IPEの果樹園2014

今週のReview

1/20-25

 

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ヨーロッパの経済改革 ・・・第1次世界大戦に寄せて ・・・インドとアジア政治の将来 ・・・アイスランド危機と回復 ・・・安倍政権の危うさ ・・・過激派とナショナリズム ・・・機械との競争 ・・・グローバル・インバランスの解消 ・・・中国の金融不安 ・・・世界金融市場とバーナンキ ・・・タイの民主主義 ・・・シリア停戦を求めて

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  ヨーロッパの経済改革

VOX 8 January 2014

A consistent trinity for the Eurozone

Marco Buti

ユーロ圏には3つのトリレンマがある.トリレンマとは,理想的な目標があるけれど,これらを達成するために1つに向かえば,他の2つがトレードオフの関係を強めてしまう,ということだ.

まず,金融危機後の低成長に苦しむユーロ圏では,政府債務が大きくなっており,慎重な財政政策を取るしかない.国による財政状態の違いは大きく,失業は長期化し,ヨーロッパの「社会的市場モデル」が壊れかかっている.第1のトリレンマは,財政健全化,持続可能な福祉国家,構造改革,の関係である.ユーロ圏は「停滞の罠」にある.

また,低成長が続く中でも,ユーロ圏の対外赤字諸国は競争力を回復しなければならない.しかも為替レートを利用できない以上,相対的に低い,あるいは,マイナスのインフレ率に抑えることで競争力を回復することになる.しかし,デフレ策は債務の持続可能性を損なうことになる.第2のトリレンマは,ユーロ圏のインフレ率が低い中で,債務負担を減らし,競争力を回復することだ,それが,成長や債務返済を損なう,ということだ,

インフレ率がこのまま低いと,ユーロ圏は日本型の名目物価の下落に向かうかもしれない.その深刻さは日本の「失われた10年」に示されている.このトリレンマを抜け出すには,ユーロ圏のコア諸国が,特に公的・民間投資を支援して国内需要を増やすしかない.

最後に,ユーロ圏は,高度に統合された金融システムであり,その中で脆弱な銀行部門と各国の財政状態とが結びつき,銀行部門の再生に苦しんでいる.銀行部門を各国政府の財政だけでは支援できなくなっている.各国の信用状態が異なっており,それが経済の回復を遅らせ,金融的な政策効果の波及チャンネルも機能しなくなっている.第3のトリレンマは,財政の安定性,金融市場統合,銀行と財政との結び付き,という関係だ.

財政的な統合を欠いたまま,脆弱な銀行と財政とが結びついている以上,ECBが銀行に対する最後の貸し手になるしかない.それが銀行同盟に合意する背景であった.しかし,銀行監督の統一と財源の統一に踏み出せず,銀行同盟にもまだ問題が残されている.

しかし,これらは3つの目標が互いに促進し合う「一貫した三位一体」を構成するだろう.すなわち,より体系的な調整,根本的な構造改革,本当の意味での銀行同盟,である.

コアと周辺の諸国で大胆な構造改革を行えば,福祉国家は維持できる.それはコア諸国の国内需要を高め,貿易を通じて周辺諸国に需要を与え,対外不均衡を調整する.ユーロ圏内のインフレ率は目標に近づき,周辺がインフレ率の差で競争力を回復する余地を与える.周辺のデフレは回避され,財政と債務の持続性が高まる.完全な,効果的な銀行同盟を実現し,金融市場の分断化を解消し,それは企業部門の信用供与を回復させる.そして,より安定した,透明で,予測可能な金融市場になる.

The Guardian, Sunday 12 January 2014

Europe's left has seen how capitalism can bite back

Leo Panitch

20世紀の大部分において,「改革」という言葉は資本主義的な市場競争がもたらす破壊的な効果に対する国家の保護を提供することを意味した.しかし今日,そのもっとも通常の意味として,保護を解体することを指す.ヨーロッパ諸国は労働コストを下げるために,熱狂的に労働者の職場における保護を解体している.

かつて,左派には,改革か革命か,という論争があった.それが時代遅れになったのは,単に革命的な変化の見通しや可能性が無くなったからではない.「改革」という言葉が,1世紀前の社会民主主義者が使った意味と全く違うからだ.改革とは,革命の痛みを生じない,漸進的な社会改造であった.しかし,それも市場に抗して社会的連帯を促すためにデザインされたのだ.

民間投資を妨げることは何もするな,という思想は,信じられないほど強くなった.これこそが社会民主主義の政治家を臆病にさせている.しかし,改革を目指す政府は資本流出を阻止しなければならず,必要な改革の余地を得る止めに金融機関を社会化しなければならない.

ギリシャのSyriza党は,ポピュリズムではなく左派として,それを主張している.

FT January 13, 2014

Deflation can still pose a danger to the fragile recovery

Stephen King

theguardian.com, Wednesday 15 January 2014

Europe's welfare spending is its strength, not its weakness

Alex Andreou

theguardian.com, Thursday 16 January 2014

Why has Europe's economy done worse than the US?

Mark Weisbrot

大不況後の回復が,顕著に,ヨーロッパに比べてアメリカにおいて進んでいるのはなぜか?

最も重要な点は,金融政策の違いである.アメリカ連銀は2008年にセロ金利にして,そのまま継続している.ECB20127月に,新しいドラギ総裁が「何でもやる」と約束するまで,トロイカ(欧州委員会,ECBIMF)の財政引き締めを推進していた.

ヨーロッパのこれらの機関は,アメリカに比べて,住民に対する責任を負っていない.特に犠牲となる諸国(スペイン,ギリシャ,アイルランド,イタリア)の住民は無視されている.それどころか,ヨーロッパの経済当局は危機を利用して,自分たちのお気に入りの「政治課題」を達成しようとした.すなわち,財政再建や社会福祉・公的サービスの削減である.

長引く危機で20カ国以上の政権が交代し,財政再建はようやくそのスピードを抑え始めた.しかし,雇用水準が正常に戻るまでどれくらい時間がかかるか,だれにもわからない.これがユーロ圏の経済問題に関する民主主義の実態だ.あまりにも遅い.


l  1次世界大戦に寄せて

SPIEGEL ONLINE 01/08/2014

Disaster Centennial

The Disturbing Relevance of World War I

By Klaus Wiegrefe

5つの大陸から6000万人以上が戦争に参加し,6人に1人が死んだ.数百万人が負傷し,体の一部を失って帰国した.

1次世界大戦によってできた13カ国の地図がある.(フィンランド,エストニア,ラトビア,リトアニア,ポーランド,チェコスロヴァキア,オーストリア,ハンガリー,ユーゴスラビア,トルコ,シリア,イラク,パレスチナ)

多くの国で様々な式典が計画され,記念出版が続く.ドイツだけでも約150冊だ.イギリスのキャメロン首相は,政府の資金による生徒たちの西部戦線見学を始めた.平和主義のドイツでは考えられないことだ.

1次世界大戦は,ヨーロッパの歴史上,最も戦死者の多い戦争である.だから今も「大戦争」"The Great War"と呼ばれる.それはさまざまな新兵器(戦車,飛行機,化学兵器)が利用された新しい時代の戦争であった.戦争の結果,アメリカは世界の警察官となり,フランスはドイツに対する偏見を持ち,バルカン半島ではエスニックな敵意が激化し,中東には恣意的な国境線が引かれた.それは今も,平和的な共存を阻んでいる.

戦争の恐怖を記憶するだけでは,かつての敵が和解するより,昔の傷を思い出すだけかもしれない.その意味では100周年には悪いタイミングである.5月にはヨーロッパ議会選挙が予定されているため,多くの国でナショナリストの運動や反ドイツ感情が高まっている.

戦争の再現を考えるには平和すぎる.しかし,第1次世界大戦前にも世界はグローバル化していた.ドイツの当時の輸出割当量はコール元首相の時代まで,その水準を越えなかった.ドイツ人はインド綿花から作ったジャケットを着て,中央アメリカからのコーヒーを飲んでいた.ドイツ人はロンドンで散髪屋,セント・ペテルスブルグでパン屋,パリではメイドをしていた.他方,ルールの工業地帯ではポーランド人が厳しい条件で働いた.

人々はパスポートなしにヨーロッパを旅したし,オックスフォードやソルボンヌの教授たちは交信していた.皇帝ヴィルヘルム2世,イギリスのジョージ5世,ロシアのニコライ2世はいとこ同士であった.彼らは家族として行事に参加し,1913年には皇帝の娘の結婚に同席していた.

なぜドイツは191484日に攻撃したのか?

1914628日のオーストリア皇太子Franz Ferdinand暗殺.大セルビア国家の独立を夢見た19歳の学生Gavrilo Principなど,若者たちが実行した.3人が処刑された.

83歳のオーストリア・ハンガリー帝国の皇帝Franz Josephは,帝国を脅かすセルビアのナショナリズムを一掃しようと決意する.

ドイツの歴史家Fritz Fischerは,世界権力を求めるドイツの姿勢が第1次世界大戦の主要な原因だ,と主張した.しかし,ロシア,フランス,オーストとリア・ハンガリーなど,全ての主要国が原因となる戦争計画を立てていた.当時,戦争は国家の合法的な手段であり,中期的に見て,避けられないと見なされていた.

フランスはドイツの軍備拡大に遅れたことを恐れ,ロシアを使って圧力をかけた.ドイツの軍部は,長期的に,ロシアが優位に立つことを恐れた.つまり,即座に攻撃するべきだった.ドイツ皇帝はイギリスが態度を変えることを恐れていた.イギリスはドイツ帝国がイギリスを超えることを恐れていた.

それは壊れやすい,複雑なシステムであった.その運営には慎重さと先見性が必要だった.歴史家Christopher Clarkは,1914年の意思決定にかかわった王族,大臣,軍人,外交官,を数百人と推定した.しかし,彼らはあまりにも高齢であり,その多くが貴族であった.

The Guardian, Friday 10 January 2014

The first world war centenary should be about shared understanding, not political point-scoring

Margaret MacMillan

1次世界大戦について様々な主張が現れている.しかし,神話を排すべきだし,解釈を証拠によってよく吟味しなければならない.

歴史は論争に満ちている.第1次世界大戦はその始まりから終結まで多くの論争に従う.歴史に関する議論を喚起することで,われわれは理解を深めることができうる.しかし,個人のプレーヤーや国家を全体の状況によって説明しなければならない.

戦争は手段として認められ,指導者たちは戦争が避けられないと考えた.社会ダーウィニズムはドイツだけでなく,広くヨーロッパ全体に影響した.多くの兵士たちは自国のために戦い,また,家族や友人のために戦った.

何よりも残念なことは,論争が現在の政治的な目的に利用されることだ.死者たちに対する敬意が,歴史の理解ではなく,政治家の安直なポイントに換えられる.

FP JANUARY 10, 2014

Echoes of 1914

BY GORDON ADAMS

SPIEGEL ONLINE 01/13/2014

Stolen Triumph

Russia Revisits Pivotal Role in World War I

By Christian Neef

Project Syndicate JAN 13, 2014

1914 Revisited?

JOSEPH S. NYE

1次世界は,ヨーロッパとそれを越えて国際秩序を根本的に変えた.ヨーロッパの3つの帝国(ドイツ,オーストリア・ハンガリー,ロシア)と,オスマン帝国の支配を崩壊させた.世界のバランス・オブ・パワーが変化し,アメリカと日本が台頭した.1917年にはボルシェビキ革命が起き,ナチズムを準備し,20世紀の主要なイデオロギー対立が登場した.

それは再現されるだろうか? 現在のアメリカと中国の関係は,当時のイギリスとドイツンに似ているのか? 中国が平和的に台頭することは不可能か?

しかし,ときには有益だが,歴史を類推するのは間違っている.特に必然だと主張してはいけない.第1次世界は不可避ではなかった.現代は1914年と異なっている.核兵器は,政治指導者たちに戦争の結果を予測させる.1914年に,皇帝たちは戦争の結果を予測できなかった.イデオロギー対立は少ないし,米中ともに限定戦争を考えていない.判断の間違いは起こりうるが,エネルギー,気候変動,金融安定化,など,米中間には協力によって守るべき大きな利益がある.

1914年のドイツに比べて,現在の中国はまだアメリカよりも軍事・経済・ソフトパワーで大きく遅れている.つまり,冒険的な行動は中国の利益を内外で損なうのだ.アメリカにはイギリス以上に新興国との関係を管理する時間がある.しかし,大きな恐怖は自己実現的である.戦争が避けられないという考えは,戦争の原因の一つになる.

FT January 14, 2014

Failing elites threaten our future

By Martin Wolf

ヨーロッパの政治的,経済的,知的なエリートたちの失敗により,1914年から1945年に人々が苦しむ大きな破局を生じた.彼らの無知,偏見,誤謬,悪しき価値,などが.戦争が栄光であるとか,管理できるとか,間違った考えが,指導者たちを集団的な自殺に向かわせた.

複雑な社会をエリートたちが改善できるとか,事態が醜い破滅に向かうのを防ぐ,というのは間違っていた.エリートたちの失敗は政治秩序を崩壊させた.同時に,第1次世界大戦は19世紀の経済的な基礎,自由貿易と金本位制を破壊した.その再建はさらにエリートたちの失敗を招き,大恐慌と第2次世界大戦に導く.

民主主義では,政治エリートたちの交代が迅速で清潔に進む.専制政治では,それが遅く,しばしば流血をともなう.今では軍国主義や帝国主義のイデオロギーが後退し,強力な諸国も,戦争より平和の方が生産的であると考えている.

今もエリートたちの失敗は繰り返されているが,それは幸い,戦争ではなく,平和を管理することである.もっとも目につく失敗として,3つを挙げる.

1.先走った金融自由化の結果を理解できなかった.金融市場は自己安定化が働くと間違って考えた.債務の増大を支持した.そして罪を犯した者を救済するために納税者が犠牲を強いられた.

2.グローバルな経済金融エリートが誕生した.彼らは国家との結び付きを弱め,同時に,民主主義を結びつける市民の概念を弱めた.財閥政治は,民主主義が市場経済に依拠して以来,常に存在したが,人々が経済エリートによって政治が利用されていると思うなら,社会は解体する.

3.ユーロ圏の建設で,ヨーロッパ人は自分たちの運命を握る貨幣を手放した.貨幣の管理をめぐって人々は対立した.失業,移民,債務,など,ユーロ圏はその立憲的な秩序を失い,赤字諸国の人々はパワーを否定されている.

FP JANUARY 15, 2014

Cult of the Cyber Offensive

BY P.W. SINGER, ALLAN FRIEDMAN

FP JANUARY 15, 2014

The Future of War (II): As the nature of war changes, the familiar dividing lines of our world are blurring across the board

BY THOMAS E. RICKS


l  貧困との戦い

NYT JAN. 9, 2014

The War Over Poverty

Paul Krugman

貧困との戦いはこう言われてきた.この計画は貧困を減らさなかった.アメリカの貧困は社会問題だ.家族の解体,犯罪,依存の文化,など,政府が支援すれば強まるだけだ,と.こうした考え方があまりにも支配的になったために,貧者を責めることが良い政治になった.

しかし,その後の事実は全く違う.

貧困との戦いは多くの成果を上げた.もし食糧スタンプや勤労者所得税控除を含めて考えるなら,貧困は大きく減った.貧困層の生活状態は改善された.貧困の改善が進まない責任は,むしろ労働市場にある.

今や,政治の力学が変わった.貧困との戦い50周年は,改革派の復活に向けた足場になる.

NYT JAN. 11, 2014

The Vicious Circle of Income Inequality

By ROBERT H. FRANK

theguardian.com, Sunday 12 January 2014

America is still a deeply racist country

Chris Arnade

NYT JAN. 12, 2014

Enemies of the Poor

Paul Krugman

Project Syndicate JAN 14, 2014

The Missing Mission For Government Spending

WILLIAM JANEWAY


l  地域貿易協定

YaleGlobal, 9 January 2014

Will TTIP Harm the Global Trading System?

Katinka Barysch, Michael Heise

FP JANUARY 14, 2014

Out of the Way, Congress

BY KATI SUOMINEN

Project Syndicate JAN 14, 2014

Partnership or Putsch?

GORDON LAFER


l  インドとアジア政治の将来

BLOOMBERG Jan 9, 2014

India Bets on Modinomics, Whatever It Is

By William Pesek

アジアでは各国指導者の名前に“-nomics”を点けるのが流行っている.日本,フィリピン,タイ,中国.そうであればインドの新首相になるNarendra Modiが行う政策は,Modinomicsと呼ぶことになるだろう.

市場はModiがグジャラート州で上げた成果を歓迎している.規制緩和で2ケタの成長率を達成したのだ.しかし,他の州が採用するとは思えない.Modiはそれに応えようとしない.ModiBJPの内部を統率できるか? 連立政権を組織できるか? その指導スタイルが疑問を生む.にわかに台頭したthe Aam Aadmi (“Common Man”) Partyに支持者を奪われるかもしれない.

たとえ有能な中央銀行総裁Raghuram Rajanがいても,予算と経常収支の双子の赤字はルピー暴落や金融危機を招く.

FP JANUARY 13, 2014

Out With a Whimper

BY SADANAND DHUME

FT January 14, 2014

No mean feat for the common man

By Victor Mallet in New Delhi

デリーの警察署が見学者に開放された.警察への住民の不信感は高い.それはArvind KejriwalAAPが成功したことも影響している.

腐敗に抗議する運動は何度も起きている.しかし,多くは勢いが続かず,主要政党に吸収された.AAPはデリー州政府を握ったことが新しい.しかし,Kejriwalは正直に彼らが政策能力を欠いていることを認めている.権力を行使する行政の監理は,残念ながら,選挙で勝利するよりもはるかに難しい.

AAPは選挙の公約を実現できないし,最初の政策の一つが外国からの大規模スーパーやデパートを規制することだった.その公約には,貧しい人々にも水道や電気が安価に利用できる,というものがある.デリーの洗練された地域でも上下水道は整備されていないのだ.Kejriwalは水不足,下水処理,学校の再建,大気汚染,交通渋滞,毎年,地方から都市に流れ込む多数の移住者たち,を扱わねばならない.

たとえ警察を改善できても,デリーから国民的な選挙を戦うことは困難だ.

BLOOMBERG Jan 14, 2014

Urban Villagers Are Asia’s New Force

By Pankaj Mishra

インドのデリーに現れたArvind KejriwalAAP(「普通の人の党」),イタリアのBeppe Grillo,インドネシアのJoko Widodo,トルコのRecep Tayyip Erdogan,など,政治的な主流から外れた者が未来の政治を決める.彼らを動かすのは,工業化,都市化,自由化,グローバルな市場統合化,人口増加,・・・それらが新しく流動化した人々の力だ.Thaksin Shinawatraはその代表である.旧式のトップ・ダウン政治は拒まれる.

彼らは都市から送金し,文化やアイデアを伝え,出版物や選挙戦,職場の移動,携帯電話によって,国全体の政治を変化させる.インドの人口変動は静かに起きているが,タイよりも激しい.

近代化論は,都市中産階級の形成が民主化を促すと考える.左派は,労働者階級による革命という目標を捨てないだろう.しかし,20世紀の思想は捨てるべきだ.

BLOOMBERG Jan 15, 2014

Asia’s Newest Revolutions Are Just Beginning

By Pankaj Mishra


l  アイスランド危機と回復

SPIEGEL ONLINE 01/10/2014

Out of the Abyss

Looking for Lessons in Iceland's Recovery

By Guido Mingels

アイスランドの金融崩壊も劇的であったから,その回復はまさに印象的である.

彼らはほめ言葉として"asshole"と言う.普通は,尻の穴,くそったれ,だが.アイスランドは地球の"asshole"なのだ.2つの地殻がぶつかり合って,間欠泉,火山,温泉がある.アイスランド人は伝統的に漁師であったが,世紀の変わり目のグローバルな金融カジノになった.

2008年から2011年に,史上最悪の金融危機と回復を経験した.人口わずか32万人の小国が,かつてない資本流入を扱い,短期間に失った.しかも最速の回復として記録を達成し,2011年には成長し始めた.

かつて3大銀行の1Kaupthing Bank の主任エコノミストであったÁsgeir Jónssonは,その回復がドイツのおかげだ,と言う.ドイツは,1990年代,自由化されたアイスラドに最も大きく投資したが,今も最大の債権国であるから.また2012年の観光客は,アメリカ,イギリスに次いで,ドイツが第3位である.

ポール・クルーグマンはアイスランドの危機対策を絶賛し,そのモデルを他国が真似するべきだ,と主張した.すなわち,損なわれた民間銀行は倒産させよ.自国の通貨があれば切下げよ.資本流出を管理せよ.対外債権者には支払うな.

それは非常に利己的な対策に見える.そして,そうなのだ.アイルランドは莫大な公的資金を政府が民間銀行の債務支払いに費やした.アイスランド人は2度の国民投票でそれを否定した.高金利を求めてアイスランドンに投資した強欲な外国投資家のために支払うことはできない,と.

アイスランドは新しい機会を発見している.高い教育水準による,漁業,観光,地熱資源の再発見だ.

金融危機はアイスランド人に自分たちのアイデンティティを求めさせた.編み物とインターネットによるデートがブームになった.家族との時間を大切にし,アイスランドの出生率はヨーロッパで最も高い.35歳以下の人口が多い「第3世界型の人口」である.アイスランドでは育児が国家によって担われる.女性の雇用率は78%で世界最高だ.

5月以来,アイスランドの政府は独立党が組織している.それは金融危機を生じたときの政権と同じだ.2009年に政権を失ったが,今や復活して債務を負った国家の再生を任されている.新しい経済大臣Bjarni Benediktssonは,43歳だが,30歳にしか見えない.彼は,他人の失策に責任を感じる,とは言えない,と明言する.外国債権者に支払うべきか,という点も,不可能だ,と言うだけだ.無責任な民間部門の問題だ.

新政権が最初にやったことは,アイスランドのEU加盟交渉を止めたことだ.アイスランドは孤立して幸福を追求する.それは,Jónssonの目には,危険なことである.

アイスランド人がよく使う言葉は "Petta reddast: "Everything will work out.”

NYT JANUARY 15, 2014

After Crisis, Iceland Holds a Tight Grip on Its Banks

By NATHANIEL POPPER


l  財政の健全性

VOX 10 January 2014

Why fiscal sustainability matters

Willem Buiter

財政の健全性は,危機についてだけでなく,通常においても重要である.先進的な資本主義諸国から起きたという点で,2007年に始まった北大西洋圏の金融危機は重要である.危機により金融部門の損失は部分的に社会化された.

他方,新興経済は初めて危機の衝撃に対抗する政策を実施できた.それは金融的・財政的な刺激策である.1994年のテキーラ・ショック,1997年のアジア金融危機,1998年のロシア危機を経て,新興経済は金融部門を改革し,マクロ経済管理を改善していた.

今でも,新興経済よりアメリカ,EU,日本の方が脆弱である.日本では国債の10年利回りが0.6%であるが,債務・GDP比率は235%に達する.予算赤字もGDP6%である.これらの危険性は超攻撃的な金融緩和で隠されているにすぎない.いつ市場で日本政府の支払い能力が疑われるか予測できないが,現状の持続不可能である.


l  安倍政権の危うさ

NYT JAN. 10, 2014

Government Stimulus Lifts Japan

By FLOYD NORRIS

NYT JAN. 13, 2014

Politicians and Textbooks

By THE EDITORIAL BOARD

日本と韓国で教科書の見直しが政府によって求められている.安倍首相は,従軍慰安婦の記述を減らし,日本軍による南京の虐殺を小さく推定するようだ.それは日本の軍国主義を消毒するものだ.他方,韓国の朴大統領は,植民地期の朝鮮人が日本の占領に協力したのは強制されたからだと示す.現在の政府や大学のエリートたちは,当時,日本からの入植者と協力していた.安倍も朴も,家族にこうした歴史的事件の関係者がいる.彼らは歴史の教訓を歪める者たちだ.

FT January 15, 2014

This will be a crunch year for the Japanese economy

By DavidPilling

長い間,中国の成長がアジアで唯一重要な要因だった.しかし,2014年は違う.日本だ.

日本のアベノミクスは,2014年にその成果が問われる.アベノミクスの最も過激な実験はQQE(量的質的緩和)である.それは消えてしまうのか,破局(インフレ率の急上昇,金利の急騰,資本流出)に向かうのか,成功するのか? 日本の資金供給は巨大であり,アメリカの金融緩和終了を埋めるかもしれない.

消費税の引き上げは狂気の沙汰だと首相の顧問が述べた.消費者物価の上昇は重要だが,それだけで問題がすべて解決するわけではない.すなわち,人口減少だ.紙幣は印刷できても子供は印刷できない.

VOX 15 January 2014

Sharpening Abenomics’ third arrow: Labour-market reform in Japan

Giovanni Ganelli

FP JANUARY 15, 2014

Japan's Nuclear Hangover

BY KEITH JOHNSON

theguardian.com, Thursday 16 January 2014

Fukushima is an ongoing warning to the world on nuclear energy

Amy Goodman

194595日,アメリカが原子爆弾を使用した日本の町,広島に入ったジャーナリスト,Wilfred Burchettは,世界に向けた警告としてthe London Daily Expressに記事を書いた.「広島は空襲を受けた町のように見えない.それはあたかも巨大な蒸気ローラーが圧力をかけて,その存在を押しつぶしたように見える.」

66年を経て,2011311日,その600マイル北の土地を東日本大震災と津波が襲った.19000人が亡くなるか行方不明になった.さらに福島第一原発でシステムが次々に停止し,原子炉6つのうち3つがメルトダウンを起こした.34万人が原発難民となり,故郷や家畜を捨てた.Atsushi Funahashiは記録映画"Nuclear Nation: The Fukushima Refugees Story"を監督した.

政府はFunahashiに許可証を発行せず,自宅に2時間だけ戻る家族の撮影を認めようとしなかった.これは,震災以来,重視されるようになったもう一つの問題,秘密,と結び付く.保守派の安倍政権は秘密保護法を成立させたが,秘密を定義するのは恣意的で,政治指導者の自由である.これを反原発運動にも監視の手段に使うことができる.

広島の惨禍を観てBurchettは書いた.「人間が創り出したこの破滅に対して胸が虚ろになるだろう.」


FP JANUARY 10, 2014

All Politics Is Economics

BY MONDHER BEN AYED

FT January 12, 2014

Fears for Bangladeshi democracy rumble across region

By Victor Mallet


l  ロシアとソ連

FP JANUARY 10, 2014

Putin's Oil Slick

BY KEITH JOHNSON

VOX 15 January 2014

Costing secrecy

Mark Harrison


後半へ続く)