IPEの果樹園2014

今週のReview

2/10-15

 

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ドイツ連邦軍の国際的役割 ・・・新興市場の危機拡大 ・・・中東和平とNATO ・・・アジアの戦争と政治 ・・・戦争と歴史の認識 ・・・戦争をめぐって ・・・中国の債務危機 ・・・アメリカの資本主義 ・・・ソチ・オリンピック ・・・タイの選挙妨害 ・・・スコットランド独立 ・・・ウクライナの将来 ・・・国際金融の制度改革 ・・・ローテク大量破壊兵器

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  ドイツ連邦軍の国際的役割

SPIEGEL ONLINE 01/28/2014

German Defense Minister

'We Can't Look Away'

Interview by René Pfister and Gordon Repinski

近年,世界の紛争地域で,ドイツはその分担を果たしていない,と厳しい批判を受けてきた.ドイツの新防衛大臣Ursula Von der Leyenに意見を聞いた.

SPIEGEL:ドイツはマリに関与し,おそらく,中央アフリカ共和国にもEUの派兵に参加するでしょう.これらの紛争にドイツの利益はありますか?

Von der Leyen:それはドイツの利益ではない.ヨーロッパの利益である.アフリカは我々と隣接する大陸だ.ジブラルタル海峡は14キロしか離れていない.もしアフリカの大部分が不安定になれば,それは我々にも深刻な結果をもたらす.Lampedusa沖の(移民を乗せた漁船が沈んだ)悲劇を思うだけでよい.

SPIEGEL:しかし,中央アフリカ共和国は北アフリカではない.5300キロも離れた国に,ドイツ兵を送るべきですか?

Von der Leyen:純粋に人道的な観点で,殺人やレイプが毎日起きているのを見過ごせない.キリスト教徒とイスラム教徒の間で内戦になりつつある.また紛争が地域に広がるのを防ぐべきだ.人口の観点では,中央アフリカは小さいが,周辺諸国には15000万人が住む.アフリカには10億人が住み,それは今後30年間で2倍になる.もし民主的な体制下で成長すれば,この大陸はヨーロッパの機会となる.とくにドイツのように強い輸出品を持つ国にとって.

SPIEGEL:ドイツはアフリカに何をするのですか?

Von der Leyen:すでにドイツ連邦軍はマリで軍創設の支援を行っている.首相も私も軍事行動に参加しない点で一致している.しかし,たとえば,負傷者を救出することができる.

SPIEGEL:近年,ドイツは軍事作戦を避けて負担を他国に押し付けている,と非難されてきました.ドイツは世界中で責任を果たすべきですか?

Von der Leyen:同盟の枠内として,そう思う.グローバリゼーションのせいで,遠方の紛争がわれわれに影響を及ぼすようになった.この数年から数10年に,ベルリンの壁は崩壊し,金融市場はデジタル化して統合し,世界の緊密性が飛躍的に高まった.防衛や安全保障に関して,ヨーロッパは意志統一を必要としている.それには責任とリスクの公平な分担が必要だ.

SPIEGEL:ドイツの「軍事行動に対する抑制」政策は改めるべきだと思いますか?

Von der Leyen:軍事的手段だけで解決できる紛争は存在しない.政治的解決が並行して進められる.それには,人道支援,経済協力,警察組織の整備などによる市民保護,が含まれる.われわれは微妙なバランスに立っている.ドイツは現時点でも多くの軍事的・財政的な負担をともなう多くのミッションに世界各地で参加している.しかし同盟諸国は,我々の自制の結果,ドイツは参加したがらないと思っている.

SPIEGEL:あなたの目標はヨーロッパ統合軍の創設ですか?

Von der Leyen:そこへ至るまでに多くの中間段階を経なければならない.しかし,もしそれができるとしたら,ヨーロッパ議会が権限を高める必要がある.ヨーロッパが緊密な軍事協力を行うことの論理的な帰結は,ヨーロッパ統合軍であるだろう.

SPIEGEL ONLINE 01/28/2014

Foreign Policy Rethink

Germany Weighs Stronger Military Role

By Ralf Neukirch and Gordon Repinski

外相も防衛相も世界情勢に軍事的にも関与する姿勢を支持するが,首相はこの点で慎重である.

ドイツのFrank-Walter Steinmeier外相は,フランス外相Laurent Fabiusを訪問した.独仏関係は以前より改善している.フランスは長く拒んできた経済改革を採用し,ドイツはフランスによるアフリカ軍事介入を支援しようとしている.

FT January 31, 2014

Germany must use military more, says president

By Sam Jones in Munich and Jeevan Vasagar in Berlin

SPIEGEL ONLINE 02/03/2014

Overseas Role

Germany Must Back Words With Deeds

A Commentary by Christiane Hoffmann

FT February 5, 2014

Germany gets to grips with the role of its armed forces

By Stefan Wagstyl in Berlin

ドイツ初の女性防衛大臣であるUrsula von der Leyenは,座って待つのは選択肢にない,という.

Joachim Gauck大統領の先週の演説も,ドイツが世界で果たす役割,特に軍事的な役割に関する論争を新しく刺激した.ドイツの過去の罪を世界からの逃避や怠慢の言い訳に使うことを批判しつつ,国連安保理で,武力介入に原則として反対しないが,暴力は最後の手段である,と主張した.また,Frank-Walter Steinmeier外相も,それに歩調を合わせて発言した.「ドイツは行動に参加せず,わきでコメントするには,余りにも大きい国になった.」

ドイツ国内の論争も重要だ.von der Leyenは,メルケルの後継者とも見られている.この論争はドイツ連邦軍がボスニア介入に参加して以来,20年近くも続いている.しかし,アフガニスタンでは54人のドイツ兵士が死亡した.

新しいのは,この論争を勧める指導者たちの前向きな姿勢である.

SPIEGEL ONLINE 02/05/2014

Dual Citizenship

Merkel Government Ponders Who Is a German


l  新興市場の危機拡大

NYT JAN. 30, 2014

Talking Troubled Turkey

Paul Krugman

すでに政治危機が起きているトルコに,経済危機が重なって起きたら? ロサンゼルスの経済と同じ規模しかないトルコから,直接に世界経済が影響を受けることはないだろうが,「感染“contagion”」という言葉がある.かつてタイの危機はアジアに波及し,最近,ギリシャの危機はヨーロッパに波及した.トルコの問題は世界中の新興市場に波及するかもしれない.

なぜ我々はこれほど危機におびえるのか? 危機と危機の間隔は狭くなっているように見える.しかも新しい危機は前の危機よりも深刻だ.なぜか?

トルコを考える前に,世界金融危機を簡潔に振り返る.第2次世界大戦以後の1世代を考えるなら,最近の水準で見て,明らかに,危機が起きなかった.おそらくそれはほとんどの国が国際資本移動を規制していたからだ.しかし1970年代後半から,規制緩和が進み,銀行家はより攻撃的になった.ラテンアメリカに資本が流入し,それが1982年に取引の「突然死」となった.危機は停滞の10年につながったのだ.

同じ話が,さらに大きな規模でアジアに起きた.膨大な貨幣が流入し,突然停止し,それが経済を内側で破壊した.最近ではヨーロッパだ.貨幣はギリシャ,スペイン,ポルトガルに殺到し,突然死と途方もない苦しみを生じた.実質産出の減少幅は,1981-83年のメキシコで4%,1997-98年のインドネシアで14%,ギリシャではすでに23%以上も減少している.

ファンダメンタルズは危機を防いでくれない.トルコの財政赤字は小さく,民間部門の対外借り入れは多いが,しかし,全体として,金融情勢は悪くない.

私は,世界経済がバブルと不況とのシーソーにあると思う.新興市場の危機も,その意味で,もっと深刻だ.重要な点は,トルコが問題ではない,ということだ.南アフリカ,ロシア,ハンガリー,インド,などが今衝撃を受けている.しかし,本当の問題は,アメリカやユーロ圏,その他の小国の,豊かな国の側にある.彼らがその弱点に対処できていない.過剰な貯蓄,投資の不足,しかも政府は緊縮策を採る.ヨーロッパではすでに日本型のデフレの罠が迫っている.

FT January 31, 2014

Exotic waves for the world economy

10年前から現代のゴールドラッシュのように,高成長の新興市場に資本が殺到した.ブラジルやインドネシアのように,ユーロ危機の影響をまぬがれ,高利回りを維持した国もあった.しかし,それはできすぎた話で,いつまでも続かなかった.昨年夏から資本流入は止まり,連続する脱出に代わった.先週,新興市場株式からの資本流出は63億ドルに急増した.

ムンバイからプレトリアまで,中央銀行家たちは金利を引き上げて資本流出を止めようとしている.しかし,基準金利を4.5%から10%まで倍増させたトルコが劇的に示すように,市場はそれを評価しない.数時間の歓迎後に,新興市場は下落した.

アジアもラテンアメリカも,2つの弱まりそうにない圧力を受けている.1つは中国経済の転換だ.中国が投資を減らし,それに関連する商品輸出国の需要に打撃を与える.もう1つは,グローバルな流動性を減らす,アメリカ連銀のQE終息・テイパーリングだ.アメリカの利回りが改善すれば,新興市場への投資は減る.

問題は新興市場の動揺が発展した諸国の経済を損なうかどうかである.アメリカやドイツの政府債に安全資産への逃避が起きている.しかし,新興市場から資本が豊かな国に流出して危機になる,という懸念は大げさであろう.アメリカやユーロ圏,日本から,新興市場向けの輸出は,経済規模に比べて小さいからだ.

金融市場の感染はより深刻だ.銀行の新興市場に対するエクスポージャーは高いが,分散されている.またユーロ圏のように,西側の弱い経済は利益を受けるかもしれない.もし市場がパニックを起こしたら,それがどこで止まるか予測するのは難しい.

アメリカ連銀は,今週も月間の債券購入額を100億ドル減らす.それはアメリカの金融政策を正常化する過程であるが,インド準備銀行のラジャン総裁がグローバルな金融当局の協力を要請するのは正しい.しかし,アメリカ連銀のJanet Yellen新議長が何をするか,まだ分からない.国際経験の豊富なStanley Fischerを副議長に指名するのは有益だ.

他方,新興市場の諸政府がすべきことも多い.

Project Syndicate JAN 31, 2014

The Trouble with Emerging Markets

NOURIEL ROUBINI

アメリカ,中国の政策転換,あるいは,アルゼンチン,ウクライナ,タイなどの政治危機,など,さまざまな理由で危機は起きている.しかし,深い構造問題を抱えた新興市場と区別しなければならない.すなわち,India, Indonesia, Brazil, Turkey, and South Africa からなる “Fragile Five”である.それらの国は,財政赤字と経常収支赤字,成長率の低下,インフレ率は目標を超えて高くなり,議会や大統領の選挙を前に政治の不確実さが高まっている.また,さらに5カ国,Argentina, Venezuela, Ukraine, Hungary, and Thailandも脆弱だ.そしてBRICSが現実を見直している.

こうした諸国の直面するトレードオフは解決が難しい.対外的なリスク,国内のマクロ経済的,構造的な脆弱性を解決しなければならない.

NYT JAN. 31, 2014

As Argentine Currency Crisis Swirls, President Keeps Low Profile

By SIMON ROMERO and JONATHAN GILBERT

BLOOMBERG Jan 31, 2014

Emerging Markets’ Victimhood Narrative

By Dani Rodrik and Arvind Subramanian

イスタンブールから,ブラジリア,ムンバイまで,ドル帝国に対する不満が強まっている.豊かな諸国,特にアメリカ連銀の政策によって,自分たちの利益が損なわれている,というのだ.しかし,こうした主張のほとんどは間違っている.新興市場は不当な犠牲者というより,多くの場合,自分がまいた種を収穫したのである.

まず,その不満は奇妙である.連銀が金融を緩和すると,ブラジルなど,新興市場は資本の洪水と自国通貨の増価が起きることを非難していた.今度は,連銀が金融緩和を緩やかに逆転させると,資本が流出すると非難している.連銀は何をしても責められるのだ.ユーロ圏のように,不況をもたらす政策がとられた地域に比べて,連銀はアメリカや世界経済に刺激を与えたにもかかわらず,ほとんど感謝されなかった.

また,国際協力に関する非対称性を非難する声がある.新興市場はリーマンションク後の財政・金融政策で世界経済の成長に貢献した.ところが,新興市場が浮動性に苦しんでいることに工業諸国は配慮しない.しかし,2008-09年の新興市場の刺激策は,国際協力ではなく,単に彼らにとって利益であったから行ったことだ.アメリカ連銀は新興市場の迷惑を顧みないかもしれないが,彼らもアメリカ連銀のために行動したわけではない.それはあくどい利益でも,無償の協力でもないのだ.

犠牲者という議論はさらに,広い意味で,2つの理由から間違っている.第1に,新興市場の大国は金融のグローバリゼーションを積極的に受け入れ,利用してきた.昨年夏,「脆弱な5カ国」(Brazil, India, Indonesia, South Africa and Turkey)は,無理強いされたのではなく,積極的に市場を解放し,資本を歓迎したのだ.ルピーに圧力を受けたインドは一層の開放を選択し,短期資本の流入に依存していたトルコは脆弱性を解消したと吹聴し,他方,中国は資本市場を開放しなかった.その結果,中国は衝撃を隔離できた.

金融のグローバリゼーションを受け入れたことで,脆弱性の5カ国はその経常収支赤字を拡大し,インフレや財政赤字を増やす国もあった.融資の規制やプルーデンシャルを求めるより,外資に頼ったのだ.選挙が近付くにつれて,政治不安や不確実さが増している.国際協調は有益だが,彼らの問題は国内にある.外国人のせいではない.

FT February 3, 2014

The future still belongs to the emerging markets

By Gideon Rachman

Project Syndicate FEB 4, 2014

A Healthier, Wealthier Africa

JOSEPH JIMENEZ

Project Syndicate FEB 6, 2014

How Fragile are Emerging Markets?

KENNETH ROGOFF

アメリカ連銀の金融政策転換よりも,中国経済の成長に不確実さが増したことの方が重要である.中国の成長は,商品輸出経済であるロシアとアルゼンチンに大きな影響を及ぼした.

他にも重要なファンダメンタルズの変化と不確実さがある.アメリカのシェール・ガス革命と,エネルギー輸出国,そして,アメリカの低コスト・エネルギーによるアジア製造業の競争力低下,が起きる.日本のアベノミクスは,アメリカ連銀の金融引き締めを部分的に相殺する.他方,急速な円安は,長期的に成長を回復すればアジアにとってプラスであるが,短期的に,韓国など,アジアの競争力に影響を及ぼす.

新興市場の中には,チリ,コロンビア,ペルー,など,制度を改革してこの市場の動揺から利益を受ける国もある.全般に,1990年代と違い,為替レートはショックを吸収できる変動レート制である.

また株式市場も,暴落するけれど,これはショックを吸収する面がある.重要なことは,債券市場がどう影響されるか,である.多くの国が外貨準備を増やし,自国通貨でも多くの債券を発行するようになっている.しかし,債務をインフレで帳消しにできることは万能薬ではない.


l  中東和平とNATO

NYT JAN. 30, 2014

A Middle Eastern Primer

Roger Cohen

FP JANUARY 31, 2014

Palestine's Peace Bomb

BY STEVEN J. ROSEN

NYT FEB. 2, 2014

Abbas’s NATO Proposal

Thomas L. Friedman

テルアビブのBen Gurion空港で,イスラエル航空の歴史を示す展示に,サダトとベギンの並んで座った写真があるのを観て,私は驚いた.ケリー国務長官による中東和平交渉の努力が続けられているが,イスラエルとパレスチナの指導者たちは,以前に比べてあまりにも相互を信頼できなくなった.小さな場所について,多くの困難な,複雑な妥協を決めなければならない.レンガはあるが,セメントのない建物のようだ.

この問題について,ヨルダン川西岸,ラマラの本部事務所において,私は同僚とアッバス大統領に会って話し合った.アッバスは以前にも増して強い感情をこめて,ひとつのアイデアを実行するときが来た,と語った.NATOをセメントとして呼び込むのだ.

すなわち,イスラエルとパレスチナがパレスチナ国家の枠組みに合意してから,5年間の移行期には,イスラエル軍がパレスチナとヨルダンの治安部隊と協力して,イスラエル国民にロケット弾が襲来することはないと安全を確保する任務に就くことを許す.その後,イスラエル軍はアメリカが指導するNATO軍と完全に交代するのだ.この領域のすべてで,境界の横断で,アラブ側の東エルサレムで,パレスチナ警察や治安部隊が,NATOと一緒に行動する.アッバスは,イスラエル国民が安心するまで長い時間がかかることを認めている.しかし,それがパレスチナの主権の問題であることも譲らない.

NATO軍が,長期間,どこでも,至る所にいる.東の境界だけでなく,西の境界にも.こうした軍の存在が,イスラエル国民を安心させ,われわれパレスチナ人を守るのだ.われわれは非軍事化されるだろう.・・・イスラエルが安全を確信できないなら,われわれも安全でありえない.この点に何の幻想も持っていない.

これまでのところ,ネタニヤフはもっと長期のイスラエル軍のヨルダン渓谷駐留を求めている.40年間という報道もある.レバノン,イラク,シリアが混乱を深めており,イスラエルは東の境界におけるいかなる侵攻も撃退できる態勢を,今後何十年も,保持したいのだ.

しかしアッバスは,イスラエル軍が主権国家であるパレスチナの領土に長期駐留することを受け入れられない.「5年後,われわれの国は占領を一掃する」とアッバスは述べた.その点について,何らパフォーマンス基準が問題になることはない.イスラエルが決めて,イスラエルが評価する基準により,パレスチナ人が失敗の判定を下されるなど,受け入れられない侮辱である.

イスラエルは西岸をアメリカ軍や他のいかなる国際部隊に委ねることを望まなかった.南レバノンやシリアとの境界,シナイ半島では,それを認めたが.今や,パレスチナの治安部隊が西岸においてイスラエルに対する攻撃を防いでいる.それでもイスラエルは規則的に突撃部隊をい送りこみ,パレスチナ治安部隊が防ぎきれない攻撃計画と彼らが疑う者たちを深夜に急襲し,逮捕,殺害している.イスラエル軍と諜報機関は,この任務と,襲撃を実行する自由を,たとえアメリカの将軍が指揮しているNATO軍にも,譲りたくないのだ.

「(イスラエルの元首相)オルメルトなら,このアイデアを歓迎しただろう.」 アッバスはネタニヤフに彼の家で直接尋ねた,という.「もしあなたの同盟諸国(アメリカなど)を信頼できないのなら,だれをあなたは信頼できるのか?」 彼は「イスラエル軍しか信頼できない」と答えた.「イスラエルは占領者であり,ここに永久にとどまるつもりだ.彼らが40年というとき,それは永久にわれわれの領土から去らない,という意味だ.」

交渉に関わる「核心」の問題は多くある.パレスチナ,難民,エルサレム,境界線,イスラエルをユダヤ国家と認めるか,など,もっと多い.しかし,そのすべての根源は,イスラエル軍がヨルダン川西岸から完全撤退するのを誰が保証するか,という問題だ.

この隣接する両者に完全な安全保障は存在しない.西岸のイスラエル軍が長期に駐留すると求めるなら合意は成立しない.パレスチナがイスラエルの多数派に入植地を完全に放棄しても安全は保証されると確信させられないと合意は成立しない.これら3つの現実が重なる点に,アッバスのNATO軍に関する提案がある.

NYT FEB. 3, 2014

The Talks, Round Two

Roger Cohen

FP FEBRUARY 3, 2014

An Edge in the Desert

BY JONATHAN SCHANZER

NYT FEB. 4, 2014

The Third Intifada

Thomas L. Friedman


l  アジアの戦争と政治

YaleGlobal, 30 January 2014

China’s Rise Leads India and Japan to Wary Embrace

Harsh V. Pant

BLOOMBERG Jan 30, 2014

People Should Never Be the Main Export

By William Pesek

BLOOMBERG Jan 31, 2014

China and Japan Must Find Middle Ground

By Rana Mitter

安倍首相は日本の経済改革を宣伝するために来たのだが,ダヴォスで注目されたのは日中関係の悪化を第1次世界大戦前の英独関係に例えたことだった.安倍は戦争を唱えたわけではないが,その発言は北東アジアに,第2次世界大戦に起源を持つ問題があることを示した.すなわち,1945年以来,ヨーロッパには紛争を解決するEUNATOのような国際機関があるのに,北東アジアにはない.

その起源は,第2次世界大戦が中国でどのように終わったかを見なければわからない.1945年に構想された戦後秩序は,連合諸国として,ソ連,そして国民党の蒋介石が合意したものだった.国民党軍は,特に,真珠湾攻撃の前,1937-41年に,実際のところ単独で日本軍とたたかった.その犠牲は1400万人以上の死者,1億人の難民を含み,戦後秩序に中国が重要な役割を果たす理由であった.

しかし,日本が降伏して1年もしないうちに,中国は内戦になった.国民党体制の疲弊と腐敗により,毛沢東の共産党が1949年に勝利した.他方,冷戦の中で,日本はアメリカの同盟国になっていた.毛沢東はスターリンに対抗し,北朝鮮の侵攻を支援した.そのせいで西側世界からさらに遠ざかった.

中国は第2次世界大戦の「忘れられた同盟国」なのである.中国では蒋介石のイデオロギー的な地位回復が起きた.1943年のカイロ会談では,蒋介石がルーズベルトやチャーチルと,戦後,日本の占領したすべての領土を中国は回復する,という示唆を得て,尖閣問題とも関係がある.

日本も地域関係により安定した基盤を築くことに失敗した.安倍は,経済改革の初期の成功を利用して,日本が1945年以前に果たした,アジアの解放という神聖な役割を宣伝した.しかし,その主張は,北京だけでなく,ソウルでもシンガポールでも嫌われ,昨年,韓国は中国に接近した.

Project Syndicate FEB 2, 2014

South Korea’s Japanese Mirror

DANNY LEIPZIGER

FP FEBRUARY 3, 2014

Is there a Chinese window of opportunity for attacking within about 5 to 10 years?

BY THOMAS E. RICKS

BLOOMBERG Feb 3, 2014

Asia’s Dangerous Strongman Nostalgia

By William Pesek

なぜアジア諸国の政治はかつての独裁者を美化するのか? インドネシア,インド,タイ,マレーシア,中国,韓国,日本,シンガポール,いずれも旧独裁体制を懐古的な理想的時代のイメージに利用する.世界経済のダイナミズムに対抗して,諸国民は常に再発見されなければならないが,それは難しい.未来に向けたビジョンがなければ取り残されてしまう.

中国に毛沢東が復活すると,本気で心配する者はいない.安倍の軍事国家化が国民の成長に対する期待を裏切る時間も迫っている.懐古経済学Nostalgianomicsは,現代の加速した変化と不安がもたらす政治的な安定剤・見せ掛けでしかない.

それはアジアに限らない.アメリカも,ヨーロッパも,ロシアも.しかし過去に頼るほど,彼らは将来に苦しむ.


l  戦争と歴史の認識

SPIEGEL ONLINE 01/31/2014

Century of Violence

What World War I Did to the Middle East

By Bernhard Zand

Project Syndicate FEB 4, 2014

History versus Europe

HAROLD JAMES

歴史は重要だ.しかし,場所により,人により,歴史は異なった意味を持って衝突する.それは永久に和解せず,地政学的に決定される.400年前も,昨日のことのように.この知的な戦争は,今やヨーロッパ中に起きている.

「すべての戦争を終わりにする戦争」としての第1次世界大戦に関する多くの新しい分析が出ている.世界は連結して,繁栄しているから,文明は後戻りできない,という自己満足を観ると,それは帝国ヨーロッパの時代と同じものであると思う.グローバル・サプライ・チェーンの文明化作用があっても,シリアや南シナ海で世界が爆破されるかもしれないことを,1914年にボスニアは示した.

特に,帝国を失ったイギリスとロシアには歴史を重視する傾向が強い.ド・ゴールやチャーチルは戦争について多くのことを知っていた.彼らは歴史を,回避するべき具体的な教訓と見た.今は対称的に,ヨーロッパの辺境において,歴史に向かって逃げ込む傾向がある.


l  戦争をめぐって

The Guardian, Friday 31 January 2014

Here's how Tony Blair really can face the judgment of history

Marina Hyde

FP FEBRUARY 3, 2014

The Top 10 Mistakes Made in the Afghan War

BY STEPHEN M. WALT

アフガニスタンにおけるアメリカの長い戦争は失敗だった.犠牲となった兵士たちのために,その教訓を将来の決定に生かすべきである.

1.単独で侵攻を試みた.911の後,アメリカはNATOの同盟諸国から支援の申し出を受けたが,Rumsfeldの国防省はこれを断った.アフガニスタン侵攻を集団的な防衛にせず,ブッシュ政権はむしろ北部同盟の助けを受けて単独で行いたかった.タリバンはすぐに崩壊したが,ブッシュたちはイラク侵攻にも手を出し,アフガニスタンから兵士や情報網を奪った.タリバンが復活するのは容易になり,内戦が激化してから,NATOが参加したが,安定したアフガニスタンを築くチャンスは失われた.

2.トラボラの戦い

アメリカがアフガニスタンに侵攻した唯一の目的は,オサマ・ビンラディンとその仲間をできるだけ多く捕えることだった.残念ながらアメリカ軍は現地の勢力と協力できず,兵力を十分に投入しなかったため,ビンラディンはパキスタンに逃れて,その後,8年間も生き延びる.あの時ビンラディンを捕えていたらアルカイダはテロ組織として打撃を受け,アメリカは「テロとの戦い」に勝利して,今のようにアルカイダが国際的なネットワークを築くことはなかったはずだ.

3.アフガン憲法

タリバン後の暫定政権を合意した200112月のボン協定は重要な外交的成果であった.しかし,2004年に採択されたアフガン憲法は間違った考えに基づいていた.それは高度に中央集権化した国家を創ったが,地域の自律性に関するアフガニスタンの伝統を無視し,大統領に大幅な権力を与えた.カルザイ体制は,能力のある官僚がおらず,集権化した構造がパトロン関係や汚職を生んだ.さらにアフガン経済は弱く,政治構造を支えられなかったから,成立したときから外部の支援に依存するものだった.

FP FEBRUARY 4, 2014

Fighting Words

BY ROSA BROOKS


l  中国の債務危機

FT January 31, 2014

Economic danger lurks in China’s shadow banks

By SimonRabinovitch

過剰な債務を抱える鉱山に融資する投資家たちは狂っているのではない.彼らは計算して,政府が鉱山を救済することに賭けているのだ.スポーツウェア会社から製鉄所まで,過剰生産力によって製造業が苦しんでいるのは,間違った投資が積み重なった結果である.しかし政府の保証があったから,中国の債務は2008年から今までに,GDP130%から200%に増加した.同じような増加を経験した韓国やアメリカでは金融危機に至った.

Project Syndicate JAN 31, 2014

China’s Risky Credit Boom

ANDREW SHENG & XIAO GENG

FT February 6, 2014

How 2014’s upbeat story turned into a scary thriller

By Ralph Atkins


l  アメリカの資本主義

FT January 31, 2014

Obama replaces Congress with plutocrats

By Christopher Caldwell

Project Syndicate JAN 31, 2014

The Future of American Growth

MARTIN FELDSTEIN

theguardian.com, Monday 3 February 2014

Silicon Valley billionaires believe in the free market, as long as they benefit

Dean Baker

theguardian.com, Tuesday 4 February 2014

Janet Yellen and I were taught to revere capitalism. But it's a failing system

Richard Wolff

連銀の新議長Janet Yellenと私は同じときYale Universityで学んだ.われわれにマクロ経済学を教えたのはJames Tobinであった.

ケインズ経済学は,可能な最善の経済システムとして資本主義を受け入れ,その深刻な欠陥については政府が体系的に介入することを求めた.金融政策,財政政策,そして銀行や企業の救済が必要だった.

しかし,大学では資本主義がもたらす搾取や不平等について教えるコースはなかった.労働者たちが,彼らを雇用する者のために,その報酬以上に多くの価値を生産しているとは習わなかった.この「より多く」(剰余)がシステムの不平等を規定している.

Yellenは連銀議長となり,政策イデオロギーを継承した.私は独自にマルクス主義を学び,資本主義システムと異なる世界を見つけた.ウォール街占拠運動はその表れだ.

VOX 4 February 2014

Where is the land of opportunity? Intergenerational mobility in the US

Raj Chetty, Nathaniel Hendren, Patrick Kline, Emmanuel Saez

アメリカは「機会の国」といわれている.しかし,「機会の土地」と呼ぶ方が良いだろう.経済的な移動性は都市によって大きく異なるからだ.移動性の地理的な差は,5つの要素に関係している.分断,所得格差,地域の学校,社会資本,家族構造,である.

NYT FEBRUARY 5, 2014

Improving Economic Diversity at the Better Colleges

By PEG TYRE

FT February 6, 2014

Why the dollar stays steady as America declines

By Gillian Tett

先週,ナイジェリアの中央銀行副総裁が,アメリカの政治家に驚きを与えるような発表をした.430億ドルの外貨準備の10分の1を人民元に換える,というのだ.人民元は交換可能な世界通貨になるだろうから,と.

世界の中央銀行の外貨準備において,人民元は0.01%しかないが,ドルは60%,ユーロは25%ある.しかし,2025年には人民元が30%を占め,ドルの地位を脅かすという意見もある.アメリカの経常収支赤字,財政赤字,金融危機の後遺症,政府閉鎖などの政治的混乱,など,ドルの衰退を予想するエコノミストは多い.

しかし,元IMFエコノミストであるEswar Prasadは,ここにパラドックスがある,という.ドルの衰退を示す条件があるのに,ドルは強くなっているのだ.他の国では嵐が来ると資本は逃げ出す.しかし,アメリカが座礁すれば,投資家はドルを買う.

アメリカ経済が回復し,連銀はQE終息を決めている.しかし,それ以上の経済学を越えた理由がある.それは不安だ.もはや完全に安全な資産はどこにもない.投資家たちは次善の策として,流動性を求めている.この点で,アメリカの支配的な地位は圧倒的だ.資本市場は深く,ドルのプールはほとんど無尽蔵だ.経済学の通常のルールとは逆に,その供給が抑制されているからではなく,際限ないことが魅力になる.

しかし,ドルの過剰な供給はアメリカ通貨の魅力を,最終的に,奪うのではないか? この点でも,政治は経済を支配する.アメリカ政府の債権者の多くはアメリカの有権者でもある.彼らは通貨の価値が失われることに反対するだろう.だから海外の投資家もドルを買うのだ.


後半へ続く)