前半から続く)


l  ルワンダ虐殺から20

The Guardian, Friday 4 April 2014

Twenty years after the genocide, we have learnt nothing from Rwanda

Linda Melvern

1994年に,なぜ切迫する事態を知っていながら各国は行動しなかったのか? 責任ある各国がこの問題について究明したことはない.平和維持軍は増強されず,資源は足りないまま,ジェノサイドが始まった.それは今も変わっていない.

NYT APRIL 4, 2014

Following Orders in Rwanda

By JEAN-MARIE KAMATALI

なぜ隣人を殺害したのか? それは,たとえ邪悪なものでも,上からの命令には従う,という文化であった.

FP APRIL 4, 2014

Violence Begets Violence

BY LAUREN WOLFE

国連軍によるFDLRの掃討作戦は,今後の治安悪化と,彼らによる暴力を激化させた.ルワンダ政府はFDLRに対する武装解除・投降作戦を信用しなかった.

FP APRIL 4, 2014

If We Can Let Syria Burn, Have We Learned Anything at All from Rwanda?

BY JAMES TRAUB APRIL 4, 2014

今,ルワンダの虐殺を語るとき,われわれが考えるのは20年前の事件ではなく,現在のカガメPaul Kagame大統領によるルワンダ内外における反対派の殺害,コンゴの治安悪化である.

しかし,カガメの悪事によって,この20年間にルワンダ国民が達成した素晴らしい成果を見失ってはならない.虐殺を止めた後,カガメの組織した軍と政府は憎悪に駆られた報復が起きることを阻止した.カガメはフツ族に対して和解を求め,バルカンで起きたよりも濃密な虐殺でありながら,その加害者であったツチ族の社会的地位を,より多く守った.

ルワンダの虐殺の後,国際社会には,自国において住民の権利を保護しない政府に代わって,国際社会が保護する責任を認める“R2Presponsibility to protect)”が国連安保理で決議された.虐殺を阻止する迅速な国際介入について制度的な基礎を与えたのである.

しかし,シリアの虐殺を阻止する行動を世界は取らなかった.ルワンダの虐殺はあまりにも早く広まった.しかし,シリアの虐殺は,政府と国軍によるものであり,数年に及んでいる.ビル・クリントンも,ボスニアへの介入を認めなかった.1993年のソマリア介入が失敗に終わってから,彼は介入失敗の政治的コストを恐れたのだ.交渉による解決やヨーロッパの行動を求めたが,それは成功しなかった.オバマ大統領も,繰り返し,シリア介入を求める政治家や政権内部の声を拒んだ.

これが虐殺を非難する委員会を設置し,スーザン・ライスやサマンサ・パワーのような人道主義的積極論者を政府に加えた大統領の選択である.ルワンダの教訓は,ワシントンで,行動に懐疑的な大統領によって拒まれている.あらゆる行動計画には弱点があり,アメリカの世論はそれを支持しないからだ.

われわれには,絶望的な事態を変えるために行動することが,人道的な観点だけでなく,アメリカの利益である,と国民に説明する勇気のある大統領が必要だ.

The Guardian, Sunday 6 April 2014

20 years after the genocide, Rwanda is a beacon of hope

Tony Blair

19947月,ルワンダの国家は抜け殻だった.約80万人が殺害された.数百万人が難民となった.制度も,政府も,信頼も破壊された.絶望的な貧困にあって,熟練労働者も資源もなく,人々には道義的な規範が失われ,分裂していた.

最大の課題はエスニック紛争が再発するのを防ぐことであった.治安と安定性が何より重視された.人道支援は緩やかに始まったが加速し,健康状態や教育,所得を改善した.繁栄を共有することで人々を統一できた.彼らはフツ族でもツチ族でもなく,ルワンダの新しい国民としてアイデンティティを築いた.

確かに援助は重要であった.しかし,援助を効果的に利用するには有能な政府が必要だった.国際的な基準から見て,ルワンダのGacacaは被告を裁く場所ではなかった.しかし,裁判所や弁護士はきわめて不足し,虐殺の加害者と被害者が隣人として住む現実の中で,彼らの悲憤を和らげ,処罰し,正義を回復するシステムが必要だった.

失われた人々の命を記憶しなければならない.政府は国家建設の歴史的な取り組みを続けねばならない.彼らの選択を理解し,支援するべきだ.

FT April 6, 2014

Rwandan genocide: Lingering legacy

By Katrina Manson

FT April 6, 2014

Rwanda’s recovery must be secured

FT April 7, 2014

What we must learn from the horrors of Rwanda

David Miliband

ルワンダでは毎年,虐殺を記念し,その教訓を学ぶ行事がある.今年取り上げられたのは4つのテーマであった.1.難民キャンプのパラドックス.2.紛争を拡大する地域ダイナミズム.3.紛争後の社会を再建する困難.4.緊急事態と開発支援との区別が消滅したこと.

世界の貧困は,その半分が紛争地域と国家の脆弱さに関連している.ホロコーストについて主張されたことは,ルワンダでも言える.もし私たちが救わなければ,歴史そのものが滅んでしまう.

Project Syndicate APR 7, 2014

Rwanda’s Rebirth

LOUISE MUSHIKIWABO

FP APRIL 7, 2014

'They Just Stood Watching'

BY COLUM LYNCH

FP APRIL 7, 2014

Never Again” Isn’t Enough

BY JONAS CLAES

FP APRIL 8, 2014

'Now We Will Kill You'

BY COLUM LYNCH

FP APRIL 9, 2014

A Mission That Was Set Up to Fail

BY COLUM LYNCH


l  ロシアと対峙する

Project Syndicate APR 4, 2014

The Yalta Temptation

YULIYA TYMOSHENKO

クリミアがロシア軍によって分離され,併合されてから,われわれは「まやかしの平和」を生きている.ロシアとの平和的な解決を西側が望むのは理解できるが,「連邦制」はウクライナの東部と南部を実質的にロシアが併合するための見せ掛けにすぎない.

プーチンは1945年のヤルタ会談を求めている.そこではスターリンが,チャーチルとルーズベルトに,ソ連によるヨーロッパの東半分を分離・支配する計画に同意させたのだ.そして,その後の半世紀を奴隷状態にした.

FP APRIL 4, 2014

War is Coming

BY MIKHEIL SAAKASHVILI

NYT APRIL 6, 2014

Putin's Czarist Folly

By ROBERT SERVICE

theguardian.com, Monday 7 April 2014

It's not Russia that is destabilising Ukraine

Sergei Lavrov

SPIEGEL ONLINE 04/07/2014

Searching for Deterrence

Ukraine Crisis Exposes Gaps Between Berlin and NATO

By SPIEGEL Staff

ロシアとの協力は終わり,敵対関係が始まった.次に準備されるのは軍事的な抑止力だ.これまで冷戦終結とワルシャワ条約体制の解体は,軍備の解体過程であった.その方針が逆転する.

ドイツにとって,第3の道はあるのか?

NYT APRIL 7, 2014

A Familiar Script in Ukraine

By THE EDITORIAL BOARD

ウクライナ東部,Donetsk, Kharkiv or Luhanskで起きている緊張状態はクリミアのときと非常によく似ている.事態が暴力的な衝突になれば,プーチンが約束したような,ロシア人の保護に動くかもしれない.しかし,同じような結果にしてはならない.ヨーロッパ諸国はすでにアメリカが求めたように,企業と銀行を含む厳しい制裁を一致して発動しなければならない.

FT April 8, 2014

A glimpse inside the Kremlin puppetmaster’s mind

By Peter Pomerantsev

FT April 8, 2014

Putin bares his teeth at Ukraine

FP APRIL 8, 2014

You Can't Beat Putin, Because He's Already Won

BY DANIEL ALTMAN

プーチンはロシアを再び偉大で強大な国家にしたかった.それは彼を偉大で強力な指導者として記録させることになる.しかし,現状を変えるために大きなリスクは冒せなかった.ロシアは弱い.そこで,シンプルな3段論法を採用した.

1.好機を選ぶ.プーチンは,自分がよく知っている,勝つ状況でだけ戦った.2.現状維持を遂げる.3.敵に現状の変更を,彼らの損失を認めさせる.ウクライナの危機は,この意味で,プーチンの望むものだった.彼の支配や影響圏を拡大した.

ウクライナに金融的な好条件でロシアとの合意を求めたが,それを拒めばウクライナの状況は悪化し,不安定化する.ロシア系住民は政府に抗議し始めた.プーチンが望んだように,好機を利用してロシアはクリミアを分離,併合した.西側は軍事的対立を回避するとわかっていた.彼らはクリミアの現状変更を受け入れた.

ウクライナ東部で,同じことが起きている.西側は,ロシアが次第に交渉に応じる姿勢に変化することを評価し,そのうち制裁も解除する.ウクライナ政府も,ロシアが東部から撤退することを勝利と呼ぶ.

FP APRIL 8, 2014

Seriously, What Did You Expect Russia to Do?

BY EDWARD LOZANSKY

NYT APRIL 8, 2014

Playing Hockey With Putin

Thomas L. Friedman

ロシア人をプーチン主義から救い出すために,西側はもっとできることがあった.199852日,George Kennanにインタビューした際,彼はアメリカ上院がNATO拡大を承認したことを批判した.それは必ずロシアの反発を生じ,新しい冷戦になる,と.彼は,上院に対する情報の伝えられ方と,歴史について彼らが無知であることを指摘した.

SPIEGEL ONLINE 04/09/2014

How Western Is Germany?

Russia Crisis Spurs Identity Conflict

An Essay By Christiane Hoffmann

FP APRIL 9, 2014

Agents Provocateurs and the Shadow War in Eastern Ukraine

BY JOHN HUDSON

Project Syndicate APR 10, 2014

The West’s Financial Arsenal

HAROLD JAMES

ウクライナの革命とロシアによる違法なクリミア併合は,ヨーロッパの安全保障に危機をもたらした.しかし,西側の指導者は,これに対して新しい金融戦争を準備している.それが状況をさらに悪化させるだろう.

アメリカ政府は,911の後,アメリカの敵に対する金融的な武器を開発してきた.アルカイダ,北朝鮮,イラン,今やロシアがその対象である.資産の凍結や,銀行の市場アクセスを断つことだ.ウクライナ革命,ヤヌコビッチの失脚,などがロシア銀行の資産を損ない,オリガークたちの政治的な支援も弱めた.

しかし,プーチンは西側の金融制裁を恐れていない,と公言した.彼は,制裁が西側の複雑な,相互に結びついた金融市場に大きな障害を生むから,実行できないと確信しているのだ.実際,リーマンブラザーズという小さな金融機関が示したショックは,オーストリア,フランス,ドイツの銀行がロシアに対するエクスポージャーから生じるショックとは比べ物にならない.ロシアに対する資産凍結は,ヨーロッパ,さらには世界の金融システムを崩壊させる危険がある.

プーチンは,彼と金融市場との力比べを挑むつもりだ.

1次世界大戦の前に軍備拡大競争が起きたが,まさに同じ,主要国の軍事的な消極さから,市場の武器が模索された.1907年の金融危機が各国に金融危機の威力を示し,1911年にはモロッコをめぐる紛争から,フランスがドイツから資産を引き上げ,ドイツはこれに効果的に対処した.各国政府は中央銀行の流動性供給を強化するなど,自国金融システムの防衛策を急いだが,それは結果的に,戦争を起こりやすくしただけだった.今のロシアも同じだろう.

Project Syndicate APR 10, 2014

Putin’s Calculus

JOSEPH S. NYE

短期的に見て,プーチンの勝利は明らかだが,長期的には確実なものではない.

もしロシアの国際的な地位や影響力を高めたいのであれば,そのソフトパワーは損なわれ,周辺諸国をNATOに向かわせることになる.G8から追放せよ,というオバマの主張は最もその弱点を突いたものになるだろう.

FP APRIL 10, 2014

Russia Is an Arsonist, Pretending to Be a Fire Safety Inspector

BY MICHAEL WEISS

Bloomberg 12 APR 10, 2014

Russia Plays the 'China Defense'

Leonid Bershidsky


l  世界の所得格差

FT April 4, 2014

How private wealth is transforming real estate in global cities

By Anna Minton

グローバルな不動産の取引は,今や,債務に依存した企業によるものではなく,半分以上を裕福な個人が担っている.

theguardian.com, Sunday 6 April 2014

McCutcheon took us back in time, but it might just birth the next Occupy

Robert B Reich

アメリカ最高裁は,憲法修正条項を用いて,個人が政党に360万ドル以上の献金や,政治キャンペーンに80万ドル以上の献金をする権利があると判決した.アメリカ人家族の普通の所得は約5万ドル,資産は7万ドルであるから,超富裕層は政治過程を普通の市民以上に支配する力を持つことになる.

しかし,アメリカには富裕層の政治支配を否定する市民の抗議運動という伝統がある.最高裁のあからさまな判決は反対の結果を生むだろう.

NYT APRIL 8, 2014

In New Tack, I.M.F. Aims at Income Inequality

Eduardo Porter

FT April 9, 2014

Rising inequality is a blemish on Asia’s growth story

By DavidPilling

20年間の成長で,アジアの所得格差が拡大している.それはラテンアメリカに似てきた.成長をもっと平等に分配するために必要な,教育への投資も少ない.その政治的な重要性は増している.


Project Syndicate APR 4, 2014

Uniting Against Extremism

CHARLOTTE KEENAN


l  オバマ外交の崩壊

FT April 6, 2014

Obama’s attention deficit diplomacy

By Edward Luce

アメリカが抱える危険とは,中国がアメリカの地位にとって代わることではない.中国はまだそれを望まない.むしろ,アメリカがその役割から放免されないことである.ウラル山脈から南シナ海まで,多くの兆候はアメリカの力が衰えていることを示している.

中東和平交渉でも,クリミア制裁やTTIPをめぐるEU訪問でも,ケリーやオバマは努力しているが結果を得られない.アメリカは古い同盟国を失っても,新しい同盟国を得る力がない.オバマは高い理想を掲げて外交を推進しようとしたが,今ではプラグマティズムに転じて,その評価を回復できていない.スパイ活動に非難を浴びて,インドも,ブラジルも,ドイツも,アメリカ外交に賛同しない.

オバマ外交は焦点を欠き,ワシントンの政治は行き詰まっている.かつて世界のために国連やIMFという国際機関を作ったが,ワシントンがIMF増資を拒否したことに,主要諸国が憤慨している.そして,アメリカに改革できなければ,他のどの国にも改革できない以上,世界には,地域の攻撃的な大国と,衰弱する覇権国しかいなくなる.

NYT APRIL 10, 2014

The Limits of ‘Special K’

Roger Cohen


l  貨幣の死

FT April 6, 2014

The Death of Money’, by James Rickards

Review by James Mackintosh


l  アフリカの開発

Bloomberg APR 6, 2014

Here's How to Unlock Africa's Economic Potential

By Jim O'Neill

FT April 7, 2014

Nigeria doubles GDP and exposes failures of government

By William Wallis in Lagos

FT April 8, 2014

Investors in corrupt ‘new Africa’ repeat old errors

By Michael Holman

NYT APRIL 9, 2014

A Green Revolution, This Time for Africa

By TINA ROSENBERG

先月は,緑の革命を実現したNorman Borlaugの誕生100周年であった.1944年にメキシコへ移住して高収穫の小麦を研究した.1970年,メキシコの収穫量を1950年に比べて6倍にした.1965年には,インドとパキスタンで飢饉が広がり,高収穫の小麦が育てられた.

彼の設立した研究所Cimmytが,今,取り組んでいるのは,アフリカのトウモロコシに緑の革命を起こすことだ.


l  イギリスで教える経済学

theguardian.com, Monday 7 April 2014

Why UK universities shouldn't be hostile to alternative economic models

Maeve Cohen and Catriona Watson of the Post-Crash Economics Society


l  世界銀行の改革

FT April 7, 2014

World bank: Man on a mission

By Robin Harding

FT April 9, 2014

Restructuring hell at the World Bank

世銀のJim Yong Kim総裁は,組織の改革を混乱に導いた.

新興諸国も,中国など,市場で世銀より低利に資金調達できるようになった.世銀岡地は,低金利ではなく,優れた助言である.キムは地域による組織を廃止し,専門分野ごとに再編成した.巨大融資工場ではなく,解決策提供オフィスになる,という.しかし,人事は不透明で,経費節減は自分に甘い.戦略がないまま,思いつきだけで行動する.マッキンゼーとトニー・ブレアに助言を求めて,組織改編ができるのか?


l  NATOの挑戦

FT April 8, 2014

Nato: Northern exposure

By Sam Jones

ソ連崩壊時のバルカン危機とは比べ物にならない.クリミアでは直接にロシアと対決する.NATO3つの重大な挑戦に直面している.1.ヨーロッパの防衛予算が急速に削減されていること.2.アメリカがNATOに強く関与すること.3.新加盟諸国のNATOに対する信頼を固めること.


l  ヨーロッパの景気回復

Project Syndicate APR 8, 2014

Cementing Europe’s Recovery

MOHAMED A. EL-ERIAN


l  経常収支不均衡の理解

Project Syndicate APR 8, 2014

A Surplus of Controversy

KENNETH ROGOFF

アメリカ財務省がドイツの経常収支黒字を批判したとき,そこには重大な意見対立があることを理解していなかった.黒字批判は,ドイツに世界需要を増やすように求めた.しかし,ドイツは自分たちの黒字がヨーロッパの安定にとって欠かせない,と考えた.

一国の輸出と輸入に生じる差額は,多くの要因が関わっている.景気純化,人口動態,投資機会,分散投資,さらに政府の財政黒字に対する執着,など.

アメリカの政策担当者たちも,2000年代になって初めのころは,アメリカの投資機会に世界の貯蓄が集まる,と経常収支赤字を正当化していた.しかし,その後は,分散投資の欲求,安全性,流動性が,グローバルな資産として優れているからだ,と主張した.それでも過度の債務による家計の消費は危険な兆候を示していた.

ドイツの場合は黒字であり,北欧諸国に共通して黒字が続いていた,それはユーロの為替レートが過小評価されていることにならなかった.ケインズ主義者がドイツの財政支出増を求めたが,それは民間の貯蓄や投資によって,かなり相殺されるし,ドイツの需要がユーロ圏の赤字国に及ぼす効果は限られている.

欧州委員会はこの問題で報告書を作成したが,黒字の要因を特定できず,それでもドイツに政府及び民間の投資増を説得した.北欧諸国が小売業の規制を緩和すれば,不均衡の是正に効果があるはずだ.

ドイツが自分たちの黒字をヨーロッパの安定化に重要だと主張するのも正しい.もしドイツの黒字が無ければ,ECBの決断も市場を安心させることはなかっただろう.

要するに,不均衡は監視しなければならないし,その要因を分析することは重要だ.しかし,過度の単純化は,刺激策も緊縮策も万能薬ではない.不均衡の背後には,債務,硬直性,低投資,競争力,などに問題がある.


l  ブレアへの非難をやめるべきだ

The Guardian, Tuesday 8 April 2014

Stop calling Tony Blair a war criminal. The left should be proud of his record

Zoe Williams

ブレアはルワンダについての論説を書いたが,そのコメントはルワンダではなく,ブレアが戦争犯罪者である,と非難している.人々は彼をイラクの犯罪と切り離せないのだ.ブレアに関しては,軽いトーリーであるか,トーリーであるか,2つの立場だけである.

ブレアの遺産を正しく扱えないなら,われわれは労働党の姿勢を具体的に示すこともできない.イラクの戦後支配が暗転するにつれて,ブレアは政界の不可触民になった.労働党員たちもそれを放置し,手を貸した.労働党政権の10年間に達成したことも,われわれは誇りとして継承できない.

最低賃金を引き上げ,子供の貧困を減らし,病院を近代化し,北アイルランド和平を実現した.それはブレア政権だからできたことだ.今も問題はあるが,ブレアを戦争犯罪者と非難するのを止めたとき,われわれは議論できる.


l  ビジネスの再ローカル化

FT April 9, 2014

Business is going native again

By Andrew Hill


l  温暖化防止運動

The Guardian, Thursday 10 April 2014

We need an apartheid-style boycott to save the planet

Desmond Tutu

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The Economist March 29th 2014

Rise of the robots

Robots: Immigrants from the future

Banyan: On the antlers of a dilemma

The economy: On cloud nine trillion

Free exchange: Pricing the surge

100 years after 1914: Still in the grip of the Great War

(コメント) 表紙に描かれたロボットたちの活躍する世界を読めると思いましたが,中身は違いました.ポイントは,ロボットが普及し始めた,ということでしょう.何より,人間型の多機能ロボットが,スタンダードの組立式になって安くなる.ロボット工学の専門家でなくても,だれでも新しい利用方法を開拓できる.GoogleAmazon,個人の富裕層が積極的に投資を始めた.戦争におけるDrone,日本における介護ロボット,なども活躍している.「未来からの移民たち」と私たちが共存する社会のルールは,まだ,何もわかりません.

台湾の馬英九総統のジレンマが紹介されています.韓国や日本も共感するでしょう.そして,貯蓄過剰の,「リーマン・モーメント」を議論されている中国経済に関して分析が続きます.

1次世界大戦から100年を記念した本が多く出版されて,そのいくつか重要なものを紹介しています.「戦争」を考える視点が,複雑で,不完全で,相互に影響し合い,それを独自な,自分に有利な解釈として宣伝する者たちと事件に立ち向かう,歴史家たちの情熱を感じます.

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IPEの想像力 4/14/14

週末なので,『グッバイ,レーニン』を観ました.東ドイツの崩壊を,逆から描いた作品です.

逆というのは,何とも不思議です.東ドイツは,その理想を実現した労働者の楽園であり,西ドイツの悪辣な資本主義に勝利します.西側の労働者たちを助けるために,東ドイツの指導者が西ドイツ難民たちに国境を開放したのです.労働者たちはベルリンの壁を倒して,西から東に流入します.

そんなバカな・・・? という作品ではありません.もちろん,現実にはベルリンの壁を壊して西側に吸収されたのは東ドイツでした.しかし東側で,主人公である青年の母親は,抗議デモに参加していた息子を観て,ショックで路上に倒れ,意識不明になります.その後,だれも予想しなかった,こうした事件が起きたため,壁が崩壊したことも知りません.意識を回復しても,強いショックを与えては命が危ない,と医者に警告されます.優しい息子は母がショックを受けないように,この変化を隠し,隠しきれなくなったとき,映画好きの友人と,タクシー運転手になっていた,国民的英雄の元宇宙飛行士に頼んで,東側の理想が勝利したニュースを彼女に見せました.

この話では,東西の社会が対照されています.たとえば,東の陳情書より,西の市場メカニズムの方が優れています.おそらく,そういう意味でしょう.母は熱心な共産党員で,理想を持ち,人々に代わって党に陳情書を書き送っていました.今では貨幣がそれを代弁します.東ドイツの店や工場はほとんど潰れてなくなり,母が好きだったピクルスも含めて,西から別の商品が流入し,彼のような,仕事の無い若者を西側の企業が雇います.

彼が西ドイツに行ったときに見た,強烈なポルノ・ショップもそうです.人間も,欲望も,何でも商品になる.そして(しかし),きれいな看護婦のポーラを彼は好きになり,やたらに騒々しい昆虫姿のロックバンドが目立つ店で初デートします.心は金で買えません.

西ドイツのマルクを得た人々の歓喜と楽観は,政治的なショーでした.しかし,母の貯蓄(ヘソクリ)をようやく見つけたのに,それが間に合わず,西ドイツのマルクに交換できなかったときの彼の落胆と悲憤.東ドイツの貨幣は紙くずになって,屋上で投げ捨てるしかありません.

東ドイツの元宇宙飛行士は名誉を失いました.おそらく,多くの善意の公務員や労働者も,貯蓄や社会的地位,職場を失ったのです.彼と友人が作ったニュース番組では,ホーネッカーが退任し,元宇宙飛行士が首相となります.彼は就任の挨拶として,宇宙飛行士の目からは国境など存在せず,私たちの理想は西の労働者たちと共有できる.国境を開放しよう,と呼びかけます.

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Reviewを書きながら,東北に移民や難民が集まって,小さな,新しい町を建設する,という震災からの社会再建を考えました.日本各地の老人会も,元気な入植者を募集します.なぜなら彼らこそが,日本語,日本の習慣・社会的ルール,農業や水産業の基本を教えて,未来の世代のために,一緒に理想の社会を築くからです.

あるいは,内外の意欲ある若者たちを集めて,ロボットに関わるさまざまな新しいビジネスを起こす,ハイテク産業都市を東北に創ります.初等教育から,社会人教育まで提供し,日本を愛し,日本社会を信頼する,積極的な移民や難民の家族を定期的に(例えば,3年ごとに)受け入れます.紛争地域では,極端な貧困,学校・病院など,社会インフラの破壊,厳しい迫害に人々が苦しんでいます.日本で,彼らの生きる力を活かします.

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『ブレア回顧録』で,トニー・ブレアは書いています.「人々は機能する政府,とりわけ変革をもたらす能力を持つ政府を欲している.・・・開放的な心の持ち主は新しい考え方と変化を受け入れ,進歩のための可能性とみなす.」 「21世紀は,天性のものであるにせよ,教育によるものにせよ,変化する世界に対して開放的であり,近代化し,新しい考え方をする用意がある人のものだ.」

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