前半から続く)


l  オバマ来日とアジア

NYT APRIL 20, 2014

Focusing America’s Attention on Asia

By CAROL GIACOMO

FT April 21, 2014

Asian diplomacy: Pivotal moment

By Richard McGregor and Jonathan Soble

オバマは国賓として東京に向かう.しかし,日米間の安全保障条約は,半世紀前のアジアの安全保障を基礎に作られている.両国の関係は,貿易から,戦争の理解まで,議論されねばならない問題を生じている.

安倍首相の顧問は,アメリカが世界の外交問題から後退している,と批判する.中国の攻撃的な姿勢に対して,シリアやウクライナなど,アメリカの反応が不満なのだ.アメリカのパワーが支配的な時代は終わった.

日本の側にも地殻変動が起きている.日本の政治システムが安倍によって旋回しつつあることだ.非核3原則のような,戦後の自制的な日本の防衛政策は転換された.日本は,中国の台頭に刺激されて,アメリカへの依存だけでは安心できなくなっている.

一方では,アメリカとの相互の安全保障同盟を深めること.他方では,自ら核武装して,アメリカの同盟関係から離脱すること,を議論し始めた.中国が「防空識別圏」を一方的に宣言したとき,アメリカの反応は日本政府を怒らせた.中国がニューヨークやワシントンを攻撃できる核ミサイルを持つとき,日本への攻撃に対して,アメリカが反撃することを信用できるか,と日本のある防衛関係者は指摘する.

アメリカ政府の側は,靖国参拝,従軍慰安婦,など,安倍がアジアで不要な摩擦を生じていることに不満を持っている.韓国の朴クネ大統領は,歴史問題は安全保障と同じであることに,アメリカは気づくのが遅れた,という.中国政府はこの機会をとらえ,韓国とともに日本の軍国主義を非難する.

日米両政府はTPPの合意を重要な成果として残したい.しかし,安倍の発言はアメリカの共和党にだけ向いており,民主党を含む議会の支持を得ていない.Joseph Nyeは,改憲など,安倍のタカ派の主張が,平和主義の国民や政治家の広い支持を得たものではない,と考える.しかし,まるで1930年代を再現したかのような安倍の愚かな言動には,中国の宣伝を助けるような間違った効果がある,とアメリカに不信を生じている.

今,オバマが日本で不安を高めることは,世論を変える重大な失策になる.

FT April 21, 2014

Obama’s Asia policy is distracted and ambiguous

Gideon Rachman

オバマ政権の「アジア旋回」は間違っていたのか? 中東やヨーロッパを無視して,アジアの時代という常識を借りただけの浅薄な発想か? シリア内戦や,ロシアのクリミア併合はそれを示した,と反対派は主張する.しかし,長期的に見て,アメリカに挑戦できる唯一の国であり,世界最大の経済国になる中国の台頭を扱うために,戦略がアメリカにとって最も重要だ.

中国をどのようにして国際秩序に参加させるのか,具体的な政策が欠けている.それが軍事面に偏っていることは,「封じ込め」であるという反発を生じている.しかし,中国の支配する地域内の衛星国にされる,という不安を感じている諸国にとって,アメリカが中国に軍事的な地抗する姿勢は欠かせない.

オバマの外交は,さかさまのセオドア・ルーズベルトである.「優しく語り,大きな棍棒を持つ」ではなく,「声高に語り,小さな棍棒しかない.」 TPP交渉でも,アジア諸国が第一の貿易相手にしている中国を排除しているのは,奇妙でしかない.

Project Syndicate APR 21, 2014

The Second Opening of Japan

SHINZO ABE

日本は開放的な,アジアの成長を動かすチャンネルになる.アジアだけでなく,オーストラリアやEUともEPAを結び,アメリカともTPPで合意したい.日本は特区を設けて革新を促し,外国人の企業重役を増やし,女性の活躍する社会になる.日本は平和にも積極的に貢献する.

ようこそ,オバマ大統領.

WP Monday, April 21

Obama is on the right course with his reorientation toward Asia

By Tom Donilon

安全保障から通商条約まで,中国との建設的な関係も含めて,アメリカは21世紀の世界経済を動かすルールを描こうとしている.安定性,経済的な開放,紛争の平和的な解決,そして人権重視という,アメリカがアジアに対して描くルールこそ,中国の台頭を受け入れる正しい環境である.オバマの歴訪はそれを準備するものだ.

FP APRIL 21, 2014

Don't Be a Menace to South (China Sea)

BY JIM STEINBERG, MIKE O'HANLON

オバマ大統領のアジア諸国(日本,韓国,マレーシア,フィリピン)訪問は,アメリカ外交のアジア旋回だけでなく,ウクライナ危機にも関係している.アメリカはこの地域の友好国や同盟国に,台頭する中国の一方的行動を,どのように抑えることができると示すのか?

アジア旋回には2つの意味がある.1.アメリカは東アジアの平和と安定性に長期的に関与する.2.アメリカは台頭する中国と,協力的,建設的な関係を築く.

中国が成長すれば,不可避的に,関係が不安定化することを避ける戦略が必要だ.アジアの条件は,ウクライナよりも複雑だ.アメリカはウクライナと条約を結んでいないし,ロシアは明らかにウクライナの主権を侵した.アメリカが明確に日本やフィリピンの立場を支持すれば,それは中国の冒険主義的な武力行使を誘発するかもしれない.米中間の対決姿勢が,中国を近隣諸国との外交交渉に向かわせるとも言えない.しかも,そうした冷戦状態を,中国との経済的な相互依存関係が深まっている,アメリカの同盟諸国は好まない.

東アジアの地殻変動を促す,包括的なアプローチが求められる.領土紛争を孤立して扱うのではなく,台頭する中国を扱う基本的な姿勢を確立することだ.習近平主席は,それを「新しい大国間関係」と呼んだ.しかし,どのように信頼を築くのか,その中身を欠いている.不確実な状況で最悪の事態を予測し,構造することは,それ(戦争)を実現してしまう.

アメリカの戦略は「決断と確認」である.双方が相手の重要な利害に関する決断を認めていなければならない.それを誤解することが戦争を招いた.アメリカが安保条約に従い,尖閣諸島をめぐる日本の支援を約束することは,言葉と行動において,重要だ.それがただちに戦争を意味することはないが,レッド・ラインを超えたときのコストを双方は意識しなければならない.

他方で,アメリカと同盟諸国は,中国が責任ある行動を取り,繁栄と安全保障を求める点において,邪魔する意図はない,と明確にする必要がある.双方が関係を改善する目的で結ぶさまざまな分野の条約を通じて,信頼を醸成することができる.中国は軍備の増強を減速すること,アメリカはAir-Sea Battleの概念を,軍事的な粉砕という攻撃的な性格から,より包括的で,防衛的な概念に換えるべきである.そして,朝鮮半島の危機に関する介入に関して合意し,不要な対立のエスカレーションを回避する.

2014-04-21 (China Daily)

Abe's irresponsible schemes

Global Times | 2014-4-21

Obama tackles diplomatic tangles in Tokyo

By Da Zhigang

FT April 22, 2014

US and Japan step up tariff deal talks

By Shawn Donnan in London, James Politi in Washington and Jonathan Soble in Tokyo

FT April 22, 2014

High-stakes Asian tour for Obama

Bloomberg 2 APR 22, 2014

Another Pivot to Asia

By The Editors

FT April 23, 2014

The sushi summit: Obama in Japan

Lindsay Whipp

FT April 23, 2014

Obama’s Asian allies need to give something back

By Clyde Prestowitz

要するに,オバマ大統領は,最近,救出を拒んだシリア,アフガニスタン,ウクライナと違って,日本,韓国,フィリピン,マレーシアは重要だ,と説得するのか? それは正しいのか?

なぜなら,TPPを通じてわれわれの経済は一体化するのだから?

むしろ逆である.アメリカ第7艦隊は横浜に拠点を置き,韓国には3万人,日本には5万人のアメリカ軍が駐留している.しかもアメリカ軍は彼らを守るが,彼らはアメリカを守らない.なぜワシントンはこんな同盟諸国を必要とするのか? 日本と韓国は互いに嫌っており,アメリカを介して対話するだけだ.フィリピンは弱すぎる.マレーシアは戦略的な価値をほとんど共有していない.彼らは経済を重商主義的な政策に依存しており,保護主義と通貨操作によってアメリカに対する貿易黒字をため込んでいる.

何のためにアメリカが彼らの防衛を担うのか? その端的な理由は,中国の台頭である.

「アジア旋回」とは奇妙な呼び名である.それは中国への依存,投資,技術移転を続けるための婉曲話法である.実際,中国にはアメリカを威嚇する意図はない.中国はアメリカを侵略しないし,アメリカ経済の混乱も望まない.世界に危険なイデオロギーを輸出するわけでもない.

さらに,アジア諸国はアメリカに中国に対する軍事的な対抗を求めているけれど,彼ら自身は可能な限り急速に中国との貿易や投資を増やしている.戦略家たちが言うほど,TPPがアメリカに大きな利益をもたらす,という予測はない(2025年までにGDP0.5%).

アメリカが,日本の尖閣諸島紛争や,フィリピンの紛争を支援して,中国との軍事衝突に入るだろうか? 答えは,No,だ.尖閣のためにアメリカ兵が死ぬことは,ウクライナのために死ぬほど重要ではない.

大統領はアジアで,自国を防衛してくれるのか,と問われたら問い返すべきだ.あなたたちはアメリカに何をしてくれるのか?

NYT APRIL 23, 2014

Negotiating Asia’s Troubled Waters

By MICHAEL J. GREEN

アメリカは,尖閣諸島で日本を明確に支持しなければならない.これは島の領有権(魚や天然ガス),ナショナリズムだけでなく,アメリカのアジア戦略を中国が試すものである.2年前,オバマ政権はフィリピンを明確に支持せず,中国に島the Scarborough Shoalを奪われて,後退した.

軍事衝突を回避する最善の道を安倍政権は中国に示している.まず,軍事当局者の直接対話で信頼を醸成する.船舶や航空機の情報を交換する.ホットラインを設置する.しかし中国は受け入れず,安倍首相を軍国主義者と非難するだけで,首脳会談の前に,日本側が根本的に姿勢を転換せよ,という.

日米2国間で新しい防衛ガイドラインに合意し,相互の防衛義務を明確にすることは重要だ.かつて議論された,東シナ海における日中間での資源共同開発を,復活させることも有益だ.もしアメリカが同盟国に対して強制されないことを約束するなら,外交交渉による解決のための時間が与えられる.

NYT APRIL 23, 2014

America Should Step Back from the East China Sea Dispute

By WU XINBO

NYT APRIL 23, 2014

Obama Arrives in Asia as Disasters Complicate Mission

By MARK LANDLER

FP APRIL 23, 2014

The Pivot to Nothing

BY KORI SCHAKE APRIL 23, 2014

中身のないTom Donilonの主張は,アメリカのアジアにおけるリバランス外交を失敗させるものだ.5年前にヒラリー・クリントンが1961年以来初めてアジアを訪問した,と強調して書く程度しか,アジア旋回には何の進展もなかったのだ.

オバマ外交の欠陥が顕著に示されている.1.これは前政権から継承された方針でしかない.2.アジア諸国は,オーストラリアを含めて,アメリカよりも中国との関係を重視している.米中間で選択させることは好まれない.3.外交は,頻繁に訪問することで成果をもたらすものではない.4.既存秩序の軽視.5.同盟相手国の軽視.6.有効な選択肢の不在.

FP APRIL 23, 2014

Pay No Attention to that Panda Behind the Curtain

BY STEPHEN WALT

アメリカが約束を守るのか,アジア諸国は疑っている.オバマは訪問する国々で質問されるだろう.アメリカが何をしても,アジア諸国は心配する.

しかし,率直に言って,そんな質問はばかげていると思う.アメリカはまだ将来も世界最強の国である.アジアの勢力均衡が失われることを心配するのは早すぎる.しかも,アジア諸国がそれを疑うなら,なぜ自分たちで軍備を拡大しないのか? それは彼らの軽武装に対する言い訳でしかない.

アメリカは自国の利益に従ってアジアの勢力均衡を維持しているのであって,彼らがそれを心配する必要などない.アジアで中国が急速に軍事力を強化することは,アメリカの利益を損なう.なぜなら論理的に考えて,強力な中国はアジアの勢力均衡を変えて,他の分野でも独自に主張するだろうし,他の地域における勢力均衡を破壊しようとする.それはアメリカの利益にならないのだ.アジアにおいて中国の力が強くなり過ぎないようにアメリカは行動するのであって,それを中国の指導者たちが「封じ込め」と思うのは正しい.

さらに,もしアメリカの関与を疑うなら,アジア諸国はアメリカの安全保障に頼らず,独自に核武装するだろう.それは核の拡散を抑えるアメリカの今の方針から否定されることだ.

だからオバマは,明確に,自国の利益に従って,アメリカはアジアの勢力均衡を維持するために必ず行動する,と説明することができる.それを疑う必要はない.しかし,アジア諸国は文句を言い続けるだろう.アメリカが他地域で介入すれば,アジアを忘れている,と言い,アメリカがアジアで軍事力を強化すれば,新しい冷戦を煽っている,と言う.

オバマは,アメリカがアジアの平和と安定を保ち,そこでは全ての国が豊かになれるし,地政学的な発想は前世紀のものだ,と主張する.しかし,少し視点を変えて,さらに彼らに問う方が良い,と私は思う.アジアの勢力均衡を維持したいなら,自分たちでもっと支出したらどうか? そのコストは甚大であり,アメリカとしてはもっと信頼できる軍備を持つ同盟諸国のネットワークを指導したい,と.

アジア諸国は,アメリカと自分たちのために,何をするのか?

 (China Daily) 2014-04-23

US should not be led astray

FT April 24, 2014

Barack Obama’s false choice between war-­war and jaw-­jaw

Philip Stephens

Project Syndicate APR 24, 2014

Alarm Bells in Asia

BRAHMA CHELLANEY

FP APRIL 24, 2014

I Come Bearing … Reassurance

BY MARCO RUBIO

FP APRIL 24, 2014

Who's Down with TPP?

BY BRUCE STOKES

国民の多数はTTPTTIPを支持している.しかし議会は分裂し,必ずしも多数が支持しない.

Bloomberg APR 24, 2014

What Obama and Abe Didn't Talk About

William Pesek

(China Daily) 2014-04-24

Nothing peaceful about TPP talks

By Xu Changwen


l  オバマ外交

FT April 20, 2014

How Obama lost friends and influence in the Brics

Edward Luce

NYT APRIL 21, 2014

An Odd Hostility in the Americas

Roger Cohen


l  ブラジル・ワールド・カップ

FT April 20, 2014

The beautiful game exposes Brazil’s ugly flaws

By MishaGlenny


l  ブレジンスキー

FT April 20, 2014

‘Zbig’, by Andrzej Lubowski; ‘The Strategy And Statecraft of Zbigniew Brzezinski’, by Charles Gati

Edward Luce

Henry Kissingerのライバルであり,カーター政権でタカ派の外交顧問を務めたZbigniew Brzezinskiに関する2冊の紹介です.ニクソンとレーガンに比べて,カーターの外交は混迷期と見なされている.それは正しくない.ソ連のワルシャワ条約がナショナリズムによって崩壊することを,Brzezinskiは予想した.


l  ユーロ圏の危機克服

FT April 21, 2014

Securitised debt could give Europe’s economy the kiss of life

By Jacques de Larosière

金融危機後の規制強化で融資が減っている.これは必要なことだ.しかし,金融逼迫は,有望な投資を行う企業にとって抑制を意味し,ヨーロッパの景気回復を圧迫している.

企業の発行する債券に投資するよう,投資家たち信頼を回復できるような基準を示し,ECBや開発銀行が保証を供与するべきだ.

NYT APRIL 20, 2014

Sweden Turns Japanese

Paul Krugman

3年前,金融危機を回避する優等生であったスウェーデンが,今や,日本と同じデフレに苦しむ危険に近づいている.スウェーデンは,輸出が落ち込んだけれどすぐに回復し,社会福祉が消費の落ち込みを回避し,銀行規制も正しかった.他の国と違ってユーロ圏でなかったから,金融政策には弾力性があった.

失業率が高いことを無視して,インフレ率が低いにもかかわらず,中央銀行であるthe Riksbankが愚かにも金利を上げたからだ.彼らはsadomonetarismに冒されたのだ.金融政策の専門家で,日本病についても優れた研究者であるLars Svenssonが,副総裁として,金利引き上げに反対した.しかし,彼は孤立し,sadomonetarismが勝った.

Sadomonetarismとは,金融政策の担当者や批評家が共有する,低金利やイージー・マネーを本能的に激しく嫌う態度である.失業率が高くても,インフレが低くても,関係ない.彼らの説明は,状況に応じて合理的なように見えるが,状況が変化しても,政策を変えずに説明を変えて,高金利を好み続ける.幸いアメリカ連銀は感染していないが,しばしば攻撃を受けている.

金融関係者には,貧しい債務者より裕福な債権者の利益を守る気持ちがあり,金融政策担当者たちは痛みを与えることのできる「タフさ」を競い合っている.

NYT APRIL 21, 2014

Euro-Zone Fiscal Colonialism

By PHILIPPE LEGRAIN

今もなお,ユーロ圏の銀行は危機にある.その処理メカニズムは複雑で機能せず,各国政府の拒否権に妨げられる.

金融市場の活気にもかかわらず,危機は続いており,南欧経済には死滅した銀行がいっぱいだ.賃金を削って,巨大な債務に耐え,増税と公共サービスの不足に苦しむ.多くの人々は未来への希望を失った.

危機の主要な原因は,ドイツやフランスの銀行がスペインやアイルランドの住宅所有者,ポルトガルの消費者,ギリシャ政府に対して,無思慮に貸したことだ.しかし,債務国の国民は銀行にすべての債務を返済するよう求められた.独仏の銀行が,ユーロ圏市民よりも優先されたのだ.

特にドイツは,銀行の不良債権を認めようとしない.破綻銀行を管理することを強く嫌うドイツ政府は,ECB,欧州委員会とともに,南欧の財政的な浪費を非難した.彼らが強制した財政緊縮策こそ,ヨーロッパ経済を深刻な不況にし,失業者を増やし,財政不安を広めたのだ.ユーロ圏は解体寸前になったが,ECBの介入で何とか生き延びた.

20105月,債務を免除するのではなく,独仏の銀行を救済するために,支払い不能のギリシャに対して融資を行った.この決定がユーロ圏を損なった.それは,他国の政府を救済しない,というユーロ合意の法的基礎を破壊した.メルケルはそれを知っているから,各国の財政を管理して健全化する,と南欧救済を嫌うドイツ国民に強調した.通貨統合が実現したはずの,財政的な自由は失われ,各国は財政的拘束衣に押し込まれた.

それは政治的にも有害であった.どこか遠くの,選挙で決めたこともない,だれにも責任を負わないブラッセルの官僚たちが,財政に関する各国有権者の選択を否定するのである.こうした民主主義の否定は,人々の心をEUの制度から離反させた.

ヨーロッパは団結して巨大銀行を制圧するべきだった.逆に,ユーロ圏は債権国と債務国に分断され,銀行の不良債権を返済することが政府間の約束になった.EUは,借金取りの代行機関になったのだ.

この金融混乱を抜け出すには,銀行を再編し,負担できないような債務は免除するべきだ.より多くの投資,大胆な改革で,生産性を高める.各国の財政は弾力性を回復し,市場の信頼とデフォルトの可能性がそれを制限する.他国を救済しない原則は回復し,政府債務の再編はルールによって行う.ECBは,最後の貸し手として,政府の支払が市場で止まらないよう保証する.

長期的には,ユーロ圏の財務当局が成立し,既存の政策や制度は破壊されるだろう.「ユーロの春」が来て,経済と政治はよみがえる.

Bloomberg 4 APR 23, 2014

Europe Still Has a Mountain of Debt

Mohamed A. El-Erian

SPIEGEL ONLINE 04/23/2014

Weapon of Last Resort

ECB Considers Possible Deflation Measures

By Christian Reiermann and Anne Seith

FT April 24, 2014

ECB QE: real prospect or fantasy game?

By Ralph Atkins in London

Project Syndicate APR 24, 2014

Europe’s Next Moral Hazard

HANS-WERNER SINN

債務国の救済によって安定化を得た後,モラル・ハザードの局面に入る.


l  ヨーロッパ議会

FT April 21, 2014

Restoring trust in the European Parliament


FT April 22, 2014

Beware the global impact of a Scottish resource grab

By Paul Collier


l  金融に囚われた国家

Syndicate APR 22, 2014

The Democratic Disruption of Finance

MOHAMED A. EL-ERIAN

Project Syndicate APR 22, 2014

The Future of the Captured State

SIMON JOHNSON


l  ブレアの中東外交

theguardian.com, Wednesday 23 April 2014

Tony Blair's Middle East speech should prick consciences and spur action

John McTernan

Bloomberg APR 23, 2014

What Blair Gets Wrong on Islamism

By Marc Champion

theguardian.com, Thursday 24 April 2014

The hypocrisy of Tony Blair's Middle East vision

Arun Kundnani

ブレアの最新の演説は,イスラム主義との戦いのために,中東における専制を擁護するものだ.それは極端な単純化である.中東で民主的な体制を確立できるのは国内の勢力だけであり,彼らの民主主義は,ブレアの言う「オープン・エコノミー」,ネオリベラリズム,と矛盾する.


l  ラナ・プラザ崩壊から1

FT April 23, 2014

Survivors struggle a year after Bangladesh factory collapse

By Amy Kazmin in New Delhi and Joseph Allchin in Savar, Bangladesh

1年前,バングラデシュの衣服関係の工場が入っていた建物the Rana Plazaが崩壊し,1100人以上が死亡した,瓦礫の中から助け出された2400人の労働者たちも,多くが心身に障害を負って苦しんでいる.彼らは食糧を買うにも,家賃を支払うにも,債務や医療費の支払にも困っている.

衣服生産の下請けを利用していた欧米企業は,ILOも参加する被災者の救済基金the Rana Plaza Arrangementを設立することに合意した.それは民間企業による,画期的な,多国間の救済制度である.しかし,Walmart, Inditex, Kik, Loblaw and Mangoなど,西側企業の多くは50万ドルから100万ドルを出資しただけで,十分な資金が集まっていない.

自発的に多くの寄付を行い,被災者を助ける民間援助組織に寄付する企業もある.しかし,寄付と救済基金は別物だ.災害に遭った人々は,合意に基づき救済される資格がある.それは彼らの生活を助ける民間慈善団体ではない.

NYT APRIL 23, 2014

Bangladesh’s Chance to Get It Right

By AMY YEE

Chittagongの造船所Western Marineはドイツやデンマークからも船の注文を受けていた.ドイツの援助機関GIZが事故の多さに注目し,詳しい調査を依頼した.その後,現場の安全基準や装備を改善し,事故は99%も減った.毎月1000件から,10件になった.

Rana Plazaの教訓も,衣服工場に安全基準を学ばせ,それを実行するように指導・監視する制度と検査官を確立・養成することである.バングラデシュには,中国に次いで,多くの衣服工場があり,世界中に衣服を輸出している.多くの労働者たちがここで働き,貧困の解消に役立っている.事故のせいで注文が減っても,また安全基準を厳しくしても,もし工場がなくなったら,彼らは生きて行けない.

theguardian.com, Thursday 24 April 2014

I boycotted Primark after the tragedy of Rana Plaza for a more ethical wardrobe

Alannah Francis


Project Syndicate APR 23, 2014

The Gain in Spain

MICHAEL SPENCE

NYT APRIL 24, 2014

From Pericles to Potami

Nikos Konstandaras


l  タイ政治

FT April 24, 2014

Foreboding grows as battle for power intensifies in Thailand

By Michael Peel in Bangkok


l  アフリカの道

NYT APRIL 24, 2014

Africa’s Path to Prosperity

Murithi Mutiga

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The Economist April 12th 2014

Leviathan of last resort

Essay: The slumps that shaped modern finance

China’s future: Enter the Chinese NGO

Angola: Still much too oily

Ukraine and Russia: Wearily back to the battlefield

(コメント) 金融危機が現在のような金融システムを創った.金融の本質は,優れた性質と危険な性質を併せ持っているために,危機を経験するたびに国家の保護や介入が増えて,まったく意図しない歪んだ制度になっている,と記事は指摘します.

5つの金融危機(17921825185719071929)の簡潔な説明と金融システムの変化は,とても有益だと思いました.

中国のNGOが,共産党政府のできないことを公的部門に代わって実現する可能性が面白いです.他方,アンゴラ経済の急激な成長や,ロシアの介入によって加速するウクライナの不安定化を,政治的に解決するためキエフが助けを求めるのはオリガークの連携政治であることも深刻です.

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IPEの想像力 4/28/14

休日ですから,DVDを借りて『リトル・ダンサー』を観ました.ボクシングを習うために体育館へ通う少年が,バレエに魅せられる話です.なぜか,映画の背景はサッチャー首相による炭鉱労働者の弾圧であり,同性愛の友人であり,目標を見失った大人たちです.

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リアリストの主張は,国際関係と国内政治で異なっている,と思いました.どちらも価値・道徳観やユートピアニズムを排し,軍事力による優位,権力の掌握を目的に冷静な計算を行い,必要であれば価値・道徳観を無視して,敵とも手を組みます.

そこに差があると思ったのは,ブレアに対するクンナニArun Kundnaniの批判を読んだときです.ブレアはアメリカを支持し,ブッシュ政権と協力して,イラク侵攻に最初から加わりました.ネオコンの思想を信じてはいませんでしたが,アメリカが世界政治の頂点であったから利用した(された)のです.サダム・フセインを権力の座から降ろすことは,地域から深刻な脅威を取り除き,イラク国民にとっても良いことだ,と確信していた.少なくとも,ブレアは回顧録でそう説明します.

中東の民主化は,労働党の目指す人権擁護や貧困解消にも好ましい条件である.フセインのような独裁者を減らすことは,核や毒ガスのような大量破壊兵器の利用を許さず,そのために侵攻したのは,ブレアの唱える人道主義的な国際介入でした.

しかしクンナニは,ブレアがネオコンの愚かな戦争に加担しただけでなく,その目標を捨てて,今は独裁者と手を組むことを唱えている,と批判します.ブレアの中で重要性が変化したのです.独裁者が人権を無視し,国民を殺したり,飢えさせたりしているとしても,イスラム過激派との戦いでは重要な同盟者である,とブレアは考えます.彼ら(既存の権力者)の協力なしに,イスラム圏内部の闘争で,過激派を抑えることはできず,将来,穏健派が開放的な民主体制を築くこともできない.だから,専制的な王朝や独裁体制(シリアのアサド,ルワンダのカガメ)とも,西側は手を組むべきだ,と主張します.

そうだろうか? 中東やイスラム圏で民主化が成功するとしたら,それは外から軍事的に強制したからではなく,人々が民主化に参加し,自分たちの政府を機能させるまでに成熟したからです.ブレアがイスラム主義を極端に単純な仕方で2分割したことも,彼が支持する「オープン・エコノミー」(ネオリベラリズムの政策)も,民主化を成功に導く自生的な社会の発展を損なう点で間違っている,とクンナニは批判します.

国際関係では,価値や道徳を無視するリアリストが,国内政治では権力を正当化するために,ナショナリズムや理想を強調します.そして,ブレアが示すように,この違いは時期によって入れ替わり,権力の掌握が,その理想や経済政策の目標と矛盾します.

リアリストは,国際関係において理想を持ちません.他国に政策も強制しません.軍事的な優位と安全保障のために,だれとでも手を組みます.それをためらっていては,滅ぼされるリスクがあるからです.他方,国内では権力の掌握が,その理想や政策を実現するために必要です.リアリストは権力政治を勝ち抜いて,政敵を圧倒し,批判を許しません.そうして初めて,自分の理念や正しいと思う政策が思いのままに実現できる自由を得るのです.

もちろん,私はブレアだけでなく,プーチンやオバマ,安倍晋三のことを想いました.彼らは権力政治の世界を生きるプロです.私たちの常識や価値観では判断できません.そして,彼らが生きる現実は,彼らの主張が何であれ,冷徹なものです.

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『リトル・ダンサー』で,ビリーがバレエ・ダンサーとなって輝くのは,むしろ彼を支えた大人たちの生きる世界が厳しい地獄であったからです.母親は早く亡くなり,父親はストライキが続く中で子供たちに希望を示してやれず,兄は労組の活動家として逮捕されます.自分たちは終わりだが,ビリーの希望をかなえてやりたい,と父はスト破りを考え,兄に止められます.

お前なんか負け犬だ,と叫ぶビリーを,炭鉱町ダーラムのバレエ教師は王立バレエ学校に推薦しました.ビリーが父親に,ロンドンはどんな街か? と尋ねると,父は知らない,と応えます.行ったことがない.炭鉱はないから,と.豪華なバレエ学校の試験官たちは,最後に父親に言います.ストライキを応援します,と.

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