IPEの果樹園2014
今週のReview
3/3-3/8
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新興市場とラテンアメリカ ・・・ウクライナの革命 ・・・新しい冷戦 ・・・ヴェネズエラ,ボスニア,ウクライナ,タイ ・・・機械化と労働者 ・・・円安とアベノミクス ・・・アメリカ金融政策と新興市場
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP:
Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian,
NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington
Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l 新興市場とラテンアメリカ
SPIEGEL ONLINE 02/19/2014
Interest
Rate Blues
Emerging
Nations Demand Western Support
By Martin Hesse and Christian Reiermann
シドニーのG20後,新興諸国は協力して金利の上昇を抑えようとしているが,工業諸国には関心がない.各国は自分の問題を自分で解決するべきだと考える.
ベルリンからシドニーまで.およそ24時間かけて着いたドイツの財務大臣Wolfgang Schäubleは,いつものようにG20で世界経済の現状を議論した.
ユーロ圏の混乱が世界経済の及ぶのを至急何とかしろ,という議論は収まった,とSchäubleは満足する.資金はドルに回帰している.G20の議論は周知の分割に戻っている.新興市場,対,欧米だ.
中国やインドなどは,自分たちの高成長を背景に強い姿勢で欧米の引き起こした金融危機について批判してきた.しかし,彼らの成長が減速しつつある今,その立場は逆転しつつある.今やSchäubleは,アメリカとともに新興市場に反論し,IMFの成長予測もそれに味方する.
2011年のカンヌ・サミットで,新興市場は工業諸国から警告されていたはずだ.危機を脱したら,工業諸国は金融政策を正常化する,と.そのときが来たのだ.そもそも金融政策は,政府から独立した中央銀行によって決定されている.
Schäubleは,新興市場の問題が国内に発しているにもかかわらず,彼らが工業諸国を自分たちの失策の言い訳に利用していると考える.欧米諸国が求めるのは,the OHIO principle("Own House in Order")である.中国が投資を抑制する方向転換を始めていることは,世界市場への需要に影響する.
アメリカの景気回復と低金利政策の行方に,世界経済は決定的に依存している.
FT February 24, 2014
Brazil:
Loss of faith
By Joe Leahy
FT February 25, 2014
Latin
America stops dancing to the populist beat
By Daniel Lansberg-Rodriguez
ラテンアメリカ諸国は,ようやくポピュリズムや左派のマルク主主義イデオロギーと決別できたようだ.ブラジルのルセフ大統領は,メキシコやチリほど明確に,こうした方向を示していないが,ヴェネズエラの社会主義モデルがラテンアメリカの左傾化を指導する時代は終わった.大衆抗議デモに囲まれたルセフは,投資家や市場を拒むポピュリスト政策の変更を求められている.
FP FEBRUARY 25, 2014
Get
Real
BY DANIEL ALTMAN
ブラジルは,ワールドカップの熱狂が4か月後に爆発する前に,その熱気を不況によって一掃されるだろう.
国際投資家のポートフォリオにおいて,ブラジルは魅力的な投資先だった.先進諸国の市場が緊密に連動する中で,ブラジル市場は相関性が低く,しかも市場規模が大きかったからだ.アメリカ以外の避難先としても好まれた.ブラジル株式市場Bovespa株価指数は,世界金融危機で半分に下落したが,その後,外国投資が回復していた.
投資と株価上昇は自己実現的になり,2009年には政府がバブルを恐れて資本流入を抑えるために短期投資に税を導入し,いくつかの証券に対する金利を6%にまで引き上げた.しかし,すでに成長は緩和し,株式市場ほどの回復を示していない.
ブラジルの成長を牽引した国際商品価格の上昇と都市化は,今後,その勢いが失われる.政府は政策を転換したが,遅すぎたし,小さすぎた.
商品ブームの間に,ブラジル政府がインフラを改善するために積極的に投資したとは思えない.その税制は複雑すぎて企業の投資を妨げている.人的資本が形成されても,ビジネス環境や法の支配が改善できない以上,無駄になるだろう.
FT February 26, 2014
The
instability in central bank divergence
Mohamed El-Erian
NYT FEB. 27, 2014
Cry
for Me, Argentina
Roger Cohen
商品ブームが去った南アメリカでは,ブラジルがアルゼンチンに変化しつつあり,アルゼンチンはヴェネズエラに,ヴェネズエラはジンバブエに変化しつつある.
アルゼンチンは今も,そのドンキホーテ的な,政治的冒険主義に振り回されている.経済データを滅ぼし,複数為替レートが生じ,グローバルな資本市場から追放され,所有権を破壊する.30年も前のフォークランド紛争(マルヴィナス戦争)にこだわっている.
1世紀前,アルゼンチンはスウェーデン,フランス,オーストリア,イタリアよりも豊かだった.日本よりはるかに豊かだった.世界でもっとも肥沃な土壌を持つ,空っぽで膨大な土地があった.ヨーロッパからの移民たちがここに来て,アメリカ合衆国と同じ可能性を持っていた.しかし,今は1人当たり所得でアメリカの3分の1もない.一人の大佐Juan Domingo Perónとその妻Eva (“Evita”)がアルゼンチンの権力妄想を形成したからだ.
移民たちはここに来ても,外国のパスポートのまま生活した.ブラジルやアメリカ合衆国のように国家を形成しなかった.豊かな土地で,中枢の権力・大国から遠く離れて,独自の周辺的幻想とその悲しい舞踊に生きた.アルゼンチンの政治は独自の姿を育てた.ナショナリズム,ロマンティシズム,ファシズム,ソーシャリズム,後進性,先進性,軍国主義,エロティシズム,幻想,音楽,死,無責任,抑圧.その名はペロニズムだ.
ペロンは,軍人が政治権力を握る上で,ラテンアメリカの貧しい人々と金をばら撒くことを結びつけることが有効だと気付いた.私がアルゼンチンから記事を送っていた1980年代,軍事支配体制の狂気から抜け出したばかりであった.この大陸を象徴するイメージを一つ上げるなら,行方不明になった自分の愛する息子の,くしゃくしゃになった写真を握りしめて,やむに已まれず泣き続けるアルゼンチンの母親の姿であった.「ちょっとした質問」のために彼女らから連れ去られた息子は,そのまま消えた.軍事政権は「行方不明」という言葉の意味を変えた.彼らが敵とみなした,3万人もが消えたのだ.
25年前,私がこの国を去ったとき,ハイパーインフレーション(1989年に5000%),資本逃避,貨幣価値の不安定化,極端な国家介入,外貨準備の不足,競争力の低下,商品輸出への過度の依存,ペロニズムの幻想が広まっていた.
今もインフレ率は高い.ハイパーインフレーションではないが,多くが共通している.
l ウクライナの革命
SPIEGEL ONLINE 02/20/2014
Chess
in a Minefield
The
Global Implications of the Ukraine Conflict
By Uwe Klussmann
ウクライナにおける流血の惨事は,西側とロシアとの対立に新しい火を点けるだろう.ヨーロッパの支配をめぐるチェスボードが問われる中,ウクライナが内戦に突入する.
33年前のSPIEGELに,当時のアメリカ国防長官Caspar Weinbergerのインタビューが載っている.「内部の矛盾で崩壊したソビエト帝国が,大爆発によってではなく,ぶつぶつ不満を発しながら消滅するように,われわれは確実に保証する必要がある.」
12月に,アメリカ上院議員John McCainはキエフを訪問し,独立広場で群衆に演説した."People of Ukraine, this is your moment! The free world is with you! America is with you!"
言い換えれば,冷戦が戻ってきたのだ.モスクワは再び敵になった.アメリカ大統領の安全保障補佐官であったZbigniew Brzezinskiは,ヨーロッパをめぐるチェス盤はいつも同じだ,と述べた.アメリカ,ロシア,EU,NATO. 多くの地雷原がある.
Brzezinskiは近著で,ウクライナを失えば,ロシアはアジア的な帝国になり,中央アジアの紛争に引き込まれる.逆に,ウクライナを支配するロシアは,強力な帝国としてヨーロッパに対峙し,ドイツとの結託や,ヨーロッパと合意してアメリカに対抗する可能性があり,これを許してはならない,とアメリカの戦略を解説した.
この戦略には欠点がある.バルチック諸国と違って,ウクライナには4500万人の人口が住む.これをロシアに統合するのは難しい.しかもウクライナは分裂している.ウクライナ西部は経済的に弱いが,ナショナリストが強い.製鉄,造船,など,ウクライナの主要企業は東部にあり,ロシア市場に向いている.
首都キエフでは日常的にロシア語が使用されている.東部とクリミア半島にはロシア人が多く住んでいる,黒海に面するクリミア半島は住民の意思に反して1854年にウクライナに帰属した.クリミアとセヴァストポールに本拠を置くロシアの黒海艦隊が次の紛争になるのは確実だ.
アメリカがウクライナに対して,西側に加わることを支援する,という約束も危険である.現場の指揮官が法律を無視し始め,ヨーロッパでもっとも貧しい国の一つが内戦に陥る.すでに各地で自衛の武装が始まっている.
ドイツ外相Frank-Walter Steinmeierは,かつてウクライナを「火薬」と呼んだ.誰も火を点けてはならない.大爆発の影響はウクライナをはるかに超えて広がるから.
The Guardian, Friday 21 February 2014
At
stake in Ukraine's drama is the future of Putin, Russia and Europe
Timothy Garton Ash
腐敗した政治体制に反対するウクライナの抗議活動は,ヨーロッパの価値を守る戦いなのか? ウクライナで起きることは,ウクライナ人だけでなく,ロシア人,ヨーロッパ,われわれが「革命」に関して意味するものを変えるだろう.
もし激しい抗議運動にも関わらず,シリアや旧ユーゴスラビアのような内戦が回避されたら,人々は破滅の縁にとどまって,南アフリカが示したように,国家と民族とを一緒に救い出すだろう.「国家民族a state-nation」とは,市民的な国民のアイデンティティを共有する国家のことである.単一のエスニックからなる民族を前提した「民族国家a state-nation」ではない.
この数か月が示したように,ウクライナとは,正当に機能する国家でもなければ,十分に成熟した民族でもない.Viktor Yanukovychは人殺しであるが,しかも無能な人殺しだ.規律ある治安警察は抗議する民衆をランダムに銃殺したりしない.また,経済も,議会も,ウクライナの統治はヨーロッパ国家の正常なものではない.それらは大統領とその家族に結びついたオリガークのために操作されたものだ.
ウクライナの民衆が憤慨し,命を捨てても変えようとしたのは,こうした政治の姿である.
ロシアは今なお帝国である.ウクライナを失ったロシアは,国家民族になる可能性がある.しかし,ウクライナはロシアの歴史的アイデンティティにとって欠かせないものであり,イングランドにとってのスコットランド以上に重要だ.ウクライナは現在のロシア人たちが最初に住んでいた土地である.
あるロシア人ジャーナリストが述べたように,ソ連崩壊後,ロシアにとって最も重要な事件はウクライナで起きた2004年のオレンジ革命であった.プーチンの「政治技術者たち」はこの革命がロシアで起きないように最大限の努力を払った.その一人,Marat Gelmanは,プーチンがウクライナ政府に与えた150億ドルをたとえて,独立広場Maidan Squareはロシアが買ったもっとも高価な工芸品だ,とネット上にささやいた.
EUは,ボスニアで失敗したが,ウクライナではその価値を守るために戦うのだろうか? ユーロ圏の危機を脱したとしても,加盟諸国が一致して,長期の戦略を描けるのか?
進歩的な抗議運動は,暴力とギロチンに終わるのか? あるいは,平和的な大衆抗議と交渉による体制移行が実現可能なのか? 壊れやすい取引を維持し,街頭における衝突を鎮静化することで,ヨーロッパは歴史から学ぶことを示せるだろう.
FT February 21, 2014
Ukraine’s
twin torments of geography and politics
By Tony Barber
西側はYanukovychを批判する単純化に向かってはいけない.極右の暴力集団も反政府派の指導者を認めていない.
オレンジ革命後の政治過程は,反政府派の指導者たちが互いに敵対し,その結果として,大統領選挙ではYanukovychが勝利したのだ.
NYT FEB. 21, 2014
Ukraine
Leader Agrees to Deal Amid Move to Free Archrival
By ANDREW E. KRAMER and ANDREW HIGGINS
Project Syndicate FEB 21, 2014
Can
Ukraine Be Saved?
YEVHEN BYSTRYTSKY
NYT FEB. 21, 2014
A
Week of Fire and Ice
By SERGE SCHMEMANN
FP FEBRUARY 21, 2014
A
House Still Divided
BY CHRISTIAN CARYL
NYT FEB. 22, 2014
The
Games Putin Plays
Ross Douthat
NYT FEB. 22, 2014
How
It All Began: A Cold War Battle Heats Up
By DAVID M. HERSZENHORN
FP FEBRUARY 22, 2014
A House
United
BY ALEXANDER J. MOTYL
The Guardian, Sunday 23 February 2014
Protesters
in Ukraine remind us of the priceless benefits of being EU members
Chris Huhne
The Guardian, Sunday 23 February 2014
Russia
feels double-crossed over Ukraine – but what will Putin do?
Simon Tisdall
FT February 23, 2014
Russia
needs a ‘Finland option’ for Ukraine
By Zbigniew Brzezinski
ロシアがViktor Yanukovichを支援したのは失敗だった.Yanukovichは,嘘つきで,臆病な,盗人である.貧しい国なのに彼の宮殿のような個人の邸宅は,その人物を物語る.
しかし,ロシアはウクライナを今なお破滅的な内戦,国際的な危機に向かわせる力がある.クリミアの分割や工業的な東部を分割することができる.プーチンは,そのような攻勢がウクライナ人の多数に,ロシアに対する永続的な憎しみを残すことを無視するかもしれない.
それはプーチンの描く,旧ソ連のノスタルジーに依拠した「ウクライナ同盟“Eurasian Union”」の行方にも関わる.ウクライナの民族的な自己主張は,すでに,中央アジアの脱ソ連共和諸国における要塞化を進めている.特に,カザフスタンとウズベキスタンでは,ロシアによる主権の剥奪行為が続くことに抵抗を強めつつある.こうした諸国の新しい,自己主張を強めた,民族的政治・ビジネス・エリートたちは,「ユーラシア同盟」の名の下にロシア帝国の一部に戻りたいとは決して望まない.
西側は,ロシアの教唆による地域的な暴力の爆発を抑える建設的な役割を担う必要がある.それにはアメリカとEUの協力が必要だ.アメリカはウクライナの真の独立と領土的な統一を支持し,それがロシアに対しても,EUに対しても同様に,緊密な経済関係を維持できること,軍事的な同盟には決して関わらないが緊密な経済関係を追求する,すなわち,フィンランドが効果的に実行しているモデルに従うことを,プーチンに理解させるべきだ.
アメリカはプーチンがそれを受け入れるように促す選択肢を持っている.もしロシアが内紛に介入し,分離を支援すれば,それは経済的なコストをもたらす,ということだ.個別の国家間における金融的な制裁から,WTOや世銀を通じたロシアの役割の見直し,G8による工業諸国の協調行動,がある.特に,EUはロシアの主要貿易相手である.
ヨーロッパの行動はドイツとイギリスが指導するだろう.イギリスは,ウクライナのオリガークたちがロンドンで汚職によって得た富を享受している楽園であるから,その影響力を行使するべきだ.10人のトップ・オリガークたちが10億ドルずつの寄付を行うなら,それは歓迎されるだろう.悪名高い,裕福な歯医者であるYanukovichの息子なら,100億ドルは寄付するはずだ.
アメリカとEUは,また,ロシアの建設的な協力を含めて,キエフの民主勢力が極端な報復を行わず,国家の統一と穏健化に向かうよう圧力をかけるべきだ.穏健派のMaidan Squareが指導者になることで成功するかもしれない.
遅かれ早かれ,ウクライナは民主的なヨーロッパの一部である,と私は信じている.そして,ロシアが失われた帝国の懐古に耽る,停滞した国として孤立するのでない限り,ロシアもまたウクライナに続くだろう.
FT February 23, 2014
The
hour of Kiev and Europe
ベルリンの壁崩壊から25年を経て,再び,ヨーロッパは革命の激情に翻弄されている.
1989年,ソビエトの覇権を脱した中東欧の諸国を,平和的に,EUが迎え入れた.ウクライナの騒乱はまだきわめて初期段階であるが,それが意味する大きなチャンスと,もちろん途方もない危険は,ウクライナだけでなく,EUとロシアにとっても真実だ.
最優先されるのは,ウクライナの4600万人だ.1991年ソ連の崩壊で平和的に独立したウクライナ国民は,核武装を破棄し,特に2004年のオレンジ革命後,民主主義への強い希望を持つようになった.しかし,彼らを無視する腐敗した指導部が経済危機を招いたのだ.モスクワの支援するYanukovich体制が崩壊したことは,民主的な機能する国家に向けて変化するチャンスである.
それにはプーチンの協力が必要だ.プーチンは,旧ソ連の帝国を復活させるユーラシア同盟を唱えているが,フィンランド型の解決を受け入れるべきだろう.ウクライナを同盟に留めるため介入することは,ロシアの近隣に悲惨な戦争状態を広めることになる.これは1956年のハンガリーや1968年のチェコスロヴァキアではない.優れた戦略家であるなら,プーチンは機能しないロシアの衛星国としてウクライナを不安定化する戦術が,正しい政策ではないと知るだろう.
過去10年間,ユーロ危機や緊縮策に関する政治的紛糾,諸国民の政治的な離反により,EUは国際政治のアクターとして有効な役割を果たせなかった.しかしウクライナの事件は,EUがその境界に住む多数の人々にとってどれほど重要であるかを示した.
オバマとプーチンとの関係は決して良好とは言えなかったが,今や再構築の時である.1989年の西側指導者たちが,クレムリンとともに,新しい現実を受け入れた価値ある歴史を,ここで繰り返すべきだ.
NYT FEB. 23, 2014
What
the West Must Do for Ukraine
By ULRICH SPECK
NYT FEB. 23, 2014
Why
Russia Won't Interfere
By DMITRI TRENIN
Yanukovychをプーチンの操り人形だと考えるのは間違いだ.プーチンはむしろウクライナのやり方にいつも憤慨していた.YanukovychはEUとロシアの間で動揺し,頼りにならない指導者であった.
モスクワは,ウクライナのオリガークたちが,Yanukovychの支援者であり,しかも反ロシア的であることをよく知っている.彼らがウクライナの実質的な支配者であり,ロシアの企業に買収されることを恐れている.彼らはロシアで利益を得ても,それを西側の銀行にため込んでいる.
YanukovychがEUとの協定締結を拒んだのは,最後になって,EUから金融的支援を得られないとわかったからだ.もし合意すれば2015年に再選されないだろう,とYanukovychは恐れた.合意は金融支援もなく,ロシアとの貿易が急減することを意味した.そしてロシアからの旧ソ連型重工業支援策を受け入れたのだ.
ウクライナの「2月革命」は,ロシアとの緊密な経済統合,というアイデアを破壊した.それはモスクワにとっても喜ばしいことだ.ウクライナをジュニア・パートナーとした大国化を目指すより,ロシアは自国民の健康状態や教育水準を高め,雇用条件を改善することができるからだ.モスクワは分割や南東部のロシア包摂を望まないだろう.それはロシアが嫌悪する境界線の内戦状態を招くからだ.モスクワにとって最善の選択肢は,状況を静観し,徐々に分権化が進むことを待つことだ.
ウクライナ人や西側諸国は,連邦制への移行を分離の前段階として嫌う.しかし,実際は連邦制がウクライナの統一を保つだろう.多様な各地域は独自のやり方で模索し,互いにチェックできる.分権化を促すことが,ロシアにとっても長期的に現実的な戦略である.
NYT FEB. 23, 2014
Deeply
Bound to Ukraine, Putin Watches and Waits for Next Move
By STEVEN LEE MYERS
FP FEBRUARY 23, 2014
White
House To Russia: Stay Out Of Ukraine
BY J. DANA STUSTER
The Guardian, Monday 24 February 2014
What
Ukraine needs from the EU is a balancing act
Misha Glenny
FT February 24, 2014
An
east-west battle over Ukraine can be avoided
By Gideon Rachman
ウクライナをめぐってモスクワと西側とが軍事衝突する可能性は確かにあるが,それはロシアの利益にも,西側の利益にもならない.逆に,ロシア人,ヨーロッパ人,アメリカ人のすべての利益にかなうのは,ウクライナの内戦や財政破たんを回避し,統一国家として維持することだろう.
しかし,ロシアと西側が「共通の利益」を話し合うのは難しい.双方が激しい表現で警告を発する背後には,根本的な見解の相違がある.ロシア人の多くはウクライナが独立国家であることをそもそも受け入れたがらないし,それを認めてもプーチン政権はロシアの安全保障や文化的荒廃地,影響圏であると確信している.他方,EUは,この貧しい,巨大な人口規模の国を,新しい加盟国にすることを大いに躊躇する.しかしヨーロッパ人やアメリカ人は,ウクライナが民主主義や自決権のために戦うことを支持しなければならない,と感じている.
西側政府は,クレムリンの手下たちが無慈悲で,腐敗し,暴力的で,理想を冷笑していると考える.モスクワは,西側の政策が偽善的で,裏表があり,リベラルな理想を唱えながら,実はグローバルな大国として行動するロシアを破壊したいのだ,と考える.こうした背景がある限り,ウクライナを救出する協調行動は実現しない.たとえそれがすべての者の利益になるとしても.
ロシアにとっても,EUにとっても,ウクライナの混乱が意味するコストは甚大である.クリミアの軍事拠点が使えなくなり,西側との関係が悪化し,東欧の緩衝地帯を持たないまま冷戦が復活する.あるいは,シリアの内戦に南の境界を脅かされるだけでなく,ウクライナの内戦が東の境界を脅かす.そのデフォルトは,EUとロシア,双方の金融安定性にも及ぶだろう.
それゆえ,西側はロシアの安全保障に関する懸念を認め,ウクライナとの軍事同盟を将来にわたって明確に否定する.NATOはウクライナに拡大しない,と協定として明記しても良いだろう.他方,ロシアはウクライナがEUに参加することに反対しない.それは決してロシアの利益を損なうゼロサム・ゲームではない.ロシア人には,EU本部がウクライナの加盟に非常に慎重であることを保証しても良い.
こうした妥協策が実現するとしても,全てはウクライナ国民が政治的に決めることである.そのための選挙が非常に重要だ.5月の大統領選挙は,ロシアもEUも外部勢力の介入を否定しており,世界各地で選挙監視の実績がある国連を通じて,ウクライナ民主主義の再生を監視するのがよいだろう.
FT February 24, 2014
Ukraine
must cease to be a tasty trophy for external rivals
By Fyodor Lukyanov
FT February 24, 2014
Ukraine’s
leaders must be as mature as its citizens
By Victor Pinchuk
Project Syndicate FEB 24, 2014
Reviving
Ukraine’s Economy
ANDERS ÅSLUND
ウクライナは3つの経済問題を解決しなければならない.1.経常収支赤字(GDP比8.3%),2.財政赤字(GDP比8%に達し,債務が急増している),3.不況(5四半期に及ぶ),である.
これらはYanukovichの経済政策が,自分とその家族,仲間の資産を増やすために行った政策であったことを示すものだ.新しい議会は政府と中央銀行総裁を刷新し,変動レート制によって通貨価値を減価させるべきだ.それは約10%になるだろう.それにより経常収支赤字を減らし,高金利を止めて,民間投資が刺激される.
Yanukovichの強欲な政策は廃止される.何より財政赤字の削減であるが,それには税収増によってではなく,大企業への補助金を削減することだ.汚職のための天然ガス価格に対する補助金を撤廃し,低所得層への支援に切り替える.競争的な入札を行い,公企業の不透明な捨て値の売却を中止させる.輸出企業への戻し税も廃止する.中小企業の多くを廃業させた極度に複雑な税制を破棄し,簡素化する.それは零細企業を復活させるだろう.
すでに議論を尽くしたEUとの協力協定を直ちに成立させ,さらに包括的な自由貿易圏を成立させる.ウクライナの輸出業者に広大なEU市場が開放され,それはウクライナへの直接投資も刺激するだろう.
NYT FEB. 24, 2014
Wary
Stance From Obama on Ukraine
By PETER BAKER
2004年のオレンジ革命に対して,ブッシュ大統領は積極的に関与した.その後の民主化と政府を支援して,Yushchenko大統領はアメリカ議会に招かれて演説した.
イエール大学のJohn Lewis Gaddisは,オバマが民主化促進で手を抜いている,と考える.他方,オバマ政権の顧問たちは「自制政策」の効用を説く.オバマは,ブッシュ政権の十字軍的な冒険や「アラブの春」の結果にも失望している.他の社会を変えることにアメリカが公に関与するのは慎重であるべきだ,と考える.その反動を懸念するのだ.
オバマの批判者たちは,その姿勢をアメリカ的な価値に対する裏切りとみなす.オバマは,再選されたブッシュ大統領の就任演説がアメリカ的な価値を示す素晴らしい内容であると認めつつも,過剰な約束,過剰な期待をもたらす,と批判した.
ウクライナ情勢に関してもオバマは公に発言を控えてきた.重大な転換点で登場するのが正しい,と考えたからだ.Yanukovichが抗議の群衆に対して軍を動かした時点で,オバマはプーチン大統領と長時間の電話をした.
FP FEBRUARY 24, 2014
After
the Revolution
BY JAMILA TRINDLE, KEITH JOHNSON
FT February 25, 2014
Russia
is right to be upset over events in Ukraine
By Georgy Mirsky
20年前,私は外国の友人に言った.ソビエト連邦の他の14の共和国が無くてもソ連は生き残る.しかし,1991年,ウクライナが国民投票で独立を決めたとき,ソ連は消滅したのだ,と.
それは,重工業の擁する経済的な意味でもないし,「ロシアの誕生地」という情緒的な意味でもなく,地政学的な安全保障の重要性によるものだ.
ロシアは連戦の感覚を忘れていない.アメリカとの戦争になるとは考えないが,何か機会があればアメリカはロシアの行動を損なうと警戒している.ウクライナはロシアにとってグルジアよりはるかに重要だ.
NYT FEB. 25, 2014
Has
the West Already Lost Ukraine?
Slawomir Sierakowski
FT February 26, 2014
Sevastopol
yearns for mother Russia
By Courtney Weaver in Sevastopol
NYT FEBRUARY 26, 2014
How
the West Can Shape Ukraine
NYT FEB. 26, 2014
Ukraine
and the Perils of Division
By SERGE SCHMEMANN
FP FEBRUARY 26, 2014
Dear
Kremlin: Careful with Crimea
BY TIMOTHY SNYDER
プーチンがロシアの西側でクリミアをエスミックの視点で分離するのであれば,ロシアの東側も考えておくべきだ.
ロシアの東部,シベリア地方は,世界最長の国境線で中国と接している.広大な土地に多くの資源と農地を擁しながら,ロシア人の人口は600万人しかいない.今や中国人の流入を許して開発の利益を得ている状態だ.国境を接する9000万人の中国人が,同じことを考えるかもしれない.
FP FEBRUARY 26, 2014
First
Ukraine, Now Georgia?
BY GIGA BOKERIA
FP FEB 26, 2014
Don't
Count Out Tymoshenko in Ukraine
By Marc Champion
FT February 27, 2014
Ukraine:
On the edge
By Neil Buckley and Roman Olearchyk
FT February 27, 2014
Russia
should avoid raising the stakes over Ukraine
Ivo Daalder
Project Syndicate FEB 27, 2014
The
Last Laugh in Ukraine
PETER SINGER
VOX 27 February 2014
Ukraine:
What emergency measures and what long-term changes are needed?
Gérard Roland, Yuriy Gorodnichenko
暫定政府による緊急経済計画には何が含まれるべきか?
1.通貨Hryvnyaの変動レートによる減価.2.銀行システムへの流動性と自己資本供給.3.数年間の財政再建計画.4.対外赤字の抑制.債務の組み換え,緊急融資もしくはデフォルト.5.ロシアとの貿易戦争,エネルギー価格の引き上げに備える.6.経済的なショックを受ける企業や労働者への緩和策.7.EUとの協定.
Bloomberg FEB 27, 2014
Five
Reasons to Listen to Russia on Ukraine
By Marc Champion
(後半へ続く)