前半から続く)


l  過激派とナショナリズム

NYT JAN. 10, 2014

Quebec's Latest Stand

By JEAN-FRANÇOIS LISÉE

Project Syndicate JAN 13, 2014

Education is a Security Issue

TONY BLAIR

13年ぶりに,11月,国連安保理で講演した.私はその変化に驚いた.20009月とは全く違う.ベルリンの壁が崩壊してから,われわれは新しい安全保障の秩序を築こうとしている.

しかし,暗い側面として,宗教的な違いや対立から世界中で紛争が起きている.過激派が若者たちに浸透するためのグローバルなネットワークを駆使し,学校を破壊している.彼らは敵を「神の敵」として暴力を広める.

紛争をなくすには,その根源を断つべきだ.われわれは教育によって過激派に対抗できると考える.学校は安全保障の砦になる.異なる文化・宗教の若者たちを,世界中で話し合いに参加させるプログラムが広まっている.

FP JANUARY 14, 2014

National Stupidity

BY STEPHEN M. WALT

世界情勢を変える最も強力な力とは何か? 多くの候補があるけれど,ナショナリズムはその強い候補である.それは,すなわち,2つの考え方が合わさったものだ.人類はさまざまな「民族nations」に分かれている.こうしたさまざまな民族は自分たちの「国家states」を創る資格がある.植民地体制が放棄されて独立し,多くの帝国は解体された.

それは必ずしも悪いことではない.ナショナリズムには良い面がある.集団行動のジレンマを克服する.共通の善のために犠牲を払う.宗教など,他の違いを超えて協力する.軍事的に見ても,忠誠心に欠ける傭兵よりも,愛国心に燃える兵士の方が激しく戦う.

しかし,ナショナリズムにはマイナス面もある.自民族の優れた点を強調し,他民族の劣った点を誇張する.自国の歴史を華美に修正する.かつてKarl W. Deutschは,民族とは「過去の間違った見方と近隣諸国への憎しみを共有する人間集団」と定義した.彼らは同じことを全く違う見方で理解している.

国民は他国民が彼らを疑う理由があることを忘れてしまう.集団的な健忘症は,敵対する国の行動を最悪の可能性で解釈する.ナショナリズムは紛争の解決を困難にする.特に,競争する国民の歴史解釈が領土紛争を生んだときにそうだ.紛争は,領土を完全に支配する以外のすべての条件を全く根拠がないと考え,拒否する.それは外交交渉の柔軟性を奪ってしまう.完全な勝利でなければ,全ては神聖な国民の価値を裏切るものであるからだ.

極端なナショナリズムは過剰な自信を生む.自分たちは優れており,他国民は劣っている.戦争によって他国を敗退させることは容易である,というわけだ.最悪の場合,過激なナショナリズムは国家の長期的な利益を損なう.ドイツのナチズムや日本の軍国主義がそうであった.現代の国民的な愚かさを示す例として,中国の南シナ海における領土要求.安倍晋三は,中国と尖閣諸島を争うだけでなく,アジアで友好国を増やすことが望ましいはずだが,韓国とも島をめぐって紛争を刺激し,従軍慰安婦を否定し,靖国神社に参拝する.イスラエルのシオニズムによる支配領域拡大.アメリカの「例外主義」がもたらす愚かな自信,アメリカが最善の政府モデルを輸出できる.多文化国家として他の地域では文化的な違いがもっと深刻な意味を持つことを無視する.

無思慮で無批判なナショナリズムを強めることが,ときには,社会全体を損なう.正当な自尊心から,非常に醜い,野蛮な,危険な目標に容易に向かうことがある.


l  シャロンの訃報

Project Syndicate JAN 11, 2014

The Ingenious General

EDWARD N. LUTTWAK

NYT JAN. 11, 2014

Ariel Sharon, the Ruthless Warrior Who Could Have Made Peace

By RONEN BERGMAN

FP JANUARY 11, 2014

Warrior, Farmer, Leader

BY AARON DAVID MILLER

FT January 13, 2014

A clever tactician who was too clever by half.

by David Gardner

FP JANUARY 13, 2014

Call Off the Sainthood of Ariel Sharon

BY RASHID KHALIDI

シャロンは,イスラエルに対して武器を取った者だけでなく,すべてのパレスチナ人を「テロリストたち」とみなすことが,1982年,シャロンとアメリカ政府特使Morris Draperとの会談のシナリオであった.それは2つの虐殺事件the Sabra and Shatilaが進行するときに行われていた.

当時,ベイルートにはPLOの兵士はいなかった.彼らはアメリカの仲裁で数週間前に退避したのだ.しかしシャロンはPLO撤退後にもテロリストたちが残っている,と主張した.90分の会談で39回も「テロリストたち」に言及し,イスラエルも即座に西ベイルートから軍を撤退させるべきだ,と言うDraperを無視し,難民キャンプで虐殺を続ける殺し屋たちが作業しやすいようにイスラエル部隊は照明弾を打ち続けた.

NYT JAN. 14, 2014

The Man on the Wall

Thomas L. Friedman


l  機械との競争

NYT JAN. 11, 2014

If I Had a Hammer

Thomas L. Friedman

オランダ人のチェスの名人Jan Hein Donnerが,どうやって次のコンピューターとの対戦に備えるのか? と質問されたとき,こう答えた.「金づちを持っていくよ.“I would bring a hammer.”

自動操縦の自動車,ロボット化された工場,高度な知識を駆使する予約マシーン,・・・ブルー・カラーだけでなく,ホワイト・カラーの職場も,チェスの名人も,コンピューターに仕事を奪われる.MIT2人の研究者Brynjolfsson and McAfeeによれば,われわれは「第2の機械化時代」に入ったのだ.

「第1の機械化時代」は18世紀の産業革命で始まった.蒸気機関が人間の筋力を補ったのだ.機械はますます多くのパワーを得たが,それは必ず人間の管理や意思決定を必要とした.機械化は人間の労働を「より価値のある,重要な」ものにした.その意味で,労働と機械は補完的であった.

2の機械化時代はそうではない.機械はますます認識能力や管理能力をも高めている.人間とソフトウェアによるロボットは互いに代替するものになっている.ムーアの法則が働くなら,人間はその勝負に勝てないだろう.

われわれの世代は,世界を改良するより大きな力を持つだろう.それはますます少数の者が,ますます高度な技術を利用するからだ.しかし,同時に,われわれは社会契約を真剣に再考しなければならない.労働することは,人間のアイデンティティや自尊心,社会の安定性にとって重要だから.それゆえ,デジタル労働に比べて人間労働を有利にするように減税するべきだ.また,「機会との競争」に人間が勝てるように,教育システムを革新するべきだ.新産業や雇用をっもたらす企業家を育成するべきだ.またアメリカ国民すべてにベイシック・インカムを保証すべきかもしれない.

機械による労働市場の再編圧力は,18か月毎に2倍になる.


l  グローバル・インバランスの解消

FT January 12, 2014

Investment: Dollar disruptions

By Robin Wigglesworth

ドルの価値が回復すれば新興市場は通貨危機になるのか? 発展途上諸国は自国の金融市場が未発達で,外国から貯蓄を利用した.しかし,自国通貨建で借りることができず,外貨建の債券発行や借り入れになった.その多くはドルである.高金利やドル高は,彼らを苦しめる「原罪“original sin”」である.

最近,原罪は緩和された.新興市場でも貯蓄が金融市場に集まり,あるいは,自国通貨建で債券を発行し,外国からの借りるようになった.それでもドルの増価は彼らに影響する.

Project Syndicate JAN 13, 2014

A Requiem for Global Imbalances

BARRY EICHENGREEN

グローバル・インバランスに関して心配し始めてから10年が経つ.幸いにも,その懸念は過ぎ去った.正しい教訓を学ぶときだ.

アメリカの経常収支赤字は,2006年にGDP5.8%であったが,今は2.7%に減った.中国の経常収支黒字はさらに大きく減少し,2007年のGDP10%から2.5%に減った.

2004年には2つの意見があった.1つは,楽観派で,新興経済のドル準備に対する需要はアメリカが供給すればよいだけだ,と考えた.安全な金融資産と安価な消費財との交換は幸せな均衡であり,永久に続けることができる.もう1つは,悲観派で,ある時点になれば,新興市場のドル需要は満たされる.アメリカの経常収支赤字は融資されなくなって,ドルの価値が急落する.

今,両方とも間違いであったことがわかる.中国は安全な資産への需要を満たすにつれて,それはリスクの高い海外投資になった.中国は貯蓄より消費へ,輸出より国内需要へ転換することで均衡を回復し始めた.

他方,アメリカは債務やレバレッジに頼ることの危険を知った.債務への依存を減らし,貯蓄を増すための手段を取った.支出のパターンが変化し,ドルは安くなり,より多く輸出するようになった.人民元は強くなり,それは中国人の消費を増やした.

確かに危機は起きたが,それはグローバル・インバランスによるものではなかった.逆に,ドル化危機の中で価値を高めた.外国投資家が流動性を求めてアメリカの財務省証券を買ったからだ.危機の主要な原因は,アメリカの金融機関・金融市場に監視や規制が緩かったことだ.中国が危機を起こしたのではない.アメリカが起こしたのだ.

国際的な資本移動は危機に関係していた.しかし,経常収支不均衡を融資する,その他の世界からアメリカへの,ネットのフローではなかった.アメリカからヨーロッパへのグロスのフローがヨーロッパの銀行にレバレッジを増大させ,アメリカのサブプライムに関係する有毒な債券を購入させたのだ.グローバル・インバランスの両派が,この北大西洋のグロス・フローを見逃した.

米中間でインバランスは再現しないように見える.危機前の成長や支出のパターンに戻ることはない.シェールガス革命でアメリカの貿易収支は改善するだろう.新興市場は輸出超過が高成長を保証するわけではない,と学んだ.巨額の外貨準備も安定性を意味しない.金融機関のプルーデンシャル規制,不安定化する資本フローの管理,為替レートの調整を受け入れること,などが安定性を高めるのだ.

FT January 14, 2014

Distress appears in Asian funding markets

By Henny Sender

FT January 16, 2014

Storms gather over emerging markets


FT January 12, 2014

The tide is rising for America’s libertarians

By Edward Luce


l  中国の金融不安

FT January 12, 2014

Rising rates will help cure China’s credit addiction

By Joe Zhang

昨年,6月から12月にかけて,中国の銀行間金利が急上昇した.通常は3%樽が,9%まで上がった.銀行は預金集めに殺到し,資産管理型商品の金利を引き上げた.株式・債券市場は下落した.

内外の分析家は不良債権や銀行部門の脆弱性を問題にした.中央銀行は最後の貸し手であるべきだが,1980年代,90年代の中国人民銀行は,預金ベースを超える融資拡大を望む銀行の最初の拠り所であった.

銀行は規制を強化されて資金が枯渇した.しかし,銀行はそうした環境に慣れて,新しい資金調達手段として資産管理型商品を売り出した.資金が枯渇することは以前からあったが,それは報道されないし,銀行間市場もなく,中央銀行が緊急融資してきた.1980年代以降の融資拡大は30~40%1990年代後半に不良債権となっている.

中国は不動産バブルを抑え,無駄な投資をやめ,庶民の貯蓄で企業に補助金を与えることを止めるために,金利を上げるべきだ.

FT January 15, 2014

China’s dangerous credit addiction

FT January 15, 2014

China needs to overcome its ‘software’ deficit

Peter Mandelson


l  北朝鮮を助ける?

NYT JAN. 12, 2014

Why Does China Coddle North Korea?

By JONATHAN D. POLLACK

FP JANUARY 15, 2014

Undercover from Overhead in North Korea

BY JOEL S. WIT, JENNY TOWN

BLOOMBERG Jan 16, 2014

Can North Korea Save the South?

By William Pesek

韓国の朴クネ大統領は,中国や日本と競争するために,意外な同盟相手を見つけた.キム・ジョンウンだ.

理論上は,韓国の資本と技術,北朝鮮の資源,労働力を組み合わせれば,強力な成長のエンジンができるはずだ.しかしそれは,北が兵士や武器,有刺鉄線を取り除き,非武装地帯を解消する意志にかかっている.スターリンを止めて資本主義に変えるよう,キム・ジョンウンを説得するのはかなり難しい.

同様に,自国民を説得するのも難しいだろう.

Project Syndicate JAN 16, 2014

Is North Korea Opening for Business?

LEE JONG-WHA


l  世界金融市場とバーナンキ

FT January 13, 2014

An expensive way to speak truth to financial markets

Avinash Persaud

FT January 13, 2014

Markets run into fog of forward guidance

By Satyajit Das

Project Syndicate JAN 14, 2014

The Financial Fire Next Time

ROBERT J. SHILLER

次の金融危機を防ぐ手段を開発することに,もっと関心を払うべきだ.

Project Syndicate JAN 14, 2014

Ben Bernanke’s Global Legacy

ARVIND SUBRAMANIAN

Alan Greenspanの評価についてもまだ意見が割れている.Ben Bernankeについてはまだこれからだ.しかし,アメリカ国内経済の弱さがその国際的指導力を損なった時代に,彼の国際的な役割の重要性を見逃してはならない.

金融危機後の5年間,連銀は2つの方法で世界経済に貢献した.1つは,長期資産の購入,すなわち,いわゆる量的緩和QEである.もう1つは,ほとんど無視されているが,国際流動性の供給である.

QEに対して,それがともなうドル安を為替操作(通貨戦争)と非難する声が,特にブラジルなど,新興諸国から起きた.しかし,それは間違いだった.彼らが苦しんだのはおおむね自国のマクロ経済に,インフレ高進,財政赤字,対外赤字,という問題があったからだ.金融的なグローバリゼーションを受け入れた国は,それがアメリカ連銀の影響にさらされることを認めたはずだ.

アメリカ連銀が果たした建設的な国際的責任は,国際流動性を積極的に供給したことだ.ブラジル,メキシコ,シンガポール,韓国の中央銀行にも,直接,ドルをスワップで供給した.彼らは1990年代の金融危機で,アメリカの道具としてのIMFから融資を得るために難しい交渉を経験した.そして,IMFよりもアメリカ連銀に対して,直接,交渉することを好んだのだ.その方が迅速かつ効果的であった.

同盟諸国も含めて,世界の主要国がすべてIMFの規模拡大を求めているのに,アメリカ議会は合意できない.アメリカの政治は機能マヒに陥っても,アメリカ・ドルはまだ市場で需要されている.それも永久には続かない.中国の成長によって人民元が対抗し始める.

アメリカの指導力が陰り始めた時だからこそ,Bernankeの建設的な国際的指導力が評価される.彼は「ヘリコプター・ベン」としてだけでなく,優れた「アンバサダー・ベン」であった.

FT January 16, 2014

The Bank of England must go slow on tightening

By Martin Wolf

FT January 16, 2014

Structural change is the answer to the problem of bankers’ bonuses

By Philip Augar


l  タイの民主主義

FT January 13, 2014

Thailand moves towards the brink

世界各地で反政府デモが起きている.今はバンコクだ.しかし,1つだけ違う点は,反政府デモの要求が民主主義に反対することだ.タクシン以降,彼の政党とその後継者が選挙で常に勝利したからだ.

民主主義と経済的成功による,タイの東南アジアにおける高い地位が動揺している.タクシンは超資産家から政治指導者になった,タイの政治エリートに憎まれている人物だ.貧しい農民たちに医療や補助金を与えて,政治的に動員することに成功した.ドバイに亡命生活をしながら,妹のインラックはタクシンの有罪判決を無効にすることもできる法案を提起し,議会を混乱させた.

しかし,タイの民主主義を救うために,反政府派はインラック政権を認め,双方が選挙に参加し,街頭の暴力ではなく,投票結果に応じて交渉するべきだ.

Project Syndicate JAN 15, 2014

Who Lost Thailand?

YURIKO KOIKE

タイの民主主義が後退すれば,安全保障を損ない,さらに,この地域で広がる民主主義と中国との闘いにも影響する.


NYT JAN. 13, 2014

According Animals Dignity

Frank Bruni


l  オランドの危機

FT January 14, 2014

HollandehasfailedtoseizehisMitterrandmoment

By PeterGumbel


l  トルコ

Global Times | 2014-1-14

Turkey’s SCO courting largely aimed at sending messages to Europe

By Sun Zhuangzhi

Project Syndicate JAN 14, 2014

Erdoğan’s Self-Inflicted Crisis

DANI RODRIK


l  通貨の選択

FT January 15, 2014

A hollow independence if Scotland keeps sterling

By JohnGreenwood

独立した場合,スコットランドはイギリスとの通貨同盟を組むか,スターリングを勝手に採用するか,あるいは,香港のようなカレンシー・ボードによる厳しい条件を守るか,である.

FT January 16, 2014

Beware the mania for Bitcoin, the tulip of the 21st century

By Jean-Pierre Landau


l  アメリカとイラン

NYT JAN. 15, 2014

Obama’s Losing Bet on Iran

By MICHAEL DORAN and MAX BOOT


l  シリア停戦を求めて

Project Syndicate JAN 15, 2014

A Syrian Farewell to Arms

VOLKER PERTHES

停戦が重要だ.戦闘状態は過激派の支配を広め,彼らは戦闘激化によってますます多くの支援を外部から集める.このダイナミクスを破らねばならない.

停戦が成立すれば,人道的な支援物資が届き,難民の流出が止まり,近隣諸国が安定する.穏健派による外交的な交渉が可能になる.紛争地域の政治的な移行過程が支持されるようになる.

FT January 16, 2014

Grappling with the Syria conundrum


l  オランダ

Project Syndicate JAN 16, 2014

A Dutch Cure for the Dutch Disease

MICHAEL J. BOSKIN

福祉国家の改革をどう進めるべきか? オランダは成功例を示している.

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The Economist January 4th 2014

Europe’s Tea Parties

Europe’s populist insurgents: Turning right

NAFTA at 20: Deeper, better NAFTA

NAFTA at 20: Ready to take off again?

Local government debt: Counting ghosts

(コメント) ヨーロッパにおいて成長しているポピュリスト政党の影響力と将来性を考えます.他方,アメリカでは,安全保障や移民政策の議論が進まず,NAFTAも完全には成功しません.中国の地方政府が抱える債務は,正確に把握することも難しい.

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IPEの想像力 1/20/14

制度の背後にある社会的連帯を否定し,市場統合による富を強調することは,新しい超資産家とメディアを利用するポピュリスト政治家の躍進をもたらしました.富と権力は互換性を高め,さまざまな個性を通じて,支配体制を更新します.

豊かな北大西洋諸国,そして,日本では,中産階級の衰退が政治を不安定化しますが,他方,アジアやラテンアメリカ,中東,アフリカの巨大都市には「中産階級意識」が広まり,政治を活性化しています.

インドのAAPは,アジアにおける人口変化,都市化を反映します.貧困層の間にも通信メディアが浸透し,政治や社会の情報が生活に結びつくことを意識し始めて,自分たちも政治家を支援できることに気づきます.

「ヨーロッパのティー・パーティー」というThe Economistの記事を読んで,日本なら,石原慎太郎,安倍晋三,橋下徹,などを指すのだろうか? と思いました.彼らに共通するのは,攻撃の対象を選んで,民衆の不満を高めることです.

The Economistは,ポピュリスト政治のピークは近い,と考えます.彼らは本質的に,政治の周辺で不満を吸収するシステムの機能を担うからです.ポピュリストたちが主流の政治家に代わるためには,EUによる統合を支持する議論に参加しなければなりません.東欧からの移民や,イスラム教を含む信仰の自由も肯定するでしょう.

しかし,テロ事件や軍事衝突,秘密警察,などが契機となって,ポピュリストが社会・政治体制を掌握する土地もあります.2009年,Washington PostMoises Naimは「権力の新しい調理法」を描きました.

1.社会の最貧困層をよくかきまぜます.容赦ない分解促進運動.怨嗟や憎悪,経済的ポピュリズムを泡立たせ,調和のための潤滑油を除去して社会対立を沸騰させます.

2.民主的な選挙で権力を握ります.このとき,汚職をねつ造・暴露し,対立候補の信用を失墜させ,有権者を買収するチームが役立ちます.そして自分は腐敗追放を叫び,富裕層には奪われた富を回復すると約束します.

3.最初は選挙で勝つ.4.軍隊のトップ,5.裁判官と判事,を交代させる.6.国民投票によって憲法を変える.7.最貧困層に多くの権利を与え,実際は大統領に権限を集中する.8.反対派を買収・弾圧・暗殺する.9.メディアを支配する.

http://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2009/081009review.htm

権力や貿易は「見えざる戦争」という性格を持っています.石原や安倍,橋下の政治表現は,威嚇,優越,謀略を追求し,積極的に肯定します.それは恐竜時代の政治にもどる流れであり,アジアの混沌を共有します.言い換えれば,日本も,中国も,アジア乱流圏に呑み込まれて,政治の地形や方位を何度も書き直す作業を始めたのです.

侵略者を撃退し,工業化や制度改革において犠牲を受け入れる,ナショナリズムの優れた面と,愚劣な,あるいは,醜悪で,危険な面とを,政治家たちは操縦できると考えます.過激な表現を駆使しながら,自分だけは熱狂を冷ますこともできる,と錯覚します.

しかし恐竜たちの戦いでは,威嚇から戦争へ,恐怖の過激化と悪循環へ向かうでしょう.これを解決するには,戦争で疲弊し尽くすか,「世界市民による民主主義」を示すことだ,と思いました.ただし,グローバルな民主主義の学校を開くことです.

十分に時間を取って,適切な情報を用意し,主要な意見の説明を聞いて,質問し,話し合うことができたら,しかも,その判断を世界中の事件や歴史から「検証」し,繰り返し自分なりの反省と修正を試みることが奨励されるなら,私たちは重要な問題におおむね合意できるでしょう.そして互いの違いを理解したうえで,それでも共通する部分が多いことに満足すると思うのです.

政治を目指す者は,民族の誇りや富への熱狂・怨嗟に頼らず,偉大な文明を導くことが重要です.

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