IPEの果樹園2014

今週のReview

2/3-8

 

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不平等の解決策 ・・・アルゼンチンと新興市場の不安 ・・・アジアと日中関係の悪化 ・・・ウクライナの戦場 ・・・イギリス経済の回復 ・・・アメリカの退場 ・・・1次世界大戦と現在 ・・・日本病の伝染 ・・・中国の債務危機 ・・・金融危機後の世界

 [長いReview]

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l  不平等の解決策

NYT JAN. 23, 2014

The Populist Imperative

Paul Krugman

「われわれが生きる経済社会の顕著な欠陥は,完全雇用を実現できないことと,富と所得の恣意的で不公平な分配である」と,1936年,J.M.ケインズは書いた.

それは今も正しい.われわれの世界はそうした理想をはるかに下回っている.もしオバマ大統領が一般教書演説で不平等を取り上げるなら,皆が歓迎するだろう.

しかし,もちろん,議会は歓迎しない.彼らは叫ぶだろう.所得分配を問われるとすぐに反発が起きる.「階級戦争だ!」 しかもオバマは間違った目標を選んでいる,と批判する.雇用が重要であるのに,分配の不平等を取り上げる,と.

彼らは間違っている.拡大する不平等が危機を招いた,また,不平等が危機後のスランプを長引かせ,特に家計が債務から抜け出せない,というのはもっともな主張である.高失業率が労働者の交渉力を奪い,職に就いている者でも所得が抑えられている.

それ以上に,不平等はマクロ政策と切り離せない.政治家たちは債務の不安を利用して,特に貧困層の生活を守る社会的給付を削減してきた.ところが,雇用を破壊する緊縮策を攻撃すべきであるのに,オバマは政治的な妥協に流れている.

不平等,社会的不正義,その通りだ.財政赤字を非難するヒステリーに対抗せよ.

NYT JAN. 26, 2014

Paranoia of the Plutocrats

Paul Krugman

1%の富裕層を攻撃する人々を,まるでナチスのユダヤ人狩りKristallnachtだ,と非難する意見がウォール・ストリート・ジャーナルに載った.こうした意見は異常に思えるが,富裕層には珍しくない.ブラックストーン・グループの会長兼CEOであったStephen Schwarzmanは,2010年に,ヘッジファンドやプライヴェート・エクイティ・ファンドの経営者たちに対する脱税の抜け穴を防ぐ提案を,「1939年にポーランドへ侵攻したヒトラーのようだ」と語った.

産業界の大資産家のことを言うのではない.大金を使って汚い金儲けをする資産家たちである.彼らがどんな価値を追加したのか,まったく疑わしい.そして,彼ら自身もそれを説明できる自信がないから,批判に対してこれほど激昂するのだろう.


l  アルゼンチンと新興市場の不安

FT January 24, 2014

Emerging markets suffer a developing hangover

By John Authers

新興市場はこうしたパニックを繰り返してきたが,重要な点はそれではない.その引き金を引いたのが発展した諸国の投資家や中央銀行である,というのが重要だ.

FT January 26, 2014

The strength of Buenos Aires is the weakness of Argentina

By WalterMolano

通貨からの逃避はきれいな形で終わらない.特にアルゼンチンでは.ペソの価値は急激に減少し,経済運営に対する信頼が失われた.警報が点滅し,それは忍耐の限度を超えたのだ.

しかし,今,アルゼンチンに危機は起きないはずだった.特別なブームも過剰消費もなく,バブルは起きていない.財政収支も経常収支も健全だ.むしろ国際資本市場に復帰することで外貨準備を得ることができただろう.ところが,ポピュリストの言辞を弄する政府は,投資家たちと敵対し,それを台無しにした.

資源も人材も豊富なこの国がなぜこれほど機能しないのか? 私の答えは,その地理のせいである.アルゼンチンは西のアンデス,北のブラジル,南のパンパに囲まれた三角地帯で経済活動を行ってきた.その出入り口はパラナとウルグアイの2つの川しかない.この川と港を通じて商業は行われ,富と権力をブエノスアイレスが支配した.アルゼンチンの200年は,地方とブエノスアイレスとの闘いの歴史である.

ペロニスト党は,社会運動ではなく,すべての権力を中心が握るための制度であった.そこでは常に,国民全体の利益や政治原理の追求より,パワーの最大化が問題になる.この国の通貨危機は,軍部のクーデタや,国際機関による介入で処理できるかもしれない.しかし,それではアルゼンチンのガバナンスが冒された病気を治すことができない.


l  アジアと日中関係の悪化

BLOOMBERG Jan 26, 2014

The End of Childhood in Asia

By Pankaj Mishra

アジアの若者たちは,親とは全く違う世界に住んでいる.そこは不安定な資本と貿易のフローで満たされており,他国の競争相手に関する情報があふれている.彼らは10代後半から20代の初めで,狂気のように自己改造を始めるのだ.

かつてスターリンが「人間の魂をエンジニアリングする」と語ったが,この数十年が真にグローバルなユートピアが人間改造を進めてきた.攻撃的な企業家精神,個人主義,教育と専門技能で無慈悲なまでに自己のポートフォリオを改善する試みだ.

自動化と国際競争はますます激しくなり,どれほど教育を受けても若者たちの雇用が確保できる見通しは立たない.インドでは人口ボーナスが犯罪やアナーキーの悪夢に転化するかもしれない.永久化する失業と不平等が拡大する社会で,私たちは人生の多様な価値を切実に必要としている.

NYT JAN. 27, 2014

Insults Over Islets

By THE EDITORIAL BOARD

微小な岩礁をめぐる中国と日本の紛争は,国民的エゴの国際キャンペーンと化している.播・ポッターの童話を使ってまで口論しても,それが2国間の紛争を和解させることには役立たない.

アメリカを日本の安全保障問題に巻き込み,安倍は靖国参拝で歴史問題に広げ,さらに愚かにも,両国はアフリカへの援助で口論している.

誰も彼らのエゴに味方するつもりはない.もっと具体的な問題を解決するのが良い.


l  ウクライナの戦場

FT January 24, 2014

Ukraine: On the front line

By Neil Buckley and Roman Olearchyk

反政府デモは暴力的な衝突によって少なくとも5人の死者を出すに至った.まるで戦場のようだ.爆弾が火を噴き,歩道は剥がされ,投石された.ウクライナ議会を守る暴動鎮圧部隊は,これに対してスタン擲弾,催涙ガス,ゴム弾を使用した.

「平和的なデモだった.しかし雰囲気は完全に変わった.政府にはわれわれの声を聴く気がない.妥協はあり得ないだろう.」

2008年のロシアとグルジアとの戦争以来,EUとアメリカは,ロシアと対抗している.もし暴動をYanukovichが鎮圧できなければ,ロシアがウクライナ政府に強力な支援を行い,欧米の反発は強まるだろう.1990年代の旧ユーゴスラビア内戦以来,ヨーロッパの国で,これほど長期に,暴力的な政治不安が続いた国はない.

先週,議会は反プロテスト法を成立させ,デモを非合法化した.ウクライナはますますロシアの権威主義的従属国家になっている.

WP January 25, 2014

Ukraine shows the ‘color revolution’ model is dead

By Anne Applebaum

下院はその法案を議論するどころか,おそらく読みもしなかった.およそどのような群衆もデモとして弾圧し,どのような政府批判も犯罪とみなせる.ギリシャ正教の資金を受けても外国団体となるのだ.こんな法律を下院は深夜,挙手で成立させた.

「カラー・リボリューション」の神話を捨てるときだ.それは,平和的なデモが,西側のメディアによる訓練もわずかに手助けによって湧き上がり,1991年以後の,旧ソ連に従った腐敗した寡占支配体制を,非暴力的に倒すことができる,という信念である.2004年から現在までのウクライナの「オレンジ革命」の歴史は,この信念が間違いであることを示した.

脱冷戦の秩序にヨーロッパやアメリカが関与する,という信念も神話の一部である.しかし,EUによるウクライナの改造は失敗した.ロシアによる貿易のボイコットや軍事的威嚇,大小の賄賂(安価な天然ガス),プロパガンダが成功した.他方で,アメリカの反応はわずかなものだ.

こうした新しい真実が人々に理解されるまでに時間がかかった.しかしウクライナ人は,理想が死んだこと,それを生き返らせるすべはないこと,を理解した.これがその結果である.暴力によってしか体制は変えられない.

最悪のシナリオを免れる可能性はある.大きな忍耐と深い思考が必要だ.すなわち,ゆっくり,深く,文化的な変化をウクライナに起こすことだ.既存のものに代わる政治組織,新しいメディア,労組,学校,を築く.体制に依存したビジネスを変える.

ヨーロッパ人もアメリカ人も,本気で,ウクライナやロシアの腐敗を攻撃する.プロパガンダに対抗し,実質的な経済制裁を行う.われわれは失敗を正直に認め,この氷の街頭に戻るのだ.

NYT JAN. 28, 2014

What the West Must Do for Ukraine

By JOHN E. HERBST, WILLIAM GREEN MILLER, STEVEN K. PIFER and WILLIAM B. TAYLOR Jr.

Yanukovychは譲歩を示した.先に通過させた法律を廃止することも含まれる.しかし,1か月前なら,せめて2週間前なら,これが役に立っただろう.今では遅すぎる.首相の辞任も,抗議デモを鎮静化できないだろう.

アメリカとヨーロッパは,1Yanukovychに対して,デモ鎮圧の暴力を自制するよう求める.2.ビザと金融制裁の解決を求める.3.反政府派に自制を求める.4.政府高官を派遣して高次の情報交換を緊密に行い,キエフ情勢の監視を強化する.5.モスクワに協力を要請する.西側はプーチンに対して自分たちの行動を透明化し,ウクライナ情勢が悪化すれば,プーチンが望むソチ・オリンピックに悪影響が出ることを理解させる.

FP JANUARY 30, 2014

How to Solve the Crisis in Ukraine

BY CHRISTIAN CARYL

反政府派は,Yanukovychの無条件降伏を求めるより,もっと違う政治的要求に向けて団結するべきだ.すなわち,ウクライナを議会制の共和国にすることだ.議会で多数を制した首相が率いる内閣によって統治する.


l  イギリス経済の回復

FT January 24, 2014

The death and life of Britain’s market economy

By Janan Ganesh

外国の経済モデルに関する饒舌な解説には,「アングロサクソン」,「北欧」,「ドイツ」,「東アジア」,など,さまざまな選択肢がある.それは単にイデオロギー的な好みの問題になる.しかし難しいのは,真にふさわしいモデルを決めるのは,その国の歴史,文化,条件に拠るということだ.しかもそれには経路依存性があり,公共政策の選択と違って,いつでも一時的に変更できない.政治的に成熟することで,イギリスのモデルの特性がサービス,特に銀行業にあり,産業の先端分野にあることを認めるだろう.その競争的な優位は,開放性,ビジネスのしやすさ,優れた大学教育,英語,そして,官僚的な介入がないこと,である.

The Observer, Sunday 26 January 2014

George Osborne's economic 'recovery' is built on sand

Will Hutton

オズボーンGeorge Osborne蔵相は上機嫌だ.IMFの警告やイングランド銀行の雇用不安予測を否定するような成長が見られたからだ.

しかし資本主義システムは循環的に変動する.この一時的な跳ね返りは2008年に予想されたことだ.むしろここに至る前に,当時の崩壊寸前であった銀行システムに加えて,政府の急激な支出・赤字削減が不況を悪化させ,多大な失業という代償を支払わねばならなかった.それが証明されたのだ.

驚いたのは新規雇用の増加である.ここには過小評価され,よく理解されていなかった強さがある.イギリス経済には高成長の,革新的,知識集約的な中小企業群が,自動車道路M40M4M3によりヒースローの周りに形成されている.ほかにもStansted and Cambridgeがそうだ.

大学に由来する高度技術,新興の中小企業群,住宅価格の上昇による融資増,国際空港による効果,全てが関連し合って,こうした地域に根差した多国籍企業本部に有利なものとなっている.これらは政治家と関係ない,自生的な成長だ.

雇用増には問題もある.パートタイム,失業を避けるための自営業の増加,非常に不安定な生活を強いられる人々がいる.またイギリス経済の統計は,GDP5%を超える経常収支赤字を示しており,長期的に維持できないものだ.

イギリス経済には深刻な機能不全が起きている.オズボーンは経済モデルの大改革から逃げてはならない.


l  アメリカの退場

Project Syndicate JAN 24, 2014

Absent America

JEFFREY FRANKEL

アメリカ議会はIMFの長く望まれてきた改革(分担金の再調整)を,不注意にも拒否した.それだけでも十分に愚かであるが,これはむしろアメリカがグローバルな指導力を自ら損なう,今世紀に入って行った一連の決定の最新例である.

IMFは分担金の出資に応じて発言力を得る.この原理が他の国際機関(例えば,国連総会)とは異なる,実質的なパワーを強めている.アメリカ自身が,オバマ大統領の指導力によって,2010年のソウルにおけるG20サミットでIMF改革の合意を形成したのだ.当然,ヨーロッパはパワーの低下を嫌っていた.

この苦心の国際合意を議会が拒んだことは,1世紀前の1919年,議会の孤立主義を説得できずに,ウィルソン大統領がアメリカの国際連盟参加に失敗したことを思い出させる.議会は1948年にITOを拒否し,1979年にSALT IIを拒否し,1997年に京都議定書を拒否した.

1980年代以降,アメリカの覇権は失われるという議論があった.財政赤字,世界GDPに占めるシェアの低下,国際的な債権国から債務国に転落したこと.歴史的に,帝国の過剰な拡大が関心を集めた.

しかし,主要な問題は財布ではなく意志の欠如である.アメリカの国内政治は過度の孤立主義と介入主義との間で,短期的な事件を契機として,激しく変動を繰り返した.推定で4兆ドルを費やしたイラクとアフガニスタンでの戦争が失敗した以上,アメリカが孤立主義に向かうのは明らかだ.政府閉鎖にまで及ぶ議会の愚か者たちが,少しはアメリカのグローバルな指導力に及ぼす損失を意識するよう,誰でも望むわけだ.

新興諸国,特に,中国の台頭は現実である.それはツキディデスが描いたように,国際関係を不安定化する.国際秩序に既得権を持つ諸国が,新興諸国のために調整の余地を開けることが平和を維持するカギになる.中国の習近平は,ペロポネソス戦争やヨーロッパの戦争を再現しないために,他国との協力を唱えた.

債務国でありながらアメリカがグローバルな指導力を維持できたのは,アジアが分裂しているという幸運に助けられた.日本,韓国,中国の間の領土紛争が,またヨーロッパの財政・金融危機が,アメリカの存在を歓迎させている.

The Guardian, Wednesday 29 January 2014

State of the Union: platitudes of a post-imperial presidency

Simon Tisdall

アメリカの退場,孤立主義だ,という囁きは2008年にオバマ大統領が誕生したときからあった.火曜日の一般教書で,その囁きは絶叫に変わった.

その演説には偉大な世界目標がない.崇高な世界観もない.戦略的な外交政策もない.対抗する国の無い,超大国としてのアメリカの,責任も理想もない.帝国を捨てた大統領の時代が,ここに始まる.

アフガニスタンの住民がどれほど厳しい無秩序にさらされるか,それが予想されているにもかかわらず,アメリカ軍は撤退する.シリアの人道的な悲劇と地域の不安定化は国際社会による介入を求めているが,それでもアメリカは行動しない.

オバマにとって外交だけが新しい万能薬だ.中国の圧力を恐れるアジア諸国にも,アフリカでも,ウクライナでも,与えるのはリップ・サービスだけだ.慎重に遠くからドローンで攻撃し,NSAによって情報を集め,アメリカ企業に利益を与える.


l  1次世界大戦と現在

Project Syndicate JAN 29, 2014

The Great War’s Long Shadow

JOSCHKA FISCHER

オスマン帝国が崩壊し,イギリスとフランスの帝国がパワーで描いた国家の平和は,外部からのパワーで維持された.中東からアメリカ軍が撤退すれば,パワーの真空に様々な勢力が侵入する.他方,バルカンの平和はアメリカの介入とEU,ヨーロッパ諸国が帝国モデルを捨てたことで達成された.しかし正直に言えば,バルカン諸国がEU加盟を有利と見て望む限り,彼らは暴力に及ばないだけなのだ.

1914年の危機は東アジアにおいて議論されている.核兵器,中国の台頭,領土・国境をめぐる紛争,朝鮮半島の分断,歴史的な怨嗟,地位と尊厳に対する執着,協力のためのメカニズムは機能しない.


l  日本病の伝染

Project Syndicate JAN 27, 2014

America’s False Dawn

STEPHEN S. ROACH

アメリカ経済の回復についてダヴォスで合意が広がっているが,それは正しいか?

GDP成長率は持続不可能な在庫の増加によって高くなった.バランス・シート不況は消費者を窒息させ続けるのか? 今回の大不況では,急激な消費の減少だけでなく,その後も消費が伸びていない.それは,かつて日本の不況についてリチャード・クーが示したように,不動産と信用膨張のバブル崩壊後,損なわれたバランス・シートを回復するために消費が抑えられる現象,「日本病」the Japanese diseaseである.


l  中国の債務危機

FT January 27, 2014

China’s debt-fuelled boom is in danger of turning to bust

By Ruchir Sharma

アルゼンチンではない.2014年の大事件は中国の債務危機である.中国の成長は回復するという意見が多いが,少数派は歴史を味方にしている.中国のほどの信用ブームを経験した発展途上国は過去に5つある(Thailand, Malaysia, Chile, Zimbabwe and Latvia)が,そのすべてが債務危機と減速を経験した.

2008年までの5年間の生産拡大のうち信用に依存している割合は, 71%という衝撃的な数字である.

FP JANUARY 29, 2014

The Great Debtscape

BY ARTHUR KROEBER

Ruchir Sharmaの警告にもかかわらず,中国は何度も破滅の予言を翻してきた.その理由は3つある.1.金融引き締めと成長減速のキャンペーンを続けている.2.債務危機は封じ込めることができる.3.民間部門のダイナミズムを過小評価してはいけない.


l  金融危機後の世界

VOX 28 January 2014

The PADRE plan: Politically Acceptable Debt Restructuring in the Eurozone

Pierre Pâris, Charles Wyplosz

ユーロ圏は,その高い債務比率を下げるために何十年も苦しむのか,それとも,債務を組み替えることができるのか? 債務組み換えの選択肢は機能するし,より望ましい,という報告書が出た.(Geneva Special Report on the World Economy

その計画PADREはシンプルだ.債務はECBのシニョレッジを証券化して削減する.ユーロ圏の成長率が金利を超えることで,シニョレッジは発生し,ECBを通じて債務を削減する源泉となる.

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The Economist January 18th 2014

Coming to an office near you

The future of jobs: The onrushing wave

Tech Startups

Skills and youth: All hands on deck

Defence in Japan: Don’t look back

Japan and America: Surrounded by sharks

Japan: Sitting tight

(コメント) 技術革新が雇用を減らすときでも,それはより豊かな人々のもたらす需要によって,新しい職場を創り出す,とエコノミストは考えます.しかし,今起きている技術革新は,新興諸国の労働者が世界市場に参加したことと並んで,豊かな諸国の雇用を奪い,賃金を低下させている,と広く認められるようになりました.中産階級の消滅は,政治社会秩序にも重大な影響を及ぼします.

新しい起業家の時代が始まった.それは,生物が一斉に誕生した24000万年前のカンブリア紀に例えられます.他方で,大学教育は若者の失業に対する有効な対抗策になっていません.

日本の防衛問題は,安倍首相によって,偏ったナショナリズムや,歴史の見直し,中国,韓国,アメリカの反対する靖国参拝と結びつきます.日本のルールが,3年前に経験した3重苦,震災,津波,原発事故でも決して変わることがなかったのはなぜか,FTのジャーナリストは考えます.

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IPEの想像力 2/3/14

韓国の教育熱,留学熱と,受験戦争,大卒者の高失業率,などを解消するため,チェボルを解体するか,もっと新興ビジネスを奨励・育成するか,という論争に加えて,大企業が高卒者を優先して大量に採用する,という議論が起きているそうです.

大学とは何か? 大学教育は,これでよいのか? 誰も言わないだけで,「王様は裸だ!」と叫ぶ声が森の穴の中にたくさん埋まっている,と思います.

グローバリゼーション,技術革新,コンピューター化,単純作業から複雑な工作,流通,サービス,法律や会計,介護などにまで広がるロボット,若年失業者,派遣労働者,貧困,所得格差,アウトソーシング,インターネット・ビジネス,などが関心を集めます.同時に,教育への投資,教育による社会的な移動性が注目されています.

それは教育のもたらす革新です.特に,職業訓練(企業と教育プログラムの連携),幼児教育(誕生から4歳まで),専門知識(ハイテク化された情報力を駆使し,ロボットが扱わない分野を探す),想像力・革新性(芸術家的なセンス),市民としての教養・文化(ケインズが描いたような週15時間しか働かない世界).

かつてロナルド・ドーアは『学歴社会』という優れた日本研究を書きました.工業化や知識・文化の輸入に大きく依存するキャッチ・アップ型の社会に,「学歴インフレーション」が蔓延することを説得的に描きました.その中で教育は,能力(何かができる)のため,資格(公務員など)のため,楽しむために,社会的な役割を果たしている,と分類しています.

現在の混乱した大学像は,将来,1.もっと小さな,先端的,高度専門家集団になるか,2.語学・資格のための受験準備機関になるか,3.社会人のリフレッシュや視野拡大,起業家や社会運動家たちが戦略転換を議論する越境・触媒機能を果たすか,あるいは,4.富裕層や退職者の楽しみ,市民としての豊かさ・文化的充実を助けるサロンになるでしょう.

現在の大学は,1.であるかのような理想や外観を競い,234.の役割を非公式に取り込み,しかし全く異質な学生層,不適応な教員群を蓄積しています.イメージ化するため,学生と教員の割合を各分野に分けると,学生(12%250%30.1%41%,その他),教員(150%210%31%420%,その他)ではないでしょうか?  その結果,2.の関心が強い学生の多くにとって,大学の提供する知識は「無用」と感じるのです.

総合大学,有名・伝統・ブランド校,政策拠点校,は自ら変態し,これらの機能を重なって実行するかもしれません.しかし,4つの機能には矛盾した面があり,参加者の資格も異なります.もっとダイナミックに,個々の分野で新興教育機関が育つ方が社会は活気づくと思います.

予備校や塾,専門学校がもっと重視され,文化教室・社会人クラスがもっと体系的に組織・評価され,政策・社会運動のシンクタンクがもっと民間資金を集めて活発に設立されて競争する.幼児教育に特化し,あるいは,社会人や高齢者の要求に応じた機能が,インターネット・サービスとして独自に整備され,重要な国家資格のほとんどが安価に学習できる(もちろん取得は難しいでしょうが).そんな時代が来るはずです.彼らが,従来の有名伝統校も含めて「大学」を淘汰・駆逐する,ゴースト・バスターになるでしょう.

しかし,必要な能力,課題に見合った才能・適性を欠く学生や教員を,どのように退場・解雇・離職させるのか? もしそれが,失業の恐怖で,若者や教育機関を改造・支配しようという政治家や権力者の「陰謀」でなければ,これはすべての人にとって共通の,失業ではなく転職を助け,促す問題です.その答え自身が,教育の革新に含まれている,ということに気づきます.

学歴もデフレ,「失われた20年」を経たと思います.大企業が投資のための大規模な銀行融資を必要としなくなったように,大卒新規採用もますます必要としなくなりました.もう大学なんて要らない.学生も,親も,企業も,そう言うべきです.物質的にも精神的にも,豊かな社会の教育機能は,全体系を見直す時期が来たのでしょう.

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