IPEの果樹園2014
今週のReview
4/7-12
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オバマ・NATOとプーチン ・・・軍事介入と制裁 ・・・政府と不平等 ・・・中国を倒すのは汚染か,債務か ・・・US製造業の復活 ・・・中国共産党と近代化 ・・・日本も和解できる ・・・マルクスは正しかった? ・・・アジアの軍拡競争
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l オバマ・NATOとプーチン
Project
Syndicate MAR 31, 2014
Will
Vladimir Putin Bolster the Eurozone?
JEAN PISANI-FERRY
ヨーロッパがユーロ危機を解決できない混乱ぶりを観なかったら,プーチンはクリミア併合を考えなかっただろう,とポーランド外相Jacek Rostowskiは述べた.
しかし,2つの事件にそのような密接な関係はない.クリミアは金融問題の解決のために併合されたわけではない.
もちろん,Rostowskiは「連帯の危機」を注意したのだ.ヨーロッパが銀行危機に共通の対策を必要としたのに,金融機関の責任は各国政府に限定された.ギリシャが金融市場から締め出されても,共通の金融債や「防火壁」,EMS,銀行同盟を検討しても,いずれも各国の政府に最低限の支援を与えただけだった.それは危機を長引かせ,解決を難しくした.共通の解決メカニズムは抑えられた.
ロシアの行動は第2次世界大戦後のクレムリンの姿を生々しく再現した.そしてヨーロッパがアメリカのようにマーシャル・プランを行わず,EU加盟国が隣国のリスクも引き受けないことを示したのだ.
エネルギーはその最新の顕著な例である.EU全体では,一定の努力によって,ロシアからの天然ガス輸入が無くてもやっていける.しかしそのためには,EU加盟諸国の天然ガスを安全保障として共通の関心で再編しなければならない.例えば,ロシアの禁輸措置に対して大きな影響を受ける国には,他の加盟国が備蓄から供給し,供給力を増加させる.輸入を増やす.消費を削る.しかし,現実のEUエネルギー政策には連帯の意識が欠けている.
かつて,共通通貨を持つことが連帯意識を形成し,高めるだろう,と期待された.単一通貨の創設者たちは,それがコミュニティーにつながると考えたのだ.通貨圏は政治的な境界船と一致しており,経済通貨同盟が共通政策を必要とするはずだ.
それは実現しなかった.諸政府は,間違って,ユーロを実際的な道具として扱った.共通通貨は中央銀行総裁や財務大臣など,官僚の創造物であった.EU予算は求められず,政治的な統合化も進まなかった.こうした共通通貨のコミュニティーに向かう自己組織化能力を期待し過ぎたことが,失敗の源だった.
政治的コミュニティーが連帯を創り出し,共通通貨の結びつきを育てるのだ.逆ではない.Rostowskiは正しい.クリミア危機はヨーロッパの連帯を生むのか? それがユーロを救うだろうか?
FP
APRIL 1, 2014
Why
Are We So Busy Trying to 'Figure Out' Vladimir Putin?
BY STEPHEN M. WALT
ウクライナやクリミアをプーチン個人の責任にしてはいけない.イランやイスラエル,アフガニスタンもそうだ.
なぜシリアのアサド大統領は残酷な手段で戦争状態を創り出すのか? 彼が自国の破壊や人々の苦痛を喜んでいるとは思わない.彼が内戦を続ける理由は,アラウィート派の支配体制を守るためだ.同じ恐れを持つ者が彼を支持する限り,内戦は続く.アサドを非難しても解決にはつながらない.
世界政治においては,全ての指導者たちが内外のさまざまな圧力を均衡させ,特に,諸国に分断された世界で自国を守るために決断している.たとえアメリカがどれほど強力で,指導者は慎重に選択肢を評価しなければならない.個人の思い付きではないのだ.
彼らをその状況から考えることは,非常に異なる国,非常に異なる指導者が,しばしば,驚くほど同じように行動することを説明する.例えば,多くの点で,アメリカとソ連は全く異なる国であったが,冷戦を通じて,超大国の行動は非常によく似ていた.世界中で同盟国を集め,核兵器を増産し,発展途上諸国に介入し,諜報,転覆,暗殺などを行った.しかし両国は互いに対して慎重に行動し,戦争に至るエスカレーションを回避した.
同様に,ビル・クリントン,ジョージ・W・ブッシュ,バラク・オバマという全く異なる3人の大統領が,驚くべき外交の連続性を示した.それは,パワーや安全保障に関する組み合わせが世界最強国の選択肢も制約しており,高いコストを避け,深刻なリスクを冒すことはなかったからである.また,彼らが同じ強大な国家安全保障の官僚制度に依拠していたからである.
指導者の性格ではなく,もっとその国が持つ関心や条件に注目しなければならない.プーチンや習近平,安倍晋三の世界観を理解しなくてよい,というわけではないが,グローバルな趨勢や危機が起きる条件を知ることが,人物だけに責任を求める週刊誌の水準を超える議論ができる.
l 軍事介入と制裁
The
Observer, Sunday 30 March 2014
Our
view on foreign intervention is in chaos. We need a solution
Observer editorial
バラク・オバマはブラッセルで,ロシアアに対する行動を,外交,説得,説明責任,ソフト・パワーを駆使して訴えた.ロシアは,「野蛮」な暴力で強制し,アメリカを,イラクやコソボで同じことをしたと批判した.アメリカ人は,全く異なる,と主張する.
この論争は,われわれに合意がないことを示すものだ.ある国が,あるいは諸国の安全保障機関や「国際社会」が,他の国に軍事介入するのは,いつ,どのように,なぜ正当化できるのか?
冷戦終結後に,西側の首都間で緩やかな合意が形成された.1999年,シカゴで,トニー・ブレアは「正義の戦争」という概念を復活させた.「グローバル化し,緊密の統合化した世界で,諸国は時代遅れの「内政不干渉」原則を捨てるべきだ.自己利益と道義に照らして,人権のような,普遍的価値を守り,高めるために,行動する義務がある.」 それは「ブレア・ドクトリン」と呼ばれた.
コソボで虐殺が起き,20年前のルワンダの反省から,ビル・クリントンたちは軍事介入に合意した.東チモール,シエラレオネ,へと続く.しかし,その後,ブレアはジョージ・W・ブッシュと共謀してアフガニスタン,イラクに侵攻し,彼自身のドクトリンを破壊した.
しかし,カルザイが最後の任期を終え,NATO軍がアフガニスタンを撤収するとき,イラクの破滅的な状況を観るとき,われわれは苦しい問いに直面する.われわれは何を達成したのか? 人道的介入の合法性や世界の支持が失われてしまった.もしシリアの虐殺を観たら,かつては介入を求めたはずだ.今では世界が目をふさいでしまう.
ウクライナの分割は,国連安保理の意味を失わせ,国際システムの基礎を揺るがせて,中国が台湾を制圧する動機にもなるのか? 国際的な合意が緊急に求められる.
1) Does such action have broad domestic and international support? 2) What exactly are its aims and are they realistic? 3) Is it legal? 4) Is it morally justified? And 5) How does it end?
FT
March 30, 2014
Sanctions:
War by other means
By Geoff Dyer
1956年のスエズ危機は,制裁が,征服した土地から軍隊を撤退させることを政府に受け入れさせた顕著な例である.アメリカのアイゼンハワー大統領は,イギリスへの融資を拒めば,それがポンドへの取り付けを起こすと脅して,英仏・イスラエルの軍隊を撤退させた.
しかし,クリミア併合に対する制裁がロシアの孤立を招く,というオバマの説得は成功しないだろう.すでにアメリカは,現在,コートジボアール,ベラルーシ,シリア,など,紛争に関わる24の制裁を行っている.クリントン政権は,(経済全体ではなく)個人や機関を限定した「スマートな制裁」を導入した.また9・11は,ブッシュ政権にアメリカの金融システムを利用した制裁に踏み切らせた.
l 政府と不平等
FT
March 28, 2014
Save
capitalism from the capitalists by taxing wealth
By Thomas Piketty
歴史には不平等を拡大する力も縮小する力も働いている.それを選択するのは政策だ.
アメリカがそうだった.19世紀の歴史家トクヴィルが見たように,アメリカは世襲的なヨーロッパ社会に対する平等社会の理想であった.土地は豊富であり,民主主義が平等な市民を繁栄させた.富の集中は,アメリカの方がヨーロッパよりも少なかった.しかし20世紀に,この状況は逆転した.
1914-45年にかけて,ヨーロッパの不平等は緩和された.それは,戦争,インフレーション,国有化,課税によるものだ.その後,ヨーロッパ諸国は,アメリカよりも平等で,包括的な社会を保つ諸制度を確立した.
皮肉なことに,その多くはアメリカで革新された制度であった.たとえば,富裕層への高率の所得税はアメリカが発明したものだ.戦間期に,ヨーロッパのような階級社会を避けるために導入した.アメリカの実験は成長を損なうことなく,1980年代以降の成長率よりも高かった.
また大衆教育を広めたのもアメリカが最初だった.ヨーロッパよりも100年早く,全国民が文字を読めるようになった.しかし,ここでもヨーロッパは社会を包括する制度を確立した.アメリカが最高の大学を持つようになったが,ヨーロッパは中産階級を増やすことに成功した.
どの国も能力主義を自慢するが,現実には,それが間違っていることも多い.アメリカの大学入学者は,かつて世界で最も開かれていたが,今では非常に不平等である.効率的で平等な優れた大学を創ることは,全ての国の課題である.アメリカでは1980年代から企業重役の所得が増大して不平等を拡大した.巨大な組織内で個々の仕事を評価するのは難しい.
賃金の不平等だけでなく,富・資産の不平等も重要だ.資本は,経済成長よりも急速に増大した.19世紀に起きたように,資本の所有者は中産階級やより下層の介入を犠牲にした.Forbes誌の示すグローバルな超資産家の番付はそれを示している.1987-2013年に,彼らの富は世界経済の3倍速く増大した.
アメリカの不平等がこれほど深刻であるのは,富裕層が政治過程を強固に支配しているからだ.必要な改革は実現しない.
理想的な解決策は,個人資産に対するグローバルな累進課税である.それは不平等を制御し,人々が豊かになるのを容易にする.グローバルな富の増大に厳しいチェックを行うことにもなる.金融取引の不透明さと資産統計の欠如が民主主義社会への重大な挑戦なのある.
そうでない場合,中国やロシアのように,資本規制をしたり,限度を超えた資産家を投獄したりすることもありうる.法の支配や国際経済秩序を尊重するなら,グローバル資産課税を取るべきだろう.
インフレーションも資産を失わせたが,それは貧しい者の貯蓄も奪い取る.公的債務を解消するためには,やはり富裕層に課税する方が良い.
こうした資産課税はグローバルに行うことが重要だ.国際協調が難しいというが,アメリカとEUだけで世界生産額の半分を占める.タックス・ヘブンを処罰して,グローバルな登録制度を実現することは可能である.
こうしたことを怠れば,多くの人がグローバリゼーションを攻撃し,かつてのナショナリズムや経済的孤立に戻る主張がよみがえる.
l 中国を倒すのは汚染か,債務か
NYT MARCH
28, 2014
China’s
War on Pollution
モニターされている74都市のうち,チベットのラサを含む地方の3都市だけが「良好な空気」と評価された.北京を含む,石炭に依存した北部の工業都市,東部の揚子江デルタ,南部の珠江デルタには,最悪の汚染都市がある.推定によれば,毎年,35万人から50万人が早死にしている.李克強首相は「汚染との戦争」を宣言した.中国の指導者が,成長だけを目指した時代は終わった.
FT
April 1, 2014
Debt troubles within the Great Wall
By Martin Wolf
中国は他と違うか? 債務の過剰は破たんに至るのか? 中国の“Minsky moment”が来るかどうか,激しく議論されている.しかし,どちらも間違いだろう.1930年代のアメリカや1980年代の日本と同様,債務の規模はあまりにも大きく,その質は疑わしい.そして政府は危機を回避できるだろうが,成長は低迷する.
l US製造業の復活
FP MARCH 28, 2014
Made
in the U.S.A. (Again)
BY ANTOINE VAN AGTMAEL, FRED BAKKER
アメリカに新しい産業革命が起きている.かつて安価な中国製品に市場を奪われた企業が,精密加工やロボットの導入に投資して新しい市場を開拓した.中国への生産拠点の移動,アウトソーシングは完全に終わった.今や多くの企業が生産拠点をアメリカに戻そうとしている.
「10年前に,あるいは,5年前でも,企業のCEOsは10人に9人が,次の工場建設をどこで考えているか,と訊かれて,中国と答えた.今,2人か3人が中国と答えるが,5人以上はアメリカと言うだろう.」
世界の競争力評価で,中国の低コストはその順位を下げ,他の諸国が上昇した.企業は,労働コストよりも,品質や輸送時間が重要であることを学んだ.アメリカの増えている新しい工場は,旧来の製造業ではなく,高度な知識経済における製造業だ.デジタル化,自動化,研究開発にヨス新素材,そしてセンサーを組み合わせている.
l 中国共産党と近代化
The
Guardian, Sunday 30 March 2014
Welcome
to China's political gamble of the century
Timothy Garton Ash in Beijing
習近平の近代化はすさまじい.そのために,彼は共産党を強化し,彼自身の地位を強化した.しかし,成功するかどうか,だれにもわからない.その結果は世界に影響する.
中国は急速に近代化し,伝統的な社会から変化しながら,しかもレーニン主義の共産党を維持する,という.1989年に,ワルシャワ,ベルリン,モスクワ,北京で,共産党政権が崩壊に向かったとき,だれも今日の中国共産党がここまで改革を加速するとは考えなかっただろう.共産党は軍と国家だけでなく,経済改革,安全保障・治安,軍改革,インターネットでも指導する.
中国の都市にあふれる新しい動きに圧倒されながら,なぜこれほどの変化が起きているのに,まだ中国は共産主義国家なのか? と私は若い共産党員に尋ねた.彼は素直に答えたものだ.それは共産党が運営しているからさ.
改革が進めば,次第に,中国にも国家と党の分離,法の支配,NGOsの活躍,公の議論,などが生まれると期待していた.しかし,そうではない.共産党からの司令という形は変わらない.そこには,民主主義,普遍的価値,市民社会は認められない.この古い伝統の中で,近代化を加速できるのか? 私が話し合った,中国の事情に最も詳しい2人のジャーナリストの答えは,Yes,と,No,だ.
l 日本も和解できる
FP APRIL 2, 2014
Reconciliation
Means Having to Say You're Sorry
BY LILY GARDNER FELDMAN
3月後半,中国と韓国の指導者がドイツを訪問し,投資と貿易に関するテーマが議題であったが,ともに日本の姿勢を批判した.日本はドイツの姿勢に学ぶべきだ,と習主席は述べた.
ドイツは慎重にその役割を断ったが,中国,韓国と日本から代表を招いて,領土紛争や戦時における日本の行為に関して,和解に向けた話し合いの場を,例えばボンで,提供することはできるだろう.
ドイツの経験はいくつかの教訓を示している.第1に,(中韓が)東アジアの理想とするような,完全な和解はありえない.ドイツの和解過程も長く,混乱した,終わりのないものであった.例えば,ドイツはユダヤ国家の生存と安全,繁栄に絶えず関与してきた.それでも60年を経て,なお,両国間には対立や不確実さがある.特に,イスラエル・パレスチナ和平や,アラブ世界,イランとの関係について.
第2に,領土紛争は対立を緩和するうえで決定的なものではない.日中,日韓の領土紛争は,棚上げにすることも,革新的な手法で解決することもあるだろう.しかし,解決できないままでも,関係改善は可能だ.ドイツは,フランスや,チェコ,ポーランドとの国境紛争を,住民投票や,現状維持,不合意であることに合意し,むしろ,政治的・社会的なパートナーシップを深めることによって,実質的なヨーロッパの指導国と認められている.
第3に,ドイツは賠償金の支払いを和解のための最重要問題とみなしてきた.政府間条約だけでなく,個人間や民間企業の団体を通じ,特別基金を設けて,すべての被害者に対する補償を実現しようとした.日本の従軍慰安婦や強制労働に関して,条約を理由に,日本政府は補償を拒んでいる.
それとの関係で謝罪の問題がある.日本政府は,何度か,謝罪してきた.しかし,明確な,具体的な行為は取らなかった.そして孤立した謝罪の言葉は,多くの,それを否定する言葉の海にのまれてしまう.安倍首相は,「侵略」という言葉を否定し,靖国神社に参拝し,河野・村山談話の「謝罪」を見直すための委員会を設置しようとした.
虐待された集団は,加害者の謝罪を受けても許すことはない.しかし,寛容な姿勢を示して,協力関係を築く政治的な度量を示すのだ.双方に,将来を展望できる,優れた指導者がいなければならない.謝罪は,政府間の関係だけでなく,特定の事件や特定の人物に関するものであって良い.日本を代表して話すことはなくても,そこから健全な関係が始まる.
政府が和解を決めるのではない.政府はそれを励まし,民間の努力を助け,市民社会からのイニシアティブに反応して,紛争後の協力に必要な倫理を社会に取り戻すのだ.
l マルクスは正しかった?
The
Guardian, Monday 31 March 2014
Capitalism
is making way for the age of free
Jeremy Rifkin
マルクスは,生涯を通じて,資本主義システムの根本的矛盾を解明しようとした.それは最後にシステムの崩壊をもたらすものだ.資本主義的市場は,見えざる手によって,需要と供給を一致させるように見えるが,彼はそこに,生産手段,剰余価値,労働者の疎外を観た.
資本主義的市場では,絶えず新しい技術が求められ,競争相手よりも生産コストを下げて,投資家は十分な利潤を得ようとする.しかし,マルクスは新技術で価格が下がって,ほとんどゼロになる世界を想像していなかった.そのとき利潤や市場交換は消滅する.
この10年間で,音楽,ビデオ,ニュース,知識,など,「生産=消費者prosumers」が急激に増えている.音楽プロデューサー,新聞社,出版社の利潤は消滅しつつある.新しいプロシューマーたちは,生産や情報を共有し,再生エネルギーや,オンライン教育,3Dプリンター,などにも広まっている.自動車,住宅,衣装,道具は共有され,資本市場は回避される.
ますます多くの人々は資本主義的な搾取を逃れて,新興の協調型グローバル・コモンズ,物のインターネット化による遍在する生産拠点へと,移住し始めている.
NYT MARCH
31, 2014
Was
Marx Right?
戦後の西側の安定性と経済成長,労働者の生活水準改善はマルクスの批判を無意味にした.しかし,かつてマルクスが主張した資本主義システムの崩壊をもたらす諸問題,富の集中とグローバル化,失業の蔓延,賃金低下,が表れている.
Doug Henwood ・・・マルクスを抜きに,この現実は理解できない.現在の大不況は1979年10月に連銀が20%まで金利を高めて,1930年代以来の深刻な不況でインフレを抑えたときに始まった.その「治療」は30年間効き目があった.企業利潤は膨張し,金融ビジネスが繁栄した.マルクスが言ったように,労働者たちは賃金以上に多くの価値を創り出し,それが利潤となった.
債務で大量消費を維持する成長モデルは,2008年に壊滅し,再建できなかった.このモデルを転換し,90%の人口が,労働者たちが所得を回復する高賃金と公共支出増は可能である.しかし,政治を支配する株式の大量所有者や富裕層がそれを阻む.これが階級闘争だ.
Tyler Cowen ・・・問題は,教育や医療の生産性が低いことだ.不平等は問題でなくなり,生活水準を改善できる.学校や医療システムにも効率を高めるために説明責任を求めることだ.
Brad DeLong ・・・マルクスの労働価値説は間違いだった.マルクスは労働者の取り分が減っても生活水準が高められることを理解しなかった.マルクスは労働者の交渉力が低下すると考えた.それは間違いだったが,新しい産業革命の下では正しいかもしれない.新技術で労働者が余剰になる可能性がある.
l アジアの軍拡競争
FT April 3, 2014
How
to avoid war in the East China Sea
By Philip Stephens
中国の台頭に関するアメリカの戦略は明快だ.エンゲイジ・アンド・ヘッジ,である.中国を国際システムに取り込みつつ,アメリカの同盟諸国による地域の再編を促す.
しかし,今回のオバマによるアジア歴訪は難しい.特に東京訪問は,安倍との関係において,信頼感と曖昧さを両立させねばならないからだ.ロシアのクリミア併合は,尖閣諸島と日中関係の緊張をメディアのトップ記事にしている.習近平も,安倍も,その政府が個人の指導性や使命感を強く反映している.習は歴史の恥辱を晴らす決意であり,安倍は謝罪するつもりがない.その敵対感情は国民にまで広がる.
オバマは,中国を説得するために,安倍の自制を求める.論理的には,北京も東京も戦争を回避するはずだ.中国の攻撃性は,周辺諸国をアメリカとの関係強化に向かわせる.日本の抑制されないナショナリズムは友好国を失わせる.
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The Economist March 22nd 2014
The new world order
China’s cities: The great transition
Indonesia’s haze: Leaders fiddle as
Sumatra burns
(コメント) アメリカの優位や西側の正義は,彼らが思う以上に世界で嫌われている.新しい世界秩序は,ロシアのクリミア併合で,さまざまな力を招きよせ,融合し,干渉し合って,予想外の事件を各地に生じる結果として,成立するのかもしれません.それは,例えば,領土紛争,言語,マイノリティー,住民投票,軍事介入,新興諸国,地域の覇権,開放型の経済システム,などです.
新興諸国が,プーチンの誘惑よりも,合意された境界線やルールを世界秩序として支持するように期待します.
中国の都市改造は,社会問題の緩和と人口配置にも政府の管理能力を試します.
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IPEの想像力 4/7/14
ジョージ・オーウェルは『動物農場』や『1984年』を書きました.
国際的な基準・ルールを無視して,日本政府が国内の沈黙を利用し,特殊な利益団体の経済活動を助けてきたことに対して,国際的な法規制が宣告されました.もちろん,クジラが警察や軍隊を送るわけではありませんが.
絶滅の恐れがあるクジラを獲るな,という国際司法裁判所の命令は,私にとって,ショッキングなものではありません.たとえその特有の肉のうま味を懐かしいと思うことがあるとしても,巨大な生物種に対する愛着や敬意を抱くからです.もし絵本や物語からクジラの姿が消えたら,人類のさまざまな文化は,その分,うま味を失うでしょう.
クジラを守るために捕鯨船に船体をぶつける環境保護団体に親しみを感じることはありませんが,伝統的な漁が認められるのであれば,産業の衰退は炭鉱が閉鎖される街に似ているな,と思いました.そして,クジラ漁で生活してきた人々が,他の町の,新しい職場で働くことを助けないから,日本政府は,あるいは,地域の政治家は,沈黙と「調査捕鯨」を方針としたのではないでしょうか?
クジラは国際司法裁判所など知らないはずです.訴えたのもクジラではありません.しかし日本政府は,国際捕鯨委員会を脱退してまで,捕鯨を続ける意図を示したようです.
確かに,「調査捕鯨」という名目でクジラを獲り,その肉を市場で売って,家でも店でも食べているのは,なんて恥知らずな国民だろう,と恥ずかしくなります.いや,これは国民を代表していない政府だ,と市民団体が不満を示すべきでしょう.
しかし,クジラは日本人を恨むこともなく,私が恥じる気持ちも知らず,大海をめぐって子供を産み,育てているのでしょう.もしクジラが話せたら,どうでしょうか? 彼らは海のどの部分で人間が漁をするか,捕鯨船の音を聞き分けることもできるかもしれません.彼らを捕獲する技術より,彼らの生態や「言葉」を理解することで,文明として共存できるかもしれません.
中国の環境汚染も注目されていますが,そこで苦しむのは野生生物とともに,おそらく,貧しい人々です.・・・もし<美食家>の宇宙人がたまたま地球を見つけて,クジラも人間もとても美味しいことに気づいたら,どうなるのでしょうか?
NHK海外ネットワークで,メキシコの移民が帰ってくる,という話を観ました.ペニャニエト大統領の経済改革が進む中,金融危機後のアメリカで,仕事をなかなか見つけられない移民たちが帰国しているのです.彼らはその経験や知識,英語力を生かして,メキシコの成長に参加し,経済改革を支える力になるかもしれない,と思いました.
NAFTAにも強い反対があります.クジラを食べる日本人より,同じ現実でも,はるかに論争になりました.しかしメキシコ人は言葉を持ち,政府を持ち,文化を持っています.NAFTAのルールを,次第に,自分たちの発展に活かす能力を高めたのかもしれません.
言葉があれば,クジラは人間に,もっと人類が減るまで「肉食」をやめ,石炭や石油ではなく,風車や水車で生きるように諭すでしょう.各地の社会では,底辺に生きる貧しい人々が,「搾取」や「環境破壊」をやめるように,政府に新しい法律や制度を求めます.
日本の政府がクジラと生きるには,政治的な沈黙,を打ち破ることです.マグロも,牛も,豚も,鶏も.彼らが言葉を得る前に.
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