前半から続く)


l  Narendra Modi

NYT MAY 9, 2014

Votes for Crooks and Cricket Stars

By MILAN VAISHNAV

The Observer, Saturday 10 May 2014

The Indian election and the lessons the west can take from Narendra Modi's popularity

Jason Burke

FP MAY 12, 2014

What Would Modi Do?

BY ANA SWANSON AND PETER BERGEN

1.議会を迂回した改革推進,2.行政とガバナンスの改善.3.より攻撃的なナショナリズム,4.膨大な福祉政策の維持,5.幻滅は起きても,多くの機会が広がる.

Bloomberg MAY 12, 2014

The Economist Who Can Rescue India

William Pesek

FP MAY 13, 2014

Why Narendra Modi Matters

BY HARSH V. PANT

ガンディー=ネルー王朝の作った政治システムが崩壊して,新しい政治がどうなるのか,皆が想像している.民主主義が生命力を維持し,ダイナミックであるためには,こうした移行が不可欠だ.しかし,デリーの政治システムにとって全くのよそ者であるから,Narendra Modiが行う改革は根本的である.

インドの政治階級は国民の成長に対する希望を満たせなかった.しかし,ModiGujarat州で成功した.

Bloomberg MAY 15, 2014

India's Democracy Is All Grown Up

By Chandrahas Choudhury

インドの民主主義は70年を経て,その力を発揮し始めた.

10年前に比べて,初めて投票する若者たちが1億人も加わった.彼らは宗教的な政治を嫌い,国民会議派の選挙システムに頼らない.1991年の改革後に生まれ,成長に対する期待が強い.彼らが投票率を高めている.


l  日本について

NYT MAY 9, 2014

Please, Mother, Enough

By MINAE MIZUMURA

母の日に,多くの人が母親を介護した苦しみを思い出す.早く母が死んでくれたら,と思いながら,そのような自分を責めた.

FT May 14, 2014

Case for Japan will be compelling again

By Trevor Greetham

NYT MAY 14, 2014

The Battle of the Okinawans

Norihiro Kato

アメリカと日本が防衛力の強化を合意したことについて,1つを除いて,日本の新聞は称賛した.それが米軍駐留の永久化を意味する,と抗議したのは,唯一,琉球新報だ.


l  アメリカ兵士の苦しみ

FP MAY 9, 2014

Can an American Soldier Ever Die in Vain?

BY ELIZABETH SAMET


l  AlibabaIPO

FP MAY 9, 2014

The Formula for Chinese Web Riches: Ugly but Fast

BY ALEXA OLESEN

Global Times 2014-5-9

Alibaba’s success mirrors China’s growth paradox

中国企業の成功が外国人に大きな利益をもたらすことには複雑な感情を持つ.中国自身の改革を進めて,Alibabaのような企業を中国人の市場で育て,その利益を分かち合いたい.


l  ベトナムと中国

(China Daily) 2014-05-09

Vietnam's claims do not hold water

By Li Jieyu

FP MAY 9, 2014

China's Oil Rig Gambit

BY KEITH JOHNSON

中国の近隣友好政策に何か根本的な変化が起きたのか? 国内経済の不動産バブルを管理できなかったことと関係があるかもしれない.

NYT MAY 10, 2014

More Chopsticks, Please

Thomas L. Friedman

たまたま数週間のうちにキエフとハノイを訪ねた.この2つの国が抱える紛争は,間違いそうなほど,よく似ている.

これらの紛争の背後に大きなイデオロギーや世界的な野望はない.ポスト冷戦後の世界(the post-post-Cold War world)では,地域的な支配,ナショナリズム,資源争い,が重要だ.ロシアも中国も,軍隊ではなく,民間にカモフラージュした介入を行った.

ベトナムが新興の大国である中国に対抗することはできない.可能な選択肢は限られている.同じような不安を抱える近隣諸国と連携することだろう.しかし紛争は一部の国に偏り,中国との貿易に多くの国が依存しているかた,協力は難しい.

ベトナムはアメリカと戦争し,長年,アメリカを追い出すことに費やした.しかし今,アメリカに介入を望んでいる.中国が軍事力による一方的な解決ではなく,平和的な解決を望むように.

グローバリゼーションのシステムに,アメリカも彼らも属している.貿易や投資はすべての国の利益になるが,リビジョニストの影響で近隣諸国とのルールが見直されるとき危機が起きる.アメリカはますます世界に関心を失っていくが,世界はアメリカを呼び戻そうとする.

アメリカのパワーとは,こうした世界で,ロシアや中国より,広い同盟を組織できることだ.

(China Daily) 2014-05-12

Manila testing Beijing's patience

By Liu Qiang

FT May 13, 2014

Calm the waters of southeast Asia

Global Times 2014-5-14

China plays long game in South China Sea

FP MAY 14, 2014

China's Backdraft

BY KEITH JOHNSON

日本の安倍晋三首相は自衛権の拡大を求める報告を承認した.地域の安全保障に関して,中国の嫌がらせに苦しむ諸国を助けるために,日本が介入するかも知れない.

FT May 15, 2014

Vietnam manufacturers caught in crossfire of anti-China protests

By Demetri Sevastopulo and Julie Zhu in Hong Kong and Michael Peel in Ho Chi Minh CityAuthor alerts


l  群衆の時代

NYT MAY 9, 2014

The Power of ‘the Street’

By SERGE SCHMEMANN

NYT MAY 13, 2014

The Square People, Part 1

Thomas L. Friedman

時代のイメージは,「ダヴォス・メン」としてのNGOs幹部やハイテク企業の世界市民的なビジネス階級から,FacebookTwitterで集まる「広場の群衆The Square People」に変わったようだ.彼らは若く,生活水準の上昇に向けた強い要求を持つ.彼らは仮想空間で多くの広場,the squares of Tunis, Cairo, Istanbul, New Delhi, Damascus, Tripoli, Beirut, Sana, Tehran, Moscow, Rio, Tel Aviv and Kievに繋がっている.彼らは腐敗した指導者に我慢ならない.

FT May 15, 2014

You say you want a revolution...

Gary Silverman

大学に有名人を招くと,ソーシャル・メディアで抗議の学生が集まる.FacebookLikeボタンを押すように.しかし,それは世界の終わりではなく,彼らは革命家ではない.タフな群衆だ.


l  貧富の差と学校

NYT MAY 10, 2014

The Benefits of Mixing Rich and Poor

By DAVID L. KIRP


l  ユーロ危機とシステム改革

FT May 11, 2014

How the euro was saved

Peter Spiegel

FT May 14, 2014

Inside Europe’s Plan Z

FT May 15, 2014

If the euro falls, Europe falls’

(ギリシャに始まったユーロ危機とシステムの歴史的な変貌を,関係者へのインタビューによって検証するシリーズ.)

部屋にいた誰もが驚いた.突然,ヨーロッパ最強の経済を握る,最強の政治指導者であるメルケルが,泣き始めたのだ.彼女は怒っていた.これは公平ではない.このような自殺行為を私はしない.

それはカンヌでのことだった.サルコジとオバマも同席していた.彼らはドイツに,債券市場の攻撃からユーロ圏を守る「ビッグ・バズーカ」,「札束の山」を追加するように求めたのだ.しかし,メルケルは拒んだ.もしフランスとアメリカがドイツ政府を非難するなら,それは自分たちのせいだ.60年前,敗戦国ドイツに憲法を押し付けたのは連合軍であった.

ギリシャは救済案を受け入れるかどうか,国民投票で決める,と主張した.サルコジは激怒した.しかし,顧問の一人がドゴールも国民投票を好んだ伝統に言及し,これを認めることにした.ただし投票は救済案を問うではなく,ギリシャがユーロ圏に残るかどうか,を問うものにした.

カンヌのG20の場で,Sarkozy はギリシャのPapandreouと面会することになった.その前に,彼は指導者たちを招集した.Ms Merkel; Jean-Claude Juncker, who chaired the eurogroup of finance ministers; Christine Lagarde, the International Monetary Fund; and the EU’s two presidents, José Manuel Barroso and Herman Van Rompuy.

ユーロ圏の生存の危機は,繰り返し指導者たちを集め,そのシステムを作り変えた.厳格な予算のルール,主権から奪われた銀行監督,国家に対する最後の貸し手としても紙幣を印刷できるECB.これらのシステム改造がユーロ圏を救った.しかし,その成果はヨーロッパ議会選挙で厳しい結果をもたらしそうだ.極右勢力が躍進する.

オバマ政権はユーロ危機を見守ってきたが,不満と懸念を強めた.財務長官Tim Geithnerはヨーロッパを訪ねて,アメリカの銀行危機に関する教訓を伝えた.パニックに陥った投資家たちを鎮めるには,唯一,公的資金を積み上げるしかない,と.

ドイツはこれを嫌った.アメリカがユーロ危機に関心を持つのは,ユーロ圏が崩壊して不況になれば,それがアメリカの景気やオバマ再選にとって好ましくないからだろう,と.アメリカは否定したが,ヨーロッパでは信じようとしなかった.

他方,ブラッセル,フランクフルト,パリの関係者にはアメリカの介入を歓迎する者が多くいた.それはベルリンに対するバランサーになるからだ.

(シリーズ2はギリシャ離脱Grexit,シリーズ3ECBによる政府債購入.)

FT May 11, 2014

Italy’s europhiles need to make the currency work

Wolfgang Munchau

FT May 11, 2014

Drive to ease eurozone’s fiscal pain strongest in the south

By Ferdinando Giugliano in London

Project Syndicate MAY 12, 2014

Europe’s Crisis Treadmill

BARRY EICHENGREEN

2010年のギリシャ救済から4周年を迎える.この救済が実現する以前は,IMF,欧州委員会,ECBから救済融資を受けることは考えられなかった.これは画期的なことだった.

EUには決定的な行動を迅速にとる能力がない.28カ国からなる意思決定過程は飽き飽きするほど時間がかかる.共通の利益を定義するのは難しく,コスト分担は合意できない.

危機に陥った諸国,アイルランド,ポルトガル,スペイン,ギリシャはまだ回復していない.競争力は回復せず,需要は不足したままだ.政治的な制約により,ECBが十分な緩和策を採れなかったからだ.銀行危機は終息せず,ヨーロッパの固定投資融資も低いままだ.

確かに改革は行われた.銀行監督は一元化し,預金保険は全体に及び,銀行の整理とその処理に必要な基金ができた.しかし全てが不十分で,欠陥をもつ.GDPに対する公的債務の比率はユーロ圏全体で90%もあり,それを20年かけて60%に抑える,という.2034年だ.

FT May 13, 2014

Time for Draghi to open the sluice

Martin Wolf

インフレを高めるため積極的に金融緩和せよ.マイナス金利を導入し,債務の市場化を,まずECBが購入して,保証せよ.

FT May 13, 2014

ECB delays will prolong the price stability pain

Lorenzo Bini Smaghi

The Guardian, Thursday 15 May 2014

Eurozone voters have been blackmailed and betrayed. No wonder they're angry

Philippe Legrain


l  Tim Geithner

FT May 11, 2014

Geithner reveals divisions over Lehman

By Robin Harding in Washington

Tim Geithnerの金融危機に関する回想録(Stress Test)が出版された.彼は,連銀がバークレーによるLehman Brothers買収に融資していたら,アメリカ史上最大の倒産は起きなかった,と主張する.

アメリカ政府内部に意見対立があった.Geithnerはこの連銀融資による救済買収を支持したが,ポールソン財務長官やバーナンキ連銀議長は,公的資金による救済に反対だった.イギリスの金融規制当局がそれを認めなかったことで,倒産は避けられなくなった.

FT May 12, 2014

‘Stress Test’, by Timothy Geithner

Review by Edward Luce

ガイトナーはオバマの閣僚の中で最も長くとどまった.エマニュエルも,サマーズも,オズグッドも,ヒラリーさえ退任したが,ガイトナーはオバマの陰に控え続けた.金融危機を乗り切るための最良の顧問として,オバマはガイトナーをアレクサンダー・ハミルトンにたとえて称賛した.確かに,ハミルトンは初代の「救済大臣」である.

オバマは有権者の憤慨と大恐慌の再現を防ぐ決意との間で苦しみ続けた.公的資金を使った救済について,ガイトナーへの非難は強かった.「ストレス・テスト」は政府のいかさまだと非難された.しかし,融資は利子をともなって返済され,銀行への信頼は魔法のように回復した.

FT May 13, 2014

Welcome to the new era of bank downsizing

By John Plender

FT May 15, 2014

Lunch with the FT: Tim Geithner

By Martin Wolf

1990年代半ばに,サマーズの下で働く若いガイトナーと知り合った.彼はそのころから金融危機の専門家であった.

彼は危機を拡大した責任を負うが,それを大恐慌にしなかった点では称賛される.

あなたがこの本で伝えたメッセージとは何か? ・・・金融危機は恐るべき事件だ.しかし,制御できないものではない.緩衝材として十分な資本を準備し,強力な道具を実際に行使しなければならない.しかし,最も理解しにくいのは,取付けが起きるような状況では,直観とは逆の行動が必要になることだ.

Bloomberg MAY 15, 2014

Geithner Still Can't Explain Lehman

Mark Gilbert


l  Thomas Piketty

Bloomberg MAY 11, 2014

Piketty's Wealth Tax Isn't a Joke

By Clive Crook

Project Syndicate MAY 13, 2014

Piketty and the Zeitgeist

DANI RODRIK

この本がベストセラーになったのは,それが時代精神であったからだろう.その話題は古典派の政治経済学者たちが注目したものと同じだ.

Project Syndicate MAY 14, 2014

Inequality Disaster Prevention

ROBERT J. SHILLER

不平等がもたらす破壊的な効果を防ぐべきだ.その点で,私はPikettyよりも楽観的である.金融・保険技術の革新は不平等を緩和するのに有益であるからだ.

NYT MAY 14, 2014

Thomas Piketty and His Critics

Thomas B. Edsall

The Guardian, Thursday 15 May 2014

Why Thomas Piketty's wealth equation doesn't work in Britain

Kitty Ussher

FT May 15, 2014

If you tax the 1 per cent it is the middle class who will suffer

By Richard Robb


l  アジアの債務依存症

FT May 12, 2014

Asia: Addicted to debt

By Josh Noble


l  覇権国として

FT May 12, 2014

China at the summit

Kurt Campbell

FP MAY 13, 2014

Washington's Sleeping Sickness

BY DAVID ROTHKOPF

Project Syndicate MAY 14, 2014

The Dollar is Still King

ESWAR PRASAD


l  イギリスの移民流入

The Guardian, Wednesday 14 May 2014

Immigration: reality check

Editorial


l  キルギスタン

FT May 14, 2014

Tiny Kyrgyzstan feels the heat from the Ukraine crisis

Ahmed Rashid


l  ワールドカップと債務危機

FT May 15, 2014

Why bond traders should watch World Cup

By Ralph Atkins in London


l  国際的フローによる統合化

Project Syndicate MAY 15, 2014

Global Flows and Global Growth

LAURA TYSON and SUSAN LUND

世界経済はますます緊密な結合の上に成長している.McKinsey Global Instituteがこの20年間を調査した.財,サービス,金融,データ・通信,の国際的フローが各国の成長との関係を示している.デジタル化は,それに必要な投資と人材を求めている.

輸出における大きな比重にもかかわらず,日本と韓国はこうした面での国際的フローにおいて劣っている.

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The Economist May 3rd 2014

What would America fight for?

America in Asia: Pivotal

Geopolitics: The decline of deterrence

Ukraine’s turmoil: Chaos out of order

Capitalism and its critics: A modern Marx

(コメント) アメリカという「抑止力」を失った国際秩序は,各地域の地政学が噴出する危険な状態に向かう,という最近の論調です.オバマがしくじったのは,1.覇権国としての警告を守らなかった,2.同盟国の糾合を怠った,という点です.

「抑止力」論に代わる,もっと優れた国際政治論,世界政治学を聞いてみたい,と思いました.

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IPEの想像力 5/19/14

さまざまな分野において,国際システムは国家を超えた協調のための枠組みです.政治指導者個人の感覚や見識,決断力が,その後の事態の推移に反映されるのは,このシステムが機能するからです.優れた決断は危機を封じ込め,システムの改善・調整に向かいます.

アメリカが展開する軍事基地も,アメリカが供給するドルも,まだ,世界を危機から救い出すために重要な役割を担っています.しかし,アメリカは秩序維持のための軍事介入を嫌い,国際システムは次第に不安定化しています.

軍事衝突・戦争も,通貨・金融・銀行システム危機も,いくつかの可能なシナリオがあって,危機の切迫した瞬間,瞬間に,政治指導者たちの決断や交渉,ギリギリの駆け引きで,そのいずれかに向かいます.そして,長期的には,誰もその正確な結果を予測できないのです.

戦争は,経済危機やイデオロギーからも生じます.

ユーロ危機に関するFTの特集記事を読みました.2010年,ギリシャに対する救済融資を議論したカンヌG20サミットで,メルケルが憤慨し,涙を流して抵抗した,という話に驚きます.メルケルは,ドイツを戦後の憲法やドイツ連銀という枠組みに押し込んだのは連合軍(米英仏)である,と反撃したのです.改めて,危機回避のための切迫した国際政治交渉に現れる人間を想いました.

他方で,サミットを自分の政治的成果にしたかったサルコジ大統領が,苦心の救済案を「受け入れるかどうか」国民に問う,というパパンドレウに激怒したことも,パパンドレウに猛烈な非難と圧力を加えたが,ドゴールの伝統に従うために国民投票を受け入れことも,面白いです.ただし,その選択を,「ユーロ圏にとどまるかどうか」と変えさせました.

ユーロ危機の対応に関して,Barry Eichengreenの厳しい評価は,EU28カ国からなる分裂したガバナンスの限界を批判するものです.Philippe Legrainも,大銀行を救済するために債務諸国の返済を強制し,それを続けさせる追加融資によって,アイルランド国民は640億ユーロ,1人当たり14000ユーロも返済することになった,と強く批判しています.むしろ,ユーロ圏の市民・政府を救うために債務を減免し,損失を生じた大銀行を整理・解体して,刺激策を採ることで景気回復は早期に実現できたはずだ,と考えます.

それはTim Geithnerがアメリカで直面した問題でした.Geithnerは,Summersの下で,メキシコやアジアの通貨危機を鎮静化する作業に当たり,危機においては通常の政策判断が間違いになることを知った,と強調します.パニックに陥った投資家や預金者を鎮めるには,貨幣を大規模に準備して支払を保証するしかない,と.この政策は,その後,銀行が公的資金で救済され,庶民は失業し,住宅を追い出される,という強い不満と,ポピュリストの政治家たちによる政府攻撃を生みました.

ロシアの外資依存や金融危機のリスクが低下し,中国の輸出による成長モデルが内向きに転換したことは,西側の求めた市場改革や健全化のための政策によるものでした.しかし,国内の政治的反対派が不満の土壌に育つ中で,自律性を高めた政府は,対外的な膨張や戦争によって,彼らを沈黙させようと図る余地を得たのではないでしょうか.もしそうだとしたら,改革の皮肉な成果に,近隣諸国が苦しみます.

本当に,ベトナムと中国は,戦争になるかもしれないな,と思いました.講義の準備に,D. Kinsella, B. Russett and H. Starr, World Politics, 10th edition を読んだときです.

なぜ国家は戦争に及ぶのか? K. Holstiの研究によれば,そのもっとも多くのケースが領土紛争(そして国家の分離独立)でした.しかも,興味深いのは,尊厳を傷つけられたという意識,社会的・国際的な地位の剥奪,急激な低下に対して,強い不満や怨嗟が生じ(ドイツ),それが暴力的な衝突を招く,と書いていることです(ロシア,中国).また,人々の期待が高まることで,さらなる変化がそれを満たすことに失敗すれば,激しい反発(中国,ブラジル)や革命(フランス),それを回避するための戦争が求められた,と歴史上の例を紹介しています.

ヨーロッパ議会選挙では極右政党が躍進し,アメリカの関心は次の大統領選挙に向かうでしょう.ロシアや中国の領土要求を止める国際秩序は動揺し続けます.新興諸国の求めるものが何であれ,それを安定化し,平和的に転換できるような国際システムへの移行期が続くのです.

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