IPEの果樹園2014
今週のReview
5/5-10
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Piketty人気の理由 ・・・欧米の移民の将来 ・・・国家ではなく都市の成長 ・・・ロシアの侵略と国際システム ・・・アメリカ外交とアジア ・・・中国社会の変化 ・・・QEの政策協調体制 ・・・イギリスの「失われた10年」 ・・・ポーランドの10年
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l Piketty人気の理由
NYT APRIL 24, 2014
The
Piketty Phenomenon
David Brooks
多くの左派は貧しい人々に関心がある.しかし,民主党が議論してきたのは,貧しい人々ではなく,中産階級であった.あるいは,ウォール街占拠運動のような進歩派も,1%の富裕層に関心を向けた.
それは当然だろう.学者,活動家,メディア関係者,芸術家,など,明敏な専門職の人々が率いる現代の左派は,沿岸部の都市に住んでいる.彼らは本当の貧困や,不平等の生の経験を持たないからだ.かつてフランスの社会学者Pierre Bourdieuが階級闘争を描いたように,それは,文化的資本の富裕層と,金融的資本の富裕層との闘争なのである.
FT April 25, 2014
Lessons
from a rock-star economist
Gillian Tett
私はフランス人エコノミストに会いに行った.しかし,その会場the Graduate Center of the City University of New Yorkは大変なことになっていた.チケットは完売し,聴衆は隣接する公会堂でも討論の中継を観ていた.本はベストセラーになり,財務省やホワイトハウスも,主要なニュースも,このフランス人のことを語っている.余りの関心の高さに,ニューヨークの高級ファッション雑誌が彼を“Rock-Star Economist”と呼んだ.
1か月前まで,アメリカでは誰も聞いたことがないフランスの左派知識人に,なぜこれほど人気が出たのか?
それはPikettyがアメリカ人の自己認識に関する不安を明確に指摘したからだ.アメリカ建国から2世紀半を経て,ヨーロッパの世襲貴族の伝統を拒否し,地主の富を否定した,と彼らが誇る国はどうなったのか? 厳しい労働,能力,競争で,富を得ることができると考えていたアメリカ人の社会は,何か違うものに変わった,という不安である.
VOX, 29 April 2014
How
to address inequality
Jeffrey Frankel
アメリカは,南北戦争後の金メッキ時代the Gilded Ageに似た不平等な社会になった,という問題が関心を集めている.上位1%の富裕層が支配する富は,1980年の8%から2012年に19%へ上昇した.それは1928年以来の最高で,おそらく世界で最も高い.
不平等は,成長を損ない,浮動性・不安定性を高め,妬みや不幸をもたらし,経営者たちの間の競争で報酬を極端に高める.それは政治において政策や制度を買収し,寡頭制を築く.こうした主張には多くの真実がある.
アメリカにとって効果的な是正策は,可処分所得の減税(EITC)を拡大し,低所得層の給与税を免除し,高所得層の課税の抜けアナを廃止し,高率の相続税を復活させることだ.こうした政策によれば,総所得を相対的に減らさず,不平等を効率的に是正できる.
不平等を減らして成長に役立つ政策はある.すなわち,国民全体に初等教育や医療保険を与える政策だ.そして,たとえば,化石燃料への補助金撤廃や,法人税の抜け穴をふさぎ,ストック・オプションに課税して,財源を得るのが望ましい.他にも,貧困を緩和するという理由で,ほとんど効果のない,間違った政策がある.農業補助金,住宅融資補助,などはやめるべきだ.
より優れた対策は,何が正しい是正策か,それを支持している政治家はだれか,有権者に知らせることである.
l 欧米の移民の将来
YaleGlobal, 24 April 2014
Differing
Approaches to Immigration on Two Sides of the Atlantic
Michael Mandelbaum
大西洋の両側で移民に対する反対の声が高まっている.しかし,それは奇妙なことである.世界は財や資本の移動について,その利益を受けようと各国が争っている.ヨーロッパでは人口が減少し,多くの移民を必要としているのだ.世界で,2011年に2億1500万人の人が,生まれた国以外で暮らしている.移民をどう扱うかが21世紀の,重要な,そして激しい政治論争になる.
移民を恐れる声が上がるのも不思議ではない.彼らは労働者であるだけでなく,人間として社会を形成する一部である.大規模に移民が来ることで,その社会が変化することを恐れる人が増えるのだ.その政治論争の結果次第で,将来の移民の流れやあり方も変わるだろう.
ある国では移民たちを住民から分離している.他の国では「多文化主義」を唱えているが,言語や宗教の違いを長く残してしまう.同化を促すアメリカでも,文化の変化が加速して,政治的な反動を生じている.独自の文化を奪われ,社会で同じ市民としての資格を得られない移民たちも,不満と怨嗟を積もらせる.
2010年に,ドイツ連銀総裁Thilo Sarrazinが本を書いて,その中で移民の増加に反対する意見を述べた.ドイツの価値が破壊されている,というのだ.本はベストセラーになって,共感を生んだが,政界の主流派はこれを許さなかった.ユダヤ人差別とホロコーストの歴史を反省したドイツ政治が,移民に対しても差別しない姿勢をEU内で明確にしなければならない,と考えたからだ.Thilo Sarrazinは職を失った.他方で,非主流の政治党派が反移民をあからさまに主張し,より大きな勢力を得ている.
l 国家ではなく都市の成長
FT April 25, 2014
Cities,
not countries, are the key to tomorrow’s economies
By Arif Naqvi
21世紀の文明を築くのは,国家ではなく,都市である.毎日,多くの人が田舎から街へ出てくる.世界には,毎年,ニューヨークが8つ生まれている.
今後の10年間で起きる経済成長の半分は,世界の400都市で起きる.新興市場,などと呼ぶのはやめた方が良い.都市の消費者は,1990年に10億人であったが,2025年に40億人になる.世界を国民経済の集合と見る伝統的な方法は,これを正しく理解できない.国家ではなく都市が成長の主体であり,都市化の流れは止まらないだろう.
世界の成長経済は,都市の大企業と人口に集中している.例えばインドネシアは,年6%で成長している.多くの西側経済が停滞する中,それは素晴らしいが,実際の政策や投資にとって重要な数字ではない.なぜならその数字は,ジャカルタが年14%で成長していることを隠すからだ.インドネシアの多数の島々は,この成長のエンジンである首都から離れるほど,成長できなくなる.ナイジェリアのラゴスもそうだ.
l ロシアの侵略と国際システム
theguardian.com, Sunday 27 April 2014
What
are Russia's real motivations in Ukraine? We need to understand them
Ruth Deyermond
これは単なる領土拡張のための新帝国主義ではない.旧ソ連圏の他の諸国を併合する政治的・経済的コストを負ってまで,ロシアが領土を拡大したがっているとは思えない.他の手段によって,地域の支配的な地位を得られるからだ.ロシアはウクライナが西側の制度に取り込まれるのを許せなかった.しかし,その行動はロシア自身が望まなかった抗議デモを激化させ,よりラディカルな,西側志向の,反ロシア政府を生んでしまった.その後のロシアの行動は,こうしたウクライナにおけるロシアの地位を回復する作戦なのだ.
それは欧米にとって,プラスとマイナスの意味を持つ.プラスの意味は,プーチンがヒトラー型のヨーロッパ征服を目指しておらず,もっと限定的な,合理的行動を取っている,ということだ.すなわち,地域の安全保障と大国の地位である.そうであれば西側は交渉によって危機を解決できるだろう.
マイナスの意味は,西側の経済制裁が効果を発揮しない,ということだ.プーチンにとってウクライナへの影響力はもっと重要な目標であり,アメリカが軍事的なエスカレーションを考えない以上は,妥協するしかない.ウクライナの危機は,本来,国内問題である.
FT April 27, 2014
Punishing
an aggressive Russia is a fool’s errand
By Thomas Graham
ワシントンは,ロシアの「封じ込め」が愚かな議論であることを知るべきだ.それは機能しないし,アメリカの利益を損なうだけだ.
経済的に見て,ロシアを孤立させることはできない.世界第6位の経済規模,EUが必要とする石油と天然ガスの3分の1を供給している.政治的にも,ワシントンは他国を説得もしくは強制する力を持たない.アメリカは軍事介入に失敗し,ヨーロッパは域内の問題に関心が向かっている.
より重要なことは,ロシア封じ込めがアメリカの利益を損なうことだ.世界はもはや2極でも1極でもない.アメリカは重要な利益を実現するために,ロシアや(将来は)中国と協力しなければならない.
すでにロシアの要求はわかっている.ウクライナを西側の同盟に加えない.政治制度を地方に分権化する.ロシア語も公用語にする.それらの細部を交渉するのはこれからである.そこでアメリカは,ウクライナの立場を支援する.ワシントンが望むような親米的なウクライナは得られないし,モスクワの影響力は強く残るが,その地政学は変わらない.アメリカは背後で,ウクライナの政治的競争に参加するのである.
NYT APRIL 28, 2014
Saving
the System
David Brooks
平和と秩序の部品が至る所でゆるんでいる.ロシアとウクライナの指導者は世紀末的な非難を浴びせている.スンニ派とシーア派との対立はシリアでもイラクでも混沌を深めている.中国は太平洋の周辺で重みを増す.
大戦略の歴史を観れば,既存の国際システムが悪化し始めると,指導者たちは秩序を無視し,自分のしたことを忘れて,自己満悦に耽る.プーチンも,中国も,中東のセクトも,新しい秩序が地域に現れることをめぐる覇権の争いである.「アメリカの世紀」や,過去300年余りも支配した「近代」という時代は終わり,新しい時代が誕生する.それは近代的ではないし,快適でもないだろう.
近代の秩序は国家間システムであった.1648年のウェストファリア条約で,支配的な勢力は境界を確定し,その内部で多様性を守った.ナチズムやコミュニズムはこのシステムに挑戦し,敗北した.
今,そのシステムは単一の帝国によって攻撃されているのではなく,多数の大小の敵によって傷つけられている.地政学の復讐だ.中国,ロシア,イランは,異なった価値を持つが,このリベラルな国際協調体制に反対している.アメリカは無数の傷によって死ぬことを恐れている.シリアでも,ウクライナでも,どの亀裂に大量の資源を投入したところで,近代のシステムは回復しない.個別の攻撃ではなく,その集合体がシステムを殺すのだ.
Bloomberg APR 29, 2014
Where's
the Rule of Law in Global Politics?
Mohamed A. El-Erian
重要な問題がある.地政学的な秩序と,経済的な秩序の,2つが収斂するのはいつか? どのようにしてか?
ウクライナ危機はその一つでしかない.アフリカ,アジア,ヨーロッパ,中東,世界中に同じ問題が現れている.仲裁する適当な第3国は存在しない.アメリカでさえ,その影響力を保持するのに苦労している.
しかし,経済分野では違う.景気回復は怪しく,失業率も高いが,保護主義の高まりはない.むしろ自由化に向けたスーパー地域統合の合意が交渉されている.
その違いは,第1に,政治や外交に比べて,経済分野には効果的な国際機関が存在する.WTO,IMFは,透明で,検証可能なルールを示して,各国に参加を促している.それらは世界の成長を組織するほど協力ではないが,その防御において重要だ.
第2に,経済・金融のグローバリゼーションにより,経済関係は多次元で,多国間に広がっており,生産者や消費者がシステムにおいて重要な諸国の間に相互の利益を結び付けている.だから保護主義は多くのコストをもたらし,しかも相互にコストが拡大する.
第3に,多くの企業にとって国際的な販売の重要性が増しており,生産過程の一部は海外にある.彼らは保護主義に反対し,ロシアへの制裁にも反対する.
最後に,公正かつ自由な貿易を支持する学問的な合意が浸透している.
こうした条件は地政学的な紛争に当てはまらない.各国は過去について全く異なった理解を示し,それは当然,未来についても対立を生じる.人々は感情に流され,政治家たちはそれを利用する誘惑に従う.
NYT MAY 1, 2014
Russia’s
Weimar Syndrome
Roger Cohen
ロシアの外交専門家Sergei Karaganovがプーチンのナショナリズムについて論評した.
「西側は,ソ連崩壊後,冷戦の終結を事実上あるいは法的に拒んだのだ」とKaraganovは述べた.その結果,ロシアは極度の侮辱と包囲に苦しんできた.・・・西側は,不断に,軍事的・政治的・経済的な影響圏を拡大したのだ.ロシアの利益や反対は無視された.われわれは敗戦を認めなかったが,彼らはあたかも敗北した国家であるかのようにロシアを扱った.それはソフトなヴェルサイユ条約であった.第1次世界大戦後のドイツのように,領土の分割や賠償を求められたわけではなかったが,ロシアは世界の中でおとなしい役割を果たせと命じられた.それは偉大なロシア人の尊厳と利益を砕き,ワイマール症候群を生んだのだ.
プーチンの煽るナショナリズムとロシアの強硬姿勢は,国内問題を何も解決しないだろう.しかし,アメリカの弱さは危機を悪化させる.オバマが尖閣諸島で集団防衛を明言したのは,新しいレッド・ランイであり,その約束を守るか,疑われている.アジアでも,東ウクライナでも,一発の銃声が真実を教え,混乱が広がるかもしれない.
l アメリカ外交とアジア
Project Syndicate APR 30, 2014
Global
Ground Zero in Asia
NOURIEL ROUBINI
この時代の地政学的な最大のリスクは何か? イスラエルとイランの核軍拡競争でもなく,マグレブ諸国からヒンドゥ・クシュまでの不安定化でもなく,ウクライナをめぐる東西の新冷戦でもない.
それは中国の台頭を平和的なものに維持することである.
日中の外交専門家たちは,彼らの現状を第1次世界大戦前の英独の指導権争いにたとえている.中国は,成長するにつれて,ますますエネルギーや物資の輸入に依存するようになった.それは,中国経済が海上封鎖されないために,海軍力の強化を必要とする,という意味になる.
しかし,こうした中国の防衛策は,近隣諸国やアメリカから見て,攻撃的な軍備拡大になる.アメリカとその同盟諸国が,防衛のために必要とみなすことが,中国から見て,攻撃的な中国「封じ込め」・包囲網に見える.
歴史的に新興大国が急速に登場するとき,既存の大国との軍事衝突が起きた.ドイツの台頭は2度の世界大戦になり,日本の台頭はアメリカとの戦争になった.ヨーロッパ諸国では,互いに戦争を繰り返したことで,戦争に倦み,ソ連からの脅威と,アメリカからの催促で,平和と協力を維持するために制度を創った.
しかし,アジアにはそうした制度がない.さらに,最近の緊張を高めている理由は,1.日本,韓国,中国に,以前よりも強くナショナリズムを主張する指導者たちが登場した.2.各国ともグローバル化の圧力で旧成長モデルが崩壊し,構造改革の強い必要性を感じている.3.アメリカの「アジア旋回」に対する疑念と挑戦が複雑な駆け引きを生じている.4.ドイツは第2次世界大戦時の侵略行為に対する責任を認め,戦後のEU建設に貢献することでヨーロッパの合意を得ている.しかし,アジアにはそのような合意がない.
アメリカと同盟諸国は永久に中国を宥和できるのか? 中国は必要な防衛力を整備し,アジアの地域的覇権を確立するのか? アジアの他の諸国は,米中間で合意された「フィンランド化」を受け入れるのか?
l 中国社会の変化
FP APRIL 25, 2014
China's
New Class Hierarchy: A Guide
BY RACHEL LU
中国が,マルクス・レーニン主義の教義に従う国家,共産主義の無階級社会だ,などと思うのは間違っている.1979年以降の市場改革は急速な成長を達成し,同時に,階層的な格差の大きい社会構造に変えた.人々が社会的地位を上昇させる可能性はすでに失われている.
Project Syndicate APR 30, 2014
Reimagining
China’s Urban Future
BERT HOFMAN
およそ1億人の中国人が極度の貧困状態に暮らしている.約億7500万人が1日2ドル以下で暮らしている.貧困の多くは田舎にあり,彼らは都市に出て,高い賃金や生活水準を実現することを望んでいる.
成長モデルの転換には時間がかかり,雇用を維持するために,政府は都市化や高速鉄道のようなインフラ投資を重視する,という時間がまだ続くだろう.より密集した,エネルギー効率の良い,都市を建設し,医療,教育,低所得者用の住宅を建設する.
l イギリスの「失われた10年」
The Guardian, Wednesday 30 April 2014
Economics
is too important to leave to the experts
Ha-Joon Chang
イギリスは,悪名高い日本の1990年代,「失われた10年」よりもひどい時代を生きているようだ.2008年の危機がもたらした人的なコストは成長率が示すよりも深刻だ.失業率は今も7%に近く,しかも,社会的給付を削って貧困層を苦しめている.
保守党と自由民主党の連立政権は,基本的にサッチャリズムを「大きな社会」というレトリックで焼き直したものだった.サッチャーは,第2次世界大戦後の混合経済体制や完全雇用という目標を破壊し,国営企業を民営化した.何よりも,その金融におけるビッグ・バン,規制緩和は金融資本主義の猛威を解き放ち,その後の混乱の中心をなした.
そうした政策を支持するために,さまざまな経済理論がモデルを提供した.また,サッチャーが権力を失った後も,ニュー・レイバーは修正したサッチャリズムを継承し,金融の破滅的な効果に無頓着であった.
しかし,経済理論というのは,物理学や化学のような意味の,真理を証明する学問ではない.すべての経済理論には政治的・倫理的な仮定が含まれている.もし経済理論が正しい政策を決定できるなら,民主主義は否定されてしまうだろう.経済政策は,専門的エコノミストたちに任せるには重要すぎる.
l ポーランドの10年
theguardian.com, Thursday 1 May 2014
How
the EU transformed Poland
Remi Adekoya
ポーランドが他の旧ソ連圏の10か国とともにEUに加盟して,10年が経つ.その中でもポーランドはEUから多くの利益を受けた.何よりも,経済を近代化する資金を得た.2007-2013年に,560億ポンドを得て,高速道路,スポーツ施設,下水システム,幼稚園・保育所などを建てた.
それに加えて600億ポンドが2014-2020年EU予算からワルシャワに与えられた.こうした利益はマーシャル・プランの約2倍に匹敵するものだ.さらにポーランドの農民たちは,ブラッセルからの農業補助金を受け取っている.それは近代史における最大の国家間財政移転の例である.
ポーランド経済は輸出ブームを経験し,そのGDPは,加盟前の1300億ポンドから,2013年に3050億ポンドに増大した.一人当たりGDPは,EU平均の44%から67%に上昇し,2020年までに74%になるだろう.
EU加盟後の繁栄は,人々を文明的な姿勢に変え,スキンヘッドに襲われる心配をすることなく,外国人が夜道を歩けるようになった.1990年代には,しばしばそのような事件が起きたのだ.ポーランド人は,自分や国家に自信を持つようになった.自分たちが永久に犠牲者であると思わなくなった.国家の喪失や征服によって歴史的に形成されたコンプレックスが,ゆっくりと解消されつつある.
保守派の評論家たちは,ポーランドの伝統が西側のニヒリズム的な大衆文化によって壊されている,と不満を述べる.世界で最もエスニックや文化の同質性が高い国であれば,こうした反応は予想されたことだ.しかし,社会の主流派はヨーロッパ基準を速やかに受け入れて適応した.
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The Economist April 19th 2014
Where China’s future will happen
Disillusioned office workers: China’s
losers
Special Report-China: Building the dream
Chinese tourists: Coming to a beach near
you
The Ukraine crisis: Boys from the
blackstuff
(コメント) 中国の成長モデルはどうなるのか? 共産党政府は「チャイナ・ドリーム」を唱え,都市化に必要なインフラ投資を新しい成長のエンジンとみなします.都市の出稼ぎ農民に平等な権利を認め,教育・医療・年金など,都市住民にとっての社会的給付を保障しなければなりません.それは社会不安を抑えるために必要なことですが,問題は,成長が減速する中で,そのコストをめぐって旧市民が抱く不安と不満です.トクヴィルがヨーロッパの貴族社会を批判したように,中国の政治的安定性が崩れることを,支配エリートは賢明にも心配しています.
ウクライナ危機で現れた,帰属不明の武装兵たちが,地域の親ロシア住民を利用して,重要拠点の占拠を進めます.
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IPEの想像力 5/5/14
龍谷大学の近くで,新しい中華料理店を見つけました.お弁当屋さんかな,と思ってお店の前に立つと,中に席もあって,学生たちがいました.お店の女性が,どうぞ入ってください,と声をかけてくれたので,じゃあ食べて帰ろうと思い,座ってメニューを見ました.
若い夫婦(?)が2人だけでやる店は,お客が来ると大忙しで,女性は飛び跳ねるように(もちろん,客が邪魔に感じない程度ですが)注文を取り,夫に伝えて,できた料理を運びます.てんてこ舞いですが,その様子がいかにも楽しくて,自分たちで店を開いたことが嬉しくてたまらない,という気持ちを大いに振りまいていました.後で,調理の合間に,自分で配膳している若い男性も,まだ学生のような雰囲気ですが,中国語なまり(?)の日本語で,丁寧に,仕事場の注文を取りに来たお客さんに説明していました.
2人とも笑顔が実にうれしそうで,ランチのセットもおいしく,来週もきっとここで食べよう,と思いました.もしかすると,2人は留学生として知り合い,この町で店を持ちたいと願ったのかな,と想像しました.
働くことを,これほど喜ぶ若者を,私は見たことが無いように思います.思い切り働いて,自分たちの稼ぎを得たら,それで家族を養う,故郷に仕送りし,自分たちの将来の夢を話し合う.その実現に向けて,もっと働くぞ,という意気込みが伝わります.
しかし,社会が少し豊かになれば,子供たちは大学から大企業(有名企業)への就職を望み(親たちから求められ),どうすれば就職できるのか,と早くから悩みます.学ぶことも,本を読むことも,それが就職に役立つのか,と問うわけです.
老いて,家も貯蓄もない可能性を思えば,社会保障改革でもめるだけの政治家たちより,懸命に働く若い夫婦の姿が頼もしく思われます.仕事を得て,自分たちの労働がその社会で正当な稼ぎとなることを幸せだと思える,そんな国に住めてよかった,と私は彼らに感じてほしいです.
「イケメン」の逆に,中国語では “diaosi” という言葉が流行っているそうです.都会で就職したのに,格好悪い,負け犬として,若者が自分を観るときの言葉です.The
Economistの記事に出てきて,初めて知りました.「蟻(あり)族」(http://globe.asahi.com/feature/110124/02_1.html)という言葉と同じように,中国社会のひずみを表す深刻な言葉です.
中国は,今も共産党による政治・経済システムの掌握と,毛沢東思想や共産主義の主張を保持していますが,同時に,新興の資本主義システムを肯定し,その雇用や所得水準を高めるダイナミズムに,社会的不満を吸収する効果を期待している,と思います.しかし,それには限界があるのです.支配エリートの子弟で,留学する機会を得る若い中国人たちは,所得格差や産業の寡占構造を心配するより,中国もアメリカや日本と同じだ,と考えます.
私たちは,共産主義のイデオロギーを理由に反対するのではなく,イギリスやアメリカ,日本と同様に,資本主義的な経済システムの破壊的影響を問題にする方が良いでしょう.国境に関係なく,現代社会の不安定さ,厳しい国際競争,技術変化によって広がる,不幸や疎外感を共有しているからです.
日本で貯蓄のある老人たちは,都市部のデパートに隣接するマンションに住み,外食や高級弁当を楽しむことができます.しかし,都市の姿として,老人と消費に偏る豊かさを,私は望ましいと思えません.デパートや投資銀行で働く若者たちは確かにいますが,他の働く世代の家族や子供たちはどこに暮らしているのでしょうか? 仕事の無い地方に逼塞するか,派遣労働者として都市下層の貧困を耐えているかもしれません.
若い2人の留学生が店を開き,必死に働く姿を,称賛するより恐れる者もいるでしょう.貧しい移民たちが,かばん一つでやって来て,小さな店を開き,私たちの仕事をどんどん奪って大きくなった,と悔しそうに語る,イギリスの老人の言葉を思い出します.
国境を越えて,社会は変化しています.中国でも,日本でも,成長モデルを転換し,社会の活力や一人一人の満足感,互いを受け入れる寛容さが共有できる時代を,もし私が学生なら,何より望み,そこに至る方策を学ぶでしょう.
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