(前半から続く)
l 経済学
FT May 16, 2014
Economics:
Change of course
By Claire Jones
FT May 20, 2014
Angry
economics students are naive – and mostly right
John Kay
l アフリカの将来
Project Syndicate MAY 16, 2014
Saving
Nigeria’s Stolen Future
GORDON BROWN
NYT MAY 16, 2014
Into
Africa: China’s Wild Rush
By HOWARD W. FRENCH
ほぼ10年間,中国はアフリカでビジネスを拡大し,影響力を強めてきた.アフリカの指導者たちは中国の大きな資金力に興奮し,それが健全かどうかにかまわず,巨大プロジェクトを次々に完成させた.
中国が大陸に振り掛けた新建造物群は,競技場,空港,病院,高速道路,ダム,などであった.しかし,彼らが次第に認識したように,こうしたプロジェクトは債務や,環境から労働争議まで,他の諸問題を残した.結果として,中国とアフリカとの関係は懐疑的な時期に入っている.
指導者たちが中国の資金を歓迎するのは変わらないが,懐疑は西側の政府から来ている.彼らは従来の援助供与者であった.ヒラリー.クリントンは,国務長官であったとき,中国に関して警告した.持続可能な関係なのか? と.資源を採取し,土地を接収するだけでなく,望ましい価値を広め,庶民の政治的権利を高めることにも関わるべきだろう.
昨年,ナイジェリアの中央銀行総裁であったLamido Sanusiは中国を批判した.「アフリカで中国は資源を採取し,インフラを建設し,例外はあるが,設備や労働力を自国から持ち込んで,現地に技術移転しない.中国はアフリカから一次産品を奪って,工業製品を与えた.それは植民地主義の本質でもあった.」
中国の開発はあまりにも性急で,あまりにも自己本位で,次第にアフリカ人もそのマイナス面を懸念し始めている.環境破壊,労働の権利侵害,地元産業の空洞化,民主主義の低迷.
アメリカやその他の富裕諸国は,中国による開発を警告するより,アフリカの市民社会を強化し,そのガバナンスを改善するべきだ.中国や,ブラジル,トルコ,ベトナムのような,国際経済の新興諸国に,高い透明性基準を求めるべきだ.そうすることで,アフリカの民主主義が中国資金のマイナス面を是正するだろう.
l 民主主義の将来
NYT MAY 16, 2014
Democracy
Triumphs in India, but Falters Again in Ukraine
By SERGE SCHMEMANN
NYT MAY 17, 2014
The
Square People, Part 2
Thomas L. Friedman
「広場の群衆」について,彼らは既存の政治に登場した第三勢力であり,政治を混み合った,興味深いものに変えている.彼らの行動は破壊的なものから建設的なものへと変化することができる.
ウクライナでヤヌコビッチを追放した群衆は,腐敗していない政府を求め,EUを支持した.市民が権利と責任を持ち,オリガークを権力から追放しようとした.しかしプーチンは自発的な群衆の政治を信用しない.革命が起きたのは,その背後にアメリカが,EUが,CIAやNATOがいたからだ.彼は影響圏を失うことを許さず,特殊部隊で分割した.
他方,反政府デモに直面したトルコの首相,Recep Tayyip Erdoganは,繰り返し選挙で権力を得たように見える.しかし,彼を支持したのは情報革命の及ばない地方の有権者たちだ.彼らはテレビに依存する.ロシアもトルコも,政府はテレビ放送を操作し,群衆の破壊的な映像を繰り返し放送した.
「広場の群衆」が抱えるアキレス腱は,政府を倒すデモ行進の後に現れる.彼らは永続的な組織化を,複雑な対面交渉を,要求を実現する政府の煩雑な仕事を嫌うのだ.
ウクライナで,「広場の群衆」が包括的な政治に転換できるのか,それはわからない.「広場の群衆」がいなければ変革は起きない.しかし,市民社会の諸制度や包括的な政治が育たなければ,革命は持続しない.
NYT MAY 18, 2014
Stop
Italy’s Soccer Hooligans
Beppe Severgnini
どうすればフーリガンたちがイタリア・サッカーを破壊するのを阻止できるか? 簡単だ.すべての準軍事的な道具を捨てるのだ.治安警察部隊も,有刺鉄線も,鳥籠のようなスタジアムも.そして,どこであれ,犯罪を犯罪と呼ぶ.攻撃の言葉,威嚇,襲撃を,断じて許さない.ゼロ・許容度はイギリスでうまく行った.ここでもそうだ.
39歳の若い首相は,直ちに実行し,子供たちを連れてサッカーを観に来るべきだ.
l オバマ外交
NYT MAY 17, 2014
Grading
Obama’s Foreign Policy
Ross Douthat
二期目の大統領は国内の反対派に苦しめられ,国際舞台に自分の政治的な遺産を求めた.しかし,オバマにとって外交は避難所にならなかったようだ.
NYT MAY 17, 2014
Condi’s
Lesson
Maureen Dowd
l 天安門の車夫を忘れない
NYT MAY 17, 2014
Tears
of a Rickshaw Driver
Nicholas Kristof
私は生涯,銃弾によって血を流す学生に駆けつけ,涙に頬を濡らして病院まで運んだ,人力車の車夫を忘れないだろう.
1989年6月3日の夜,天安門広場で民主化を求める学生たちを,25年前,中国軍は粉砕した.
その後,歴史は隠蔽され,北京の大学生に尋ねても,彼らは天安門の虐殺を聞いたことがないと言った.しかし偉大な作家,Lu Xunが書いたように,「インクで書いた嘘が,血によって書かれた事実を消すことはできない.」
NYT MAY 22, 2014
I,
Too, Will Stand Up for Tiananmen
By MURONG XUECUN
l ガイトナーの評価
WP May 17, 2014
Book
review: ‘Stress Test: Reflections on Financial Crises,’ by Timothy F. Geithner
By Charles Lane
前任者たちと違って,ガイトナーはウォール街や企業で働いたことがなかった.経済学のPh.Dを持たなかった.政治家でも,弁護士でもなかった.大統領の支持者でもなかった.彼を指名するまで,オバマのことをほとんど知らなかった.
ガイトナーによれば,政策担当者は悲劇的な職業である.しばしば2つか,それ以上の悪い選択肢しかない.事態を悪化させないことだけが最善の希望だ.
Bloomberg MAY 18, 2014
Geithner
Omits Cost of Success
By Albert R. Hunt
Bloomberg MAY 20, 2014
Tim
Geithner Deserves to Be Heard
Mohamed A. El-Erian
ガイトナーは,政策担当者が機能・制度・政治上の厳しい制約により,いかに不完全な妥協を強いられるかを示した.
しかし,その分析は完全とは程遠い.もし政策担当者が有益な教訓を得たいなら,もっと反事実的な仮定を試みる必要がある.すなわち,アメリカの金融当局が住宅融資にもっと改革を進めていたら,公的支援を受けた銀行に対して,業績が回復したら,その利益に課税していたら,2009年4月のG20サミットの後,国際政策協調がもっと実現していたら.など.
NYT MAY 21, 2014
Did
the Bank Bailout Do Enough for the Country?
Amir Sufi ・・・住宅危機に十分な対応をしなかったのは,Geithnerの最大の失敗だ.彼は問題の複雑さを強調するが,それは間違いだ.単純な解決策があった.住宅モーゲージを減額して,もっと再融資すれば,住宅の差し押さえを減らせたからだ.
Dean Baker ・・・2008年の危機による落ち込みを3つの方法で対処できた.1.厳格な条件で救済する.2.市場のパニックに委ねて,その後に修復する.3.金融産業をそのまま救済する.
最後の選択肢を採用したことは不幸であった.大量失業と,ひどく膨張した金融部門が残ったからだ.最初の選択肢を取るべきだった.もし政治的にそれが困難であれば,第2の選択肢を取るべきだった.それが大恐慌を再現すると主張するのはナンセンスだ.財政支出を行えたからだ.それはウォール街救済の口実であった.
l 欧州の民主主義
The Guardian, Sunday 18 May 2014
Our
MEPs really are worth your vote
Chris Huhne
FT May 18, 2014
France’s
National Front: New frontiers
By Hugh Carnegy
FT May 18, 2014
Diagnoses
of a determined eurosceptic
Review by Tony Barber
The Guardian, Monday 19 May 2014
The
EC presidential debate was a bad advert for democracy in Europe
Richard Seymour
欧州委員会の委員長を選挙するのは民主主義ではない.投票の結果は議論に反映される,と言うだけだ.
問題は多い.第1に,ドイツのメルケル首相が考慮できないことを認めている.最も多くの票を得た候補が自動的に委員長になるわけではない.
また,EUの民主主義が窒息しかかっているのに,どうして候補者たちの主張は全く同じなのか? ヨーロッパの民主主義は,ヨーロッパ産業懇話会が推進して「競争力協定」を求めるときだけ実現する.他方,アイルランドが国民投票をしても,その承認を得るまで経済的な脅迫が続く.
候補者たちはヨーロッパの利益や価値を信じているふりをする.しかし,ヨーロッパ市民たちが誰も知らないような候補者が,どうやって民主主義を実現するのか? その討論もつまらない.彼らは制度を管理する官僚たちだ.投票は代表制民主主義の薄っぺらな化粧でしかない.
ヨーロッパに共有する価値などない.ドイツの銀行家とギリシャの年金生活者に,どのような共有する価値があるのか? 中枢と周辺との間には,階級対立と植民地支配に似た関係がある.
汚職,透明性,緊縮策,ヨーロッパの未来について,候補者たちは語った.しかし,産業界のロビーを除けば,ヨーロッパの政策など存在しないだろう.彼らはそれを知っている.大衆の姿は見えない.
FT May 20, 2014
A
recipe for French rebellion milked by Le Pen
By Hugh Carnegy in Paris
NYT MAY 20, 2014
Mr.
Putin’s Far-Right Friends
Jochen Bittner
SPIEGEL ONLINE 05/20/2014
A
Distinct Lack of Excitement
Battle
for Brussels Less Than Tense
By Gordon Repinski and Christoph Schult
NYT MAY 22, 2014
Poor
Angry Magnetic Europe
Roger Cohen
ヨーロッパ市民の怒り,幻滅,倦怠が,外国人排斥,プーチン擁護の,左右における過激な反EU政党に票を向かわせるだろう.
ある意味で,ヨーロッパとアメリカの雰囲気は同じである.焦点は狭く,連帯感は失われ,他者のために死ぬことはない.内向きで,自分たちの問題を解決するだけだ.自由,民主主義,法の支配を広める主張は,好戦的だと非難される.経済を共有する取引は可能だが,政治は共有できない.見知らぬ者と犠牲は分かち合えない.
ヨーロッパ内に,多くのプーチン愛好者がいる.ヨーロッパの理想を求める者は,ウクライナやバルト海諸国など,その境界の外側や辺境にいる.ドイツ人の多くはロシアに共感することを隠せない.
SPIEGEL ONLINE 05/22/2014
Polishing
Its Image
Anti-Euro
Party Courts Gays, Women and Immigrants
By Melanie Amann
l 日本
FT May 18, 2014
Takafumi
Horie – return of Japan’s enfant terrible
By Ben McLannahan
FT May 19, 2014
Japan’s
Tibor rate comes under scrutiny
By Ben McLannahan in Tokyo
NYT MAY 21, 2014
A
Military Brat on Okinawa
By SARAH BIRD
NYT MAY 21, 2014
Credibility
Questions on Fukushima
By THE EDITORIAL BOARD
吉田所長の未公開の証言が公開された.それは政府や東京電力の説明と違っている.日本政府と原子力産業は,今も,重要な情報を隠している.福島原発事故の最も重要な教訓は情報の透明性であるはずだが,彼らはそれを実現していない.このまま,政府の原発再開計画を国民が歓迎することはないだろう.
l TTPとTTIPは貿易を歪める
VOX, 18 May 2014
Trans-Atlantic
Trade and Investment Partnership and the European Parliament
Fredrik Erixon
VOX, 22 May 2014
The
problem with TTIP
L Alan Winters
中国を排除した自由貿易協定は世界の多角的貿易システムを歪める.TPPが示すように,それは中国を排除するアメリカの経済外交である.EUは世界貿易の自由化を追求し,少なくとも中国との協定に合意するべきだ.
l 中国の行動
Bloomberg MAY 18, 2014
China
Follows Japan's Prewar Blueprint
By James Gibney
日本に戦争の歴史を考えるよう求める中国は,東南アジア諸国に対して同じ行為を冒していることに気付くべきだろう.
第2次世界大戦前に日本がアジアに対して取った行為を,中国人以上に理解している国民はいないはずだ.領土を奪われ,経済的な破壊にさらされた.それは広範な大衆抗議と経済ボイコットを生じたのだ.1915年1月,日本の対華21か条要求がその典型であった.多くの中国人にとって,それは日本の攻撃性を象徴し,中日関係の悪化と,独立を脅かす決定的なものとみなされた.南シナ海における悪名高い「牛の舌」はそれに似ている.その結果として生じている,計算外の激しい抗議活動もそうである.
ベトナムの暴徒に対して,中国外務省は,破壊行為を止めようとしなかったベトナム政府を非難する短いコメントを発表した.調子を変えることなく,報道官は日本の安倍晋三首相が攻撃的な外交政策をとっている問題に言及した.「日本は歴史を直視し,それを熟慮して,この地域の諸国が持つ安全保障の正当性と合理性を尊重しなければならい.そして,平和的な発展の道を追求し,地域の平和と安定性を維持することに建設的な役割を果たすべきだ.」
歴史の知恵は自国が示すことから始めるのが良い.習主席にも,教えなさい.
NYT MAY 19, 2014
China’s
Pollution Challenge
By BENJAMIN van ROOIJ and ALEX WANG
FT May 20, 2014
China’s
rampant commercial spying
Project Syndicate MAY 20, 2014
China’s
Education Revolution
LEE JONG-WHA
FT May 21, 2014
America
picks a fine time to challenge China on cyber
Ian Bremmer
l ヨーロッパの移民
NYT MAY 18, 2014
Europe’s
Migration Emergency
By THE EDITORIAL BOARD
Project Syndicate MAY 22, 2014
Do
Europeans Really Fear Migrants?
PETER SUTHERLAND
NYT MAY 21, 2014
Still
a Nation of Immigrants
Charles M. Blow
l ロシアと中国の天然ガス合意
FP MAY 19, 2014
China
Has Russia Over a Barrel
BY ELY RATNER, ELIZABETH ROSENBERG
ロシアと中国とはウィンウィンの関係に見える.ロシアは世界最大の天然ガス埋蔵量があり,中国の北,シベリアの土地にその多くがある.他方,中国は世界最大のエネルギー消費国であり,ロシアの輸出の70%,政府収入の50%がエネルギーに依存している.
しかし,両国間のエネルギー貿易は驚くほど少ない.その石油輸入の9%,天然ガス輸入の1%がロシアから来るだけだ.天然ガスは中国で政治問題化している大気汚染を抑えるためにも有効だ.中国は輸入先の多様化も望むが,ロシアがヨーロッパに求める水準に比べて追加の価格を支払いたくなかった.
今,ロシア経済は悪化し,アジアのエネルギー市場で競争が強まっている.ロシアと合意するための交渉カードはそろった.合意内容な秘密だが,Gazpromは望んだ水準より低い価格で合意したようだ.パイプライン建設への融資も含まれる.中国側に有利な合意だった.
ウクライナ危機でロシア側も合意を望んだわけか? そうではない.実際の理由はロシア経済の急激な悪化である.汚職の蔓延,成長の低迷,インフレ高進,人口減少で,IMFの予測ではロシアの成長率を0.2%としている.
北京には多くのオプションがある.シェール革命後,ロシアはアジアで競争が激化することに対応が遅れている.ロシアが価格で大きく譲歩しなければ,中国は他から調達できるのだ.
Bloomberg MAY 20, 2014
Putin
Sees China as a Gas-Hungry Ally
Meghan L. O'Sullivan
FT May 21, 2014
China
and Russia sign $400bn gas deal
By Lucy Hornby and Jamil Anderlini in Beijing and Guy Chazan in London
FT May 21, 2014
China’s
junior ally in the Kremlin
国際情勢は,ロシア,中国,アメリカの「三角関係」で決まってきた.冷戦やニクソン訪中がそうであった.今,ロシアと中国は大規模な天然ガス供給で合意した.ウクライナ危機やサイバー・スパイ問題の衝突により,アメリカは三角形の中で,両国から敵視されるのか?
しかし,ロシアの契約額はヨーロッパ向け輸出の4分の1である.また,中国はロシアの対等なパートナーではない.中国経済は成長し,ロシアは停滞している.中国はアメリカとの貿易額がロシアとの貿易額の3倍以上あることを知っている.確かに安全保障問題でロシアと中国はアメリカと対抗するだろう.しかし,クレムリンは北京の従属的なパートナーであり,資源輸出国でしかない.
NYT MAY 21, 2014
China
and Russia Reach 30-Year Gas Deal
By JANE PERLEZ
Bloomberg MAY 21, 2014
In
the Russia-China Gas Deal, Did Putin Win?
By The Editors
Bloomberg MAY 21, 2014
How
Putin Won Big in China
Leonid Bershidsky
l 世界都市
FT May 19, 2014
The
world’s cities reach for the sky
Brian Groom
l 5分で学ぶ国際関係論
FP MAY 19, 2014
How
to Get a B.A. in International Relations in 5 Minutes
BY STEPHEN M. WALT
5分で学ぶ国際関係論.
No.1: アナーキー.中央権力はない.警察も,裁判所もない.非常事態では,誰も助けてくれない.自分で守るしかない.安全保障が最優先され,不安は長く大きな影響を及ぼす.
No.2: バランス・オブ・パワー.その大きな変化は危険である.新興国は旧秩序に挑戦し,支配国は先制攻撃を考える.行動の結果は予測できない.
No.3: 比較優位.どの国も特化を受け入れ,貿易する方が有利であるが,その明確な原理は理解されてから実現するまで数世紀を要した.そして,グローバリゼーションが起きた.
No.4: 誤認と誤算.国際政治を3語で要約すれば,fear, greed, and stupidityである.最後のものも重要だ.指導者たちは脅威を誤認し,同じ歴史を全く異なって理解している.多くの顧問がいても,情報はまるで不完全だ.
No.5: 社会構成.どのようにattitudes, norms, identities, and beliefsが発展するのか予測できないが,それらは社会を動かす.
FP MAY 22, 2014
A
Poor Chapter in the History Books
BY AARON DAVID MILLER
l 資本主義の繁栄
FT May 20, 2014
Capitalism
thrives by looking past the bottom line
By Lynn Forester de Rothschild
l 定常状態の世界へ
Project Syndicate MAY 20, 2014
The
Road to Full Investment
ROBERT SKIDELSKY
次第に投資機会は減って,金利は同じように下げられないから,永久に投資が不足し,経済は停滞する.現在の低金利と不況を,そのような形でエコノミストたちは考え始めている.
しかし,古典派を思い出せば,J.S.ミルのように,彼らは「定常状態」を考えていた.もう個人間の競争によって支配されない,道徳的な価値を求める時代だ.
Project Syndicate MAY 21, 2014
Why
Jeffrey Sachs Matters
BILL GATES
l タイのクーデタ
Bloomberg MAY 20, 2014
Thailand's
Coup Can't Last
By The Editors
Bloomberg MAY 20, 2014
Thais
Must Choose Ballots Over Bullets
William Pesek
theguardian.com, Wednesday 21 May 2014
We
must defend Thailand's fragile democracy – or civil war looms
Mark Fenn
NYT MAY 22, 2014
The
Thai Army Repeats History
By VIKAS BAJAJ
タイの歴史を知る者は,軍隊が解決策ではなく,問題であったことを知っている.Prayuth Chan-ocha将軍は,政治システム,経済,社会を改革する,と述べた.しかし,その詳しい内容は示さない.タイでは,すでに多くのクーデタが起きた.
NYT MAY 22, 2014
A
Reckless Coup in Thailand
By SAM ZARIFI
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The Economist May 10th 2014
The lure of shadow banking
Thailand: Everything is broken
Russia and Ukraine; Putin’s gambit
(コメント) 金融危機により自己資本の増強を強いられ,融資を減らす銀行には,さらに厳しい規制が加えられます.超巨大銀行を解体することもできないままでは,次の危機に備えて,銀行システムを最初から国有化してしまう状態です.しかし,彼らはまたやるでしょう.金融技術の革新や新世代により,あるいは,中央銀行や金融監督の失敗により,危機は繰り返すと予想されます.
「影の銀行」が金融危機の原因になったにもかかわらず,記事は肯定的な内容です.経済活動を支持する資金の供給メカニズムとしても,金融危機を緩和する条件としても,銀行だけではない選択肢が増えてくる,と考えるからです.
タイも,ウクライナも,ガバナンスの再編を求める圧力に翻弄されています.アウトソーシングやグローバル・サプライ・チェーンの見直しが進み,タイとベトナムに依存している日本企業の競争力に大きな負担がかかります.
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IPEの想像力 5/26/14
イギリス陸軍大将,欧州連合軍副最高司令官であったルパート・スミスは,「もはや戦争は存在しない」と,書きました(『軍事力の効用』).
国家間戦争が最も効果的であったのは,ドイツ統一戦争であった,とスミスは考えます.ナポレオンが示した国民軍と機動的な戦略を,ドイツは統一前に,プロイセンの軍制改革によって取り入れました.そしてビスマルクが,ドイツ統一のための政治的条件を形成する目的で,3つの戦争(デンマーク,オーストリア,フランス)に勝利したのです.「ヨーロッパの地図を塗り替える」ことで,ドイツはヨーロッパの大国となったわけです.
しかし第1次・第2次世界大戦は,大規模な工業力を背景にした国家間戦争で,国際システムを決定的に有利に変更できる,というパラダイムが,少なくともヨーロッパ大陸では,不可能になったことを示しました.兵器の開発競争,輸送能力,強烈なイデオロギー・国家意識が,自分たちの社会的目標を否定するような負担を強いたからです.戦争は総力戦になり,都市への大規模な空爆や原子爆弾の投下が,戦争の最終局面で現れました.
日本で生きる私たちは,アジアの地政学から逃れることができません.ロシアや中国,北朝鮮・韓国(その再統一),ベトナム,タイ,インドネシア,シンガポール,マレーシア,インド.日本は彼らとどう関わるべきでしょうか?
既存の国際システムに十分な正当性を認めず,軍事力の行使が紛争解決のために好ましいと考える政府がある世界では,戦争の可能性を安全保障の一部として重視しなければなりません.国家が他国を完全に征服して,奴隷化するような目標(帝国化)を掲げないとしても,なお,好ましい国際システムの確立が戦争の目的です.
アジアでは,成長とともに急速に軍事費が増大し,さまざまな兵器を各国が購入しています.特に,空軍や海軍の増強は防衛から攻撃や征服,占領を計画する姿勢に転じ,長距離ミサイルや潜水艦,偵察衛星は,見えない形で,戦争状態に入る準備が進むことを意味するでしょう.そして,原子力発電所と核物質の拡散が,地域全体を安全保障のカオスに変えます.
対立や紛争は今後も起きるでしょう.それがなぜ戦争になるのか,その現実の条件をリアリストは理解しようとします.すなわち,「5分で学ぶ国際関係論」でWaltが指摘した,1.アナーキー,2.バランス・オブ・パワー,3.比較優位,4.誤認・誤算,5.社会構成,は,アジアの戦争とその回避を考えるために重要です.
自衛力と紛争解決のための地域・国際制度を強化し,戦争を回避することは,リアリズムを解体します.国際システムは協調的な調整メカニズムに従い,リアリズムの主体である国家は完全な領土的主権を失い始めます.「10分で学ぶ国際政治経済学」では,6.通貨・金融問題,7.ガバナンスの革新,を追加するべきです.
軍事力によってではなく,好ましい政治的条件や経済力を得るために,国際システムの性格を争う時代,メディアによる宣伝戦争と民主主義の模索,多国籍軍による治安維持の時代に向けて,アジアも変化するのではないでしょうか? 工業力の基盤が国境を越え,情報通信技術,コスモポリタンな文化が受け入れられる社会では,それが望ましいと支持されるはずです.
ビスマルクは,社会主義運動に対抗して,(民主主義より)福祉国家を築くという点でも,ガバナンスを革新しました.大気汚染や温暖化に対して脆弱となるだけでなく,民主化よりも先に都市化し,富裕化よりも先に高齢化する新興諸国は,軍事力によってではなく,社会保障や公共投資の改善によって,完全雇用と国際競争力を実現できると思います.
アジアでも,もはや戦争は存在しないでしょう.
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