IPEの果樹園2014

今週のReview

2/24-3/1

 

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貧困・不平等の解決 ・・・エコノミストの世界予測 ・・・新興市場の危機 ・・・イングランドの洪水 ・・・TPPNAFTA ・・・日中非難合戦とアメリカ ・・・ウクライナの騒乱と国際政治 ・・・中国の国際関係 ・・・シリア停戦の国際会議 ・・・ボスニアとEU ・・・分離独立主義のモデル ・・・安倍の内政と外交 ・・・ロシア経済 ・・・国際金融システム ・・・戦略の欠如 ・・・移民を歓迎する町

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  貧困・不平等の解決

NYT FEB. 13, 2014

A Valentine for Restaurant Workers

Mark Bittman

バレンタイン・デイを,ウェイターのような,レストランなどのチップに頼るサービス労働者に感謝する日にしたい.それは母の日に次いで,彼らの仕事が最も忙しくなる日である.彼らの賃金は,この23年間,2ドル13セントのままである.

NYT FEB. 13, 2014

Inequality, Dignity and Freedom

Paul Krugman

共和党員たちは,オバマケアが雇用を減らす,という嘘をつくのは止めた.しかし,今度は別の主張を広めている.オバマケアは「労働の尊厳を奪う」というのだ.

しかし,これほどの所得格差がある中で,労働者に同じ尊厳があると主張することの方が愚かである.2012年,ヘッジファンドのトップ・マネージャーやトレーダー40人は,合計で,167億ドルを得た.それは普通の労働者の40万人分である.

どうすれば労働者たちの尊厳は保てるのか? 彼らのボスは解雇し,雇用を海外に移してしまうが,それでも労働者たちが医療サービスを受け,子どもに機会を保障し,最低限の所得を得るには,どうすればよいのか?

保守派の方針は,セーフティーネットを解体し,最低限の給付や民間のチャリティーに代替することだ.そうやって,低所得の労働者たちから尊厳をはく奪する.それを,自由のためだ,と主張する.

オバマケアは奴隷制だ,という主張など相手にするな.

FT February 16, 2014

AmericarisksbecomingaDowntonAbbeyeconomy

By Lawrence Summers

中産階級の所得を増やし,貧困を減らすためにも,経済全体の成長率が主要な目標であった.しかし,もはやそれは正しくない.

富裕層や企業家の資産からの再分配で不平等を減らす政策が革新や成長を損なわないのであれば,それは望ましいが,そのような政策は見つからない.金融ビジネスに関わる富の集中を是正する政策はあるだろうが,それによって富を得るのは資産家である.

不平等を抑えるためには,市場の機能を生かしながら,それを税制によって緩和するのが良い.市場を抑え込む政策は,意図しない結果によって犠牲者を増やす.

NYT FEB. 16, 2014

Barons of Broadband

Paul Krugman


l  エコノミストの世界予測

FT February 14, 2014

Forecast: The world in 2114

エコノミストたちは,地球工学,能力を高める・若返り医薬品performance-enhancing drugs,人工知能により,私たちの未来が変わる,と予想する.

Martin Weitzman ・・・現在と100年後で大きく変化するのは,気候である.この裂目をつなぐ技術が求められる.われわれはすでに,化石燃料を燃やし,農業,住宅,輸送システムで気候を変えている.中国やインドなど,さらに多くの人口が同じことを始める.

その一つは,「宇宙の日よけ」を構築することだ.太陽からの放射熱を遮断する.ただし,モラル・ハザードを回避する制度が必要だ.

Alvin Roth ・・・世界経済は成長し,統合化を進め,人々は厳しい競争において革新を続け,機械と選択肢を増やす.寿命は伸び,ますます多くの若さと引退後の生活を手に入れる.その時求められるのは,さまざまな能力を高める・若返りのための医薬品performance-enhancing drugsだ.医療だけでなく,スポーツも,知能も,セックスも.

Robert Shiller ・・・人口が増加し,資源は枯渇し,大量破壊兵器は拡散し,技術革新で人々のキャリアや労働市場がかく乱される,という世界で,かつてないリスクに私たちはさらされる.

これまでもそうであったように,これに応じたリスク管理の技術は発展するだろう.しかもその技術は民主化され,ますます多くの人が利用できるようになる.それは優れた人工知能の助けによって一気に進むからだ.

同時に集団的な意識は地理や社会の境界を超えて形成される.ワールド・エリートたちが共有するコスモポリタン・カルチャーだけでなく,さまざまなサブカルチャーが繁栄する.支配者たちの間には新しい亀裂も生じ,文化のグローバリゼーションが安定することはない.それゆえ,新しいリスク管理に投資することだ.


l  ハリウッドの描くウォール街

FT February 14, 2014

Sex, violence and movie certification

By Sarah Churchwell

NYT FEB. 15, 2014

The Tame Truth About the Wolves of Wall Street

By WILLIAM D. COHAN


l  新興市場の危機

FT February 14, 2014

Emerging-world fashions that change with the seasons

By Mohamed El-Erian

Project Syndicate FEB 17, 2014

Tailspin or Turbulence?

KEMAL DERVIŞ

アメリカ連銀のQE終息で新興市場の不安が高まった.これからQEが逆転すれば危機が頻発し,メ1994年キシコや1997年アジアのように,国際的に伝染するのだろうか?

強気の意見では,新興市場の債務/GDP比率は低くなった.以前より財政政策の余地はある.また,以前のような,固定為替レートを守ることもない.銀行の多くの準備を持っており,外貨のリスクを抑えている.

なぜ脆弱性が議論されるのか? 資本が流出して為替レートが減価しても,それは輸出を増やし,輸入を減らす.財政や銀行が健全であれば,こうした調整過程が進み,経常赤字が減って資本流入の必要も減らす.

しかし,脆弱性は民間部門にある.レバレッジによる債務の累積が家計部門や非銀行の企業部門にある.企業は安価な外貨建資本を大量に取り込んだ.

大幅な減価は企業にとって債務返済を不可能にし,それが大規模に広がると,たとえ準備を持っているとしても,銀行に被害が及ぶ.銀行部門が動揺すれば政府は介入しなければならず,財政を悪化させる.

変動レート制には,こうした意味で,実際上,政治的な限界があるのだ.悪循環が作用する.大幅な減価,民間企業のバランスシート悪化,銀行・金融部門の悪化,財政の悪化,そして,さらなる減価.これを止めるには,為替レートの減価を管理しなければならない.それは国によって条件が違う.

中央銀行の外貨準備が豊富な国は余裕がある.少ない国は資本流出を止めるため高金利にしなければならない.それには失業や不況が伴うが,完全な恐慌にはならない.経常収支赤字の大きさ,国内の政治対立が関係する.

2014年の資本逆転は大きくならないだろう.先進諸国で金利を急激に上げる国はない.アメリカの経常収支赤字も減っている.

最近の金融市場の動揺は,極端な金融緩和で世界的に金融資産価格が高騰していることを恐れたものだ.より『正常な』長期的水準に戻るだろう.他方,中期的には,新興市場の技術的なキャッチアップ,収斂の余地は残っており,その成長は各国のガバナンスや改革の程度にかかっている.

FP FEBRUARY 19, 2014

Dilma's Power Problem

BY KEITH JOHNSON

「ブラジルがエネルギー輸出大国になる,おそらく数年で,というのは政治によって遅れている.ブラジルが海底油田開発を有利に行えるのか,疑わしい.かつて躍進したバイオ燃料も後退している.今年はエネルギー産業の支払能力が問題になっている.」

例えば,選挙の年にインフレをどうしても抑えたい政府は,国営の石油会社に石油価格を低く維持させているから,大幅に赤字を出し,債務が膨らんでいるからだ.海底油田開発に十分な投資ができない.

FT February 20, 2014

Emerging markets can learn from America’s bank stress tests

By GillianTett

Project Syndicate FEB 20, 2014

Overshooting in Emerging Markets

MICHAEL SPENCE


l  イングランドの洪水

FT February 14, 2014

The floods will test whether you sink or swim, Mr Cameron

By Alastair Campbell

マスコミはいつも危機を唱えているが,政府にとって本当の「危機」とはめったにない.トニー・ブレアの政府に関わって,危機は5つしかなかった.3つの戦争(コソボ,911,イラク),2つの国内事件(口蹄疫,燃料危機)だ.危機とは,間違った決定が政権を失うような事態である.

キャメロンは,彼にとって最初の危機に直面したようだ.

The Guardian, Friday 14 February 2014

These floods are washing away the founding logic of David Cameron's government

Jonathan Freedland

ブッシュ政権がハリケーン・カトリーナの対応のまずさが政治的支持を失わせたように,災害は独自の言語をもたらす.政府の最重要任務は,市民の安全を確保することである.その敵が何であれ.

「金に糸目はつけない."Money is no object,"」とキャメロンは言った.運輸大臣が,後から,「白手形ではない.no "blank cheque"」と断ったが,だれもそんなことを気にしない.政府のトップが明言したのだから.

キャメロンの言葉は過剰になる傾向がある.この連立政権は単純な約束によってできた.「緊縮策は避けられない.他に選択肢はない.there was no alternative.」 つまり,政府に出せる金はない,という意味だった.

しかし,今度は自然が相手だ.これに勝つには金がいる.救済に金を出す.必要なことには何でも支出する.これでは「緊縮」メッセージは台無しだ.なぜ住宅給付削減策が必要なのだ? 洪水被害よりももっと困っている人がいるのに,なぜ政府は支出を削るのか?

洪水は,自然災害だけでなく,キャメロン政権の「小さな政府」哲学を破滅させた.

The Guardian, Sunday 16 February 2014

Flood defences: George Osborne tackled yesterday's crisis at the cost of today's

Chris Huhne

FT February 17, 2014

The storms reveal how little governments can do

By JananGanesh

BLOOMBERG Feb 19, 2014

Seven Steps to Surviving a Disaster

By Jim Yong Kim

昨秋,フィリピンを襲った台風ハイアンTyphoon Haiyan6000人の死者を出した.その深刻な被害は,我々が災害に正しく対処することを求めている.気候変動が進む中でも,ますます都市化は進み,多くの人が自然災害(洪水,嵐,地震)のリスクにさらされている.

リスクを抑える7つの教訓がある.1.リスクを特定する.2.予防は可能である.最悪の被害を抑えることにはコストがかからない.3.公共投資・公共政策にはリスク・アセスメントをする.4.自然災害の被害予測を情報公開する.5.健全なエコ・システムを守る.6.政治の指導力を発揮する.7.再建において改善する.

2004年の津波の後,インドネシアの再建は,30年に及んだアチェ内戦を終わらせる政治的意志を示して,未来の繁栄の条件を築いた.

NYT FEB. 20, 2014

Cameron’s Climatic Moment

Matthew D’Ancona

昨年末からの南部イングランドを苦しめている洪水は,一つの疑問を投げかける.「これはデイヴィッド・キャメロンのハリケーン・カトリーナなのか?

2005年のアメリカでは1800人以上の死者が出た.イギリスでは10人だ.しかし,天候と住宅はイギリス人がもっとも好む話題である.住宅問題は最重要な政治問題である.また,気候変動は,オズボーン蔵相が話題にすることを禁じたが,もはやそれはできない.他方,EU懐疑派は,EUが人間よりもワイルドライフ(野生生物)を重視した,と避難する.イギリス独立党は,気候変動よりゲイ・マリッジに強く反対する.

すべては2015年の選挙に向かう.


l  TPPNAFTA

FP FEBRUARY 14, 2014

Obama's Pacific Wager

BY JAMES TRAUB

「アジア旋回」とは,2011年にクリントン前国務長官が提唱したものだが,その後,ケリーは中東で飛び回っている.もしオバマがTPPの締結に失敗すれば,「アジア旋回」は悪い冗談で終わる.

TPPは通常の通商協定ではない.第1に,それは牛肉や繊維のような財の関税を撤廃するだけでなく,銀行,保険などのサービス,eコマースの関税も撤廃する.第2に,労働基準や環境規制だけでなく,著作権,特許,投資家の権利,インターネット・セキュリティ,「自国品購入」問題,医薬品,など,非関税障壁の問題も解決する.

TPPは,非加盟諸国,特に中国に対して重要な意味を持っている.これは世界のルールを作り変える取引だ.オバマはこの問題で指導性を発揮しなければならないが,沈黙している.それは中間選挙の焦点にしたくない,という意味だ.

FT February 16, 2014

No time to waste on transatlantic trade

FT February 17, 2014

Fast track’ is a slow route to a trade deal

By ChipRohand TedPosner

FP FEBRUARY 17, 2014

Good Neighbors

BY SHANNON O'NEIL

北米サミットで,オバマ大統領,ニエト大統領,ハーパー首相は北米統合について話し合う.過去20年間のNAFTAについてだけでなく,むしろ今後20年について目標を示すべきだ.

未来においても重要なブロックは貿易だ.互いに最大の貿易相手であり,域内貿易は1兆ドルに達する.アメリカ労働者の1400万人が隣国の需要に雇用を依存している.最近の研究は,Ford, Caterpillar, General Electric, and OfficeMaxのような多国籍企業がアメリカ国内でも雇用を増やしている(海外で10人雇用するとき国内でも2人雇用する)ことを示した.

生産の性格,世界のヴァリュー・チェーンが大きく変化した.アメリカが輸入する自動車,飛行機,コンピューター,フラットスクリーンTV,などは,メキシコからの場合,平均,その価値の40%が「アメリカ製"made in the USA"」なのである(カナダは25%).

さらに,エネルギー分野での変化も著しい.アメリカにはシェール・オイルとガスの革命が起き,カナダにはアルバータ・オイル・サンドを開発する技術革新があり,メキシコでは憲法改正で石油会社の国有を変える可能性ができた.投資と雇用のブームが関連分野まで含めて起きるだろう.北米を結ぶエネルギー供給体制は経済の自律性と安全保障を高める.

911後の国境管理は厳格化により多くのコストをともなった.北米協力により,諜報機関が協力し,信頼できる旅行者・越境者を増やして,コストを抑えている.

メキシコは歴史的な改革期に入った.さまざまな重要分野で政策や制度が変わっている.それはより開放された,サプライ・チェーンの統合に向かう形で,競争力を高める改革だ.移民をめぐる政策についてアメリカの姿勢を問うだろう.

地域ブロックからなる世界において,アメリカは経済的な同盟諸国,特に隣国との関係を深めて競争力を高めることができる.企業,労働者,家族,コミュニティーが織りなす未来の相互依存関係を前提しなければならない.

FT February 18, 2014

Mexico and Nafta at 20. Why it went wrong for one of ‘Tres Amigos’

By John Paul Rathbone in London

NAFTA20年目を迎えたが,メキシコには多くの犯罪者がいて,警察官は足りない.多くの低賃金労働者がいて,熟練職の雇用は少ない.偽りの夜明けばかりで,経済成長は乏しい.」

避けがたい収斂が始まったのではなく,未だにメキシコの1人当たりGDPはアメリカの5分の1であり,これは正確にNAFTAが始まった1994年と同じである.どうしたことか? 中国の台頭,911による国境管理,メキシコの民主化とガバナンスの貧困,フラッキング技術革命,があった.メキシコにとって,2国間のあいまいな関係は変わっていない.政府間協力は統合の推進力を欠いている.

こうした問題を解決することはメキシコ政府の能力を超えているだろう.しかし,メキシコには多くのミクロ経済的な課題がある.エネルギー市場の自由化,寡占体制の解体,劣悪な教育システム,インフォーマルな労働条件,など.

ニエトPeña Nieto大統領の制度的革命党PRIは権力を奪還し,以前と異なり,さまざまな改革を進めている.「最善の産業政策とは,産業政策の全廃である」と主張する.むしろ産業の集積“industrial clusters”を重視する.世界中で利用される部品を製造業が供給しつつ,後方連関を強化して各地域の成長を促すのだ.

すべてのミクロ経済的な改革はメキシコの生産性上昇につながる.それは実質賃金を引き上げ,政権の支持率も高めるだろう.


l  日中非難合戦とアメリカ

2014-02-14 (China Daily)

Abe's march to militarism

Global Times | 2014-2-15

No containment’ to be tested by time

NYT FEB. 15, 2014

The Case for Swapping Roles With China

By FRED ANDREWS

Stephen Roachは,新著(Unbalanced: The Codependency of America and China)で,米中の役割が転換する時期に来た,と主張する.中国はアメリカ市場を利用して輸出を増やし,アメリカの消費者は安価な商品を得て商品に満たされ,アメリカ政府の債券を中国政府が購入し,蓄積する.

こうした「快適な結婚」は終わった.アメリカは消費者から生産者へ,中国はその逆に,転換するだろう.それが両国の繁栄をもたらす道である,とRoachは考える.

中国は消費社会に向かい,農村から流入した労働者をサービス部門の拡大で吸収するだろう.アメリカは中国のこの転換に必要なサービスを輸出できる.チェーン店の経営から,翌日配達の配送システム,そしてもっと専門的なサービスも.

Roachの心配は,アメリカ国民と政府がこの転換を受け入れるだろうか,という点だ.貯蓄を増やす苦しみ,中国叩きに向かう議会,貿易戦争が始まれば,中国の報復が待っている.

この本で驚くのは,アメリカ経済の衰退が当然と見なされていることだ.また,Roachは中国がアジア通貨危機を回避した優秀さによって,その「奇跡」を擁護するようになった.中国の転換が始まった以上,アメリカは中国の貯蓄を利用できなくなる.自国の成長を金融するアメリカ政治に対する悲観論が強い.

FP FEBRUARY 15, 2014

Off the Clock

BY DAVID BOSCO

NYT FEB. 17, 2014

Taiwan and China Edge Ever Closer

By JONATHAN SULLIVAN

FT February 18, 2014

China hits back over UN report on N Korean refugee policy

By Simon Mundy in Seoul

NYT FEB. 18, 2014

China Faults Report Blaming North Korean Leader for Atrocities

By GERRY MULLANY and NICK CUMMING-BRUCE

NYT FEB. 18, 2014

London Docks Await Chinese Redevelopment

By JULIA WERDIGIER

Global Times | 2014-2-18

Japan’s politics hinder own ‘normalization’

By Wang Yiwei

FP FEBRUARY 19, 2014

Red Handed

BY KENNETH ROTH

2014-02-19 (China Daily)

Abe trampling history

By Martin sieff

FP FEBRUARY 20, 2014

Big in Japan: Why Abe is Rooting for a Modi Win

BY SHREY VERMA


l  ウクライナの騒乱と国際政治

Project Syndicate FEB 14, 2014

YouSlander

HAROLD JAMES and MARZENNA JAMES

ウクライナの騒乱と弾圧に対するEUの対応が手ぬるい,と,アメリカの国務次官Victoria Nulandとウクライナ大使Geoffrey Pyattとが電話で会話した内容が傍受されて,最近,YouTubeに公開された.

そこには,アメリカの「謀略」説を正当化するような言葉がある.つまり国際政治秩序は,アメリカのパワーと企業利益とによって築かれる,という主張だ.国連やそのスタッフは,アメリカの利益を実現する道具でしかない.Nulandの発言で特に印象的なものは,ドイツの新聞がこぞって取り上げたように,「EUのくそったれ! “fuck the EU.”」であった.

これを聴いた多くのヨーロッパ指導者たちは,結局,アメリカ政府はEUが失敗することを望んでいるのだ,と思っただろう.

しかし,この駆け引きの主要なターゲットは,EUやアメリカではなく,ウクライナだ.穏健な改革派で経済的にリベラルのArseniy Yatsenyukが首相になったからだ.アメリカの外交官は彼を支持するだろうが,それはウクライナ国民に嫌われる(もちろん,うわべでは,ロシアでも).電話でNulandは彼を“Yats”と呼び,アメリカの外交官がスラブ名を無視することも示している.

そのメッセージは,アメリカが経済的なリベラルを支持し,抗議運動のカリスマ指導者,元ボクサーのVitali Klitschkoや熱烈なナショナリストを嫌う,ということだ.ソビエト的なレトリックである.ロシアも同様に,天然ガスの長期契約で利益を約束し,EUに従う市場自由化に対して警告してきた.

しかし,ウクライナ人はポーランドに注目している.なぜならソ連が崩壊したとき,ウクライナとポーランドは1人当たりGDPと平均寿命がほぼ同じであった.しかし,今ではウクライナが大きく劣っている.1980年代,ソビエトの指導部は市場改革を進めるポーランドに,ドイツに支配されるぞ,と警告した.また,さまざまな異質な集団からなるポーランド国内の政治的な分断を図った.

最近,ポーランド外相Radosław Sikorskiがドイツの強い指導力を求める発言をした.それはポーランドの考え方が大きく変化したことを示している.そして,それこそ国際電話の盗聴内容を公開した者たちが阻止しようとしたことだ.

theguardian.com, Wednesday 19 February 2014

Ukraine is now in a potentially revolutionary situation

Mary Dejevsky

双方の停戦が破られ,少なくとも25人の死者を出した.

民主的に選ばれた大統領の辞任を求めている.これは革命の要求だ.ウクライナの東西の違いは,分裂を意味しない.圧倒的な多数が独立を支持している.しかし対立はキエフから全国に広がった.腐敗し,無能な政府に対する反発だ.

FT February 19, 2014

The West’s policy goals in Ukraine

by Gideon Rachman

アメリカとEUの対応は事後的で,遅れてきた.それは西側が複数の目標を持っており,それらが矛盾を抱えているからだ.

すなわち,暴力の停止.持続的な政治的解決.EU加盟.ロシアとの協力関係維持.ロシアのユーラシア同盟を阻止.・・・これらは個々に実現可能だが,互いに矛盾する.アメリカとEUはロシアとの対決を覚悟しなければならないが,協力関係を維持したい面もある.国内的にも国際的にも,深く分裂したウクライナでは選挙が持続的な解決策にならないだろう.

FT February 19, 2014

Do not fail Ukraine in its battle for European values

By Orysia Lutsevych

FT February 19, 2014

Ukraine’s promise of peace overtaken by fresh tragedy

By Timothy Snyder

FT February 19, 2014

The west must act firmly on Ukraine

FP FEBRUARY 20, 2014

Hey Ukraine, That Crackdown Is Gonna Cost You

BY JAMILA TRINDLE

Global Times | 2014-2-20

West-Russia rivalry bleeds Ukraine dry


l  中国の国際関係

Project Syndicate FEB 14, 2014

China’s Risky Reforms

IAN BREMMER and DAVID GORDON

中国の指導者たちは,もはや経済改革が自分たちの権力を守ってくれないことに気付いただろう.確かに習近平とその側近たちは,改革をさらに進めて中国経済を次の段階へ進めねばならないと信じている.それは共産党の権力を長期にわたって維持する条件でもある.

しかし,権威主義体制は変化に弱い.彼らの改革計画の規模はあまりにも大きい.すでに欧米日に輸出市場を拡大し,今や国内の地方農民にもっと購買力を与えねばならない.国内企業部門から家計部門への富の移転も莫大だ.新しい自由貿易圏や金融自由化は,不良債権による銀行の破綻や失業増大,資本流出のリスクを高める.

指導部は効率性を重視し,しかも不満の高まっている大気や水の汚染を解決するためにも政策を転換する.それらは成長を減速させるものだ.それでも習は減速が国家に頼らない経済の創出と改革への支持にとって必要だと考えている.そのために共産党の権力を集中し,統制手段を強化した.

たとえ改革が必要であるとしても,それは反発を招くだろう.そして彼らは,巨大な官僚組織の要所に,改革を阻むために動かせる自分たちの友人を持っている.共産党が何より恐れてきた指導体制内部の分裂を生じるリスクが高い.

現在のリスクは10年前に比べて格段に大きい.なぜならインターネットを利用し,21世紀の情報通信手段を持つ数億の国民が,内外の境界線を越えて,情報やアイデアを交換しているからだ.政府はそれを抑える技術も常に開発しているけれど,いつまで抑えられるかわからない.

中国の指導者たちが改革に失敗したらどうなるのか? 銀行が破たんし,信用逼迫が生じたら? 社会不安が高まったら?

もっともそれを心配しなければならないのは近隣諸国,特に,日本である.改革が支持されず,指導部に分裂が生じたら,国内の論争から国民の目をそらすために,外国との紛争を起こすかもしれない.アメリカは中国との戦争を避けたいが,日本との同盟関係により巻き込まれる.

BLOOMBERG Feb 17, 2014

China Digs Itself Deeper Into Dollar Trap

By William Pesek

Eswar Prasadの新著(The Dollar Trap)は,中国がいまだに巨大なピラミッド構造の中のカモ(騙されやすい人)である,と説明している.中国は今も3.8兆ドルの外貨準備を持ち,そのうち1.3兆ドルが財務省証券である.その価値が下がれば世界中の政府や投資家たちは逃げ出すしかない.しかし,中国はドルから逃げられない.なぜなら世界の金融システムが崩壊するからだ.

中国も含めて新興市場は,国通貨ドルというアメリカの「鳥かご」の中だ.


l  環境・災害・エネルギー

Project Syndicate FEB 14, 2014

The Davos Apocalypse

BJØRN LOMBORG

FT February 18, 2014

A high price for ignoring the risks of catastrophe

By Robin Harding in Washington

FT February 20, 2014

The changing geopolitics of energy

By David Petraeus and Ian Bremmer

かつて1970年代の石油ショックが重要であったように,エネルギー市場は同様に深刻な地政学的変化を生じるだろう.石油供給が増大し,産油諸国は経済状態が悪化し,中国はアメリカからエネルギーを大量に輸入する.


SPIEGEL ONLINE 02/14/2014

World War I Guilt

Culpability Question Divides Historians Today

By Dirk Kurbjuweit


l  社会科学

NYT FEB. 15, 2014

Professors, We Need You!

Nicholas Kristof

社会科学の研究者は現実に重要な役割を果たさなくなっている.

彼らは「アカデミック」であるから,関係ない.ますます「専門化」,「数量化」して,「一般国民から離れ」ていく.「排除の文化」,テニュアを得るための量産競争,・・・と,学者たちは非難され,その役割は些末になっている.経験主義と厳密さを持つ経済学だけは,両党の政策に関係する例外だが.

大学の研究者たちは現実の論争にもっと参加するべきだ.


l  シリア停戦の国際会議

The Guardian, Sunday 16 February 2014

Syria talks still offer reasons for hope, despite the breakdown

Jonathan Steele

政府はテロリズムを終わらせるため,反政府派はアサドを失脚させるために,ジュネーブに集まった.国連のLakhdar Brahimiは,地域の停戦と,暫定政府を目指した.

合意成立のカギは,アメリカとロシアの圧力である.両政府とも,アサド体制の崩壊を望まず,聖戦主義や過激派の拡大を望まず,宗派争いが続くことを望まず,反政府派が政府とともに外国の聖戦主義者を排除することを望む.

2つの条件が必要だ.移行に向けた暫定政権の成立.外国からの武器や兵士の流入阻止.すべての関係者が初めて集まったことは重要だ.非難合戦を止めるべきだ.

NYT FEB. 16, 2014

Israeli Water, Mideast Peace?

By SETH M. SIEGEL

NYT FEB. 18, 2014

What Next for Syria?

By THE EDITORIAL BOARD

theguardian.com, Thursday 20 February 2014

Peace in Syria is still possible, if only we listen to others who have achieved it

Tim Phillips

FT February 20, 2014

Change in Obama’s Syria calculus has buoyed Assad

By David Gardner


(後半へ続く)