前半から続く)


l  移民法の改革

theguardian.com, Saturday 21 December 2013

Should Britain fear a surge of east European migrants?

theguardian.com, Saturday 21 December 2013

America's biggest unfinished business in 2013: immigration reform

Matthew Campanella

2013年に移民法の包括的な改正案が承認されなかったことは,それ以上に,国境地帯にすむ人々の安全や福祉を改善することに本気で取り組む気がないことを示している.国境の軍事化に対する現在の関心は,国境地帯を侮辱し,その将来に向けて不吉な予感を与える.この地域に住む1500万人が,道路や災害時の救援サービス,ごみ収集,電力供給,学校,病院のような,基本的なインフラを欠く中で,働き生活していること,急速にメキシコからの国際的な受け入れ口になっていることを,議会は何もわかっていないのだ.


l  「ユーロ回復圏」提案

Project Syndicate DEC 21, 2013

Rescuing Europe from the Ground Up

Hans-Werner Sinn

EUは平和を実現した.自由貿易によって人々に繁栄をもたらした.全体主義体制の復活を許さず,人々に自由な移住をもたらした.すべての加盟諸国において,市民は法の下に平等である.

しかし,不思議なことに,彼らの称賛は共通通貨には与えられない.逆に,ユーロは南欧諸国とフランスを深刻な経済危機に陥れた.私は今までこれほど多くのカギ十字やドイツを憎むスローガンを聞いたことがない.

危機の終わる見込みはない.ECBが政府債券を購入したことで一時的に金融市場は落ち着いた.しかし,ギリシャやスペインでは,学生を除く若者たちの半分が失業し,成人労働者の4分の1が失業している.

ユーロにはこの大失策の責任がある.1995年に共通通貨に向かうことが正式に決まってから,膨大な資本が南欧に流れ込み,信用を膨張させた.規制は緩く,北欧の銀行は南欧の政府債券や銀行債を購入した.そして,バブルが破裂した後に,物価が高すぎて競争力を失った経済が残ったのだ.

ヨーロッパは通貨同盟を根本的に改革しなければならない.ドルに対抗できるヨーロッパの通貨を,ヨーロッパ国家はないが,財政同盟によって実現できる,という努力は失敗したのだ.加盟諸国は債権国と債務国に分かれた.

通貨・財政同盟を実現するには,ヨーロッパ合衆国が必要だった.すべての市民が平等に代表を選び,共通の法体系を持つ.何よりも,共通の軍隊と外交政策を持つことで,安全と安定性を相互に保障する,本来の,長期的に持続する相互保険同盟である.しかし,フランスはヨーロッパの共通国家を受け入れないため,中間的な段階でユーロ圏を保持し,安定化する必要があった.そのためには,厳格な予算制約に基づく弾力的なユーロ圏加盟システムを導入することだ.

1に,債務会議を開く.南欧諸国の政府に対する債権者,銀行が,債務の一部を免除する.それには,今,民間債権者に入れ替わっているECBも含まれねばならない.

2に,物価や賃金を引き下げて競争力を回復しなければならない諸国が,あまりにも長期に及び,厳しい条件であるなら,彼らが一時的にユーロ圏を離脱する.離脱のショックを緩和するために公的融資を行うし,新通貨の価値を切り下げることで急速に競争力を回復する.この「ユーロ回復圏」 a “breathing eurozone” は,離脱と再加盟を明確に許容し,規制する仕組みである.ヨーロッパはドルとブレトンウッズのような固定レート制との中間形態を必要としている.

3に,「ユーロ回復圏」の国は,中央銀行に厳格な予算制約を課す.特に,金もしくはそれに等しい安全な支払い手段で決済する国際収支の上限が制約となる.

最後に,国家の破産処理を明確に行う.これによってしか,南欧諸国を破滅させたような資本流入は防げない.

FT December 22, 2013

An exercise in prolonging a banking credit crunch

By Wolfgang Münchau

NYT December 24, 2013

In Germany’s Rust Belt, a Polished but Ailing City

By MELISSA EDDY

ドイツにも衰退する工業都市,“Germany’s Detroit”がある.しかし,ドイツ的な緊縮策は潤沢なセーフティーネット,地方政府の破産を禁止する法律があり,極端なケースは州政府が支援する.他方,旧東ドイツには,西ドイツが支払った連帯税で再生した多くの都市がある.

NYT December 24, 2013

Europe's Zigzag Course Toward Integration

By PAUL TAYLOR | REUTERS


l  福島後の核エネルギー政策

VOX22 December 2013

Nuclear expansion or phase-out? Costs and opportunities

Enrica De Cian, Samuel Carrara, Massimo Tavoni


l  イギリス労働者の危機

The Guardian, Sunday 22 December 2013

There's a new jobs crisis – we need to focus on the quality of life at work

Ha-Joon Chang

キャメロン首相は否定するだろうが,イギリスの労働者たちは生計費の危機a "cost of living crisis"にある.物価の上昇に賃金が追い付かず,2008年の水準に戻るのは2018年かもしれない.われわれは失われた10年にある.

労働者たちの危機はさらに深刻だ.社会に必要とされない感覚は彼らの尊厳を奪う.失業者はより高い率で心臓病を患う,という研究がある.

この数十年で,多くのイギリス人は,労働者ではなく,消費者として自分を認識するようになった.自由市場イデオロギーが,高い所得による消費を人生の究極の目標として信じさせた.労働組合は衰退し,人々は「労働者であること」を時代遅れの存在を見なしたのだ.

良い人生とは何か? 人々は起きている時間の半分以上を職場や通勤で過ごす.所得や消費だけで,労働を無視した生活の評価はやめるべきだ.

The Guardian, Thursday 26 December 2013

In praise of … The Making of the English Working Class

Editorial


l  金とビットコイン

NYT December 22, 2013

Bits and Barbarism

By PAUL KRUGMAN

貨幣を無駄に使うことが3つの話に共通する.1.パプア・ニューギニアのPorgera金鉱山.人権を無視し,環境を破壊する.2.ビットコインの「採掘」.複雑な問題を解くことでビットコインは得られる.そのためのコンピューターと電力が無駄になる.世界で最も電力が安く,空気が冷たいアイスランド,レイキャビクが「採掘場」になる.3.ケインズは,政府が貨幣を埋めるためと,それを採掘するために雇用を増やすように求めた.

ケインズもスミスも,金を貨幣から廃位させて,紙幣を発行するように求めた.なぜ多くの金が連銀の金庫に残っているのか? デフレが懸念される今も,金を愛する者は,政府が貨幣を発行すれば,貨幣の価値が失われて,ハイパーインフレになる,と主張する.


l  シリア内戦と中東情勢

FT December 23, 2013

The year the US pivoted back to the Middle East

By Gideon Rachman

FT December 23, 2013

Glimmer of light on bleak horizon

WP December 23, 2013

Time to be bold and make peace in Syria

By Jimmy Carter and Robert A. Pastor

NYT December 23, 2013

The Mideast’s Unlikely Allies

By BEN FISHMAN

NYT December 25, 2013

The Coming Intifada

By ALI JARBAWI


l  裸の遊泳者コンテスト

BLOOMBERG Dec 23, 2013

The Inaugural Naked Awards

By William Pesek

潮が引けば,だれが裸で泳いでいるかわかる,とウォーレン・バフェットは述べた.アジアで裸の遊泳者第1位となる候補を挙げれば,・・・-Shinzo Abe-China’s Communist Party-Najib Razak-The Kim dynasty-Aung San Suu Kyi-Thailand’s Democrat Party-The BIITS: The hype about a developing-nation bloc encompassing Brazil, India, Indonesia, Turkey and South Africa-Obama’s “pivot”-India’s misplaced outrage-Tokyo Electric Power Co.-Bitcoin-Tony Abbott-JPMorgan Chase & Co.-Zhou Xiaochuan: The People’s Bank of China governor


l  領土紛争と靖国参拝

Global Times | 2013-12-23

Abe should walk his talk in Tokyo summit

By Ei Sun Oh

NYT December 25, 2013

Start-Up Spirit Emerges in Japan

By MARTIN FACKLER

Samurai Startup Islandは日本を停滞から救い出す拠点になる.その決定的要素は,企業家精神の復興だ.IT分野の若い企業家を育てるインキュベーターが整備されてきた.大学も,安倍政権も,日本経済の若返りを目指している.

FT December 26, 2013

Japanese PM provokes anger with Yasukuni war shrine visit

By Jonathan Soble in Tokyo, Jamil Anderlini in Beijing and Song Jung-a in Seoul

安倍首相の靖国参拝は中国と各国から厳しい非難を受けた.アメリカ国務省も日本が近隣諸国との建設的な関係を築くのにふさわしくない行動だ,と批判した.

中国はアジアを代表して日本の軍国主義を批判する,という.しかし,日本の軍備に対する強い不安は中国と韓国に限られている.

FT December 26, 2013

Shadow boxing in the western Pacific

無人の岩礁をめぐる日中間の紛争が過熱している.

中国は,2012年に日本政府が島を「国有化」したことを非難している.それは日本の右翼政治家が島を買って開発する動きを封じるためだった.中国政府はこの説明を受け入れない.

さらに,日本政府が1970年代の主権棚上げ論を否定したことは事態を悪化させている.1895年以降,中国が日本の主権を認めた,という主張は受け入れがたい.双方は聴く耳を持たず,罵倒し合っている.こう着状態は危険である.事故の可能性,あるいは,急進派による地上(上空,海上)での計画的な挑発も起きかねない.双方の妥協を拒むタカ派指導者や強硬派集団がいる以上,そのような事態が生じた場合,エスカレートする.

中国政府は,わずかな岩礁を守るために米兵を犠牲にしてまで,アメリカ政府が日米安保条約を守るとは思っていない.その方針は日米間にくさびを打つことに成功している.アメリカは,中国の設定した防空識別圏を民間航空機も無視する,という日本の政策に従っていない.

事態が制御不能になるのを防ぐために,3つのことをなすべきだ.1.日本政府は,その主権を譲らないが,1970年代に棚上げ論があったことを正直に認め,旧情に復する.2.中国政府は,紛争を国際裁判所にゆだね,その決定に従うと提案する.

しかし,双方が自分たちの正しさを道義的に譲らず,相手を信用しないなら,せめて,両国間にホットラインを設置し,事故が危機に向かうのを防ぐべきだ.

3.両国の指導者は,前提条件を付けずに会談するべきだ.これを拒む習近平は間違っている.もし安倍との会談を拒むなら,解決の見込みはなく,軍事衝突に向かう.

NYT December 26, 2013

Japanese Premier Visits Contentious War Shrine

By HIROKO TABUCHI

BLOOMBERG Dec 26, 2013

China and Japan’s Useless Posturing

By the Editors

1978年に14人の戦争犯罪者を靖国神社が「祀って」から,日本の政治家が靖国参拝することは近隣諸国をまさに憤慨させている.天皇も参拝しなくなった.

しかし,だから安倍は参拝した.日本が北東アジアで道義的な指導者の地位を回復した,と見せたいからだ.同様に敵対的な姿勢を示す中国の習近平に応じたわけだ.

中国政府は,日本や韓国との紛争がある島の上空を含めて防空識別圏を一方的に設定した.それは中国が近隣諸国を虐げる覇権を求めているという不安を強める行為だ.

安倍と習の行動は,単に,国内経済の困難な改革に取り組むため,保守派を黙らせるための戦略として,強硬姿勢を示しただけだ,と解釈する者もいる.しかし,彼らは間違っている.構造改革は言葉だけで,進んでいないからだ.中国の指導者は銀行間資金市場を抑え込もうとして,銀行破たんのショックを招く不安が生じた.日本では大規模な金融緩和と円安が企業の利潤を増やしたが,労働者は諸遠くが増えず,レストランや商店は苦しんでいる.対外的な紛争は,日本や中国の政府に必要なエネルギーと関心を奪ってしまう.

習や安倍の意図とは逆に,攻撃的な姿勢が国を強くすることはない.ただ地域や世界に危険をもたらしているだけだ.

2013-12-27 (China Daily)

Defiant Abe a real danger

安倍は他国や戦後の国際秩序を尊重しない.

釣魚島を奪った泥棒の理屈と同じように,アジアを侮辱する靖国参拝も,安倍にとって「問題ではない」.


l  もしドイツが第1次大戦に勝利していたら

The Guardian, Wednesday 25 December 2013

What if the Germans had won the first world war?

Martin Kettle

ソビエト・ロシアに関する歴史家,EH Carrにとって,「もしそれが起きなかったとしたら,どうなったか?」という問題を論じるのは「茶飲み話」でしかない.またEP Thompsonにとって,反事実的な推論は「非歴史的なクズ」である.

しかし,幸いにも小説や映画はそれを拒まなかった.ナチス・ドイツが占領したイギリスを描く映画It Happened Here by Kevin Brownlow and Andrew Mollo),Robert Harris Fatherland, Resistance by Owen Sheers),そしてCJ Sansom DominionLord Beaverbrook and Oswald Mosleyが支配するイギリス).

例外は反事実的仮想を支持する歴史家,Niall Fergusonである.そのヨーロッパ嫌いが皇帝ヴィルヘルムをEUの父と強調するけれど,ドイツが勝利する理由は,イギリスのアスキス内閣が1914年にヨーロッパの戦争に参加しなかったから,というのは説得的だ.

1次世界大戦は単に「混乱の極み」であったのか,あるいは,「何か意味のある歴史」なのか,意見が分かれている.確かに,全ての立場ですべての人々が,自分は正しいと信じていた.しかし,これはまた帝国間の戦争であった.その帝国の違いを冷静に分析できれば,何かがわかるだろう.反事実的考察がそれを助ける.

191811月,Compiegne近郊でドイツ軍が降伏して,第1次世界大戦は終わった.1918年の春に,もしLudendorffがパリを征服し,ドーバー海峡を渡っていたら,20世紀のヨーロッパはどうなったか? ・・・実際,それはもう少しで成功したのだ.

もちろん,ドイツが支配し,ドイツが改造したはずだ.しかし,どのドイツが? それは,ビスマルクが創った軍国主義的,保守的,抑圧的なドイツか? あるいは,20世紀初めのヨーロッパで最大の労働運動を育てたドイツか? また,ドイツが勝利しても,ポツダム和平会談では,ヴェルサイユでフランスがしたような賠償金請求や憤りを与えなかっただろう.その結果,ヒトラーは権力を握らなかった.ホロコーストもなく,第2次世界大戦も起きず,ユダヤ人は生き残ってシオニズムが広まることもなかっただろう.中東の現代史は全く異なっている.

皇帝のヨーロッパではフランスにファシズムが育つが,アルザス・ロレーヌをドイツが支配しているから軍事的な脅威にはならない.敗北したイギリスは海軍を捨て,中東や湾岸の石油利権をドイツに譲らされ,インドのナショナリズムも抑えられない.大英帝国は解体し,現在のイギリスは北欧の社会民主主義的な共和国,王子様のいないデンマークに似ているだろう.

ところでアメリカは,ドイツの勝利によって戦争に参加せず.孤立主義を強めて,国際秩序を強制する国にはならなかっただろう.F.D, ルーズベルトは 1930年代の経済問題に取り組み,日本とは戦争したとしても,ヨーロッパでは戦争しなかっただろう.ソビエトは,強力なドイツの隣国として慎重にふるまい,不安定要素ではあっても,1941年に侵略されることはなかっただろう.第2次世界大戦は起きず,冷戦も存在しない.

しょせん「茶飲み話」か? もちろん.だが2014年の私たちは,国家間の対立する見方を超えて,戦争をより客観的に,より深く学ぶ必要がある.


l  ドローン体制

theguardian.com, Thursday 26 December 2013

President Obama's new normal: the drone strikes continue

Amy Goodman


l  ナイジェリア

NYT December 26, 2013

The Patchwork Nation

By ADEWALE MAJA-PEARCE


l  パキスタンによる虐殺

NYT December 26, 2013

Pakistan's State of Denial

By TAHMIMA ANAM

1971年,バングラデシュ独立を阻止するためにパキスタン軍が行った虐殺について,数十年を経ても政府はその事実を否定している.おそらく300万人の市民が殺害され,数千人が組織的にレイプされた.パキスタン軍の戦争犯罪は明らかである.しかしパキスタンの教科書には何も書かれていない.


l  冷戦の復活

WP December 26, 2013

China and Russie bring back Cold War tactics

By Anne Applebaum

これは冷戦か? いや,そうではない.欧米がロシアや中国と対立しているわけではない.代理戦争を続けているわけでもない.世界は民主主義圏と共産主義圏とに分割されていない.

しかし,中国は東アジアで防空識別圏に従うよう他国に強いた.アメリカ海軍の駆逐艦に進路を変更させた.それは冷戦や戦争の始まりではないが,中国が現状維持を好まず,アメリカの同盟諸国が不安を高めるように仕向けている.

ロシアも,スウェーデン,バルチック諸国,フィンランドの空域を侵し,航空機を妨げ,貿易を選別的に禁じた.長距離ミサイルがドイツに向けられることを示唆した.ロシアも戦争を望まないが,NATOの信頼,アメリカの軍事的保障,西欧諸国の連帯を損なおうとしている.

中国とロシアは協力しているわけではない.相互に好む相手でもない.しかし,両国ともリベラルな民主主義を嫌う.それが北京やモスクワに及ぶことを阻止する決意である.西側のメディア,思想,資本主義が彼らの経済圏を侵すと考えている.その権威主義的な寡頭体制を守るために,彼らはますます高価な代償を覚悟している.

われわれが好まないとしても,歴史は繰り返す.

FP DECEMBER 26, 2013

The 2013 Stories That Never Were

BY STEPHEN M. WALT

良くも悪くも,2013年に起きなかった10大ニュースを考える.

1.アメリカによるシリア空爆.2Hillary Rodham Clinton がイランとの暫定合意を承認.3.ユーロ圏解体.4.オバマ大統領のドローン暗殺指令撤回.5.グローバル気候変動に関する国際合意成立.・・・7.日中の紛争地近海における軍事衝突.・・・


l  タイ

Project Syndicate DEC 26, 2013

Thailand’s Silent Coup

SIN-MING SHAW

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The Economist December 14th 2013

Invictus

India: Would Modi save India or wreck it?

Minimum wages: The logical floor

The Volcker rule: Hedge-trimming

Singapore: Trouble in Little India

Immigration: The Polish paradox

The journey of an Indian onion: Lords of the rings

(コメント) 南アフリカの資本主義を破壊せず,継承することにしたマンデラと,議会派の停滞に応じてインド政治を変えるナレンドラ・モディのヒンズー至上主義が注目されています.

アメリカは「最低賃金」と「ボルカー・ルール」によって,その資本主義の底辺と頂点を是正する試みに手を付けます.他方,シンガポールとイギリスの移民をめぐる記事が興味深いです.

インドの玉ねぎ価格が高騰し,あるいは暴落する背景を見るとき,テスコ,カルフール,ウォルマートが唱える,市場を機能させるグローバリゼーションの使命を知るのです.

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IPEの想像力 12/30/13

年初から気の重い問題ばかりですが,一つ,興味深い提案に関心を持ちました.Hans-Werner Sinnが示したユーロの根本的解決策です.

ユーロ危機の長期化は根本的な疑問を生じています.・・・何のための通貨同盟なのか? なぜ通貨同盟を維持するのか? ・・・

WolfKrugmanはドイツを批判しました.ユーロ圏の赤字諸国に緊縮を強いる融資は問題を悪化させている,と.デフレによって債務は減らず,増えるのです.すでに緊急融資は返済できる見込みがなく,債務の減額・再編を交渉すべきです.そして,ドイツはもっと景気を刺激し,賃金を引き上げ,赤字諸国の調整を助ける必要があります.こうした協力体制は,ユーロ圏が為替レートを失ったことの意味なのです.

また,WyploszDe Grauweもドイツの消極姿勢を批判します.ECBはユーロ圏の中央銀行として,決済システムの不安を払しょくし,加盟諸国の政府債券が取引できないような状態を避けるために介入する,最後の貸し手でなければならない,と.ドイツはユーロ債の発行や,ECBが銀行同盟やESMに融資することにも反対します.ECBがユーロ圏全体の経済状態を見て,インフレ目標を高くし,ユーロ安とデフレの緩和を進めることにも反対です.

Hans-Werner Sinnは彼らに反論しました.ドイツではなく,赤字諸国がユーロ圏の合意を破ったのだ.ドイツは経済改革に成功し,赤字諸国も同様の改革を進めているのであり,融資を免除することで改革が進むわけがない.為替レートを失うとは,財政赤字を抑え,構造改革によって競争力を高める,という意味だ.それができない赤字諸国の政府債券をECBが保証し,あるいは,ユーロ債を発行して救済することは間違っている,と.

当然,ユーロ危機について,学生たちに質問されました.どうすればよいのか? と.・・・私は,多くの観察者と同じように,対称的な「調整政策」を支持し,ヨーロッパ経済の停滞は黒字国のドイツなどに責任がある,と考えました.ECBの立場が制約されているのも間違いです.不況地域への投資や財政移転が行われ,好況地域への労働力の移動が促進されることが共通通貨圏の意味だ,と思ったからです.

しかし,Hans-Werner Sinnの根本的な改革案は,ドイツの消極姿勢を逆転します.共通通貨圏には共通の国家が必要だ.むしろ,フランスがヨーロッパ国家を拒むから,ユーロ圏は中間的な段階にとどまっている,と.もしこの政治的な限界が変わらないのであれば,赤字国がユーロ圏を一時的に離脱しても,調整後に復帰できるような制度が必要です.すなわち,独自通貨と為替レートによる調整を利用できる「ユーロ再生圏」です.

BuiterAslundはユーロ圏離脱から崩壊へのリスクと混乱,膨大な損失を警告してきました.ユーロによって契約されたさまざまな関係が,新しい独自通貨にどのように継承されるのか? アルゼンチンが対ドル固定制を放棄したときの混乱がどうであったか,参考になるはずです.少なくとも,アルゼンチン経済は崩壊しませんでした.あるいは,IMFの監視下で債務処理と為替レート切り下げを実行したアイスランドです.

固定レート制が維持できなくても,現状の変動レート制が望ましいとは思えません.私は,John Williamsonが唱えた中間的選択肢を支持しました.Hans-Werner Sinnの「ユーロ圏の再生措置」は,ユーロ圏だけでなく,国際通貨制度の柔軟な再生を可能にする仕組みになる,と思います.異なるガバナンスの移行を平和的に受け入れ,そのコストを吸収するシステムに合意する,という新しい挑戦です.

しかし,Sinnの提案は,本当に実現するというより,実現できないからドイツの姿勢は正しい,という意味にも取れます.私たちは国家の政治指導者たちが共通通貨圏(共通の国家)を拒否し,あるいは,利用する局面を避けられません.それでも国際社会の統合化が進むとしたら,通貨圏と並行して,若い,勤勉な移民たちを歓迎する社会・政治システムの構築に向かうときでしょう.

アジアも,好戦的ナショナリズムの発作を鎮静化できるガバナンスを競い合ってほしいです.

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