(前半から続く)
l ユーロ圏の改革
The Guardian, Friday 2 May 2014
Our
manifesto for Europe
Thomas Piketty and 14 others
ユーロ圏は政治・財政統合を進めることで危機を解決できる.21世紀のグローバルな金融資本主義を規制するには,それを規制できる民主主義と公的権力が必要である.
第1に,法人税を共有することだ.まずフランスとドイツが共有する.各国は多国籍企業を誘致するために競争し,さまざまな抜け道を作っている.課税の最適化により,得られた財源はユーロ圏の景気刺激策や労働者の再訓練に利用できる.
第2に,ユーロ圏の議会と内閣を組織する.この制度改革によってのみ,危機の惰性や閣僚理事会の神話を打破できる.
第3に,債務を共有することでユーロ危機を終わらせる.GDPの60%を超える債務はESMやECBなどがプールする.債務返済基金を設けて,その返済条件は,ユーロ圏の内閣が経済状態に照らして決定する.
FT May 4, 2014
Voting
will not change Europe’s real power balance
Wolfgang Munchau
FT May 4, 2014
Switzerland:
Change in the air
By James Shotter
FT May 6, 2014
Eurosceptics:
Beyond the fringe
By Kiran Stacey and Jim Pickard
FT May 8, 2014
European
Union: A political narrative framed by frustration
By Peter Spiegel
FT May 8, 2014
European
leaders face uphill battle regaining voters’ trust
By Tony Barber
FT May 8, 2014
Demographics
at odds with EU migration policies, as opposition rises
By Norma Cohen
不況から抜け出すにつれて,ヨーロッパが最も激しく論争するのは移民政策である.
最も重要な理由は人口動態だ.ヨーロッパの人口はますます高齢化し,若い労働力の流入が無ければ労働者が減ってしまう.それは経済停滞や財政の悪化をもたらすだろう.
しかし,各国の移民政策は人口動態と無関係に決められている.特に,間違った2つの前提で,移民排斥の極右勢力が影響力を強めた.それは,1.移民が雇用を奪っている,賃金を下げている,2.移民は社会福祉の水準が高いところへ集まってくる,という主張だ.
これらに加えて,内戦状態のシリア,アフガニスタン,ソマリアからの難民が流入することを恐れている.しかし,EUの難民受け入れは乏しい実績しかない.イギリスがしたように,給付を制限する国が増えている.
FT May 8, 2014
EU
social welfare: Reforms stretch holes in official safety nets
By Tony Barber
Project Syndicate MAY 8, 2014
Europe’s
Big Bang at Ten
DANIEL GROS
10年前に,EUは10か国を加えて,加盟国の数が15から25になった.当時,東欧の移行経済諸国は旧加盟国よりも大幅に貧しく,しかも大きな農業部門の雇用を抱えていた.EU財政は貧困地域と農業にもっぱら支出されていたから,こうした拡大が財政負担を増大させると懸念されたのだ.
問題はEU的な妥協によって解決した.財政支出は規模を削減したのだ.そして7年に1度だけ予算を決める.また,農業は消滅し,今では重要テーマではない.加盟諸国の成長と生活水準を高めることがEU加盟の主要な目的であれば,それは成功であった.新加盟諸国の所得はEU水準の3分の1から3分の2にまで上昇した.
こうした収斂が起きたせいで,懸念された労働者の移動による労働市場の混乱は抑制されたのだ.グローバルな競争力の点でも,新加盟諸国に対する直接投資が増え,企業は労働集約部門を移転し,受け入れた各国は渇望していた投資や雇用,知識を得た.
東欧諸国のEU加盟は,ロシアに接近することになった.EUが示した民主主義と繁栄は,ウクライナにもEUへの加盟を望む声を生じたが,ロシアはそれを阻止した.EU拡大は予想された内部の問題を解決してきたが,予想していなかったロシアとの対峙を解決しなければならない.
l 不平等な世界
The Guardian, Friday 2 May 2014
Scrap
inheritance tax and leave the dead to rest in peace
Polly Toynbee
Thomas Pikettyの主張は,他の多くの研究者によっても指摘されていた.しかし,人々はそれをあまり知らず,政治家は無視してきた.今も,キャメロン首相は相続税の下限を引き上げようとしている.
不平等を緩和するには,死者にも生者と同じように課税するべきだ.
theguardian.com, Monday 5 May 2014
It's
madness to 'privatise' Marx – thanks to Piketty he's back in vogue
Lucia Pradella
FT May 5, 2014
Tory
tax on property is perfect for the Piketty age
By Janan GaneshAuthor alerts
FT May 5, 2014
Europe
debate over ‘Robin Hood’ levy is taxing reality
By Alex Barker in Brussels
Project Syndicate MAY 8, 2014
Where
Is the Inequality Problem?
KENNETH ROGOFF
もう一つの新刊書を読めば,19世紀,金ぴか時代の泥棒貴族たち以来,最大の不平等がある,というThomas Pikettyの主張は納得できないはずだ.それは,Angus DeatonのThe Great Escapeだ.その違いは,一国内で見るか,世界全体で見るか,による.この30年間,資本主義システムは世界の貧困を大きく減少させた.
Pikettyはモデルを示さない.もしRobert Solowの成長モデルに従えば,世界化した貿易にアジアの労働力が参加したことで資本の収益が改善した後,次第に調整が進んで,賃金も上昇する.他方,機械化が進んだことで労働者の所得が減ったのであれば,その傾向は今後も続く.
Pikettyが最高80%の所得税率を導入するよう提案して,それが市場に与える歪みを無視するのは間違っている.所得分配の不平等を是正するには他の方法が適当だ.
l スコットランド独立
The Guardian, Sunday 4 May 2014
The
north-south divide is a myth – and a distraction
Owen Jones
l イギリス緊縮策の間違い
FT May 4, 2014
British
austerity is no model for the rest of the world
Larry Summers
この四半期について,アメリカや大陸ヨーロッパ,日本に比べて,イギリスの成長率は3%を超えて目立っている.しかし,それは緊縮策による不況が非常に深刻であったからだ.アメリカは1933年に9%の成長率を示した.不況が深刻であるほど,その後の回復は大きい.しかし,アメリカは金融危機前のGDPの水準を超えているが,イギリスはまだ低い.
イギリスの景気回復は,さらに2つの点で問題がある.1.緊縮策を次第に緩和したことで成長率が高まった.2.政府による住宅購入の補助政策が不動産バブルを煽った.
いずれの点で見ても,他国がイギリスの緊縮策をまねることは間違いだ.
l インドのブルジョア革命
FT May 4, 2014
Narendra
Modi as Indian premier? Neither tyrant nor colossus
By Victor Mallet in New Delhi
FT May 5, 2014
India:
Industrial evolution
By Victor Mallet and James Crabtree
Project Syndicate MAY 6, 2014
India’s
Bourgeois Revolution
SHASHI THAROOR
インドの政治は中産階級や高等教育を受けた専門家,知識人を排除してきた.インドの政治家とは,政治家の家族から,選挙地盤を継承し,地域のボスに認められ,多額の資金を使って,当選するものだった.
しかし,この選挙は違う.たとえば,Infosys の共同創設者であるNandan Nilekaniが,インドのハイテク中心地Bangaloreで,BJPに対抗する議会派の候補として出ている.
ムンバイでは,Aam Aadmi (Common Man’s) Partyが,the Royal Bank of Scotland の支店長であったMeera Sanyalを候補に立てている.Chennaiでは,議会派が電子技術者であるS.V. Ramaniを立候補させる.
他国の民主主義では,中産階級の価値観や信念が重視され,教育ある専門家が政治活動の中心になっている.インドでは,キャリアを妨げるものとして,中産階級は政治を避けた.その結果,政治はますますポピュリストに偏ってきた.
この選挙で中産階級が政治に登場することは民主主義を救い,インド政治を変えるだろう.
FT May 7, 2014
India’s
Congress party has done itself out of a job
David Pilling
l ワールドカップの憂鬱
FT May 4, 2014
Brazil’s
Olympian World Cup blues
l ゲイリー・ベッカーの訃報
FT May 4, 2014
Gary
Becker, US economist, 1930-2014
By Tim HarfordAuthor alerts
l ウィグル人の父
NYT MAY 4, 2014
A
Uighur Father’s Brave Fight
By JEWHER ILHAM
北京の国際空港で,私は父とアメリカ行きの飛行機に搭乗するため,パスポート検査の列で待っていた.父はIndiana Universityで客員研究者として1年を過ごすはずだった.係官は父の情報を詳しく調べ,コンピューターに入力した.
突然,治安担当者が私たちを列から引き出した.父は搭乗を禁止され,彼らは私に去るように言った.父も私に去れと主張した.私は泣いた.
父は私に,強くなれ,人前で泣くな,と言った.お前が弱いとか,ウィグル人が弱いとか,誰にも思われないように.
私の父,Ilham Tohtiは,ウィグル人のために発言する,エコノミストであり,作家である.中国政府を批判した彼のウェブサイトは閉鎖された.2009年7月5日に,激しいエスニック間の衝突が起きて,犠牲者が出た後,彼は西側のレポーターによるインタビューに応えた.
政府はテロ活動を厳しく取り締まるという.しかし,父のような人々の苦情を無視している.父は,暴力を唱えたことはない.中国のすべての人々と同じ,平等と敬意を求めているだけである.
l タイ王国の瓦解
FT May 5, 2014
Thailand
must escape its limbo
NYT MAY 7, 2014
Court
Orders Thai Leader Removed From Office
By THOMAS FULLER
FP MAY 7, 2014
The
Dark, Sordid History of the Court That Ousted Thailand’s Prime Minister
BY JAKE SCOBEY-THAL
FT May 8, 2014
The
elite cannot turn back the tide of Thai politics
By Duncan McCargo
タイの政治的混乱は2001年にタクシンThaksin Shinawatraが政権を得てから始まった.彼はバンコク周辺に住む数百万人の貧しい人々の声を初めて政治に取り込んだ.しかし,2006年に軍事クーデタで政権を追われ,ドバイに逃れた.
その後,選挙によって何度もタクシン派の政府が成立したが,旧政治エリートたちは王室のネットワークとシステムの支配的地位を利用して,タクシン派の政府を妨害した.反タクシンの運動は,極端にタクシンの個人攻撃に偏り,頑なに自己主張を繰り返す.9年に及ぶ政治危機は,国民の間に深刻な亀裂を生んでしまった.
問題の根本にはタイという国家の正当性がある.この国は憲法に依拠した民主主義国なのか? 法律や選挙より,王室や君主を愛する者がタイについて考えることで動く王国なのか?
l 分離主義の時代
Project Syndicate MAY 5, 2014
The
Post-National Mirage
SHLOMO BEN-AMI
ドイツの哲学者Jürgen Habermasは,「脱民族アイデンティティの時代」と呼んだ.プーチンはどう言うだろうか?
現在のグローバリゼーションが示す大きな逆説は,同質性への要求がエスニックや宗教の共通性を求めることだ.統合されたヨーロッパ内でも,地域的ナショナリズムや外国人嫌いは全く消滅していない.
1990年のバルカン戦争は,何世紀も郷土を共にし,同じ学校に通った人々が互いに殺し合った.フロイトの分析に当てはめれば,ナショナリズムは小さな差異への偏愛・ナルシシズムだ.
ナショナリズムは近代の政治的な発明であり,共通の歴史や共有された記憶という姿で現れる.しかし国家はしばしば遠い過去についての集団的な嘘でできたグループにすぎず,過去というのはしばしば,あまりにもしばしば,現在の必要に応じて書き換えられる.
エスニック的な忠誠心が国境線と一致することもめったにない.多くのエスニックからなるユーゴスラビアを分割したけれど,今でもスロヴェニアとセルビアのマイノリティーは人口の20%から30%を占めている.
こうした多様性を統治することは,専制体制にとって難しい.ユーゴスラビア,アラブの春,ソ連崩壊,中国のウィグル地区は,エスニックなマイノリティーが国家の崩壊に向かう例だ.他方,インドは多様な文化,エスニシティ,宗教からなる文明を賛美している.
シオニズムは歴史の灰燼から国家を建設するために啓発されたイデオロギーであるが,新しい社会・政治的なエリートに悪用され,周辺のアラブ世界とつながりを欠いた国家を正当化している.
EUという民主主義に依拠した政治共同体は,国民国家を終わらせる目的ではなく,民主主義が多文化・多宗教を和解させ,協力と政治的統一を実現することを目的に建設された.各集団は分離主義に向かわず,立憲主義的な愛国心を支持し,政治決定の分権化を進めている.
最近,ケベックの分離派が選挙で敗北した.多年に及ぶ憲法の混乱は企業がケベックから離脱する傾向を強め,モントリオールを企業のハブから衰退に向かわせたからだ.スコットランドやカタロニアも同様のリスクを冒している.ウクライナの危機も,その腐敗した民主主義が持続的な国家を建設することに失敗したから起きた.
対照的な例は,イタリアが併合した南チロルである.それは第1次世界大戦後,住民に問うこともなく,ヴェルサイユ会議で決まった.しかし今,南チロルは憲法上の自治を拡大し,完全な文化的自由を持ち,財政の90%は自分たちで決めている.バイリンガルで平和的な共存を実現する姿勢は,硬直的な中央政府も,非現実的な分離主義運動も,学ぶべきである.
スコットランドが独立に成功しても,すでに内部で,Shetland, Orkney, and the Western Islesが独立国家にとどまるかどうか,自決権を求めている.エディンバラ政府は今のウェストミンスターと同じような反対運動を始めるはずだ.
The Guardian, Tuesday 6 May 2014
Who
can control the post-superpower capitalist world order?
Slavoj Žižek
ソ連の時代には,誰にわいろを渡せば何が得られるか,人々は知っていた.ソ連崩壊後の人々の不満は,その複雑なつながりがわからなくなったことだ.プーチンの統治が安定化をもたらしたのは,同様の不文律が,社会的繋がりの透明性を高めたことだ.
国際政治は,まだ,この段階に達していない.アメリカの世紀は終わったが,世界はさまざまな資本主義に満たされている.アメリカのネオリベラル資本主義,ヨーロッパの福祉国家資本主義,中国の権威的資本主義,ラテンアメリカのポピュリスト資本主義,など.
200年以上前に,カントは世界社会の出現には国際法が必要だ,と考えた.しかし,グローバルな資本主義経済に対して,今も,グローバルな政治秩序は存在しない.商品のグローバルな移動は,社会における分離主義を強めている.
l 産業政策
Project Syndicate MAY 5, 2014
Industrial
Policy Reconsidered
ANDRÉS VELASCO
l ボコ・ハラム
NYT MAY 5, 2014
Ethnic
Cleansing in Africa
By THE EDITORIAL BOARD
FP MAY 5, 2014
The
Lost Girls
BY LAUREN WOLFE
Boko Haramによって誘拐された200人以上の女子学生たちは見つからない.こうした話は以前からあり,注目されなかった.紛争地帯では女性や子供たちが誘拐され,世界的な規模で売られている.
見過ごされている重要な問題は,世界の南で毎日起きている女性・少女たちの誘拐や密売が,国際メディアに全く取り上げられないことである.こうした性的暴力事件は,まるで日常のように無視されている.Boko Haramは,社会の最も弱い,しかも,簡単に金に換えて武器を買うことのできる少女たちを狙った.
theguardian.com, Tuesday 6 May 2014
Western
intervention will turn Nigeria into an African Afghanistan
Lindsey German
西側の介入は一層事態を悪化させることが多かった.2001年のアフガニスタン戦争も,主要な目的の一つが女性の権利であった.今や,何百万人も難民となり,何万人も死亡し,アフガニスタンは地上でもっとも女性が生きることの困難な土地の一つになった.
アフリカにはもう一つの戦争がある.豊富な資源がありながら国民は非常に貧しい,という経済戦争だ.医療も教育も,国民の手には届かない.
FT May 6, 2014
Nigeria’s
feeble leaders confront fearsome demons
By Kadaria Ahmed
NYT MAY 6, 2014
New
Kidnapping Reported in Nigeria as U.S. Offers Help
By ADAM NOSSITER and RICK GLADSTONE
NYT MAY 6, 2014
Nigeria’s
Stolen Girls
By THE EDITORIAL BOARD
The Guardian, Wednesday 7 May 2014
BringBackOurGirls.
And bring back our country, President Jonathan
Chibundu Onuzo
NYT MAY 7, 2014
Honoring
the Missing Schoolgirls
Nicholas Kristof
FP MAY 8, 2014
Nigeria
Is Not Pakistan
BY LEELA JACINTO
l 金利生活者の安楽死
FT May 6, 2014
Wipe
out rentiers with cheap money
Martin Wolf
金融危機後の低金利状態は終わりそうにない.貯蓄に見合った投資が行われないからだ.日本を観れば,それは長期に及ぶ.「金利生活者の安楽死」というケインズの指摘は正しい.
FP MAY 7, 2014
Do
We Have Too Much Capital?
BY DANIEL ALTMAN
l Alibabaの上場
FT May 6, 2014
Alibaba
launches US IPO
By Sarah Mishkin in San Francisco
Alibabaの新規株式公開はこれまでで最大規模の取引になり,1500億ドルを超えるだろう.それは1999年,英語教師であったJack Maの設立した会社であり,伝説となった.年間113億件の注文を受けて,2500億ドルの売り上げがある.それはAmazonとeBayを合計したものよりも多い.
中国におけるeコマースの規模は,2003年以来,年120%で成長してきた.その2012年の売り上げは1200億ドルで,アメリカの2000億ドルに次ぐ規模だ.しかも中国の方が成長の余地は大きい.
NYT MAY 6, 2014
Alibaba
Files to Go Public in the U.S.
By VINDU GOEL, MICHAEL J. DE LA MERCED and NEIL GOUGH
FT May 7, 2014
Alibaba
IPO shows foreign investors able to skirt restrictions
By Charles Clover in Beijing
FT May 7, 2014
Alibaba:
sale of the century
NYT MAY 7, 2014
The
Unlikely Ascent of Jack Ma, Alibaba’s Founder
By NEIL GOUGH and ALEXANDRA STEVENSON
Bloomberg MAY 7, 2014
Alibaba
and China's Two Great Walls
Leonid Bershidsky
Bloomberg MAY 7, 2014
Alibaba,
Based in China, Imitating Japan
William Pesek
日本をまねて何でも屋になるな.
FT May 8, 2014
Keep
an eye on the wild cards when playing Alibaba’s IPO
By Richard Waters
l 韓国の悲劇
NYT MAY 6, 2014
South
Korea’s Tragic Failure
Young-Ha Kim
l 都市の持続的モデル
Project Syndicate MAY 7, 2014
A
Light Unto Cities
JOSEPH E. STIGLITZ
コロンビアの麻薬ギャングがかつて支配した都市Medellín で開催されたthe World Urban Forumは,都市の可能性を示している.インフラや社会保障がないコロンビアのスラムで,ギャングは恐怖だけでなく,最貧困層に生きる手段を与えて支配した.
都市を生存空間にするには計画がなければならない.それはアメリカも学ぶべきだ.個人が繁栄し,革新することのできる都市圏を創る必要がある.それは人々が交流し,文化が栄え,公的な参加を促す民主主義のエトスが育つ空間だ.
最大の敵は不平等である.
l 環境問題
NYT MAY 7, 2014
Tear
Down ‘Deadbeat’ Dams
By YVON CHOUINARD
NYT MAY 7, 2014
Climate
Disruptions, Close to Home
By THE EDITORIAL BOARD
l 戦後の心の傷
NYT MAY 7, 2014
A
Soldier Fights Off the Cold
By DAMON T. ARMENI
l モニカ・ルインスキー
theguardian.com, Thursday 8 May 2014
Monica
Lewinsky's story is a scandal of Americans' double-standards
Megan Carpentier
l 言論の自由
The Guardian, Thursday 8 May 2014
We
still don't know who'll win the global battle for free speech
Timothy Garton Ash
25年前の4つの大事件が今も我々の世界を形成している.1.ベルリンの壁崩壊.2.天安門事件.3.wwwの発明.4.ホメイニによるサルマン・ラシュディーのfatwa死刑宣告.
イギリスのイスラム教徒コミュニティーでも変化が起きた.彼らの多くはイギリスの法律を守り,その権利を擁護するようになっている.しかし,一部は強い警戒感を維持している.世界中で,言論の自由に対する警告が発せられている.インドでも,中国でも.
4つの戦いすべてに言えることだが,言論の自由は,敗北していないが,まだ完全に勝利したわけでもない.
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The Economist April 26th 2014
A billion shades of grey
Demography, growth and inequality: Age
invaders
Labour unrest: Danger zone
Migration in Australia: The promised
land
Energy and the Amazon: Drilling in the
wilderness
(コメント) 老人たちが空から降ってくる絵が愉快で,深刻さを紛らしてくれます.日本は,高齢化による停滞や,金融政策の超緩和,主要通貨の財政破たんリスク,という時代の先端的実験室になっています.高等教育を受けた労働者は引退を遅らせる,というわけですが,知識や技術の内容が変化するほど,むしろ早期の引退を迫られるように思います.
中国のストライキも年金を要求します.オーストラリアに渡って中国人が町を建設する話,エネルギー開発と自然環境や原住民の保護とを両立する話,も面白いです.
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IPEの想像力 5/12/14
マイケル・サンデルの白熱教室で「日中韓の未来の話をしよう」を少し観ました.
日本人の女子学生(エリコ?)が,自分は中国人(韓国人?)の話を聴いて,日本人がしたことを謝った,という発言を,サンデルは積極的に取り上げました.そして学生たちに意見を求めました.
・・・なぜ彼女は,自分が過ちを犯したわけでもないのに,謝るのか? それは正しいのか?
責任や犯罪,特に,戦争犯罪,というものが個人と社会の関係をどのように前提して成り立っているのか,サンデルは問題にしたかったのかもしれません.
もし個人がコミュニティーに帰属していると感じるなら,同じコミュニティーのメンバーが犯した罪に対して謝罪するでしょう.なぜなら,それはある程度,コミュニティーとして犯した罪でもあるからです.
しかし,戦争には人為的な,政治的に創り出される,「他国民を殺さなければならない,それが自国民を守ることだから,殺人は正しい」,と主張する状況・心理があります.
映画「戦場のピアニスト」を観て,もちろん映画ですから,事実とは限りませんが,兵士たちが次々に無防備な市民を殺害する場面から,残酷だとか,恐ろしい,というより,戦場においては生死の理屈が全く変わってしまう,と思いました.
・・・「どうしてあんなことをしてしまったのか?」と後悔し,泣き続ける女性が,列車を待つユダヤ人たちの中にいました.周りの者は迷惑に感じていますが,彼女の嘆く理由を知っているから,そのまま許しています.事情を知らない女性が,あの女はなぜいつまでも同じことを悔やむのか,騒がしい,と不快感を示しました.
・・・誰かが,彼女は自分の赤ん坊を殺してしまったのだ,と教えました.ナチがユダヤ人を探しているとき,彼女の赤ん坊が泣きだしたのです.一緒に隠れているユダヤ人たちは発見されるのを恐れ,彼女も赤ん坊の口を押さえました.そして,気が付けば,赤ん坊は死んでいたのです.
沖縄の戦場でも,同じような話を聴いたように思います.戦争は,人間同士が殺し合い,それ以外の理屈を無視します.母親が赤ん坊を殺しても,仕方ないことだった,と周りの者は思うでしょう.
サンデルは,異なる問題も学生たちに投げかけています.エリコは罪を犯した人間ではなく,さらに,戦争の時代に生きたという責任もない.それでも,謝ることに意味はあるのか? 同じコミュニティーに属している(罪を感じる)というだけでなく,何か積極的な効果を期待できるのか?
エリコの答えは深く考えさせるものでした(少し違うかもしれませんが).・・・自分は,過去の日本人が犯した罪について,謝るべきだと感じた.その話をした中国人は,日本人が与えた傷に今も苦しんでいる(そのことに自分も共感する)のだから.自分が同じ日本人として謝ることで,私たちの間に何か道徳的な(人間的な)感覚を回復できるかもしれない,と思った.もし相手の傷を癒してあげられるのであれば,私は罪を犯した日本人が本来すべきである謝罪を,代わって行うことに意味があると思った.
このエリコの答えに,中国人の学生も,韓国人の学生も,肯いたように思います.
私は,第3の質問があると思いました.それは,コミュニティーではなく,政治の責任です.中国人のリン(?)が,罪を犯した者は自分たちのコミュニティーにおいても罰せられるべきであることを示すために,謝るのだ,と述べました.
最も悪辣で,無慈悲な性質を持つ個人が,コミュニティーを口実にして自分の犯す罪を免れ,その上,自分がコミュニティーを守る愛国者である,と主張するような政治を生むのも戦争である,と思います.戦場であっても,コミュニティーの規範や自浄能力を維持しなければ,状況に圧倒されて,全ての理屈を変えてしまうでしょう.
母親が赤ん坊を殺さなくても良いような,平和な時代を求める運動が始まります.日本人や,韓国人や,中国人としてではなく,人として生きるために協力し,互いに尊敬できる世界で生きるために,私たちがやることは多くあります.
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