen, Forgotten

By HELEN GAO

NYT JUNE 3, 2014

For One Tiananmen-Era Student, a Very Different Path to Power

By DAVID BARBOZA and MICHAEL FORSYTHE

FP JUNE 3, 2014

A Time-Lapse Map of Protests Sweeping China in 1989

BY ALEXA OLESEN

FP JUNE 3, 2014

Let's Talk About Tiananmen

BY ZHANG JIALONG

FT June 4, 2014

Tiananmen divided the workers of the world

John Gapper

成長は,労働者たちの団結ではなく,分裂を促した.それはマルクスの描いた革命ではなく,鄧小平の市場改革がもたらした直接投資と成長加速であったからだ.産業革命以来,最大の,地理的・社会的な人口変動であった.そして,世界の労働者にも影響を及ぼした.

FT June 4, 2014

Hong Kong commemorates Tiananmen

By Demetri Sevastopulo in Hong Kong and Jamil Anderlini in Beijing

NYT JUNE 4, 2014

Tiananmen Square, the Turning Point That Wasn’t: A Q. & A. With Nicholas Kristof

By THE EDITORS

FP JUNE 4, 2014

We Have Let the Chinese People Down

BY MARCO RUBIO


l  ヨーロッパの灰色革命

FT June 2, 2014

Block Juncker to save real democracy in Europe

Gideon Rachman

FT June 4, 2014

Jean-Claude Juncker – the People’s President

Robert Shrimsley

ルクセンブルグの元首相であるJean-Claude Junckerが欧州委員長に指名を目指している.自らthe “People’s President”と称して,集まった支持者たちにあいさつした.

しかし,これに反対する者たちの反響はさらに大きく広がった.シャンゼリゼー通りは怒りに燃える群衆で通行できなくなった.ヨーロッパ各地の広場に集まった群衆は,「灰色革命」the Grey Revolutionと呼ばれるようになった.すでにストラスブールのヨーロッパ議会の外に,抗議のテント村が形成されつつある.


l  ECBの金融緩和

FT June 2, 2014

Prepare for the tremors as Europe and America drift apart

By AxelWeber

FP JUNE 4, 2014

D-Day for Draghi

BY DANIEL ALTMAN

FT June 5, 2014

Draghi has done enough to silence the doubters

By Gavyn Davies

FT June 5, 2014

Draghi has yet to banish the threat of deflation

Stephen King

Project Syndicate JUN 5, 2014

The Disenchantment of Europe

PHILIPPE LEGRAIN


l  タイ政治

theguardian.com, Monday 2 June 2014

The Thai protesters' Hunger Games salute shows a lack of political thought

Jonathan Jones

FP JUNE 3, 2014

After the Putsch Come the Punches

BY DUNCAN MCCARGO

FT June 4, 2014

Thailand becomes the land of the inverted smile

David Pilling


l  ノルマンディー上陸作戦

FT June 3, 2014

Putin’s D-day date with the west

NYT JUNE 5, 2014

Obama at Omaha

Roger Cohen

D-Day(ノルマンディー上陸作戦)の70周年記念に,オバマ大統領はフランスのオランド大統領と参加した.コードネーム「オマハ」の海岸線を見下ろす式典であった.そこではドイツの機関銃が自由のために上陸するアメリカ兵士たちを粉砕した.その日だけで4500人が死んだと推定されている.半分以上がアメリカ兵であった.

私は,オバマ大統領がアメリカの使命を明確に示す人物であってほしいと願った.何かを否定して外交を語るのではなく,アメリカは何を目指して戦うのか.しかし,オバマは応えない.

NYT JUNE 5, 2014

Memories From Normandy

By CLINTON RIDDLE, GEORGE BATTS, JOACHIM DAHMS and ERNEST CÔTÉ

FP JUNE 5, 2014

D-Day's Going to Be a Bit Awkward This Year

BY ROBERT ZARETSKY

 


l  ブラジル大統領

NYT JUNE 3, 2014

Brazilian President Hits Back at Critics in Interview

By SIMON ROMERO


l  君主制の効用

NYT JUNE 3, 2014

Monarchies, More Useful Than You Think

By SERGE SCHMEMANN


l  ラジャンとモディ

Bloomberg JUN 4, 2014

When Rajan Met Modi

William Pesek


l  アイスランドの裁判

FT June 5, 2014

Icelandic court clears corporate raider

By Richard Milne, Nordic Correspondent

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The Economist May 24th 2014

India’s strongman

Narendra Modi: Promising the good times

Reviving India’s economy: Modi’s mission

China and Russia: Best frenemies

Chinese patents: Ever more inventive

(コメント) サッチャーの改革を「自由経済と強い国家」と呼ぶわけですが,それにならってModiの登場は「民主主義と強い国家」と呼ばれるでしょう.

時間がなくて,他の記事はあまり読んでいません.Lenovoの躍進,Foxconnの技術力,エジプト,タイ,トルコ,ロシアの専制的な民主主義,ヨーロッパの民主主義をもたらす新言語,韓国の農村・漁村が募集する外国人花嫁,ブラジルのサッカー,ミャンマーの中国企業による開発.

インドの経済を改革して成長を高めるModi首相の分析がすべてです.その人物や選挙戦術,経済政策に対する姿勢は,記事がほめ過ぎているのかもしれません.しかし,歴史的なチャンスである,というのが印象的です.

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IPEの想像力 6/9/14

天安門事件の写真が,その歴史的な衝撃を伝えています.自転車と一緒に,道路わきに積み上げられた,若者たちの死体.自転車の倒れた広場に伏して,銃弾を避ける若者の緊張した顔.それは,自転車と戦車の戦争でした.

ソフトバンクのロボットを観て,アトムの時代を予感します.日本が素晴らしいニュースになる数少ないケースです.高齢化し,急速に人口を失う日本が,かつて生みだした2人のヒーロー.ゴジラとアトムが日本と世界を救うのでしょうか?

ヨーロッパの「灰色革命」を読んで,彼らの怒りを感じます.ヨーロッパ官僚制の頂点から欧州委員会委員長になろうとする人物に対して,自然発生的な抗議デモが主要諸都市に発生し,まるでフーバー村のように,テント村がヨーロッパ議会を取り巻きます.

経済成長,雇用,自由貿易は,経済学の重要な目標ですが,政治を通じてしか実現できません.それらは,政治やナショナリズム,戦争の関数なのです.

インドは,中国と同じ成長の条件を多く持ちながら,市場改革やインフラ整備は進まず,中国の成長に及びませんでした.それは国民会議派のインド政府が,連立政権を組んで権力を分散させ,市場改革を実行する指導力を示せなかったからだ,とThe Economistは批判します.しかし,モディ首相は違う.BJPだけで,542議席のうちの282議席を取ったから.

インドの貧しい村人たちは,国民議会派のもたらす封建的な慈善活動よりも,モディの唱えた経済成長・物質的な豊かさに参加することを望んだのです.彼の選挙運動は,巧妙で,金がかかっていた.おそらく10億ドルを費やした.モディは,ガンディー王朝と違って,政治のアウトサイダーであり,お茶売りの息子であることを宣伝した.自ら下層カーストの出身であるから,カーストに依拠した地域政党の支持基盤を奪い取った.モディなら,グジャラート州の実績をインドの発展に拡大できる,と人々は信じたのです.

天安門事件後の25年間,中国の高成長は,民主化を恐れる共産党指導部が大衆文化や娯楽として国民に与えた,現代の「パンとサーカス」でした.Ashはそれを,レーニン主義的資本主義,と呼びました.同時に,インターネットには「万里の長城」に匹敵する情報隔離・検閲のシステムを築き,反体制グループの指導的人物を投獄し,あるいは,国外追放にします.それは,「繁栄と個人的な自由を認めるから,政治には,一切,口を出すな」という新しい社会契約であった,とM. Peiは「奇跡」の中身を問い直します.

ポーランドの民主化が成功したのは,天安門事件があったからです.選挙で勝利した民主化運動は,ソ連による軍事介入を恐れ,運動の急進化を抑制しました.戒厳令による弾圧を超えて,連帯は平和的な体制転換を実現します.またロシアと違ってポーランドの市場改革が成功したのは,ドイツの戦後復興というモデルが存在し,ドイツ資本主義を隣国として持っていたからです.

ヨーロッパ議会選挙では,経済危機と不況・失業が極右勢力の得票を増やしました.緊縮策や移民流入を恐れる国民の声を代表するために,保守派は,グローバリゼーションやEUを否定し,ナショナリズムによって,緊縮策も移民も止めることができる,と主張したのです.しかし,本当に国民の多くは,それが答になると考えたのでしょうか? 私は違うと思います.

トニー・ブレアは,情報公開法がとんでもない間違いだった,と書いています.自由な貿易や投資のできる共同市場を築き,移民も共通通貨も,そのための優れた条件となるはずでした.しかし,政治はますます加速して,短期化し,メディアは政治家たちの失敗を探し求めます.中身のある外交は難しくなり,他方,メディアを管理した「民主主義」が成果を誇って,外国のジャーナリストを攻撃します.

私は,安倍首相が社民党の勝又議員の質問に苦笑したテレビ映像を観て,疑念を抱きました.誰が聴衆なのか? 安倍氏にとって,自分を支持する「改憲」論者,「愛国」主義者,中国・韓国を「嫌う」強硬論者,だけが聴衆であれば,苦笑する姿は理解できます.護憲派の社民党が,これほど勢力を失っても,まだ同じような質問をしている.時代は変わった.国際情勢を良く見ろ,と.

しかし,首相が日本の指導者であるなら,異なる党派,反対する人々の意見を真剣に聴くべきです.そして,かれらを説得する真摯な姿勢,国民合意の形成を通じて,日本が変化する意味をアジアや世界に向けて示すのです.韓国や中国の民衆を説得できる指導者でなければ,日本の平和は築けない,と思います.

日本にもテント村を,アジアにも共通言語を,そして,各国には新世代の民主的な指導者を,私は観たいと思います.

インド人がガンジス川を清流にするインフラ投資に挑むなら,日本人もアジアの非核化とエネルギー革命に挑んでほしいです.

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