前半から続く)


l  中国と内外の新局面

Project Syndicate MAR 14, 2014

Fallen Tiger, Shaken Dragon

MINXIN PEI

習近平は,主席となって18か月が過ぎたが,共産党史上最大の政治腐敗事件を公表した.公安部長Zhou Yongkangを逮捕したのだ.

習にとって,腐敗撲滅運動は国民からの支持を高めるだろう.再考の政治的地位にある者も逮捕する彼の意志を示したことで,個人的な権威を高めた.しかし世界にとっては,中国の政治中枢がどれほど深く腐敗に冒されているか,を示した.

FP Magazine 2014 Feature

High-Speed Empire

BY TOM ZOELLNER

FT March 17, 2014

China admits its ills but faces an unpalatable cure

By MinxinPei

先週,李克強首相が,個々のケースでデフォルトが発生するのは避けられない,と記者会見で質問に応えた.しかし,それが孤立したケースにとどまるという楽観論を共有する者は少ない.過去5年間で,融資は年20%の増加を示し,成長率の約2倍であった.2008年以来,14兆ドルという途方もない額が,インフラ,不動産,工場に投資された.その大部分が投機的な不動産開発,無駄なインフラ,過剰な生産力であろう.

中国のマクロ経済は悪循環に陥っていた.低成長が過剰生産力を,さらに投機的な商品の価格下落を,甘い見通しで行われた成長を持続させるための大規模投資を増やすだけで,清算を先延ばしにしてきた.首相の答弁は,これまでのような政府の保証がなくなることを示す.

NYT MARCH 17, 2014

Beijing’s Propaganda Crisis

By MURONG XUECUN

先月初め,Dongguan東莞市のセックス産業を中国中央テレビCCTVが特集した.隠しカメラを使って,ホテルやサウナ,酒場を映し,売春の天国であることを示した.放送の真の意味は,政府によるセックス産業の取り締まりだった.

しかし,その反響は非常に大きかった.選別的な報道,政府とのつながり,セックス産業の労働者に同情する声だった.「魂を売る者たちが,いつも,体を売る者たちを見下している.」

CCTVは国民の信頼を失ったことを認めた.しかし私は,国民がかつてのような国家によるプロパガンダを受け入れなくなったのだ,と思う.国民の目は開かれ,不満を述べることも恐れなくなった.インターネット時代には,政府の宣伝にますます多くの疑問が生じるだろう.

Bloomberg MAR 17, 2014

China's Stimulus Is No Model for U.S.

By William Pesek

The Guardian, Tuesday 18 March 2014

Afghanistan: as China forges new alliances, a new Great Game has begun

William Dalrymple

FT March 18, 2014

China and EU step towards trade peace

By Shawn Donnan in London and Christian Oliver in Brussels

NYT MARCH 18, 2014

Pushing the Uighurs Too Far

By WANG LIXIONG

FP MARCH 18, 2014

Out of the Red and into the Black

BY ARTHUR KROEBER

中国の指導部は,欧米や日本の経験から学んで,債務を急速に処理しないことを決めた.企業が改革に取り組む限り,債務の増加を認める.成長を持続する方が債務問題をうまく解決できる.

FT March 19, 2014

Chinese internet: Mobile wars

By Charles Clover

FT March 19, 2014

China’s financial distress turns all too visible

By George Magnus

FT March 19, 2014

US Pacific Fleet commander warns Asia it risks Crimea-like crisis

By Ben Bland in Jakarta

ジャカルタで開催された国際防衛会議で,アメリカ太平洋艦隊司令官,ハリス提督は発言した.「われわれは国際的な規範に従う,強く,繁栄した中国が台頭することを歓迎する.」「しかし私が心配するのは,中国の透明性の欠如と,その報復主義的な傾向である.」

アメリカは中国とASEANが,アメリカも参加する多国間交渉で,南シナ海の行動基準を合意することを支持する,と再確認した.

FT March 19, 2014

Let a hundred companies fail

NYT MARCH 19, 2014

Sharing Power With China

By HUGH WHITE

40年間,アジアの安定性と経済成長をアメリカは維持してきた.しかし中国はそのおかげで成長し,旧秩序に満足しなくなった.アメリカがアジアにおける役割にも,大きな疑問が生じている.

特に,中国と日本が無人の小さな島について激しく対立し始めてから,アメリカの外交は方針を示せなくなった.アメリカは領土の帰属に関してどちらの立場にも立たないが,日本がその島を管理していることを認め,それを軍事力で変更することに反対し,日米安保条約に従って,日本を防衛する,と説明している.しかし,明らかに中国はそれを信じていない.アメリカは中国との軍事衝突には参加しない,と.

もしアメリカが日本と一緒に戦わないなら,日本政府はアメリカとの同盟関係に失望し,独自の防衛政策を求めるだろう.あるいは,中国の地域的覇権を受け入れることになる.また,その場合,他のアメリカの同盟諸国も自分たちの選択肢を再考し,アメリカの指導力は失われる.

オバマ大統領がアメリカの新しい方針を明確に示すしかない.オバマは何を言うべきか?

無条件に日本の主張を支持することは,アメリカに制御できない,そしておそらく勝利もできない戦争に巻き込まれる.逆に,単に中国が引き下がるとも思えない.中国はアメリカとの戦争を望まないが,有利な条件を手に入れたいと考える.アメリカの守るアジアの秩序を変えようとしている.中国にもハト派はいるが,彼らでさえ,中国はアジアの大国になると主張し,アメリカが優位を独占することを受け入れない.

どちらにしてもアメリカには良い選択肢がない.オバマが沈黙しているのもわかる.アメリカにとって尖閣をめぐって中国と戦争ことには意味がない.しかし,日本との同盟関係は維持したいし,アジア地域全体に対する指導的な地位を維持することも重要だ.

そこで,第3の道を考える.現状維持でも,中国の覇権でもない,新しいアジアの安全保障を制度化し,そこにおいて指導力を中国と共有するのである.しかし,それを通じて中国のパワーと均衡を取り,その行動をチェックする.紛争を解決するために軍事的な威嚇や戦争を許さない,という規範もそれに含まれる.

この規範こそ,アメリカが1945年以降に国際秩序を築く基礎であったし,最も重要なものだ.東シナ海で中国がこれを侵すことを懸念するのは,尖閣よりも深刻だ.アメリカはこのことを中国に対して明確に発言するべきだ.そして,もし中国がそれを侵し続ける場合,アメリカは中国との戦争になる,ということを明言すべきである.

このような制度が実際にどのように機能するか,中国との交渉が必要であるが,歴史的にヨーロッパがそれを示している.1914年までの100年間,「ヨーロッパの協調the Concert of Europe」が平和を維持したのだ.それは主権の平等と,大国間のパワー・シェアリングによって築かれていた.

当時のヨーロッパのように,現在のアジアにも指導的役割を独占する国がなく,全ての大国が優位を求めている.重要な地域の問題は交渉によって解決される必要がある.そして,多くの相互利益の条件があるのだ.たとえば,台湾の回復について.

オバマには国内からも強い反対が起きるだろう.しかし,国内のタカ派も中国との交渉に反対しないだろう.中国から高まる要求に対しては,戦争か,外交によって解決するしかない.その選択は,日本や東アジアの軍事衝突が起きる前にするべきだ.

Bloomberg 8 MAR 19, 2014

China to U.S.: Fix Your Own Economy

By William Pesek

中国の官僚はStephen Roachの本を読んだのかもしれない.

心理学者は警告する.相互依存関係は究極的にアイデンティティの危機,責任の否定,他者への非難,に至る.

アメリカは不均衡について,かつて日本に要求したように,今度は中国に調整が必要だ,と要求する.中国はもっと消費し,アメリカはもっと投資しなければならない,といったが,中国に比べて,アメリカは調整していない,とG20で話題になった.

しかし,ワシントンでは中国に対する非難ばかりが目立つ.隠れた関税や補助金,労働者の保護,環境規制,知的財産権,などだ.アメリカの消費者がいなければ,中国は商品を売れない,というアメリカの態度は勝手な思い込みだ.

改革を進める中国が,アメリカこそもっと調整したらどうか,という番だ.

FT March 20, 2014

Let us not miss the point on Chinese defaults

Yukon Huang

FP MARCH 19, 2014

My Missing Mongolia

BY BETHANY ALLEN

YaleGlobal, 18 March 2014

Can ASEAN Respond to the Chinese Challenge?

Carlyle A. Thayer

Global Times | 2014-3-20

Crimea shows force matters more than referendums on the ground

By Li Kaisheng


l  ミリバンド

FT March 14, 2014

At last Miliband impresses with leadership, not swagger

By Janan Ganesh

NYT MARCH 14, 2014

A Safer Way to Export Democracy

By SASHA ISSENBERG


l  TPPとグローバリゼーション

NYT MARCH 15, 2014

On the Wrong Side of Globalization

By JOSEPH E. STIGLITZ

グローバリゼーションの間違った道へ向かう貿易協定を目指してはならない.アメリカ政府がTrans-Pacific Partnership, or TPPの合意を模索している.

TPP交渉は秘密に行われている.しかも,ファスト・トラック(早期一括)交渉権が与えられている.つまり,議会にはすべての是非以外にまったく交渉の余地がない.

TPPは,すべての者を犠牲にして,グローバルな富裕層だけに利益をもたらす懸念が強い.なぜなら,関税はすでに低いから,交渉の目的が各国の規制を撤廃することに向けられているからだ.多国籍企業は規制が非効率で,コストを強いる,と不満を述べる.しかし,たとえ不完全さを増しても,それには各地の理由(労働者,消費者,経済,環境の保護)があり,民主主義(市民の民主的な要求)に基づいている.

それは,単に,ハーモナイゼーション,国際的に規制を調和させると主張される.しかし,効率性を増すというより,それが企業によって進められるとき(つまり,大企業の利益を優先する政治家たちの秘密交渉),その結果は「底辺への競争」になる.環境規制,喫煙の規制,企業への補助金,金融危機の最も重要な原因となったデリバティブの販売,特許権によるジェネリック薬品の規制,など,多国籍企業が悪用するケースはすでに懸念されている.貧しい国だけでなく,アメリカ国民にとっても不利益になるだろう.

これは現代のアヘン戦争である.戦争によって,西洋列強は中国にアヘン市場の開放を続けさせた.彼らは中国にアヘンを売らなければ巨額の貿易不均衡を是正できなかったからだ.

それにもかかわらず,エコノミストの大多数を含めて, TPPや自由貿易を情熱的に支持する多くの人がいる.この偽物の,破たんした理論が流通し続けている理由は,それが最富裕層の利益になる,ということだ.

経済学は,貿易が勝者と敗者を生み,敗者に補償することで,皆が利益を受ける,と主張する.この結論は多くの仮定に基づいており,その多くが現実に反している.

リスクを無視し,労働者の滑らかな職場移動を仮定し,完全雇用を仮定し,グローバリゼーションで低生産性部門から高生産性部門へ労働者は移動すると仮定する.しかし今,アメリカには,フルタイムの雇用を望みながら,それを得られない労働者が2000万人いる.数百万人は雇用を探すことをあきらめた.

その理由は,総需要の不足や,銀行が投機的な利益を求め,中小企業に十分な融資を行わないからである.また,グローバリゼーションは間違って運営され,アウトソーシングによって雇用を貧しい国に輸出している.それが主要な理由で,アメリカの男性フルタイム労働者の実質所得は40年前よりも低くなっている.

自由化の勝者は敗者に補償せず,逆に奪うことが多い.貿易協定で成長が高まるという証拠もない.私は2点を繰り返し主張する.1.過去30年間にアメリカの不平等が拡大したのは,政策や制度,法律の結果である.TPPもこうした不平等をもたらすものだ.2.トリクル・ダウン経済論は間違っている.TPPで企業の利潤が増えても,底辺層どころか,中間層の所得も増えない.

NYT MARCH 15, 2014

The Rise of Anti-Capitalism

By JEREMY RIFKIN

技術革新,特にインターネットが資本主義にもたらすパラドックスとその未来はまだ理解されていない.音楽の交換など,費用ゼロの生産や消費が増えている.その衝撃は,エネルギー,製造業,教育,なども再編成を始めている.再配分の限界費用がゼロに近い.

未来を決めるのは,市民社会の非営利組織・活動だろう.われわれはシェアし,コミュニティーを作る.ソーシャル・コモンズが増えるだろう.資本主義システムと,私的所有ではなく,シェア・アクセスとの協力関係が発達する.労働市場は大きく変化し,コンピューターと競うより,社会インフラとして非営利活動が重要になる分野に多くの労働者が参加する.

われわれは,部分的に,市場を超えた世界に入りつつある.相互依存型,協調的,グローバル・コモンズの中で生きる方法を学ぶのだ.

VOX, 17 March 2014

No Big Deal” says Krugman

Gary Clyde Hufbauer, Cathleen Cimino

クルーグマンはNYTのコラムでTPPに反対した.その理由は,TPPに政治的資本を費やしても無駄だ.すでに関税率は低い.と.

しかし,アメリカの技術革新がもたらす利益を守ることは非常に重要だ.


l  国際関係論の実践

FP MARCH 14, 2014

Does the Academy Matter?

BY FP STAFF

NYTのコラムでNicholas Kristofは学者が聴衆にもっと知識を与えるべきだ,と主張した.「教授たちよ,中世の修道士のように隠棲せず,われわれに応えよ!

FPはその3週間前に同じような問題を6人の長老たちに議論してもらった.

FP MARCH 18, 2014

The Solve-Everything, Do-Nothing White House

BY STEPHEN WALT


l  ヨーロッパの銀行同盟

FT March 16, 2014

Europe should say no to a flawed banking union

By Wolfgang Münchau

FT March 17, 2014

France and Germany squabble over who pays for EU banking union

By Alex Barker in Brussels


l  日本の歴史教科書と福島

FT March 17, 2014

How wars can be started by history textbooks

By Gideon Rachman

政治指導者が過去を書き換え始めたら,未来に起きることを恐れるべきだ.ロシア,ハンガリー,日本,中国で,最近,政治的な歴史教科書の書き直しが進むが,これはナショナリズムが高まるしるしであった.

イギリスでもそれはある.しかし重要な違いを2点,忘れてはならない.1.政治家は過去の事実を否定しない.2.政治家は,一つの見方を押し付けない.異なった見方があり,その論争を促すべきであって,教科書を使って自分の好む歴史を教え込むのは洗脳の始まりである.

NYT MARCH 16, 2014

Unskilled and Destitute Are Hiring Targets for Fukushima Cleanup

By HIROKO TABUCHI

「仕事がない? 住む場所がない? 行くところがない? 食べるものがない?」 と宣伝は続く.「福島へいらっしゃい.」 これは原発事故後の廃棄処理労働者を確保する難しさを示す末期的な兆候だ.

FP MARCH 17, 2014

Why Is Japan So … Different?

BY DAVID PILLING

なぜ日本は違うのか? その歴史.

Project Syndicate MAR 18, 2014

Rethinking the Monetization Taboo

ADAIR TURNER


l  イタリアの若い首相

FT March 17, 2014

Matteo Renzi: A young man in a hurry

By Guy Dinmore in Rome


l  環境をめぐって

FT March 17, 2014

Boost the UK economy with green Budget measures

Nicholas Stern

Project Syndicate MAR 17, 2014

The Poverty of Renewables

BJØRN LOMBORG

FP MARCH 17, 2014

Think Again: Climate Treaties

BY DAVID SHORR

NYT MARCH 18, 2014

From Putin, a Blessing in Disguise

Thomas L. Friedman

Keystoneにパイプラインを引くのは嫌いだが,再生可能エネルギーに向かうコストだというのであれば,私は賛成する.それはプーチンの脅迫状を無視する力にもなる.炭素税を導入して,交換に,共和党の主張する給与税・法人税の廃止を実現する.


l  国際移民政策

Project Syndicate MAR 17, 2014

Migration on the Move

PETER SUTHERLAND and WILLIAM LACY SWING

移民を2015年からの国際的な政策課題として取り上げるべきだ.移民の家族に向けた送金は4140億ドルに達する.この事実だけでも移民を正規の政策課題として重視する理由になる.移民送金がしばしば不便である現状を是正しなければならない.

移民に対する間違った認識を改めるべきだ.移民は送り出し国の経済が破局にあるから生じたのではないし,受入国の労働者から機械を奪うものではない.むしろ,経済の状態と関係なく,移民がもたらす機会の方が重要である.

かつてに比べて,移民がもたらす利益に関して十分な証拠が集められ,また政治的な意志も高まっている.世論調査が示すように,人々が不安を感じるのは,非合法な,規制されていない移民である.


l  国際通貨の交代理論

VOX, 17 March 2014

One or multiple international currencies? Evidence from the history of the oil market

Livia Chiţu, Barry Eichengreen, Arnaud Mehl

金融危機にもかかわらず,国際市場におけるドルの支配的な地位は変わらなかった.しかし,グローバルな石油市場のように同質的な分野でも,ドル以外の通貨が利用される余地はある.ネットワーク効果も,商品の同質性も,歴史的にアメリカの石油供給が重要であったことも,決して決定的な条件にはならない国際通貨理論が必要だ.


l  21世紀の金融街

FT March 18, 2014

An Old Lady fit for the 21st century

FT March 20, 2014

The failure to share Big Data threatens finance

By Gillian Tett


l  イギリス予算案

FT March 19, 2014

UK Budget 2014: Handouts to rich and old paper over a bleak future

By Martin Wolf

FT March 19, 2014

A deft blend of prudence and politics


l  インドが中国のように成長する

FT March 19, 2014

A vote for Modi could make India more Chinese

By David Pilling


l  マレーシア航空機

NYT MARCH 19, 201

Malaysia’s Crisis of Confidence

By TASH AW4


l  EU官僚のトップ人事

SPIEGEL ONLINE 03/19/2014

Leading Candidates Square Off

The Race for Europe's Top Job

Jean-Claude Juncker and Martin Schulz

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The Economist March 8th 2014

Kidnapped by the Kremlin

Ukraine: The end of the beginning

Charlemagne: Disarmed diplomacy

China’s restless West: The burden of empire

Euroepan bank rescues: Cyprus one year later

(コメント) ウクライナを新しい冷戦と見るのは間違いかもしれません.しかし,新しいベルリン空輸や東西デタントである,というのは真実に近いと思います.軍事力をともなわない外交を見直すべきだ,とメルケルに忠告するのは,時代錯誤に思いました.

中国の911として昆明集団殺戮を取り上げるときに,記事は,中国がウィグル自治区の同化政策を改めるようになるはずだ,と指摘するのは正しいでしょう.アメリカもそうであったように,政治経済問題の「民族化」は,深刻な後遺症をもたらすと各地の政府が自覚するからです.

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IPEの想像力 3/24/14

テーマが思いつかない,というときは,新聞ですね.

月曜日の日経新聞を読みました.「ヤマト,中国全土に宅配」・・・すごいな.そして,「『自民党2.0』の危うさ」,夕刊には「中韓『歴史』で再び圧力」,など,興味深い記事があります.

日本の国内市場を宅配便が変えたのは,どこでも翌日配達という,今では当たり前ですが,黒猫ヤマトの物流革命でした.まさに,世界中でインターネットが広めた情報と民主化革命のように.だから,もし日本の市場がさらに中国と,少なくとも,上海地域や主要都市圏と緊密に統合されれば,その革命はもっと強烈な力を発揮するように思います.

為替レートや関税の処理が宅配業者によって代行され,消費者に定着するなら,そして,スマホの普及で学生だけでなく,中小企業の経営者も,労働者も,高齢者も,日本と中国の都市圏居住者が,まったく同じ画面で,同じサービスや商品を,同時に利用し始めます.TPPよりすごいな! と感動します.

もしヨーロッパの統合に第2次世界大戦後の50年を要したのであれば,アジアは5年で実現できるでしょう.政治が担う制度化や調整の役割も,一気に,そのレベルを高めねばなりません.

そこで芹川洋一の「自民党2.0」です.1994年の政治改革(小選挙区・政治資金規制・政党交付金)と2001年の橋本行革(官邸主導政治),そして,小泉純一郎の「自民党をぶっ壊す」が政治の制度的な圧力を大きく変えた,と指摘します.

その結果は? 芹川氏は,1.派閥の解体,2.政策追認機関,3.理念追求型政治,と考えます.自民党1.0が担ってきたさまざまな利害調整・政策チェックの機能が失われ,政党を率いる指導者の理念を実現する集団,あるいは,交付金の配分や人事権を官僚や官邸が独占するシステム,選挙ごとに大幅に入れ替わる,右往左往する新人議員集団に変わってしまった,と批判します.そこには時代を開く,新しいガバナンスが無い,というのです.

私はこれを読んで,旧い政治体質,すなわち,派閥の談合や政治献金による汚職,業界との癒着で決まった,よくわからない政治を変えて,成果を上げたのだ,と思いました.今後も,政策集団は積極的に情報収集や政策アイデアを競うことで生まれるでしょうし,多くの政治献金を集める個人や派閥より,国民の合意形成に優れた能力や言葉のセンスを磨くことが,政治指導者の条件となるからです.

他方,日中韓の歴史教科書問題は,政治家たちが正しい答えを出すというより,妥協や買収,脅迫で決めることはできない,という3国間合意を確立する方がよいでしょう.さまざまな対話プロセスを築いて,相互の理解や情感への歩み寄り,共感を広げる健全な交流プロセスを築くことが重要ではないでしょうか? 伊藤博文を暗殺した安重根が英雄であるかどうかは,植民地統治の歴史を全体として評価する中で,日本国民も理解することだと思います.

しかし,新聞をめくると,ウクライナ危機に対する欧州からの監視団派遣,台湾の行政院に侵入・占拠した学生たちの強制排除,フランス地方選で躍進する極右政党,という記事が並びます.中国とのサービス・貿易自由化協定が台湾から仕事を奪い,政治的な自由も奪うのでしょうか? それがクリミアのような併合や,それに対抗する過激な政治党派による政治の混乱を意味するとしたら,ヤマトの物流革命を抑えるべきでしょうか?

私は,この問題に,完全な答えはない,と思います.日本の政治が国民の合意形成を幅広い分野で生み出すものに変わるとしたら,さまざまな問題に積極的な外交を展開し,アジアの紛争激化より,平和的統合やルールを構築する役割を担える,と思うからです.日本が抱える多くの社会・政治・経済問題,そして平和憲法は,アメリカやヨーロッパよりもアジア諸国にとって優れた事例となるはずです.

アジアの超国家政治は,問題を解決せず,悪化させています.多角化も,軍備も,外交も必要でしょう.しかし同時に,日中韓で多くの問題を共有しつつ,解決のためのアイデアを競うことが,インターネットでつながる人々の商品やサービスの購入,物流・供給ラインのアジア規模での利用,観光客の流れで起きるかもしれません.それが,互いに賢く,豊かになる道です.

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